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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068412
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】インダクタ部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/04 20060101AFI20240513BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20240513BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20240513BHJP
   H01F 27/32 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
H01F17/04 F
H01F27/29 Q
H01F17/00 B
H01F27/32 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178845
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】川上 祐輝
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 由雅
【テーマコード(参考)】
5E044
5E070
【Fターム(参考)】
5E044CA01
5E070AA01
5E070AB04
5E070BB03
5E070CB12
5E070EA06
(57)【要約】
【課題】インダクタンス値を向上させることができるインダクタ部品を提供する。
【解決手段】インダクタ部品は、磁性層を含み、互いに対向する第1主面および第2主面を有する素体と、
前記素体内に配置されたコイルと、
前記コイルの外面の一部を覆う絶縁層と、を備え、
前記コイルは、前記第1主面に直交する方向であって前記第2主面から前記第1主面に向かう方向である第1方向に直交する平面に沿って巻き回された第1インダクタ配線を有し、
前記第1インダクタ配線の最内周の内周面の少なくとも一部は、前記絶縁層に覆われないで前記磁性層に接触している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性層を含み、互いに対向する第1主面および第2主面を有する素体と、
前記素体内に配置されたコイルと、
前記コイルの外面の一部を覆う絶縁層と、を備え、
前記コイルは、前記第1主面に直交する方向であって前記第2主面から前記第1主面に向かう方向である第1方向に直交する平面に沿って巻き回された第1インダクタ配線を有し、
前記第1インダクタ配線の最内周の内周面の少なくとも一部は、前記磁性層に接触している、インダクタ部品。
【請求項2】
前記コイルは、前記第1方向に直交する平面に沿って巻き回された第2インダクタ配線をさらに有し、
前記第2インダクタ配線は、前記第1インダクタ配線よりも、前記第1方向と逆方向の第2方向側に配置され、前記第1インダクタ配線と電気的に接続し、
前記絶縁層は、前記第1インダクタ配線と前記第2インダクタ配線との間に少なくとも存在し、前記第2インダクタ配線の最内周の内周面を覆っている、請求項1に記載のインダクタ部品。
【請求項3】
前記第1インダクタ配線の延在方向の端部に接続され、前記第1方向に延在して前記素体の外面から露出する引出配線をさらに備える、請求項2に記載のインダクタ部品。
【請求項4】
前記素体の前記第1主面と前記第1インダクタ配線との間に存在する前記磁性層の前記第1方向の厚みは、前記素体の前記第2主面と前記第2インダクタ配線との間に存在する前記磁性層の前記第1方向の厚みよりも小さい、請求項3に記載のインダクタ部品。
【請求項5】
前記第1インダクタ配線は、前記第1方向側を向く天面を有し、
前記第1インダクタ配線の前記天面の少なくとも一部は、前記磁性層に接触し、
前記第1インダクタ配線の前記天面のうちの前記磁性層と接触する部分は、前記第1インダクタ配線の前記最内周の前記内周面と連続する、請求項1から4の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項6】
前記第1インダクタ配線の延在方向の端部に接続され、前記第1方向に延在して前記素体の外面から露出する引出配線をさらに備え、
前記第1インダクタ配線の前記天面のうちの前記磁性層と接触する部分と前記引出配線との間の距離は、80μm以上である、請求項5に記載のインダクタ部品。
【請求項7】
前記第1インダクタ配線は、シード層と、前記シード層に部分的に接するよう形成されためっき層と、を有し、
前記第1インダクタ配線の延在方向に直交し、且つ、前記第1インダクタ配線の前記最内周の前記内周面のうちの前記磁性層と接触する部分と交差する断面において、前記第1インダクタ配線のうちの前記最内周を含む部分に存在する前記シード層は、前記第1方向と直交する方向における前記第1インダクタ配線の中央に対して、前記第1インダクタ配線の前記最内周の前記内周面側とは反対側に偏って配置されている、請求項1から4の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項8】
前記第1インダクタ配線は、前記第1方向と逆方向の第2方向側を向く底面を有し、
前記第1インダクタ配線のうちの前記最内周を含む部分に存在する前記シード層は、前記第1インダクタ配線の前記最内周の前記内周面と反対側の外周面と、前記第1インダクタ配線の前記底面と、の間の角部に設けられている、請求項7に記載のインダクタ部品。
【請求項9】
前記第1インダクタ配線は、前記第1方向側を向く天面を有し、
前記第1インダクタ配線のうちの前記最内周を含む部分は、前記第1インダクタ配線の前記最内周の前記内周面と、前記第1インダクタ配線の前記天面と、の間の角部に曲面を有する、請求項7に記載のインダクタ部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インダクタ部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インダクタ部品としては、特開2020-136467号公報(特許文献1)に記載されたものがある。インダクタ部品は、磁性層を含む素体と、素体内に配置されたコイルと、コイルの外面の全面を覆う絶縁層と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-136467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のインダクタ部品では、絶縁層がコイルの外面の全面を覆っているため、磁性層の体積を確保できず、所望のインダクタンス値を得られない場合があった。
【0005】
そこで、本開示の目的は、インダクタンス値を向上させることができるインダクタ部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本開示の一態様であるインダクタ部品は、
磁性層を含み、互いに対向する第1主面および第2主面を有する素体と、
前記素体内に配置されたコイルと、
前記コイルの外面の一部を覆う絶縁層と、を備え、
前記コイルは、前記第1主面に直交する方向であって前記第2主面から前記第1主面に向かう方向である第1方向に直交する平面に沿って巻き回された第1インダクタ配線を有し、
前記第1インダクタ配線の最内周の内周面の少なくとも一部は、前記絶縁層に覆われないで前記磁性層に接触している。
【0007】
前記態様によれば、第1インダクタ配線の最内周の内周面の少なくとも一部が、絶縁層に覆われないで磁性層に接触しているため、第1インダクタ配線の外面の全面が絶縁層に覆われている場合と比較して、磁性層の体積を増大させることができる。その結果、インダクタ部品のインダクタンス値を向上させることができる。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様であるインダクタ部品によれば、インダクタンス値を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】インダクタ部品の第1実施形態を示す模式平面図である。
図2図1のII-II断面図である。
図3】インダクタ部品の変形例を示す模式断面図である。
図4A】インダクタ部品の製法を説明する説明図である。
図4B】インダクタ部品の製法を説明する説明図である。
図4C】インダクタ部品の製法を説明する説明図である。
図4D】インダクタ部品の製法を説明する説明図である。
図4E】インダクタ部品の製法を説明する説明図である。
図4F】インダクタ部品の製法を説明する説明図である。
図4G】インダクタ部品の製法を説明する説明図である。
図4H】インダクタ部品の製法を説明する説明図である。
図4I】インダクタ部品の製法を説明する説明図である。
図5】インダクタ部品の第2実施形態を示す模式平面図である。
図6図5のVI-VI断面図である。
図7】インダクタ部品の第3実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の一態様であるインダクタ部品を図示の実施の形態により詳細に説明する。なお、図面は一部模式的なものを含み、実際の寸法や比率を反映していない場合がある。
【0011】
<第1実施形態>
(構成)
図1は、インダクタ部品の第1実施形態を示す模式平面図である。図2は、図1のII-II断面図である。図1では、便宜上、絶縁層が存在する位置に斜線を施している。
【0012】
インダクタ部品1は、例えば、パソコン、DVDプレーヤー、デジタルカメラ、TV、携帯電話、カーエレクトロニクスなどの電子機器に搭載され、例えば全体として直方体形状の部品である。ただし、インダクタ部品1の形状は、特に限定されず、円柱状や多角形柱状、円錐台形状、多角形錐台形状であってもよい。
【0013】
図1および図2に示すように、インダクタ部品1は、素体10と、素体10内に配置されたコイル15と、コイル15の外面の一部を覆う絶縁層60と、素体10の第1主面10aから端面が露出するように素体10内に設けられた第1引出配線51および第2引出配線52と、素体10の第1主面10aにおいて露出する第1外部電極41および第2外部電極42と、素体10の第1主面10aに設けられた被覆層50と、を備える。
【0014】
素体10の形状は、特に限定されないが、この実施形態では直方体形状にされている。素体10の外面は、第1主面10aおよび第2主面10bと、第1主面10aと第2主面10bの間に位置し第1主面10aと第2主面10bを接続する第1側面10c、第2側面10d、第3側面10eおよび第4側面10fと、を有する。第1主面10aと第2主面10bは、互いに対向する。第1側面10cと第2側面10dは、互いに対向する。第3側面10eと第4側面10fは、互いに対向する。
【0015】
図中、素体10の厚み方向(言い換えると、第1主面10aに直交する方向)をZ方向とし、第2主面10bから第1主面10aに向かう方向を順Z方向とし、順Z方向の逆方向を逆Z方向とする。また、この明細書では、順Z方向を上側、逆Z方向を下側とする。素体10のZ方向に直交する平面において、素体10の長手方向であり、第1外部電極41および第2外部電極42が並ぶ方向である長さ方向をX方向とし、長さ方向に直交する方向である素体10の幅方向をY方向とする。また、X方向であって、第1側面10cから第2側面10dに向かう方向を順X方向とし、順X方向の逆方向を逆X方向とする。Y方向であって、第3側面10eから第4側面10fに向かう方向を順Y方向とし、順Y方向の逆方向を逆Y方向とする。順Z方向が、特許請求の範囲に記載の「第1方向」に相当する。逆Z方向が、特許請求の範囲に記載の「第2方向」に相当する。図中、第1方向は符号D1で、第2方向は符号D2で示した。
【0016】
素体10は、第1方向D1に沿って順に配置された第1磁性層11および第2磁性層12を有する。この「順に」とは、単に第1磁性層11および第2磁性層12の位置関係を示すだけであり、第1磁性層11および第2磁性層12の形成順とは関係ない。
【0017】
第1磁性層11および第2磁性層12は、それぞれ、磁性粉と当該磁性粉を含有する樹脂とを含む。樹脂は、例えば、エポキシ系、フェノール系、液晶ポリマー系、ポリイミド系、アクリル系もしくはそれらを含む混合物からなる有機絶縁材料である。磁性粉は、例えば、FeSiCrなどのFeSi系合金、FeCo系合金、NiFeなどのFe系合金、または、それらのアモルファス合金である。したがって、フェライトからなる磁性層と比較して、磁性粉により直流重畳特性を向上でき、樹脂により磁性粉間が絶縁されるので、高周波でのロス(鉄損)が低減される。なお、磁性層は、フェライトや磁性粉の焼結体など、有機樹脂を含まない場合であってもよい。
【0018】
コイル15は、第1インダクタ配線21と第2インダクタ配線22とを有する。第1インダクタ配線21および第2インダクタ配線22の各々は、第1磁性層11と第2磁性層12の間で第1方向D1に直交する平面に沿って巻き回されている。具体的に述べると、第1磁性層11は、第1インダクタ配線21および第2インダクタ配線22よりも第2方向D2に存在し、第2磁性層12は、第1インダクタ配線21および第2インダクタ配線22よりも第1方向D1、および第1方向D1に直交する方向に存在する。
【0019】
第1インダクタ配線21は、第1方向D1に直交する平面に沿って巻き回された、スパイラル形状に延びる配線である。第1インダクタ配線21のターン数は、1ターンを超えることが好ましい。これにより、インダクタンス値を向上させることができる。1ターンを超えるとは、インダクタ配線の軸に直交する断面において、インダクタ配線が、軸方向からみて径方向に隣り合って巻回方向に並走する部分を有する状態をいい、1ターン以下とは、軸に直交する断面において、インダクタ配線が、軸方向からみて径方向に隣り合って巻回方向に並走する部分を有さない状態をいう。この実施形態では、第1インダクタ配線21のターン数は、2ターンである。第1インダクタ配線21は、Z方向からみて、内周端21aから外周端21bに向かって時計回り方向に渦巻状に巻回されている。
【0020】
第2インダクタ配線22は、第1インダクタ配線21よりも第2方向D2側に配置され、第1方向D1に直交する平面に沿って巻き回された、スパイラル形状に延びる配線である。第2インダクタ配線22は、第1インダクタ配線21と電気的に接続している。第2インダクタ配線22のターン数は、1ターンを超えることが好ましい。これにより、インダクタンス値を向上させることができる。この実施形態では、第2インダクタ配線22のターン数は、2.5ターンである。第2インダクタ配線22は、Z方向からみて、外周端22bから内周端22aに向かって時計回り方向に渦巻状に巻回されている。第2インダクタ配線22は、第1インダクタ配線21と第1磁性層11との間に配置されている。これにより、第1インダクタ配線21および第2インダクタ配線22の各々は、第1方向D1に沿って配置されている。
【0021】
第1インダクタ配線21の外周端21bは、その外周端21bの天面に接する第2引出配線52を介して、第2外部電極42に接続される。第2インダクタ配線22の外周端22bは、その外周端22bの天面に接する第1引出配線51を介して、第1外部電極41に接続される。第2インダクタ配線22の内周端22aは、その内周端22aの天面に接するビア配線25を介して、第1インダクタ配線21の内周端21aに接続される。以上の構成により、第1インダクタ配線21および第2インダクタ配線22は、直列に接続されて、第1外部電極41および第2外部電極42と電気的に接続される。
【0022】
第1インダクタ配線21および第2インダクタ配線22の各々は、導電性材料からなり、シード層Sと、シード層Sに部分的に接するよう形成されためっき層Pと、を有する。
【0023】
具体的に述べると、図2に示すように、シード層Sは、第1,第2インダクタ配線21,22のX方向の線幅の略中央に配置されている。シード層Sは、第1,第2インダクタ配線21,22の底面213,223の一部から露出するように設けられている。シード層Sは、Z方向からみて、第1,第2インダクタ配線21,22の形状に対応した形状にされている。すなわち、シード層Sは、Z方向からみて、スパイラル形状に線状に延在している。シード層Sの線幅は、第1,第2インダクタ配線21,22の線幅よりも小さい。シード層Sは、例えばCuとTiの積層である。
【0024】
なお、シード層Sの線幅は、第1,第2インダクタ配線21,22の線幅と同じにされていてもよい。この実施形態のように、第1インダクタ配線21の線幅よりもシード層Sの線幅を小さくした場合、シード層Sを形成後に、第1インダクタ配線21の隣り合うターン間に存在する絶縁層60の一部を形成する際に、当該絶縁層60の一部がシード層Sを乗り越えてしまうことを抑制できる。当該絶縁層60の一部がシード層Sを乗り越えた場合、隣り合うターン間で短絡が発生する可能性がある。
【0025】
めっき層Pは、第1方向D1および第1方向D1に直交する方向に、シード層Sを覆っている。これにより、めっき層Pは、シード層Sに部分的に接するよう形成される。めっき層Pは、例えばCu、Ag、Au、Alなどの低電気抵抗な金属材料からなる。
【0026】
なお、この実施形態では、第1,第2インダクタ配線21,22の形成方法として、シード層Sを用いるセミアディティブ法を用いているが、サブトラクティブ法、フルアディティブ法、ダマシン法、デュアルダマシン法、または、導電ペーストの印刷法などの公知の方法を用いてもよい。
【0027】
第1引出配線51は、導電性材料からなり、第2インダクタ配線22の天面から第1方向D1に延在し、絶縁層60および第2磁性層12の内部を貫通している。第1引出配線51は、第2インダクタ配線22の外周端22bの天面に設けられ、絶縁層60の内部を貫通するビア配線25と、該ビア配線25の天面から第1方向D1に延在し、第2磁性層12の内部を貫通する第1柱状配線31と、該第1柱状配線31の天面に設けられ、絶縁層60の内部を貫通するビア配線25と、該ビア配線25の天面から第1方向D1に延在し、第2磁性層12の内部を貫通し、端面が素体10の第1主面10aに露出する第2柱状配線32と、を含む。ビア配線は、柱状配線よりも線幅(径、断面積)が小さい導体である。
【0028】
第2引出配線52は、導電性材料からなり、第1インダクタ配線21の天面から第1方向D1に延在し、第2磁性層12の内部を貫通している。第2引出配線52は、第1インダクタ配線21の外周端21bの天面に設けられ、絶縁層60の内部を貫通するビア配線25と、該ビア配線25の天面から第1方向D1に延在し、第2磁性層12の内部を貫通し、端面が素体10の第1主面10aに露出する第3柱状配線33と、を含む。第1,第2引出配線51,52は、第1,第2インダクタ配線21,22のめっき層Pと同様の材料からなることが好ましい。
【0029】
第1,第2外部電極41,42は、素体10の第1主面10aに設けられている。第1,第2外部電極41,42は、導電性材料からなり、例えば、低電気抵抗かつ耐応力性に優れたCu、耐食性に優れたNi、はんだ濡れ性と信頼性に優れたAuが内側から外側に向かってこの順に並ぶ3層構成である。
【0030】
第1外部電極41は、第1引出配線51の素体10の第1主面10aから露出する端面に接触し、第1引出配線51と電気的に接続されている。これにより、第1外部電極41は、第2インダクタ配線22の外周端22bに電気的に接続される。第2外部電極42は、第2引出配線52の素体10の第1主面10aから露出する端面に接触し、第2引出配線52と電気的に接続されている。これにより、第2外部電極42は、第1インダクタ配線21の外周端21bに電気的に接続される。なお、図1において、第1,第2外部電極41,42は、便宜上、二点鎖線で示している。
【0031】
絶縁層60は、磁性体を含まない絶縁性材料からなる。絶縁層60は、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、液晶ポリマーやこれらの組み合わせなどの有機樹脂や、ガラスやアルミナなどの焼結体、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜などの薄膜などである。
【0032】
第1インダクタ配線21の最内周の内周面211の少なくとも一部は、絶縁層60に覆われないで第2磁性層12に接触している。インダクタ配線の最内周とは、インダクタ配線が1ターン以下の場合、インダクタ配線の径方向内側の内周を指し、インダクタ配線が1ターンを超える場合、インダクタ配線のうち、内周端を含む1ターンを構成する部分における径方向内側の内周を指す。この実施形態では、第1インダクタ配線21の最内周の内周面211の全面が、絶縁層60に覆われないで第2磁性層12に接触している。
【0033】
第1インダクタ配線21の外面および第2インダクタ配線22の外面のうち、第1インダクタ配線21の最内周の内周面211を除く部分は、絶縁層60に接触している。これにより、第1インダクタ配線21および第2インダクタ配線22と、第1磁性層11および第2磁性層12と、の間の絶縁性を確保できる。
【0034】
具体的に述べると、絶縁層60は、第1インダクタ配線21の第1方向D1側を向く天面212の全面と、第1インダクタ配線21の第2方向D2側を向く底面213の全面と、第1インダクタ配線21の最外周の外周面214の全面と、第2インダクタ配線22の最内周の内周面221の全面と、第2インダクタ配線22の第1方向D1側を向く天面222の全面と、第2インダクタ配線22の第2方向D2側を向く底面223の全面と、第2インダクタ配線22の最外周の外周面224の全面と、に接触し且つこれらの面を覆っている。インダクタ配線の最外周とは、インダクタ配線が1ターン以下の場合、インダクタ配線の径方向外側の外周を指し、インダクタ配線が1ターンを超える場合、インダクタ配線のうち、外周端を含む1ターンを構成する部分における径方向外側の外周を指す。
【0035】
さらに、絶縁層60は、第1インダクタ配線21の隣り合うターンの間と、第2インダクタ配線22の隣り合うターンの間と、にも設けられている。これにより、第1インダクタ配線21および第2インダクタ配線22の各々において、隣り合うターン間の短絡を抑制できる。
【0036】
被覆層50は、例えば、エポキシ樹脂を主成分とするソルダーレジストなどである。被覆層50は、素体10の第1主面10aのうち、第1外部電極41および第2外部電極42が設けられていない領域に設けられていることが好ましい。被覆層50を設けることにより、インダクタ部品1を外部環境から保護することができる。
【0037】
インダクタ部品1によれば、第1インダクタ配線21の最内周の内周面211の少なくとも一部が、絶縁層60に覆われないで第2磁性層12に接触しているため、第1インダクタ配線21の外面の全面が絶縁層60に覆われている場合と比較して、第2磁性層12の体積を増大させることができる。その結果、インダクタ部品1のインダクタンス値を向上させることができる。
【0038】
コイル15の内磁路部分は、特に磁束が集中し易い。インダクタ部品1では、第1インダクタ配線21の最内周の内周面211の少なくとも一部を、絶縁層60で覆わないで第2磁性層12に接触させているため、コイル15の内磁路部分の磁束の集中を緩和できる。これにより、第1インダクタ配線21の外面のうち、最内周の内周面211以外の部分を絶縁層60で覆わないで第2磁性層12に接触させる場合よりも効果的にインダクタンス値を向上させることができる。
【0039】
好ましくは、コイル15は、第1方向D1に直交する平面に沿って巻き回された第2インダクタ配線22をさらに有し、第2インダクタ配線22は、第1インダクタ配線21よりも、第1方向D1と逆方向の第2方向D2側に配置され、第1インダクタ配線21と電気的に接続し、絶縁層60は、第1インダクタ配線21と第2インダクタ配線22との間に少なくとも存在し、第2インダクタ配線22の最内周の内周面221を覆っている。
【0040】
上記構成によれば、第2インダクタ配線22をさらに有しているため、インダクタンス値をさらに向上させることができる。また、絶縁層60が第1インダクタ配線21と第2インダクタ配線22との間に少なくとも存在するため、第1インダクタ配線21と第2インダクタ配線22との間の絶縁性を確保できる。また、絶縁層60が第2インダクタ配線22の最内周の内周面221を覆っているため、第1インダクタ配線21の最内周の内周面211と、第2インダクタ配線22の最内周の内周面221と、の間の絶縁性を確保できる。
【0041】
好ましくは、第1インダクタ配線21の延在方向の端部(外周端21b)に接続され、第1方向D1に延在して素体10の外面から露出する第2引出配線52をさらに備える。この構成によれば、不要な引き回し配線を設けなくても、第2引出配線52を介して、第1インダクタ配線21と外部回路等を最短距離で接続できる。同様に、好ましくは、第2インダクタ配線22の延在方向の端部(外周端22b)に接続され、第1方向D1に延在して素体10の外面から露出する第1引出配線51をさらに備える。この構成によれば、不要な引き回し配線を設けなくても、第1引出配線51を介して、第1インダクタ配線21と外部回路等を最短距離で接続できる。
【0042】
(変形例)
図3は、変形例に係るインダクタ部品1Aを示す模式断面図である。図3は、図1のII-II断面(図2)に対応する。なお、図3では、便宜上、素体の第2側面側の記載を省略している。
【0043】
図3に示すように、素体10の第1主面10aと第1インダクタ配線21との間に存在する第2磁性層12の第1方向D1の厚みt1は、素体10の第2主面10bと第2インダクタ配線22との間に存在する第1磁性層11の第1方向D1の厚みt2よりも小さい。
【0044】
上記構成によれば、素体10の第1主面10aと第1インダクタ配線21との間に存在する第2磁性層12の第1方向D1の厚みt1が相対的に小さいため、第2磁性層12を貫通する第2柱状配線32の第1方向D1の長さを短くできる。その結果、第1引出配線51の第1方向D1の長さも短くできるため、第1引出配線51を容易に形成できる。厚みt1が相対的に大きい場合、例えば電解めっきにより第2柱状配線32を形成する際に、めっき成長が不十分となる可能性がある。また、上記構成によれば、第1引出配線51の第1方向D1の長さを短くできるため、第1引出配線51の電気抵抗を低減できる。図示しない第2引出配線についても同様に、上記構成によれば、第2引出配線の第1方向D1の長さを短くできるため、第2引出配線を容易に形成できる。また、第2引出配線の電気抵抗を低減できる。
【0045】
厚みt1が相対的に小さい場合、厚みt1が相対的に大きい場合と比較して、素体10の第1主面10aと第1インダクタ配線21との間において磁束が集中し易くなる。インダクタ部品1Aでは、第1インダクタ配線21の最内周の内周面211は絶縁層60で覆われていない一方、第2インダクタ配線22の最内周の内周面221は絶縁層60で覆われている。このように、第1インダクタ配線21の最内周の内周面211のみを選択的に絶縁層60で覆わないことにより、厚みt1が相対的に小さい場合でも、素体10の第1主面10aと第1インダクタ配線21との間において磁束が集中することを緩和できるとともに、第1インダクタ配線21の最内周の内周面211と、第2インダクタ配線22の最内周の内周面221と、の間の絶縁性も確保できる。
【0046】
(製造方法)
次に、インダクタ部品1の製造方法の一例について説明する。図4Aから図4Iは、インダクタ部品1の製法を説明する説明図である。図4Aから図4Iは、図1のII-II断面(図2)に対応する。
【0047】
図4Aに示すように、支持基板70を準備する。支持基板70は、例えば、セラミック、エポキシガラス、ガラスなどの無機材料からなる。支持基板70の主面上に絶縁樹脂を塗布し、フォトリソグラフィ工法を用いて露光および現像して、絶縁樹脂をパターニングする。パターニング形状は、絶縁樹脂が、後工程で形成される第2インダクタ配線22の底面を少なくとも覆うような形状である。その後、絶縁樹脂を硬化することにより、絶縁層60の一部となる第1絶縁樹脂層61を形成する。絶縁樹脂は、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などを用いればよい。
【0048】
図4Bに示すように、スパッタ法などを用いて、第1絶縁樹脂層61を覆うように、第1シード層S1を成膜する。その後、図示しないレジストを塗布後に、フォトリソグラフィ工法を用いて、第1シード層S1をパターニングする。パターニング形状は、後工程で形成される第2インダクタ配線22のスパイラル形状に対応した形状である。その後、第1絶縁樹脂層61および第1シード層S1を覆うように、絶縁樹脂フィルムをラミネートする。その後、フォトリソグラフィ工法を用いて、絶縁樹脂フィルムを露光および現像して、絶縁樹脂フィルムをパターニングする。パターニング形状は、絶縁樹脂フィルムが、後工程で形成される第2インダクタ配線22の最内周の内周面と、隣り合うターンの間と、最外周の外周面と、に設けられるような形状である。その後、絶縁樹脂フィルムを硬化して、絶縁層60の一部となる第2絶縁樹脂層62を形成する。絶縁樹脂フィルムは、エポキシ樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルムなどを用いればよい。
【0049】
図4Cに示すように、第1シード層S1に給電しながら、電解めっきにより第1めっき層P1を形成する。これにより、第1めっき層P1が第1シード層S1に部分的に接するよう形成され、第2インダクタ配線22が形成される。その後、第1絶縁樹脂層61、第2絶縁樹脂層62および第2インダクタ配線22を覆うように、絶縁樹脂フィルムをラミネートする。その後、フォトリソグラフィ工法を用いて、絶縁樹脂フィルムを露光および現像して、絶縁樹脂フィルムをパターニングする。パターニング形状は、絶縁樹脂フィルムが第2インダクタ配線22の天面を覆うような形状である。また、絶縁樹脂フィルムには、第2インダクタ配線22の天面に接続されるビア配線25が設けられる位置に開口63aが形成されている。その後、絶縁樹脂フィルムを硬化して、絶縁層60の一部となる第3絶縁樹脂層63を形成する。
【0050】
図4Dに示すように、スパッタ法などを用いて、第1から第3絶縁樹脂層61~63および開口63aを覆うように、第2シード層S2を成膜する。その後、図示しないレジストを塗布後に、フォトリソグラフィ工法を用いて、第2シード層S2をパターニングする。パターニング形状は、後工程で形成される第1インダクタ配線21のスパイラル形状に対応した形状である。この際、第2シード層S2は、開口63a内にも形成する。開口63a内に形成された第2シード層S2が、第2インダクタ配線22の天面に接続されるビア配線25となる。その後、第1から第3絶縁樹脂層61~63および第2シード層S2を覆うように、絶縁樹脂フィルムをラミネートする。その後、フォトリソグラフィ工法を用いて、絶縁樹脂フィルムを露光および現像して、絶縁樹脂フィルムをパターニングする。パターニング形状は、絶縁樹脂フィルムが、後工程で形成される第1インダクタ配線21の隣り合うターンの間と、最外周の外周面と、に設けられるような形状である。この際、絶縁樹脂フィルムは、第1インダクタ配線21の最内周の内周面には設けられないようにする。その後、絶縁樹脂フィルムを硬化して、絶縁層60の一部となる第4絶縁樹脂層64を形成する。
【0051】
図4Eに示すように、第2シード層S2に給電しながら、電解めっきにより第2めっき層P2を形成する。これにより、第2めっき層P2が第2シード層S2に部分的に接するよう形成され、第1インダクタ配線21および第1柱状配線31が形成される。その後、第1から第4絶縁樹脂層61~64、第1柱状配線31および第1インダクタ配線21を覆うように、絶縁樹脂フィルムをラミネートする。その後、フォトリソグラフィ工法を用いて、絶縁樹脂フィルムを露光および現像して、絶縁樹脂フィルムをパターニングする。パターニング形状は、絶縁樹脂フィルムが、第1柱状配線31の天面および第1インダクタ配線21の天面を覆うような形状である。また、絶縁樹脂フィルムには、第1インダクタ配線21の天面と、第1柱状配線31の天面と、に接続されるビア配線25が設けられる位置に開口65aが形成されている。その後、絶縁樹脂フィルムを硬化して、絶縁層60の一部となる第5絶縁樹脂層65を形成する。
【0052】
図4Fに示すように、スパッタ法などを用いて、第1から第5絶縁樹脂層61~65および開口65aを覆うように、第3シード層S3を成膜する。開口65a内に形成された第3シード層S3が、第1インダクタ配線21の天面と、第1柱状配線31の天面と、に接続されるビア配線25となる。その後、レジスト75を塗布し、フォトリソグラフィ工法を用いて露光および現像し、レジスト75の所定位置に開口75aを形成する。所定位置は、第2柱状配線32および第3柱状配線33が設けられる位置である。
【0053】
図4Gに示すように、第3シード層S3に給電しながら、電解めっきにより、レジスト75の開口75a内に第3めっき層P3を形成する。これにより、第2柱状配線32および第3柱状配線33が形成される。その後、レジスト75を剥離し、フォトリソグラフィ工法を用いて、第3シード層S3のうち、第2柱状配線32の底面および第3柱状配線33の底面に設けられた部分以外の部分をエッチングする。その後、第2磁性層12となる磁性シートを、支持基板70の主面の上方から第1インダクタ配線21および第2インダクタ配線22に向けて圧着して、第1インダクタ配線21および第2インダクタ配線22と第1から第5絶縁樹脂層61~65と第1から第3柱状配線31~33とを第2磁性層12により覆う。その後、第2磁性層12の天面を研削し、第2柱状配線32および第3柱状配線33の端面を第2磁性層12の天面から露出させる。
【0054】
図4Hに示すように、支持基板70を除去し、第2インダクタ配線22の下方から第1インダクタ配線21および第2インダクタ配線22に向けて第1磁性層11となる他の磁性シートを圧着して、第1絶縁樹脂層61の底面を第1磁性層11により覆う。その後、第1磁性層11を所定の厚みに研削する。
【0055】
図4Iに示すように、第2磁性層12の天面に被覆層50となる絶縁樹脂フィルムをラミネートする。その後、フォトリソグラフィ工法を用いて、絶縁樹脂フィルムを露光および現像して、絶縁樹脂フィルムをパターニングする。パターニング形状は、被覆層50が、第2磁性層12の天面のうち、第1,第2外部電極41,42が形成される領域を除いた領域を覆うような形状である。その後、絶縁樹脂フィルムを硬化して、被覆層50を形成する。その後、第2磁性層12の天面から露出する第2柱状配線32の端面および第3柱状配線33の端面を覆うように、第1外部電極41および第2外部電極42を例えば無電解めっきにより形成する。以上のようにして、インダクタ部品1を製造する。
【0056】
<第2実施形態>
図5は、インダクタ部品の第2実施形態を示す模式平面図である。図6は、図5のVI-VI断面図である。図5では、便宜上、絶縁層が存在する位置に斜線を施している。図6では、便宜上、シード層の記載を省略している。第2実施形態は、第1実施形態とは、第1,第2インダクタ配線のターン数と、絶縁層が第1インダクタ配線の天面の一部を覆っていない点と、が相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同じ構成であり、第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0057】
図5および図6に示すように、この実施形態では、第1インダクタ配線21Bのターン数は、4ターンである。第2インダクタ配線22Bのターン数は、4.5ターンである。これにより、インダクタンス値をさらに向上させることができる。
【0058】
第1インダクタ配線21Bの天面212の少なくとも一部は、絶縁層60に覆われないで第2磁性層12に接触し、第1インダクタ配線21の天面212のうちの第2磁性層12と接触する部分212pは、第1インダクタ配線21の最内周の内周面211と連続する。
【0059】
具体的に述べると、Z方向からみて、第1インダクタ配線21Bの天面212のうち、第1引出配線51の周囲の所定領域R1内に存在する部分と、第2引出配線52の周囲の所定領域R2内に存在する部分と、に絶縁層60が設けられている。一方、Z方向からみて、第1インダクタ配線21Bの天面212のうち、第1引出配線51の周囲の所定領域R1以外の部分と、第2引出配線52の周囲の所定領域R2以外の部分とには、絶縁層60が設けられておらず、第2磁性層12と接触している。所定領域R1の形状は、特に限定されないが、この実施形態では、Z方向からみて、第1引出配線51を中心とした略扇形状にされている。同様に、所定領域R2の形状は、特に限定されないが、この実施形態では、Z方向からみて、第2引出配線52を中心とした略扇形状にされている。
【0060】
上記構成によれば、第2磁性層12の体積をさらに増大させることができるため、インダクタンス値をさらに向上させることができる。また、上述したように、素体10の第1主面10aと第1インダクタ配線21Bとの間に存在する第2磁性層12の第1方向D1の厚みが相対的に小さい場合、当該厚みが相対的に大きい場合と比較して、素体10の第1主面10aと第1インダクタ配線21Bとの間において磁束が集中し易くなる。インダクタ部品1Bによれば、第1インダクタ配線21Bの天面212の少なくとも一部が、絶縁層60に覆われないで第2磁性層12に接触しているため、上記厚みが相対的に小さい場合でも、素体10の第1主面10aと第1インダクタ配線21Bとの間における磁束の集中を緩和できる。
【0061】
好ましくは、第1インダクタ配線21の延在方向の端部(外周端21b)に接続され、第1方向D1に延在して素体10の外面から露出する第2引出配線52をさらに備え、第1インダクタ配線21Bの天面212のうちの第2磁性層12と接触する部分212pと第2引出配線52との間の距離d1は、80μm以上である。第2磁性層12と接触する部分212pと第2引出配線52との間の距離d1とは、Z方向からみて、第2磁性層12と接触する部分212pと、第2引出配線52の外周と、の間の最短距離を指す。
【0062】
上記構成によれば、第2磁性層12と接触する部分212pと第2引出配線52との間の短絡の発生を抑制できる。具体的に述べると、ESD(Electro Static Discharge;静電気放電)などにより、インダクタ部品1Bの導体部分に電位差が生じた場合、第1,第2磁性層11,12の磁性粉を介して短絡が発生する可能性がある。特に、第1,第2引出配線51,52と、第1,第2引出配線51,52の周囲に存在する第1,第2インダクタ配線21B,22Bとの間は、距離が比較的短いため、短絡し易い。本発明者らは、第1インダクタ配線21Bの天面212の一部を絶縁層60で覆わないで第2磁性層12に接触させたとしても、上記距離d1を80μm以上とすれば、第1インダクタ配線21Bの天面212の全面を絶縁層60で覆った場合と同程度に短絡リスクを減少できることを見出した。
【0063】
好ましくは、第2インダクタ配線22の延在方向の端部(外周端22b)に接続され、第1方向D1に延在して素体10の外面から露出する第1引出配線51をさらに備え、第1インダクタ配線21の天面212のうちの第2磁性層12と接触する部分212pと第1引出配線51との間の距離d2は、80μm以上である。第2磁性層12と接触する部分212pと第1引出配線51との間の距離d2とは、Z方向からみて、第2磁性層12と接触する部分212pと、第1引出配線51の外周と、の間の最短距離を指す。この構成によれば、第2磁性層12と接触する部分212pと第1引出配線51との間の短絡の発生を抑制できる。
【0064】
インダクタ部品1Bの製造方法としては、例えば、図4Aから図4Iで説明した製造方法において、第1シード層S1および第2シード層S2をパターニングする際に、第1,第2インダクタ配線のターン数に対応するように、それぞれ4ターンおよび4.5ターンにするとともに、第5絶縁樹脂層65の絶縁樹脂フィルムをパターニングする際に、第5絶縁樹脂層65が所定領域R1内および所定領域R2内のみに形成されるようにすればよい。
【0065】
<第3実施形態>
図7は、インダクタ部品の第3実施形態を示す模式断面図である。図7は、図1のII-II断面(図2)に対応する。第3実施形態は、第1実施形態とは、第1インダクタ配線の形状と、第1インダクタ配線におけるシード層が設けられている位置と、絶縁層が第1インダクタ配線の天面の一部を覆っていない点と、が相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同じ構成であり、第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0066】
図7に示すように、第1インダクタ配線21Cの天面212の一部は、絶縁層60に覆われずに第2磁性層12に接触している。具体的に述べると、第1インダクタ配線21Cのうちの最内周を含む部分における天面212は、絶縁層60に覆われずに第2磁性層12に接触している。これにより、第1インダクタ配線21Cの天面212の全面が絶縁層60に覆われている場合よりも、第2磁性層12の体積がさらに増大し、インダクタンス値をさらに向上させることができる。
【0067】
第1インダクタ配線21の延在方向に直交し、且つ、第1インダクタ配線21の最内周の内周面211のうちの第2磁性層12と接触する部分と交差する断面において、第1インダクタ配線21Cのうちの最内周を含む部分に存在するシード層ISは、第1方向D1と直交する方向(X方向)における第1インダクタ配線21の中央に対して、第1インダクタ配線21の最内周の内周面211側とは反対側に偏って配置されている。第1インダクタ配線21Cのうちの最内周を含む部分とは、第1インダクタ配線21Cのうち、第1インダクタ配線21Cの内周端21aを含む1ターンを構成する部分を指す。なお、この実施形態のように、第1インダクタ配線21Cのターン数が1ターンを超える場合、上記断面は、第1インダクタ配線21Cのうちの最内周を含む部分の延在方向に直交し、且つ、第1インダクタ配線21の最内周の内周面211のうちの第2磁性層12と接触する部分と交差する断面とすればよい。
【0068】
上記構成によれば、第1インダクタ配線21Cの最内周の内周面の少なくとも一部が、絶縁層60に覆われない場合であっても、第1インダクタ配線21Cのうちの最内周を含む部分におけるめっき層Pの第1方向D1の高さを確保できるとともに、第1方向D1に直交する方向の当該めっき層Pの広がりを抑制できる。
【0069】
好ましくは、第1インダクタ配線21Cは、第1方向D1と逆方向の第2方向D2側を向く底面213を有し、第1インダクタ配線21Cのうちの最内周を含む部分に存在するシード層ISは、第1インダクタ配線21Cの最内周の内周面211と反対側の外周面215と、第1インダクタ配線21Cの底面213と、の間の角部に設けられている。この構成によれば、第1インダクタ配線21Cのうちの最内周を含む部分におけるめっき層Pの第1方向D1の高さをより確実に確保できるとともに、第1方向D1に直交する方向の当該めっき層Pの広がりをさらに抑制できる。
【0070】
好ましくは、第1インダクタ配線21Cは、第1方向D1側を向く天面212を有し、第1インダクタ配線21Cのうちの最内周を含む部分は、第1インダクタ配線21Cの最内周の内周面211と、第1インダクタ配線21Cの天面212と、の間の角部に曲面Cを有する。曲面Cの形状は、特に限定されないが、この実施形態では、第1インダクタ配線21Cの外側に凸である凸曲面である。
【0071】
上記構成によれば、上記角部が平面と平面が交差した形状である場合よりも、第1インダクタ配線21Cの最内周の内周面211と対向する配線等と、第1インダクタ配線21Cのうちの最内周を含む部分と、の間の対向方向の距離を大きくできる。そのため、当該配線等と第1インダクタ配線21Cとの間の短絡の発生を抑制できる。また、上記角部に曲面Cを有するため、上記角部による磁束の妨げを抑制できる。
【0072】
インダクタ部品1Cの製造方法としては、例えば、図4Aから図4Iで説明した製造方法において、第2シード層S2をパターニングする際に、第1インダクタ配線の延在方向に直交し、且つ、第1インダクタ配線の最内周の内周面のうちの第2磁性層と接触する部分と交差する断面において、第1インダクタ配線のうちの最内周を含む部分に存在するシード層が、第1方向D1と直交する方向における第1インダクタ配線の中央に対して、第1インダクタ配線の最内周の内周面側とは反対側に偏って配置されるようにすればよい。
【0073】
なお、本開示は上述の実施形態に限定されず、本開示の要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。例えば、第1から第3実施形態のそれぞれの特徴点を様々に組み合わせてもよい。
【0074】
前記第1から第3実施形態では、第1,第2引出配線、第1,第2外部電極および被覆層が設けられていたが、これらの部材は必須ではなく、設けられていなくてもよいし、他の部材に代えてもよい。
【0075】
前記第1から第3実施形態では、インダクタ配線は2層であったが、1層であってもよいし、3層以上であってもよい。
【0076】
前記第1から第3実施形態では、第1インダクタ配線の最内周の内周面の全面が、絶縁層に覆われないで第2磁性層に接触していたが、第1インダクタ配線の最内周の内周面の一部が、絶縁層に覆われないで第2磁性層に接触し、当該内周面の他の部分は絶縁層に覆われていてもよい。前記第1から第3実施形態では、第2インダクタ配線の最内周の内周面の全面が絶縁層に覆われていたが、第2インダクタ配線の最内周の内周面の少なくとも一部が、絶縁層に覆われないで第2磁性層に接触していてもよい。これにより、磁性層の体積がさらに増大し、インダクタンス値をさらに向上させることができる。
【0077】
前記第1から第3実施形態では、第1,第2インダクタ配線の最外周の外周面の全面が絶縁層に覆われていたが、第1,第2インダクタ配線の最外周の外周面の少なくとも一部が、絶縁層に覆われないで第2磁性層に接触していてもよい。これにより、磁性層の体積がさらに増大し、インダクタンス値をさらに向上させることができる。
【0078】
前記第1から第3実施形態では、第2インダクタ配線の底面の全面が絶縁層に覆われていたが、第2インダクタ配線の底面の少なくとも一部が、絶縁層に覆われないで第1磁性層に接触していてもよい。これにより、磁性層の体積がさらに増大し、インダクタンス値をさらに向上させることができる。
【0079】
前記第2実施形態および前記第3実施形態では、第1インダクタ配線の天面の一部が絶縁層に覆われ、当該天面の他の部分は絶縁層に覆われないで第2磁性層に接触していたが、第1インダクタ配線の天面の全面が絶縁層に覆われないで第2磁性層に接触していてもよい。これにより、磁性層の体積がさらに増大し、インダクタンス値をさらに向上させることができる。
【0080】
<1>
磁性層を含み、互いに対向する第1主面および第2主面を有する素体と、
前記素体内に配置されたコイルと、
前記コイルの外面の一部を覆う絶縁層と、を備え、
前記コイルは、前記第1主面に直交する方向であって前記第2主面から前記第1主面に向かう方向である第1方向に直交する平面に沿って巻き回された第1インダクタ配線を有し、
前記第1インダクタ配線の最内周の内周面の少なくとも一部は、前記絶縁層に覆われないで前記磁性層に接触している、インダクタ部品。
<2>
前記コイルは、前記第1方向に直交する平面に沿って巻き回された第2インダクタ配線をさらに有し、
前記第2インダクタ配線は、前記第1インダクタ配線よりも、前記第1方向と逆方向の第2方向側に配置され、前記第1インダクタ配線と電気的に接続し、
前記絶縁層は、前記第1インダクタ配線と前記第2インダクタ配線との間に少なくとも存在し、前記第2インダクタ配線の最内周の内周面を覆っている、<1>に記載のインダクタ部品。
<3>
前記第1インダクタ配線の延在方向の端部に接続され、前記第1方向に延在して前記素体の外面から露出する引出配線をさらに備える、<2>に記載のインダクタ部品。
<4>
前記素体の前記第1主面と前記第1インダクタ配線との間に存在する前記磁性層の前記第1方向の厚みは、前記素体の前記第2主面と前記第2インダクタ配線との間に存在する前記磁性層の前記第1方向の厚みよりも小さい、<3>に記載のインダクタ部品。
<5>
前記第1インダクタ配線は、前記第1方向側を向く天面を有し、
前記第1インダクタ配線の前記天面の少なくとも一部は、前記絶縁層に覆われないで前記磁性層に接触し、
前記第1インダクタ配線の前記天面のうちの前記磁性層と接触する部分は、前記第1インダクタ配線の前記最内周の前記内周面と連続する、<1>から<4>の何れか一つに記載のインダクタ部品。
<6>
記第1インダクタ配線の延在方向の端部に接続され、前記第1方向に延在して前記素体の外面から露出する引出配線をさらに備え、
前記第1インダクタ配線の前記天面のうちの前記磁性層と接触する部分と前記引出配線との間の距離は、80μm以上である、<5>に記載のインダクタ部品。
<7>
前記第1インダクタ配線は、シード層と、前記シード層に部分的に接するよう形成されためっき層と、を有し、
前記第1インダクタ配線の延在方向に直交し、且つ、前記第1インダクタ配線の前記最内周の前記内周面のうちの前記磁性層と接触する部分と交差する断面において、前記第1インダクタ配線のうちの前記最内周を含む部分に存在する前記シード層は、前記第1方向と直交する方向における前記第1インダクタ配線の中央に対して、前記第1インダクタ配線の前記最内周の前記内周面側とは反対側に偏って配置されている、<1>から<6>の何れか一つに記載のインダクタ部品。
<8>
前記第1インダクタ配線は、前記第1方向と逆方向の第2方向側を向く底面を有し、
前記第1インダクタ配線のうちの前記最内周を含む部分に存在する前記シード層は、前記第1インダクタ配線の前記最内周の前記内周面と反対側の外周面と、前記第1インダクタ配線の前記底面と、の間の角部に設けられている、<7>に記載のインダクタ部品。
<9>
前記第1インダクタ配線は、前記第1方向側を向く天面を有し、
前記第1インダクタ配線のうちの前記最内周を含む部分は、前記第1インダクタ配線の前記最内周の前記内周面と、前記第1インダクタ配線の前記天面と、の間の角部に曲面を有する、<7>または<8>に記載のインダクタ部品。
【符号の説明】
【0081】
1、1A、1B、1C インダクタ部品
10 素体
10a 第1主面
10b 第2主面
10c~10f 第1~第4側面
11 第1磁性層
12 第2磁性層
15、15B、15C コイル
21、21B、21C 第1インダクタ配線
211 第1インダクタ配線の最内周の内周面
212 第1インダクタ配線の天面
213 第1インダクタ配線の底面
214 第1インダクタ配線の最外周の外周面
22、22B 第2インダクタ配線
221 第2インダクタ配線の最内周の内周面
222 第2インダクタ配線の天面
223 第2インダクタ配線の底面
224 第2インダクタ配線の最外周の外周面
25 ビア配線
31、32、33 第1、第2、第3柱状配線
41、42 第1、第2外部電極
50 被覆層
51、52 第1、第2引出配線
60 絶縁層
C 曲面
d1、d2 距離
D1 第1方向
D2 第2方向
P めっき層
S、IS シード層
t1、t2 厚み
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図4I
図5
図6
図7