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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068416
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】部品移載装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/52 20060101AFI20240513BHJP
   H05K 13/04 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
H01L21/52 F
H05K13/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178852
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100127797
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 晴洋
(72)【発明者】
【氏名】春日 大介
【テーマコード(参考)】
5E353
5F047
【Fターム(参考)】
5E353BB03
5E353EE02
5E353HH61
5E353KK03
5E353KK11
5E353PP02
5E353QQ11
5F047FA02
5F047FA04
5F047FA08
5F047FA73
5F047FA74
5F047FA79
(57)【要約】
【課題】効率よく部品に作用する荷重を制御し、部品の損傷を抑制するとともに吸着ヘッドによって部品を適切に吸着保持することが可能な部品移載装置を提供する。
【解決手段】制御ユニット100は、吸着ヘッド4Hを昇降させるヘッド昇降モータ4Mと突き上げピン47を昇降させるピン昇降モータ40Mとの制御に関する処理として、突き上げ移動処理S4を行う。この突き上げ移動処理S4において制御ユニット100は、突き上げピン47の上昇移動の速度を吸着ヘッド4Hの上昇移動の速度よりも上回る速度に設定するとともに、ピン昇降モータ40M及びヘッド昇降モータ4Mの駆動電流について部品に目標荷重が作用するときの上限値を示す荷重制御用電流上限値ILLを設定する。そして制御ユニット100は、ピン昇降モータ40M及びヘッド昇降モータ4Mの駆動電流が荷重制御用電流上限値ILLを維持するように、各モータの駆動を制御する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性変形可能なシート上に貼着された状態で複数の部品が配置される部品配置エリアを有する部品供給ユニットと、
前記部品配置エリアの上方において上下方向に移動可能に設けられ、前記シート上の前記部品を上方から吸着保持する吸着ヘッドと、前記吸着ヘッドを上下方向に移動させるヘッド昇降モータと、を有するヘッドユニットと、
前記部品配置エリアの下方において上下方向に移動可能に設けられ、前記吸着ヘッドによる吸着対象の前記部品を前記シートを介して下方から突き上げる突き上げピンと、前記突き上げピンを上下方向に移動させるピン昇降モータと、を有する突き上げユニットと、
前記ヘッド昇降モータ及び前記ピン昇降モータを制御する制御ユニットと、を備え、
前記制御ユニットは、
前記突き上げピンの先端が前記シートに接触するシート接触位置に配置されるとともに、前記吸着ヘッドの先端が前記シート上の前記部品に接触する部品接触位置に配置された状態で、前記突き上げピンの先端が前記シート接触位置よりも上方の突き上げ位置に到達するまで前記突き上げピンが上昇移動するように前記ピン昇降モータを制御するとともに、前記突き上げピンの上昇移動に応じて前記吸着ヘッドが上昇移動するように前記ヘッド昇降モータを制御する突き上げ移動処理を行い、
前記突き上げ移動処理では、前記突き上げピンの上昇移動の速度を前記吸着ヘッドの上昇移動の速度よりも上回る速度に設定するとともに、前記ピン昇降モータ及び前記ヘッド昇降モータの駆動電流について前記部品に目標荷重が作用するときの上限値を示す荷重制御用電流上限値を設定し、前記ピン昇降モータ及び前記ヘッド昇降モータの駆動電流が前記荷重制御用電流上限値を維持するように、前記突き上げピンの先端が前記突き上げ位置に到達するまで前記ピン昇降モータ及び前記ヘッド昇降モータの駆動を継続させる、部品移載装置。
【請求項2】
前記制御ユニットは、前記突き上げ移動処理において、前記突き上げピンが前記吸着ヘッドよりも早くに上昇移動を開始するように、前記ピン昇降モータ及び前記ヘッド昇降モータを制御する、請求項1に記載の部品移載装置。
【請求項3】
前記突き上げユニットは、前記ピン昇降モータに設けられたロータリーエンコーダを有し、
前記制御ユニットは、前記突き上げ移動処理において、前記ロータリーエンコーダから出力される信号に基づいて、前記突き上げピンの先端が前記突き上げ位置に到達したことを検出する、請求項1又は2に記載の部品移載装置。
【請求項4】
前記制御ユニットは、
前記突き上げ移動処理の前処理として、前記突き上げピンの先端が前記シート接触位置に到達するまで前記突き上げピンが上昇移動するように前記ピン昇降モータを制御するとともに、前記吸着ヘッドの先端が前記部品接触位置に到達するまで前記吸着ヘッドが下降移動するように前記ヘッド昇降モータを制御する接触移動処理を行い、
前記接触移動処理では、前記ピン昇降モータ及び前記ヘッド昇降モータの駆動電流が前記荷重制御用電流上限値以下の範囲に収まるように、前記ピン昇降モータ及び前記ヘッド昇降モータを制御する、請求項1に記載の部品移載装置。
【請求項5】
前記制御ユニットは、前記接触移動処理において、前記ピン昇降モータ及び前記ヘッド昇降モータの駆動電流が前記荷重制御用電流上限値となったときに、前記突き上げピンの先端が前記シート接触位置に到達するとともに前記吸着ヘッドの先端が前記部品接触位置に到達したことを検出する、請求項4に記載の部品移載装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品配置エリアに配置された部品を上方から吸着保持する吸着ヘッドを有するヘッドユニットと、吸着ヘッドによる吸着対象の部品を下方から突き上げる突き上げピンを有する突き上げユニットと、を備えた部品移載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
部品配置エリアにおいてシートに貼着された状態の部品をピックアップして基板等に移載する部品移載装置が知られている。この種の部品移載装置は、部品を上方から吸着保持する吸着ヘッドを有するヘッドユニットと、吸着ヘッドによる吸着対象の部品を下方から突き上げる突き上げピンを有する突き上げユニットと、を備える。部品移載装置では、シートに貼着された部品に対し、上方から吸着ヘッドが押圧するとともに下方から突き上げピンが突き上げる。部品移載装置では、吸着ヘッドによって吸着された状態の部品に対する突き上げピンによる突き上げ時において、部品に作用する荷重が大きすぎると部品に損傷が生じる一方、部品に作用する荷重が小さすぎると吸着ヘッドによって部品を適切に吸着保持できない虞がある。このため、部品移載装置では、部品に作用する荷重を制御する技術が必要となる。
【0003】
特許文献1には、部品に作用する荷重を制御する技術が開示されている。特許文献1に開示される技術では、突き上げピンの突き上げ動作に伴い部品に作用する突き上げ荷重を荷重測定器によって測定し、その測定結果に基づいて、吸着ヘッドの吸着動作に伴い部品に作用する押圧力を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-273910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示される技術では、部品に作用する荷重の制御は、荷重測定器の測定結果を待って行われるので、効率の低い制御であるという課題がある。
【0006】
本発明の目的は、効率よく部品に作用する荷重を制御し、部品の損傷を抑制するとともに吸着ヘッドによって部品を適切に吸着保持することが可能な部品移載装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の局面に係る部品移載装置は、弾性変形可能なシート上に貼着された状態で複数の部品が配置される部品配置エリアを有する部品供給ユニットと、前記部品配置エリアの上方において上下方向に移動可能に設けられ、前記シート上の前記部品を上方から吸着保持する吸着ヘッドと、前記吸着ヘッドを上下方向に移動させるヘッド昇降モータと、を有するヘッドユニットと、前記部品配置エリアの下方において上下方向に移動可能に設けられ、前記吸着ヘッドによる吸着対象の前記部品を前記シートを介して下方から突き上げる突き上げピンと、前記突き上げピンを上下方向に移動させるピン昇降モータと、を有する突き上げユニットと、前記ヘッド昇降モータ及び前記ピン昇降モータを制御する制御ユニットと、を備える。前記制御ユニットは、前記突き上げピンの先端が前記シートに接触するシート接触位置に配置されるとともに、前記吸着ヘッドの先端が前記シート上の前記部品に接触する部品接触位置に配置された状態で、前記突き上げピンの先端が前記シート接触位置よりも上方の突き上げ位置に到達するまで前記突き上げピンが上昇移動するように前記ピン昇降モータを制御するとともに、前記突き上げピンの上昇移動に応じて前記吸着ヘッドが上昇移動するように前記ヘッド昇降モータを制御する突き上げ移動処理を行う。前記制御ユニットは、前記突き上げ移動処理では、前記突き上げピンの上昇移動の速度を前記吸着ヘッドの上昇移動の速度よりも上回る速度に設定するとともに、前記ピン昇降モータ及び前記ヘッド昇降モータの駆動電流について前記部品に目標荷重が作用するときの上限値を示す荷重制御用電流上限値を設定し、前記ピン昇降モータ及び前記ヘッド昇降モータの駆動電流が前記荷重制御用電流上限値を維持するように、前記突き上げピンの先端が前記突き上げ位置に到達するまで前記ピン昇降モータ及び前記ヘッド昇降モータの駆動を継続させる。
【0008】
この部品移載装置によれば、制御ユニットは、吸着ヘッドを昇降させるヘッド昇降モータと突き上げピンを昇降させるピン昇降モータとの制御に関する処理として、突き上げ移動処理を行う。この突き上げ移動処理において制御ユニットは、突き上げピンの上昇移動の速度を吸着ヘッドの上昇移動の速度よりも上回る速度に設定し、ピン昇降モータ及びヘッド昇降モータの駆動電流が荷重制御用電流上限値を維持するように、突き上げピンの先端が突き上げ位置に到達するまで各昇降モータの駆動を継続させる。この場合、シートに貼着された部品が突き上げピンと吸着ヘッドとの間に挟持された状態で、突き上げピン及び吸着ヘッドが上昇移動するときには、速度に関する設定によって突き上げピンが吸着ヘッドを上方へ押すように移動しようとするが、各昇降モータの駆動電流の荷重制御用電流上限値に基づく制御によって吸着ヘッドに対する突き上げピンの過度な上昇移動が規制される。これにより、突き上げピンの先端が突き上げ位置に到達するまで、突き上げピンと吸着ヘッドとの間の距離を一定に保つことができる。
【0009】
しかも、ピン昇降モータ及びヘッド昇降モータに供給される荷重制御用電流上限値は、シートに貼着された部品に目標荷重が作用するときの駆動電流の上限値に設定されている。このため、各昇降モータの駆動電流が荷重制御用電流上限値を維持するように制御されることにより、突き上げピンの先端が突き上げ位置に到達するまで突き上げピン及び吸着ヘッドが上昇移動するときには、突き上げピンと吸着ヘッドとの間に挟持された状態の部品に目標荷重が作用し続ける。これにより、従来技術のように荷重測定器を用いることなく、各昇降モータの駆動電流に関する荷重制御用電流上限値の設定に基づいて、効率よく部品に作用する荷重を目標荷重に制御することができる。このため、突き上げピン及び吸着ヘッドが上昇移動するときに、突き上げピンと吸着ヘッドとの間に挟持された状態の部品の損傷を抑制するとともに吸着ヘッドによって部品を適切に吸着保持することが可能となる。
【0010】
上記の部品移載装置において、前記制御ユニットは、前記突き上げ移動処理において、前記突き上げピンが前記吸着ヘッドよりも早くに上昇移動を開始するように、前記ピン昇降モータ及び前記ヘッド昇降モータを制御してもよい。
【0011】
この態様では、突き上げピンと吸着ヘッドとの間に部品が挟持された状態で、突き上げピンが吸着ヘッドよりも早くに上昇移動を開始するので、突き上げピンと吸着ヘッドとの間の距離が大きくなることを抑制できる。これにより、部品に目標荷重が作用した状態で、より確実に、突き上げピンと吸着ヘッドとの間の距離を一定に保つことができる。
【0012】
上記の部品移載装置において、前記突き上げユニットは、前記ピン昇降モータに設けられたロータリーエンコーダを有してもよい。この場合、前記制御ユニットは、前記突き上げ移動処理において、前記ロータリーエンコーダから出力される信号に基づいて、前記突き上げピンの先端が前記突き上げ位置に到達したことを検出する。
【0013】
この態様では、ピン昇降モータ及びヘッド昇降モータの制御に基づき突き上げピン及び吸着ヘッドが上昇移動するときに、突き上げピンの先端が突き上げ位置に到達したことを、ピン昇降モータに設けられたロータリーエンコーダの出力信号に基づいて検出することができる。
【0014】
上記の部品移載装置において、前記制御ユニットは、前記突き上げ移動処理の前処理として、前記突き上げピンの先端が前記シート接触位置に到達するまで前記突き上げピンが上昇移動するように前記ピン昇降モータを制御するとともに、前記吸着ヘッドの先端が前記部品接触位置に到達するまで前記吸着ヘッドが下降移動するように前記ヘッド昇降モータを制御する接触移動処理を行ってもよい。前記制御ユニットは、前記接触移動処理では、前記ピン昇降モータ及び前記ヘッド昇降モータの駆動電流が前記荷重制御用電流上限値以下の範囲に収まるように、前記ピン昇降モータ及び前記ヘッド昇降モータを制御する。
【0015】
この態様では、制御ユニットが突き上げ移動処理の前処理として接触移動処理を行うことにより、突き上げピンはその先端がシート接触位置に到達するまで上昇移動し、吸着ヘッドはその先端が部品接触位置に到達するまで下降移動する。突き上げピンの上昇移動と吸着ヘッドの下降移動とによって、シートに貼着された部品は、突き上げピンと吸着ヘッドとの間に挟持される。突き上げピンと吸着ヘッドとの間に部品が挟持されることにより突き上げピンの上昇移動及び吸着ヘッドの下降移動が規制されると、ピン昇降モータ及びヘッド昇降モータの駆動電流は上昇する。この際、各昇降モータの駆動電流の上限値として荷重制御用電流上限値が設定されているため、各昇降モータの駆動電流は荷重制御用電流上限値以下の範囲に収められる。これにより、突き上げピンの先端がシート接触位置に到達し且つ吸着ヘッドの先端が部品接触位置に到達したときにおいて、部品に作用する荷重を目標荷重に制御することができる。このため、突き上げピンの上昇移動と吸着ヘッドの下降移動とによってシートに貼着された部品が挟持されるときに、部品の損傷を抑制することが可能となる。
【0016】
上記の部品移載装置において、前記制御ユニットは、前記接触移動処理において、前記ピン昇降モータ及び前記ヘッド昇降モータの駆動電流が前記荷重制御用電流上限値となったときに、前記突き上げピンの先端が前記シート接触位置に到達するとともに前記吸着ヘッドの先端が前記部品接触位置に到達したことを検出してもよい。
【0017】
この態様では、突き上げピンの先端がシート接触位置に到達し且つ吸着ヘッドの先端が部品接触位置に到達することで、突き上げピンの上昇移動及び吸着ヘッドの下降移動が規制されたときには、ピン昇降モータ及びヘッド昇降モータの駆動電流が荷重制御用電流上限値となるまで上昇する。このため、ピン昇降モータ及びヘッド昇降モータの駆動電流が荷重制御用電流上限値となったときに、突き上げピンの先端がシート接触位置に到達するとともに吸着ヘッドの先端が部品接触位置に到達したことを検出することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、効率よく部品に作用する荷重を制御し、部品の損傷を抑制するとともに吸着ヘッドによって部品を適切に吸着保持することが可能な部品移載装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る部品移載装置としての部品実装装置の全体構成を示す平面図である。
図2】部品実装装置に備えられるヘッドユニット及び突き上げユニットの斜視図及び側面図である。
図3】部品実装装置の制御構成を示すブロック図である。
図4】部品実装装置に備えられる制御ユニットの処理部が行う処理を説明するための図である。
図5】処理部が接触移動処理及び突き上げ移動処理を行う際に参照する荷重制御用電流上限値について説明するための図である。
図6】処理部が行う接触移動処理のフローを示すフローチャートである。
図7】処理部が行う突き上げ移動処理のフローを示すフローチャートである。
図8】処理部が行う突き上げ移動処理のフローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、以下では、方向関係についてはXYZ直交座標軸を用いて説明する。X方向及びY方向は水平面上において互いに直交し、Z方向がX方向及びY方向の両方向と直交する鉛直方向(上下方向)に延びる方向である。また、X方向の一方側を「+X側」と称し、X方向の一方側とは反対の他方側を「-X側」と称する。同様に、Y方向の一方側を「+Y側」と称し、Y方向の一方側とは反対の他方側を「-Y側」と称する。
【0021】
本発明に係る部品移載装置は、例えばウェハからダイシングされたダイをテープに収容するテーピング装置、前記ダイを基板にワイヤボンディングするダイボンダ、或いは前記ダイを基板に実装する部品実装装置などの各種装置に適用することができる。ここでは、本発明の部品移載装置が、部品実装装置に適用される例について説明する。
【0022】
[部品実装装置の全体構成]
図1に示されるように、本実施形態に係る部品実装装置1は、ウェハ7からダイシングされたダイ7a(部品)を基板Pに搭載(実装)する装置である。図1及び図2に示されるように、部品実装装置1は、基台2、コンベア3、ヘッドユニット4、部品供給ユニット5、ウェハ供給装置6、カメラユニット32U及び突き上げユニット40を備える。
【0023】
基台2は、部品実装装置1が備える各種の機器の搭載ベースである。コンベア3は、基台2上にX方向に延びるように設置された、基板Pの搬送ラインである。コンベア3は、機外から所定の搭載作業位置に基板Pを搬入し、搭載作業後に基板Pを前記搭載作業位置から機外へ搬出する。コンベア3は、基板Pを前記搭載作業位置で保持する図略のクランプ機構を有する。なお、図1中に基板Pが示されている位置が、前記搭載作業位置である。
【0024】
部品供給ユニット5は、複数のダイ7aを、ウェハ7からダイシングされた配置状態で供給する。部品供給ユニット5は、複数のダイ7aに分割されたウェハ7をパレット8に保持された状態で、ウェハステージ10(部品配置エリア)に供給するウェハ供給装置6を備える。ウェハ7は、円盤形状の半導体ウェハであって、回路パターン等が既に形成されている。パレット8は、ウェハシート8aを保持している。ウェハシート8aは、弾性変形可能なシートである。ウェハシート8aには、ウェハ7を碁盤目状にダイシングされて形成された多数のダイ7aの集合体が貼着されている。つまり、ウェハ供給装置6は、複数のダイ7aがウェハシート8aに貼着された状態のウェハ7をパレット8に保持された状態でウェハステージ10に供給する。
【0025】
ウェハ供給装置6は、ウェハ収納エレベータ9、ウェハステージ10及びウェハコンベア11を含む。ウェハ収納エレベータ9は、複数のダイ7aがウェハシート8aに貼着された状態のウェハ7をパレット8に保持された状態で、上下多段に収納している。ウェハステージ10は、ウェハ収納エレベータ9の-Y側の位置において、基台2上に設置されている。基板Pの停止位置となる前記搭載作業位置に対して、ウェハステージ10は+Y側に並ぶ位置に配置されている。本実施形態では、ダイシングされたウェハ7が基台2上で配置されるエリアとなるウェハステージ10が、部品配置エリアとなる。ウェハコンベア11は、ウェハ収納エレベータ9からウェハステージ10上にパレット8を引き出す。
【0026】
ヘッドユニット4は、複数の吸着ヘッド4Hと、ヘッド昇降モータ4Mと、ボールねじ軸4Jと、ボールナット4Nと、バネ4Sと、を有する。
【0027】
吸着ヘッド4Hは、バネ4Sにより上方に引っ張られた状態で、ヘッドユニット4に対して上下方向(Z方向)に移動可能に設けられる。吸着ヘッド4Hは、ウェハステージ10の上方において、下降移動することによりウェハシート8a上に貼着されたダイ7aを上方から吸着保持し、ダイ7aを吸着保持した状態で上昇移動することによりウェハシート8aからダイ7aを取り出してピッキングする。また、吸着ヘッド4Hは、コンベア3上で搭載作業位置に配置された基板Pの上方において、吸着保持しているダイ7aをリリースすることにより、基板P上にダイ7aを搭載する。
【0028】
ヘッド昇降モータ4Mは、吸着ヘッド4Hを上下方向(Z方向)に移動させる駆動力を発するモータである。ボールねじ軸4J及びボールナット4Nは、ヘッド昇降モータ4Mの駆動力を吸着ヘッド4Hに伝達する。ボールねじ軸4Jは、ヘッド昇降モータ4Mに連結された状態で上下方向(Z方向)に延び、ヘッド昇降モータ4Mによって回転駆動される。ボールナット4Nは、吸着ヘッド4Hに固定された状態でボールねじ軸4Jに螺合される。ヘッド昇降モータ4Mが作動してボールねじ軸4Jが回転駆動されることにより、ボールナット4Nの固定された吸着ヘッド4Hが上下方向(Z方向)に移動する。
【0029】
ヘッドユニット4には、基板Pを撮像するヘッドカメラ31が搭載されている。ヘッドカメラ31の撮影画像より、基板Pに付されたフェデューシャルマークが認識される。これにより基板Pの位置ずれが認識され、基板Pに対する部品の搭載時に前記位置ずれの補正が為される。
【0030】
基台2には、部品認識カメラ30が据え付けられている。部品認識カメラ30は、吸着ヘッド4Hに吸着保持されているダイ7aを、基板Pへの搭載の前に下側から撮像する。この撮像画像に基づいて、吸着ヘッド4Hによるダイ7aの吸着異常や吸着ミス等が判定される。
【0031】
部品実装装置1は、コンベア3上で搭載作業位置に配置された基板Pとウェハステージ10との間の上方空間においてヘッドユニット4を水平方向(X方向及びY方向)に移動させるヘッド水平駆動機構D1を備える。ヘッド水平駆動機構D1は、ヘッドユニット4のY方向の移動機構として、それぞれ+X側及び-X側で一対のY軸固定レール13、ヘッドY軸サーボモータ14及びヘッドY移動軸15を備える。一対のY軸固定レール13は、基台2上に固定され、X方向に所定間隔を隔てて互いに平行にY方向に延びている。ヘッドY移動軸15は、Y軸固定レール13に近接する位置においてY方向に延びるように配設されているボールねじ軸である。ヘッドY軸サーボモータ14は、ヘッドY移動軸15を回転駆動する。一対のY軸固定レール13間には、ヘッドユニット4を支持する支持フレーム16が架設されている。支持フレーム16の+X側端部及び-X側端部には、各ヘッドY移動軸15に螺合されるナット17が組付けられている。
【0032】
ヘッド水平駆動機構D1は、ヘッドユニット4のX方向の移動機構として、支持フレーム16に搭載された図略のガイド部材、ヘッドX軸サーボモータ18及びヘッドX移動軸19を備える。前記ガイド部材は、ヘッドユニット4のX方向の移動をガイドする部材であり、支持フレーム16の+Y側の面においてX方向に延びるように固定されている。ヘッドX移動軸19は、前記ガイド部材に近接して、X方向に延びるように配設されているボールねじ軸である。ヘッドX軸サーボモータ18は、ヘッドX移動軸19を回転駆動する。ヘッドユニット4には図略のナットが付設され、当該ナットはヘッドX移動軸19に螺合されている。
【0033】
以上の構成を備えるヘッド水平駆動機構D1によれば、ヘッドY軸サーボモータ14が作動してヘッドY移動軸15が回転駆動されることにより、ヘッドユニット4が支持フレーム16と一体にY方向に移動する。また、ヘッドX軸サーボモータ18が作動してヘッドX移動軸19が回転駆動されることにより、ヘッドユニット4が支持フレーム16に対してX方向に移動する。
【0034】
カメラユニット32Uは、X方向及びY方向に移動可能なユニットであって、ウェハカメラ32を備えている。ウェハカメラ32は、ウェハステージ10上に位置決めされたウェハ7の一部分、つまりカメラ視野内のダイ7aを撮像する。この撮像画像に基づいて、吸着ヘッド4Hによる吸着対象のダイ7aの位置認識が為される。
【0035】
部品実装装置1は、ウェハステージ10と所定の待機位置との間の上方空間においてカメラユニット32Uを水平方向(X方向及びY方向)に移動させるカメラ水平駆動機構D2を備える。このカメラ水平駆動機構D2は、ヘッドユニット4を駆動するヘッド水平駆動機構D1とは別個に独立した駆動系である。なお、本実施形態では、前記待機位置は、ウェハステージ10から+Y側に離間した位置である。
【0036】
カメラ水平駆動機構D2は、カメラユニット32UのY方向の移動機構として、+X側及び-X側で一対のY軸固定レール33と、+X側に配置されたカメラY軸サーボモータ34及びカメラY移動軸35とを備える。一対のY軸固定レール33は、基台2上に固定され、X方向に所定間隔を隔てて互いに平行にY方向に延びている。カメラY移動軸35は、+X側のY軸固定レール33に近接する位置においてY方向に延びるように配設されているボールねじ軸である。カメラY軸サーボモータ34は、カメラY移動軸35を回転駆動する。一対のY軸固定レール33間には、カメラユニット32Uを支持する支持フレーム36が架設されている。支持フレーム36の+X側端部には、カメラY移動軸35に螺合されるナット37が組付けられている。
【0037】
カメラ水平駆動機構D2は、カメラユニット32UのX方向の移動機構として、支持フレーム36に搭載された図略のガイド部材、カメラX軸サーボモータ38及びカメラX移動軸39を備える。前記ガイド部材は、カメラユニット32UのX方向の移動をガイドする部材であり、支持フレーム36の-Y側面においてX方向に延びるように固定されている。カメラX移動軸39は、前記ガイド部材に近接して、X方向に延びるように配設されているボールねじ軸である。カメラX軸サーボモータ38は、カメラX移動軸39を回転駆動する。カメラユニット32Uには図略のナットが付設され、当該ナットはカメラX移動軸39に螺合されている。
【0038】
以上の構成を備えるカメラ水平駆動機構D2によれば、カメラY軸サーボモータ34が作動してカメラY移動軸35が回転駆動されることにより、カメラユニット32Uが支持フレーム36と一体にY方向に移動する。また、カメラX軸サーボモータ38が作動してカメラX移動軸39が回転駆動されることにより、カメラユニット32Uが支持フレーム36に対してX方向に移動する。
【0039】
突き上げユニット40は、ウェハステージ10の下方に配置される。突き上げユニット40は、突き上げピン47と、ピン昇降モータ40Mと、ボールねじ軸40Jと、ボールナット40Nと、を有する。
【0040】
突き上げピン47は、ウェハステージ10の下方において、突き上げユニット40に対して上下方向(Z方向)に移動可能に設けられる。突き上げピン47は、ウェハステージ10の下方において上昇移動することにより、吸着ヘッド4Hによる吸着対象のダイ7aをウェハシート8aを介して下方から突き上げる。なお、突き上げユニット40は、突き上げピン47がダイ7aを突き上げる際に、ダイ7aの周辺においてウェハシート8aを吸引する処理を行う。
【0041】
ピン昇降モータ40Mは、突き上げピン47を上下方向(Z方向)に移動させる駆動力を発するモータである。ボールねじ軸40J及びボールナット40Nは、ピン昇降モータ40Mの駆動力を突き上げピン47に伝達する。ボールねじ軸40Jは、ピン昇降モータ40Mに連結された状態で上下方向(Z方向)に延び、ピン昇降モータ40Mによって回転駆動される。ボールナット40Nは、突き上げピン47に固定された状態でボールねじ軸40Jに螺合される。ピン昇降モータ40Mが作動してボールねじ軸40Jが回転駆動されることにより、ボールナット40Nの固定された突き上げピン47が上下方向(Z方向)に移動する。
【0042】
部品実装装置1は、ウェハステージ10の下方空間において突き上げユニット40を水平方向(X方向及びY方向)に移動させる突き上げ水平駆動機構D3を備える。突き上げ水平駆動機構D3は、突き上げユニット40のY方向の移動機構として、一対のガイドレール41、突き上げY移動軸43及び突き上げY軸サーボモータ44を備える。一対のガイドレール41は、基台2上に固定され、X方向に所定間隔を隔てて互いに平行にY方向に延びている。突き上げY移動軸43は、ガイドレール41に近接する位置においてY方向に延びるように配設されているボールねじ軸である。突き上げY軸サーボモータ44は、突き上げY移動軸43を回転駆動する。一対のガイドレール41の間には、突き上げユニット40を支持する支持フレーム42が架設されている。支持フレーム42には、突き上げY移動軸43に螺合される図略のナットが組付けられている。
【0043】
突き上げ水平駆動機構D3は、突き上げユニット40のX方向の移動機構として、支持フレーム42に搭載された図略のガイド部材、突き上げX移動軸45及び突き上げX軸サーボモータ46を備える。前記ガイド部材は、突き上げユニット40のX方向の移動をガイドする部材であり、支持フレーム42の-Y側の面においてX方向に延びるように固定されている。突き上げX移動軸45は、前記ガイド部材に近接して、X方向に延びるように配設されているボールねじ軸である。突き上げX軸サーボモータ46は、突き上げX移動軸45を回転駆動する。突き上げユニット40には図略のナットが付設され、当該ナットは突き上げX移動軸45に螺合されている。
【0044】
以上の構成を備える突き上げ水平駆動機構D3によれば、突き上げY軸サーボモータ44が作動して突き上げY移動軸43が回転駆動されることにより、突き上げユニット40が支持フレーム42と一体にY方向に移動する。また、突き上げX軸サーボモータ46が作動して突き上げX移動軸45が回転駆動されることにより、突き上げユニット40が支持フレーム42に対してX方向に移動する。
【0045】
[部品実装装置の制御構成]
図3のブロック図に示されるように、部品実装装置1は、制御ユニット100を備える。制御ユニット100は、各種の演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)からなる処理部101と、各種の情報を記憶する記憶部102と、を備えたマイクロコンピュータによって構成される。
【0046】
処理部101は、ヘッド水平駆動機構D1のヘッドY軸サーボモータ14及びヘッドX軸サーボモータ18、カメラ水平駆動機構D2のカメラY軸サーボモータ34及びカメラX軸サーボモータ38、突き上げ水平駆動機構D3の突き上げY軸サーボモータ44及び突き上げX軸サーボモータ46、ヘッドユニット4のヘッド昇降モータ4M、突き上げユニット40のピン昇降モータ40Mの各モータの駆動を制御することにより、各種の処理を行う。図4に示されるように、処理部101は、撮像位置移動処理S1、待機位置移動処理S2、接触移動処理S3、突き上げ移動処理S4、取り出し移動処理S5、及び搭載移動処理S6を行う。処理部101が行う各処理の詳細については後述する。
【0047】
記憶部102は、処理部101が接触移動処理S3及び突き上げ移動処理S4を行う際に用いる各種の情報を記憶する。図3に示されるように、記憶部102は、吸着ヘッド4H及び突き上げピン47の位置に関する位置情報としてのシート接触位置P21、第1突き上げ位置P22、第2突き上げ位置P23及び部品接触位置P31を記憶する。
【0048】
シート接触位置P21及び部品接触位置P31は、処理部101が接触移動処理S3を行う際に用いられる位置情報である。シート接触位置P21は、ウェハステージ10に配置されたウェハシート8aに対して突き上げピン47の先端が下方から接触するときの上下方向の位置を示す。部品接触位置P31は、ウェハシート8aに貼着されたダイ7aに対して吸着ヘッド4Hの先端が上方から接触するときの上下方向の位置を示す。
【0049】
第1突き上げ位置P22及び第2突き上げ位置P23は、処理部101が突き上げ移動処理S4を行う際に用いられる位置情報である。第1突き上げ位置P22及び第2突き上げ位置P23は、突き上げピン47によるダイ7aの突き上げ時における、突き上げピン47の先端の上下方向の目標位置を示し、シート接触位置P21よりも上方に位置する。なお、処理部101が突き上げ移動処理S4を行う際に用いられる位置情報としての突き上げ位置の設定数は、1つであってもよいし、2以上の複数であってもよい。本実施形態では、処理部101が突き上げ移動処理S4を行う際に用いられる突き上げ位置として、第1突き上げ位置P22と第2突き上げ位置P23との2つの位置が設定されている。第2突き上げ位置P23は、第1突き上げ位置P22よりも上方に位置する。
【0050】
また、記憶部102は、吸着ヘッド4H及び突き上げピン47の上下方向の移動の速度に関する速度情報としてのピン基準速度SSP、ピン突き上げ速度SPP及びヘッド速度SHを記憶する。
【0051】
ピン基準速度SSPは、処理部101が接触移動処理S3及び取り出し移動処理S5を行う際に用いられる速度情報である。ピン基準速度SSPは、接触移動処理S3において突き上げピン47がシート接触位置P21に向かって上昇移動する際、及び、取り出し移動処理S5において突き上げピン47が下降移動する際の速度を示す。なお、ピン基準速度SSPは、突き上げピン47が停止状態から所定の最高速度に到達するまでの加速駆動時の速度、最高速度を維持する定速駆動時の速度、最高速度から停止状態に至るまでの減速駆動時の速度をそれぞれ含む。
【0052】
ヘッド速度SHは、処理部101が接触移動処理S3、突き上げ移動処理S4及び取り出し移動処理S5を行う際に用いられる速度情報である。ヘッド速度SHは、接触移動処理S3において吸着ヘッド4Hが部品接触位置P31に向かって下降移動する際、突き上げ移動処理S4において吸着ヘッド4Hが部品接触位置P31から上昇移動する際、取り出し移動処理S5において吸着ヘッド4Hが上昇移動する際の速度を示す。なお、ヘッド速度SHは、吸着ヘッド4Hが停止状態から所定の最高速度に到達するまでの加速駆動時の速度、最高速度を維持する定速駆動時の速度、最高速度から停止状態に至るまでの減速駆動時の速度をそれぞれ含む。
【0053】
ピン突き上げ速度SPPは、処理部101が突き上げ移動処理S4を行う際に用いられる速度情報である。ピン突き上げ速度SPPは、突き上げ移動処理S4において突き上げピン47がシート接触位置P21から第1突き上げ位置P22に向かって上昇移動する際、及び第1突き上げ位置P22から第2突き上げ位置P23に向かって上昇移動する際の速度を示す。なお、ピン突き上げ速度SPPは、突き上げピン47が停止状態から所定の最高速度に到達するまでの加速駆動時の速度、最高速度を維持する定速駆動時の速度、最高速度から停止状態に至るまでの減速駆動時の速度をそれぞれ含む。
【0054】
突き上げ移動処理S4においては、突き上げピン47の上昇移動のピン突き上げ速度SPPは、吸着ヘッド4Hの上昇移動のヘッド速度SHよりも上回る速度に設定される。例えば、ピン突き上げ速度SPPは、ヘッド速度SHに対して10%上回る速度に設定される。
【0055】
また、記憶部102は、ピン昇降モータ40M及びヘッド昇降モータ4Mの駆動電流の上限値に関する電流上限値情報としての基準電流上限値ILS、及び荷重制御用電流上限値ILLを記憶する。
【0056】
基準電流上限値ILSは、処理部101が接触移動処理S3及び取り出し移動処理S5を行う際に用いられる電流上限値情報である。基準電流上限値ILSは、突き上げピン47及び吸着ヘッド4Hを上下方向に移動させる際にピン昇降モータ40M及びヘッド昇降モータ4Mに供給される駆動電流の基準の上限値を示す。
【0057】
荷重制御用電流上限値ILLは、処理部101が接触移動処理S3及び突き上げ移動処理S4を行う際に用いられる電流上限値情報である。図5に示されるように、ピン昇降モータ40Mは突き上げピン47を上下方向に移動させる駆動力を発し、ヘッド昇降モータ4Mは吸着ヘッド4Hを上下方向に移動させる駆動力を発する。突き上げピン47が下方からウェハシート8aに接触し且つ吸着ヘッド4Hが上方からダイ7aに接触することにより、突き上げピン47と吸着ヘッド4Hとの間に挟持された状態のダイ7aに作用する荷重は、ピン昇降モータ40M及びヘッド昇降モータ4Mによる駆動力から損失量を減算した値となる。損失量は、ピン昇降モータ40M及びヘッド昇降モータ4Mのコギングによる力(コギング力)、重力、バネ4Sの力、ヘッドユニット4におけるボールねじ軸4Jとボールナット4Nとの間の摩擦力、突き上げユニット40におけるボールねじ軸40Jとボールナット40Nとの間の摩擦力などを含む。
【0058】
荷重制御用電流上限値ILLは、ピン昇降モータ40M及びヘッド昇降モータ4Mに供給される駆動電流について、突き上げピン47と吸着ヘッド4Hとの間に挟持された状態のダイ7aに目標荷重が作用するときの上限値を示す。荷重制御用電流上限値ILLは、ピン昇降モータ40M及びヘッド昇降モータ4Mの駆動力の損失量に対応した損失電流に基づいて設定される。具体的には、荷重制御用電流上限値ILLは、荷重電流と損失電流とを加算した値に設定される。なお、荷重制御用電流上限値ILLは、基準電流上限値ILSよりも低い値に設定される。
【0059】
処理部101は、記憶部102に記憶された各情報を用いて、図4に示される撮像位置移動処理S1、待機位置移動処理S2、接触移動処理S3、突き上げ移動処理S4、取り出し移動処理S5、及び搭載移動処理S6を行う。
【0060】
撮像位置移動処理S1において、処理部101は、吸着ヘッド4Hによる吸着対象のダイ7aに対して上方の撮像位置P10にカメラユニット32Uが移動するように、カメラY軸サーボモータ34及びカメラX軸サーボモータ38の駆動を制御する。カメラユニット32Uが撮像位置P10に配置されると、カメラユニット32Uに搭載されたウェハカメラ32がダイ7aを撮像する。処理部101は、ウェハカメラ32がダイ7aを撮像することで取得された画像データに基づいて、吸着ヘッド4Hによる吸着対象のダイ7aの位置を認識する。
【0061】
撮像位置移動処理S1の処理後の待機位置移動処理S2において、処理部101は、吸着対象のダイ7aに対して上方のヘッド待機位置P30に吸着ヘッド4Hの先端が到達するまでヘッドユニット4が水平方向に移動するように、ヘッドY軸サーボモータ14及びヘッドX軸サーボモータ18の駆動を制御する。これにより、ヘッドユニット4は、吸着ヘッド4Hの先端がヘッド待機位置P30に位置するように配置される。また、待機位置移動処理S2において、処理部101は、吸着対象のダイ7aに対して下方の突き上げ待機位置P20に突き上げピン47の先端が到達するまで突き上げユニット40が水平方向に移動するように、突き上げY軸サーボモータ44及び突き上げX軸サーボモータ46の駆動を制御する。これにより、突き上げユニット40は、突き上げピン47の先端が突き上げ待機位置P20に位置するように配置される。
【0062】
突き上げピン47の先端が突き上げ待機位置P20に配置されるとともに、吸着ヘッド4Hの先端がヘッド待機位置P30に配置された状態で、処理部101は、接触移動処理S3を行う。接触移動処理S3において、処理部101は、突き上げピン47の先端がシート接触位置P21に到達するまで突き上げピン47が上昇移動するように、ピン昇降モータ40Mの駆動を制御する。これにより、突き上げピン47は、下方からウェハシート8aに接触する。また、接触移動処理S3において、処理部101は、吸着ヘッド4Hの先端が部品接触位置P31に到達するまで吸着ヘッド4Hが下降移動するように、ヘッド昇降モータ4Mの駆動を制御する。これにより、吸着ヘッド4Hは、上方から吸着対象のダイ7aに接触する。処理部101の接触移動処理S3の詳細については後述する。
【0063】
突き上げピン47が下方からウェハシート8aに接触し且つ吸着ヘッド4Hが上方からダイ7aに接触することにより、突き上げピン47と吸着ヘッド4Hとの間に吸着対象のダイ7aが挟持される。突き上げピン47と吸着ヘッド4Hとの間にダイ7aが挟持された状態で、突き上げユニット40はダイ7aの周辺においてウェハシート8aを吸引する処理を行い、吸着ヘッド4Hはダイ7aを吸着保持する。
【0064】
突き上げピン47の先端がシート接触位置P21に配置されるとともに、吸着ヘッド4Hの先端が部品接触位置P31に配置された状態で、処理部101は、接触移動処理S3の後処理として突き上げ移動処理S4を行う。突き上げ移動処理S4において、処理部101は、突き上げピン47の先端がシート接触位置P21よりも上方の第1突き上げ位置P22及び第2突き上げ位置P23にそれぞれ到達するまで突き上げピン47が上昇移動するようにピン昇降モータ40Mの駆動を制御するとともに、突き上げピン47の上昇移動に応じて吸着ヘッド4Hが上昇移動するようにヘッド昇降モータ4Mの駆動を制御する。これにより、突き上げピン47は、吸着ヘッド4Hにより吸着保持された状態のダイ7aを下方から突き上げる。処理部101の突き上げ移動処理S4の詳細については後述する。
【0065】
突き上げピン47と吸着ヘッド4Hとの間にダイ7aが挟持された状態で突き上げピン47の先端が第2突き上げ位置P23に配置されると、処理部101は、突き上げ移動処理S4の後処理として取り出し移動処理S5を行う。取り出し移動処理S5において、処理部101は、吸着ヘッド4Hの先端がヘッド待機位置P30に到達するまで吸着ヘッド4Hが上昇移動するように、ヘッド昇降モータ4Mの駆動を制御する。これにより、吸着ヘッド4Hは、吸着保持したダイ7aをウェハシート8aから取り出してピッキングする。また、取り出し移動処理S5において、処理部101は、突き上げピン47の先端が突き上げ待機位置P20に到達するまで突き上げピン47が下降移動するように、ピン昇降モータ40Mの駆動を制御する。
【0066】
取り出し移動処理S5の処理後において、処理部101は、搭載移動処理S6を行う。搭載移動処理S6において、処理部101は、吸着ヘッド4Hに吸着保持されたダイ7aを基板Pに搭載するために、吸着ヘッド4Hの先端が搭載位置P40に到達するまでヘッドユニット4が水平方向に移動するように、ヘッドY軸サーボモータ14及びヘッドX軸サーボモータ18の駆動を制御する。これにより、ヘッドユニット4は、吸着ヘッド4Hの先端が基板Pの上方の搭載位置P40に位置するように配置される。吸着ヘッド4Hは、吸着保持しているダイ7aをリリースすることにより、基板P上にダイ7aを搭載する。
【0067】
次に、処理部101が突き上げ移動処理S4の前処理として行う接触移動処理S3について、図6のフローチャートを参照しながら詳細に説明する。
【0068】
接触移動処理S3において、処理部101は、記憶部102からシート接触位置P21及び部品接触位置P31を読み出す。これにより、処理部101は、吸着ヘッド4Hによる吸着対象のダイ7aに対応したシート接触位置P21及び部品接触位置P31を設定する(ステップS31)。更に、処理部101は、記憶部102からピン基準速度SSP及びヘッド速度SHを読み出す。これにより、処理部101は、突き上げピン47の先端がシート接触位置P21に到達するまで突き上げピン47を上昇移動させるときの速度としてピン基準速度SSPを設定するとともに、吸着ヘッド4Hの先端が部品接触位置P31に到達するまで吸着ヘッド4Hを下降移動させるときの速度としてヘッド速度SHを設定する(ステップS32)。
【0069】
シート接触位置P21及び部品接触位置P31を設定するとともにピン基準速度SSP及びヘッド速度SHを設定すると、処理部101は、シート接触PTP(Point to Point)時間及び部品接触PTP時間を設定する(ステップS33)。シート接触PTP時間は、突き上げピン47の先端が突き上げ待機位置P20からシート接触位置P21に至るまでの突き上げピン47の上昇移動の所要時間を示す。処理部101は、シート接触位置P21及びピン基準速度SSPに基づいてシート接触PTP時間を演算することにより、当該シート接触PTP時間を設定する。部品接触PTP時間は、吸着ヘッド4Hの先端がヘッド待機位置P30から部品接触位置P31に至るまでの吸着ヘッド4Hの下降移動の所要時間を示す。処理部101は、部品接触位置P31及びヘッド速度SHに基づいて部品接触PTP時間を演算することにより、当該部品接触PTP時間を設定する。
【0070】
また、処理部101は、記憶部102から基準電流上限値ILSを読み出す。これにより、処理部101は、ピン昇降モータ40M及びヘッド昇降モータ4Mの駆動電流の上限値として基準電流上限値ILSを設定する(ステップS34)。
【0071】
基準電流上限値ILSの設定が完了すると、処理部101は、ピン昇降モータ40Mに対する駆動電流の供給を開始することにより突き上げピン47の上昇移動を開始させ、ヘッド昇降モータ4Mに対する駆動電流の供給を開始することにより吸着ヘッド4Hの下降移動を開始させる(ステップS35)。
【0072】
ピン昇降モータ40Mに対する駆動電流の供給が開始されると、突き上げピン47は、ピン基準速度SSPに含まれる加速駆動時の速度でシート接触位置P21に向かって上昇移動する。一方、ヘッド昇降モータ4Mに対する駆動電流の供給が開始されると、吸着ヘッド4Hは、ヘッド速度SHに含まれる加速駆動時の速度で部品接触位置P31に向かって下降移動する。突き上げピン47及び吸着ヘッド4Hの加速駆動時においては、処理部101は、ピン昇降モータ40M及びヘッド昇降モータ4Mの駆動電流が基準電流上限値ILS以下の範囲に収まるように、ピン昇降モータ40M及びヘッド昇降モータ4Mの駆動を制御する。
【0073】
突き上げピン47及び吸着ヘッド4Hの加速駆動中において、処理部101は、加速駆動が終了したか否かを判定する(ステップS36)。突き上げピン47及び吸着ヘッド4Hの加速駆動が終了した場合(ステップS36でYES)、処理部101は、記憶部102から荷重制御用電流上限値ILLを読み出す。これにより、処理部101は、ピン昇降モータ40M及びヘッド昇降モータ4Mの駆動電流の上限値を、基準電流上限値ILSから荷重制御用電流上限値ILLに切り替える(ステップS37)。
【0074】
突き上げピン47及び吸着ヘッド4Hの加速駆動が終了すると、処理部101は、ピン基準速度SSPに含まれる定速駆動時及び減速駆動時の速度で突き上げピン47が上昇移動を継続するようにピン昇降モータ40Mの駆動を制御するとともに、ヘッド速度SHに含まれる定速駆動時及び減速駆動時の速度で吸着ヘッド4Hが下降移動を継続するようにヘッド昇降モータ4Mの駆動を制御する(ステップS38)。突き上げピン47及び吸着ヘッド4Hの定速駆動時及び減速駆動時においては、処理部101は、ピン昇降モータ40M及びヘッド昇降モータ4Mの駆動電流が荷重制御用電流上限値ILL以下の範囲に収まるように、ピン昇降モータ40M及びヘッド昇降モータ4Mの駆動を制御する。
【0075】
処理部101は、突き上げピン47の減速駆動中においてシート接触PTP時間が経過したか否かを判定するとともに、吸着ヘッド4Hの減速駆動中において部品接触PTP時間が経過したか否かを判定する(ステップS39)。シート接触PTP時間及び部品接触PTP時間が経過していない場合(ステップS39でNO)、処理部101は、ステップS38に処理を戻す。一方、シート接触PTP時間及び部品接触PTP時間が経過した場合(ステップS39でYES)、処理部101は、ステップS40に処理を移行する。ステップS40では、処理部101は、ピン昇降モータ40M及びヘッド昇降モータ4Mの駆動電流が荷重制御用電流上限値ILLとなったときに、突き上げピン47の先端がシート接触位置P21に到達するとともに吸着ヘッド4Hの先端が部品接触位置P31に到達したことを検出する。突き上げピン47の先端がシート接触位置P21に到達し且つ吸着ヘッド4Hの先端が部品接触位置P31に到達すると、処理部101は、ピン昇降モータ40M及びヘッド昇降モータ4Mの駆動を停止させる(ステップS41)。
【0076】
以上説明の通り、処理部101が接触移動処理S3を行うことにより、突き上げピン47はその先端がシート接触位置P21に到達するまで上昇移動し、吸着ヘッド4Hはその先端が部品接触位置P31に到達するまで下降移動する。突き上げピン47の上昇移動と吸着ヘッド4Hの下降移動とによって、ウェハシート8aに貼着されたダイ7aは、突き上げピン47と吸着ヘッド4Hとの間に挟持される。突き上げピン47と吸着ヘッド4Hとの間にダイ7aが挟持されることにより突き上げピン47の上昇移動及び吸着ヘッド4Hの下降移動が規制されると、ピン昇降モータ40M及びヘッド昇降モータ4Mの駆動電流は上昇する。この際、ピン昇降モータ40M及びヘッド昇降モータ4Mの駆動電流の上限値として荷重制御用電流上限値ILLが設定されているため、ピン昇降モータ40M及びヘッド昇降モータ4Mの駆動電流は荷重制御用電流上限値ILL以下の範囲に収められる。これにより、突き上げピン47の先端がシート接触位置P21に到達し且つ吸着ヘッド4Hの先端が部品接触位置P31に到達したときにおいて、ダイ7aに作用する荷重を目標荷重に制御することができる。このため、突き上げピン47の上昇移動と吸着ヘッド4Hの下降移動とによってウェハシート8aに貼着されたダイ7aが挟持されるときに、ダイ7aの損傷を抑制することが可能となる。
【0077】
また、突き上げピン47の先端がシート接触位置P21に到達し且つ吸着ヘッド4Hの先端が部品接触位置P31に到達することで、突き上げピン47の上昇移動及び吸着ヘッド4Hの下降移動が規制されたときには、ピン昇降モータ40M及びヘッド昇降モータ4Mの駆動電流が荷重制御用電流上限値ILLとなるまで上昇する。このため、ピン昇降モータ40M及びヘッド昇降モータ4Mの駆動電流が荷重制御用電流上限値ILLとなったときに、突き上げピン47の先端がシート接触位置P21に到達するとともに吸着ヘッド4Hの先端が部品接触位置P31に到達したことを検出することが可能となる。
【0078】
次に、処理部101が接触移動処理S3の後処理として行う突き上げ移動処理S4について、図7及び図8のフローチャートを参照しながら詳細に説明する。
【0079】
突き上げ移動処理S4において、処理部101は、記憶部102から第1突き上げ位置P22及び第2突き上げ位置P23を読み出す。これにより、処理部101は、突き上げピン47と吸着ヘッド4Hとの間にダイ7aが挟持された状態における、突き上げピン47の先端の到達目標位置となる第1突き上げ位置P22及び第2突き上げ位置P23を設定する(ステップS401)。更に、処理部101は、記憶部102からピン突き上げ速度SPP及びヘッド速度SHを読み出す。これにより、処理部101は、突き上げピン47の先端が第1突き上げ位置P22及び第2突き上げ位置P23のそれぞれに到達するまでに、突き上げピン47を上昇移動させるときの速度としてピン突き上げ速度SPPを設定するとともに、吸着ヘッド4Hを上昇移動させるときの速度としてヘッド速度SHを設定する(ステップS402)。
【0080】
第1突き上げ位置P22及び第2突き上げ位置P23を設定するとともにピン突き上げ速度SPP及びヘッド速度SHを設定すると、処理部101は、第1突き上げPTP時間及び第2突き上げPTP時間を設定する(ステップS403)。第1突き上げPTP時間は、突き上げピン47の先端がシート接触位置P21から第1突き上げ位置P22に至るまでの突き上げピン47の上昇移動の所要時間を示す。第2突き上げPTP時間は、突き上げピン47の先端が第1突き上げ位置P22から第2突き上げ位置P23に至るまでの突き上げピン47の上昇移動の所要時間を示す。
【0081】
詳細については後述するが、突き上げ移動処理S4において処理部101は、突き上げピン47の上昇移動の速度として、吸着ヘッド4Hの上昇移動のヘッド速度SHよりも上回るピン突き上げ速度SPPを設定し、ピン昇降モータ40M及びヘッド昇降モータ4Mの駆動電流が荷重制御用電流上限値ILLを維持するように、突き上げピン47の先端が第1突き上げ位置P22及び第2突き上げ位置P23にそれぞれ到達するまで、ピン昇降モータ40M及びヘッド昇降モータ4Mの駆動を継続させる。この場合、速度に関する設定によって突き上げピン47が吸着ヘッド4Hを上方へ押すように移動しようとするが、ピン昇降モータ40M及びヘッド昇降モータ4Mの駆動電流の荷重制御用電流上限値ILLに基づく制御によって吸着ヘッド4Hに対する突き上げピン47の上昇移動が規制される。このため、突き上げピン47のピン突き上げ速度SPPが吸着ヘッド4Hのヘッド速度SHよりも上回る速度に設定されてはいるが、突き上げ移動処理S4における突き上げピン47及び吸着ヘッド4Hの実際の上昇移動の際には、突き上げピン47の上昇移動の速度は、吸着ヘッド4Hの上昇移動の速度として設定されたヘッド速度SHにならうことになる。そこで、処理部101は、シート接触位置P21と第1突き上げ位置P22との間の距離を突き上げピン47の上昇移動の移動距離として演算し、当該移動距離とヘッド速度SHとに基づいて第1突き上げPTP時間を演算することにより、当該第1突き上げPTP時間を設定する。同様に、処理部101は、第1突き上げ位置P22と第2突き上げ位置P23との間の距離を突き上げピン47の上昇移動の移動距離として演算し、当該移動距離とヘッド速度SHとに基づいて第2突き上げPTP時間を演算することにより、当該第2突き上げPTP時間を設定する。
【0082】
また、処理部101は、記憶部102から荷重制御用電流上限値ILLを読み出す。これにより、処理部101は、ピン昇降モータ40M及びヘッド昇降モータ4Mの駆動電流の上限値として荷重制御用電流上限値ILLを設定する(ステップS404)。
【0083】
荷重制御用電流上限値ILLの設定が完了すると、処理部101は、ピン昇降モータ40Mに対する駆動電流の供給を開始することにより、突き上げピン47の上昇移動を開始させる(ステップS405)。突き上げピン47の上昇移動を開始させた後、処理部101は、ヘッド昇降モータ4Mに対する駆動電流の供給を開始することにより、吸着ヘッド4Hの上昇移動を開始させる(ステップS406)。すなわち、突き上げ移動処理S4において処理部101は、突き上げピン47が吸着ヘッド4Hよりも早くに上昇移動を開始するように、ピン昇降モータ40M及びヘッド昇降モータ4Mの駆動を制御する。
【0084】
ピン昇降モータ40Mに対する駆動電流の供給が開始され、その後、ヘッド昇降モータ4Mに対する駆動電流の供給が開始されると、処理部101は、ピン突き上げ速度SPPに含まれる加速駆動時、定速駆動時及び減速駆動時の速度で突き上げピン47が上昇移動を継続するようにピン昇降モータ40Mの駆動を制御するとともに、ヘッド速度SHに含まれる加速駆動時、定速駆動時及び減速駆動時の速度で吸着ヘッド4Hが上昇移動を継続するようにヘッド昇降モータ4Mの駆動を制御する(ステップS407)。この際、処理部101は、ピン昇降モータ40M及びヘッド昇降モータ4Mの駆動電流が荷重制御用電流上限値ILLを維持するように、突き上げピン47の先端が第1突き上げ位置P22に到達するまでピン昇降モータ40M及びヘッド昇降モータ4Mの駆動を継続させる。
【0085】
処理部101は、突き上げピン47及び吸着ヘッド4Hの減速駆動中において第1突き上げPTP時間が経過したか否かを判定する(ステップS408)。第1突き上げPTP時間が経過していない場合(ステップS408でNO)、処理部101は、ステップS407に処理を戻す。一方、第1突き上げPTP時間が経過した場合(ステップS408でYES)、処理部101は、ステップS409に処理を移行する。ステップS409では、処理部101は、ピン昇降モータ40Mに設けられたロータリーエンコーダ40E(図3)から出力される信号に基づいて、突き上げピン47の先端が第1突き上げ位置P22に到達したことを検出する。突き上げピン47の先端が第1突き上げ位置P22に到達すると、処理部101は、ピン昇降モータ40M及びヘッド昇降モータ4Mの駆動を停止させる(ステップS410)。
【0086】
ステップS410の処理後において、処理部101は、ピン昇降モータ40Mに対する駆動電流の供給を開始することにより、突き上げピン47の上昇移動を開始させる(ステップS411)。突き上げピン47の上昇移動を開始させた後、処理部101は、ヘッド昇降モータ4Mに対する駆動電流の供給を開始することにより、吸着ヘッド4Hの上昇移動を開始させる(ステップS412)。すなわち、突き上げ移動処理S4において処理部101は、突き上げピン47が吸着ヘッド4Hよりも早くに上昇移動を開始するように、ピン昇降モータ40M及びヘッド昇降モータ4Mの駆動を制御する。
【0087】
ピン昇降モータ40Mに対する駆動電流の供給が開始され、その後、ヘッド昇降モータ4Mに対する駆動電流の供給が開始されると、処理部101は、ピン突き上げ速度SPPに含まれる加速駆動時、定速駆動時及び減速駆動時の速度で突き上げピン47が上昇移動を継続するようにピン昇降モータ40Mの駆動を制御するとともに、ヘッド速度SHに含まれる加速駆動時、定速駆動時及び減速駆動時の速度で吸着ヘッド4Hが上昇移動を継続するようにヘッド昇降モータ4Mの駆動を制御する(ステップS413)。この際、処理部101は、ピン昇降モータ40M及びヘッド昇降モータ4Mの駆動電流が荷重制御用電流上限値ILLを維持するように、突き上げピン47の先端が第2突き上げ位置P23に到達するまでピン昇降モータ40M及びヘッド昇降モータ4Mの駆動を継続させる。
【0088】
処理部101は、突き上げピン47及び吸着ヘッド4Hの減速駆動中において第2突き上げPTP時間が経過したか否かを判定する(ステップS414)。第2突き上げPTP時間が経過していない場合(ステップS414でNO)、処理部101は、ステップS413に処理を戻す。一方、第2突き上げPTP時間が経過した場合(ステップS414でYES)、処理部101は、ステップS415に処理を移行する。ステップS415では、処理部101は、ピン昇降モータ40Mに設けられたロータリーエンコーダ40Eから出力される信号に基づいて、突き上げピン47の先端が第2突き上げ位置P23に到達したことを検出する。突き上げピン47の先端が第2突き上げ位置P23に到達すると、処理部101は、ピン昇降モータ40M及びヘッド昇降モータ4Mの駆動を停止させる(ステップS416)。
【0089】
以上説明の通り、突き上げ移動処理S4において処理部101は、突き上げピン47の上昇移動の速度として、吸着ヘッド4Hの上昇移動のヘッド速度SHよりも上回るピン突き上げ速度SPPを設定し、ピン昇降モータ40M及びヘッド昇降モータ4Mの駆動電流が荷重制御用電流上限値ILLを維持するように、突き上げピン47の先端が第1突き上げ位置P22及び第2突き上げ位置P23にそれぞれ到達するまで、ピン昇降モータ40M及びヘッド昇降モータ4Mの駆動を継続させる。この場合、ウェハシート8aに貼着されたダイ7aが突き上げピン47と吸着ヘッド4Hとの間に挟持された状態で、突き上げピン47及び吸着ヘッド4Hが上昇移動するときには、速度に関する設定によって突き上げピン47が吸着ヘッド4Hを上方へ押すように移動しようとするが、ピン昇降モータ40M及びヘッド昇降モータ4Mの駆動電流の荷重制御用電流上限値ILLに基づく制御によって吸着ヘッド4Hに対する突き上げピン47の過度な上昇移動が規制される。これにより、突き上げピン47の先端が第1突き上げ位置P22及び第2突き上げ位置P23のそれぞれに到達するまで、突き上げピン47と吸着ヘッド4Hとの間の距離を一定に保つことができる。
【0090】
しかも、ピン昇降モータ40M及びヘッド昇降モータ4Mに供給される荷重制御用電流上限値ILLは、ウェハシート8aに貼着されたダイ7aに目標荷重が作用するときの駆動電流の上限値に設定されている。このため、ピン昇降モータ40M及びヘッド昇降モータ4Mの駆動電流が荷重制御用電流上限値ILLを維持するように制御されることにより、突き上げピン47の先端が第1突き上げ位置P22及び第2突き上げ位置P23のそれぞれに到達するまで突き上げピン47及び吸着ヘッド4Hが上昇移動するときには、突き上げピン47と吸着ヘッド4Hとの間に挟持された状態のダイ7aに目標荷重が作用し続ける。これにより、従来技術のように荷重測定器を用いることなく、ピン昇降モータ40M及びヘッド昇降モータ4Mの駆動電流に関する荷重制御用電流上限値ILLの設定に基づいて、効率よくダイ7aに作用する荷重を目標荷重に制御することができる。このため、突き上げピン47及び吸着ヘッド4Hが上昇移動するときに、突き上げピン47と吸着ヘッド4Hとの間に挟持された状態のダイ7aの損傷を抑制するとともに吸着ヘッド4Hによってダイ7aを適切に吸着保持することが可能となる。
【0091】
また、突き上げピン47と吸着ヘッド4Hとの間にダイ7aが挟持された状態で、突き上げピン47が吸着ヘッド4Hよりも早くに上昇移動を開始するので、突き上げピン47と吸着ヘッド4Hとの間の距離が大きくなることを抑制できる。これにより、ダイ7aに目標荷重が作用した状態で、より確実に、突き上げピン47と吸着ヘッド4Hとの間の距離を一定に保つことができる。
【0092】
また、ピン昇降モータ40M及びヘッド昇降モータ4Mの制御に基づき突き上げピン47及び吸着ヘッド4Hが上昇移動するときに、突き上げピン47の先端が第1突き上げ位置P22及び第2突き上げ位置P23のそれぞれに到達したことを、ピン昇降モータ40Mに設けられたロータリーエンコーダ40Eの出力信号に基づいて検出することができる。
【符号の説明】
【0093】
1 部品実装装置(部品移載装置)
4 ヘッドユニット
4H 吸着ヘッド
4M ヘッド昇降モータ
40 突き上げユニット
40E ロータリーエンコーダ
40M ピン昇降モータ
47 突き上げピン
5 部品供給ユニット
7a ダイ(部品)
8a ウェハシート(シート)
100 制御ユニット
図1
図2
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図4
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図8