(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006841
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】二段式浮体型植物養生基盤
(51)【国際特許分類】
A01G 31/00 20180101AFI20240110BHJP
【FI】
A01G31/00 604
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022116762
(22)【出願日】2022-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】507203744
【氏名又は名称】武田 実
(72)【発明者】
【氏名】武田 実
【テーマコード(参考)】
2B314
【Fターム(参考)】
2B314MA33
2B314NA24
2B314NC38
2B314ND05
2B314ND06
2B314ND13
2B314ND16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】根菜類、木本植物、草本性植物およびシダ・コケ植物の養生を行浮体植生基盤を提供する
【解決手段】浮体によって液面から浮上させた基盤部分をもたせ、基盤内部にある浮体の水面より上に位置する場所に気体が常に存在する空間を内部空域にもち、水域と養生域との水の移動を遮断させ、浮体基盤の水上部の安定化と養生部の含水率をコントロールできる浮体式基盤の上部に独立した浮体基盤を設置し、本体および中核浮力体に開口部を設ける浮体植生基盤。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水または養液のある水域に浮体させ、これら液体が存在する領域から、毛細管現象、またはこれと同等の性質を有する輸送体を介して、植物を養生する領域に水あるいは養液を供給させる本体の浮体植生基盤に、独立して浮力する中核浮力体をもつことを特徴とする植物養生基盤。
【請求項2】
前記植物養生基盤において、本体の浮体養生基盤および独立して浮力する中核浮力体に開口部を設けることで、外部と内部の絶対空間領域との液体あるいは気体の移動を可能にした請求項1記載の浮体植生基盤。
【請求項3】
請求項1~2のいずれかに記載の浮体植生基盤において、固定式の植生基盤の一部あるいは全部を、絶対空間をもつ浮体に組み込んで植物を養生する、植生基盤の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植生基盤、具体的には根菜類、木本植物またはその苗、草本性植物全般、およびシダ・コケ植物全般の養生を行うことを主要な目的とする浮体植生基盤、およびその使用方法に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
近年、植物養生基盤として、水あるいは養液のある水域から、これらを毛細管現象によって植物養生領域へ輸送する構造物(「輸送体」、「揚水体」または「浸潤体」ともいう)を介し、植物を養生する基盤および手法が開発されている。この原理をもとに開発された基盤技術として、輸送体の素材には生物系のミズゴケおよびその乾燥体が、非生物系素材としては石質やプラスチックを加工した薄層系の揚水体および浸潤体が開発された。これにより、ミズゴケあるいは乾燥させたミズゴケを介してコケ植物およびその他植物の栽培・増殖、さらには絶滅危惧植物であるミズゴケ属に属する種を含むその他希少種が安定かつ容易に大量栽培することが可能になった。この発明をもとに、現在、ダムや湖水でのフロー栽培ならびに自然環境に生息する環境修復など屋外条件下を前提としたフィールドだけでなく屋上緑化、さらには壁面緑化におけるミズゴケ、ミズゴケ以外のコケ植物、またはシダ植物を含む維管束植物の生育基盤とし大きく貢献している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記基盤には、地面に固定された固定式基盤と、水面に浮上する浮き式基盤(「浮体式」、「フロート式」または「いかだ式」基盤ともいう)の2つの型に大別される。前者は、地面や屋上といった固体の場に、基盤を固定して植物の養生を行うものであり、田畑での植物の栽培、緑化では「人工地盤」として古来あるいは従来より実施されている方法に基づいた栽培方法を応用して開発された基盤あるいは技法である。これに対して後者の浮体式は浮体物を用いて水面上にある領域で植物を養生する技法であり、「浮き島」や「人工浮島」として主に水辺の植物を中心に「人工湿原」構築の技法として開発されてきた経緯をもつ。また、近年では植物工場の養液栽培にも利用され、具体的には発泡スチロール等を加工した浮き式の基盤を用い、浮体の上部に植物の地上部にあたる器官(主に葉)を、浮体の下部にあたる水域では植物の地下部にあたる器官(主に根)を養生し、いわゆる「水耕栽培」形式として浮き式基盤が利用されている。近年、土層構造をもつ浮体基盤が発明され、これにより樹木や根菜類などを含め限定されることなく栽培植物を養生できるようになった。この基盤構造の特徴は、浮体式の基盤養生部に水または養液が直接侵入することを遮断する絶対空間領域を設けた点と、かつこの気体領域の空間配置が浮体状態で水面に対し同じ状態に保たれて傾かないための、空間配置維持機能としてはたらく開放系部が設けられたことである。しかしながら、この構造を有する浮体基盤を使用しても、1)幼苗あるいは幼植物体を含む小さな植物体の初期生育に大幅な遅れが生じ、設置環境によっては枯死してしまう問題、および2)基盤内の養生部の湿潤状態を一定の含水率に保たせることを可能しているが、湿潤状態をもつ絶対空間の水あるいは養液の気化が生じにくく、水あるいは養液の循環や気化熱発生の効率が下がることで、植物の養生に制限がかかるといった未解決の問題が認められる。今後、このような植物の養成に適した浮体基盤の開発が待たれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者はこの課題の解決に向けて鋭意検討を重ねた。その結果、本体である浮体式基盤の養生部に、この基盤とは別に独立して浮力する中核浮力体を設置することで、幼苗および幼植物体などの小型植物体の生育を順化や育苗の段階を経ることなく養生を行うことが可能となり、また本体および中核浮力体に開口部を設けることで、植物養生下部の絶対空間領域の通気性を確保し、これにより、当該空間内部の湿潤状態を保ちながらも水あるいは養液の循環または気化熱発生により養生植物の生育を阻害してしまう養生下部領域の温度上昇を抑えることに成功した。これを浮体植生基盤として提供することにより、上記の課題を解決できる本発明を完成した。
【0005】
すなわち本発明は、浮体によって液面から浮上させた基盤部分をもたせ、その基盤内部にある浮体の水面より上に位置する場所に気体が常に存在する空間(単に絶対空間ともいう)を内部空域にもち、さらに水域と養生域との水の移動を遮断させることで、浮体基盤の水上部の安定化と養生部の含水率をコントロールできる浮体式基盤(以下、これを本体、浮体基盤または単に浮力盤とも称する)をさらに改良したもので、この浮体基盤の上部に、1)独立した浮体基盤(以下、これを中核浮力体と称する)を設置し、かつ2)本体および中核浮力体に開口部を設けることで、植物養生下部の絶対空間領域の通気性を確保し、これにより、当該空間内部の湿潤状態を保ちながらも水あるいは養液の循環または気化熱発生が飛躍的に向上した。そして、3)これら2つの構造体の設置により、特に幼苗および幼植物体などの小型植物体の生育を順化や育苗の段階を経ることなく養生を行う浮体植物基盤の使用方法を提供する発明である。
【0006】
なお、養液とは、特に断らない限り、任意生物を生存、生長あるいは増殖可能な全ての溶液である。また、蒸留水や培養液を含め、前記の生長可能な養生液に殺菌・消毒処理を施したものも範疇に含み(市販品も可)、さらに、前記の養生液に微生物などの生物が加えられても、自然増殖してもよい。いずれにしても、「養液」とは、主に、水あるいは生物を生存あるいは成長・増殖させるための培養液であるものを意味するもので、生物の種類のいかんに問わず、水と同様に循環するものであれば問題とならない。
【0007】
なお、輸送体(「揚水体」または「浸潤体」)とは、毛細管現象による水の移動を含め、紙、布、綿、パルプなどの天然の植物性繊維素材、およびスポンジなどの化学合成系のプラスチック素材、発泡性のセラミック・陶磁、グリーンビズ、モルタル、コンクリート二次製品、レンガ、タイル、など、養液を水位よりも上部に引き上げることが可能な構造体であればよく、その材質およびその組み合わせは特に限定されるものではない。またミズゴケ、砂岩・泥岩などの砕屑性、凝灰岩などの火砕性、氷河堆積岩などの破砕性といった堆積岩、溶岩・火山噴出物・マグマなどから形成される火成岩、あるいは生物の堆積物でできる石灰岩、人工的につくられるコンクリート材や、これら粉砕物を単独あるいは複合して形状化したものも輸送体の範疇に含める。例えば、薄層表面加工して、粒形を一律にした砂や溶岩の粉末粒子を接着剤等で固着するものなども、これに該当する。
【0008】
「輸送体」は、養液を養生部に移動させるものであればよく、上部が開放された水路状の構造(水路ともいう)や、流入および流出部を主な開放部とするパイプ状の構造、あるいは水を溜めることが可能な袋状構造など、形状やその役割・用途は限定されない。また輸送体は、吸水性素材としてのミズゴケや石質素材もこれに該当し、本発明においてはこのような単独素材での利用や素材自体が限定されなくても利用できる点であり、例えば、非吸水性や疎水性の素材表面あるいは内部に吸水性素材を付着・充填させたり、あるいはそれらを粒上にしたものを混合して形状化した物体で、輸送体から養生部に養液を浸潤させての植物養生も可能である。
【0009】
本基盤において養生される植物は特に限定されず、維管束植物全般の養生が可能である。またコケ・シダ類全般やキノコ・菌類全般の養生も可能である。特に、ダイコン、ニンジン、ゴボウ、イモ類などの根菜類や、サンショ、柑橘系樹木など人工地盤や畑作で一般に作付される農作物の養生が可能である。また、発芽した実生を利用する植物であるもやし、スプラウト類である、ダイズ、緑豆、レタス、ゴマの種子および実生等を挙げることができる。また、ハーブ類などの植物としてアーティチョーク、アイスランドポピー、アガスタケ、アグリモニー、アチェトサ、アニス、アルカネット、アルニカ、アルファルファ、アンゼリカ、イエローフロスフラワー、イタリアンパセリ、インジェローニ・ミラノ、ウェルド・ダイヤース、ウォーター・クレス、ウォード、ウッドセージ、ウッドラフ、エキナセア、エルバガット、エルバステラ、エレカンペイン、エンダイブ、オーナメンタル・グラス、オールド・マンズ・ビヤード、オネスティー、オレガノ、オレチ、クレソン、カイヤール、ケシ(食用・観賞用)、コリアンダー、香菜、コウサイ、サットン、サフォークハーブ、シソ、セージ、セイボリー・ウインター、セロリ、ソーレル・ブルーキャットニップ、キャットミント、ナスターチューム・ドワーフシングルフェンネル・スイート(スイートフェンネル)、フレンチ、チャービル、ティル、バジル、パセリ、ヒソップ、フランキ、マロウコモン・ラージフラワー、マロウブルー、ペッパー、ペパーミント、ペニーロイヤルミント、カラミントなどのミント類、ポピー、ミントペニーロイヤル、ルッコラ、レモンバーム、レモングラス、ロイヤルフルール、ロケット、ローズマリー、ヤロウ、ワームウッドなどが例示できる。また、蔬菜類や野菜類の食用となる植物として、イチゴ、トマト、ナス、キュウリ、メロン、オクラ、トマト、ピーマン、パプリカ、ハバネロ、カボチャ、ズッキーニ、ニガウリ、スイカ、チシャ、アブラナ、キャベツ、レタス、ハクサイ、ホウレンソウ、ネギ、ニラ、ブロッコリー、カリフラワー、カイワレ、カイワレダイコン、トウガラシなどが挙げられる。花、花卉類、観賞植物、緑化植物として、パンジー、ビオラなどのスミレ類、コスモス、ヒマワリ、アスターなどの菊類、ユリ類、コチョウランやデンドロビウムなどのラン類、シバ類(日本シバ、オニシバ、キャッツグラス、リジェネラジオン、ケンタッキブルーグラス、ジェイターフツー、バミューダグラス、ベントグラス)、トルコギキョウなどのキキョウ類、キンレンカ、キンセンカ、ジニア(百日草)、アグロステンマ、ナデシコ、アゲラタム、アサガオ、アジサイ、アスクレピアス、アナキクルス、アネモネ、アマランテ、アブラナ、アビラス、アリッサム、アンセミス、アンドロサセ、イベリスケイトウ、インスタンツ、インパチェンス、ヴァレリアン、エーデルワイス、エキナセア、エキノプス、オーブリエチア、オエノテラ、オキシペタラム、おじぎ草、オシロイバナ、オステオスペルマム、オダマキ、オックスリップ、オミナエシ、カタバミ、キキョウ、サルタン、デイジー、ハゴロモルコウソウ、ヒビスカス、バラ、マーガレット、マリーゴールド、ヤグルマギク、ワレモコウ等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また湿原植物や水生植物(水中~水周辺を中心に生活する植物の総称)一般を挙げることができる。具体的には、シュロガヤツリ、地性ラン(アツモリソウ、クマガイソウ、ミズトンボ、シュンラン、トキソウ、カキラン、サギソウ、パフィオペディルム属、フラグミペディウム属、コチョウラン等)、ユキノシタ科に属する植物、アヤメ科に属する植物、モウセンゴケ科に属する植物(モウセンゴケ、コモウセンゴケ、ドロセラファルコネリー、ドロセラペティオラリス、ドロセラアデラエ、アフリカナガバノモウセンゴケ、ドロセラピグミー、イトバモウセンゴケ、ナガバノモウセンゴケ、イシモチソウ、ハエトリソウ、ドロソフィラムルシタニカム、ムジナモ等)、ムシトリスミレ属に属する植物、ビブリス属に属する植物、ウツボカズラ属に属する植物、セファロータス属に属する植物、サラセニア属に属する植物、ダーリングトニア属に属する植物、ホソバノセイタカギク等を例示できるが、養生植物はこれらに限定されるものではない。
【0010】
ここで、生長した植物は、「収穫物」として、また本基盤で作付けされる植物全般の苗床として利用することも可能である。
【0011】
図1は二段式浮体型植物養生基盤の姿図である。浮力盤1には、開口部(後面)2を設け、浮力盤上の養生部に中核浮力枠3をもつ独立した浮力体である中核浮力体を設置する。尚、この浮力体を設けることなく植物を養生してもよい。浮力盤および中核浮力体には、それぞれ側面開口部5、6や前面開口部7を設け、植物養生下部の絶対空間領域の液体および気体を移動できる。開口部のサイズは特に限定されないが、浮力盤または中核浮力体のサイズの浮体の厚さは1/1000~1/3程度、通常は1/10~1/100が好適である。またサイズの形状は通常は長方形あるいは円形であるが特に限定されない。開口部の数は、浮力盤および中核浮力体とも1個から10000箇所程度、通常は2~20個が好適である。浮力盤1は水あるいは養液の入った水溜め器8に入れてもよい。浮力盤の養生部は水位9より常に上部にあり、この水位9から養生部の上部までの距離は浮体素材や基盤がもつ構造の浮力によって調整することが可能である。浮体の形状は特に限定されず、曲線形状や円形など、水面に養生部位が浮上すれば形状は特に限定されない。また、格子体の形状は特に限定されず、水を輸送し植物を水上で育成できる構造体であればよく、その形状は特に限定されない。浮体の厚さは特に限定されないが、0.1mm~100mm程度、通常は2mm~50mmが好適である。また、その素材は発泡スチロール、断熱材全般(スタイロホームなど)、プラスチック、木材、ビニール、樹脂、ゴム、コンクリート、石材、金属等、特に限定されない。また、ビニールやガラス製容器に空気を入れるなど液に浮くものであれば、素材や形は特に限定されない。浮体は加工が容易で、かつ浮力のある素材が好適であるため、このような点から、発泡プラスチック(発泡スチロール)、ポリスチレン樹脂(スタイロホーム)、軽量プラスチック等が、好適な素材として例示される。
【0012】
図2は平型中核浮力体の姿図である。浮力枠10の形状を強化する支持板11を設けてもよい。本中核浮力体の浮力枠10および支持板は、板状の物体(平面体あるいは平面部材ともいう)を格子状に組み合わせた構造体(以下、格子体と称する)を組み込んで同一の浮力体構造を作製してもよい。尚、この場合の格子体における溝の切れ込みは1mm~500mm程度、通常は20mm~200mmが好適である。また、格子体の上部の養生部に網状体を設置し、植物を養生してもよい。
【0013】
図3は開口部をもつ山型中核浮力体の姿図である。平型中核浮力体においても同様の開口部を持たせることで、好適な養生環境をつくることができる。台形の板状の物体あるいは山形状の板状の物体(以下、山型平面体と称する)12と浮力枠の板状物体(以下、浮力枠平面体と称する)13とを構成部材として山型中核浮力体は構築される。前面左開口部14や前面右開口部15を前部の浮力枠平面体に、中央開口部16や貫通部17を山形平面体12に、側面右開口部18や側面左開口部19を側部の浮力枠平面体に、また後面開口部20を後部の浮力枠平面体に設けてもよい。これら平面体は、特に断らない限り、厚みをもった面上構造を形づくる全ての素材で、表面の凹凸や、湾曲、1平面体における厚みの違いがあっても、平面に穴や切れ込みがあってもよい。平面体の素材としては、木材、ポリプレート、化学合成系のプラスチック素材、発泡樹脂、アルミやステンレスを含む金属、石、セラミック、陶器、瓦、グリーンビズ、モルタル、コンクリート二次製品、レンガ、タイル、コンクリート、ガラスなど、その種類は特に限定されるものではない。平面体の厚さは特に限定されないが、0.1mm~100mm程度、通常は2mm~50mmが好適である。また、その素材は、上記に挙げたとおり特に限定されないが、折り曲げが容易で、かつ、経時的な耐久性に優れた素材であることが好適である。このような点から、ポリプレート、ビニール、プラスチック等の耐錆性に優れたものが好適な素材として例示される。
【0014】
平型および山形の両中核浮力体のサイズの浮体の厚さは1/1000~1/3程度、通常は1/10~1/100が好適である。また浮力体の枠だけでなく支持用の平面体に開口部を設けてもよい。開口部のサイズの形状は通常は長方形あるいは円形であるが特に限定されない。開口部の数は、浮力盤および中核浮力体とも1個から10000箇所程度、通常は2~20個が好適である。
【0015】
平面部材を組み合わせて植生基盤を作製する場合には、特に格子状が好適である。ただし、平面体の固定角度は、通常は5度~175度程度、通常は、45度から135度が好適であり、必ずしも垂直(90度)に限定されるものではない。また、平面体のサイズは特に限定されないが、施工面に対し縦(高さ)2mm~500mm、横(幅または長さ)10mm~10000mm程度、通常は縦20mm~200mm、横100mm~1000mmが好適である。平面体どうしの配置は、
図2や
図3のように格子状の集合物である格子体が好適であるが、単独、平行あるいは不定配置など、施工表面に固定できればよく、必ずしも配置や配勾を限定するものではない。
平面部材は、組み合わせた部材を固定できるものであればよく、例えば、くぎ、留めネジ、ホッチキス針などで固定できるが、特にタッカー針が好適である。また、平面部材の素材も、木質、鉄やステンレスなどの金属など特に限定されない。
【0016】
図4は揚水体(揚水体または吸水体ともいう)21を設置した山形中核浮力体の姿図である。揚水体は、平型中核浮力体に設置してもよく、この中核浮力体の形状は本体である浮力基盤の植物養生部に設置できるものであればサイズと形状は特に限定されない。また設置される揚水体は、本体に使用してもよい。揚水体は設置し、網状体で一部あるいは全面を被覆してもよい。揚水体の素材は、毛細管現象による水の移動を含め、紙、布、綿、ウェットティッシュ、パルプなどの天然の植物性繊維素材、およびスポンジなどの化学合成系のプラスチック素材、発泡性のセラミック・陶磁、グリーンビズ、モルタル、コンクリート二次製品、レンガ、タイル、など、養生液を水位よりも上部に引き上げることが可能な構造体であればよく、その材質およびその組み合わせは特に限定されるものではない。なお、パルプの形状は「おがくず」のようなものをミキサーで粒子化や微小化してもよい。またミズゴケ、ピートモス、お茶の葉(使用済みのものを含む)および植物全般の葉およびこれを微細化したものでもよい。さらに、これら上記に挙げた物質の粉砕物を単独あるいは複合して形状化したものも揚水体の範疇に含める。例えば、薄層揚水体表面加工として、粒形を一律にした砂や溶岩の粉末粒子を接着剤等で固着するものなどである。接着剤は、塩ゴム系、ウレタン系、アクリル系などを使用する。
【0017】
網状体5の素材は、プラスチック、木材、ビニール、樹脂、ゴム、コンクリート、石材材、金属等、特に限定されないが、折り曲げが容易で、かつ、経時的な耐久性に優れた素材であることが好適である。このような点から、ビニール、プラスチック(防水ゴム)等の耐錆性に優れたもの、特にバードネット等が好適な素材として例示される。被覆網状体9のネットの厚みは0.1mm~50mm程度、通常は2mm~50mmが好適である。またメッシュのサイズは1mm~100mm程度、通常は2mm~50mmが好適である。本被覆網状体9は平面立て構造体の上部に設けなくてもよいが、植物を定着後に被覆網状体9で被覆するのが好適である。また、格子体の取り付けはタッカーか結束バンドでとめてもよい。固定部材は、平面体と平面体を連結固定できるものであればよく、例えば、くぎ、留めネジ、ホッチキス針などで固定できるが、特にタッカー針が好適である。また、当該部材の素材も、木質、鉄やステンレスなどの金属など特に限定されない。
【0018】
図5は山形中核浮力体を設置した浮体式植物養生基盤で、植物を養生した場合の断面図である。養生するミズゴケなどの植物苗あるいは幼植物体の種苗22を中核浮力体の養生面23に設置する。処理面24を本体の浮力盤25に設けることも可能である。本体の浮力盤25は水あるいは養液の入った水溜め器あるいは水槽26に入れて使用してもよい。浮力盤には浮力体開口部27を、中核浮力体には揚水体28を設ける。尚、上部の中核浮力体の周囲に傾斜29を設けてもよい。中核浮力体の開口部30は支持板31の両サイドに設けることが好適である。枠内の支持板31の数は、1~100枚程度、通常は1~10枚が好適である。尚、中核浮力体枠部位にも傾斜構造をもたせてもよい。浮力盤および中核浮力体にもたせる傾斜角度は中心部にむかって傾斜させ、その角度は5°~80°程度、通常は20°~70°が好適である。浮力盤の浮力体開口部27は水位33より常に上部にあり、この水位33から養生部の上部までの距離は浮体素材や基盤がもつ構造の浮力によって調整することが可能である。浮力盤の底には、中核浮力体を安定化させる支持体34を設置する。
【0019】
浮力盤の表面処理を行う場合、表面を事後的に硬化し、かつ固化前は粘調な液体素材を塗布する。かかる事後的な硬化素材としては、接着剤又は水性塗料、例えば、シリコン系接着剤、水性樹脂塗料(水性アクリル樹脂塗料等)、ウレタン系接着剤、酢酸ビニール系接着剤、セルロース系接着剤、合成ゴム系接着剤、紫外線硬化系接着剤、嫌気性接着剤、紫外線嫌気性接着剤等を挙げることができるが、水性樹脂塗料(水性アクリル樹脂塗料等)又はシリコン系接着剤が好適である。なお、水性樹脂塗料を用いる場合には、所望する色彩を選択することも可能である。
【0020】
この塗布の方法は、特に限定されず、例えば、上記液体素材を入れた射出用容器(射出用チューブ等)から、当該液体素材を対象物の表面に射出し、これを小手等で均すことも可能であり、薄く塗りたい場合は、刷毛等に当該液体素材を付着させて、これを対象物表面に塗布することも可能である。
【0021】
次に、対象物の表面に塗布された上記液体素材を毛羽立たせたり白色素材で施工することが好適である。この工程を行う方法は、特に限定されないが、例えば、毛羽立たせる場合は、対象物表面の液体素材の表面に剛性を有する起毛性部材(例えば、針金の刷毛)でたたくなどの方法をとる。
【0022】
次に、対象物表面に塗布した液体素材の上から、粒子(砂利、砂、土、陶器粉、ガラス粉、灰類、軽量骨材、粘土、ピートモス、乾燥ミズゴケの粉砕物、パーライト等)、顔料、色素、コケ植物、緑藻類等をふりかけた後、好適には、対象物表面に、通常の上水道口にシャワーノズルを付加して生成させた程度の水流を接触させて、余分なふりかけ物を洗い流す。次いで、好ましくは、対象物表面を軽くなでつけてならし、次いで、この液体素材を固化(乾燥、紫外線照射、嫌気等の事後的硬化素材の種類に応じた固化方法による)させることにより、土壁にも似た、自然な風合い表面を、対象物上に形成することができる。また、後述する透水組成物の前駆組成物を、上記の土質細物として用いることも可能である。
【0023】
上記の対象物の表面に、塗膜を設けることが、対象物の表面における微生物の栄養源が表面に露出するのを防ぐために好適である。ただし、対象物の表面上にふりかけた物が、ミズゴケ以外のコケ植物や緑藻のような生物である場合は、この塗膜を設ける工程を行うことは、当該生物が生命活動を行う上での障害になるため、好適ではない。塗膜は、対象物の表面上に所望するコーティング素材の塗布を行い、これを乾燥・固化させることで設けることができる。このコーティング素材としては、特に限定されず、現在、上薬として提供されている製品を用いることが可能であるが、可能な限り、透明性が保たれ、かつ、安全性の高いものを用いることが好適である。例えば、水性の下地安定剤として販売されているアクリル樹脂の水性剤(アトミクス株式会社製等)を、このコーティング素材として転用することが非常に好適である。さらに、必要に応じて、このコーティング素材の上面に防水処理、例えば、シリコーンコーティング剤の塗布処理を行うことにより、防水を行うことができる。
【0024】
浮力盤の素材としては、素材のうち、発泡スチロール、断熱材全般(スタイロホームなど)、プラスチック、木材、ビニール、樹脂、ゴムなど浮力のあるいものであれば特に限定されない。内部に気体部分を設けた構造であれば、コンクリート、石材、金属類でもよい。ただし、発泡スチロールや断熱素材は、水不透性で、かつ、生物の栄養源を実質的に含有しないだけではなく、所望の形状への加工が容易であり、かつ、軽量であり、取り扱い易いという長所がある。また、上述したように水に浮くので、本発明においては特に好適な素材である。
【0025】
このような工程を行うことが可能な対象は、発泡スチロールに限らず、単純ミズゴケ栽培基における器物となり得るあらゆる素材を選択することが可能である)。
【0026】
水溜めの部材としては、厚さは特に限定されないが、0.1mm~100mm程度、通常は2mm~50mmが好適である。また、その素材は、プラスチック、木材、ビニール、樹脂、ゴム、コンクリート、石材、金属等、特に限定されないが、折り曲げが容易で、かつ、経時的な耐久性に優れた素材であることが好適である。このような点から、ビニール、プラスチック(防水ゴム)等の耐錆性に優れたものが、好適な素材として例示される。水溜めの形状については、箱型、円筒型、円錐型、円柱型、楕円形、ドーム型、コンベックス(蒲鉾状)およびこれ以外の形あるいは不定形でもよく、水を溜めることが可能な形状であれば特に限定されるものではない。また水溜め体7を複数の素材から構成してもよく、例えば、底部を木や防水樹脂にしたり、シリコンを接着するなどして、水溜めができる状態にしてもよい。
【0027】
図6は、
図5の種苗施工後の苗が養生によって生育した生産植物体37の断面図である。このように育苗の管理等にも活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【
図4】揚水体を設置した山形中核浮力体の姿図である。
【
図5】中核浮力体を設置した浮力盤で植物を養生した場合の断面図である。
【
図6】種苗施工後の苗が養生によって生育した生産植物体の断面図である。