(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068429
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】診断装置、診断方法、及び診断プログラム
(51)【国際特許分類】
B61D 37/00 20060101AFI20240513BHJP
E05F 15/632 20150101ALI20240513BHJP
B61D 19/00 20060101ALI20240513BHJP
B61D 19/02 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
B61D37/00 G
E05F15/632
B61D19/00 A
B61D19/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178869
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】今井 丈二
(72)【発明者】
【氏名】加賀 重隆
【テーマコード(参考)】
2E052
【Fターム(参考)】
2E052AA09
2E052CA06
2E052EA12
2E052EA13
2E052EB01
2E052EC03
2E052GA08
2E052GB11
2E052KA25
(57)【要約】
【課題】ガイドローラの異常を診断する診断装置、診断方法、及び診断プログラムを提供する。
【解決手段】ドア制御装置30は、プラグドアに取り付けられたガイドローラがガイドレールに沿って移動することでプラグ動作及び開閉動作を行うプラグドアのプラグ動作が行われている期間を特定する特定部32と、プラグドアを駆動する駆動部40の電流値及びトルク値の少なくとも一方を含む駆動情報を取得する駆動情報取得部33と、特定部32が特定したプラグ動作が行われている期間における駆動情報に基づいてガイドローラ又はガイドレールの異常を診断する診断部34と、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラグドアに取り付けられたガイドローラがガイドレールに沿って移動することでプラグ動作及び開閉動作を行う前記プラグドアのプラグ動作が行われている期間を特定する特定部と、
前記プラグドアを駆動する駆動部の電流値及びトルク値の少なくとも一方を含む駆動情報を取得する駆動情報取得部と、
前記特定部が特定した前記プラグ動作が行われている期間における前記駆動情報に基づいて前記ガイドローラ又は前記ガイドレールの異常を診断する診断部と、を備える
診断装置。
【請求項2】
前記特定部は、前記駆動部を制御する制御部の開閉制御情報に基づいて前記プラグ動作が行われている期間を特定し、
前記診断部は、前記プラグ動作が行われている期間の前記駆動情報の値が閾値を超えているか否かによって前記ガイドローラ又は前記ガイドレールの異常を診断する
請求項1に記載の診断装置。
【請求項3】
前記特定部は、前記開閉制御情報の開閉制御の開始からの経過時間によって前記プラグ動作が行われている期間を特定する
請求項2に記載の診断装置。
【請求項4】
前記閾値は、前記開閉動作のときの閾値よりも大きい
請求項3に記載の診断装置。
【請求項5】
前記診断部は、前記プラグ動作が行われている期間の前記駆動情報の値が閾値を超えた回数が基準値以上のときに異常と診断する
請求項4に記載の診断装置。
【請求項6】
前記診断部は、前記プラグドアが開制御されるときの前記プラグ動作が行われている期間における前記駆動情報に基づいて前記ガイドローラ又は前記ガイドレールの異常を診断する
請求項1~5のいずれか一項に記載の診断装置。
【請求項7】
前記駆動情報を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶した情報に基づいて前記閾値を生成する生成部と、を備える
請求項2~5のいずれか一項に記載の診断装置。
【請求項8】
プラグドアに取り付けられたガイドローラがガイドレールに沿って移動することでプラグ動作及び開閉動作を行う前記プラグドアのプラグ動作が行われている期間を特定する特定処理と、
前記プラグドアを駆動する駆動部の電流値又はトルク値を含む駆動情報を取得する駆動情報取得処理と、
前記特定処理において特定した前記プラグ動作が行われている期間における前記駆動情報に基づいて前記ガイドローラ又は前記ガイドレールの異常を診断する診断処理と、を含む
診断方法。
【請求項9】
プラグドアに取り付けられたガイドローラがガイドレールに沿って移動することでプラグ動作及び開閉動作を行う前記プラグドアのプラグ動作が行われている期間を特定する特定処理と、
前記プラグドアを駆動する駆動部の電流値又はトルク値を含む駆動情報を取得する駆動情報取得処理と、
前記特定処理において特定した前記プラグ動作が行われている期間における前記駆動情報に基づいて前記ガイドローラ又は前記ガイドレールの異常を診断する診断処理と、をコンピュータが実行する
診断プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断装置、診断方法、及び診断プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のプラグドア装置は、ドアパネルに取り付けられたガイドローラが走行するガイドレールを備え、ガイドローラがガイドレールに沿って移動することでドアパネルが開閉動作及びプラグ動作を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のようなプラグドア装置では、ドアパネルが移動することができなくなるまでガイドローラが故障していることに気づくことができない。このため、ガイドローラ又はガイドレールの異常を診断することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する診断装置は、プラグドアに取り付けられたガイドローラがガイドレールに沿って移動することでプラグ動作及び開閉動作を行う前記プラグドアのプラグ動作が行われている期間を特定する特定部と、前記プラグドアを駆動する駆動部の電流値及びトルク値の少なくとも一方を含む駆動情報を取得する駆動情報取得部と、前記特定部が特定した前記プラグ動作が行われている期間における前記駆動情報に基づいて前記ガイドローラ又は前記ガイドレールの異常を診断する診断部と、を備える。
【0006】
上記構成によれば、特定部が特定したプラグドアのプラグ動作が行われている期間における駆動情報に基づいてガイドローラ又はガイドレールの異常を診断する。このため、ガイドローラ又はガイドレールが壊れる前にガイドローラ又はガイドレールの異常を発見することができる。
【0007】
上記診断装置について、前記特定部は、前記駆動部を制御する制御部の開閉制御情報に基づいて前記プラグ動作が行われている期間を特定し、前記診断部は、前記プラグ動作が行われている期間の前記駆動情報の値が閾値を超えているか否かによって前記ガイドローラ又は前記ガイドレールの異常を診断することが好ましい。
【0008】
上記診断装置について、前記特定部は、前記開閉制御情報の開閉制御の開始からの経過時間によって前記プラグ動作が行われている期間を特定することが好ましい。
上記診断装置について、前記閾値は、前記開閉動作のときの閾値よりも大きいことが好ましい。
【0009】
上記診断装置について、前記診断部は、前記プラグ動作が行われている期間の前記駆動情報の値が閾値を超えた回数が基準値以上のときに異常と診断することが好ましい。
上記診断装置について、前記診断部は、前記プラグドアが開制御されるときの前記プラグ動作が行われている期間における前記駆動情報に基づいて前記ガイドローラ又は前記ガイドレールの異常を診断することが好ましい。
【0010】
上記診断装置について、前記駆動情報を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶した情報に基づいて前記閾値を生成する生成部と、を備えることが好ましい。
上記課題を解決する診断方法は、プラグドアに取り付けられたガイドローラがガイドレールに沿って移動することでプラグ動作及び開閉動作を行う前記プラグドアのプラグ動作が行われている期間を特定する特定処理と、前記プラグドアを駆動する駆動部の電流値又はトルク値を含む駆動情報を取得する駆動情報取得処理と、前記特定処理において特定した前記プラグ動作が行われている期間における前記駆動情報に基づいて前記ガイドローラ又は前記ガイドレールの異常を診断する診断処理と、を含む。
【0011】
上記方法によれば、プラグドアのプラグ動作が行われている期間における駆動情報に基づいてガイドローラ又はガイドレールの異常を診断する。このため、ガイドローラ又はガイドレールが壊れる前にガイドローラ又はガイドレールの異常を発見することができる。
【0012】
上記課題を解決する診断プログラムは、プラグドアに取り付けられたガイドローラがガイドレールに沿って移動することでプラグ動作及び開閉動作を行う前記プラグドアのプラグ動作が行われている期間を特定する特定処理と、前記プラグドアを駆動する駆動部の電流値又はトルク値を含む駆動情報を取得する駆動情報取得処理と、前記特定処理において特定した前記プラグ動作が行われている期間における前記駆動情報に基づいて前記ガイドローラ又は前記ガイドレールの異常を診断する診断処理と、をコンピュータが実行する。
【0013】
上記プログラムによれば、プラグドアのプラグ動作が行われている期間における駆動情報に基づいてガイドローラ又はガイドレールの異常を診断する。このため、ガイドローラ又はガイドレールが壊れる前にガイドローラ又はガイドレールの異常を発見することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ガイドローラ又はガイドレールの異常を診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】ドア開閉装置の概略構成を示す斜視図である。
【
図2】ドア開閉装置によるドアの全閉時の状態を示す平面図である。
【
図3】ドア開閉装置によるドアのプラグ動作中の状態を示す平面図である。
【
図4】ドア開閉装置によるドアのスライド動作中の状態を示す平面図である。
【
図5】ドア開閉装置によるドアの全開時の状態を示す平面図である。
【
図6】診断装置を含むドア制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図7】ドア制御装置による診断を示すフローチャートである。
【
図8】(a)正常状態における開閉時の駆動部の回転数を示すグラフである、(b)正常状態における開閉時の駆動部のトルクを示すグラフである。
【
図9】(a)異常状態における開閉時の駆動部の回転数を示すグラフである、(b)異常状態における開閉時の駆動部のトルクを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、
図1~
図8を参照して、診断装置を備えるドア開閉装置の一実施形態について説明する。ドア開閉装置は、鉄道車両に設けられるドアを開閉する装置である。診断装置は、ドア開閉装置を制御するドア制御装置に含まれている。
【0017】
図1に示すように、鉄道車両の車体側面には、両開きの第1ドア1及び第2ドア2が設けられる。第1ドア1及び第2ドア2は、開閉時に、鉄道車両の前後方向に移動するとともに、鉄道車両の車体の幅方向にも移動する。つまり、第1ドア1及び第2ドア2は、全開時に、第1ドア1及び第2ドア2が設けられる車体の開口部から車体の外側に飛び出して、車体の外側に位置するプラグドアである。ドア開閉装置10は、車体の内側であって、開口部の上部に設けられる。
【0018】
(ドア開閉装置10)
ドア開閉装置10は、3個のプラグレール11と、スライドレール12と、を備えている。プラグレール11は、車体の幅方向に部材であって、車体に固定される。スライドレール12は、車体の前後方向に延びる部材であって、プラグレール11に車体の幅方向に移動可能に支持されている。
【0019】
ドア開閉装置10は、第1ガイドレール15と、第2ガイドレール16と、第3ガイドレール17と、第4ガイドレール18と、を備えている。第1ガイドレール15は、車体の前後方向に延び、開口部の中央寄りの端部が車内側へ傾斜している。第2ガイドレール16は、車体の前後方向に延び、開口部の中央寄りの端部が車内側へ傾斜している。第1ガイドレール15及び第2ガイドレール16は、車体に固定されている。第3ガイドレール17は、第1ドア1の車内面の下方に固定されている。第4ガイドレール18は、第2ドア2の車内面の下方に固定されている。
【0020】
スライドレール12には、第1スライダ13と、第2スライダ14とを備える。第1スライダ13及び第2スライダ14は、スライドレール12に沿って車体の前後方向に移動可能に設けられている。第1スライダ13は、第1ハンガ21を介して第1ドア1と接続されている。第1ハンガ21の第1端部には、第1スライダ13が接続されている。第1ハンガ21の第2端部には、第1ドア1が接続されている。第2スライダ14は、第2ハンガ22を介して第2ドア2と接続されている。第2ハンガ22の第1端部には、第2スライダ14が接続されている。第2ハンガ22の第2端部には、第2ドア2が接続されている。第1ハンガ21には、第1ガイドローラ21Aが設けられている。第1ガイドローラ21Aは、第1ガイドレール15に嵌り、第1ガイドレール15に沿って移動する。第2ハンガ22には、第2ガイドローラ22Aが設けられている。第2ガイドローラ22Aは、第2ガイドレール16に嵌り、第2ガイドレール16に沿って移動する。第1スライダ13及び第2スライダ14は、図示しない駆動部によって車体の前後方向へ駆動される。駆動部は、モータである。第1ハンガ21及び第2ハンガ22には、車体の壁に当接することで第1ハンガ21及び第2ハンガ22が全開位置で停止するストッパー(図示略)が設けられている。
【0021】
第3ガイドレール17には、第1ドア1を支持する第1スイングアーム23が接続されている。第1スイングアーム23は、第1ドア1のプラグ動作に伴い回転する。第1スイングアーム23には、3個の第3ガイドローラ23Aが設けられている。第3ガイドローラ23Aの1個は、第3ガイドレール17に嵌る。第3ガイドローラ23Aの2個は、第3ガイドレール17の外側に設けられ、第3ガイドローラ23Aの1個と第3ガイドレール17を挟んでいる。第1ドア1は、第3ガイドレール17が第3ガイドローラ23Aに支持されることで車体の前後方向へ移動する。第4ガイドレール18には、第2ドア2を支持する第2スイングアーム24が接続されている。第2スイングアーム24は、第2ドア2のプラグ動作に伴い回転する。第2スイングアーム24には、3個の第4ガイドローラ24Aが設けられている。第4ガイドローラ24Aの1個は、第4ガイドレール18に嵌る。第4ガイドローラ24Aの2個は、第4ガイドレール18の外側に設けられ、第4ガイドローラ24Aの1個と第4ガイドレール18を挟んでいる。第2ドア2は、第4ガイドレール18が第4ガイドローラ24Aに支持されることで車体の前後方向へ移動する。
【0022】
(動作)
次に、
図2~3を参照して、ドア開閉装置10の動作について説明する。
図2に示すように、第1ドア1及び第2ドア2は、第1ドア1の戸先と第2ドア2の戸先とが接触した全閉状態である。このとき、第1ガイドローラ21Aは、第1ガイドレール15の右端に位置している。第2ガイドローラ22Aは、第2ガイドレール16の左端に位置している。第3ガイドローラ23Aは、第3ガイドレール17の左端に位置している。第4ガイドローラ24Aは、第4ガイドレール18の右端に位置している。
【0023】
図3に示すように、第1ドア1及び第2ドア2は、第1スライダ13及び第2スライダ14が開方向へ移動を開始すると、車体の外側へ移動するプラグ動作を行う。このとき、第1ガイドローラ21Aは、第1ガイドレール15の傾斜した部分である傾斜部を移動する。第2ガイドローラ22Aは、第2ガイドレール16の傾斜した部分である傾斜部を移動する。第3ガイドローラ23Aが第3ガイドレール17の左端に位置したまま、第1スイングアーム23が反時計回りに回転する。第4ガイドローラ24Aが第4ガイドレール18の右端に位置したまま、第2スイングアーム24が反時計回りに回転する。
【0024】
図4に示すように、第1ドア1及び第2ドア2は、第1スライダ13及び第2スライダ14が開方向へ更に移動すると、車体の前後方向へ移動する開動作を行う。このとき、第1ガイドローラ21Aは、第1ガイドレール15の前後方向へ延びる開閉部を移動する。第2ガイドローラ22Aは、第2ガイドレール16の前後方向へ延びる開閉部を移動する。第1スイングアーム23が車体から最も離れた位置で停止したまま、第3ガイドローラ23Aが第3ガイドレール17に沿って移動する。正確には、第1スイングアーム23に対して第1ドア1が移動する。第2スイングアーム24が車体から最も離れた位置で停止したまま、第4ガイドローラ24Aが第4ガイドレール18に沿って移動する。正確には、第2スイングアーム24に対して第2ドア2が移動する。
【0025】
図5に示すように、第1ドア1及び第2ドア2は、第1ドア1及び第2ドア2が最も離間した全開状態である。このとき、第1ガイドローラ21Aは、第1ガイドレール15の左端に位置している。第2ガイドローラ22Aは、第2ガイドレール16の右端に位置している。第1スイングアーム23が車体から最も離れた位置で停止したまま、第3ガイドローラ23Aが第3ガイドレール17の右端に位置している。第2スイングアーム24が車体から最も離れた位置で停止したまま、第4ガイドローラ24Aが第4ガイドレール18の左端に位置している。
【0026】
(ドア制御装置30)
図6に示すように、ドア開閉装置10は、ドア制御装置30によって第1ドア1及び第2ドア2の開閉が制御される。ドア制御装置30は、運転台5からの開閉制御の指示に従って駆動部40を駆動制御することで第1ドア1及び第2ドア2を開閉する。駆動部40は、電動モータである。ドア制御装置30は、ガイドローラ又はガイドレールの異常を診断する診断装置を含む。
【0027】
ドア制御装置30は、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って各種処理を実行する1つ以上のプロセッサとして構成し得る。ドア制御装置30すなわちプロセッサにより実行される処理には、診断方法が含まれる。診断方法は、後述する特定処理と、駆動情報取得処理と、診断処理と、を含む。なお、ドア制御装置30は、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する、特定用途向け集積回路(ASIC)等の1つ以上の専用のハードウェア回路、またはその組み合わせを含む回路(circuitry)として構成してもよい。プロセッサは、CPU及び、RAM並びにROM等のメモリを含む。メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。コンピュータ可読媒体に格納されたプログラムには診断プログラムが含まれる。診断プログラムは、特定処理と駆動情報取得処理と診断処理とをドア制御装置30に実行させる。
【0028】
ドア制御装置30は、駆動制御部31と、特定部32と、駆動情報取得部33と、診断部34と、記憶部35と、生成部36と、を備えている。駆動制御部31は、運転台5からの開閉制御の指示に基づいて駆動部40を制御する。特定部32は、駆動制御部31から開閉制御情報を取得する。開閉制御情報は、第1ドア1及び第2ドア2を開く開制御情報や、第1ドア1及び第2ドア2を閉じる閉制御情報である。特定部32は、取得した開閉制御情報に基づいて第1ドア1及び第2ドア2のプラグ動作が行われている期間を特定する。特定部32は、開閉制御情報の開閉制御の開始からの経過時間によってプラグ動作及び開閉動作を特定する。特定部32は、開閉制御情報を受信した時刻からの経過時間を計測する。駆動制御部31は、回転開始からの移動距離を算出して、所定の距離(開距離)で第1ドア1及び第2ドア2が停止するように制御する。
【0029】
ここで、
図8(a)に示すように、ドア制御装置30は、開閉制御において、毎回同様の駆動制御を行う。なお、回転数は、開制御時を正の値で示し、閉制御時を負の値で示している。このため、開制御情報を取得してからの経過時間は正常状態では毎回同じである。同様に、閉制御情報を取得してからの経過時間は正常状態では毎回同じである。よって、ドア制御装置30は、時刻0において開制御情報を取得して、時刻0から時刻T1まで第1ドア1及び第2ドア2が車体の外側へ移動するプラグ動作を行う。続いて、ドア制御装置30は、時刻T1から時刻T2まで開動作を行う。続いて、ドア制御装置30は、時刻T3において閉制御を取得して、時刻T3から時刻T4まで閉動作を行う。続いて、ドア制御装置30は、時刻T4から時刻T5まで第1ドア1及び第2ドア2が車体の内側へ移動するプラグ動作を行う。
【0030】
図6に示すように、駆動情報取得部33は、駆動部40の電流値及びトルク値の少なくとも一方を含む駆動情報を取得する。本実施形態では、駆動情報取得部33は、駆動部40の回転数とトルク値とを取得する。診断部34は、特定部32が特定したプラグ動作が行われている期間における駆動情報に基づいてガイドローラ又はガイドレールの異常を診断する。診断部34は、開閉制御情報に基づいて特定したプラグ動作の駆動情報のトルク値が閾値を超えているか否かによってガイドローラ又はガイドレールの異常を診断する。記憶部35は、駆動情報を記憶する。記憶部35は、駆動部40の回転数とトルク値との遷移を記憶する。生成部36は、記憶部35に記憶した駆動情報に基づいて閾値を生成する。生成部36は、正常時の各動作期間におけるトルク値の最大値に所定値を加えた値を閾値としてそれぞれ生成する。
【0031】
図8(b)に示すように、プラグ動作のときの閾値は、開閉動作のときの閾値よりも大きい。なお、トルク値は、開制御時を正の値で示し、閉制御時を負の値で示している。すなわち、開制御におけるプラグ動作のときの閾値は、第1閾値S1である。開制御における開動作のときの閾値は、第2閾値S2である。第1閾値S1は、第2閾値S2よりも大きい(S1>S2)。閉制御におけるプラグ動作のときの閾値は、第3閾値S3である。閉制御における閉動作のときの閾値は、第4閾値S4である。第3閾値S3と第4閾値S4とは、負の値であるため絶対値で比較する。第3閾値S3は、第4閾値S4よりも大きい(S3>S4)。つまり、プラグドアが開制御されるときはガイドローラとガイドレールとの接触が大きいプラグ動作から始まる。その結果、閉制御における閾値よりも開制御における閾値の方が大きくなる。このため、開制御においてガイドローラ又はガイドレールの異常を診断すると、プラグドアが閉制御されるときよりもガイドローラ又はガイドレールの異常を診断し易くなる。
【0032】
(処理手順)
次に、
図7及び
図9を併せ参照して、上記ドア制御装置30の処理手順について説明する。
図9は、ガイドレール又はガイドローラに異常がある状態におけるグラフである。なお、
図9(a)に示す回転数は、
図8(a)と同じである。
図9(b)に示すトルク値は、
図8(b)と異なり値が大きくなっている。
【0033】
ドア制御装置30は、運転台5から開閉制御の指示を受信すると、駆動制御部31が駆動部40を開閉制御する。
まず、
図7に示すように、駆動制御部31が開閉制御を開始すると、ドア制御装置30は、制御情報取得処理を行う(ステップS1)。すなわち、特定部32は、第1ドア1及び第2ドア2を開く開制御情報、又は第1ドア1及び第2ドア2を閉じる閉制御情報を駆動制御部31から取得する。特定部32は、開閉制御情報から開閉制御の開始時刻を把握する。
【0034】
続いて、ドア制御装置30は、特定処理を行う(ステップS2)。すなわち、特定部32は、開閉制御情報の開閉制御の開始からの経過時間によってプラグ動作及び開閉動作を特定する。特定部32は、開閉制御情報を受信した時刻からの経過時間を計測する。
【0035】
続いて、ドア制御装置30は、駆動情報取得処理を行う(ステップS3)。すなわち、駆動情報取得部33は、駆動部40の回転数とトルク値とを取得する。駆動情報取得部33は、開閉動作における一部の駆動情報ではなく、全閉から全開までの期間、又は全開から全閉までの期間の駆動情報を取得することが望ましい。
【0036】
続いて、ドア制御装置30は、診断処理を行う(ステップS4)。すなわち、診断部34は、特定部32が特定したプラグ動作が行われている期間における駆動情報のトルク値が閾値を超えているか否かによってガイドローラ又はガイドレールの異常を診断する。
【0037】
図9に示すように、診断部34は、開制御のプラグ動作を行う時刻0から時刻T1において、トルク値が第1閾値S1を超えているので、ガイドローラ又はガイドレールに異常があると診断する。また、診断部34は、閉制御のプラグ動作を行う時刻T4から時刻T5において、トルク値が第3閾値S3を超えているので、ガイドローラ又はガイドレールに異常があると診断する。なお、開制御の開動作を行う時刻T1から時刻T2においては、トルク値が第2閾値S2を超えていない。また、閉制御の閉動作を行う時刻T3から時刻T4においては、トルク値が第4閾値S4を超えていない。ドア制御装置30は、ガイドローラ又はガイドレールに異常があると診断した場合には、運転台5に異常を出力する。また、ドア制御装置30は、ドア開閉装置10において、光や音等で異常を報知してもよい。ドア開閉装置10は、以上で処理を終了する。
【0038】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)特定部である特定部32が特定したプラグドアのプラグ動作が行われている期間における駆動情報に基づいてガイドローラ又はガイドレールの異常を診断する。このため、ガイドローラ又はガイドレールが壊れる前にガイドローラ又はガイドレールの異常を発見することができる。
【0039】
(2)駆動制御部31の開閉制御情報に基づいてプラグ動作が行われている期間を特定するので、プラグ動作を確実に把握することができる。また、プラグ動作が行われている期間の駆動情報の値を閾値で診断するので、容易に診断することができる。
【0040】
(3)開閉制御情報の開閉制御の開始からの経過時間によってプラグ動作を特定する。プラグドアはプラグ動作時の負荷が開閉動作時の負荷よりも大きくなるため、プラグ動作を特定した上で異常を診断することができる。
【0041】
(4)プラグ動作のときの閾値が開閉動作のときの閾値よりも大きい。プラグドアはプラグ動作時の負荷が開閉動作時の負荷よりも大きくなるため、プラグ動作のときの異常を開閉動作のときの異常と異なる閾値によって診断することができる。
【0042】
(5)プラグドアが開動作を行うときにガイドローラ又はガイドレールの異常を診断する。この場合、プラグドアが閉動作を行うときよりもガイドローラ又はガイドレールの異常を診断し易くなる。
【0043】
(6)記憶部35に記憶した情報に基づいて閾値を生成する。このため、プラグドア毎の個体差を考慮した閾値によってガイドローラ又はガイドレールの異常を診断することができる。
【0044】
(他の実施形態)
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0045】
・上記実施形態では、記憶部35が駆動情報を記憶して、生成部36が記憶部35に記憶した情報に基づいて閾値を生成した。しかしながら、プラグドア毎に閾値生成せず、予め設定した閾値に基づいて診断してもよい。
【0046】
・上記実施形態において、診断部34は、プラグ動作及び開閉動作の少なくとも一方の駆動情報の値が閾値を超えた回数が基準値以上のときに異常と診断してもよい。このため、一時的な検知を除外して、ガイドローラ又はガイドレールの異常を診断することができる。
【0047】
・上記実施形態において、診断部34は、プラグ動作のときのみ異常を診断してもよい。この場合、開閉動作のときの閾値は不要である。生成部36は、開閉動作のときの閾値を生成しないでもよい。
【0048】
・上記実施形態において、駆動情報取得部33は、プラグ動作のときの駆動情報のみを取得してもよい。この場合、生成部36は、プラグ動作のときの閾値のみを生成する。診断部34は、プラグ動作のときのみ異常を診断する。
【0049】
・上記実施形態では、開閉制御情報の開閉制御の開始からの経過時間によってプラグ動作及び開閉動作を特定した。しかしながら、駆動情報の回転数等の時間変化からプラグ動作及び開閉動作を特定してもよい。また、リミットスイッチ等によるセンサ検知や画像による判定でプラグ動作及び開閉動作を特定してもよい。
【0050】
・上記実施形態では、プラグ動作の駆動情報の値が閾値を超えているか否かによってガイドローラ又はガイドレールの異常を診断した。しかしながら、プラグ動作の駆動情報の値の変化に基づいてガイドローラ又はガイドレールの異常を診断してもよい。
【0051】
・上記実施形態において、第3ガイドローラ23A及び第4ガイドローラ24Aをそれぞれ3個設けた。しかしながら、第3ガイドローラ23A及び第4ガイドローラ24Aは、3個に限らず、1,2個や4個以上の任意の数にしてもよい。
【0052】
・上記実施形態において、第3ガイドレール17及び第4ガイドレール18を省略してもよい。この場合、第1スイングアーム23と第3ガイドローラ23Aと第2スイングアーム24と第4ガイドローラ24Aとを省略する。
【0053】
・上記実施形態において、複数の物体で構成されているものは、当該複数の物体を一体化してもよく、逆に一つの物体で構成されているものを複数の物体に分けることができる。一体化されているか否かにかかわらず、発明の目的を達成することができるように構成されていればよい。
【0054】
・上記実施形態において、複数の機能が分散して設けられているものは、当該複数の機能の一部又は全部を集約して設けても良く、逆に複数の機能が集約して設けられているものを、当該複数の機能の一部又は全部が分散するように設けることができる。機能が集約されているか分散されているかにかかわらず、発明の目的を達成することができるように構成されていればよい。
【符号の説明】
【0055】
1…第1ドア
2…第2ドア
5…運転台
10…ドア開閉装置
11…プラグレール
12…スライドレール
13…第1スライダ
14…第2スライダ
15…第1ガイドレール
16…第2ガイドレール
17…第3ガイドレール
18…第4ガイドレール
21…第1ハンガ
21A…第1ガイドローラ
22…第2ハンガ
22A…第2ガイドローラ
23…第1スイングアーム
23A…第3ガイドローラ
24…第2スイングアーム
24A…第4ガイドローラ
30…ドア制御装置
31…駆動制御部
32…特定部
33…駆動情報取得部
34…診断部
35…記憶部
36…生成部
40…駆動部