(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068424
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 11/215 20160101AFI20240513BHJP
H02K 1/276 20220101ALI20240513BHJP
【FI】
H02K11/215
H02K1/276
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178861
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】松田 龍典
【テーマコード(参考)】
5H611
5H622
【Fターム(参考)】
5H611AA01
5H611BB01
5H611BB06
5H611PP05
5H611QQ03
5H611RR02
5H611TT01
5H611UA04
5H622CA02
5H622CA05
5H622CA10
5H622CB05
5H622PP03
(57)【要約】
【課題】モータの構成部品を追加することなく磁気センサによるマグネットの位置検出の精度を向上する。
【解決手段】周方向に配置されたマグネット31及びマグネット31を収容するロータコア33を有するロータ3と、ロータ3に固定されたシャフト2と、ロータ3の回転数を検出する磁気センサ81と、軸方向において前記マグネット31の一方の面を覆っている磁性体7と、を備え、磁性体7は、軸方向に突出した突出部71を有し、磁気センサ81は、軸方向において、突出部71に対向している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に配置されたマグネット及び前記マグネットを収容するロータコアを有するロータと、
前記ロータに固定されたシャフトと、
前記ロータの回転数を検出する磁気センサと、
軸方向において、前記マグネットの一方の面を覆っている磁性体と、
を備え、
前記磁性体は、軸方向に突出した突出部を有し、
前記磁気センサは、軸方向において、前記突出部に対向している、
モータ。
【請求項2】
軸方向において前記磁性体に対向する回路基板を備え、
前記磁気センサの一部は、軸方向において、前記突出部と対向している、
請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記突出部は、径方向において、前記磁性体の外周側の端部に設けられている、
請求項1に記載のモータ。
【請求項4】
径方向において、前記突出部の外周側面と、前記ロータコアの外周側面とで連続した面を形成している、
請求項3に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な装置において、その駆動源としてモータが用いられている。モータには、様々な種類があり、その使用目的や場面に応じて、各種のモータが選択されている。その中でも、ロータコア内部にマグネットを埋め込んだ埋込磁石同期モータ(Interior Permanent Magnet Synchronous Motor)が知られている。IPMSMは、性能の設計と形状の設計に対する高い自由度を持つため、家電分野、車載分野、産業分野といった、幅広い用途で使用されている。
【0003】
IPMSMのロータ部は、軸方向に積層されたロータコアと、ロータコアの端面から軸方向に沿って形成された収容孔に収容されたマグネットとを備えている。IPMSMにおいて、軸方向の端部に端板を設けて収容孔の開口部を覆うことによって、マグネットを保持する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ところで、IPMSMは、ロータの回転位置に応じてステータの巻線への通電を制御するため、ロータのマグネットが発する磁界に基づいてロータの回転位置を検出する、磁気センサが設けられることが多い。なお、モータにおいて、ロータのマグネットが発する磁界を磁気センサにより精度よく検出可能にするための技術が知られている(例えば、特許文献2,3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9-233750号公報
【特許文献2】特開2002-101583号公報
【特許文献3】特開2004-129456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の技術では、モータにおいて、磁気センサによるマグネットの位置検出精度を向上させるために追加の部品を設けることになる。このため、従来の技術では、このような点においてさらなる改良が求められている。
【0007】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、モータの構成部品を追加することなく磁気センサによるマグネットの位置検出の精度を向上する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係るモータは、周方向に配置されたマグネット及び前記マグネットを収容するロータコアを有するロータと、前記ロータに固定されたシャフトと、前記ロータの回転数を検出する磁気センサと、軸方向において前記マグネットの一方の面を覆っている磁性体と、を備え、前記磁性体は、軸方向に突出した突出部を有し、前記磁気センサは、軸方向において、前記突出部に対向している。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態にかかるモータの断面図である。
【
図2】本実施の形態にかかるモータの断面図であり、
図1における主にロータ、プレート、及び、磁気センサを示す部分拡大断面図である。
【
図3】本実施の形態にかかるモータが備えるプレートの斜視図である。
【
図4】本実施の形態にかかるモータと比較例のモータとにおける、ロータの軸方向における端面からの距離と軸方向の磁束密度との特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の例示的態様である一実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1は、本実施の形態にかかるモータ1の縦断面図であり、
図2は、
図1に示すモータ1における主にロータ3、プレート7、及び、磁気センサ81を示す部分拡大断面図である。
【0012】
なお、本実施形態の説明において、上方乃至下方と云う時は、
図1における上下関係を意味し、重力方向における上下関係とは、必ずしも一致しない。
さらに、軸線X方向(以下、「軸方向」ともいう。)において矢印a方向を上側aとし、矢印b方向を下側bとする。また、軸線Xに垂直な方向(以下、「径方向」ともいう。)において、軸線Xから遠ざかる方向(矢印c方向)を外周側cとし、軸線Xに向かう方向(矢印d方向)を内周側dとする。そして、回転軸Xを中心とする円周方向(上側aから見た円周方向)を周方向とする。
これら、方向に関する定義や符号は、以降の説明においても同様とする。
【0013】
本実施の形態におけるモータ1は、インナーロータタイプのブラシレスモータの一種であり、スポーク型の埋込磁石同期モータ(IPMSM)である。IPMSMとは、ロータにマグネットを埋め込んだモータであり、埋込マグネット型モータとも呼ばれる。IPMSMにも種々の形態のものがあるが、断面が長方形のマグネットの長手方向を、ロータコア内に放射状に配置したスポーク型のIPMSMが知られている。このスポーク型のIPMSMでは、長辺側の面が磁極となり、周方向において隣接するマグネットの対向する磁極面が同極になっている。
【0014】
モータ1は、回転軸となるシャフト2と、ロータ3と、ステータ4と、ハウジング5と、軸受61,62と、プレート7と、回路基板8と、磁気センサ81と、を備える。
【0015】
シャフト2は、2つの端部2a,2bを備えている。シャフト2は、ハウジング本体51側にある一方の端部2bが、一方の軸受61によりハウジング本体51に対して回転可能に支持されている。また、シャフト2は、カバー52側にある他方の端部2aが他方の軸受62に回転可能に支持されている。つまり、シャフト2は、軸受61を介してハウジング本体51、及び、軸受62を介してカバー52に、それぞれ回転自在に固定されている。シャフト2は、カバー52から一方の端部2aが突き出している。シャフト2は、一方の端部2aから外部に、回転力を取り出すことができるようになっている。シャフト2は、ロータ3に固定され、ステータ4とロータ3との電磁気的作用によってロータ3が回転すると、ロータ3とともに回転する。
【0016】
ロータ3は、磁性体で形成されたロータコア33内にマグネット31が配置されてなり、シャフト2に固定されて共に回転する。ロータ3は、ステータ4との間に所定の間隙を有するように設けられている。
【0017】
マグネット31は、ロータ3の外周側、すなわち、ステータ4の内周側に向かい合う側に、取り付けられている。マグネット31は、ロータコア33に保持されている。マグネット31は、ロータ3の外周側の面に沿って配置されている。マグネット31は、複数の磁石をロータ3の外周側の面に沿って配置してもよく、また、環状または略環状に形成されている磁石をロータ3の外周側の面に沿って配置してもよい。
【0018】
ロータコア33は、複数の磁性体の積層体により形成されている。ロータコア33を構成する複数の磁性体は、例えば電磁鋼板である。ロータコア33には、マグネット31を外周側の面に沿って配置することができるように、マグネット31を収容可能な空間が設けられている。
【0019】
ステータ4は、ティース部43を含むステータコア41と、コイル42とを有する。ステータコア41には、コイル42が巻き回されている。ステータ4は、ロータ3を取り囲むように配置されている。
【0020】
ステータコア41は、電磁鋼板等の磁性体の積層体である。ステータコア41は、シャフト2と同軸に配された環状部(以下、「円環部」と称する。)44と、円環部44からシャフト2側へ向かって延びるように形成された複数の磁極部(以下、「ティース部」と称する。)43を有する。
【0021】
コイル42は、ステータコア41の複数のティース部43の各々の周囲に巻き回されている。ステータコア41とコイル42とは、絶縁体で形成されたインシュレータ45によって絶縁されている。
【0022】
ハウジング5は、ハウジング本体51とカバー52とを有する。ハウジング本体51は、ロータ3やステータ4等のモータ1の構成部品の一部または全部を内部に収容し、ステータ4が固定される。
【0023】
ハウジング本体51は、突出部51aaを有する底部51aと筒部51bと外周部51cを備える。
【0024】
カバー52は、ハウジング本体51の上部に設けられた開口部を覆う。カバー52は、突出部52aaを有する環状の平板部52aと、外周部52cとを備える。カバー52の突出部52aaは、平板部52aに設けられており、シャフト2の長手方向(軸線X方向)において、ロータ3に向かう方向(下側b)に突出している。モータ1は、ハウジング本体51の外周部51cとカバー52の外周部52cとが固定(締結)されて、ハウジング5の内部が外部から遮蔽される。
【0025】
モータ1には、シャフト2をハウジング5に対して回転可能に支持する複数(本実施形態においては2つ)の軸受61,62が設けられている。ハウジング本体51の底部51aには、複数の軸受61,62のうち一方の軸受61が設けられている。軸受61を支持するハウジング本体51の底部51aには、シャフト2の長手方向(軸線X方向)において、ロータ3に向かう方向(上側a)に向かって突出する突出部(以下、「軸受ハウジング」と称する。)51aaと孔部51abが設けられており、この軸受ハウジング51aaに、軸受61が圧入などにより固定されている。他方の軸受62は、カバー52の突出部(以下、「軸受ハウジング」と称する。)52aaに圧入等されて固定されている。径方向において、一方の軸受61の外径及び内径と他方の軸受62の外径及び内径は、それぞれ略同じとなっている。
【0026】
なお、一方の軸受61の外径及び内径と他方の軸受62の外径及び内径とは略同じであるが、一方の軸受61の外径または内径あるいはその両方より、他方の軸受62の外径または内径あるいはその両方を大きくしても構わない。また、底部51aには孔部51abを設けなくても構わない。
【0027】
プレート7は、磁性体の一例であり、ロータ3の軸方向における一方の面、
図2に示すようにロータ3の軸方向における上側の面(以下、ロータ上側面34と称する)に面するように設けられている。プレート7は、ロータ上側面34を覆っている。上述したように、ロータ3には、マグネット31がロータ3の外周側の面に沿ってロータ3の周方向において環状に配置されている。プレート7は、マグネット31の軸方向における上側の面(以下、マグネット上側面35と称する)を覆っている。プレート7は、ロータ上側面34とマグネット上側面35とを覆うことにより、マグネット31が軸方向に動くことがないようにしている。つまり、プレート7は、ロータ3の軸方向の端部に設けられる端板であり、ロータコア33におけるマグネット31を収容される空間の開口部を覆うことによって、マグネット31を保持する。
【0028】
図3は、モータ1が備えるプレート7の斜視図である。プレート7は、例えば、S45C、あるいは、電磁鋼板などの磁性体により形成されている。プレート7は、突出部71、外周端部72、上端部73、円板部74、および、孔部75を有する。
【0029】
突出部71は、円板部74から上下方向(円板部74の面が広がる方向、軸方向)においてロータ3から遠ざかる方向、
図1及び
図2において上側に突出した部分である。突出部71は、径方向において円板部74の外周側の端部である外周端部72に設けられている。突出部71は、径方向における外周側面である外周端部72が、ロータコア33の径方向における外周側面である端部と連続した面を形成していてもよい。突出部71は、
図1及び
図2に示すように、断面形状が円板部74の外周端部72からL字状または略L字状に折り曲げられて形成されている。
【0030】
円板部74は、突出部71が突出している方向とは反対方向の面、すなわち、下側面74bが、ロータ3のロータ上側面34に接するまたは面することにより、ロータ3のマグネット31が生じる磁力を帯びることができるように形成されている。円板部74の中央部分には、シャフト2を挿通するための孔部75が設けられている。なお、円板部74は、
図1から
図3に示すような、平面または略平面を有する円板状または略円板状の形状に形成されている例に限定されない。円板部74は、例えば、ロータ上側面34の形状に対応した形状、あるいはマグネット31からの磁力を帯びるのに適した形状であればよい。
【0031】
以上のように構成されているプレート7は、突出部71が、円板部74から上下方向における一方の方向、例えば、プレート7の上側に設けられている磁気センサ81の方向に、ロータコア33に取り付けられているマグネット31から帯びた磁束を導くことができる。具体的には、プレート7において、円板部74が、ロータ3のロータ上側面34及びマグネット上側面35に面していることにより、マグネット31からの磁束を帯びる。そして、マグネット31からの磁束は、突出部71が円板部74から磁気センサ81に近づくように突出していることで、
図2に示す矢印Mのように磁気センサ81に導かれる。
【0032】
なお、突出部71は、円板部74の外周端部72に設けられている例に限らず、円板部74の径方向において適宜な位置に設けられていればよい。
【0033】
回路基板8は、軸方向においてプレート7に対向して、プレート7の上側に設けられている。回路基板8は、磁気センサ81の他、モータ1を動作させるための各種電子部品、及び、これらの電子部品を機能させるための回路が形成されている。磁気センサ81は、突出部71を介してマグネット31から生じる磁力を検出することができるように、磁気検出を行う部分が突出部71に向くように、つまり、下側を向くように回路基板8の搭載面82に配置されている。磁気センサ81は、軸方向において、突出部71に対向する位置に設けられている。磁気センサ81は、軸方向から見て突出部71と一部が重なって配置されているのが望ましい。
【0034】
[モータの作用]
次に、以上説明した構成を備えるモータ1の作用について説明する。
【0035】
以上説明したモータ1は、ロータ3の軸方向における一方の面であるロータ上側面34を覆っているプレート7が、磁性体により形成されていて、マグネット31の軸方向における一方の面であるマグネット上側面35を覆っている。プレート7は、軸方向においてロータ3から遠ざかる方向に突出した突出部71を有する。また、モータ1は、ロータ3の回転数を検出する磁気センサ81が、軸方向において、突出部71に対向して設けられていて、突出部71から生じる磁力を検出する。
【0036】
また、モータ1は、軸方向においてプレート7に対向して設けられている回路基板8を備え、磁気センサ81が、軸方向から見て突出部71と一部が重なって配置されている。
【0037】
以上のように構成されているモータ1によれば、プレート7の突出部71によりロータ3から発生する磁束を、磁気センサ81に集中させることができるので、磁気センサ81によるロータ3の磁気検出精度を向上することができる。ここで、プレート7は、マグネット31を保持する部品である。
【0038】
つまり、モータ1によれば、モータ1の構成部品を追加することなく磁気センサ81によるマグネット31の位置検出の精度を向上することができる。
【0039】
図4は、モータ1と比較例のモータとにおける、ロータ3の軸方向における端面からの距離と軸方向の磁束密度との特性を示す図である。
図4において、比較例のモータは、モータが備えるプレート7の外周端部72に突出部71を有していないものに相当する。また、
図4は、磁界解析により算出したデータを示す。
図4において、実施例は実線で、比較例は破線でそれぞれ示す。
【0040】
図4に示すように、プレート7に突出部71を有するモータ1は、比較例のモータに比べて軸方向の磁束密度が大きくなっていることがわかる。つまり、モータ1によれば、磁気センサ81によるロータの回転位置の検出に必要な磁束量を増加させることができる。
【0041】
また、モータ1は、突出部71が、プレート7の径方向における端部である外周端部72に設けられている。
【0042】
以上のように構成されているモータ1によれば、モータ1の組み立て時に、突出部71を組み立て用治具の引っ掛かりとして使うことができるため、プレート7の取付作業性を向上することができる。また、モータ1によれば、突出部71をプレート7の外周端部72を折り曲げるのみで形成することができるため、簡易な組み立て工程によりロータ3の磁気検出の精度を向上させることができる。
【0043】
また、モータ1は、突出部71の径方向の端部である外周端部72が、ロータ3の径方向の端部と面一になっている。
【0044】
以上のように構成されているモータ1によれば、モータ1の径方向における装置構成を大型化することなく、ロータ3の磁気検出精度の向上をすることができる。
【0045】
その他、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明のモータを適宜改変することができる。かかる改変によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0046】
1…モータ、2…シャフト、2a,2b…端部、3…ロータ、31…マグネット、33…ロータコア、34…ロータ上側面、35…マグネット上側面、4…ステータ、41…ステータコア、42…コイル、43…ティース部、44…円環部、45…インシュレータ、5…ハウジング、51…ハウジング本体、51a…底部、51aa…軸受ハウジング(突出部)、51ab…孔部、51b…筒部、51c…外周部、52…カバー、52a…平板部、52aa…軸受ハウジング(突出部)、52c…外周部、61…軸受、62…軸受、7…プレート(磁性体)、71…突出部、72…外周端部、73…上端部、74…円板部、74b…下側面、75…孔部、8…回路基板、81…磁気センサ、82…搭載面