(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068393
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】刺入深度を設定可能な無菌対応型の鍼管及び台座ゲージの組み合わせ。
(51)【国際特許分類】
A61H 39/08 20060101AFI20240513BHJP
【FI】
A61H39/08 A
A61H39/08 H
A61H39/08 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178812
(22)【出願日】2022-11-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】301027568
【氏名又は名称】下山 強
(72)【発明者】
【氏名】下山 強
【テーマコード(参考)】
4C101
【Fターム(参考)】
4C101DA01
4C101DC01
4C101DC10
4C101EA10
4C101EB11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】刺入深度が簡単に設定できる、無菌対応型の刺入深度付き使い捨て鍼管を提供する。
【解決手段】本発明は、鍼灸鍼療法の使い捨て鍼に用いられる刺入深度付き鍼管であって、既存の鍼体1と、上端に断面略V字形状の鍼導入部2を設けた内部鍼管3と、内部鍼管3に被嵌する外部鍼管と、刺入深度設定の台座ゲージ5とから構成されている。内部鍼管3中央部の鍼導入部2に連なる鍼挿通部6を鍼体1の外径と近似形に形成し、さらに外部鍼管を透明素材で形成させ、また台座ゲージ5に鍼よりやや大きな径の鍼孔7を刺入深度別に数個穿設し、台座ゲージ5の鍼孔7にはそれぞれ深度の表示がなされている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍼灸鍼療法の使い捨て鍼に用いられる無菌対応型の刺入深度付き鍼管であって、既存の鍼体と、上端に断面略V字形状の鍼導入部を設けた内部鍼管と、該内部鍼管に被嵌する外部鍼管と、刺入深度設定の台座ゲージとから構成され、前記内部鍼管中央部の前記鍼導入部に連なる鍼挿通部を鍼体の外径と近似形に形成し、さらに前記外部鍼管を透明素材で形成させ、また前記台座ゲージに鍼体よりやや大きな径の鍼孔を刺入深度別に数個穿設し、該台座ゲージのそれぞれの鍼孔に刺入深度を表示したことを特徴とする、無菌対応型の刺入深度付き使い捨て鍼管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍼灸鍼療法に用いられる使い捨て鍼用に対応する、無菌対応型の刺入深度付き使い捨て鍼管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から鍼灸鍼療法に用いられる鍼管は種々開発されているが、それらは主に鍼の保護と感染症予防対策であり、施術者の指が鍼に直接触れないようにするのが主目的である。
【0003】
その形状も単体の物や2~3に分割するもの、鍼柄ごと鍼管に入れて切皮後に鍼管の途中の切れ目から分断し、さらに鍼を刺入するものなど様々な形態がある。
また、単体型の鍼管では施術後に抜鍼する際に被施術者の体内に刺入した鍼に体液が付着しているため、施術者の感染症予防の観点からも問題があった。
【0004】
以前は使用する鍼を滅菌消毒して使いまわしていたが、現在は技術の進歩により鍼が廉価にできるようになり、今では鍼体ごと保護管に入った使い捨て用の鍼が主流である。
無菌対応型の発明としては、特開2006-34915公報(特許文献1)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は、鍼の無菌状態を確保するためのもので、下端を薄膜で閉口した鍼管と鍼体との組み合わせによる治療用鍼の形状の発明であり、施術者の手が直接鍼に触れないようにするのが目的である。
しかしながら、鍼管の底を突き破るには施術者の熟練した手加減が要求されるものであり、安全性に問題がある。
【0007】
また、特許文献1では抜鍼後の処置については触れていないが、究極の感染症対策は針と同様に鍼管も使い捨てにするのが望ましい。
【0008】
現在では感染症予防対策上から使い捨て用の鍼が主流になり衛生面では改善したものの、未だに刺入深度を施術者の勘に頼るなど安全面については余り改善されていず、筋肉の蠕動や体動などの自動刺入による気胸事故も起きており、使い捨て用鍼に対応する無菌対応型の新発想の鍼管が求められていた。
【0009】
本発明は上記の問題と課題に鑑み、それらを解決することを目的になされたものであり、現在主流の使い捨て鍼用の鍼管として開発したもので、施術完了後には鍼と一体化された鍼管を廃棄することで完全な無菌対応型となる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、鍼灸鍼療法の使い捨て鍼に用いられる刺入深度付き鍼管であって、既存の鍼体1と、上端に断面略V字形状の鍼導入部2を設けた内部鍼管3と、内部鍼管3に被嵌する外部鍼管4、及び刺入深度設定の台座ゲージ5とから構成されている。
内部鍼管3中央部の鍼導入部2に連なる鍼挿通部6を鍼体1の外径と近似形に形成し、さらに外部鍼管4を透明素材で形成させ、また台座ゲージ5に鍼体1よりやや大きな径の鍼孔7を刺入深度別に数個穿設させ、台座ゲージ5のそれぞれの鍼孔7に刺入深度を表示する。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、以下に述べる効果を有する。
1、本発明は刺入深度を設定でき、内部鍼管3がストッパーとなり設定深度以上に鍼は入らない。
2、刺入深度は、鍼体1を挿通した内部鍼管3を鍼孔7に入れて押し下げるだけで簡単に決まる。
3、固着剤は鍼体1と鍼挿通部6との間隙が狭いため、固着剤が下に流れ落ちることはない。
4、従来は施術者の勘に頼っていた刺入深度が、台座ゲージ5の使用により正確になる。
5、鍼導入部2に固着剤(例えば、瞬間接着剤)を少量注入して鍼体1と内部鍼管3とを固着する。
6、施術者は透明の外部鍼管4から内部鍼管3と鍼体1の様子を確認しながら刺入作業を行える。
7、鍼体1は内部鍼管3の鍼挿通部6により、外部鍼管4のほぼ中央に位置する。
8、従来型鍼管と同じように押手で外部鍼管4を押さえ、差手で鍼柄を回しながら刺入できる。
9、筋肉の蠕動など体動による自動刺入を防ぎ、気胸事故等を防止できる。
10、使用後に一体化した鍼体1と内部鍼管3とをそのまま廃棄するので完全な無菌対応型となる。
11、上記の構成により衛生面に優れ、従来鍼管同様に鍼の折れ曲がりや折鍼事故を解消できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、鍼灸鍼療法の使い捨て鍼に用いられる刺入深度付き鍼管であって、既存の鍼体1と、上端に断面略V字形状の鍼導入部2を設けた内部鍼管3と、内部鍼管3に被嵌する外部鍼管4、及び刺入深度設定用の台座ゲージ5とから構成されており、台座ゲージ5を使用してあらかじめ使用部位の刺入深度を設定する。
内部鍼管3中央部の鍼導入部2に連なる鍼挿通部6を鍼体1の外径と近似形に形成し、さらに外部鍼管4を透明素材で形成させ、また台座ゲージ5に鍼よりやや大きな径の鍼孔7を刺入深度別に数個穿設させ、台座ゲージ5のそれぞれの鍼孔7には刺入深度が表示されている。
鍼体1を挿通した内部鍼管3を設定の鍼孔7の底まで入れた状態で、内部鍼管3を台座ゲージ5上面まで押し下げ、内部鍼管3の鍼導入部2の固着剤を少量注入して鍼体1と内部鍼管3とを一体化させる。
【0014】
これらの構成により、従来は施術者の勘に頼っていた刺入深度はより正確になり、気胸事故などを防ぎ、さらに衛生面では抜鍼まで施術者が鍼の刺入部分や患者の体液に触れることもなく、抜鍼後には鍼と一体化された内部鍼管3を廃棄することにより完全な無菌対応型となる。
【実施例0015】
図1は、本発明の分割斜視図である。
以下に図面を基に動作・作用・効果を説明する。
内部鍼管3中央部の鍼導入部2から鍼挿通部6に向けて既存の使い捨て鍼体1を挿通し、内部鍼管3に外部鍼管4を被嵌させる。外部鍼管4は透明素材で形成されているため、施術者は内部鍼管3と鍼体1の状態を確認しながら刺入作業を行える。
【0016】
図2は、本発明の刺入深度設定の説明断面図である。
本発明は、従来は施術者の勘に頼っていた刺入深度は台座ゲージ5を使って、刺入作業をより正確に行うものである。
台座ゲージ5には鍼体1の径よりやや大きな鍼孔7が刺入深度別に穿設され、それぞれの深度表記がなされており、施術者は内部鍼管3に挿通した鍼体1を台座ゲージ5の深度表示に合わせ、鍼孔7の底まで挿入して内部鍼管3を台座ゲージ5上面まで押し下げることで、施術部位の刺入深度が決定される。
鍼導入部2に固着剤(瞬間接着剤)を少量注入して鍼体1と内部鍼管3とを一体化させる。
【0017】
図3は、本発明の一実施例の施術時断面図である。
本発明は、あらかじめ刺入部位ごとに刺入深度を設定できるものである。
鍼体1と内部鍼管3とは固着剤で一体に固着されており、被施術者の皮膚面に置かれた外部鍼管4を押手で押さえ、内部鍼管3と鍼体1の状態を確認しながら刺手で鍼柄の頭を軽く叩いて切皮し、さらに鍼柄を左右に回しながら刺入すると内部鍼管3の下端がストッパーの役目を果たし、設定深度まで刺入したことが確認できる。
抜鍼の際は、押手で外部鍼管4を押さえて鍼柄を刺手で左右に回しながら鍼体1を抜き取り、施術完了後に外部鍼管4を取り除き、鍼体1に固着された内部鍼管3を一緒に廃棄する。
【0018】
図4は、本発明の一実施例の鍼通電治療説明図である。
本発明は、従来の鍼通電治療にも対応できる。
長めの鍼を使用し、鍼体1を2カ所の施術部位の内部鍼管3がともに皮膚面に接し、それぞれの鍼体1が設定の刺入深度まで達しているのを確認後、外部鍼管4を取り除いて2カ所の内部鍼管3から突出している鍼体1部分に通電クリップを挟み通電する。抜鍼の際には通電クリップを取り外した後に外部鍼管4を内部鍼管3に被嵌させ、以降の手順は
図3と同様である。
本発明は、施術者と患者双方の衛生面と安全面を考慮した刺入深度設定付きの使い捨て鍼管であり、鍼は内部鍼管3中央の鍼挿通部6により保護されるので折れ曲がりや折鍼事故を防ぎ、内部鍼管3がストッパーの役目を果たし設定深度以上に鍼が刺入しない。
しかしながら、鍼灸鍼治療は患者の体内に鍼を刺すという危険な作業にも係わらず、刺入に関しては未だに施術者の勘に頼っており、刺入部位によっては筋肉の蠕動や体動による自動刺入で実際に気胸事故などが起きている。
本発明はそれらを解決し、さらに従来の鍼通電治療にも使えることから産業上の利用可能性が高い。