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特開2024-68388防汚ゴム及びこれを利用した船舶、海洋構造物等
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068388
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】防汚ゴム及びこれを利用した船舶、海洋構造物等
(51)【国際特許分類】
   C08L 7/00 20060101AFI20240513BHJP
   E02B 1/00 20060101ALI20240513BHJP
   C08K 5/01 20060101ALI20240513BHJP
   C08L 95/00 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
C08L7/00
E02B1/00 301Z
C08K5/01
C08L95/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178796
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】594001801
【氏名又は名称】株式会社ミカサ
(74)【代理人】
【識別番号】100121795
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴亀 國康
(72)【発明者】
【氏名】末藤 純平
(72)【発明者】
【氏名】北本 紘平
(72)【発明者】
【氏名】横垣 賢司
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AC011
4J002AG002
4J002EA066
4J002FD140
4J002FD150
4J002GN00
(57)【要約】
【課題】 水環境下で使用される天然ゴムを利用した防汚ゴムであって海洋構造物等の被覆のみならずそれ自体が海洋構造物等としても使用することができるとともに、天然ゴムの特性を利用した防汚ゴム及びこれを利用した海洋構造物等を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明に係る防汚ゴムは、コールタールを配合した天然ゴムを熱加硫してなる。本防汚ゴムは被覆材として利用することにより、防汚性を有する船舶及びその機器、発電プラントの冷却設備、または海洋構造物などを形成することができる。また、本発明に係る防汚ゴムを用いて、海水中で使用される機械・器具を形成することができる。例えば、強化繊維を内在させた防汚ゴム製の潜水用器具を形成することができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コールタールを配合した天然ゴムを熱加硫してなる防汚ゴム。
【請求項2】
コールタールの配合量は、5部から30部であることを特徴とする請求項1に記載の防汚ゴム。
【請求項3】
熱加硫の温度は、125℃から155℃であることを特徴とする請求項1又は2に記載の防汚ゴム。
【請求項4】
天然ゴムの表面に多環芳香族炭化水素を含有するブルームを有してなる防汚ゴム。
【請求項5】
多環芳香族炭化水素は、ナフタレンが主たる成分であることを特徴とする請求項4に記載の防汚ゴム。
【請求項6】
コールタールを配合した天然ゴムを熱加硫により被覆してなる船舶及びその機器、発電プラントの冷却設備、または海洋構造物。
【請求項7】
強化繊維を内在させたコールタール配合の天然ゴムを熱加硫してなる海水中で使用される機械・器具。
【請求項8】
コールタール配合の天然ゴムの表面に多環芳香族炭化水素を含有するブルームを形成し、これを海水環境下においてバイオフィルムを形成させてなるフジツボの防汚方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水環境下で使用される防汚ゴムに係り、特に天然ゴムにコールタールを配合してなる防汚ゴム及びこれを利用した船舶、海洋構造物等に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶、漁網、発電プラントの冷却設備、ブイ等の海洋構造物などの海洋において使用され、または海水を利用する海洋構造物等においては、フジツボ、ムラサキイガイ等の海洋生物の付着によるその機能低下や損傷を抑制するために、種々の防汚材が使用され、また提案されている。近年は環境保護を重点においた新しい観点からの防汚材が提案されている。これらの提案には、海洋生物が忌避する又はこれを殺傷する直接的な防汚材、あるいは海洋構造物等に形成されるバイオフィルムの特徴・組成を利用した防汚材がある。
【0003】
特許文献1に、ゴム又は樹脂からなる一次層上に、弾性高分子材料に水膨潤剤を配合した2次層を被覆したことを特徴とする防汚機能を併せ持つ防食材が提案されている。この防食材において、一次層を形成するゴム又は樹脂、二次層を形成する弾性高分子材料は、天然ゴム、合成ゴムが挙げられ、水膨潤剤は高吸水性樹脂が好ましくポリアクリル酸塩系の高分子が挙げられる。海洋構造物や港湾構造施設等の金属表面に本防食材を接着することにより、一次層により金属表面が海水から隔離されて腐食が防止され、二次層により貝類、海草、藻等の各種生物の付着を防止できるとされる。
【0004】
また、特許文献2に、水流路に、海洋生物の付着を抑制する、またはバイオフィルムの形成を抑制する方法であって、前記水流路を流れる水に、CO2マイクロバブルと塩素とを注入する工程を含む抑制方法が提案されている。この発明における水流路は、バイオフィルムが形成する水流路であって、熱交換流水路を含む水の少なくとも一部が海水の流れる水流路であとされる。そして、海洋生物は、例えば、バイオフィルムを形成し得る微生物であって、細菌類、真菌類、付着珪藻及び原生動物や、フジツボ類、多毛類、ホヤ貝、二枚貝類、コケムシ類、ヒドロ虫類等の微生物が対象であるとされる。
【0005】
特許文献3に、i)シュードモナス(Pseudomonas)環境株PF-11の細胞を培養することと、ii)上澄み液を回収することとを含む細菌上澄み液を調製する方法に係る発明が提案されている。この細菌上澄み液と担体とを含む組成物により、船舶等の海洋構造物に付着するバイオフィルムの量を減少させることができ、または少なくとも藻類、ウニ、フジツボ、またはコケムシ個中などが海洋構造物の表面へ付着するのを減少させることができるとされる。
【0006】
特許文献4に、ステノトロフォモナス(Stenotrophomonas)属またはオクロバクトラム(Ochrobactrum)属に属するバイオフィルムを産生する微生物が含有されてなる塗料が提案されている。この塗料が塗布された船舶、橋梁などの水中構造物においては、その塗膜中に微生物が生存状態で固定されているので海水中においてバイオフィルムが産生され、フジツボ、イガイ、カキ、ヒドロ虫、コケムシなどの海洋生物の付着を防止できるとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8-336934号公報
【特許文献2】特開2012-228627号公報
【特許文献3】特表2018-524021号公報
【特許文献4】特開2008-220272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
防汚材の使用形態は種々ある。例えば、特許文献1に記載の防汚材のように防汚作用を有する組成物が被覆材に含有され、特許文献2に記載の防汚材のようにガスとして海水中に流入され、また特許文献3又は4に記載の防汚材のように海洋構造物等に塗布されて使用される。塗布又は被覆は、防汚材の使用方法において主たる使用方法であるが、防汚材自体が海洋構造物等として使用することができれば、防汚材の使用形態はさらに広がり好ましい。
【0009】
本発明は、海水環境下で使用される天然ゴムを利用した防汚ゴムであって海洋構造物等の被覆のみならずそれ自体が海洋構造物等としても使用することができるとともに、天然ゴムの特性を利用した防汚ゴム及びこれを利用した海洋構造物等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る防汚ゴムは、コールタールを配合した天然ゴムを熱加硫してなる。
【0011】
上記発明において、コールタールの配合量は、5部から30部であるのがよく、熱加硫の温度は125℃から155℃であるのがよい。
【0012】
また、本発明に係る防汚ゴムは、天然ゴムの表面に多環芳香族炭化水素を含有するブルームを有してなる。
【0013】
上記発明において、多環芳香族炭化水素は、ナフタレンが主たる成分であるのがよい。
【0014】
上記本発明に係る防汚ゴムは、被覆して防汚性を有する船舶及びその機器、発電プラントの冷却設備、または海洋構造物を形成することができる。また、この防汚ゴムは、強化繊維を内在させたコールタール配合の天然ゴムを熱加硫することによりそれ自体が防汚機能を有する海水中で使用される機械・器具を形成することができる。
【0015】
また、本発明に係るフジツボの防汚方法は、コールタール配合の天然ゴムの表面に多環芳香族炭化水素を含有するブルームを形成し、これを海水環境下においてバイオフィルムを形成させてなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る防汚ゴムは、素材が天然ゴムであるから熱加硫によりこれを海洋構造物に接着又は被覆することができる。また、この防汚ゴムは、それ自体が防汚性を有する海洋構造物等として使用することができる。そして、本発明に係る防汚ゴムは、コールタールが配合された天然ゴムの熱加硫により生ずるナフタレン等が含まれるブルームによって防汚作用を発揮することができ、また使用中にブリードするナフタレン等により防汚作用を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る防汚ゴム表面のGC-MS測定結果を示す図面である。
図2図1のGC-MS測定結果による成分解析結果を示す図面である。
図3】海水浸漬試験をした本発明に係る防汚ゴム表面のGC-MS測定結果を示す図面である。
図4】海水浸漬試験をした本発明に係る防汚ゴム表面の海水付着生物例を示す写真である。
図5】海水浸漬試験をした本発明に係る防汚ゴム表面をメチレンブルー染色をした顕微鏡像である。
図6】本発明に係る防汚ゴムの海水浸漬試験結果を示す図面である。
図7】本発明に係る防汚ゴムの海水浸漬試験結果を示す他の図面である。
図8】本発明に係る防汚ゴムの海水浸漬試験により形成されたバイオフィルムの重量と配合コールタールの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、発明を実施するための形態について説明する。本発明は、海水環境下で使用される防汚ゴムであり、コールタールを配合した天然ゴムを熱加硫してなる。その防汚ゴムを構成するコールタール及び天然ゴムは、特に限定されず市販のものを使用することができる。コールタールの配合量は、5部から30部であるのが好ましい。熱加硫温度は、125℃から155℃とすることができ、145℃から150℃が好ましい。熱加硫温度は、125℃未満であると加硫不足になり、155℃を超えると過加硫になるので好ましくない。
【0019】
本発明に係る防汚ゴムは、その表面にブルームを有しており、以下に示す成分を有している。このブルームの成分を調べるため、10部コールタール配合防汚ゴム(発明例)のブルーム、天然ゴム素材及びコールタール素材について、ヒューレットパッカード社製のガスクロマトグラフ質量分析装置を使用してSPME-GC-MS法により測定(GC-MS測定試験)を行った。その測定結果を図1に示す。図1において、aが発明例に係るブルーム、bが天然ゴム素材、cがコールタール素材のスペクトル(ピーク)である。また、図1の各ピーク番号は、図2に示す同番号の多環芳香族炭化水素を示している。上記「部」は重量部をいう。
【0020】
図1において、コールタール素材は1番~10番の各ピークとも最も高いピークを示している。発明例のブルームは、2番(ナフタレン)のピークが最も高く、ナフタレンがブルームの主たる成分であることを示している。そして、発明例のブルームにおいて、1番(プロペニルベンゼン、10%)4番(2メチルナフタレン、17%)及び5番(1メチルナフタレン、20%)のピークが高く、高さは低いがその他の全てのピークにおいて観察される。これにより、発明例のブルームの成分はコールタールに由来することが分かる。天然ゴム素材は、2番ピークにおいてのみ観察され、ピーク高さはホールドアップタイムを示すピーク高さと同等である。なお、ホールドアップタイムを示すピークにおいては、発明例、天然ゴム素材及びコールタール素材のピークが重なっており、発明例のピークが最も高く表れている。上記発明例のブルームにおける(%)は、ナフタレンのスペクトルのピーク高さに対するブルームのスペクトルのピーク高さの割合を示す。
【0021】
ブルームの成分は、図2に示すように、ナフタレンをはじめ二環系又は三環系の多環芳香族炭化水素であり、これらの多環芳香族炭化水素の平均分子量は145.69である。この図2に示す多環芳香族炭化水素は、排ガス中に含まれる多環芳香族炭化水素に近い成分になっている(排気ガス中の多環芳香族炭化水素(PAHs)の測定方法マニュアル 平成23年3月、環境省 水・大気環境局 大気環境課、表2-1-1 測定対象とするPAHsの検出下限の目安)。しかしながら、これらの多環芳香族炭化水素は褐炭を1123K(850℃)で水蒸気ガス化させて得られたタールのGC/MS測定結果と異なっている(タール分析の紹介(その1)、則定和志他 IHI REVIEW/2016/04.No.55 p14~p20、株式会社IHI検査計測)。この文献の表3に示されるGC/MS測定結果によると、二環系から七環系の多環芳香族炭化水素を含み、タール成分の分子量は約300を中心として主に150~600の範囲に分布するとされる。
【0022】
図3に、海水に4週間浸漬した10部(phr)コールタール防汚ゴム試験片(発明例、図7の4週間海水浸漬試験片に相当)について、上記同様にSPME-GC-MS法による測定をした結果を示す。上段が発明例、下段が天然ゴム素材の比較例である。図3に示すように、発明例はナフタレン(丸印部)が検出されており、海水浸漬中に試験片からナフタレンがブリードしていると解される。一方、比較例の場合にはナフタレンが検出されなかった。
【0023】
上記図3に示す防汚ゴムの表面を肉眼観察及び顕微鏡観察を行った結果を図4及び図5に示す。顕微鏡は、株式会社ニコン製 Nikon ECLIPSE 80i のカメラ付属顕微鏡を使用した。肉眼観察によると、試験片の全体にヌメリが観察され、図4に示すようにゴカイ(クロ矢印)、フジツボ(白矢印)、またはコケムシも観察された。上記ヌメリをカバーガラスによりかき取った粘液状物質について顕微鏡観察を行った。図5に、粘液状物質をメチレンブルー染色した顕微鏡像の例を示す。粘液状物質の顕微鏡像によると、多種の短桿菌が多数観察され、短桿菌で満たされていた。粘液状物質は、多糖体・タンパク質等から構成される細胞外マトリックスによって凝集された細菌群の一種のバイオフィルムであると解される。また、顕微鏡観察によると、ケラチウム属、珪藻などの植物プランクトン、甲殻類の一種、カビのような細長い糸状の微生物、運動性の未同定動物も散見された。
【0024】
図6図8は、本願発明に係る防汚ゴムにおいて、天然ゴムに配合するコールタールの配合割合の影響を調べた海水浸漬試験の結果を示す。試験は、5部、10部及び30部コールタール配合ゴムと、比較のための天然ゴム素材(基準)について行った。海水浸漬は、瀬戸内海広島県呉市沖合20mの海水中2mの深さに浸漬して行った。図6及び図7に示す四角枠は、試験片の形状を示し、縦×横が185×107(mm)である。図7の枠中に示すH印は、20mmの基準長さを示す。枠中の丸状物は、試験片において観察されるフジツボの外形及び配置を示し、試験片の観察写真から写し取ったフジツボのスケッチ図である。図8は、3週間海水浸漬した試験片のコールタールの配合量とバイオフィルムの重量との関係を示すグラフである。バイオフィルムは、プラスチックさじで掻き取って採取した。バイオフィルムの重量Wは、天然ゴム素材、10部及び30部コールタール配合ゴムについて、それぞれ11.8mg、24.1mg、198.4mgであった。試験の初日の気温27℃、海水温25℃であり、終日の気温21℃、海水温23℃であった。
【0025】
図6及び図7によると、フジツボの付着状態は、コールタール配合天然ゴムと天然ゴム素材とは明らかに異なり、コールタール配合天然ゴムはフジツボに対し防汚性を有することが分かる。コールタール配合天然ゴムは、フジツボの付着を阻止するとともに、フジツボ群の巨大化を阻止している。また、コールタールの配合量が高い方が防汚性に優れることが分かる。しかし、5部コールタール配合天然ゴムの場合は、8週間から10週間の浸漬後からフジツボの巨大化が始まっている。一方、10部又は30部コールタール配合天然ゴムは10週間経過後においてもフジツボ数は少なく、巨大化は始まっていないように観察される。
【0026】
図8によると、コールタール配合量phr(重量部)とバイオフィルムの重量(w)は、ln (w)=k×phr なる関係を有していることが分かる。かかる関係は、例えば、Pseudoalteromonas属細菌の静置培養と振とう培養による増殖形態を表した図5(海水環境でバイオフィルムを形成するPseudoalteromonas属細菌に見られるユニークな微生物学的特性―水質浄化機能と栽培漁業への貢献の可能性、飯島沙織他、日本海水学会誌第66巻第4号(2012)p186-p190)の培養時間と培養液濁度との関係を表す曲線の最初の直線的増殖部分によく似ている。すなわち、コールタール配合量phrに対するバイオフィルムの重量増加の形態は、培養時間に対するPseudoalteromonas属細菌の増殖形態に似ている。コールタール配合天然ゴムには、海水浸漬によりフジツボ防汚性を有するバイオフィルムが形成されるものと解される。なお、天然ゴム素材においても海水浸漬によりヌメリが観察され、バイオフィルムが形成されているものと解される。しかし、海水浸漬により本防汚ゴムに形成されるバイオフィルムと天然ゴム素材に形成されるバイオフィルムとは性状が異なるように解される。
【0027】
表1は、コールタール配合天然ゴムと天然ゴム素材(基準)に関する海水浸漬試験と、加工性の試験結果をまとめた表である。コールタール配合天然ゴムは、コールタール配合量が多くなると加工性が低下し、特に31部コールタール配合の天然ゴムは加工が困難になる。防汚性及び加工性の観点からは、コールタール配合天然ゴムのコールタールの配合量は、5phr(部)から30phr(部)が好ましい。またコールタール配合量は多いほど好ましい。しかし、図6及び図7図8に示す結果を対比すると、バイオフィルムの重量増加量に対する防汚性の増加の程度(防汚性効果率)は、コールタールの5部から10部の範囲が、コールタイル10部から30部の範囲より高い。コールタイル10部から30部の範囲は、防汚性効果率が次第に低下して、飽和状態になることも予想される。
【0028】
【表1】
【0029】
以上、本発明に係る防汚ゴムについて説明した。本防汚ゴムは、熱加硫により金属及びプラスチックに接着し、被覆することができるので被覆材として利用することができる。本防汚ゴムは被覆材として利用することにより、防汚性を有する船舶及びその機器、発電プラントの冷却設備、または海洋構造物などを形成することができる。また、本発明に係る防汚ゴムを用いて、海水中で使用される機械・器具を形成することができる。例えば、強化繊維を内在させた防汚ゴム製の潜水用器具を形成することができる。強化繊維又は網状体が防汚ゴムにサンドイッチされたものであってもよい。また、強化繊維又は網状体を心材とした防汚ゴムであってもよい。
【0030】
本発明に係る防汚ゴムは、コールタールを配合した天然ゴムを熱加硫してなることが特徴である。しかしながら、コールタール配合のNBR合成ゴム、シリコーンゴム又はフッ素ゴムを熱加硫して作製した試験片について、上記図6又は図7と同様の海水浸漬試験を行った場合、防汚性は天然ゴム素材試験片(基準)と同様に観察されなかった。また、天然ゴムにアスファルトを配合したものを熱加硫してなるもの、天然ゴムにナフタレン(試薬)を配合したものを熱加硫してなるもの、または天然ゴムをコールタールにどぶ漬けしたものの上記同様の海水浸漬試験においても、防汚性は天然ゴム素材試験片(基準)と同様に観察されなかった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8