(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068447
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】電極の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20240513BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20240513BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/66 A
H01M4/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178902
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】簗瀬 孝一
(72)【発明者】
【氏名】衣川 達哉
(72)【発明者】
【氏名】山田 悠貴
【テーマコード(参考)】
5H017
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017BB01
5H017BB06
5H017BB08
5H017BB11
5H017DD05
5H017EE01
5H017EE04
5H017EE05
5H017EE07
5H017HH05
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA11
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB12
5H050FA03
5H050GA02
5H050GA03
5H050GA22
5H050HA12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】集電箔の外縁部におけるシワの発生が抑制された電極の製造方法を提供する。
【解決手段】金属製の集電箔1を有する電極前駆体10を準備する工程、電極前駆体における集電箔の外縁部を樹脂材20で被覆する工程とを有する電極の製造方法であって、上記集電箔は、第1面P1と、第1面と対向する第2面P2と、外縁部を構成する側面P3とを有し、被覆する工程は、厚さ方向において断面視した場合に、電極前駆体の集電箔における第1面および第2面の一部を覆い、かつ、側面よりも外側に延在するように樹脂材を配置し、第1面上に配置された樹脂材を第1加熱装置30Aで加熱することで樹脂材を第1面に溶着させる第1溶着処理とを有し、第1溶着処理において、第1加熱装置を外縁部に沿って第1面上に配置された樹脂材に対して相対的に移動させ、樹脂材が加熱される位置を外縁部に沿って移動させることで、樹脂材を第1面に溶着させる、方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の集電箔を少なくとも有する電極前駆体を準備する、準備工程と、
前記電極前駆体における前記集電箔の外縁部を樹脂材で被覆する、被覆工程と、
を有する電極の製造方法であって、
前記集電箔は、第1面と、前記第1面と対向する第2面と、前記第1面および前記第2面を結び、かつ、前記外縁部を構成する側面と、を有し、
前記被覆工程は、
厚さ方向において断面視した場合に、前記電極前駆体の前記集電箔における、前記第1面の一部および前記第2面の一部を覆い、かつ、前記側面よりも外側に延在するように、前記樹脂材を配置する、配置処理と、
前記第1面上に配置された前記樹脂材を、第1加熱装置で加熱することで、前記樹脂材を前記第1面に溶着させる、第1溶着処理と、
を有し、
前記第1溶着処理において、前記第1加熱装置を、前記外縁部に沿って、前記第1面上に配置された前記樹脂材に対して相対的に移動させ、前記樹脂材が加熱される位置を前記外縁部に沿って移動させることで、前記樹脂材を前記第1面に溶着させる、電極の製造方法。
【請求項2】
前記被覆工程は、前記第1溶着処理において加熱した前記樹脂材を、第1加圧治具により、厚さ方向に加圧する、第1加圧処理を有し、
前記第1溶着処理および前記第1加圧処理は、前記樹脂材が加熱される位置の前記移動に追従するように、前記第1加圧治具を移動させることで、連続的に行われる、請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項3】
前記被覆工程は、
前記第2面上に配置された前記樹脂材を、第2加熱装置で加熱することで、前記樹脂材を前記第2面に溶着させる、第2溶着処理を有する、請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項4】
前記第2溶着処理において、前記第2加熱装置を、前記外縁部に沿って、前記第2面上に配置された前記樹脂材に対して相対的に移動させ、前記樹脂材が前記第1加熱装置により加熱される位置を前記外縁部に沿って移動させることで、前記樹脂材を前記第2面に溶着させ、
前記第1溶着処理および前記第2溶着処理を同時に行う、請求項3に記載の電極の製造方法。
【請求項5】
前記第1加熱装置は、レーザー加熱装置である、請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項6】
前記集電箔は、前記第1面および前記第2面の少なくとも一方に、活物質層を有する、請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載の電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電池の電極においては、例えば電解液の漏液を抑制するため集電体の外縁部を樹脂材等で被覆することが知られている。例えば、特許文献1には、バイポーラ電極の電極板(集電体)の周縁部に溶着された樹脂枠を有するバイポーラユニットを備えた蓄電モジュールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
集電体(集電箔)の外縁部を樹脂で被覆する場合、集電箔を挟むように配置された樹脂を加熱して、樹脂を固化させることが想定される。一方で、樹脂の熱収縮により被覆された外縁部にシワが生じる恐れがある。
【0005】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、集電箔の外縁部におけるシワの発生が抑制された電極の製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]
金属製の集電箔を少なくとも有する電極前駆体を準備する、準備工程と、上記電極前駆体における上記集電箔の外縁部を樹脂材で被覆する、被覆工程と、を有する電極の製造方法であって、上記集電箔は、第1面と、上記第1面と対向する第2面と、上記第1面および上記第2面を結び、かつ、上記外縁部を構成する側面と、を有し、上記被覆工程は、厚さ方向において断面視した場合に、上記電極前駆体の上記集電箔における、上記第1面の一部および上記第2面の一部を覆い、かつ、上記側面よりも外側に延在するように、上記樹脂材を配置する、配置処理と、上記第1面上に配置された上記樹脂材を、第1加熱装置で加熱することで、上記樹脂材を上記第1面に溶着させる、第1溶着処理と、を有し、上記第1溶着処理において、上記第1加熱装置を、上記外縁部に沿って、上記第1面上に配置された上記樹脂材に対して相対的に移動させ、上記樹脂材が加熱される位置を上記外縁部に沿って移動させることで、上記樹脂材を上記第1面に溶着させる、電極の製造方法。
【0007】
[2]
上記被覆工程は、上記第1溶着処理において加熱した上記樹脂材を、第1加圧治具により、厚さ方向に加圧する、第1加圧処理を有し、上記第1溶着処理および上記第1加圧処理は、上記樹脂材が加熱される位置の上記移動に追従するように、上記第1加圧治具を移動させることで、連続的に行われる、[1]に記載の電極の製造方法。
【0008】
[3]
上記被覆工程は、上記第2面上に配置された上記樹脂材を、第2加熱装置で加熱することで、上記樹脂材を上記第2面に溶着させる、第2溶着処理を有する、[1]または[2]に記載の電極の製造方法。
【0009】
[4]
上記第2溶着処理において、上記第2加熱装置を、上記外縁部に沿って、上記第2面上に配置された上記樹脂材に対して相対的に移動させ、上記樹脂材が加熱される位置を上記延在方向に沿って移動させることで、上記樹脂材を上記第2面に溶着させ、上記第1溶着処理および上記第2溶着処理を同時に行う、[3]に記載の電極の製造方法。
【0010】
[5]
上記第1加熱装置は、レーザー加熱装置である、[1]から[4]までのいずれかに記載の電極の製造方法。
【0011】
[6]
上記集電箔は、上記第1面および上記第2面の少なくとも一方に、活物質層を有する、[1]から[5]までのいずれかに記載の電極の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本開示においては、集電箔の外縁部においてシワの発生が抑制された電極を製造できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示における電極の製造方法を例示する図である。
【
図2】本開示において課題が生じるメカニズムを説明する図である。
【
図3】本開示における電極前駆体を例示する概略断面図である。
【
図4】本開示における配置処理を説明する図である。
【
図5】本開示における第1溶着処理および第2溶着処理を説明する図である。
【
図6】本開示における第1加圧処理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示における電極の製造方法について、詳細に説明する。本明細書において、ある部材に対して他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」または「下に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上または直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方または下方に、別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含む。
【0015】
図1は、本開示における電極の製造方法を例示する図である。まず、
図1(a)、(b)に示すように、金属製の集電箔1を少なくとも有する電極前駆体10を準備する(準備工程)。なお、
図1(a)は、電極前駆体10の概略斜視図である。
図1(b)は、電極前駆体を、厚さ方向から平面視した、概略平面図である。
図1(a)、(b)に示すように、集電箔1は、第1面P1と、第1面P1と対向する第2面P2と、第1面P1および第2面P2を結び、かつ、外縁部Oを構成する側面P3とを有している。次に、
図1(c)~(e)に示すように、電極前駆体10における集電箔1の外縁部Oを樹脂材20で被覆する(被覆工程)。本開示における被覆工程は、
図1(c)に示すように、厚さ方向Dにおいて断面視した場合に、電極前駆体10の集電箔1における、第1面P1の一部および第2面P2の一部を覆い、かつ、側面P3よりも外側(紙面右側)に延在するように、樹脂材20を配置する配置処理を有する。また、本開示における被覆工程は、
図1(d)、(e)に示すように、第1面P1上に配置された樹脂材20を、第1加熱装置30Aで加熱することで、樹脂材20を第1面P1に溶着させる、第1溶着処理と、を有している。さらに、第1溶着処理においては、
図1(d)、(e)に示すように、第1加熱装置30Aを、外縁部Oに沿って、第1面上P1に配置された樹脂材20に対して相対的に移動させ、樹脂材20が加熱される位置を外縁部に沿って移動させることで、樹脂材20を第1面P1に溶着させる。なお、
図1(d)においては、第2加熱装置30Bを用いて、後述する第2溶着処理を第1溶着処理と同時に行っているが、本開示における電極の製造方法においては、必ずしも第2溶着処理を要しない。
【0016】
本開示によれば、第1溶着処理において、第1加熱装置を、外縁部に沿って、第1面上に配置された樹脂材に対して相対的に移動させ、樹脂材が加熱される位置を外縁部に沿って移動させることで、樹脂材を第1面に溶着させるため、樹脂材が貼り付けられる外縁部のシワの発生を抑制できる。
【0017】
ここで、
図2に示すように、ヒートブロックなどの加熱装置30′を電極前駆体10の厚さ方向から押し当てて、樹脂材を溶着して、集電箔の外縁部を被覆することが想定される。このような加熱を行った場合、外縁部に沿った方向Xにおける樹脂材の全域が同時に加熱されることで、樹脂材の全域に入熱されることとなり、樹脂材の熱収縮が大きくなる。その結果、被覆後の外縁部においてシワが発生する恐れがある。これに対して本開示においては、第1加熱装置を、外縁部に沿って、第1面上に配置された樹脂材に対して相対的に移動させ、樹脂材が加熱される位置を外縁部に沿って移動させる。そのため、樹脂材の全域が同時に入熱される恐れがなく、樹脂材の熱収縮を抑制することができる。その結果、被覆後の集電箔の外縁部におけるシワの発生を抑制できる。また、電極を積層して電池(積層電池)を製造する場合、集電箔の外縁部にシワが生じていると、熱衝撃により集電箔が破れる恐れがあり、電極およびこれを用いた電池の構造信頼性が低下する恐れがある。一方、本開示において製造される電極では、集電箔の外縁部でのシワの発生が抑制されるため、この電極を用いた積層電池における構造信頼性を良好にすることができるという利点も有する。
【0018】
1.準備工程
本開示における準備工程では、金属製の集電箔を少なくとも有する電極前駆体を準備する。
【0019】
図1(a)に示すように、集電箔1は、第1面P1と、第1面P1と対向する第2面P2と、第1面P1および第2面P2を結び、かつ、外縁部Oを構成する側面P3とを有している。集電箔の平面形状は、通常、矩形である。
【0020】
また、本開示における集電箔は金属製である。集電箔は正極集電体および負極集電体のいずれであってもよい。集電箔が正極集電体である場合、上記金属としては、例えば、アルミニウム、SUS、ニッケルが挙げられる。また、集電箔が負極集電体である場合、上記金属としては、例えば、銅、SUS、ニッケル等が挙げられる。集電箔の厚さは、例えば、0.1μm以上、500μm以下である。
【0021】
図1(a)、(b)および
図3(a)、(b)に示すように、集電箔2は、第1面P1および第2面P2の少なくとも一方に、活物質層40を有することが好ましい。
【0022】
図3(a)に示すように、活物質層40は、集電箔1の第1面P1に形成され、第2面P2に形成されていなくてもよい。また、特に図示しないが、活物質層は、集電箔の第1面に形成されておらず、第2面に形成されていてもよい。一方、
図3(b)に示すように、活物質層40(40a、40b)は、集電箔1の第1面P1および第2面P2の両面に、それぞれ形成されていてもよい。この場合、活物質層(第1活物質層40a、第2活物質層40b)は、互いに極性が異なる活物質層であることが好ましい。この場合、集電箔は正極集電体および負極集電体の両方として機能する。
【0023】
活物質層は、正極活物質層および負極活物質層のいずれかであってもよい。正極活物質層は、少なくとも正極活物質を含有する。また、負極活物質層は少なくとも負極活物質を含有する。また、正極活物質層および負極活物質層は、導電材およびバインダーの少なくとも一つをさらに含有していてもよい。
【0024】
ここで、電極前駆体は上述した活物質層を有していなくてもよい。この場合、例えば、後述する被覆工程後の電極前駆体における集電箔上に、上述した活物質層を形成する。これにより、集電箔上に活物質層が形成された電極とすることができる。
【0025】
正極活物質としては、例えば、酸化物活物質および硫黄(S)が挙げられる。酸化物活物質としては、例えばリン酸鉄リチウムが挙げられる。正極活物質の形状は、例えば粒子状である。負極活物質としては、例えば、Li、Si等の金属活物質、グラファイト等のカーボン活物質、Li4Ti5O12等の酸化物活物質が挙げられる。負極活物質の形状は、例えば、粒子状、箔状である。
【0026】
導電材としては、例えば、炭素材料が挙げられる。炭素材料としては、例えば、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック(KB)等の粒子状炭素材料、炭素繊維、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバー(CNF)等の繊維状炭素材料が挙げられる。また、バインダーとしては、例えば、ゴム系バインダー、フッ化物系バインダーが挙げられる。
【0027】
第2活物質層は第1活物質層とは極性の異なる層であること以外、上述した第1活物質層と同様である。
【0028】
2.被覆工程
本開示における被覆工程では、上記電極前駆体における上記集電箔の外縁部を上記樹脂材で被覆する。特に、本開示における被覆工程では、所定の処理を有する。ここで、電極においては、通常、集電箔の外縁部全周が樹脂材で被覆される。一方、本発明、つまり、本開示における被覆工程を適用する部分は、集電箔の外縁部の全周に配置された樹脂材のうち、全部(全周)に適用してもよく、一部分にのみ適用してもよい。後者の場合において、本開示における被覆工程で被覆する部分は、コ状であってもよく、L字状であってもよく、I字状であってもよい。
【0029】
(1)配置処理
配置処理では、上記電極前駆体の上記集電箔における、上記第1面の一部および上記第2面の一部を覆い、かつ、上記側面よりも外側に延在するように、上記樹脂材を配置する。
【0030】
「第1面の一部および第2面の一部を覆い、かつ、側面よりも外側に延在する」とは、
図1(c)および
図4に示すように、厚さ方向Dと直交する方向d1における、第1面P1側の樹脂材20の一端をx1とし、他端をx2とし、第2面P2側の樹脂材20の一端をy1とし、他端をy2とした場合、x1およびy1が側面P3より内側(紙面左側)にあり、x2およびy2が側面P3よりも外側(紙面右側)にあることをいう。
【0031】
図1(c)および
図4に示すように、電極前駆体10が活物質層40を有する場合、通常、樹脂材20は、x1およびy1が活物質層40の端zよりも側面P3側に位置するよう、配置される。また、
図1(d)に示すように、樹脂材20は、外縁部に沿った方向xにおいて樹脂材20の両端が集電箔1よりも外側に位置するよう配置してもよい。
【0032】
また、
図1(c)に示すように、第1面P1側に配置される樹脂材20と、第2面P2側に配置される樹脂材20とは、それぞれ独立した部材であってもよい。一方、
図4に示すように第1面P1側に配置される樹脂材20と、第2面P2側に配置される樹脂材20とは、一体化された部材であってもよい。
【0033】
樹脂材としては、熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂が挙げられる。樹脂材の形状(平面形状)は、例えばシート状である。樹脂材の厚さは、例えば、0.5mm以上、5mm以下である。
【0034】
(2)第1溶着処理
第1溶着処理では、上記第1面上に配置された上記樹脂材を、第1加熱装置で加熱することで、上記樹脂材を上記第1面に溶着させる。特に第1溶着処理においては、上記第1加熱装置を、上記外縁部に沿って、上記第1面上に配置された上記樹脂材に対して相対的に移動させ、上記樹脂材が加熱される位置を上記延在方向に沿って移動させることで、上記樹脂材を上記第1面に溶着させる。
【0035】
第1加熱装置は樹脂材を溶解させることができれば特に限定されないが、例えば、レーザー加熱装置および高周波誘導加熱装置が挙げられる。第1加熱装置として、これらの装置を用いることで、厚さ方向において、集電箔と樹脂材との界面に入熱することができ、より樹脂材の熱収縮を小さくすることができる。なお、第1加熱装置としては、レーザー加熱装置がより好ましい。レーザーの出力は、例えば、200W以上、400W以下である。
【0036】
第1溶着処理においては、第1加熱装置を、外縁部に沿って、第1面上に配置された樹脂材に対して相対的に移動させる。第1加熱装置を樹脂材に対して相対的に移動させる方法としては、(i)第1加熱装置のみを外縁部に沿って移動させる方法、(ii)電極前駆体のみを外縁部に沿って移動させる方法、および、(iii)第1加熱装置および電極前駆体の両方を外縁部に沿って移動させる方法を挙げることができる。(iii)の場合、第1加熱装置の移動方向と電極前駆体の移動方向とは互いに逆方向であることが好ましい。また、第1加熱装置の移動方向と電極前駆体の移動方向とが同方向である場合、両者の移動速度に差があればよい。
【0037】
図5に示すように、第1加熱装置30Aは、厚さ方向Dにおいて断面視した場合に、集電箔1と重複している樹脂材20の部分(点線で囲った部分)のみを加熱してもよい。一方、第1加熱装置30Aは、集電箔1と重複している樹脂材20の部分、および、集電箔1からd1方向に突出している樹脂材20の部分の両方を加熱してもよい。
【0038】
(3)第2溶着処理
本開示における被覆工程は、上記第2面上に配置された上記樹脂材を、第2加熱装置で加熱することで、上記樹脂材を上記第2面に溶着させる、第2溶着処理を有していてもよい。第1溶着処理で集電箔が加熱されることで、第2面上に配置された樹脂材も加熱および溶着させることができるが、第2溶着処理を行うことで、より効率的に集電体の外縁部を被覆することができる。
【0039】
また、第2溶着処理においては、上記第2加熱装置を、上記外縁部に沿って、上記第2面上に配置された上記樹脂材に対して相対的に移動させ、上記樹脂材が加熱される位置を上記外縁部に沿って移動させることで、上記樹脂材を上記第2面に溶着させることが好ましい。第2加熱装置、第2加熱装置の移動、加熱方法については上述した第1溶着処理と同様である。
【0040】
また、
図1(d)および
図5に示すように、本開示における被覆工程においては、上記第1溶着処理および上記第2溶着処理を同時に行ってもよく、個別に行ってもよい。
【0041】
(4)第1加圧処理
本開示における被覆工程は、上記第1溶着処理において加熱した上記樹脂材を、第1加圧治具により、厚さ方向に加圧する、第1加圧処理を有していてもよい。また、被覆工程が第1加圧処理を有する場合、
図6(a)、(b)に示すように、第1溶着処理および第1加圧処理は、第1加熱装置30Aの移動に追従するように、第1加圧治具50Aを移動させることで、連続的に行われてもよい。第1加圧処理を行うことで、より確実にシワの発生を抑制することができる。
【0042】
図6(a)、(b)に示すように、第1加圧治具50Aを厚さ方向Dに押し付けながら、外縁部に沿って移動させることで、樹脂材20が加熱される位置の移動に追従して加圧を行うことができる。加圧方法としては、例えば平板プレスおよびロールプレスが挙げられるが、ロールプレスが好ましい。加圧条件は適宜調整することができる。
【0043】
(5)第2加圧処理
本開示における被覆工程は、上記第1溶着処理または第2溶着処理において加熱した上記樹脂材を、第2加圧治具により、厚さ方向に加圧する、第2加圧処理を有していてもよい。具体的には、
図6(a)に示すように、上記第2溶着処理において加熱した上記樹脂材20を、第2加圧治具50Bにより、厚さ方向Dに加圧する、第2加圧処理を有していてもよい。また、第2溶着処理および第2加圧処理は、第2加熱装置30Bの移動に追従するように、第2加圧治具50Bを移動させることで、連続的に行われてもよい。第2加圧処理の詳細は第1加圧処理と同様である。また、本開示においては、上述したように、第1溶着処理および第2溶着処理を同時に行い、さらに、第1溶着処理および第1加圧処理、ならびに、第2溶着処理および第2加圧処理を、それぞれ連続的に行ってもよい。
【0044】
3.電極
本開示における電極は、通常電池に用いられる。電池の種類としては、リチウムイオン電池が好ましい。また、電池は電解質層が固体電解質層である固体電池であってもよく、電解質層が液系電解質層である、液系電池であってもよい。また、電池の用途としては、例えば、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(BEV)、ガソリン自動車、ディーゼル自動車等の車両の電源が挙げられる。特に、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)または電気自動車(BEV)の駆動用電源に用いられることが好ましい。また、電池は、車両以外の移動体(例えば、鉄道、船舶、航空機)の電源として用いられてもよく、情報処理装置等の電気製品の電源として用いられてもよい。
【0045】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0046】
1 …集電箔
10 …電極前駆体
20 …樹脂材
30A …第1加熱装置
30B …第2加熱装置
40 …活物質層