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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068427
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】粒状断熱材充填装置および方法
(51)【国際特許分類】
   F17C 3/04 20060101AFI20240513BHJP
【FI】
F17C3/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178866
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100127797
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 晴洋
(72)【発明者】
【氏名】門田 高明
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB01
3E172AB04
3E172AB05
3E172AB11
3E172AB15
3E172BA06
3E172BB06
3E172BB12
3E172BB17
3E172BD05
3E172CA10
3E172DA03
3E172DA15
3E172DA90
3E172KA03
(57)【要約】
【課題】多重殻タンクの断熱空間に粒状断熱材を所要の比重で充填する。
【解決手段】パーライト充填装置1は、液化水素を貯蔵する多重殻タンク100内の断熱空間S1に、粒状断熱材としてのパーライトPを充填する装置である。パーライト充填装置1は、パーライトPを収容するパーライト容器2と、パーライトPの払い出しに伴うパーライト容器2内の減圧を抑止するために、バランスガスをパーライト容器2に供給するバランスガス供給管5と、パーライト容器2と多重殻タンク100とを接続し、パーライト容器2内のパーライトPをバランスガスとともに断熱空間S1に導入するパーライト導入管3と、一端側7aが窒素ガスの供給源に接続され、他端側7bがパーライト導入管3に合流され、パーライト導入管3に窒素ガスを供給するガス供給配管71とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガスを貯蔵する多重殻タンク内の断熱空間に粒状断熱材を充填する装置であって、
前記粒状断熱材を収容する収容容器と、
前記粒状断熱材の払い出しに伴う前記収容容器内の減圧を抑止するために、減圧補填ガスを前記収容容器に供給する補填ガス配管と、
前記収容容器と前記多重殻タンクとを接続し、前記収容容器内の粒状断熱材を前記減圧補填ガスとともに前記断熱空間に導入する導入配管と、
一端側が不活性ガスの供給源に接続され、他端側が前記導入配管に合流され、前記導入配管に不活性ガスを供給するガス供給配管と、
を備える粒状断熱材充填装置。
【請求項2】
請求項1に記載の粒状断熱材充填装置において、
前記ガス供給配管の合流点よりも上流側において前記導入配管に配設される第1流量調整弁と、前記合流点よりも上流側において前記ガス供給配管に配設される第2流量調整弁と、を備え、
前記第1流量調整弁および前記第2流量調整弁による流量調整により、前記導入配管の前記合流点よりも下流側における前記粒状断熱材と前記不活性ガスとの流量比が調整可能とされている、粒状断熱材充填装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の粒状断熱材充填装置において、
前記減圧補填ガスが不活性ガスからなり、
前記ガス供給配管の一端側が前記収容容器に接続され、前記収容容器に供給される前記減圧補填ガスの一部が前記ガス供給配管へ供給される、粒状断熱材充填装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の粒状断熱材充填装置において、
前記減圧補填ガスが不活性ガスからなり、
前記ガス供給配管の一端側が前記補填ガス配管に分岐接続され、前記補填ガス配管を流通する前記減圧補填ガスの一部が前記ガス供給配管へ供給される、粒状断熱材充填装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の粒状断熱材充填装置において、
前記補填ガス配管に供給されるガスと前記ガス供給配管に供給されるガスは、同一の不活性ガスであって、
前記不活性ガスを前記補填ガス配管および前記ガス供給配管に供給する一つの不活性ガス供給源を備える、粒状断熱材充填装置。
【請求項6】
請求項5に記載の粒状断熱材充填装置において、
前記多重殻タンクにおける前記液化ガスの貯蔵空間を不活性ガスに置換する置換装置を備え、
前記一つの不活性ガス供給源として、不活性ガスに置換された状態の前記貯蔵空間が用いられる、粒状断熱材充填装置。
【請求項7】
請求項1に記載の粒状断熱材充填装置において、
前記ガス供給配管の合流点よりも下流側の前記導入配管は、内部を流れる粒状断熱材を目視できる程度の透明性を有する透明管を含む、粒状断熱材充填装置。
【請求項8】
液化ガスを貯蔵する多重殻タンク内の断熱空間に粒状断熱材を充填する方法であって、
前記粒状断熱材を収容する収容容器と前記多重殻タンクとを導入配管で接続し、
前記導入配管に不活性ガスを供給可能なガス供給配管を接続し、
前記収容容器から前記粒状断熱材を、前記粒状断熱材の払い出しに伴う前記収容容器内の減圧を抑止する減圧補填ガスとともに、前記導入配管を通して前記断熱空間に導入し、
前記粒状断熱材の前記導入を行う期間の少なくとも一部に、前記ガス供給配管から前記導入配管に不活性ガスを供給する、粒状断熱材充填方法。
【請求項9】
請求項8に記載の粒状断熱材充填方法において、
前記粒状断熱材の前記断熱空間への導入の初期段階では、前記導入配管における前記粒状断熱材の流量を所定量に設定し、
前記粒状断熱材の前記断熱空間への導入が所定のレベルに達したとき、前記導入配管における前記粒状断熱材の流量を前記初期段階よりも減量する一方で、前記ガス供給配管から前記導入配管に供給する不活性ガスの流量を増量させる、粒状断熱材充填方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液化ガスを貯蔵する多重殻タンク内の断熱空間に粒状断熱材を充填する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液化水素や液化天然ガスなどの低温の液化ガスは、多重殻タンクの内部に貯蔵される。多重殻タンクは、内槽と、内槽を収容する外槽とを含むタンクである。液化ガスの保冷のため、内槽と外槽との間には所定厚みの断熱空間が形成される。また、前記断熱空間にはパーライト等の粒状断熱材が充填される。
【0003】
多重殻タンク内の断熱空間に粒状断熱材を充填する方法として、下記特許文献1に記載の工法が知られている。特許文献1のパーライト充填工法は、パーライトを貯えるパーライトホッパと多重殻タンクの断熱空間とを配管で接続し、かつその状態で断熱空間内のガスを真空ポンプで吸引する。これにより、ホッパと断熱空間との間に生じる差圧を利用して、前記配管を通してホッパ内のパーライトを断熱空間に充填させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2-256999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
粒状断熱材は、多重殻タンクの断熱空間に圧密充填することが、保冷効果を高めるために望ましい。特許文献1の工法にて前記断熱空間への前記粒状断熱材の導入を行った場合、初期段階では良好に導入を行えるが、ある程度導入が進行すると、導入配管において前記粒状断熱材の詰まりが頻発することが判明した。このため、前記粒状断熱材を前記断熱空間へ所要の比重まで圧密充填できないという問題が生じた。
【0006】
本開示の目的は、多重殻タンクの断熱空間に粒状断熱材を所要の比重で充填することが可能な粒状断熱材充填装置および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一局面に係る粒状断熱材充填装置は、液化ガスを貯蔵する多重殻タンク内の断熱空間に粒状断熱材を充填する装置であって、前記粒状断熱材を収容する収容容器と、前記粒状断熱材の払い出しに伴う前記収容容器内の減圧を抑止するために、減圧補填ガスを前記収容容器に供給する補填ガス配管と、前記収容容器と前記多重殻タンクとを接続し、前記収容容器内の粒状断熱材を前記減圧補填ガスとともに前記断熱空間に導入する導入配管と、一端側が不活性ガスの供給源に接続され、他端側が前記導入配管に合流され、前記導入配管に不活性ガスを供給するガス供給配管と、を備える。
【0008】
本開示の他の局面に係る粒状断熱材充填方法は、液化ガスを貯蔵する多重殻タンク内の断熱空間に粒状断熱材を充填する方法であって、前記粒状断熱材を収容する収容容器と前記多重殻タンクとを導入配管で接続し、前記導入配管に不活性ガスを供給可能なガス供給配管を接続し、前記収容容器から前記粒状断熱材を、前記粒状断熱材の払い出しに伴う前記収容容器内の減圧を抑止する減圧補填ガスとともに、前記導入配管を通して前記断熱空間に導入し、前記粒状断熱材の前記導入を行う期間の少なくとも一部に、前記ガス供給配管から前記導入配管に不活性ガスを供給する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、多重殻タンクの断熱空間に粒状断熱材を所要の比重で充填することが可能な粒状断熱材充填装置および方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示の第1実施形態に係るパーライト充填装置の構成を示すシステム図である。
図2図2は、第2実施形態に係るパーライト充填装置の構成を示すシステム図である。
図3図3は、第3実施形態に係るパーライト充填装置の構成を示すシステム図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本開示に係る粒状断熱材充填装置および方法の実施形態を詳細に説明する。本開示は、液化ガスを貯蔵する多重殻タンク内の断熱空間に粒状断熱材を充填する装置および方法に関する。多重殻タンクは、例えば球形または平底の二重殻、三重殻タンクである。貯蔵される液化ガスは、例えば液化水素、液体ヘリウム、液体窒素、液化天然ガスまたは液化石油ガスなどである。また、粒状断熱材の代表例は、粉体のパーライトである。以下の実施形態では、一例として、液化水素を貯蔵する二重殻タンクの断熱空間に粉体のパーライトを充填する装置および方法を示す。
【0012】
[第1実施形態]
図1は、本開示の粒状断熱材充填装置の第1実施形態に係るパーライト充填装置1の全体構成を示すシステム図である。パーライト充填装置1は、多重殻タンク100内の断熱空間S1にパーライトPを充填する装置である。多重殻タンク100は、液化水素を貯蔵するための二重殻の球形タンクである。多重殻タンク100は、液化水素の貯蔵空間S2を区画する球状のタンク内槽101と、タンク内槽101を収容する球状のタンク外槽102と、タンク外槽102を地盤上において支持する支柱103とを備える。断熱空間S1は、保冷のためにタンク内槽101とタンク外槽102との間に形成された所定厚みの空間である。パーライトPは、保冷効果を高めるために断熱空間S1に充填される粉体状の断熱材である。パーライト充填装置1は、多重殻タンク100の運用前、つまり貯蔵空間S2に液化水素が貯蔵される前に用意され、パーライトPを断熱空間S1に圧密状態で充填する用途に供される。
【0013】
パーライト充填装置1は、パーライト容器2(収容容器)、パーライト導入管3(導入配管)、真空ポンプ4、バランスガス供給管5(補填ガス配管)、置換装置6およびガス供給装置7を備える。
【0014】
パーライト容器2は、断熱空間S1に充填される前のパーライトPを収容する容器である。パーライト導入管3は、パーライト容器2内のパーライトPを断熱空間S1へ導入するための配管である。パーライト導入管3は、タンク外槽102とパーライト容器2とを互いに接続している。真空ポンプ4は、断熱空間S1を真空引きするためのポンプである。バランスガス供給管5は、貯蔵空間S2とパーライト容器2との間で圧力バランスをとるための配管である。バランスガス供給管5は、タンク内槽101とパーライト容器2とを互いに接続している。置換装置6は、液化水素を貯蔵する前に、貯蔵空間S2に存在する空気を不活性ガス、本実施形態では窒素ガスに置換する装置である。ガス供給装置7は、パーライト導入管3に不活性ガスを供給し、当該パーライト導入管3におけるパーライトPの詰まりを抑制するための装置である。以下、上掲の各部につき説明を加える。
【0015】
パーライト容器2は、一端2Aと他端2Bとを有する横長の筒型容器であり、窒素ガス雰囲気中でパーライトPを収容している。パーライト容器2は、多重殻タンク100から幾分離れた位置において、当該容器の他端2B付近が図略のクレーンにより吊られた状態で設置されている。すなわち、パーライト容器2の他端2B側には、クレーンから延びるワイヤWの先端が接続されている。当該ワイヤWを介してパーライト容器2がクレーンにより吊り上げられることにより、地盤に対し傾斜した姿勢でパーライト容器2が設置される。パーライト容器2の設置姿勢は、多重殻タンク100に近い側の一端2Aの高さが、反対側の他端2Bの高さよりも低くなるように傾斜した姿勢である。なお、図1では、クレーンにより吊り上げられる前のパーライト容器2の姿勢が二点鎖線で示されている。
【0016】
パーライト容器2の一端2Aには、当該パーライト容器2に収容されているパーライトPを払い出すための払出口2aが形成されている。他端2Bには、パーライト容器2内に減圧補填ガスとしてのバランスガスを供給するためのガス供給口2bが形成されている。なお、本実施形態では、前記バランスガスとして、タンク内槽101内の貯蔵空間S2(一つの不活性ガス供給源)に存在する窒素ガスが供給される。詳細は後述する。
【0017】
パーライト導入管3は、分岐ソケット3B(合流点)よりも多重殻タンク100側の管路を構成する上流管11、透明管12および下流管13と、分岐ソケット3Bよりもパーライト容器2側の管路を構成する充填配管21とを含む。分岐ソケット3Bは、後述するガス供給装置7のガス供給配管71をパーライト導入管3に合流させるためのT字型の分岐接続部を構成している。
【0018】
充填配管21は、パーライト容器2の払出口2aと、分岐ソケット3Bとを接続している。充填配管21は、例えば鋼管等から構成された剛性管と、可撓管21Fとの組み合わせで構成されている。可撓管21Fは、屈曲自在な可撓性を有する管であり、例えばフレキシブル鋼管である。上流管11は、分岐ソケット3Bと透明管12とを接続している。上流管11も、剛性管と可撓管11Fとの組み合わせからなる。
【0019】
透明管12は、上流管11と下流管13との間に介在される、透明性を有する合成樹脂製のストレート管である。透明管12は、その内部を通過するパーライトPを外部から視認し得る程度の透明性を有している。このような透明性を有する限りにおいて、透明管12は透明又は半透明のいずれの材質から構成されてもよい。例えば、透明管12は、透明又は半透明のアクリル管とすることができる。透明管12は、上流管11および下流管13に対して各々フランジ接続されている。
【0020】
下流管13は、透明管12から上方に延びる縦管23と、縦管23の下流端とタンク外槽102とを接続する接続管24とを含む。縦管23は、鋼管等の剛性管から構成されている。接続管24は、少なくとも一部にフレキシブル鋼管等の可撓管24Fを含む。接続管24の下流端は、タンク外槽102の充填口102aに接続されている。充填口102aは、パーライト導入管3から供給されたパーライトPを断熱空間S1に導入するための連通部であって、タンク外槽102の複数箇所に設けられている。これら複数の充填口102aのいずれかに接続管24が選択的に接続され、その状態で断熱空間S1へのパーライトPの充填作業が行われる。すなわち、パーライトPの充填作業は、接続管24が接続される充填口102aを適宜切り替えながら行われる。
【0021】
パーライト導入管3における、分岐ソケット3Bよりも上流側の充填配管21の途中には、第1流量調整弁31が配設されている。第1流量調整弁31は、充填配管21から分岐ソケット3Bに送られるパーライトPの流量を調整するために、開度が調整されるバルブである。第1流量調整弁31は、充填配管21の流量を調整できるものであればその種類を問わない。
【0022】
パーライト導入管3の下流管13の途中であって充填口102aに近い位置には、第1開閉弁32が設けられている。第1開閉弁32は、パーライト導入管3を通じた断熱空間S1へのパーライトPの導入およびその停止を切り替えるためのバルブである。第1開閉弁32は、パーライトPの導入を開始する際に開弁され、パーライトPの導入を停止する際に閉弁される。第1開閉弁32は、管路を開放又は遮断できるものであり、例えば不測事態に迅速に遮断できるボール弁が好適である。
【0023】
真空ポンプ4は、ガスを吸引可能なポンプ要素と当該ポンプ要素を駆動する電動モータ等の駆動源とを含む吸引ポンプである。真空ポンプ4は、吸引管41を介して多重殻タンク100の断熱空間S1と連通しており、当該断熱空間S1内のガスを吸引管41から吸引して外部に排出することにより、断熱空間S1を真空化することが可能である。パーライト容器2と断熱空間S1とはパーライト導入管3で直結されていることから、断熱空間S1が真空化されると、パーライト容器2と断熱空間S1との間に大きな圧力差が生じる。断熱空間S1へのパーライトPの導入時には、このような圧力差が生じるように真空ポンプ4が駆動される。このような真空充填法により、パーライト導入管3を通じてパーライトPが断熱空間S1に引き込まれる。
【0024】
バランスガス供給管5は、パーライト容器2のガス供給口2bとタンク内槽101とを接続している。パーライトPの払い出しに伴うパーライト容器2内の減圧を抑止するために、バランスガスをパーライト容器2に供給するための配管である。本実施形態では、タンク内槽101内の貯蔵空間S2に貯留された不活性ガスが、前記バランスガスとして用いられる。また、前記バランスガスとして窒素ガスが用いられる。パーライト容器2内のパーライトPは、前記窒素ガスとともに払出口2aからパーライト導入管3へ送り出され、断熱空間S1に導入される。多重殻タンク100の断熱空間S1にパーライトPを充填する作業中、貯蔵空間S2は窒素ガスで満たされる。
【0025】
バランスガス供給管5には、第2開閉弁34、第3開閉弁35およびチャッキ弁36が設けられている。第2開閉弁34および第3開閉弁35は、上述した第1開閉弁32と同様、管路の開放/遮断が可能なボール弁等からなるバルブである。チャッキ弁36は、貯蔵空間S2からパーライト容器2に向かう流れを許容しかつその逆方向の流れを禁止する逆流防止弁である。第2開閉弁34は、多重殻タンク100に近いバランスガス供給管5に取り付けられ、第3開閉弁35は、パーライト容器2のガス供給口2bに近いバランスガス供給管5に取り付けられている。チャッキ弁36は、第2開閉弁34の下流側の近傍に配置されている。
【0026】
置換装置6は、多重殻タンク100への液化水素およびパーライトPの充填作業前に、貯蔵空間S2の雰囲気を空気から窒素ガスに置換する。置換装置6は、置換ガス供給源60、供給管61および開閉弁62を含む。置換ガス供給源60は、窒素ガスの供給源である。開閉弁62が開かれた供給管61を通して置換ガス供給源60から窒素ガスが供給されることで、貯蔵空間S2が窒素ガスに置換される。置換装置6は、パーライトPの充填作業中も、消費された窒素ガスを補充するよう、窒素ガスを貯蔵空間S2へ供給する。
【0027】
置換ガス供給源60から貯蔵空間S2に窒素ガスが随時供給されることにより、略一定の圧力の窒素ガスで貯蔵空間S2が満たされた状態が定常的に得られる。バランスガス供給管5は、このように窒素ガスで満たされた大容量の貯蔵空間S2とパーライト容器2とを互いに連通することにより、パーライト容器2内の圧力を貯蔵空間S2と同等の圧力に維持する役割を果たす。これにより、パーライトPの充填中、パーライト容器2と断熱空間S1との圧力差が継続的に確保されて、断熱空間S1にパーライトPが充填され易くなる。
【0028】
ガス供給装置7は、パーライト導入管3に不活性ガスを供給することにより、当該パーライト導入管3におけるパーライトPの流動詰まりを抑制する装置である。ガス供給装置7は、ガス供給配管71および第2流量調整弁72を含む。ガス供給配管71は、不活性ガスの供給源とパーライト導入管3とを接続する配管であって、その一端側7aがパーライト容器2に接続され、他端側7bがパーライト導入管3に合流されている。ガス供給配管71は、その一部に可撓管73を含んでいる。
【0029】
第1実施形態では、前記不活性ガスの供給源として、パーライト容器2に供給されているバランスガスを利用している。すなわち、貯蔵空間S2からパーライト容器2に供給されるバランスガスとしての窒素ガスの一部が、一端側7aからガス供給配管71に供給される。ガス供給配管71の他端側7bは、分岐ソケット3Bに接続されている。ガス供給配管71へ導入された窒素ガスは、合流点である分岐ソケット3Bからパーライト導入管3に供給可能である。このように、ガス供給配管71はパーライト容器2から分岐し、払出口2aが接続されているパーライト導入管3に合流するので、パーライト容器2内とガス供給配管71内とが同じ圧力となる。従って、両者間の差圧に起因するパーライトPの逆流を抑止できる。
【0030】
パーライト容器2における、ガス供給配管71の一端側7aの分岐部には、パーライトPを通過させないフィルター2Fが取り付けられている。これにより、窒素ガスだけが一端側7aからガス供給配管71へ導入される。第2流量調整弁72は、分岐ソケット3Bよりも上流側においてガス供給配管71に配設されている。第2流量調整弁72は、ガス供給配管71からパーライト導入管3へ供給される窒素ガスの流量を調整するために、開度が調整されるバルブである。
【0031】
分岐ソケット3Bよりも上流側に配設された第1流量調整弁31と、ガス供給配管71に配設された第2流量調整弁72とによる流量調整により、パーライト導入管3の分岐ソケット3Bよりも下流側管路(上流管11および下流管13)におけるパーライトPと窒素ガスとの流量比が調整可能である。第1流量調整弁31の開度を大きくする一方で第2流量調整弁72の開度を絞れば、パーライトPを大きな流量で断熱空間S1へ送ることができる。これに対し、第1流量調整弁31の開度を絞る一方で第2流量調整弁72の開度を大きくすれば、窒素ガスの流量が大きくなり、パーライトPの濃度を薄くして断熱空間S1へ送ることができる。これにより、パーライト導入管3の詰まりを抑制できる。
【0032】
<パーライトの充填作業>
次に、以上のようなパーライト充填装置1を用いて多重殻タンク100の断熱空間S1にパーライトPを充填する作業の概略手順について説明する。なお、この作業が開始される前提として、多重殻タンク100の貯蔵空間S2は既に窒素ガスで満たされているものとする。すなわち、開閉弁62が事前に開かれて、置換ガス供給源60からの窒素ガスが供給管61を通じて貯蔵空間S2に供給されることにより、貯蔵空間S2内のガスが空気から窒素ガスへと置換される。パーライトPの充填作業が開始されるのは、このような窒素ガスへの置換作業が完了した後である。
【0033】
パーライトPの充填作業を開始するために、まずパーライト充填装置1が組み立てられる。すなわち、多重殻タンク100から規定の距離だけ離れた定位置にパーライト容器2が搬入されるとともに、図1に示す通りに、パーライト容器2と多重殻タンク100との間でパーライト導入管3、バランスガス供給管5およびガス供給装置7が組み立てられる。併せて真空ポンプ4が用意され、当該真空ポンプ4とタンク外槽102とが吸引管41を介して接続される。パーライト容器2は、一端2Aの高さが他端2Bよりも低くなるように、クレーンのワイヤWによって持ち上げられる。パーライト導入管3は、パーライト容器2の払出口2aと、タンク外槽102に備えられている複数の充填口102aのうちの一つとを接続するように組み立てられる。なお、パーライト導入管3の接続管24が最初に接続される充填口102aとしては、タンク外槽102において比較的高さの低い位置に配置されている充填口102aが選ばれる。
【0034】
以上のようなパーライト充填装置1の組立後、パーライトPを断熱空間S1に充填する作業が開始される。すなわち、パーライト導入管3の第1開閉弁32と、バランスガス供給管5の第2開閉弁34および第3開閉弁35が開弁される。その状態で、真空ポンプ4が駆動されて断熱空間S1が真空化される。これにより、パーライト容器2内のパーライトPが、バランスガスの窒素ガスとともにパーライト導入管3を通じて断熱空間S1に引き込まれ、パーライトPの充填が開始される。パーライトPの充填の初期段階では、パーライトPの流量が所定流量となるよう、パーライト導入管3の第1流量調整弁31が例えば全開とされる。一方、ガス供給配管71の第2流量調整弁72は全閉または僅かな開度とされる。充填初期は断熱空間S1に空きが多いことから、上記のような開度設定としてパーライトPの流量を大きくし、短時間に多量のパーライトPの充填を行うことが優先される。
【0035】
パーライトPの充填が進むと、パーライトPの充填がスムーズに進行しないことがある。これは、接続管24が接続されている充填口102a付近が充填されたパーライトPで満たされ、パーライト導入管3内においてパーライトPの流動の滞りや詰まりが生じるからである。なお、作業者は、パーライトPのパーライト導入管3内の流動状況を、透明管12を通して目視で確認することができる。
【0036】
パーライトPの断熱空間S1への導入が所定のレベルに達したとき、流量調整弁31、72が操作される。前記所定レベルは、例えばパーライトPの流動詰まりが透明管12で確認されたとき、あるいは第1流量調整弁31を全開とする充填が所定時間経過したとき等である。この場合、第1流量調整弁31の開度を小さく、第2流量調整弁72の開度を大きくする操作が行われる。すなわち、第1流量調整弁31を絞って、充填配管21から上流管11へ向かうパーライトPおよび窒素ガスの流量を初期段階よりも少なくする。一方、第2流量調整弁72の開度を大きくすることで、上流管11に供給する窒素ガスの流量を増量させる。これにより、第1流量調整弁31の絞りにより充填配管21のルートでは窒素ガスの流量が減少しても、上流管11ではガス供給配管71というバイパス経路から供給される窒素ガスにより所要の窒素ガス流量が確保できる。
【0037】
パーライト導入管3においてパーライトPの詰まりを生じ難くするには、断熱空間S1へ単位時間当たりのパーライトPの流量を減らせば良い。充填に時間を要しても、パーライトPを充填できることが肝要である。しかし、第1流量調整弁31を単純に絞っただけでは、パーライトPだけでなく、バランスガスとしての窒素ガスの流量も減ってしまう。このため、パーライト導入管3内のパーライトPの流速が遅くなり、結局、詰まりが生じて充填自体が行えなくなる。
【0038】
窒素ガスは気体であるので、パーライト導入管3内で詰まることはない。そこで、本実施形態では、ガス供給配管71を通して窒素ガスを供給し、上流管11および下流管13における窒素ガスの流量を確保する。これにより、パーライト導入管3内のパーライトPの流速を確保しつつ、パーライトPの濃度を薄くすることができる。従って、パーライト導入管3でのパーライトPの詰まりを抑制しつつ、断熱空間S1へパーライトPを圧密充填することが可能となる。
【0039】
なお、上記の通りの流量調整弁31、72の操作を行っても、同一の充填口102aを使用したままではパーライトPの充填はいずれ困難になる。この場合に作業者は、例えばパーライト導入管3の接続管24を、これまで使用していた充填口102aよりも高い位置にある他の充填口102aか、同等の高さでかつ周方向の位置が異なる他の充填口102aに付け替える。その後の作業は、上記と同様である。
【0040】
<作用効果>
以上説明した第1実施形態によれば、パーライトPを多重殻タンク100の断熱空間S1へ送るパーライト導入管3に、ガス供給配管71から窒素ガスが供給可能である。このため、パーライト導入管3においてパーライトPの流動が滞ったときに、ガス供給配管71から供給される窒素ガスの流動でパーライトPを断熱空間S1へ送ることができる。
【0041】
また、第1流量調整弁31および第2流量調整弁72による流量調整により、分岐ソケット3Bよりも下流側のパーライト導入管3におけるパーライトPと窒素ガスとの流量比を自在にコントロールできる。例えば、パーライト導入管3においてパーライトPの流動の滞りが生じていない状況では、第1流量調整弁31の開度を第2流量調整弁72の開度よりも大きくして、パーライトPを大きな流量で断熱空間S1へ導入させる。一方、パーライトPの流動に滞りが生じた場合には、第1流量調整弁31の開度を絞ってパーライトPの流量を減らす一方で、第2流量調整弁72の開度を相対的に大きくして流動を確保し、多量の窒素ガスに乗せて少量のパーライトPを断熱空間S1へ導入させる。このような流量コントロールにより、断熱空間S1へ所要の比重でパーライトPを充填させることができる。
【0042】
さらに、パーライト容器2に供給されるバランスガスの一部がガス供給配管71へ供給される。つまり、バランスガスとガス供給配管71への供給ガスが同一の不活性ガスである。このため、ガス供給配管71への供給用の不活性ガスを新たに配備する必要がない。また、パーライト容器2およびガス供給配管71の内部が同じ圧力となり、パーライトPの逆流を抑止できる利点もある。
【0043】
加えて、多重殻タンク100の貯蔵空間S2が置換装置6によって窒素ガスに置換され、当該貯蔵空間S2を一つの窒素ガス供給源として、バランスガス供給管5とガス供給配管71とに窒素ガスが供給される。このため、装置構造を簡素化できる。また、貯蔵空間S2は一般に大容量であるため、多量に窒素ガスをバランスガス供給管5およびガス供給配管71に送り出したとしても、俄に貯蔵空間S2の圧力は変動しない。従って、安定的に窒素ガスを供給させることができる。
【0044】
[第2実施形態]
図2は、第2実施形態に係るパーライト充填装置1Aの全体構成を示すシステム図である。パーライト充填装置1Aが第1実施形態と相違する点は、ガス供給装置7Aの配置である。ガス供給装置7Aは、バランスガス供給管5から窒素ガスを分流させ、パーライト導入管3に当該窒素ガスを供給する。パーライト充填装置1Aの残余の部分は第1実施形態のパーライト充填装置1と同じであるため、ここでは説明を省く。
【0045】
ガス供給装置7Aは、ガス供給配管71Aと、このガス供給配管71Aに配設された第2流量調整弁72Aおよびチャッキ弁74とを含む。ガス供給配管71Aの一端側7aは、バランスガス供給管5に分岐接続されている。具体的には、バランスガス供給管5にT字型の分岐ソケット5Bが割り入れられ、ガス供給配管71Aの一端側7aが分岐ソケット5Bに接続されている。ガス供給配管71Aの他端側7bは、第1実施形態と同様に、パーライト導入管3に割り入れられたT字型の分岐ソケット3Bに接続されている。このように、第2実施形態のガス供給配管71Aは、パーライト容器2をバイパスして、バランスガス供給管5とパーライト導入管3とを直結し、バランスガスとしての窒素ガスの一部をパーライト導入管3へ供給可能としている。
【0046】
第2流量調整弁72Aは、ガス供給配管71Aからパーライト導入管3へ供給される窒素ガスの流量を調整するために、開度が調整されるバルブである。第1流量調整弁31および第2流量調整弁72Aによる流量調整により、分岐ソケット3Bよりも下流側のパーライト導入管3におけるパーライトPと窒素ガスとの流量比がコントロールされる。チャッキ弁74は、ガス供給配管71A内における窒素ガスの逆流を禁止する逆流防止弁である。
【0047】
第1実施形態と同様に、パーライトPの充填の初期段階では、第1流量調整弁31の開度を大きくするとともに第2流量調整弁72Aを閉止または僅かな開度とし、パーライトPを大きな流量で断熱空間S1へ導入させる。一方、パーライトPの流動に滞りが生じるタイミングになると、第1流量調整弁31の開度を絞ってパーライトPの流量を減らす一方で、第2流量調整弁72Aの開度を大きくし、窒素ガス流量を相対的に大きくして少量のパーライトPを断熱空間S1へ導入させる。
【0048】
第2実施形態によれば、ガス供給配管71Aにより、パーライト容器2をバイパスして、バランスガス供給管5から直接的に窒素ガスをパーライト導入管3へ導入できる。このため、ガス供給配管71Aを流れる窒素ガスの流速をより高め易くなる。例えば、第1流量調整弁31を絞る一方で第2流量調整弁72Aを全開に近い開度とすることにより、パーライト導入管3の上流管11の流体流動は、ガス供給配管71Aから上流管11に向けて流れる高速の窒素ガス流FAが主流となる。この場合、当該窒素ガス流FAに充填配管21から供給されるパーライトPが添加される態様となり、濃度の薄いパーライトPが断熱空間S1に供給される状態を維持し易くなる。従って、パーライトPの充填効率は低下し、窒素ガスの使用料が増加するものの、パーライト導入管3に詰まりを起こさせることなく、パーライトPの断熱空間S1への充填自体は行える。すなわち、少々時間は要するものの、断熱空間S1に所要の比重でパーライトPを充填することができる。
【0049】
第2実施形態においても、窒素ガスに置換された多重殻タンク100の貯蔵空間S2を一つの不活性ガス供給源とし、バランスガス供給管5およびガス供給配管71Aに窒素ガスを供給する構成である。このため、バランスガス供給管5およびパーライト容器2とガス供給配管71Aとの間に差圧は生じず、パーライトPのパーライト容器2への逆流を防止することができる。
【0050】
[第3実施形態]
図3は、第3実施形態に係るパーライト充填装置1Bの全体構成を示すシステム図である。パーライト充填装置1Bが第1、第2実施形態と相違する点は、窒素ガスに置換された多重殻タンク100の貯蔵空間S2を窒素ガスの供給源とせず、独自の窒素ガスの供給源を有するガス供給装置7Bからパーライト導入管3へ窒素ガスが供給される点である。パーライト充填装置1Bの残余の部分は第1、第2実施形態のパーライト充填装置1、1Aと同じであるため、ここでは説明を省く。
【0051】
ガス供給装置7Bは、窒素ガス供給源70、ガス供給配管71Bおよび第2流量調整弁72Bを含む。窒素ガス供給源70は、窒素ガスが充填されたガスタンクである。ガス供給配管71Bの一端側7aは、窒素ガス供給源70に接続されている。ガス供給配管71Bの他端側7bは、パーライト導入管3に割り入れられたT字型の分岐ソケット3Bに接続されている。
【0052】
第2流量調整弁72Bは、ガス供給配管71Bを通して窒素ガス供給源70からパーライト導入管3へ供給される窒素ガスの流量を調整するバルブである。第1流量調整弁31および第2流量調整弁72Bによる流量調整により、分岐ソケット3Bよりも下流側のパーライト導入管3におけるパーライトPと窒素ガスとの流量比がコントロールされる。
【0053】
第1、第2実施形態と同様に、パーライトPの充填の初期段階では、第1流量調整弁31の開度を大きくするとともに第2流量調整弁72Bを閉止または僅かな開度とされる。一方、パーライトPの流動に滞りが生じるタイミングになると、第1流量調整弁31の開度を絞ってパーライトPの流量を減らす一方で、第2流量調整弁72Bの開度を大きくし、窒素ガス流量を相対的に大きくして少量のパーライトPを断熱空間S1へ導入させる。第3実施形態では、ガス供給配管71Bとパーライト容器2とを同じ圧力に維持する圧力調整機構を設けることが望ましい。
【0054】
[変形例]
以上、本開示の好ましい実施形態について説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。例えば次のような変形実施形態を採用できる。
【0055】
上記実施形態では、パーライト充填装置1によるパーライトPの充填対象を、液化水素を貯蔵する多重殻タンク100とした。本開示に係る装置および方法によるパーライトの充填対象は液化水素タンクに限られず、他の種類の液化ガスを貯蔵するタンクであってもよい。例えば、液化天然ガス、液体ヘリウム、液体窒素、液化アンモニアまたは液化石油ガス等を貯蔵する多重殻タンクの断熱空間を、本装置および方法によるパーライトPの充填対象としてもよい。但し、液化水素は最も低温であるため、このような液化水素を貯蔵する多重殻タンクを対象とする場合は、保冷性能を高めるために十分な量のパーライトを断熱空間に圧密状態で充填することが求められる。このため、本装置および方法は、液化水素を貯留する多重殻タンクに最も好適に適用され得る。
【0056】
上記実施形態では、粒状断熱材として、多重殻タンク100の断熱空間S1に粒状のパーライトPを充填する例を示した。断熱空間S1に充填されるのは断熱機能を発揮する粒状物質、つまり粒状断熱材であればよく、パーライトに限られない。例えば、グラスバブルズなどと称されるガラス粒を粒状断熱材として用いてもよい。
【0057】
[本開示のまとめ]
以上説明した具体的実施形態には、以下の構成を有する開示が含まれている。
【0058】
本開示の第1の態様に係る粒状断熱材充填装置は、液化ガスを貯蔵する多重殻タンク内の断熱空間に粒状断熱材を充填する装置であって、前記粒状断熱材を収容する収容容器と、前記粒状断熱材の払い出しに伴う前記収容容器内の減圧を抑止するために、減圧補填ガスを前記収容容器に供給する補填ガス配管と、前記収容容器と前記多重殻タンクとを接続し、前記収容容器内の粒状断熱材を前記減圧補填ガスとともに前記断熱空間に導入する導入配管と、一端側が不活性ガスの供給源に接続され、他端側が前記導入配管に合流され、前記導入配管に不活性ガスを供給するガス供給配管と、を備える。
【0059】
第1の態様によれば、粒状断熱材を多重殻タンクの断熱空間へ送る導入配管に、ガス供給配管から不活性ガスが供給可能となる。このため、前記導入配管において前記粒状断熱材の流動が滞ったときに、ガス供給配管から供給される不活性ガスの流動で前記粒状断熱材を前記断熱空間へ送ることが可能となる。
【0060】
第2の態様に係る粒状断熱材充填装置は、第1の態様の粒状断熱材充填装置において、前記ガス供給配管の合流点よりも上流側において前記導入配管に配設される第1流量調整弁と、前記合流点よりも上流側において前記ガス供給配管に配設される第2流量調整弁と、を備え、前記第1流量調整弁および前記第2流量調整弁による流量調整により、前記導入配管の前記合流点よりも下流側における前記粒状断熱材と前記不活性ガスとの流量比が調整可能とされている。
【0061】
第2の態様によれば、導入配管における粒状断熱材と不活性ガスとの流量比を自在にコントロールできる。例えば、導入配管において粒状断熱材の流動の滞りが生じていない状況では、第1流量調整弁の開度を第2流量調整弁の開度よりも大きくして、粒状断熱材を大きな流量で断熱空間へ導入させる。また、粒状断熱材の流動の滞りが生じた場合には、第1流量調整弁の開度を絞って粒状断熱材の流量を減らす一方で、第2流量調整弁の開度を相対的に大きくして流動を確保し、多量の不活性ガスに乗せて少量の粒状断熱材を断熱空間へ導入させる。第2の態様によれば、このような流量コントロールにより、断熱空間へ所要の比重で粒状断熱材を充填させることができる。
【0062】
第3の態様に係る粒状断熱材充填装置は、第1または第2の態様の粒状断熱材充填装置において、前記減圧補填ガスが不活性ガスからなり、前記ガス供給配管の一端側が前記収容容器に接続され、前記収容容器に供給される前記減圧補填ガスの一部が前記ガス供給配管へ供給される。
【0063】
第3の態様によれば、減圧補填ガスとして収容容器に導入された不活性ガスを利用して、ガス供給配管へ不活性ガスを供給できる。この場合、収容容器内とガス供給配管内とが同じ圧力となり、粒状断熱材の逆流を抑止できる。
【0064】
第4の態様に係る粒状断熱材充填装置は、第1または第2の態様の粒状断熱材充填装置において、前記減圧補填ガスが不活性ガスからなり、前記ガス供給配管の一端側が前記補填ガス配管に分岐接続され、前記補填ガス配管を流通する前記減圧補填ガスの一部が前記ガス供給配管へ供給される。
【0065】
第4の態様によれば、減圧補填ガスとして補填ガス配管に導入された不活性ガスを利用して、ガス供給配管へ不活性ガスを供給できる。この場合、補填ガス配管内とガス供給配管内とが同じ圧力となり、粒状断熱材の逆流を抑止できる。
【0066】
第5の態様に係る粒状断熱材充填装置は、第1または第2の態様の粒状断熱材充填装置において、前記補填ガス配管に供給されるガスと前記ガス供給配管に供給されるガスは、同一の不活性ガスであって、前記不活性ガスを前記補填ガス配管および前記ガス供給配管に供給する一つの不活性ガス供給源を備える。
【0067】
第5の態様によれば、一つの不活性ガス供給源から補填ガス配管とガス供給配管とに共通の不活性ガスが供給される。このため、装置構造を簡素化できる。また、補填ガス配管とガス供給配管とに差圧が生じないので、粒状断熱材の逆流を抑止できる。
【0068】
第6の態様に係る粒状断熱材充填装置は、第5の態様の粒状断熱材充填装置において、前記多重殻タンクにおける前記液化ガスの貯蔵空間を不活性ガスに置換する置換装置を備え、前記一つの不活性ガス供給源として、不活性ガスに置換された状態の前記貯蔵空間が用いられる。
【0069】
第6の態様によれば、多重殻タンクの貯蔵空間に一時的に貯留される不活性ガスを、不活性ガス供給源として利用する。貯蔵空間は一般に大容量であるため、多量に不活性ガスを補填ガス配管およびガス供給配管に送り出したとしても、俄に前記貯蔵空間の圧力は変動しない。従って、安定的に不活性ガスを供給させることができる。
【0070】
第7の態様に係る粒状断熱材充填装置は、第1~第6の態様の粒状断熱材充填装置において、前記ガス供給配管の合流点よりも下流側の前記導入配管は、内部を流れる粒状断熱材を目視できる程度の透明性を有する透明管を含む。
【0071】
第7の態様によれば、透明管を通して前記合流点よりも下流側の導入配管内における粒状断熱材の流動状態を作業員に視認させることができる。従って、ガス供給配管から導入配管へ不活性ガスを供給させるタイミングや流量などを、前記流動状態に応じて設定させることができる。
【0072】
本開示の第8の態様に係る粒状断熱材充填方法は、液化ガスを貯蔵する多重殻タンク内の断熱空間に粒状断熱材を充填する方法であって、前記粒状断熱材を収容する収容容器と前記多重殻タンクとを導入配管で接続し、前記導入配管に不活性ガスを供給可能なガス供給配管を接続し、前記収容容器から前記粒状断熱材を、前記粒状断熱材の払い出しに伴う前記収容容器内の減圧を抑止する減圧補填ガスとともに、前記導入配管を通して前記断熱空間に導入し、前記粒状断熱材の前記導入を行う期間の少なくとも一部に、前記ガス供給配管から前記導入配管に不活性ガスを供給する。
【0073】
第8の態様によれば、断熱空間への粒状断熱材の導入が行われている期間に、前記導入配管において前記粒状断熱材の流動が滞ったときに、ガス供給配管から供給される不活性ガスの流動で前記粒状断熱材を前記断熱空間へ送ることが可能となる。
【0074】
第9の態様に係る粒状断熱材充填方法は、第8の態様の粒状断熱材充填方法において、前記粒状断熱材の前記断熱空間への導入の初期段階では、前記導入配管における前記粒状断熱材の流量を所定量に設定し、前記粒状断熱材の前記断熱空間への導入が所定のレベルに達したとき、前記導入配管における前記粒状断熱材の流量を前記初期段階よりも減量する一方で、前記ガス供給配管から前記導入配管に供給する不活性ガスの流量を増量させる。
【0075】
第9の態様によれば、粒状断熱材の導入が所定のレベルに達したとき、例えば粒状断熱材の流動が滞りがちとなるタイミングで、粒状断熱材の流量を減量し不活性ガスの流量を増量する。このため、導入配管内の流動を確保し、多量の不活性ガスに乗せて少量の粒状断熱材を断熱空間へ導入させることができる。
【符号の説明】
【0076】
1 パーライト充填装置(粒状断熱材充填装置)
12 透明管
2 パーライト容器(収容容器)
3 パーライト導入管(導入配管)
3B 分岐ソケット(合流点)
31 第1流量調整弁
4 真空ポンプ
5 バランスガス供給管(補填ガス配管)
6 置換装置
7、7A、7B ガス供給装置
71、71A、71B ガス供給配管
72、72A、72B 第2流量調整弁
7a 一端側
7b 他端側
100 多重殻タンク
S1 断熱空間
P パーライト(粒状断熱材)
S1 断熱空間
S2 貯蔵空間(一つの不活性ガス供給源)
図1
図2
図3