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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068410
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】自己修復型コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/03 20060101AFI20240513BHJP
【FI】
H01R13/03 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178842
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】390005049
【氏名又は名称】ヒロセ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100128428
【弁理士】
【氏名又は名称】田巻 文孝
(72)【発明者】
【氏名】石井 健太郎
(57)【要約】
【課題】端子間の端子接点部に導通不良が発生しても、自己的に導通不良を修復することができる自己修復型コネクタを提供する。
【解決手段】本発明による自己修復型コネクタ1は、相手側コネクタ20に嵌合して端子10、24同士を導通させると共に、その端子同士の導通不良を自己修復するようになっている自己修復型コネクタであり、ハウジング6と、相手側の端子24に端子接点部10bを介して接触する端子部材10とを備え、ハウジングには、金属ナノ粒子Bの分散液Cを収容する収容部14、および、収容部14と端子部材10との間を上下方向に流体連通する流体連通部12が形成され、収容部に収容された金属ナノ粒子の分散液は、導通不良が発生した場合に、端子接点部に滴下される。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手側コネクタに嵌合して端子同士を導通させると共に、その端子同士の導通不良を自己修復するようになっている自己修復型コネクタであって、
非導電性材料で形成されたハウジングと、
上記ハウジングに一端部が保持され、上記相手側コネクタの端子と端子接点部を介して接触する端子部材と、を備え、
上記ハウジングには、金属ナノ粒子の分散液を収容する収容部が形成され、
上記ハウジングには、上記収容部と上記端子部材との間を流体連通する流体連通部が形成され、
上記収容部に収容された金属ナノ粒子の分散液は、所定の場合に、上記端子接点部に滴下される、ことを特徴とする自己修復型コネクタ。
【請求項2】
上記端子部材には、上記端子接点部の位置に、上記金属ナノ粒子の分散液を流体連通させるための流体連通路が形成されている、請求項1に記載の自己修復型コネクタ。
【請求項3】
上記端子部材に形成された流体連通路は、上記端子部材を上下方向に貫通する単数または複数の断面矩形状の孔部または断面円形状の孔部である、請求項2に記載の自己修復型コネクタ。
【請求項4】
上記ハウジングの収容部は、上記金属ナノ粒子の分散液を皮膜内に内包するマイクロカプセルを複数収容するように形成され、
上記マイクロカプセルは、所定の温度まで高められると、その皮膜が破壊されて内包する金属ナノ粒子の分散液が流出するようになっており、
上記ハウジングの収容部は、上記端子接点部に導通不良が発生したとき、その導通不良に起因して上記端子接点部で発生する熱が上記収容部まで伝達されて収容されたマイクロカプセルの皮膜が破壊され、かつ、流出した金属ナノ粒子の分散液が、上記ハウジングの流体連通部および上記端子部材の流体連通路を介して上記端子接点部に滴下されるように、上記ハウジングにおいて上記流体連通部の上方に隣接した位置に形成されており、
上記所定の場合は、上記端子接点部に導通不良が発生したとき、その導通不良に起因して上記端子接点部で発生する熱が上記収容部まで伝達されたときである、請求項1または請求項2に記載の自己修復型コネクタ。
【請求項5】
上記ハウジングの収容部は、上記金属ナノ粒子の分散液を皮膜内に内包するマイクロカプセルを複数収容するように形成され、
上記マイクロカプセルは、所定の温度まで高められると、その皮膜が破壊されて内包する金属ナノ粒子の分散液が流出するようになっており、
上記ハウジングには、上記収容部に収容されたマイクロカプセルを加熱するための熱源が設けられ、上記熱源による熱を受けてマイクロカプセルの皮膜が破壊され、流出した金属ナノ粒子の分散液が、上記ハウジングの流体連通部および上記端子部材の流体連通路を介して上記端子接点部に滴下されるように、上記収容部に隣接して設けられており、
上記所定の場合は、上記熱源が作動したときである、請求項1または請求項2に記載の自己修復型コネクタ。
【請求項6】
上記熱源は、所定の検出器により検出される、上記自己修復型コネクタの端子部材と上記相手側コネクタの端子との導通不良による抵抗値の上昇を検知したとき作動するよう構成される、請求項5に記載の自己修復型コネクタ。
【請求項7】
上記ハウジングの収容部は、上記金属ナノ粒子の分散液を貯めて収容するよう形成され、
上記収容部または上記流体連通部には、上記収容部に収容された金属ナノ粒子の分散液を、上記所定の場合に滴下させるよう構成されたバイメタル部材、形状記憶合金部材および/または線膨張係数の異なる部材が設けられている、請求項1または請求項2に記載の自己修復型コネクタ。
【請求項8】
上記ハウジングの流体連通部は、上記端子部材を左右方向から挟み込むように収容するスリット部である、請求項1または請求項2に記載の自己修復型コネクタ。
【請求項9】
上記自己修復型コネクタはプラグコネクタであり、上記相手側コネクタは所定の基板に実装されたレセプタクルコネクタである、請求項1または請求項2に記載の自己修復型コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己修復型コネクタに係り、特に、相手側コネクタに嵌合して端子同士を導通させると共に、その端子同士の導通不良を自己修復するようになっている自己修復型コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、相手側コネクタ(たとえば基板上に実装される「レセプタクルコネクタ」)に、ケーブルコネクタ/プラグコネクタを挿入して、それぞれの端子同士を接触させて電機的接続により導通するためのコネクタに関する種々の技術が知られている。たとえば、特許文献1には、電線コネクタと、この電線コネクタと嵌合する基板コネクタとを備え、電線コネクタは、合成樹脂等の絶縁材によって形成されたハウジングと、このハウジングに装填される複数の金属製の端子と、導電性の金属板により形成され、ハウジングの周囲を覆うシェルとを有し、基板コネクタは、合成樹脂等の絶縁材によって形成された相手側ハウジングと、この相手側ハウジングに装填される複数の金属製の相手側端子と、導電性の金属板により形成され、相手側ハウジングの周囲を覆う相手側シェルとを有し、これらの電線コネクタと基板コネクタは、それらが互いに嵌合することにより、電線コネクタの端子と基板コネクタの端子とが接触して導通するようになっている。
【0003】
また、基板上の電気配線の自己修復技術として、所定の基材に配設された電気配線を、導電性のナノ粒子(主に金属ナノ粒子)を分散させた液体/流動体で覆っておき、電気配線にクラックが生じたとき、そのクラック部分に生じる電界と、いわゆる誘電泳動力とを利用して、流体中の導電性ナノ粒子をクラック部分に集約させると共に溶融させて架橋し、これにより、自己的に修復可能に構成された自己修復型配線が知られている(たとえば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-120686号公報
【特許文献2】特許第6507148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、たとえば原子力発電所、海底に敷設する設備、宇宙空間の衛星設備などのように、作業者が立ち入りにくいような特殊環境でも、いわゆる「コネクタ」が用いられる。このような特殊環境で用いられるコネクタは、たとえば接触不良による導通不良を起こした場合、作業者がすぐにコネクタの修理や基板の交換などをできず、長期にわたり導通不良を起こした状態に放置せざるを得ない、という問題が生じる可能性がある。そこで、近年、特にこのような特殊環境で用いられるコネクタや、また民生用のコネクタにおいても、導通不良が生じたとしても、一時的または半恒久的に自己修復するコネクタが必要とされる可能性がある。特に、交流電圧と、その周波数の規定/安定が重要な特殊電源回路において、そのような要望がなされている。
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、端子間の端子接点部に導通不良が発生しても、自己的に導通不良を修復することができる自己修復型コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために本発明による自己修復型コネクタは、相手側コネクタに嵌合して端子同士を導通させると共に、その端子同士の導通不良を自己修復するようになっている自己修復型コネクタであって、非導電性材料で形成されたハウジングと、ハウジングに一端部が保持され、相手側コネクタの端子と端子接点部を介して接触する端子部材と、を備え、ハウジングには、金属ナノ粒子の分散液を収容する収容部が形成され、ハウジングには、収容部と端子部材との間を流体連通する流体連通部が形成され、収容部に収容された金属ナノ粒子の分散液は、所定の場合に、端子接点部に滴下される、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明による自己修復型コネクタによれば、端子間の端子接点部に導通不良が発生しても、自己的に導通不良を修復することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態によるコネクタの斜視図である。
図2図1に示す第1実施形態によるコネクタのマイクロカプセル収容部、端子部材、端子部材を収容するスリット部を主に説明するための部分断面斜視図である。
図3】第1実施形態によるコネクタの正面図である。
図4図3に示すA-A線に沿って見た第1実施形態によるコネクタの断面図である。
図5】(A)は、第1実施形態によるコネクタが嵌合するレセプタクルコネクタの斜視図であり、(B)は、第1実施形態によるコネクタが嵌合するレセプタクルコネクタの正面図である。
図6】第1実施形態によるコネクタが基板上に実装されたレセプタクルコネクタに嵌合した状態を示す斜視図である。
図7A】第1実施形態によるコネクタの端子をレセプタクル端子と共に示す斜視図である。
図7B】第1実施形態の変形例によるコネクタの端子をレセプタクル端子と共に示す斜視図である。
図8】第1実施形態によるコネクタに収容されるマイクロカプセルの概念図である。
図9】嵌合状態における、第1実施形態によるコネクタの端子部材とレセプタクルコネクタの端子との接触状態をマイクロカプセル収容部と共に示す斜視図である。
図10】嵌合状態における、第1実施形態によるコネクタの端子部材とレセプタクルコネクタの端子との接触状態をマイクロカプセル収容部と共に示す図3のA-A線と同様の位置で沿って見た断面図である。
図11】第1実施形態の変形例によるフィルムヒータ付きコネクタの端子部材とレセプタクルコネクタの端子との接触状態をマイクロカプセル収容部と共に示す図3のA-A線と同様の位置で沿って見た断面図である。
図12】第1実施形態によるコネクタにおける金属ナノ粒子の分散液が端子接点部に滴下する状態を説明するための図9と同様に示す斜視図である。
図13】(A)は、第1実施形態によるコネクタにおける熱の伝達状態を説明するための斜視図であり、(B)は、第1実施形態の変形例によるコネクタにおける熱の伝達状態を説明するための斜視図である。
図14】(A)は、本発明の第2実施形態および第3実施形態によるコネクタのハウジング、収容部および分散液滴下構造の構成を模式的に示す図3のA-A線と同様の位置で沿って見た概略断面図であり、(B)は、(A)に示す本発明の第2実施形態および第3実施形態によるコネクタの作用を説明するための(A)と同様に示す概略断面図である。
図15】(A)は、本発明の第4実施形態によるコネクタのハウジング、収容部および分散液滴下構造の構成を模式的に示す図3のA-A線と同様の位置で沿って見た概略断面図であり、(B)は、(A)に示す本発明の第4実施形態によるコネクタの作用を説明するための(A)と同様に示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
先ず、図1乃至図4により、本発明の第1実施形態による自己修復型コネクタの全体構成を説明する。図1は、本発明の第1実施形態によるコネクタの斜視図であり、図2は、図1に示す第1実施形態によるコネクタのマイクロカプセル収容部、端子部材、端子部材を収容するスリット部を主に説明するための部分断面斜視図であって、マイクロカプセルの収容状態を説明するために一部を半透明で示す図であり、図3は、第1実施形態によるコネクタの正面図であり、図4は、図3に示すA-A線に沿って見た第1実施形態によるコネクタの断面図である。
まず、図1に示すように、本発明の第1実施形態によるコネクタ(自己修復型コネクタ)1は、後述する相手側コネクタであるレセプタクルコネクタ20(図5図6等参照 )に嵌合するようになっているプラグコネクタ(ケーブルコネクタ)1であり、主に作業者がコネクタ1を把持するための樹脂製の筐体2と、筐体2から後方側に延びるケーブル4と、非導電性材料である樹脂製の端子ハウジング(以下、「ハウジング」という)6とを有し、ハウジング6には、後述するレセプタクルコネクタ20(図5参照)との嵌合のための挿入部8が形成されている。
【0011】
次に、図2および図3に示すように、ハウジング6には、挿入部8内に一部が突出する複数の端子部材(端子)10が設けられている。これらの端子部材10は、いずれも、コネクタ1の軸方向(レセプタクルコネクタ20との嵌合方向)に沿って延びている。それらの端子部材10の先端部は、端子部材10が延びる方向に対して曲げ起こされており、それにより、それぞれの端子部材10の先端部には、下方側に湾曲した湾曲部10aが形成されている。これらの湾曲部10aにより、後述するレセプタクルコネクタ20の端子24との接触点(端子間接触部分)である端子接点部10bが形成される(図7図9等参照)。
また、複数の端子部材10は、いずれも、その先端部と反対側の端部がハウジング6に固定されて片持ちばりとして支持され、レセプタクルコネクタ20の端子24に、端子接点部10bを介して、弾性的に接触して導通するようになっている。
また、ハウジング6には、内部を通る信号に対するEMIシールドのために、ハウジング6の外周を覆う導電性の金属板からなるシェル11が設けられている。
【0012】
次に、図2および図4に示すように、ハウジング6には、これらの端子部材10をそれぞれ左右で挟み込むように収容する複数のスリット(スリット部)12が形成されている。スリット12は、端子部材10を全体的に収容するようにコネクタ1の軸方向に延び、かつ、上下方向に貫通している。
一方、ハウジング6には、複数のスリット12の上方に、複数のスリット12に隣接して、後述するマイクロカプセルMCを複数個収容可能なマイクロカプセル収容キャビティ(収容部)14が形成されている。このマイクロカプセル収容キャビティ14は、端子部材10の弾性状態に影響を与えないよう、端子部材10から所定距離離れた箇所に設けられる。
これらの構成により、スリット12は、その上方の開口部12aがキャビティ14に連通し、その下方の開口部12bが挿入部8に連通し、これにより、スリット12は、上下方向の流体連通部12として形成されている。
【0013】
次に、図2および図4に示すように、マイクロカプセル収容キャビティ14は、上述したシェル11で封止されている。なお、キャビティ14の上面かつシェル11の下面に、キャビティ14内のマイクロカプセルを封止してキャビティ14内に閉じ込めるため、あるいは、シェル11の腐食を防止するための蓋部材や膜部材を設けてもよい。なお、図2では、マイクロカプセルMCの収容状態を示すために、シェル11の一部を半透明で描き、蓋部材を省略している。蓋部材や膜部材もハウジング6と同様の樹脂で形成される。
【0014】
次に、図5および図6により、本発明の第1実施形態によるコネクタが嵌合するレセプタクルコネクタの全体構成を説明する。図5Aは、第1実施形態によるコネクタが嵌合するレセプタクルコネクタの斜視図であり、図5Bは、第1実施形態によるコネクタが嵌合するレセプタクルコネクタの正面図であり、図6は、第1実施形態によるコネクタが基板上に実装されたレセプタクルコネクタに嵌合した状態を示す斜視図である。
まず、図5Aおよび図5Bに示すように、端子部材10と嵌合するレセプタクルコネクタ20は、内部を通る信号に対するEMIシールドのために、ハウジング6の外周を覆う導電性の金属板からなるシェル22と、複数の金属製のレセプタクル端子部材(以下、「端子」という)24とを備え、これらは非導電性材料である樹脂製のハウジング25に取り付けられている。図6に示すように、レセプタクルコネクタ20は、本実施形態では、基板26に実装されている。なお、図6では、便宜上、基板26の一部のみを示す。
レセプタクルコネクタ20の複数の端子24は、上述したコネクタ1の複数の端子部材10に対応して配置され、図6に示すようにコネクタ1がレセプタクルコネクタ20に嵌合したとき、後述する図7および図9に示すように、端子24と端子部材(端子)10とが端子接点部10bで接触して、導通するようになっている。
【0015】
次に、図7により、第1実施形態およびその変形例によるコネクタ1の端子部材10の構成を説明する。図7Aは、第1実施形態によるコネクタの端子をレセプタクル端子と共に示す斜視図であり、図7Bは、第1実施形態の変形例によるコネクタの端子をレセプタクル端子と共に示す斜視図である。
まず、図7Aに示すように、本実施形態による端子部材10には、その湾曲部10aの端子接点部10bを中心とした位置に、流体連通路として機能するスリット部10cが形成されている。このようなスリット部10cは、断面矩形状の孔であり、複数の端子部材10の全てに形成されている。
【0016】
このようなスリット部10cは、後述するように、皮膜Aが破壊されたマイクロカプセルMCに内包された金属ナノ粒子Bの分散液C(図8参照)を、端子接点部10bに直接的に滴下し、端子10および端子24に塗布するために形成されたものである。なお、スリット部10cは、端子部材10に複数形成してもよい。たとえば、金属ナノ粒子の分散液を端子接点部10bに直接的に滴下するように、端子部材10の幅方向内包に少なくとも2つ、あるいは、端子部材10の両側面にそれぞれ形成してもよい。
【0017】
一方、図7Bに示すように、本実施形態の変形例による端子部材10には、端子接点部10bの位置に、複数の断面円形状の孔10dが形成されている。これらの孔10dも、金属ナノ粒子の分散液を、端子接点部10bに直接的に滴下するために形成されたものである。なお、このような断面円形状の孔10dは単数でもよい。
【0018】
次に、図8により、第1実施形態のコネクタ1に用いられるマイクロカプセルを説明する。図8は、第1実施形態によるコネクタに収容されるマイクロカプセルの概念図である。
図8に示すようなマイクロカプセルMCは、端子接点部10bに金属ナノ粒子Bの分散液Cを滴下し、塗布する手段の一つである。図8に示すように、マイクロカプセルMCは、球状の皮膜Aを備え、その皮膜Aの内方には、金属ナノ粒子Bが分散した潤滑剤Cが内包されている。本実施形態では、このマイクロカプセルMCの皮膜Aは、温度に依存して破れるようになっている。すなわち、所定の温度に達すると破れるような材料を用いており、後述するように、熱を加えることで皮膜Aの温度を上昇させて破壊し、それにより、内包されていた金属ナノ粒子Bの分散液Cを端子接点部10bに滴下し、その端子接点部10bの箇所および端子10、24の接触面側における端子接点部10bの周辺箇所に塗布するようにしている。本実施形態では、金属ナノ粒子を分散させる液体Cとして、潤滑剤(潤滑油)を用いている。なお、分散液Cは、潤滑剤以外のものでもよい。
【0019】
ここで、マイクロカプセルMCの大きさは、たとえば直径1μm~100μmであり、または、それ以上大きく、たとえば0.5mm~5mmである。マイクロカプセルMCの直径がハウジング6のスリット12の幅より小さい場合は、マイクロカプセル収容キャビティ14内に収容されたマイクロカプセルMCがスリット12内に落下しないように、分散液を通過させることができ、かつ、マイクロカプセルMCを保持できる、たとえばメッシュ状の膜部材などの保持部材を設けるのがよい。
【0020】
次に、図9乃至図11により、コネクタ1がレセプタクルコネクタ20に嵌合した状態における、第1実施形態によるコネクタ1の端子部材10とレセプタクルコネクタ20の端子24との接触状態、その端子接点部10bとマイクロカプセル収容キャビティ14との位置関係を説明する。図9は、嵌合状態における、第1実施形態によるコネクタの端子部材とレセプタクルコネクタの端子との接触状態をマイクロカプセル収容部と共に示す斜視図であり、図10は、嵌合状態における、第1実施形態によるコネクタの端子部材とレセプタクルコネクタの端子との接触状態をマイクロカプセル収容部と共に示す図3のA-A線と同様の位置で沿って見た断面図であり、図11は、第1実施形態の変形例によるフィルムヒータ付きコネクタの端子部材とレセプタクルコネクタの端子との接触状態をマイクロカプセル収容部と共に示す図3のA-A線と同様の位置で沿って見た断面図である。
【0021】
まず、図9および図10に示すように、コネクタ1がレセプタクルコネクタ20に嵌合すると、ハウジング6およびシェル11がレセプタクルコネクタ20内に挿入されると共に、コネクタ1の挿入部8にレセプタクル側のハウジング25および端子24が差し込まれた状態となる。その状態で、端子部材10と端子24とは、端子接点部10bを介して接触し、端子同士が導通する。本実施形態では、そのような嵌合状態で、端子接点部10bの上方側に、上述したキャビティ14が配置されるようになっている。
【0022】
次に、図11に示す第1実施形態の変形例によるコネクタ1は、そのハウジング6内、かつ、キャビティ14の上方に隣接した位置に、マイクロカプセルMCに熱を加えるためのフィルムヒータ30が設けられる。このフィルムヒータ30は、少なくともキャビティ14の上方の全体を覆うか、または、マイクロカプセルMCに十分な熱を加えることができる程度にキャビティ14の上方の一部分を覆うようにすれば良い。フィルムヒータ30は、キャビティ14を覆う、樹脂製の蓋部材32内に組み込まれている。コネクタ1のその他の構成は、上述した本実施形態と同様であるので、ここでは、その説明を省略する。
【0023】
次に、図12および図13により、本発明の第1実施形態およびその変形例によるコネクタの自己修復作用およびその方法について説明する。図12は、第1実施形態によるコネクタにおける金属ナノ粒子の分散液が端子接点部に滴下する状態を説明するための図9と同様に示す斜視図であり、図13Aは、第1実施形態によるコネクタにおける熱の伝達状態を説明するための斜視図であり、図13Bは、第1実施形態の変形例によるコネクタにおける熱の伝達状態を説明するための斜視図である。
まず、本発明の第1実施形態およびその変形例では、マイクロカプセル収容キャビティ14に収容されたマイクロカプセルMCの皮膜Aを熱で破壊し、熱で破壊されて流出した金属ナノ粒子Bが分散した潤滑剤Cを、図12に矢印Fで示すように、その下方の端子接点部10bへと滴下し、その端子接点部10bの位置および周囲で、端子部材10および端子24に塗布する。
金属ナノ粒子Bが分散した潤滑剤Cは、図12の矢印Fで示す方向に滴下し、キャビティ14の下方に形成されたスリット12、および、端子部材10に形成されたスリット部10c(図7A参照)または孔10d(図7B参照)を介して、端子接点部10bに供給される。
【0024】
ここで、本実施形態では、端子接点部10bが良好に接触しており、導通不良が生じていない場合は、マイクロカプセルMCはキャビティ14に収容されたままである。
一方、端子接点部10bにおいて接触不良が生じ、あるいは、何かしらの要因(たとえば、腐食など)で導通不良が発生したときは、以下のように、端子接点部10bを自己修復させる。
【0025】
端子接点部10bにおいて導通不良が発生したとき、図13を用いて後述するようにキャビティ14内のマイクロカプセルMCに熱を加えると、金属ナノ粒子Bが分散した潤滑剤Cが、スリット12および孔10c(10d)を介して端子接点部10bに供給(滴下)され、上述したように端子接点部10bの位置および周囲で、端子部材10および端子24に塗布される。その塗布された状態では、端子部材10およびレセプタクル側の端子24に流れている電流により、塗布された潤滑剤C内に電界が発生する。そして、そのような電界が生じている分散液C内では、金属ナノ粒子Bに対していわゆる「誘電泳動力」が作用し、この誘電泳動力により金属ナノ粒子Bが端子接点部10b周辺に集約する。
【0026】
そして、集約した複数の金属ナノ粒子Bは端子10、24間を繋ぎ、そして、各端子10、24を流れる電流に起因して発生する熱により、複数の金属ナノ粒子B同士が互いに固着して、端子10、24間を金属ナノ粒子Bで橋渡しをして架橋することにより導通を復活させる。すなわち、架橋した金属ナノ粒子Bは抵抗値が高く、電流が流れることで、金属ナノ粒子Bの抵抗により発熱し、その熱により、金属ナノ粒子Bが溶融して一体化した金属として架橋され、電流が流れるのである。これらのような作用が、本発明の実施形態およびその変形例における、「自己修復」作用である。なお、金属ナノ粒子Bの架橋により、分散液C内に発生していた電界は消失し、誘電泳動力は作用しなくなり、自己修復作用は終了する。
【0027】
次に、図13Aに示すように、キャビティ14内に収容されたマイクロカプセルMCの温度を上昇させるために、本実施形態では、端子接点部10bで生じる熱を利用するようにしている。すなわち、端子10、24間の導通不良により、端子接点部10bでの接触抵抗値が上昇して発熱し、図13Aに示すように、その熱Hをマイクロカプセル収容キャビティ14に伝達し、それにより、マイクロカプセルMCを加熱し、所定の温度まで上昇させて皮膜Aを破ることで、金属ナノ粒子Bが分散した潤滑剤Cを端子接点部10bに滴下するようにしている。
【0028】
このように、本実施形態では、端子接点部10bに導通不良が発生したとき、その導通不良に起因して端子接点部10bで発生する熱をキャビティ14まで伝達させて、収容されたマイクロカプセルMCの皮膜Aを破壊させ、かつ、流出した金属ナノ粒子Bの分散液Cを、ハウジング6のスリット12および端子部材10の孔10c(10d)を介して端子接点部10bに滴下させるようにしているのである。このような本実施形態によれば、機械的な付加機構を用いずにマイクロカプセルMCを破壊することができる。
【0029】
次に、図13Bに示すように、キャビティ14内に収容されたマイクロカプセルMCの温度を上昇させるために、本実施形態の変形例では、上述した図11で示すようなフィルムヒータ30を作動させて発生させた熱を利用するようにしている。すなわち、図11および図13Bに示すように、キャビティ14の上方に隣接した位置にフィルムヒータ30が設けられ、その熱を図13Bに符号Hで示すように、キャビティ14に伝達し、それにより、マイクロカプセルMCを加熱し、所定の温度まで上昇させて皮膜Aを破ることで、金属ナノ粒子Bが分散した潤滑剤Cを端子接点部10bに滴下するようにしている。
【0030】
このように、本実施形態の変形例では、ハウジング6に設けられたフィルムヒータ30を設け、その熱をキャビティ14に伝達させて、収容されたマイクロカプセルMCの皮膜Aを破壊し、かつ、流出した金属ナノ粒子Bの分散液Cを、ハウジング6のスリット12および端子部材10の孔10c(10d)を介して端子接点部10bに滴下するようにしているのである。
なお、このフィルムヒータ30は、コネクタ1内に組み込まれた周知の所定の回路装置により、端子接点部10bの導通不良による抵抗値の上昇を検出し、その検出値に応じて、周知の方法でフィルムヒータ30の作動を制御するようにしている。本実施形態の変形例によれば、フィルムヒータ30の加熱量を制御することで、マイクロカプセルMCの破壊を、より確実に、コントロールすることができる。また、機械的な付加機構を用いずにマイクロカプセルMCを破壊することができる。
【0031】
次に、図14Aおよび図14Bにより、本発明の第2および第3実施形態による自己修復型コネクタを説明する。図14Aは、本発明の第2実施形態および第3実施形態によるコネクタのハウジング、収容部および分散液滴下構造の構成を模式的に示す図3のA-A線と同様の位置で沿って見た概略断面図であり、図14Bは、図14Aに示す本発明の第2実施形態および第3実施形態によるコネクタの作用を説明するための図14Aと同様に示す概略断面図である。
以下では、上述した第1実施形態と異なる点のみ説明し、第1実施形態と共通する構成については、同一の符号により説明する。
【0032】
まず、図14Aに示すように、本発明の第2実施形態では、ハウジング7に、上述した第1実施形態と同様の寸法および形状の分散液収容キャビティ(収容部)15を形成している。このキャビティ15には、金属ナノ粒子Bを分散した潤滑剤(分散液)Cが直接的に貯められ、これにより、キャビティ15に分散液Cが収容される。
この第2実施形態では、バイメタル部材34が、キャビティ15の下面、すなわち、上述した複数のスリット12の各上縁を含むキャビティ15の底面に1つ設けられている。このバイメタル部材34は、キャビティ15の底面全体を覆い、かつ、金属ナノ粒子Bが分散した潤滑剤Cをキャビティ15内に溜め込むように(下方に漏れないように)形成されている。
【0033】
なお、変形例として、バイメタル部材34は、潤滑剤Cが下方に漏れないように貯めることができれば、キャビティ15の底面に複数設けられても良い。
また、変形例として、バイメタル部材34は、潤滑剤Cが下方に漏れないように、流体連通部となっている複数のスリット12にそれぞれ設けられ、これにより、潤滑剤Cをキャビティ15内に貯めるようにしてもよい。
【0034】
また、本発明の第3実施形態として、バイメタル部材34の代わりに、形状記憶合金部材34を用いてもよく、その配置、形状を含む構成は、上述した第2実施形態のバイメタル部材34と同様であるので、ここでは、その説明を省略する。なお、図14Aおよび図14Bに示す構成が同じであるので、バイメタル部材34と形状記憶合金部材34とを説明の便宜上のため同一の参照番号で示す。
【0035】
次に、図14Bにより、第2および第3実施形態の作用を説明する。
まず、バイメタル部材34を分散液滴下構造の一部として利用する第2実施形態では、図13Aを用いて上述したように、端子10、24間の導通不良により、端子接点部10bでの接触抵抗値が上昇することによる発熱を利用する。
この第2実施形態の場合、端子接点部10bで生じた熱が、(たとえば図13Aに示すように)キャビティ15側に伝達されると共にバイメタル部材34に伝達されると、バイメタル部材34は、その特性により、図14Bに示すように変位(変形)する。
そして、バイメタル部材34が変位すると、バイメタル部材34とキャビティ15との間、または、変形例では、バイメタル部材34とスリット12との間に、図示するような隙間Sが生じる。そして、キャビティ15に収容されていた金属ナノ粒子Bが分散した潤滑剤Cは、その隙間Sから下方のスリット12内に流れ込み、さらに、端子10の端子接点部10bに滴下される。
これにより、第1実施形態で上述したように、「誘電泳動力」の作用等により金属ナノ粒子Bが溶融して一体化した金属として架橋され、電流が流れ、「自己修復」作用を発揮させることができる。
【0036】
一方、形状記憶合金部材34を分散液滴下構造の一部として利用する第3実施形態では、端子接点部10bの導通不良による抵抗値の上昇を検出し、その検出値に応じて、周知の方法で形状記憶合金部材34を通電加熱する。
この第3実施形態の場合、形状記憶合金部材34を通電加熱すると、形状記憶合金部材34は、その特性により、図14Bに示すように変位(変形)する。
そして、形状記憶合金部材34が変位すると、形状記憶合金部材34とキャビティ15との間、または、変形例では、形状記憶合金部材34とスリット12との間に、図示するような隙間Sが生じる。そして、キャビティ15に収容されていた金属ナノ粒子Bが分散した潤滑剤Cは、その隙間Sから下方のスリット12内に流れ込み、さらに、端子10の端子接点部10bに滴下される。
これにより、「誘電泳動力」の作用等により金属ナノ粒子Bが溶融して一体化した金属として架橋され、電流が流れ、「自己修復」作用を発揮させることができる。
【0037】
次に、図15Aおよび図15Bにより、本発明の第4実施形態による自己修復型コネクタを説明する。図15Aは、本発明の第4実施形態によるコネクタのハウジング、収容部および分散液滴下構造の構成を模式的に示す図3のA-A線と同様の位置で沿って見た概略断面図であり、図15Bは、図15Aに示す本発明の第4実施形態によるコネクタの作用を説明するための図15Aと同様に示す概略断面図である。
以下では、上述した第1~第3実施形態と異なる点のみ説明し、第1~第3実施形態と共通する構成については、同一の符号により説明する。
【0038】
まず、図15Aに示すように、本発明の第4実施形態では、上述した第2および第3実施形態と同様に、ハウジング7に分散液収容キャビティ(収容部)15を形成されている。このキャビティ15には、金属ナノ粒子Bを分散した潤滑剤(分散液)Cが直接的に貯められ、これにより、キャビティ15に分散液Cが収容される。
この第4実施形態では、線膨張係数の異なる部材36が、潤滑剤Cが下方に漏れないように、流体連通部となっている複数のスリット12にそれぞれ設けられ、これにより、潤滑剤Cをキャビティ15内に貯めるようにしている。
【0039】
なお、変形例として、キャビティ15の下面、すなわち、上述した複数のスリット12の各上縁を含むキャビティ15の底面に、1つまたは複数の線膨張係数の異なる部材36を設けてもよい。この変形例の場合、1つまたは複数の線膨張係数の異なる部材36は、キャビティ15の底面全体を覆い、かつ、金属ナノ粒子Bが分散した潤滑剤Cをキャビティ15内に溜め込むように(下方に漏れないように)設けられる。
【0040】
次に、図15Bにより、第4実施形態の作用を説明する。
この第4実施形態においても、上述した第2実施形態と同様に、端子10、24間の導通不良により、端子接点部10bでの接触抵抗値が上昇することによる発熱を利用する。
まず、図15Bに示すように、端子接点部10bで生じた熱が、キャビティ15側に伝達されると共に線膨張係数の異なる部材36に伝達されると、線膨張係数の異なる部材36は、線膨張係数が異なることにより、図15Bに示すように変位(変形)する。
そして、線膨張係数の異なる部材36が変位すると、線膨張係数の異なる部材36とスリット12との間、または、変形例では、線膨張係数の異なる部材36とキャビティ15との間に、図示するような隙間Sが生じる。そして、キャビティ15に収容されていた金属ナノ粒子Bが分散した潤滑剤Cは、その隙間Sから下方のスリット12内に流れ込み、さらに、端子10の端子接点部10bに滴下する。
これにより、上述したように、「誘電泳動力」の作用等により金属ナノ粒子Bが溶融して一体化した金属として架橋され、電流が流れ、「自己修復」作用を発揮させることができる。
【0041】
なお、第2乃至第4実施形態の変形例として、上述したバイメタル部材34、形状記憶合金部材34および/または線膨張係数の異なる部材36を適宜組み合わせて、分散液滴下構造の一部としてもよい。
【0042】
ここで、上述した第1乃至第4実施形態およびその変形例では、収容キャビティ14を各端子10の上方(図示では真上の位置)に配置している。これに対し、さらなる変形例として、収容キャビティ(14、15)を、平面視で、端子10から離れた位置に設けてもよい。この場合、流出した金属ナノ粒子Bの分散液Cが端子接点部10bに流れるように、所定の流通路(たとえば溝や管)を収容キャビティに接続するように形成してもよい。特に、このような変形例においては、たとえば、収容キャビティや所定の流通路をハウジング以外の箇所に形成してもよい。
【0043】
また、各端子接点部10bに滴下した分散液Cが、隣り合う端子10に流れ、これに起因して、端子10同士が短絡しないように、隣り合う端子10間にリブを設けるようにしてもよい。このようなリブは、ハウジング6、7に設けるのが好適である。
【0044】
次に、本発明の第1乃至第4実施形態およびその変形例による自己修復型コネクタの作用効果を説明する。
まず、本発明の第1乃至第4実施形態およびその変形例による自己修復型コネクタ1は、レセプタクルコネクタ20に嵌合して端子10、24同士を導通させると共に、その端子10、24同士の導通不良を自己修復するようになっており、非導電性材料で形成されたハウジング6と、ハウジング6、7に一端部が保持され、レセプタクルコネクタ20の端子24と端子接点部10bを介して接触する端子部材10と、を備え、ハウジング6には、金属ナノ粒子Bの分散液Cを収容する収容キャビティ(収容部)14、15が形成され、ハウジング6には、収容キャビティ14、15と端子部材10との間を流体連通する流体連通部であるスリット部12が形成され、収容キャビティ14、15は、端子接点部10bに導通不良が生じた場合、すなわち、端子10、24同士の導通不良が発生した場合に、端子接点部10bに金属ナノ粒子Bの分散液Cが滴下されるように配置されている。
このように構成された本発明の実施形態およびその変形例によれば、端子10、24同士の導通不良が発生した場合に、端子接点部10bに滴下された分散液Cに含まれる金属ナノ粒子Bが、導通不良に起因して生じる電界により導通不良部に集約して端子10、24間を架橋するので、端子接点部10bに導通不良が発生しても、自己的に導通不良を修復することができる。
【0045】
また、本発明の第1乃至第4実施形態およびその変形例によれば、端子接点部の位置に、金属ナノ粒子Bの分散液Cを流体連通させるための流体連通路10c、10dが形成されている。これらの端子部材10に形成された流体連通路10c、10dは、端子部材10を上下方向に貫通する単数または複数の断面矩形状の孔10cまたは断面円形状の孔10dである。
このように構成された本発明の第1乃至第4実施形態およびその変形例によれば、ハウジング6のスリット部12を介して端子部材10に滴下した金属ナノ粒子Bの分散液Cを、効果的に、端子接点部10bまで滴下することができる。たとえば、金属ナノ粒子Bの分散液Cを端子部材10の側面を介して端子接点部10bまで流通させるよりも、端子部材10の孔部10c、10dを介することにより最短距離で直接的に滴下することができる。
【0046】
また、本発明の第1実施形態およびその変形例によれば、ハウジング6の収容キャビティ14は、金属ナノ粒子Bの分散液Cを皮膜A内に内包するマイクロカプセルMCを複数収容するように形成されており、マイクロカプセルMCは、所定の温度まで高められると、その皮膜Aが破壊されて内包する金属ナノ粒子Bの分散液Cが流出するようになっており、ハウジング6のキャビティ14は、端子接点部10bに導通不良が発生したとき、その導通不良に起因して端子接点部10bで発生する熱がキャビティ14まで伝達されて収容されたマイクロカプセルMCの皮膜Aが破壊され、かつ、流出した金属ナノ粒子Bの分散液Cが、ハウジング6の流体連通部であるスリット12および端子部材10の流体連通路である孔部10c、10dを介して端子接点部10bに滴下されるように、ハウジング6において流体連通部であるスリット部12の上方に隣接した位置に形成されている。
このように構成された第1実施形態およびその変形例によれば、端子接点部10bに導通不良が発生したとき、その導通不良に起因して発生する熱によりマイクロカプセルMCの皮膜Aが破壊され、流出した金属ナノ粒子Bの分散液Cが、ハウジング6のスリット部12および端子部材10の孔部10c、10dを介して端子接点部10bに滴下されるので、端子接点部10bに導通不良が発生したとき、より効果的に、自己的に導通不良を修復することができる。
【0047】
また、本発明の第1実施形態およびその変形例によれば、ハウジング6の収容キャビティ14は、金属ナノ粒子Bの分散液Cを皮膜A内に内包するマイクロカプセルMCを複数収容するように形成されており、マイクロカプセルMCは、所定の温度まで高められると、その皮膜Aが破壊されて内包する金属ナノ粒子Bの分散液Cが流出するようになっており、ハウジング6には、キャビティ14に収容されたマイクロカプセルMCを加熱するための熱源であるフィルムヒータ30が設けられ、フィルムヒータ30による熱を受けてマイクロカプセルMCの皮膜Aが破壊され、流出した金属ナノ粒子Bの分散液Cが、ハウジング6の流体連通部であるスリット部12および端子部材10の流体連通路である孔部10c、10dを介して端子接点部10bに滴下されるように、マイクロカプセル収容キャビティ14に隣接して設けられている。
このように構成された本発明の実施形態およびその変形例によれば、端子接点部10bに導通不良が発生したとき、フィルムヒータ30による熱によりマイクロカプセルMCの皮膜Aが破壊され、流出した金属ナノ粒子Bの分散液Cが、ハウジング6のスリット部12および端子部材10の孔部10c、10dを介して端子接点部10bに滴下されるので、端子接点部10bに導通不良が発生したとき、より効果的に、自己的に導通不良を修復することができる。
【0048】
また、本発明の第1実施形態およびその変形例によれば、熱源であるフィルムヒータ30は、所定の検出器により検出されるコネクタ1の端子部材10とレセプタクルコネクタ20の端子24との導通不良による抵抗値の上昇を検知したとき作動するよう構成される。
また、ハウジング6の流体連通部であるスリット部12は、端子部材10を左右で挟み込むように収容するスリット部12である。
また、自己修復型コネクタ1はケーブル4が接続されたプラグコネクタであり、レセプタクルコネクタ20は所定の基板26に実装されている。
【0049】
また、本発明の第2乃至第4実施形態およびその変形例によれば、ハウジング7の収容キャビティ(収容部)15は、金属ナノ粒子Bの分散液Cを貯めて収容するよう形成され(図14図15参照)、自己修復型コネクタ1は、収容キャビティ15に収容された金属ナノ粒子Bの分散液Cを、端子10、24同士の導通不良が発生した場合に滴下させるよう、収容キャビティ15または流体連通部であるスリット部12に設けられたバイメタル部材34、形状記憶合金部材34および/または線膨張係数の異なる部材36を備える。
このように構成された第2乃至第4実施形態およびその変形例によれば、効果的に、金属ナノ粒子Bの分散液Cを端子接点部10bまで滴下することができる。
【0050】
また、第1乃至第4実施形態およびその変形例では、収容キャビティ14、15を含む上述した自己修復機構/分散液滴下構造は、基板26に実装され、熱を受けやすいレセプタクルコネクタ20ではなく、熱の影響を受けにくいプラグコネクタ1に設けている。
【0051】
なお、本発明の個々の実施形態は、独立したものではなく、それぞれ組み合わせて適宜実施することができる。また、上述した実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、種々の形態で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係る自己修復型コネクタは、たとえば原子力発電所、海底に敷設する設備、宇宙空間の衛星設備などのような作業者が立ち入りにくいような特殊環境や民生用などの種々の用途に利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 コネクタ、プラグコネクタ、ケーブルコネクタ
6 第1実施形態によるハウジング
7 第2~第4実施形態によるハウジング
10 端子、端子部材
10a 湾曲部
10b 端子接点部
10c スリット部、孔部(流体連通路)
10d 孔部(流体連通路)
12 スリット(流体連通部)
14 マイクロカプセル収容キャビティ(収容部)
15 分散液収容キャビティ(収容部)
20 レセプタクルコネクタ(相手側コネクタ)
24 端子、相手側端子
30 フィルムヒータ
34 第2実施形態によるバイメタル、第3実施形態による形状記憶合金
36 第4実施形態による線膨張係数の異なる部材
MC マイクロカプセル
A 皮膜
B 金属ナノ粒子
C 潤滑剤、分散液
F 金属ナノ粒子が分散した潤滑剤の滴下方向
H 熱、熱の伝達方向
S 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15