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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068387
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】ガラス板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 17/06 20060101AFI20240513BHJP
   C03B 25/12 20060101ALI20240513BHJP
   G01N 21/23 20060101ALI20240513BHJP
   G01B 11/16 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
C03B17/06
C03B25/12
G01N21/23
G01B11/16 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178788
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100129148
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 淳也
(72)【発明者】
【氏名】大庭 直樹
【テーマコード(参考)】
2F065
2G059
4G015
【Fターム(参考)】
2F065AA65
2F065BB22
2F065FF52
2F065GG04
2F065MM03
2F065SS13
2G059AA02
2G059BB10
2G059BB15
2G059EE01
2G059EE09
2G059MM01
4G015CA01
4G015CB02
4G015CC02
(57)【要約】
【課題】ガラス板に対する歪の評価を効率良く行う。
【解決手段】ガラス板の製造方法における評価工程S7は、試料ガラス板GSの板引き方向D及び板引き方向Dに直交する幅方向Wのそれぞれについて複数の測定点MPを設定し、複数の測定点MPにおける試料ガラス板GSの歪を測定する測定工程S71と、板引き方向Dに沿う複数の測定点MPから一部の測定点MPを選択する選択工程S72と、選択工程S72で選択された測定点MPにおける歪から歪の代表値Zaを算出する算出工程S74と、を備える。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融ガラスからガラスリボンを成形する成形工程と、徐冷炉内で前記ガラスリボンを徐冷する徐冷工程と、前記ガラスリボンを所定サイズのガラス板に切り出す切断工程と、前記ガラス板から試料ガラス板を採取する採取工程と、前記試料ガラス板の歪を評価する評価工程と、を備えるガラス板の製造方法であって、
前記評価工程は、前記試料ガラス板の板引き方向及び前記板引き方向に直交する幅方向のそれぞれについて複数の測定点を設定し、前記複数の測定点における前記試料ガラス板の前記歪を測定する測定工程と、前記板引き方向に沿う前記複数の測定点から一部の測定点を選択する選択工程と、前記選択工程で選択された前記測定点における前記歪から前記歪の代表値を算出する算出工程と、を備えることを特徴とするガラス板の製造方法。
【請求項2】
前記測定工程では、複屈折測定装置により、前記複数の測定点におけるレタデーションの大きさAと、レタデーションの方位角θとを測定することを特徴とする請求項1に記載のガラス板の製造方法。
【請求項3】
前記評価工程は、前記レタデーションの前記大きさAと、前記レタデーションの前記方位角θとに基づいて換算される換算歪を演算する演算工程をさらに備え、
前記換算歪は、前記複数の測定点のそれぞれについて、前記試料ガラス板の幅方向の端部からの距離が100mm未満である場合はZ=-|Acosθ|+|Asinθ|で表され、前記試料ガラス板の前記幅方向の前記端部からの距離が100mm以上である場合はZ=|Acosθ|-|Asinθ|で表され、
前記選択工程では、前記板引き方向に沿って一列に配される複数の測定点を選択し、
前記算出工程では、前記板引き方向に沿って一列に配される前記複数の測定点における前記換算歪Zの最大値Zmax及び最小値Zminを算出し、かつ前記最大値Zmaxと前記最小値Zminの和であるZa=Zmax+Zminを、前記板引き方向に沿う前記複数の測定点における前記歪の前記代表値とすることを特徴とする請求項2に記載のガラス板の製造方法。
【請求項4】
前記試料ガラス板は、一辺の長さが2000mm以上3400mm以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のガラス板の製造方法。
【請求項5】
隣り合う前記測定点の相互間の距離は、30mm以上200mm以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のガラス板の製造方法。
【請求項6】
前記徐冷工程では、前記算出工程で算出した前記歪の前記代表値に基づき、前記徐冷炉の温度分布を制御することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のガラス板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどのディスプレイ用の基板やカバーガラスをはじめとする様々な分野において、ガラス板が使用されている。この種のガラス板は、例えばオーバーフローダウンドロー法などの公知の方法により、長尺なガラスリボンを連続的に成形し、ガラスリボンを所定の長さ毎に幅方向に切断することにより製造される。
【0003】
通常、上記方法で製造されたガラス基板には歪が残存している。この歪により、ガラス板にレタデーションが生じ、透過した光の偏光状態が変化する。そのため、歪が残存するガラス板を例えば液晶ディスプレイ用途に用いると、光漏れや、画面全体或いは一部に輝度ムラが発生するという問題が生じる。
【0004】
例えば特許文献1は、レタデーションの大きさ及びレタデーションの方位角を制御することで、液晶ディスプレイの光漏れを抑えて、輝度ムラの発生を抑制することが可能なガラス板を開示している。
【0005】
レタデーションの大きさ及び方位角は、公知の歪測定機によって測定することができる。歪測定機は、ガラス板に対して複行複列に設定した複数の測定点のそれぞれに対してレタデーションの大きさ及び方位角を測定することができる(同文献の段落0055及び図3乃至図5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-209906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年におけるディスプレイの大型化に伴い、ガラス板に設定される測定点が増加し、各測定点で測定したレタデーションの大きさ及び方位角に基づく歪の評価に要する時間が増加する傾向にある。
【0008】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、ガラス板に対する歪の評価を効率良く行うことを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1) 本発明は上記の課題を解決するためのものであり、溶融ガラスからガラスリボンを成形する成形工程と、徐冷炉内で前記ガラスリボンを徐冷する徐冷工程と、前記ガラスリボンを所定サイズのガラス板に切り出す切断工程と、前記ガラス板から試料ガラス板を採取する採取工程と、前記試料ガラス板の歪を評価する評価工程と、を備えるガラス板の製造方法であって、前記評価工程は、前記試料ガラス板の板引き方向及び前記板引き方向に直交する幅方向のそれぞれについて複数の測定点を設定し、前記複数の測定点における前記試料ガラス板の前記歪を測定する測定工程と、前記板引き方向に沿う前記複数の測定点から一部の測定点を選択する選択工程と、前記選択工程で選択された前記測定点における前記歪から前記歪の代表値を算出する算出工程と、を備えることを特徴とする。
【0010】
かかる構成によれば、ガラス板の板引き方向における複数の測定点について歪の代表値を算出することで、板引き方向における各測定点の歪の評価を代表値によって共通化することが可能となる。これにより、多数の測定点を含むガラス板に対する歪の評価を効率良く行うことができる。
【0011】
(2) 上記(1)の方法において、前記測定工程では、複屈折測定装置により、前記複数の測定点におけるレタデーションの大きさAと、レタデーションの方位角θとを測定してもよい。
【0012】
かかる構成によれば、レタデーションの大きさ及びレタデーションの方位角を複屈折測定装置によって測定することで、ガラス板の歪を正確に測定することが可能となる。
【0013】
(3) 上記(2)の方法において、前記評価工程は、前記レタデーションの前記大きさAと、前記レタデーションの前記方位角θとに基づいて換算される換算歪を演算する演算工程をさらに備え、前記換算歪は、前記複数の測定点のそれぞれについて、前記試料ガラス板の幅方向の端部からの距離が100mm未満である場合はZ=-|Acosθ|+|Asinθ|で表され、前記試料ガラス板の前記幅方向の前記端部からの距離が100mm以上である場合はZ=|Acosθ|-|Asinθ|で表され、前記選択工程では、前記板引き方向に沿って一列に配される複数の測定点を選択し、前記算出工程では、前記板引き方向に沿って一列に配される前記複数の測定点における前記換算歪Zの最大値Zmax及び最小値Zminを算出し、かつ前記最大値Zmaxと前記最小値Zminの和であるZa=Zmax+Zminを、前記板引き方向に沿う前記複数の測定点における前記歪の前記代表値とすることができる。
【0014】
かかる構成によれば、Za=Zmax+Zminにより算出される歪の代表値に基づいて、ガラス板の各測定点における歪の評価を効率良く行うことができる。
【0015】
(4) 上記の(1)から(3)のいずれかに記載の方法において、前記試料ガラス板は、一辺の長さが2000mm以上3400mm以下であってもよい。かかる構成によれば、一辺の長さが2000mm以上の大型のガラス板に本発明を適用することで、本発明の効果が顕著となる。
【0016】
(5) 上記の(1)から(3)のいずれかに記載の方法において、隣り合う前記測定点の相互間の距離は、30mm以上200mm以下であってもよい。かかる構成によれば、測定点の相互間の距離を上記の範囲とすることで、大型のガラス板における測定点を可及的に多く設定することが可能となる。
【0017】
(6) 上記の(1)から(3)のいずれかに記載の方法において、前記徐冷工程では、前記算出工程で算出した前記歪の前記代表値に基づき、前記徐冷炉の温度分布を制御してもよい。かかる構成によれば、本方法によって算出した歪の代表値に基づいて、徐冷工程の温度分布を制御(フィードバック制御)することで、ガラス板に生じる歪を抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ガラス板に対する歪の評価を効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】ガラス板の製造装置における成形装置及び切断装置を示す側面図である。
図2】ガラス板の製造装置における搬送経路を示す平面図である。
図3】ガラス板の製造装置における搬送経路を示す側面図である。
図4】歪測定機の側面図である。
図5】歪測定機の側面図である。
図6】歪測定機の平面図である。
図7】歪測定機の正面図である。
図8】ガラス板の製造方法を示すフローチャートである。
図9】評価工程を示すフローチャートである。
図10】ガラス板を示す図である。
図11】レタデーションの大きさ及び方位角を示す図である。
図12】演算工程を説明するための図である。
図13】ガラス板の歪の評価結果を示すグラフである。
図14】演算工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。図1乃至図14は、本発明に係るガラス板の製造方法の一実施形態を示す。
【0021】
図1乃至図3は、本方法に使用されるガラス板の製造装置を示す。製造装置は、溶融ガラスからガラスリボンGRを連続成形する成形装置1と、ガラスリボンGRからガラス板Gを切り出す第一切断装置2と、ガラス板Gを搬送する搬送経路3と、を備える。
【0022】
成形装置1は、ガラスリボンGRを成形する成形炉4と、ガラスリボンGRの内部歪を低減するためにガラスリボンGRを徐冷(アニール処理)する徐冷炉5と、ガラスリボンGRを室温付近まで冷却する冷却ゾーン6と、成形炉4、徐冷炉5及び冷却ゾーン6のそれぞれに上下複数段に設けられるローラ対7と、を備えている。ローラ対7は、ガラスリボンGRの幅方向の両端部を挟持し、ガラスリボンGRに適度な張力を付与しながら、ガラスリボンGRを搬送して降下させる。以下、ガラスリボンGRにおいて張力が付与される長手方向を板引き方向Dという。
【0023】
成形炉4の内部空間には、オーバーフローダウンドロー法により溶融ガラスからガラスリボンGRを成形する成形体8が配置されている。成形体8は、その上部に、溶融ガラスを溢れ出させるためのオーバーフロー溝を有している。成形装置1によって成形されたガラスリボンGRの幅方向の両端部は、成形過程の収縮等の影響により、幅方向の中央部に比べて厚みが大きい耳部(不要部)を含む。
【0024】
図1に示すように、第一切断装置2は、成形装置1の下方で縦姿勢のガラスリボンGRを所定の長さ毎に幅方向に切断することにより、ガラスリボンGRからガラス板Gを順次切り出す。ここで、幅方向は、ガラスリボンGRの長手方向(板引き方向D)と直交する方向であり、本実施形態では実質的に水平方向と一致する。
【0025】
第一切断装置2は、ガラスリボンGRの一方の表面上に幅方向に沿ってスクライブ線SL1を形成するスクライブ装置(図示省略)と、スクライブ線SL1に対応する位置で、ガラスリボンGRの他方の表面を支持する接触部9と、切り出し対象のガラス板Gに対応する部分(スクライブ線SL1より下の部分)のガラスリボンGRを保持し、スクライブ線SL1に曲げ応力を作用させる応力付与部10とを備えている。
【0026】
スクライブ装置は、例えばホイールカッタを備えている。スクライブ装置は、ホイールカッタに限らず、例えばレーザ照射などの他の方法でスクライブ線SL1を形成するものであってもよい。
【0027】
接触部9は、降下中のガラスリボンGRに追従降下しつつ、ガラスリボンGRの方向に沿って、ガラスリボンGRの表面に接触する平面状の接触面を有する板状体(定盤)から構成されている。応力付与部10は、ガラスリボンGRの幅方向の両端部を把持する把持部(例えばチャック)を備える。
【0028】
搬送経路3は、例えば外部からの汚染物質をある程度遮断できる空間を区画形成するクリーンルームにより構成される。搬送経路3は、複数の空間(処理室)に区切られている。搬送経路3は、主搬送経路3aと、主搬送経路3aから分岐する分岐搬送経路3bと、を含む。
【0029】
図1乃至図3に示すように、主搬送経路3aは、ガラスリボンGRから切り出されたガラス板Gを受け渡す受渡室11と、ガラス板Gの一部を切断する切断室12と、ガラス板Gの検査を行う検査室13と、ガラス板Gを梱包する梱包室14と、を備える。分岐搬送経路3bは、ガラス板Gを試料ガラス板GSとして採取する採取室15を備える。これらの各処理室は、壁16によって仕切られている。各壁16には、ガラス板Gを通過させるための開口部16aが設けられている。なお、壁16の開口部16aには、この開口部16aを開閉するためのシャッタが設けられていてもよい。
【0030】
上記の構成の他、搬送経路3は、ガラス板Gを縦姿勢で搬送する搬送装置17~19を備える。搬送装置17~19は、第一搬送装置17と、第二搬送装置18と、第三搬送装置19と、を含む。各搬送装置17~19は、ガラス板Gの上部を把持する把持部(チャック、吸着パッド等)を備える。
【0031】
受渡室11は、ガラス板Gを第一搬送装置17から第二搬送装置18へと受け渡すためのものである。第一搬送装置17は、ガラスリボンGRから切り出されたガラス板Gを、第一切断装置2から受け取り、受渡室11内で第二搬送装置18に向かって搬送する。第二搬送装置18は、受渡室11内の所定位置に待機している。第二搬送装置18は、第一搬送装置17からガラス板Gを受け取ると、このガラス板Gを切断室12、主搬送経路3aに沿って、検査室13、梱包室14の順に搬送する。また、第二搬送装置18は、所定のタイミングで、ガラス板Gを分岐搬送経路3bに沿って採取室15へと搬送する。
【0032】
図3に示すように、第二搬送装置18は、ガラス板Gをその幅方向Wに沿って搬送する。すなわち、第二搬送装置18は、ガラス板Gの表面が搬送方向に面しない状態でガラス板Gを搬送する。これにより、搬送時におけるガラス板Gの揺れを抑制することができる。
【0033】
切断室12は、ガラス板Gの幅方向Wの端部に形成されている不要部(耳部)Gxを除去するためのものである。切断室12は、第二切断装置(図示せず)としてのスクライブ装置及び折割装置を内部に備える。
【0034】
検査室13は、ガラス板Gを検査するための検査設備20を備える。検査設備20は、ガラス板Gを撮像する撮像装置と、撮像装置によって取得された画像データに基づいてガラス板Gの検査を実施する検査装置と、を備える。
【0035】
梱包室14は、ガラス板GをパレットCに梱包することによってガラス板梱包体を製造するためのものである。梱包室14内には、パレットCと、第三搬送装置19とが配されている。梱包室14では、第二搬送装置18から第三搬送装置19へのガラス板Gの受け渡しが行われる。第三搬送装置19は、ガラス板Gを縦姿勢で保持した状態でパレットCに載置することが可能な積載装置として機能する。
【0036】
梱包室14には、シート供給装置(図示せず)によって、ガラス板Gを保護するための保護シート(図示せず)が供給される。シート供給装置は、梱包室14に隣接するシート供給室(図示せず)に配置されている。第三搬送装置19によって搬送されるガラス板Gは、シート供給装置によって保護シートが重ねられた状態で、パレットCに載置される。
【0037】
採取室15は、ガラス板Gの歪の状態を評価するために、必要なときに試料ガラス板GSを採取するためのものである。採取室15は、ガラス板Gの不要部Gxを除去する第三切断装置としてのスクライブ装置及び折割装置を備える。採取室15では、ガラス板Gの不要部Gxを除去することにより、試料ガラス板GSを得る。
【0038】
採取室15は、図示しない測定室と繋がっている。測定室には、歪測定機が配置されている。図4乃至図7に示すように、歪測定機21は、架台22と、試料ガラス板GSを水平状に支持することが可能な載置台23と、載置台23に対して所定の測定方向に沿って相対的に移動可能なレーザ透過型の測定装置24と、載置台23及び測定装置24の動作を制御する制御装置25と、を備える。
【0039】
架台22は、載置台23を傾斜状態もしくは水平状態で保持するための台であって、測定室の床面上に設置される。ここで、「水平状態」とは、完全な水平状態(傾斜角度=0°)に限るものではなく、略水平な状態であることも含み、例えば、見た目で水平を呈する状態も含む。具体的には、「水平状態」とは、載置台23が僅かに傾斜している場合において、水平方向(Y軸方向)に対する傾斜角度が-10°以上0°未満又は0°を超え10°以下の範囲である状態も含む。
【0040】
図4乃至図6に示すように、架台22は、Y軸方向に沿って長尺状に構成されている。架台22は、その長手方向に沿って載置台23を移動させるスライド機構26を備える。スライド機構26は、載置台23の幅方向W(X軸方向)の両端部にそれぞれ配置される。
【0041】
各スライド機構26は、載置台23の中途部を回動可能に支持する回動軸27と、載置台23を水平方向に沿って移動させる水平駆動装置(図示せず)と、回動軸27を中心にして載置台23を回動させる回動駆動装置(図示せず)と、を備える。
【0042】
水平駆動装置は、例えばLMガイド(登録商標)やボールねじ機構、モータ等を備える直動機構により構成される。水平駆動装置を作動させることで、水平状態にある載置台23を架台22の長手方向(Y軸方向)に沿って移動させることができる。
【0043】
回動駆動装置は、例えばエアシリンダ等のアクチュエータ又はモータ等により構成される。回動駆動装置は、回動軸27を介して、載置台23を、例えば水平方向(Y軸方向)に対して70~80度の角度を有する傾斜状態と、水平状態とに変更することができる。
【0044】
図6に示すように、載置台23は、ステージ部28と、受け部29と、位置決め部30a,30bとを備える。
【0045】
ステージ部28は、金属製(例えばアルミニウム製)の板状部材により構成される。ステージ部28は、歪を測定する際に試料ガラス板GSの平坦度を所望の精度に維持するための定盤として機能する。
【0046】
ステージ部28は、平坦面として構成される載置面を有する。載置面は、複数の開口部31と、各開口部31を区切る枠部32とを備える。
【0047】
各開口部31は、例えば正方形状に構成されるが、この形状に限定されない。各開口部31は、測定装置24による歪測定の際に載置台23の下方から上方に向かって照射されるレーザ光を試料ガラス板GSに照射させるためのものである。複数の開口部31は、ステージ部28のX軸方向及びY軸方向に沿って、所定の間隔をおいて直線状に配列されている。
【0048】
図6に示すように、枠部32は、試料ガラス板GSがステージ部28に載置されたときに、この試料ガラス板GSの一方の面を支持する。各枠部32は、所定の長さ寸法及び幅寸法を有するとともに、直線状に構成される。
【0049】
図4乃至図6に示すように、受け部29は、ステージ部28の一端部側に設けられるとともに、載置台23の幅方向に沿って長尺状に構成される。受け部29は、載置台23が傾斜状態にあるときに、試料ガラス板GSの一端部(下端部)を支持する。また、受け部29は、載置台23が水平状態にあるときに、試料ガラス板GSの一端部に接触する位置決め部として機能する。受け部29は、試料ガラス板GSの大きさに応じて位置決めを行うことができるように、位置変更可能に構成される。
【0050】
図6に示すように、位置決め部30a,30bは、載置台23が水平状態にあるときに、X軸方向における試料ガラス板GSの各端部を位置決めする一対の第一位置決め部30aと、Y軸方向における試料ガラス板GSの端部(受け部29に接触する端部とは反対側の端部)を位置決めする第二位置決め部30bと、を含む。各位置決め部30a,30bは、試料ガラス板GSの大きさに応じて位置決めを行うことができるように、位置変更可能に構成される。
【0051】
測定装置24は、架台22の長手方向における中途部に配置されている。測定装置24は、レーザ光照射部33と、レーザ光受光部34と、レーザ光受光部34を支持する支持部材35と、レーザ光照射部33を駆動する駆動装置(図示せず)と、レーザ光受光部34を駆動する駆動装置(図示せず)と、を備える。
【0052】
レーザ光照射部33は、架台22の下部に設けられており、載置台23の下方から開口部31に向かって上方にレーザ光を放出するように構成される。また、レーザ光照射部33は、駆動装置によりX軸方向に沿って移動するように構成される。
【0053】
レーザ光受光部34は、上下方向(Z軸方向)においてレーザ光照射部33と対向するように、このレーザ光照射部33の上方に位置する。レーザ光受光部34は、駆動装置によりX軸方向に沿って移動するように構成される。
【0054】
上記のようなレーザ光照射部33及びレーザ光受光部34の位置関係により、載置台23は、水平状態にあるときに、上下方向(Z軸方向)においてレーザ光照射部33とレーザ光受光部34との間に位置することになる。
【0055】
支持部材35は、レーザ光受光部34をX軸方向に移動可能に支持する。また、支持部材35は、レーザ光受光部34を駆動する駆動装置を支持している。
【0056】
レーザ光照射部33の駆動装置及びレーザ光受光部34の駆動装置は、例えばLMガイド(登録商標)やボールねじ機構、モータ等を備える直動機構により構成される。
【0057】
上記の構成に限らず、測定装置24は、複数の駆動装置を組み合わせることで、レーザ光照射部33及びレーザ光受光部34をX軸方向及びY軸方向に移動させるように構成されてもよい。また、測定装置24は、レーザ光照射部33及びレーザ光受光部34をロボットアーム(駆動装置)に取り付けてなる構成としてもよい。これにより、測定装置24は、レーザ光照射部33及びレーザ光受光部34を三次元的に移動させることが可能になる。
【0058】
測定装置24としては、例えば光ヘテロダイン法による共通光路干渉計とフーリエ解析法を利用して、試料ガラス板GSの複屈折量を測定する複屈折測定装置が好適に使用される。この複屈折測定装置は、試料ガラス板GSの歪の程度を評価するために、レタデーション(Retardation:複屈折による位相差)の大きさ及びレタデーションの方位角を測定することができる。なお、レタデーションが大きい程、歪が大きいことを意味する。
【0059】
制御装置25は、架台22のスライド機構26が有する駆動装置(水平駆動装置、回動駆動装置)の動作、測定装置24が有する駆動装置の動作、及び歪測定に関する測定装置24(レーザ光照射部33及びレーザ光受光部34)の動作等を制御する。
【0060】
制御装置25は、例えば、CPU等の処理装置やメモリ等の記憶装置、ディスプレイ等の表示装置を備えたパーソナルコンピュータ(PC)である。制御装置25は、試料ガラス板GSの測定結果等を表示装置に出力することができる。また、制御装置25は、試料ガラス板GSの測定結果等のデータを記憶装置に保存することができる。
【0061】
以下、上記の製造装置によってガラス板Gを製造する方法について説明する。
【0062】
図8に示すように、ガラス板Gの製造方法は、成形工程S1と、冷却工程S2と、切断工程S3と、検査工程S4と、梱包工程S5と、採取工程S6と、評価工程S7と、を備える。
【0063】
図1に示すように、成形工程S1では、成形装置1によって溶融ガラスからガラスリボンGRを連続成形する。成形体8は、溶融ガラスをオーバーフロー溝から溢れ出させて、当該成形体8の両側の側壁面に沿って流下させる。さらに成形体8は、流下させた溶融ガラスを各側壁面の下端部で融合させる。これにより、所定の幅を有するガラスリボンGRが成形される。なお、成形体8は、スロットダウンドロー法などの他のダウンドロー法を実行するものであってもよい。
【0064】
冷却工程S2は、成形体8によって成形されたガラスリボンGRを徐冷炉5内で徐冷する徐冷工程と、徐冷工程後のガラスリボンGRをさらに冷却する冷却工程とを含む。徐冷工程では、徐冷炉5内に配されたローラ対7によって、ガラスリボンGRを下方に搬送する。徐冷炉5内では所定の温度勾配が設定されており、ガラスリボンGRは徐冷炉5内を通過することで徐冷される。徐冷工程後の冷却工程では、ガラスリボンGRは、徐冷されながら徐冷炉5の下方に配された冷却ゾーン6を通過する。
【0065】
切断工程S3は、第一切断工程及び第二切断工程を含む。第一切断工程では、第一切断装置2によってガラスリボンGRの中途部を幅方向Wに沿って切断することで、所定サイズのガラス板Gを切り出す。すなわち、第一切断工程では、下方に移動するガラスリボンGRの中途部にスクライブ装置によって幅方向に沿うスクライブ線SL1を形成し(スクライブ工程)、このスクライブ線SL1に沿ってガラスリボンGRの一部を折割ることで、枚葉状のガラス板Gを形成する(折割工程)。
【0066】
スクライブ工程において、スクライブ装置のホイールカッタは、降下中のガラスリボンGRに追従降下しつつ、ガラスリボンGRの幅方向Wにスクライブ線SL1を形成する。折割工程において、応力付与部10は、降下中のガラスリボンGRに追従降下しつつ、接触部9を支点としてガラスリボンGRを湾曲させるための動作(A1方向の動作)を行う。この応力付与部10の動作により、スクライブ線SL1に曲げ応力が付与される。その結果、ガラスリボンGRがスクライブ線SL1に沿って幅方向に折り割られ、ガラスリボンGRからガラス板Gが切り出される。
【0067】
図1及び図2に示すように、応力付与部10は、切り出されたガラス板Gを縦姿勢のままB方向に沿って搬送した後、受渡位置P1で第一搬送装置17にガラス板Gを受け渡す。受け渡し後、応力付与部10は、ガラス板Gの幅方向W両端部の保持を解除すると共に、ガラスリボンGRから次のガラス板Gを切り出すために、切り出しを開始する前の位置に戻る。第一搬送装置17はガラス板Gを保持した状態で、受渡室11内に待機する第二搬送装置18へと移動する。第二搬送装置18は、第一搬送装置17からガラス板Gを受け取ると、主搬送経路3aに沿ってガラス板Gを搬送する。
【0068】
第二切断工程は、切断室12内において、第二搬送装置18によって縦姿勢に保持されるガラス板Gに対して、第二切断装置によって不要部Gxを除去する工程である。第二切断工程では、第二切断装置のスクライブ装置によってガラス板Gにスクライブ線SL2を形成し(スクライブ工程)、その後、折割装置によってガラス板Gの不要部Gxを折割る(折割工程)。切断工程S3が終了すると、第二搬送装置18は、不要部Gxが除去されたガラス板Gを検査室13へと搬送する。
【0069】
検査工程S4は、切断工程S3によって形成されたガラス板Gに含まれる欠陥を検出し、この欠陥に基づいて各ガラス板Gの良否を検査する工程である。検査設備20の撮像装置は、第二搬送装置18によって縦姿勢に保持されたガラス板Gを撮像し、その画像データを取得する。
【0070】
検査設備20の検査装置は、撮像装置によって取得された画像データに基づき、ガラス板Gに含まれる欠陥を検出する。検査装置は、例えば、ガラス板Gの欠陥情報として、ガラス板Gの偏肉(板厚)、筋(脈理)、欠陥の種類(例えば、泡、異物など)、位置(座標)、大きさ、各欠陥の個数などを検出することができる。
【0071】
検査装置は、検出した欠陥を所定の判定基準によって判定し、ガラス板Gの合否を決定する。検査に合格したガラス板Gは、第二搬送装置18によって梱包室14に搬送される。
【0072】
梱包工程S5において、第三搬送装置19は、第二搬送装置18から受け取ったガラス板Gを縦姿勢で保持し、パレットCに搬送する。ガラス板Gは、シート供給装置によって保護シートが重ねられた状態でパレットCに積載される。なお、複数の第三搬送装置19により複数のパレットCに同時にガラス板Gを積載するようにしてもよい。所定数のガラス板GがパレットCに積載されることで、パレットC上にガラス板積層体が構成される。その後、ガラス板G積層体を保護するための保護カバーや位置規制部材がパレットCに取り付けられる。これにより、ガラス板梱包体が製造される。
【0073】
採取工程S6では、第二搬送装置18は、受渡室11において第一搬送装置17から受け取ったガラス板Gを分岐搬送経路3bの採取室15に搬入する。第三切断装置のスクライブ装置は、採取室15に搬入されたガラス板Gにスクライブ線SL3を形成する(図3参照)。その後、第三切断装置の折割装置は、ガラス板Gの不要部Gxを、スクライブ線SL3に沿って折割ることでガラス板Gから分離させる。このように不要部Gxをガラス板Gから除去することで、試料ガラス板GSが形成される。試料ガラス板GSは矩形状であり、一辺が2000mm以上3400mm以下であることが好ましい。試料ガラス板GSの一辺の長さの下限値は、より好ましくは2100mm以上、さらに好ましくは2200mm以上である。試料ガラス板GSの一辺の長さの上限値は、より好ましくは3200mm以下、さらに好ましくは3000mm以下である。その後、試料ガラス板GSは、測定室へと搬送される。
【0074】
評価工程S7では、測定室の歪測定機21によって試料ガラス板GSの歪を測定し、その良否を評価する。図9に示すように、評価工程S7は、測定工程S71と、選択工程S72と、演算工程S73と、算出工程S74と、を備える。
【0075】
測定工程S71では、図4に示すように、架台22の一端部側において傾斜状態で待機する載置台23に、測定室に搬送された試料ガラス板GSを載置する。具体的には、例えば作業者がバキュームリフト等の吸引保持具を用いて試料ガラス板GSを保持した後、この試料ガラス板GSを載置台23に載置する。これにより、試料ガラス板GSは、その下端部が載置台23の受け部29に接触した状態で傾斜状に支持される。
【0076】
その後、図5に示すように、制御装置25は、スライド機構26の回動駆動装置を作動させて、回動軸27を中心に載置台3を回動させる。これにより、載置台23の姿勢は、傾斜状態から水平状態に変更され、試料ガラス板GSは、この載置台23によって水平状に支持された状態となる。
【0077】
測定工程S71において、歪測定機21は、制御装置25の制御によって載置台23と測定装置24とを相対的に移動させることで、試料ガラス板GSの測定を行う。
【0078】
測定工程S71では、歪測定機21により、試料ガラス板GSに複数の測定点が設定される。歪測定機21の測定装置24は、試料ガラス板GSに設定される測定点に対して、レタデーションの大きさ及びレタデーションの方位角を測定する。測定結果は、制御装置25のディスプレイに表示される。
【0079】
図10は、制御装置25に表示される試料ガラス板GSを示す。試料ガラス板GSは、幅方向Wにおける端部(左右の辺)Ga,Gbと、板引き方向Dにおける端部Gc,Gdとを有する。試料ガラス板GSには、複数の測定点MPが複行複列に設定されている。複数の測定点MPにおいて、隣り合う測定点MPの相互間の距離は、30mm以上200mm以下であることが好ましい。隣り合う測定点MPの相互間の距離の下限値は、より好ましくは50mm以上であり、さらに好ましくは80mm以上である。隣り合う測定点MPの相互間の距離の上限値は、より好ましくは150mm以下であり、さらに好ましくは120mm以下である。
【0080】
制御装置25のディスプレイには、各測定点MPと重なるように、歪測定機21で測定されたレタデーションの大きさ及び方位角が表示される。図11に示すように、レタデーションの大きさ及び方位角は、円CRと直線L1とを組み合わせた図形により表示される。この図形は、レタデーションRの大きさを円CRの直径Aで表し、レタデーションRの方位角を円CRの中心(測定点MP)を通る直線L1の角度θで表す。
【0081】
レタデーションRの方位角θは、試料ガラス板GSの幅方向Wに対して直線L1が為す角度である。図11では、試料ガラス板GSの幅方向Wに沿う基準線BLを仮想的に示している。レタデーションRの方位角θは、直線L1と基準線BLとが為す角度として表示される。基準線BLは、制御装置25のディスプレイに表示されなくてもよい。
【0082】
選択工程S72は、板引き方向Dに沿う複数の測定点MPから一部の測定点MPを選択する工程である。本実施形態では、制御装置25は、複行複列に配された測定点のうち、板引き方向Dに沿う一列ごとに測定点MPを選択する。すなわち、図12に示すように、制御装置25は、複数の列を構成する測定点MPからその一部である第M列に属する測定点MPaを選択することができる。同様に制御装置25は、複数の列を構成する測定点MPからその一部である第N列に属する測定点MPbを選択することができる。制御装置25は、試料ガラス板GSに設定される全ての列について、一列ごとに、測定点MPを選択することができる。
【0083】
演算工程S73は、選択工程S72で選択された測定点MPに係るレタデーションRの大きさA及び方位角θに基づいて、換算歪Zを演算する工程である。
【0084】
換算歪Zは、試料ガラス板GSの幅方向Wの端部Ga,Gbから測定点MPまでの距離が100mm未満である場合には、Z=-|Acosθ|+|Asinθ|で表される。換算歪Zは、試料ガラス板GSの幅方向Wの端部Ga,Gbから測定点MPまでの距離が100mm以上である場合には、Z=|Acosθ|-|Asinθ|で表される。
【0085】
ここで、本発明者の知見によれば、試料ガラス板GSの幅方向Wの端部Ga,Gbから測定点MPまでの距離が100mm未満である場合には、|Acosθ|は、圧縮応力に起因する歪の成分(圧縮歪)を示し、|Asinθ|は、引張応力に起因する歪の成分(引張歪)を示す。一方で、試料ガラス板GSの幅方向Wの端部Ga,Gbから測定点MPまでの距離が100mm以上である場合には、|Acosθ|は、引張応力に起因する歪の成分(引張歪)を示し、|Asinθ|は、圧縮応力に起因する歪の成分(圧縮歪)を示す。
【0086】
算出工程S74において、制御装置25は、板引き方向Dに沿って一列に配される複数の測定点MPにおける換算歪Zの中から、その最大値Zmax及びその最小値Zminに基づいて、その列に属する測定点MPにおける歪の代表値Zaを算出する。本実施形態において、歪の代表値Zaは、Za=Zmax+Zminで表される。
【0087】
評価工程S7において、制御装置25は、算出工程S74で算出した歪の代表値Zaを、板引き方向Dにおいて一列に配された複数の測定点MPに係る歪の代表値Zaとし、各列における歪の状態をこの代表値Zaに基づいて評価することができる。
【0088】
制御装置25は、各列における歪の代表値Zaに基づいて、試料ガラス板GSの幅方向Wにおける歪の状態を評価することができる。制御装置25は、評価結果をグラフ化してディスプレイに表示することができる。図13は、歪の評価結果を示すグラフである。このグラフは、縦軸に歪の大きさを示し、横軸に試料ガラス板GSの幅方向Wにおける測定位置(測定点MP)、すなわち、幅方向Wに沿って間隔をおいて設定された測定点MPにおける複数の列の位置を示している。このグラフの縦軸における正の値は圧縮歪を意味し、負の値は引張歪を意味する。
【0089】
評価工程S7によって得られた評価結果は、例えば冷却工程S2の徐冷工程にフィードバックされる。この場合において、徐冷工程では、歪の代表値Zaを含む評価結果に基づき、ガラスリボンGRの歪が抑制されるように、徐冷炉5の温度分布を制御することができる。
【0090】
制御装置25は、上記の演算工程S73の他に、以下のような第二の演算工程を実行することが可能である。
【0091】
第二の演算工程において、制御装置25は、試料ガラス板GSに設定される複行複列の測定点MPのうち、各列に含まれる測定点MPにおける換算歪の代表値Zaとし、その列における歪の最大値Zmaxを採用して、歪の評価を行うことができる。
【0092】
第二の演算工程において、制御装置25は、板引き方向Dに沿って一列に配される複数の測定点MPにおける換算歪Zの平均値をその代表値Zaとし、歪の評価を行うことができる。
【0093】
第二の演算工程において、制御装置25は、図14に示すように、板引き方向D又は幅方向Wに対して所定の角度を為すように傾斜した基準線BLに基づいて、歪の評価を行うことができる。この演算工程では、例えばレタデーションRの方位角を示す直線L1が、基準線BLの角度よりも大きい場合には、引張歪よりも圧縮歪が大きい傾向が試料ガラス板GSに生じていると評価することができる。また、レタデーションRの方位角を示す直線L2が、基準線BLの角度よりも小さい場合には、引張歪が圧縮歪よりも大きい傾向が試料ガラス板GSに生じていると評価することができる。
【0094】
第二の演算工程では、矩形状の試料ガラス板GSの端部Ga~Gd、すなわち四辺の近傍位置の測定点MPのみの換算歪Zからその代表値Zaを算出し、歪の評価を行うことができる。
【0095】
なお、ガラス板G(試料ガラス板GS)の板引き方向Dは、例えば、暗室でガラス板Gの角度を調整しながら光源(例えばキセノンライト)から光を照射し、その透過光をスクリーンに投影することで、筋状の縞模様として観測できる。従って、第二切断工程後のガラス板Gの状態、又は採取工程S6後の試料ガラス板GSの状態であっても、成形時の板引き方向Dを特定できる。
【0096】
以上説明した本実施形態に係るガラス板Gの製造方法によれば、評価工程S7において、板引き方向Dに沿って試料ガラス板GSに設定される複数の測定点MPにおける歪の代表値Zaを算出することで、試料ガラス板GSに対して複行複列に設定された複数の測定点MPに関する歪の評価を、列ごとに行うことができる。これにより、各列に属する複数の測定点MPに係る歪を個別に評価する場合と比較して、試料ガラス板GSに係る歪の評価を効率良く行うことが可能となる。
【0097】
オーバーフローダウンドロー法によってガラス板Gを製造する場合、板引き方向Dにおけるガラス板Gの歪の変化の度合いは、幅方向Wにおける歪の変化の度合いよりも小さくなる。このため、上記のように板引き方向Dに沿う各列に属する測定点MPの歪の代表値Zaを使用した場合であっても、ガラス板Gの幅方向Wにおける歪の評価を適切に行うことが可能である。
【0098】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0099】
上記実施形態では、試料ガラス板GSを採取室15内で採取したが、これに限定されない。切断工程S3及び検査工程S4を経たガラス板Gを、梱包室14内で試料ガラス板GSとして採取しても良い。
【符号の説明】
【0100】
5 徐冷炉
24 測定装置
D ガラス板の板引き方向
G ガラス板
G2 試料ガラス板
GR ガラスリボン
MP 測定点
S1 成形工程
S3 切断工程
S6 採取工程
S7 評価工程
S71 測定工程
S72 選択工程
S73 演算工程
S74 算出工程
R レタデーション
W ガラス板の幅方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14