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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068389
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】減速装置選定支援装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/00 20060101AFI20240513BHJP
   B25J 17/00 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
B25J19/00 Z
B25J17/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178797
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】田中 光晴
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707BS12
3C707CX01
3C707CX03
3C707DS01
3C707JS03
3C707JU02
3C707JU14
3C707KT17
3C707MT08
(57)【要約】
【課題】減速装置の選定を支援する技術を提供する。
【解決手段】減速装置選定支援装置100は、減速装置の種別を特定可能な情報に対応付けて、当該減速装置の特性情報であって、当該減速装置の状況変化に応じて変化する特性情報を記憶する記憶部と、ロボットの仕様情報を受け付ける第1受付部121と、ロボットの各関節に組み込む減速装置の指定を受け付ける第2受付部122と、指定された減速装置を各関節に組み込んだロボットの挙動を解析する解析部127と、解析結果をユーザに提供する結果提供部129と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
減速装置の種別を特定可能な情報に対応付けて、当該減速装置の特性情報であって、当該減速装置の状況変化に応じて変化する特性情報を記憶する記憶部と、
ロボットの仕様情報を受け付ける第1受付部と、
前記ロボットの各関節に組み込む減速装置の指定を受け付ける第2受付部と、
指定された減速装置を各関節に組み込んだ前記ロボットの挙動を解析する解析部と、
解析結果をユーザに提供する結果提供部と、
を備える減速装置選定支援装置。
【請求項2】
前記解析部は、前記第2受付部が受け付けた指定に合致する減速装置が複数存在する場合、複数の減速装置について解析し、解析結果を提供する請求項1に記載の減速装置選定支援装置。
【請求項3】
挙動を解析したい前記ロボットの動作を受け付ける第3受付部を備える請求項1に記載の減速装置選定支援装置。
【請求項4】
本減速装置選定支援装置は、単一の装置により構成されている請求項1に記載の減速装置選定支援装置。
【請求項5】
前記減速装置は、減速機とモータが連結されたギヤモータであり、前記記憶部は当該減速機および当該モータの特性情報を記憶している請求項1に記載の減速装置選定支援装置。
【請求項6】
前記第1受付部は、予め準備されたロボットのテンプレートを変更する形で入力されたロボットの仕様情報を受け付ける請求項1に記載の減速装置選定支援装置。
【請求項7】
減速装置の種別を特定可能な情報に対応付けて、当該減速装置の特性情報であって、当該減速装置の状況変化に応じて変化する特性情報を記憶する記憶部と、
ロボットの仕様情報を受け付ける第1受付部と、
実現させたい前記ロボットの挙動情報を受け付ける第4受付部と、
前記第4受付部が受け付けた挙動を実現するのに適した減速装置を前記記憶部に記憶される減速装置の中から選定する選定部と、
選定結果を提供する結果提供部と、
を備える減速装置選定支援装置。
【請求項8】
前記選定部は、前記記憶部に記憶される複数の減速装置のそれぞれを関節に組み込んだ前記ロボットの挙動を解析して選定する請求項7に記載の減速装置選定支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減速装置選定支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の関節部に減速装置が組み込まれたロボットが知られている。例えば特許文献1には、偏心揺動型の減速機が関節部に組み込まれたロボットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-263878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロボットの設計時には各関節に組み込む減速装置の選定を行うが、この選定には非常に手間が掛かっている。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、減速装置の選定を支援する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の減速装置選定支援装置は、減速装置の種別を特定可能な情報に対応付けて、当該減速装置の特性情報であって、当該減速装置の状況変化に応じて変化する特性情報を記憶する記憶部と、ロボットの仕様情報を受け付ける第1受付部と、ロボットの各関節に組み込む減速装置の指定を受け付ける第2受付部と、指定された減速装置を各関節に組み込んだロボットの挙動を解析する解析部と、解析結果をユーザに提供する結果提供部と、を備える。
【0007】
本発明の別の態様もまた、減速装置選定支援装置である。この装置は、減速装置の種別を特定可能な情報に対応付けて、当該減速装置の特性情報であって、当該減速装置の状況変化に応じて変化する特性情報を記憶する記憶部と、ロボットの仕様情報を受け付ける第1受付部と、実現させたいロボットの挙動情報を受け付ける第4受付部と、第4受付部が受け付けた挙動を実現するのに適した減速装置を記憶部に記憶される減速装置の中から選定する選定部と、選定結果を提供する結果提供部と、を備える。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、減速装置の選定を支援する技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施の形態の減速装置選定支援システムの構成を示す模式図である。
図2図1の減速装置選定支援装置の機能および構成を示すブロック図である。
図3図2の画面提供部が提供する選定支援画面の一例を示す図である。
図4】ユーザに提供する解析結果の一例を示す図である。
図5】ユーザに提供する解析結果の別の例を示す図である。
図6】ユーザに提供する解析結果のさらに別の例を示す図である。
図7】第2の実施の形態の減速装置選定支援装置の機能および構成を示すブロック図である。
図8図7の画面提供部が提供する選定支援画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、工程には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0012】
まず、本発明に至った経緯を説明する。ロボットの設計時には各関節に組み込む減速装置の選定を行う。減速装置の選定では、シミュレーションにより、候補となる減速装置が関節に組み込まれたロボットに、所定の動作を行わせたときの挙動を解析する。その際に必要となる減速装置の特性情報はカタログに記載されているが、減速装置の特性情報は減速装置の摩擦発熱によって変化する温度や回転速度などの影響を受けるところ、カタログに記載されている特性情報はそれらの影響を考慮していない。ユーザ自らが減速装置の実機を用いて温度や回転速度などの影響を考慮した特性情報を特定することも考えられるが、ユーザにかかる負担がおおきく、工数も増大する。このように減速装置の選定には手間がかかる。本発明は、このような知見に基づき、減速装置の選定を支援するためになされた。
【0013】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態を詳細に説明する前に概要を説明する。第1の実施の形態は、ロボットの関節に組み込む減速装置の選定を支援する技術に関する。第1の実施の形態の減速装置選定支援装置は、選定支援画面をユーザ端末に提供する。ユーザ端末は、選定支援画面に対する入力をユーザから受け付ける。選定支援画面に対する入力には、設計中のロボットの仕様情報、そのロボットの関節に組み込みたい減速装置(型番または仕様)の指定、挙動を解析するそのロボットの動作、が含まれる。減速装置選定支援装置は、それらの入力を受け付ける。
【0014】
減速装置選定支援装置は、受け付けた仕様のロボットであって、指定された減速装置が関節に組み込まれたロボットに、受け付けた動作を実行させたときの挙動をシミュレーションにより解析する。ここで、減速装置選定支援装置は、複数の減速装置のそれぞれについての特性情報であって、状況(例えば温度、回転数など)の変化に応じて変化する特性情報(摩擦、角度伝達誤差など)を記憶している。例えば、特性情報としての摩擦は、少なくとも温度および回転数を変数とする関数として記憶されている。このため、減速装置選定支援装置は、減速装置の状況変化を考慮した精度の高い解析を行える。減速装置選定支援装置は、そのようにして解析された解析結果をユーザ端末に提供する。ユーザは、この解析結果を減速装置の選定の参考にできる。
【0015】
図1は、第1の実施の形態の減速装置選定支援システム10の構成を示す模式図である。減速装置選定支援システム10は、減速装置選定支援装置100と、ユーザ端末200と、を備える。減速装置選定支援装置100とユーザ端末200とは、インターネットなどのネットワークを介して接続される。
【0016】
減速装置選定支援装置100は、減速装置メーカ102が管理する情報処理装置である。減速装置メーカ102は、減速装置を製造する企業である。減速装置は、減速機またはギヤモータ(減速機とモータとが連結された装置)である。ここでの「減速装置メーカ102が管理する」には、減速装置メーカ102が直接的に管理する場合だけでなく、減速装置メーカ102から委託された企業が管理する場合も含まれる。
【0017】
減速装置選定支援装置100は、本実施の形態では単一の装置(筐体)により構成されるが、減速装置選定支援装置100の物理的な筐体数に制限はなく、複数台の装置の連携により実現されてもよい。
【0018】
ユーザ端末200は、ユーザ202が使用する情報処理端末であり、例えば一般的なPC、タブレット端末、スマートフォンである。ユーザ202は、特に限定されないが、典型的にはロボットメーカである。つまり、ユーザ202は、ロボットの関節に組み込む減速装置を選定するユーザである。
【0019】
図2は、減速装置選定支援装置100の機能および構成を示すブロック図である。ここに示す各ブロックは、ハードウエア的には、コンピュータのCPU(central processing unit)をはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウエア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウエア、ソフトウエアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、本明細書に触れた当業者には理解されるところである。図7のブロック図についても同様である。
【0020】
減速装置選定支援装置100は、通信部110と、データ処理部120と、記憶部130と、を含む。通信部110は、種々の通信プロトコルにしたがってユーザ端末200との通信処理を実行する。データ処理部120は、通信部110によって取得されたデータや記憶部130に記憶されたデータをもとにして各種のデータ処理を実行する。記憶部130は、あらかじめ用意された各種のデータや、通信部110やデータ処理部120から受け取ったデータを記憶する。
【0021】
記憶部130は、減速装置情報記憶部131を含む。減速装置情報記憶部131は、複数の減速装置のそれぞれについて、減速装置を一意に識別するための減速装置IDと、減速装置の種別を特定可能な情報(以下、種別特定情報ともいう)と、減速装置の特性情報と、を対応付けて記憶する。種別特定情報には、減速装置の機種、枠番、減速比などが含まれる。
【0022】
減速装置が減速機の場合、特性情報には減速機の特性情報が含まれる。減速装置がギヤモータの場合、特性情報には、ギヤモータを構成する減速機およびモータの両方の特性情報が含まれる。特性情報には、摩擦、角度伝達誤差などが含まれる。特性情報は、減速装置の状況(たとえば温度や回転数など)の変化に応じて変化するように定義される。つまり摩擦は、少なくとも温度および回転数を変数とする関数として定義される。同様に、角度伝達誤差は、少なくとも減速機回転角度を変数とする関数として定義される。
【0023】
減速装置情報記憶部131は、減速装置メーカ102が製造する全ての減速装置の特性情報を記憶してもよい。また、減速装置情報記憶部131は、製造中の減速装置の特性情報に加えて、過去に製造していた(すなわち製造を終了している)減速装置の特性情報を記憶してもよい。
【0024】
データ処理部120は、第1受付部121と、第2受付部122と、第3受付部123と、画面提供部125と、減速装置特定部126と、解析部127と、結果提供部129と、を含む。
【0025】
画面提供部125は、減速装置の選定を支援する画面である選定支援画面を、要求に応じてユーザ端末200に送信し、ユーザ端末200のディスプレイに表示させる。
【0026】
図3は、図2の画面提供部125が提供する選定支援画面20の一例を示す図である。選定支援画面20は、テンプレート選択ボタン22と、ロボット表示領域24と、ワーク情報欄26と、アーム情報領域28と、関節情報領域30と、動作欄32と、解析ボタン34と、を含む。
【0027】
テンプレート選択ボタン22を選択すると、図示しない、予め準備されたテンプレートの一覧が表示される。ユーザは、表示されたテンプレートの一覧から、構成したいロボットに対応するテンプレートを選択する。ロボット表示領域24には、選択されたテンプレートのロボットの概略図が表示される。
【0028】
ワーク情報欄26にはワークの質量特性(重量や重心位置、慣性モーメント等)を入力する。
【0029】
アーム情報領域28は、アームID欄36と、アーム質量特性欄38とを含む。アームID欄36には、アームを識別するIDが表示される。なお、ロボットのアームの数は、テンプレートを選択することにより決定される。アーム質量特性欄38には、アームの質量特性を入力する。
【0030】
関節情報領域30は、回転軸(関節)ID欄40と、回転軸位置欄42と、減速装置欄44と、を含む。回転軸ID欄40には、回転軸を識別するIDが表示される。なお、ロボットの回転軸(関節)の数は、テンプレートを選択することにより決定される。
【0031】
回転軸位置欄42には、所定の基準点O(ロボット表示領域24を参照)を原点とする、ロボットの基準姿勢(例えば初期姿勢)における各回転軸の3次元位置が入力される。回転軸位置欄42には、テンプレートに設定されているデフォルト値が入力されてもよい。この場合、ユーザは、必要に応じて、例えば、直接入力により、回転軸位置欄42をデフォルト値から変更すればよい。なお、ロボット表示領域24に表示されるイラストにおいて、ドラッグアンドドロップなどの操作で回転軸の位置が変更可能であってもよく、それに応じて回転軸位置欄42の入力が変更されてもよい。つまり、回転軸位置欄42は、テンプレートを変更する形で入力されてもよい。
【0032】
減速装置欄44には、各回転軸に組み込みたい減速装置を指定する情報、例えば、減速装置の機種、枠番または仕様情報を入力する。減速装置の仕様情報には、例えば、減速比、必要トルクが含まれる。減速装置がギヤモータの場合、減速装置の仕様情報には、例えば、モータの慣性モーメント、最大発生トルクも含まれる。回転軸位置欄42では、1つの回転軸に対して複数の情報、例えば複数の仕様情報を入力してもよい。例えば、回転軸位置欄42では、1つの回転軸に対して減速比および必要トルクの両方を入力してもよい。なお、減速装置にモータが含まれない場合、モータの慣性モーメントや最大発生トルクは減速装置同様テンプレートから選択する形式であってもよいしユーザが個別に指定できる形式であってもよい。
【0033】
動作欄32には、挙動を解析したいロボットの動作を入力する。動作は、例えば、アームの先端に取り付けたツールの基準点Pを第1の位置から第2の位置までt秒で動かすものであってもよい。また例えば動作は、3次元の目標軌道に沿ってツールの基準点Pを動かすものであってもよい。動作は、その種類ごとに予め定められた形式で入力されればよい。挙動を解析する際のモータの制御方式や制御パラメータはユーザが調整可能な形式であってよい。
【0034】
解析ボタン34を選択すると、図3の各情報項目がユーザ端末200から減速装置選定支援装置100に送信され、減速装置選定支援装置100において後述の解析が実行される。
【0035】
図2に戻る。第1受付部121は、ユーザ端末200を介してユーザから、挙動の解析対象のロボットの仕様情報を受け付ける。詳しくは、第1受付部121は、ユーザ端末200から、図3の選定支援画面20におけるロボットの仕様に関する情報項目、具体的にはワークの質量特性、アームの質量特性、回転軸の数および各回転軸の回転軸位置を受け付ける。
【0036】
第2受付部122は、ユーザ端末200を介してユーザから、ロボットの各関節に組み込みたい減速装置の指定を受け付ける。詳しくは、第2受付部122は、ユーザ端末200から、図3の選定支援画面20の減速装置欄44の入力を受け付ける。
【0037】
第3受付部123は、ユーザ端末200を介してユーザから、挙動を解析したいロボットの動作を受け付ける。詳しくは、第3受付部123は、ユーザ端末200から、図3の選定支援画面20の動作欄32の入力を受け付ける。なお、データ処理部120が第3受付部123を含まない構成も考えられる。この場合、あらかじめ定められた動作の挙動を解析すればよい。
【0038】
減速装置特定部126は、第2受付部122が受け付けた減速装置の指定に基づいて、減速装置を特定する。詳しくは、減速装置特定部126は、減速装置情報記憶部131から、第2受付部122が受け付けた減速装置の指定に合致する減速装置の減速装置IDと、その減速装置の特定情報とを特定する。なお、複数の減速装置が特定されることもあり得る。例えば、減速装置を指定する情報が減速装置の仕様情報である場合、当該仕様情報と合致するすなわち当該仕様情報を満足する減速装置が複数存在することもあり得る。この場合、減速装置特定部126は、当該複数の減速装置を特定すればよい。
【0039】
解析部127は、第1受付部121が受け付けた仕様のロボットに、第2受付部122が受け付けた指定に基づいて減速装置特定部126が特定した減速装置を関節に組み込んで、第3受付部123が受け付けた動作を実行させた場合の挙動を解析する。解析部127は、公知の、あるいは将来利用可能な解析技術を用いて解析すればよい。解析部127は、各関節に組み込まれる減速装置の特性情報として、減速装置情報記憶部131に記憶される特性情報、すなわち温度や回転数などの状況変化に応じて変化する特性情報を用いて解析する。
【0040】
減速装置特定部126がある関節について複数の減速装置を特定した場合、解析部127は、当該複数の減速装置を順次組み込んで、それぞれの場合の挙動を解析すればよい。
【0041】
結果提供部129は、解析結果をユーザに提供する。解析結果は、例えば、ロボットのアームの先端に取り付けたツールの基準点Pの位置についての指令値との乖離、各回転軸の回転角度についての指令値との乖離、減速装置にかかる荷重と当該減速装置の特性情報に含まれる許容荷重との比較、である。結果提供部129は、たとえば、解析結果を示す解析結果画面をユーザ端末200に送信し、ユーザ端末200のディスプレイに表示させる。
【0042】
図4は、ユーザに提供する解析結果の一例を示す図である。この例の解析結果は、目標軌道に沿ってツールの基準点Pを動かしたときの指令値との誤差である。図4において、横軸は時間であり、縦軸はツールの基準点Pの位置である。実線のグラフは解析結果であり、破線のグラフは指令値である。
【0043】
図5は、ユーザに提供する解析結果の別の例を示す図である。図5において、横軸は時間であり、縦軸は回転軸にかかる荷重である。実線のグラフは解析結果であり、破線は減速装置の許容荷重である。
【0044】
ユーザは図4、5の解析結果を確認することにより、指定の減速装置を組み込んだ場合のロボットの挙動がひと目で分かる。
【0045】
図6は、ユーザに提供する解析結果のさらに別の例を示す図である。この例の解析結果は、図4と同様に、目標軌道に沿ってツールの基準点Pを動かしたときの指令値との誤差である。この例は、減速装置特定部126が或る関節について複数の減速装置の候補を特定し、解析部127はそれぞれの場合の挙動を解析した場合の解析結果を示す。ここでは、実線および一点鎖線のグラフは解析結果であり、破線のグラフは指令値である。複数の候補のそれぞれについての解析結果が提示されることにより、ユーザはより適切な減速装置を選定できる。
【0046】
以上が減速装置選定支援システム10の構成である。続いてその動作について説明する。減速装置選定支援装置100は、要求に応じてユーザ端末200に選定支援画面20を提供する。ユーザは、ユーザ端末200を介して、選定支援画面20にロボットの仕様情報、ロボットに組み込みたい減速装置の指定、挙動を解析するロボットの動作、を入力する。選定支援画面20の解析ボタン34が選択されると、ユーザ端末200は選定支援画面20の各情報項目を減速装置選定支援装置100に送信する。減速装置選定支援装置100の第1受付部121、第2受付部122、第3受付部123はそれぞれ、ロボットの仕様情報、ロボットに組み込みたい減速装置の指定、挙動を解析するロボットの動作、を受け付ける。解析部127は、第1受付部121が受け付けた仕様のロボットに、第2受付部122が受け付けた指定に基づいて特定された減速装置を関節に組み込んで、第3受付部123が受け付けた動作を実行させた場合の挙動を解析する。この際、解析部127は、各関節に組み込まれる減速装置の特性情報として、減速装置情報記憶部131に記憶される特性情報、すなわち温度や回転数などの状況の変化に応じて変化する特性情報を用いて解析する。
【0047】
本実施の形態によれば、減速装置選定支援装置100は、ユーザから受け付けたロボットの仕様情報と減速装置の指定に基づいて、当該減速装置を組み込んだ当該ロボットの動作の挙動を解析し、その解析結果をユーザに提供する。ここで、減速装置選定支援装置100は、減速装置の特性情報として、減速装置の状況変化に応じて変化する特性情報を記憶しており、減速装置の状況変化を考慮した解析を実行する。したがって、本実施の形態によれば、ユーザの負担を軽減しつつも、精度の高い解析を実行でき、減速装置を適切に選定できる。
【0048】
また、本実施の形態によれば、減速装置選定支援装置100は、ユーザからの減速装置の指定に合致する減速装置が複数存在する場合、当該複数の減速装置をロボットの関節に順次組み込んで、それぞれの場合の挙動を解析し、それらの解析結果をユーザに提供する。複数の候補のそれぞれを組み込んだ場合の解析結果が提示されることにより、ユーザはより適切な減速装置を選定できる。
【0049】
また、本実施の形態によれば、減速装置選定支援装置100は挙動を解析したいロボットの動作の指定をユーザから受け付け、その動作を実行したときのロボットの挙動を解析する。実際にロボットに実施させる予定の動作での挙動を解析することで、より適切な選定が可能となる。
【0050】
また、本実施の形態によれば、減速装置選定支援装置100は、予め準備されたロボットのテンプレートを変更する形で入力されたロボットの仕様情報を受け付ける。逆に言うと、ユーザは、予め準備されたロボットのテンプレートを変更する形でロボットの仕様情報を入力することができる。これにより、ユーザの負担が軽減される。
【0051】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、ロボットの仕様と、そのロボットに組み込みたい減速装置の指定とをユーザから受け付け、当該減速装置を関節に組み込んだロボットの挙動を解析してユーザに提供した。第2の実施の形態では、ロボットの仕様と、実現させたいロボットの挙動とをユーザから受け付け、その挙動を実現するのに適した減速装置を選定する。以下、第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0052】
図7は、第2の実施の形態の減速装置選定支援装置100の機能および構成を示すブロック図である。第2の実施の形態の減速装置選定支援装置100は、データ処理部120は、第1受付部121と、第4受付部124と、画面提供部125と、選定部128と、結果提供部129と、を含む。
【0053】
図8は、図7の画面提供部125が提供する選定支援画面50の一例を示す図である。選定支援画面50は、テンプレート選択ボタン22と、ロボット表示領域24と、ワーク情報欄26と、アーム情報領域28と、関節情報領域30と、動作・挙動欄52と、選定ボタン56と、を含む。
【0054】
動作・挙動欄43には、挙動を解析したいロボットの動作と、そのときに実現させたいロボットの挙動とを指定する。動作は、例えば、ロボットのアームの先端に取り付けたツールの基準点Pを第1の位置から第2の位置までt秒で動かすものであってもよい。このときに実現させたい挙動は、減速装置にかかる荷重が指定荷重以下であることであってもよいし、到達位置である第2の位置について指令との乖離が所定値以下であることであってもよい。
【0055】
また例えば、動作は、3次元の目標軌道に沿ってツールの基準点Pを動かすものであってもよい。このときに実現させたい挙動は、指令からの乖離が所定値以下であることであってもよい。
【0056】
図2に戻る。第4受付部124は、ユーザ端末200を介してユーザから、挙動を解析したいロボットの動作とそのときに実現させたいロボットの挙動とを受け付ける。詳しくは、第4受付部124は、ユーザ端末200から、図8の選定支援画面50の動作・挙動欄43の入力を受け付ける。
【0057】
選定部128は、第3受付部123が受け付けた挙動を実現するのに適した減速装置を減速装置情報記憶部131に記憶される複数(すべて)の減速装置の中から選定する。選定部128はまず、第1受付部121が受け付けた仕様のロボットに、減速装置情報記憶部131に記憶される複数の減速装置のそれぞれを順次組み込んで、第4受付部124が受け付けた動作を実行させた場合のそれぞれの挙動を解析する。そして選定部128は、解析結果に基づいて、第4受付部124が受け付けた実現させたい挙動を満たす減速装置の組み合わせを選定する。
【0058】
結果提供部129は、選定結果をユーザに提供する。選定結果には、選定した減速装置の情報が含まれる。なお、選定結果には、選定した減速装置の情報に加えて、選定の際に実行した解析の結果が含まれてもよい。
【0059】
続いて動作について説明する。減速装置選定支援装置100は、要求に応じてユーザ端末200に選定支援画面50を提供する。ユーザは、ユーザ端末200を介して、選定支援画面50にロボットの仕様情報、挙動を解析したいロボットの動作、実現させたいロボットの挙動、を入力する。選定支援画面50の選定ボタン56が選択されると、ユーザ端末200は選定支援画面50の各情報項目を減速装置選定支援装置100に送信する。減速装置選定支援装置100の第1受付部121、第4受付部124はそれぞれ、ロボットの仕様情報、挙動を解析するロボットの動作、実現させたいロボットの挙動を受け付ける。選定部128は、第1受付部121が受け付けた仕様のロボットに、減速装置情報記憶部131に記憶される複数の減速装置のそれぞれを順次組み込んで、第4受付部124が受け付けた動作を実行させた場合のそれぞれの挙動を解析する。この際、選定部128は、各関節に組み込まれる減速装置の特性情報として、減速装置情報記憶部131に記憶される特性情報、すなわち温度や回転数などの状況の変化に応じて変化する特性情報を用いて解析する。そして選定部128は、解析結果に基づいて、実現させたい挙動を満たす減速装置の組み合わせを選定する。
【0060】
本実施の形態によれば、減速装置選定支援装置100は、ユーザから受け付けたロボットの仕様情報と、挙動を解析したいロボットの動作と、実現させたいロボットの挙動とに基づいて、その挙動を実現するのに適した減速装置を選定する。ここで、減速装置選定支援装置100は、減速装置の特性情報として、減速装置の状況変化に応じて変化する特性情報を記憶しているため、選定のための挙動の解析においては、減速装置の状況変化を考慮した解析を実行する。したがって、本実施の形態によれば、ユーザの負担を低減しつつも、精度の高い解析を実行でき、その結果、より適切な減速装置を選定できる。
【0061】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。また、実施の形態においては、減速装置選定支援装置100を主に装置として説明したが、本発明は、減速装置選定支援装置100が実行する各ステップを有する減速装置選定支援方法と捉えることもできるし、減速装置選定支援装置100に当該各ステップを実行させるためのプログラムの発明と捉えることもできるし、当該プログラムを記憶した記憶媒体の発明と捉えることもできる。
【符号の説明】
【0062】
10 減速装置選定支援システム、 100 減速装置選定支援装置、 121 第1受付部、 122 第2受付部、 123 第3受付部、 124 第4受付部、 127 解析部、 129 結果提供部、 131 減速装置情報記憶部。
図1
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