(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068396
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】釣糸ガイドのガイドフレーム及び釣糸ガイド
(51)【国際特許分類】
A01K 87/04 20060101AFI20240513BHJP
【FI】
A01K87/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178818
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100117204
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 徳哉
(72)【発明者】
【氏名】小澤 知之
(72)【発明者】
【氏名】神納 芳行
(72)【発明者】
【氏名】藤原 誠太
【テーマコード(参考)】
2B019
【Fターム(参考)】
2B019AC00
2B019BA01
2B019BA05
2B019BA08
(57)【要約】
【課題】軽量化と高剛性化の両立が容易にすると共に、ガイドフレームの表面の傷付きを抑制して、釣糸の損傷を抑制する。
【解決手段】釣竿に装着される釣糸ガイド1のガイドフレーム3であって、非金属を含む第1層11と、金属を含む第2層12と、を有する板材10を備え、第1層11と第2層12とは、板材10の厚さ方向に積層され、板材10は、釣竿に取り付られる取付脚部22を少なくとも部分的に構成し、取付脚部22において第2層12が釣竿に接し、板材10は、金属を含む第3層13をさらに有し、第1層11は、第2層12と第3層13との間に配置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣竿に装着される釣糸ガイドのガイドフレームであって、
非金属を含む第1層と、金属を含む第2層と、を有する板材を備え、
前記第1層と前記第2層とは、前記板材の厚さ方向に積層される、ガイドフレーム。
【請求項2】
前記板材は、前記釣竿に取り付られる取付脚部を少なくとも部分的に構成し、
前記取付脚部において前記第2層が前記釣竿に接する、請求項1に記載のガイドフレーム。
【請求項3】
前記板材は、金属を含む第3層をさらに有し、
前記第1層は、前記第2層と前記第3層との間に配置される、請求項1に記載のガイドフレーム。
【請求項4】
前記第1層は、前記第2層と前記第3層とによって挟まれる、請求項3に記載のガイドフレーム。
【請求項5】
前記第1層は、前記厚さ方向に第1厚さを有し、前記第2層は、前記厚さ方向に第2厚さを有し、前記第3層は、前記厚さ方向に第3厚さを有し、
前記第2厚さおよび前記第3厚さは、前記第1厚さよりも小さい、請求項3に記載のガイドフレーム。
【請求項6】
前記第2厚さおよび前記第3厚さは、それぞれ前記板材の全体の厚さの10%以下である、請求項5に記載のガイドフレーム。
【請求項7】
前記第2層および前記第3層は、第1金属を含む、請求項3に記載のガイドフレーム。
【請求項8】
前記第2層は、第1金属を含み、
前記第3層は、前記第1金属と異なる第2金属を含む、請求項3に記載のガイドフレーム。
【請求項9】
前記第1層は、繊維強化樹脂を含む、請求項1に記載のガイドフレーム。
【請求項10】
前記第1層は、前記繊維強化樹脂を有するプリプレグシートを含む、請求項9に記載のガイドフレーム。
【請求項11】
前記繊維強化樹脂は、熱可塑性を有する、請求項9に記載のガイドフレーム。
【請求項12】
前記板材の側面において、前記第1層が露出する、請求項1に記載のガイドフレーム。
【請求項13】
前記第1層は、前記厚さ方向に沿うように延びる第1側面を有し、
前記第2層は、前記第1側面と連続する第2側面を有する、請求項1または2に記載のガイドフレーム。
【請求項14】
前記第1層は、前記厚さ方向に沿うように延びる第1側面を有し、
前記第2層は、前記第1側面と連続する第2側面を有し、
前記第3層は、前記第1側面と連続する第3側面を有する、請求項3から8の何れか1項に記載のガイドフレーム。
【請求項15】
請求項1から12の何れか1項に記載のガイドフレーム、を備える、釣糸ガイド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣糸を案内するための釣糸ガイドのガイドフレームと、釣糸ガイドに関する。
【背景技術】
【0002】
ステンレス等の板金製のガイドフレームは、強度が大きく、また、加工が容易であるという特徴を有する。その一方、板金製のガイドフレームは、軽量化が困難であり、軽量化のために薄肉化すると剛性が大幅に低下する。
【0003】
下記特許文献1においては、金属と合成樹脂を組み合わせた釣糸ガイドが提案されている。しかしながら、ガイドフレームの表面の大部分が樹脂であるため、ガイドフレームの表面が傷つきやすい。そのため、傷ついたガイドフレームに釣糸が接触することで釣糸が損傷しやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2015/011962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、軽量化と高剛性化の両立が容易にすると共に、ガイドフレームの表面の傷付きを抑制して、釣糸の損傷を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1側面に係る釣糸ガイドのガイドフレームは、釣竿に装着される。ガイドフレームは、板材を備える。板材は、非金属を含む第1層と、金属を含む第2層と、を有する。第1層と第2層は、板材の厚さ方向に積層される。
【0007】
この構成によれば、ガイドフレームは、非金属を含む第1層と、金属を含む第2層とが積層された板材を備えている。そのため、板金製のガイドフレームに比して軽量化が容易であり、合成樹脂製のガイドフレームに比して高い剛性を容易に確保することができる。また、板材であるため、容易に加工することができる。更に、第1層が第2層によって保護される。そのため、ガイドフレームの欠け等の破損が抑制され、釣糸の損傷が抑制される。
【0008】
本発明の第1側面に従う第2側面のガイドフレームにおいては、釣竿に取り付られる取付脚部を備える。板材は、取付脚部を少なくとも部分的に構成する。取付脚部において第2層が釣竿に接する。この構成によれば、第2層が釣竿に接するので、釣糸ガイドを釣竿にしっかりと固定することができる。
【0009】
本発明の第1側面又は第2側面に従う第3側面のガイドフレームにおいては、板材は、金属を含む第3層をさらに有する。第1層は、第2層と第3層の間に配置される。この構成によれば、第1層が第2層と第3層によって、板材の厚さ方向の両側から保護される。そのため、ガイドフレームの欠け等の破損がより一層抑制される。
【0010】
本発明の第3側面に従う第4側面の釣糸ガイドにおいては、第1層は、第2層と第3層によって挟まれる。この構成によれば、第1層の第1面に第2層が接し、第1層の第2面に第3層が接する。そのため、ガイドフレームをより一層容易に軽量化できる。
【0011】
本発明の第3側面又は第4側面に従う第5側面のガイドフレームにおいては、第1層は、板材の厚さ方向に第1厚さを有する。第2層は、板材の厚さ方向に第2厚さを有する。第3層は、板材の厚さ方向に第3厚さを有する。第2厚さ及び第3厚さは、第1厚さよりも小さい。この構成によれば、軽量化と高剛性化の両立がより一層容易になる。
【0012】
本発明の第5側面に従う第6側面のガイドフレームにおいては、第2厚さ及び第3厚さは、それぞれ板材の全体の厚さの10%以下である。この構成によれば、ガイドフレームをより一層容易に軽量化できる。
【0013】
本発明の第3乃至第6側面の何れか一つの側面に従う第7側面のガイドフレームにおいては、第2層及び第3層は、第1金属を含む。この構成によれば、第2層と第3層が互いに同一の金属を含むので、板材の厚さ方向の方向性が小さくなる。そのため、板材の管理とガイドフレームの製造が容易になる。
【0014】
本発明の第3乃至第6側面の何れか一つの側面に従う第8側面のガイドフレームにおいては、第2層は、第1金属を含む。第3層は、第1金属と異なる第2金属を含む。この構成によれば、第2層と第3層が互いに異種の金属を含むので、板材の方向性が大きくなる。そのため、例えば、釣糸ガイドの竿先側の面と竿尻側の面とで異なる美観を得ることができ、デザイン性が向上する。
【0015】
本発明の第1乃至第8側面の何れか一つの側面に従う第9側面のガイドフレームにおいては、第1層は、繊維強化樹脂を含む。この構成によれば、軽量化を維持しつつ、より一層高い剛性を容易に確保できる。また、第2層、あるいは、第2層及び第3層が、第1層の第1面や第2面における繊維の露出を抑制する。そのため、繊維が露出することに伴う毛羽立ちを抑制することができる。
【0016】
本発明の第9側面に従う第10側面のガイドフレームにおいては、第1層は、繊維強化樹脂を有するプリプレグシートを含む。この構成によれば、プリプレグシートにより第1層を容易に形成できる。
【0017】
本発明の第9側面又は第10側面に従う第11側面のガイドフレームにおいては、繊維強化樹脂は、熱可塑性を有する。この構成によれば、板材を熱間鍛造により容易に曲げ加工することができる。第1層の繊維強化樹脂が熱可塑性を有しているので、第2層、あるいは、第2層と第3層の曲がりに、第1層が追従しやすく、層間剥離を抑制することができる。
【0018】
本発明の第1側面乃至第11側面の何れか一つの側面に従う第12側面のガイドフレームにおいては、板材の側面において第1層が露出する。この構成によれば、板材を打ち抜くことにより所定の形状に容易に形成できる。
【0019】
本発明の第1側面乃至第12側面の何れか一つの側面に従う第13側面のガイドフレームにおいては、第1層は、厚さ方向に沿うように延びる第1側面を有する。第2層は、第1側面と連続する第2側面を有する。第1側面と第2側面は、板材の側面に位置する。第1側面は板材の厚さ方向に沿って湾曲しておらず、板材の厚さ方向の両面に対して直交した直交面である。第2側面は、板材の厚さ方向に沿って湾曲した湾曲面である。第1側面が直交面であるため、板材の側面において第1層の露出を最小限に抑制でき、板材の厚さ方向に対して直交した第1層の面を第2層によって確実に保護できる。また、第2側面が湾曲面であるため、釣糸の損傷を抑制できる。
【0020】
本発明の第3側面乃至第8側面の何れか一つの側面に従う第14側面のガイドフレームにおいては、第1層は、厚さ方向に沿うように延びる第1側面を有する。第2層は、第1側面と連続する第2側面を有する。第3層は、第1側面と連続する第3側面を有する。第1側面と第2側面と第3側面は、板材の側面に位置する。第1側面は板材の厚さ方向に沿って湾曲しておらず、板材の厚さ方向の両面に対して直交した直交面である。第2側面と第3側面は、板材の厚さ方向に沿って湾曲した湾曲面である。第1側面が直交面であるため、板材の側面において第1層の露出を最小限に抑制でき、板材の厚さ方向に対向した第1層の両面を第2層と第3層によって確実に保護できる。また、第2側面と第3側面が湾曲面であるため、釣糸の損傷を抑制できる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、軽量化と高剛性を容易に両立することができ、しかも、ガイドフレームの表面の傷付きを抑制できて釣糸の損傷を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態における釣糸ガイドの斜視図。
【
図7】(a)は
図3のB部拡大図、(b)は
図6のC部拡大図。
【
図8】(a)及び(b)は同ガイドフレームの製造工程を示す概略図。
【
図9】(a)は同ガイドフレームの要部の模式図、(b)は同釣糸ガイドの要部の模式図。
【
図10】本発明の他の実施形態におけるガイドフレームの要部を示し、(a)は竿尻側から見た図、(b)は断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係る釣糸ガイドとそのガイドフレームについて、
図1~
図9を参酌しつつ説明する。釣糸ガイド1は、竿体4の外周面の所定位置に固定される。釣糸ガイド1は、種々の釣竿に使用される。釣竿には、リールが取り付けられる。リールは、スピニングリールや両軸受けリール等である。本実施形態の釣糸ガイド1は、スピニングリールが取り付けられる釣竿に適している。
【0024】
釣糸ガイド1は、ガイドリング2とガイドフレーム3を備えている。ガイドリング2は、釣糸を案内する。ガイドフレーム3は、ガイドリング2を保持すると共に竿体4の外周面に取り付けられる。尚、竿体4の中心軸線の方向を前後方向とし、竿先側を前側として図中に矢印X1で示し、竿尻側を後側として図中に矢印X2で示す。竿先側X1は、第1中心軸線方向であり、竿尻側X2は、第2中心軸線方向である。
【0025】
ガイドフレーム3は、板材10からなり、一つの部材からなる。板材10の全体の厚さTは、例えば1mmから3mmである。板材10は、多層構造である。板材10の層数、即ち、層構成は任意であるが、本実施形態では三層構造である。板材10は、第1層11と第2層12と第3層13を備えている。第1層11と第2層12と第3層13は、板材10の厚さ方向に積層されている。即ち、各層の積層方向は、板材10の厚さ方向である。板材10の厚さ方向は、板材10の法線方向である。尚、板材10の厚さ方向を以下単に厚さ方向と称する。
【0026】
第1層11は、板材10の主要部であり、板材10の厚さ方向の中央部に位置している。第1層11は中間層である。
図1等において、第1層11には多数のドットを付して示している。第1層11は、厚さ方向の寸法である第1厚さT1を有している。第1厚さT1は、板材10の全体の厚さTの半分以上である。第1層11は、非金属を含む。第1層11は、非金属からなることが好ましいが、第2層12及び第3層13よりも硬度の小さい金属から構成されてもよい。第1層11は、樹脂層である。第1層11は、好ましくは繊維強化樹脂からなる。強化繊維は、例えばカーボンやガラス等である。繊維強化樹脂を構成する樹脂は、熱可塑性樹脂であることが好ましい。熱可塑性樹脂は、例えばABS樹脂やアクリル樹脂等である。但し、第1層11の樹脂を熱硬化性樹脂としてもよい。第1層11は、複数枚のプリプレグシートを積層して構成される。複数枚のプリプレグシートは、厚さ方向に積層される。第1層11は、互いに厚さ方向に対向した第1面11a及び第2面11bと、第1面11aと第2面11bを厚さ方向に結ぶ第1側面11cとを有している。第1面11aと第2面11bは、厚さ方向に対向した第1層11の両面である。第1側面11cは、第1層11の端面である。第1側面11cは、その全体に亘って、厚さ方向に沿って延びる面である。第1側面11cは、厚さ方向に沿って湾曲していない面であって、第1面11a及び第2面11bに対して直交した直交面である。
【0027】
第2層12と第3層13は、板材10の表面を構成する表面層である。第2層12は、板材10の第1表面を構成し、第3層13は、板材10の第2表面を構成する。第1層11は、第2層12と第3層13の間に配置されている。第2層12は、第1層11の第1面11aを保護し、第3層13は、第1層11の第2面11bを保護する。第2層12は、第1層11の第1面11aの露出を防ぎ、第3層13は、第1層11の第2面11bの露出を防ぐ。
【0028】
第1層11は、第2層12と第3層13に挟まれていて、第1層11は、第2層12と第3層13にそれぞれ接している。第1層11の第1面11aは第2層12と接し、第1層11の第2面11bは第3層13と接している。尚、第1層11と第2層12の間に他の層が介在していてもよいし、第1層11と第3層13の間に他の層が介在していてもよい。また、第2層12の表面に他の層が積層されてもよいし、第3層13の表面に他の層が積層されてもよい。
【0029】
第2層12は、第1層11よりも硬度が大きい。第2層12は、金属を含む。第2層12は、好ましくは金属層である。第2層12は、第1金属を含む。第1金属はステンレスやチタン等の単一の金属材料であってもよく、ステンレスやチタン以外にも適宜選択できる。第1金属は、単一の金属材料には限定されず、2種類以上の金属材料が混合されたものであってもよい。第1金属は、2種類以上の金属材料が積層されたものであってもよい。例えば、第1金属はステンレスとチタンが混合(積層)されたものであってもよい。
【0030】
第2層12は厚さ方向に第2厚さT2を有する。第2層12の第2厚さT2は、第1層11の第1厚さT1よりも薄い。第2厚さT2は、板材10の全体の厚さTの10%以下であることが好ましい。第2厚さT2は、例えば0.05mmから0.2mmである。第2層12は、第1側面11cと厚さ方向に連続する第2側面12aを有している。第2側面12aは、第2層12の端面である。
【0031】
第3層13は、第1層11よりも硬度が大きい。第3層13は、金属を含む。第3層13は、好ましくは金属層である。第3層13は、第2層12と同じ第1金属であってもよいし、第1金属とは異なる第2金属であってもよい。第2金属はステンレスやチタン等の単一の金属材料であってもよく、ステンレスやチタン以外にも適宜選択できる。第2金属は、単一の金属材料には限定されず、2種類以上の金属材料が混合されたものであってもよい。第2金属は、2種類以上の金属材料が積層されたものであってもよい。例えば、第2金属はステンレスとチタンが混合(積層)されたものであってもよい。
【0032】
第3層13は厚さ方向に第3厚さT3を有する。第3層13の第3厚さT3は、第1層11の第1厚さT1よりも薄い。第3厚さT3は、板材10の全体の厚さTの10%以下であることが好ましい。第3厚さT3は、例えば0.05mmから0.2mmである。第3層13の第3厚さT3は、第2層12の第2厚さT2と同じ厚さであってもよいし、第2厚さT2と異なる厚さであってもよい。好ましくは、第3厚さT3と第2厚さT2は、互いに等しい。第3層13は、第1側面11cと厚さ方向に連続する第3側面13aを有している。第3側面13aは、第3層13の端面である。
【0033】
ガイドフレーム3は、ガイドリング2を保持する保持部20と、竿体4に取り付けられる取付脚部22と、保持部20と取付脚部22とを連結する支持脚部21と、を有する。保持部20は、環状であって、代表的には円形である。保持部20は、ガイドリング2をその全周に亘って保持する。保持部20は、ガイドリング2が装着される保持孔23を有する。保持孔23は、板材10を前後に貫通する。保持孔23の壁面にガイドリング2の外周面が固定される。ガイドリング2の固定方法は、例えば接着である。
【0034】
保持孔23の中心軸線はガイドリング2の中心軸線と同じである。ガイドリング2の中心軸線は、竿体4の中心軸線と実質的に平行であってもよいが、本実施形態では、竿体4の中心軸線に対して傾斜している。ガイドリング2の中心軸線は、前側ほど竿体4の中心軸線に近づくように傾斜している。保持部20の前面は第2層12が構成している。保持部20の後面は、第3層13が構成している。
【0035】
支持脚部21は、保持部20から連続している。支持脚部21の前面は第2層12が構成している。支持脚部21の後面は第3層13が構成している。支持脚部21は、板材10を前後に貫通した抜き孔24を有する。抜き孔24は、支持脚部21の中央部に位置する。抜き孔24が形成されることにより、支持脚部21は少なくとも一部において左右に分岐している。支持脚部21は、少なくとも一部において左右に分かれた二股形状となっている。支持脚部21に抜き孔24が形成されることにより、支持脚部21を軽量化できる。
【0036】
取付脚部22は、支持脚部21の端部から後側に延びている。取付脚部22の下面22aは竿体4の外周面に取り付けられる取付面である。取付脚部22の下面22aは第2層12が構成している。従って、取付脚部22において第2層12が竿体4の外周面と接触する。取付脚部22の上面22bは取付脚部22の下面22aと対向している。取付脚部22の上面22bは第3層13が構成している。尚、取付脚部22の下面22aは、竿体4の外周面の周方向に沿って、取付脚部22の上面22bに向けて湾曲していることが好ましい。取付脚部22は、本実施形態では第1層11と第2層12と第3層13を含むが、第2層12のみであってもよいし、第1層11と第2層12のみであってもよい。
【0037】
板材10の端面は、第1層11の第1側面11cと第2層12の第2側面12aと第3層13の第3側面13aから構成される。第1層11は、板材10の端面のみに露出することが好ましく、特に、保持部20及び支持脚部21においては、第1層11は板材10の端面のみに露出し、板材10の前後両面には第1層11が露出していないことが好ましい。
【0038】
板材10の端面は、ガイドフレーム3の周縁部の全周に形成される側面3aと、保持孔23の壁面と、抜き孔24の壁面とから構成される。板材10の端面に、第1層11と第2層12と第3層13が露出する。即ち、板材10の端面に、第1層11の第1側面11cと第2層12の第2側面12aと第3層13の第3側面13aが露出する。ガイドリング2が取り付けられていないガイドフレーム3の単体の状態においては、板材10の端面の全体に第1層11の第1側面11cと第2層12の第2側面12aと第3層13の第3側面13aが露出する。
【0039】
板材10の端面のうち保持孔23の壁面については、ガイドリング2が装着されることにより、ガイドリング2の外周面によって少なくとも第1層11の第1側面11cが覆われる。保持孔23の壁面においては、第1層11の第1側面11cは露出しない。尚、第2層12の第2側面12aと第3層13の第3側面13aもガイドリング2の外周面によって覆われることが好ましい。ガイドリング2の外周面と第2層12の第2側面12aとの間に隙間が生じている場合には、その隙間に接着剤30が充填される。そのため、保持孔23の壁面において第2層12の第2側面12aは接着剤30によって覆われる。同様に、ガイドリング2の外周面と第3層13の第3側面13aとの間に隙間が生じている場合には、その隙間に接着剤30が充填される。そのため、保持孔23の壁面において第3層13の第3側面13aは接着剤30によって覆われる。
【0040】
板材10の端面において、第1層11の第1側面11cは、厚さ方向に沿って湾曲しておらず、板材10の両面に対して直交する直交面となっている。板材10の端面において、第2層12の第2側面12aと第3層13の第3側面13aは、それぞれ第1層11の第1側面11cと連続する。第2層12の第2側面12aと第3層13の第3側面13aは、厚さ方向に沿って湾曲する湾曲面である。第2層12の第2厚さT2の全体に亘って湾曲面が形成されていてもよいし、第2厚さT2の一部のみに湾曲面が形成されていてもよい。また、第3層13の第3厚さT3の全体に亘って湾曲面が形成されていてもよいし、第3厚さT3の一部のみに湾曲面が形成されていてもよい。即ち、湾曲面の曲率半径は、第2層12の第2厚さT2と等しいか、あるいは、第2厚さT2よりも小さいことが好ましく、また、第3層13の第3厚さT3と等しいか、あるいは、第3厚さT3よりも小さいことが好ましい。
【0041】
図8にガイドフレーム3の製造工程を模式図で示している。まず、
図8(a)のように平坦な板材10を準備する。板材10は、第1層11の両面にそれぞれ第2層12と第3層13を積層することにより形成される。第2層12と第3層13は、第1層11に接着される。次に、
図8(b)のように、板材10を打ち抜いて所定形状の平坦なガイドフレーム3を形成する。打ち抜き工程において、ガイドフレーム3の外形と共に保持孔23と抜き孔24が形成される。そして、平坦なガイドフレーム3を折り曲げる折り曲げ工程によって板材10を折り曲げて取付脚部22と支持脚部21を形成する。第1層11が熱可塑性樹脂から構成されていると、熱間鍛造により板材10を容易に折り曲げることができ、層間剥離を抑制できる。尚、第1層11を熱硬化性樹脂としてもよく、例えば、板材10を折り曲げ加工した後に第1層11を加熱硬化させてもよい。
【0042】
尚、ガイドリング2を取り付けていないガイドフレーム3の単体の状態でガイドフレーム3をバレル研磨することが好ましい。打ち抜き工程後の平坦な状態のガイドフレーム3をバレル研磨してもよいし、折り曲げ工程後のガイドフレーム3をバレル研磨してもよい。バレル研磨によって第2層12の第2側面12aと第3層13の第3側面12aを研磨して湾曲面とする。但し、バレル研磨において、第2層12と第3層13の湾曲面が第1層11まで到達しないようにする。これにより第1層11の露出を最小限に抑制できる。
【0043】
以上のように、ガイドフレーム3を構成する板材10が、金属製の第2層12及び第3層13と樹脂製の第1層11との多層構造となっているので、軽量化と高剛性化を容易に両立させることができる。しかも、板金製と同様に板材10から構成されているので、加工も容易である。
【0044】
第1層11は樹脂製であるため傷つきやすく、傷ついた第1層11に釣糸が触れると釣糸が損傷しやすい。本実施形態のガイドフレーム3においては、樹脂製の第1層11の両面(第1面11a及び第2面11b)が金属製の第2層12と第3層13で覆われて保護されている。そのため、第1層11の露出が最小限に抑制され、釣糸の損傷を抑制することができる。
【0045】
取付脚部22において金属製の第2層12が竿体4に接する。そのため、釣糸ガイド1を竿体4にしっかりと固定することができる。取付脚部22の下面22aの全体が第2層12によって構成されているので、取付脚部22において第1層11の露出が防止され、釣糸ガイド1を竿体4に強固に固定できる。更に、取付脚部22の上面22bの全体が第3層13によって構成されているので、釣糸ガイド1を巻糸によって竿体4に取り付ける際に、巻糸を取付脚部22の上面22bにしっかりと巻き付けることができる。
【0046】
第1層11が第2層12と第3層13の間に配置されていて、第1層11の両面11a,11bが第2層12と第3層13によって保護されている。そのため、第1層11の両面11a,11bの傷付きが第2層12と第3層13によって防止される。
【0047】
第1層11の第1厚さT1が板材10の全体の厚さTの大部分を占めている。そのため、ガイドフレーム3を容易に軽量化できる。特に、第2層12の第2厚さT2と第3層13の第3厚さT3がそれぞれ板材10の全体の厚さTの10%以下であると、ガイドフレーム3をより一層容易に軽量化できると共に、板材10の折り曲げ加工も容易になる。
【0048】
ガイドフレーム3の側面3aに第1層11の第1側面11cが露出した状態にある。そのため、ガイドフレーム3を打ち抜き加工によって容易に形成できる。第1側面11cは厚さ方向に沿って湾曲していない直交面である。ガイドフレーム3の側面3aに、第1層11の第1面11aと第2面11bが露出しない。そのため、第1層11の第1面11aや第2面11bに釣糸が接触しにくい。即ち、第1層11に釣糸が接触しにくく、釣糸の損傷を防止できる。例えば、第2層12の湾曲面である第2側面12aと第3層13の湾曲面である第3側面13aが第1層11の第1側面11cまで延びていると、第1層11の第1側面11cの例えば厚さ方向の両端部が湾曲面となる。その場合、ガイドフレーム3の側面3aにおいて第1層11の第1面11aと第2面11bが露出し、その露出部分が傷つきやすく、毛羽立ちやすい。そのため、毛羽立った露出部分に釣糸が接触すると、釣糸が損傷しやすくなる。それに対して、第2層12の湾曲面である第2側面12aと第3層13の湾曲面である第3側面13aが、第1層11の第1側面11cまで延びずに第2層12の第2側面12aと第3層13の第3側面13aの範囲内に留まっていると、ガイドフレーム3の側面3aにおいて第1層11の第1面11aと第2面11bが露出せず、ガイドフレーム3の側面3aが傷つきにくくなり、釣糸の損傷が防止される。一方、第2層12の第2側面12aと第3層13の第3側面13aが厚さ方向に沿って湾曲した湾曲面であると、第2層12の第2側面12aや第3層13の第3側面13aに釣糸が接触しても釣糸が損傷しにくい。
【0049】
保持孔23の壁面においても、ガイドフレーム3の側面3aと同様に、第1層11と第2層12と第3層13が露出している。従って、第1層11の強化繊維が保持孔23の壁面に露出している。上述のように、保持孔23は、打ち抜き工程において打ち抜き加工されたものである。そのため、第1層11の強化繊維は、保持孔23の壁面において切断された状態にあり、強化繊維の切断面が保持孔23の壁面に露出する。強化繊維は、第1層11の樹脂よりも硬い。そのため、保持孔23の壁面において、強化繊維の切断面は、第1層11の樹脂よりも径方向内側に突出しやすい。従って、保持孔23の壁面に露出している第1層11は、粗面となる。そのため、接着剤30が保持孔23の壁面に付着しやすく、ガイドリング2を保持孔23の壁面に強固に固定することができる。
【0050】
更に、保持孔23を打ち抜き加工する際において、第1層11を厚さ方向の両側から第2層12と第3層13が支えている。そのため、保持孔23の壁面において第1層11の全周の一部に欠けが生じたりすることが防止され、保持孔23を正確に形成することができる。そのため、ガイドリング2を保持孔23にしっかりと固定することができる。
【0051】
また更に、板材10は、相対的に柔らかくて厚さ方向に弾性変形しやすい第1層11が、相対的に硬くて厚さ方向に弾性変形しにくい第2層12と第3層13の間に配置された構成となっている。そのため、板材10に保持孔23を打ち抜き加工する際に、第1層11が厚さ方向に弾性変形して圧縮され、その圧縮状態で第1層11に保持孔23が形成されることになる。そして、保持孔23が形成された後においては、第1層11が元の第1厚さT1に復元する。それにより、
図9(a)のように、保持孔23の壁面において、第1層11に形成された孔部分が第2層12及び第3層13に形成された孔部分に比して若干拡径することになる。つまり、保持孔23の壁面において、第1層11の孔部分が第2層12及び第3層13の孔部分よりも径方向外側に若干凹んだ状態となる。そのため、
図9(b)のように、保持孔23の壁面における第1層11の環状の凹部31を接着溜まりとして利用することができ、ガイドリング2を強固に接着固定することができる。尚、
図9においては、凹部31を誇張して図示している。一方、保持孔23の両開口縁部は、相対的に硬い第2層12及び第3層13で形成されているので、保持孔23の両開口縁部を正確に形成することができ、ガイドリング2を第2層12と第3層13でしっかりと保持することができて、ガイドリング2の緩みや落下を防止できる。
【0052】
尚、
図10(a)のように、取付脚部22の上面22bにおける左右方向即ち竿体4の周方向の両端部を斜めに傾斜した形状としてもよい。例えば、取付脚部22の上面22bを左右方向に沿って上側に湾曲する形状としてもよい。取付脚部22の上面22bの左右両端部を斜めに研磨除去してもよい。その場合、取付脚部22の上面22bにおいて第3層13が切除され、取付脚部22の上面22bに第1層11が露出する。
【0053】
また、
図10(b)のように、取付脚部22の上面22bを後側に向けて斜めに傾斜した形状としてもよい。取付脚部22の上面22bを後側に向けて斜めに研磨除去してもよい。この場合においても、取付脚部22の上面22bにおいて第3層13が除去され、取付脚部22の上面22bに第1層11が露出する。尚、取付脚部22の上面22bのうち支持脚部21に近い前側の部分については残存していることが好ましく、第3層13が支持脚部21と取付脚部22との間の境界部25を越えて取付脚部22の上面22bまで延びていることが好ましい。境界部25における強度低下を抑制できる。
【0054】
このように取付脚部22の上面22bに第1層11が露出した場合であっても、釣糸ガイドを竿体4に取り付ける際に、取付脚部22の上面22bを巻糸が覆うので、取付脚部22の上面22bに露出した第1層11は巻糸によって覆われることになる。
【0055】
尚、上記実施形態では、支持脚部21に抜き孔24が設けられていたが、抜き孔24が形成されていないものであってもよい。支持脚部21が取付脚部22に対して斜め上方に立ち上がっていたが、支持脚部21が取付脚部22に対して垂直上方に立ち上がっていてもよい。
【0056】
板材10が第3層13を備えるものであったが、第3層13が省略されてもよい。第2層12は釣糸ガイド1の前面に配置されたが、後面に配置されてもよく、第2層12は第1層11に対して前後何れに配置されてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 釣糸ガイド
2 ガイドリング
3 ガイドフレーム
3a 側面
4 竿体
10 板材
11 第1層
11a 第1面
11b 第2面
11c 第1側面
12 第2層
12a 第2側面
13 第3層
13a 第3側面
20 保持部
21 支持脚部
22 取付脚部
22a 下面
22b 上面
23 保持孔
24 抜き孔
25 境界部
30 接着剤
31 凹部
T 全体の厚さ
T1 第1厚さ
T2 第2厚さ
T3 第3厚さ