(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068458
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】内装パネルのクリップ取付治具
(51)【国際特許分類】
B25B 27/20 20060101AFI20240513BHJP
F16B 19/00 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
B25B27/20 B
F16B19/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178926
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】505458876
【氏名又は名称】株式会社ティーエヌ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100082429
【弁理士】
【氏名又は名称】森 義明
(74)【代理人】
【識別番号】110002295
【氏名又は名称】弁理士法人M&Partners
(72)【発明者】
【氏名】野村 信治
【テーマコード(参考)】
3C031
3J036
【Fターム(参考)】
3C031EE08
3J036AA01
3J036BA01
3J036BA02
3J036CA06
(57)【要約】
【課題】リブの長短に関係なく、クリップをクリップ取付部にワンタッチで効率よくクリップ座に装着できる取付治具を提供する。
【解決手段】クリップ取付治具1は、クリップ30を挟持する二股状のピックアップ部材4を備えた治具本体2と、前記ピックアップ部材4の内側に配設され、前記クリップ30に対する挟み部分4bを内側から覆うと共に前記ピックアップ部材4にて前記クリップ30を挟持した時に、前記クリップ30を外側から覆う筒状のクリップ姿勢保持部材7とで構成されている。クリップ姿勢保持部材7の、前記クリップ30を覆う姿勢保持部分7bにその開口端7cに至る切込溝9が形成され、該切込溝9にて前記姿勢保持部分7bに可撓片7dが形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリップ30を挟持する二股状のピックアップ部材4を備えた治具本体2と、前記ピックアップ部材4の内側に配設され、前記クリップ30に対する挟み部分4bを内側から覆うと共に前記ピックアップ部材4にて前記クリップ30を挟持した時に、前記クリップ30を外側から覆う筒状のクリップ姿勢保持部材7とで構成され、
前記クリップ姿勢保持部材7の、前記クリップ30を覆う姿勢保持部分7bにその開口端7cに至る切込溝9が形成され、該切込溝9にて前記姿勢保持部分7bに可撓片7dが形成されていることを特徴とするクリップ取付治具。
【請求項2】
前記ピックアップ部材4を外から覆う外套部材8を更に備え、
前記外套部材8の下端である開口端8cは、前記クリップ姿勢保持部材7の姿勢保持部分7bの切込溝9の切り込み端9bにほぼ一致、又は切り込み端9bを覆う長さに形成されていることを特徴とする請求項1に記載のクリップ取付治具。
【請求項3】
クリップ30を挟持する二股状のピックアップ部材4を備えた治具本体2と、前記ピックアップ部材4を外側から覆うように配設されたクリップ姿勢保持部材7とで構成され、
前記クリップ姿勢保持部材7は、前記ピックアップ部材4にて前記クリップ30を挟持した時に、前記クリップ30と該クリップ30を挟む挟み部分4bとを覆う、その姿勢保持部分7bにその開口端7cに至る切込溝9が形成され、該切込溝9にて姿勢保持部分7bに可撓片7dが形成されていることを特徴とするクリップ取付治具。
【請求項4】
前記切込溝9は姿勢保持部分7bの全周或いは少なくとも前記ピックアップ部材4の挟み部分4bの間に形成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のクリップ取付治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体内面(例えば、インストルメントパネル部分の固定フレーム)に内装パネルを装着するために用いられるクリップの、内装パネルのクリップ座へのクリップ取付用の治具に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の内装材を車体内面の固定フレームに取り付ける接続部材用の冶具として、該接続部材に合わせた様々なものがあり、例えば、特許文献1に示すようなものが紹介されている。特許文献1に記載の冶具は、自動車のボンネットの裏面にフードインシュレータ(断熱吸音パネル)を固着するクリップ圧入冶具である。
【0003】
インストルメントパネル部分では、固定フレームの所定の位置に内装パネルが二股状のクリップを介して組付けられるようになっている。上記内装パネルは、通常、樹脂成形品により構成される。内装パネルの裏面(装着面)側には、当該内装パネルを固定フレームに取り付けるための複数のクリップ座が一体成形され、裏面から起立している。
このクリップ座は、一般的には、成形用型に対する内装パネルの抜き方向に沿って延びるように成形される。このクリップ座はクリップが取り付けられる板状のクリップ取付部と、クリップ取付部の側縁に設けられたリブとで構成されている。クリップ取付部にはクリップを嵌め殺し状態で固定する係合孔が設けられている。
一方、固定フレームには、クリップが挿入されて内装パネルが固定フレームに固定される固定孔が適所に穿設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
内装パネルの固定フレームへの装着に先立って、内装パネルに設けられた複数のクリップ座に設けられたクリップ取付部へのクリップの装着が行われる。
これまではクリップ装着用の治具が存在しなかったので、クリップのクリップ取付部への装着作業は、以下のように手作業で行われていた。
まず、作業者が1個のクリップを指先で摘み、クリップ取付部が二股のクリップの脚部間に挿入するように挿入し、クリップの脚部の内面に設けられた係止爪がクリップ取付部の係止孔に確実に嵌り込むまで摘まんだ指で深く押し込むことでクリップ装着が行われていた。
【0006】
クリップは
図3に示すような形状をした10mm程度の大きさのもので脚部が撓みやすい部品である。このような小さなクリップをクリップ取付部に正確に取り付けるためには、クリップが指先で傾かないようにクリップをしっかりと摘まみ、クリップの係止爪がクリップ取付部の係止孔に確実に係止するまで深く押し込む必要がある。
しかしながら、作業者が指先でクリップの脚部を摘まんでクリップ取付部に取り付けようとすると、脚部とクリップ取付部との摩擦抵抗やクリップが作業者の指先の間で傾いたり、指先で更に押し込もうとすると
図17のようにクリップ取付部21に対してクリップ30が傾くことが多々あった。クリップが作業者の指先で動かないようにするために、力を入れるとクリップの脚部が撓み装着し難いし、押し込みに際してはクリップが傾かないよう注意してゆっくりと押し込まざるを得ずこれにより作業効率を損なっていた。
また、クリップ座のリブには長短さまざまなものがあり、特に長いリブは指にリブが当たりクリップ装着作業の妨げになっていた。
【0007】
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、リブの長短に関係なく、クリップをクリップ取付部にワンタッチで効率よくクリップ座に装着できる取付治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、車体の固定フレーム100に装着される内装パネル10のクリップ座20にクリップ30を装着するクリップ取付治具1の第1実施形態である(
図2(a)(b)、
図5(a)~(d))。実施形態1はクリップ姿勢保持部材7がピックアップ部材4の内側に設けられた例である。クリップ取付治具1は、
クリップ30を挟持する二股状のピックアップ部材4を備えた治具本体2と、前記ピックアップ部材4の内側に配設され、前記クリップ30に対する挟み部分4bを内側から覆うと共に前記ピックアップ部材4にて前記クリップ30を挟持した時に、前記クリップ30を外側から覆う筒状のクリップ姿勢保持部材7とで構成され、
前記クリップ姿勢保持部材7の、前記クリップ30を覆う姿勢保持部分7bにその開口端7cに至る切込溝9が形成され、該切込溝9にて前記姿勢保持部分7bに可撓片7dが形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のクリップ取付治具1において、
前記ピックアップ部材4を外から覆う外套部材8を更に備え、
前記外套部材8の下端である開口端8cは、前記クリップ姿勢保持部材7の姿勢保持部分7bの切込溝9の切り込み端9bにほぼ一致、又は切り込み端9bを覆う長さに形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、車体の固定フレーム100に装着される内装パネル10のクリップ座20にクリップ30を装着するクリップ取付治具1の実施形態2であり、クリップ姿勢保持部材7がピックアップ部材4を外から囲繞するように設けられた例である(
図2(c)(d)、
図6(a)~(d))。クリップ取付治具1は、
クリップ30を挟持する二股状のピックアップ部材4を備えた治具本体2と、前記ピックアップ部材4を外側から覆うように配設されたクリップ姿勢保持部材7とで構成され、
前記クリップ姿勢保持部材7は、前記ピックアップ部材4にて前記クリップ30を挟持した時に、前記クリップ30と該クリップ30を挟む挟み部分4bとを覆う、その姿勢保持部分7bにその開口端7cに至る切込溝9が形成され、該切込溝9にて姿勢保持部分7bに可撓片7dが形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1~3のいずれかに記載のクリップ取付治具1において、
前記切込溝9は姿勢保持部分7bの全周或いは少なくとも前記ピックアップ部材4の挟み部分4bの間に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1、3に記載のクリップ取付治具1は、治具本体2のピックアップ部材4の挟み部分4bを外側から覆う、或いは内側から覆うクリップ姿勢保持部材7を有し、その姿勢保持部分7bにその開口端7cに至る切込溝9が形成され、姿勢保持部分7bに切込溝9による可撓片9dが形成されているので、ピックアップ部材4でクリップ30を挟持し、クリップ座20に向けて挟持したクリップ30を移動させ、クリップ座20にクリップ30を装着した際に、クリップ30の周囲を囲むクリップ姿勢保持部材7の可撓片7dがクリップ30の傾きを抑え、これによってクリップ30の姿勢が真っ直ぐに保たれたままクリップ座20に装着される。
【0013】
そしてこの時、クリップ30を囲む可撓片7dの内、クリップ座20に接触した可撓片7dが切込溝9にてクリップ座20の接触部分から離れるように撓む(
図11~
図14)。
その結果、クリップ30は上記のように真っ直ぐな姿勢を保持したままクリップ座20に跨設され、クリップ座20への装着作業を阻害しない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明が適用される内装パネルの装着面(裏面)側から見た斜視図である。
【
図2】(a)クリップ取付治具の実施形態1の主要部斜視図、(b)同実施形態1の変形例の主要部斜視図、(c)同実施形態2の主要部斜視図、(d)同実施形態2の変形例の主要部斜視図である。
【
図3】(a)本発明が適用されるクリップで、その脚部の一部を切欠した斜視図、(b)同側面図、(c)同正面図である。
【
図4】(a)本発明が適用される内装パネルに設けられたクリップ座の実施形態1の斜視図、(b)同実施形態2の斜視図、(c)同実施形態3の斜視図、(d)同実施形態4の斜視図である。
【
図5】(a)クリップ取付治具の実施形態1の縦断面図、(b)一部を省略した同底面図、(c)同実施形態1の変形例の縦断面図、(d)一部を省略した底面図である。
【
図6】(a)クリップ取付治具の実施形態2の縦断面図、(b)一部を省略した同底面図、(c)同実施形態2の変形例の縦断面図、(d)一部を省略した同底面図である。
【
図7】実施形態1のクリップ取付治具でクリップをピックアップする前の縦断面図である。
【
図8】同クリップ取付治具でクリップを挟持した時の縦断面図である。
【
図9】同クリップ取付治具でクリップを持ち上げた時の縦断面図である。
【
図10】同クリップ取付治具でクリップをクリップ座まで移動させた時の縦断面図である。
【
図11】同クリップ取付治具でクリップをクリップ座に嵌め込んでいる状態の縦断面図である。
【
図12】(a)
図11のクリップ取付治具を直角方向から見た時の縦断面図、(b)同図のX-X断面図である。
【
図13】(a)同クリップ取付治具でクリップをクリップ座に嵌め込んだ時の縦断面図、(b)同取付治具を上から見た要部斜視図である。
【
図14】(a)同実施形態1の変形例の上から見た要部斜視図、(b)同Y-Y断面図である。
【
図15】クリップをクリップ座に嵌め込んだ内装パネルを車体の固定パネルに装着する前の部分拡大断面図である。
【
図16】内装パネルを車体の固定パネルに装着した状態の部分拡大断面図である。
【
図17】クリップ座に対してクリップが傾いた時の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を図示実施例に従って詳述する。本発明のクリップ取付治具1は、車体の固定フレーム100に装着される内装パネル10のクリップ座20にクリップ30を装着するためのものである。本発明のクリップ取付治具1の説明に先立って、本発明のクリップ取付治具1が使用される内装パネル10及びクリップ30について説明する。
【0016】
車両用の内装パネル10は、例えば、車両の運転席および助手席の前に設けられるフロントパネルなどがある。
図1に内装パネル10の1例の裏面(装着面)側から見た斜視図を示す。内装パネル10は、通常、樹脂成形品で構成される。
内装パネル10は、表面側(搭乗者側)で内装面を構成するパネル本体10aと、パネル本体10aの装着面11側に立設され、後述するクリップ30を介して、車体の固定フレーム100側に設けられる固定孔101に挿入固定されるクリップ座20とで構成される。
【0017】
パネル本体10aは必要に応じて平面或いは曲面に形成されている。クリップ座20はパネル本体10aの固定フレーム100への装着面11に複数個所設けられ、一般的には、金型から内装パネル10を抜き取る方向に立設されている。
【0018】
クリップ座20は、板状のクリップ取付部21とリブ22とで構成される。
クリップ取付部21には、後述するクリップ30を係合固着するための横長の係合孔21aが設けられている。
リブ22はクリップ取付部21の両側又は片側に設けられ、クリップ取付部21に対して直交する方向に張出すように設けられている。そして、リブ22の基部には該リブ22から更に外側に張り出した張り出し部分22aが設けられている。
クリップ座20はパネル本体10aの装着面11から離型方向に延びている。
【0019】
リブ22には
図4に示すように複数種類のものがあるが、その先端はクリップ取付部21の先端より高く伸びている。リブ22の先端部分は、先端に向けて当該部分が窄む形状となっている。
図4(a)のような長いリブ22にはその外面に補強片が設けられている。
リブ22の外側面で基部側の途中領域から外側方に前記張り出し部分22aが設けられている。そして、この張り出し部分22aの上面が、後述する車体の固定フレーム100に内装パネル10が固定される際の、挿入方向におけるストッパの役割を有し、内装パネル10と固定フレーム100との間の間隔を一義的に固定できるようになっている。この張り出し部分22aの上面をストッパ面22bとする。
【0020】
リブ22は、
図4(a)(b)(d)のようにクリップ取付部21の両側面に設けられる場合や、同図(c)のようにいずれか一方の面のみに設けられる場合がある。
また、同図(a)のように一方のリブ22が他方のリブ22より大きい場合や、同図(b)(d)のように両方のリブ22が同じ形状である場合がある。
更に、張り出し部分22aがリブ22の両側に設けられている場合や、一方の側だけ設けられている場合などがある。
【0021】
次に、クリップ30の構造について説明する。クリップ30は二股状の部材で、弾性変形可能な部材(樹脂、金属板)により構成され、本体部分31と、本体部分31から二股状に伸び、開口幅の変更が可能な脚部32とを含む。脚部32は本体部分31から伸び、線対称の形状に形成されている。
脚部32には、本体部分31から脚部先端方向に伸びた2条のスリット孔32aがそれぞれ設けられている。該スリット孔32aの間の部分を脚中央部分32bとし、脚中央部分32bの両側の部分を脚サイド部分32cとする。脚中央部分32bの中間部分の内面には対向して係止爪32eが内向きに突設されている。
【0022】
脚中央部分32bは本体部分31から対称に伸び、脚先端部分32dに至る。脚中央部分32bの上半分は本体部分31から係止爪32eまで平行で且つストレートに伸び、係止爪32eから脚先端部分32dまでの下半分は係止爪32eから外方に屈曲しており、脚先端部分32dまでその間隔が漸増するように広がっている。
本体部分31からストレートに伸びている部分をストレート部分32sとし、ストレート部分32sから脚先端部分32dに至る末広がり部分を傾斜部分32tとする。
係止爪32eは、中段で脚中央部分32bの内面から内方に突き出すよう形成されている。係止爪32eの上面は段状に形成され、当該上面が係止面32fとなる。
【0023】
脚サイド部分32cも脚中央部分32bの両側にて本体部分31から線対称に伸びている。そして、脚中央部分32bに対して、脚サイド部分32cは脚中央部分32bの係止爪32eに一致する中間部分まで対称に外側に傾斜するように形成され、中間部分まで脚サイド部分32cの間隔が漸増するように広がる。そして、中間部分から若干内側にく字状に折れ曲がり、そこから脚先端部分32dまでの部分は先端に向かってストレートに伸びるように形成されている。
中間部分のく字状に折れ曲がっている部分を係止用屈曲部32kとする。
係止用屈曲部32kの外面は、上記のように外側にく字状に突き出すように折れ曲がっている。このく字状に折れ曲がっている係止用屈曲部32kの下側の面が固定孔101への係止部分となる(
図16)。
【0024】
脚部32に設けられている両側の脚サイド部分32cの外面は、
図3(a)に示すように、脚サイド部分32cの内側にある脚中央部分32bの外面より外側に突出している。脚サイド部分32cより内側にある脚中央部分32bの部分が本体部分31から脚先端突条32gに至る凹溝32mとなる。そして、前後の両脚中央部分32bのストレート部分32sの外面間の間隔を32hで表す。
脚先端部分32dの外面には、脚先端部分32dの幅方向全体をカバ―する脚先端突条32gが設けられており、外方に突き出している。この部分にピックアップ部材4の先端が突き当たる。
【0025】
クリップ取付治具1は、ピックアップ部材4を備えた治具本体2と、筒状のクリップ姿勢保持部材7とで構成されている。
クリップ姿勢保持部材7は、
図5のようにピックアップ部材4の内側に配設されたものと、
図6のようにピックアップ部材4の外側に配設されたものの2種類がある。前者を実施形態1とし、後者を実施形態2とする。実施形態1にはピックアップ部材4及びクリップ姿勢保持部材7だけのもの(図示せず)と、更にピックアップ部材4及びクリップ姿勢保持部材7を外から覆う外套部材8を備えた場合がある。図は外套部材8を備えたものを記載している。
また、クリップ姿勢保持部材7には、切込溝9をその開口端7cの全周に設けた場合と、その一部に設けた場合などがある。
まず、実施形態1を説明した後に実施形態2を説明する。実施形態2では、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、相違する部分を重点的に説明する。
【0026】
治具本体2は円筒状或いは円筒をL形に屈曲したエルボ状の把持部3と、該把持部3内にその基端部分が装着されたピンセット状のピックアップ部材4とで構成されている。
ピックアップ部材4は弾性部材で構成され、基端部分から一対の脚部4aが線対称に伸び、その先端部分がクリップ30を挟む挟み部分4bである。換言すれば、ピックアップ部材4の基部は把持部3内に挿入され、脚部4aに両側から力を加える(又は、力を抜く)ことで、そのバネ弾性でその脚部4aの開き間隔4hを拡縮可能に動かすことができるようになっている。そして、挟み部分4bの開き間隔4hは、前後一対の脚中央部分32bのストレート部分32sの外面間の幅32hよりも若干広い。
【0027】
また、ピックアップ部材4の挟み部分4bの横幅4mはクリップ30の脚サイド部分32c間の凹溝32mの幅より若干狭く作られている。
無負荷状態では挟み部分4bの開き間隔4hは、クリップ30の凹溝32mの幅32hより広いため、クリップ30のピックアップ時に、挟み部分4bがクリップ30の凹溝32mにスムーズに挿入できるようになっている。
【0028】
上記ピックアップ部材4の形状は上記ピンセット状の形に限られず、ピックアップ部材4は挟み部分4bの開き間隔4hの拡縮を許容する構造であれば足る。また、把持部3を図示しないロボットアームに装着できるような構造としてもよい。本実施例のピックアップ部材4は弾発性を以って挟み部分4bの開き間隔4hの拡縮が出来るようになっている。
【0029】
これに対して、脚中央部分32bの傾斜部分32tの外面幅は漸増するので、ピックアップ部材4の凹溝32mへの進入と共に挟み部分4bの先端が傾斜部分32tの外面に接するようになり、遂には挟み部分4bの開き間隔4hが弾発力に抗して拡大する。これにより、クリップ30の脚中央部分32bの傾斜部分32tを挟み部分4bにて両側から弾性を以って挟めるようになる。
これにより後述するようにピックアップ部材4を上下させるだけで自動的にクリップ30をピックアップできるようになる。
【0030】
クリップ姿勢保持部材7は、クリップ30が内装パネル10のクリップ取付部21に装着完了するまで、ピックアップ部材4の挟み部分4bに挟まれたクリップ30の姿勢を保持する部材である。クリップ姿勢保持部材7には、上述のように2つの実施形態が存在する。なお、クリップ姿勢保持部材7及びピックアップ部材4は把持部3に挿通して設けられたボルト・ナットのような固定部材5によって把持部3に取り付けられる。
【0031】
(実施形態1)
クリップ姿勢保持部材7の実施形態1を
図5に示す。
図5は外套部材8を設けた図であるが、クリップ姿勢保持部材7の強度が十分であれば、外套部材8は必ずしも必要な部材ではない。外套部材8を用いる場合は、外套部材8も固定部材5によって把持部3に取り付けられる。
【0032】
クリップ姿勢保持部材7は柔軟な例えば厚手のビニルチューブのような部材で構成されている。ピックアップ部材4はクリップ姿勢保持部材7を両側から挟むようにその外側に設置され、クリップ姿勢保持部材7の基部と共に把持部3内に挿入され固定部材5によって固定されている。
クリップ姿勢保持部材7とピックアップ部材4の両挿入部分は、締結部材(ボルト・ナット)のような固定部材5で把持部3に固定されている。
ピックアップ部材4の、把持部3から突出している部分を両側から押圧すれば、弾性を以ってピックアップ部材4の挟み部分4bが閉じる方向に動く。力を抜けば元の位置に戻る。
【0033】
クリップ姿勢保持部材7の下部は把持部3から突出しており、クリップ姿勢保持部材7の外側にピックアップ部材4が配置されており、クリップ姿勢保持部材7を外側から挟んでいる。ピックアップ部材4の挟み部分4bの全体又はその一部がクリップ姿勢保持部材7の開口端7cより更に下に突出している。換言すれば、クリップ姿勢保持部材7の下部である姿勢保持部分7bは、ピックアップ部材4の挟み部分4bを内側から覆うことになる。
クリップ姿勢保持部材7の開口端7cは、
図8に示すようにクリップ30をピックアップした状態でクリップ30の脚部32の中間付近に一致する長さに形成されている。
そして、
図2(a)は、外套部材8を用いた例で、姿勢保持部分7bの姿勢保持部分7bとピックアップ部材4の挟み部分4bが外套部材8から下方に突出している。
【0034】
姿勢保持部分7bには切込溝9が設けられている。該切込溝9はクリップ姿勢保持部材7の開口端7cから基部である本体部分7a方向に設けられる。切込溝9はクリップ30をピックアップ部材4の挟み部分4bで挟持(ピックアップ)した時、クリップ30の本体部分31の高さとほぼ同じ位置まで、或いはこれを若干超えて本体部分31を覆う長さ(又は本体部分31に届かない未満の長さ)に切り込まれている。
図9、
図10はほぼ同じ長さを示し、
図11,12は若干超える場合を示す。切込溝9が形成されている姿勢保持部分7bがクリップ30を周囲から支えることになる。
【0035】
切込溝9は、
図5(a)(b)のように、クリップ姿勢保持部材7の開口端7c全周に設けてもよいが、その変形例として、
図5(c)(d)のように、少なくともピックアップ部材4の挟み部分4bの間(中間位置)に設けるようにしてもよい。これにより後述するように、クリップ30をクリップ座20に装着する場合に、クリップ座20のリブ22その他の接触する物を避けることができる。なお、図では、切込溝9が分かるようにこの部分を誇張している。
【0036】
切込溝9によってクリップ姿勢保持部材7の開口部分である姿勢保持部分7bに設けられた短冊状の片を可撓片7dとする。
図5(a)(b)の場合、可撓片7dは姿勢保持部分7bの全周にわたってほぼ同じ幅のものが形成されるが、
図5(c)(d)の場合は、ピックアップ部材4の挟み部分4bの間に細い可撓片7dが形成され、その余には幅の広い可撓片7dが形成される。これらの点は実施形態2も同様である。
【0037】
図5の場合は、ピックアップ部材4の外側を囲繞するように、可撓樹脂製のチューブで形成された外套部材8が設けられることになる。上記のようにこの外套部材8はクリップ姿勢保持部材7の強度が十分強く、補強を必要としない場合には省略することができる。ここでは外套部材8を用いた場合を代表例として説明する。
【0038】
外套部材8はピックアップ部材4やクリップ姿勢保持部材7と共に把持部3に装着される。外套部材8は内側のクリップ姿勢保持部材7を外から補強するもので、その開口端8cはクリップ姿勢保持部材7の切込溝9の切り込み端9bに合わせて設けられている。これは外套部材8が可撓片7dの動きを阻害しないためである(
図5)。
これにより、クリップ30の装着時に、内側の姿勢保持部分7bの可撓片7dがクリップ座20のクリップ取付部21、リブ22、或いはストッパ面22bなどに接触して大きく曲がり、これによって内側のクリップ姿勢保持部材7が変形しようとした時に、外側の外套部材8の囲繞部分(開口端8c)が姿勢保持部分7bの可撓片7dの切り込み端9b付近を外側からバックアップすることになり、クリップ30の本体部分31が傾くのを防止する(
図11、
図12)。換言すれば、クリップ30の本体部分31は、外套部材8の開口部分8cの内側、又はその近傍に位置することになるからクリップ30の姿勢保持のバックアップになる。これによって装着時におけるクリップ30の姿勢保持が確実になる。
【0039】
次に、本発明のクリップ取付治具1(実施形態1)を使用したクリップ30の装着方法を説明する。多数のクリップ30は
図7に示すように断面逆T字型の整列具50の装着立片51に跨設状態で嵌め込まれて整列している。クリップ30の脚部32は整列具50の装着立片51にて脚間隔が若干開いた状態で跨設保持され、係止爪32eが装着立片51に弾接している。
【0040】
図7のように、整列している1個のクリップ30の直上にクリップ取付治具1をセットし、
図8のように、ピックアップ部材4を下にして降下させる。降下したクリップ取付治具1の、開いたピックアップ部材4の挟み部分4bの先端がクリップ30の本体部分31の方から脚部32の凹溝32mにスムーズに滑り込む。
【0041】
挟み部分4bの先端が脚部32の脚中央部分32bの傾斜部分32tに至ると、挟み部分4bの先端が傾斜部分32tに接触し、挿入に連れて挟み部分4bの先端が傾斜部分32tの外面に接しながら滑り、ピックアップ部材4の閉方向の弾性力に抗して挟み部分4bを拡開させる。これによりクリップ30の脚中央部分32bの傾斜部分32tを挟み部分4bが両側から弾性力を以って挟み付けることになる。その結果、ピックアップ部材4の挟み部分4bとクリップ30の脚中央部分32bの傾斜部分32tの外面との間に摩擦力が発生する。
この時、クリップ姿勢保持部材7の開口端7cはクリップ取付治具1と共に降下して整列具50の装着立片51に接触する位置までくる。この状態でクリップ取付治具1を更に下げると姿勢保持部分7bの切込溝9に装着立片51が入り込み、或いは可撓片7dが装着立片51に接触して撓み、クリップ取付治具1の降下動作を妨げない。
ピックアップ部材4の先端が脚先端突条32gに突き当たった処で降下動作が停止する。続いて、クリップ取付治具1を引き上げ、クリップ30のピックアップ動作に移る。
【0042】
上記のように、整列具50の装着立片51にはクリップ30の係止爪32eが弾接しているが滑りやすく、係止爪32eの装着立片51に対する摩擦力は、上記ピックアップ部材4の挟み部分4bとクリップ30の脚中央部分32bの外面との間に生じる摩擦力より小さい。
そしてこの状態で、クリップ取付治具1を持ち上げると、係止爪32eは装着立片51を滑り、クリップ30はピックアップ部材4によって摘ままれた状態で持ち上げられることになる。
【0043】
そして、クリップ30を摘まんだ状態でクリップ取付治具1を内装パネル10のクリップ座20の直上まで移動させ、クリップ座20に向かって垂直に降下させる(
図9、
図10)。
クリップ取付治具1に摘ままれた状態でクリップ座20に至ったクリップ30は、その脚部32がクリップ座20のクリップ取付部21を跨ぐように押し込まれる。
クリップ30のクリップ座20への装着の間、左右のリブ22がクリップ30の両側に位置することから、左右のリブ22がクリップ30のクリップ座20への装着時におけるガイドの機能を果たす。
【0044】
クリップ30の本体部分31は周囲からクリップ姿勢保持部材7の姿勢保持部分7bの可撓片7dにて全周から支えられているので、傾きが阻止される(
図11、
図12(a))。
クリップ30がこの状態を保持しながら更に押し込まれると、クリップ座20に設けられた係合孔21aにクリップ30に設けられた係止爪32eが係止する(
図13(a))。係止後は、嵌め殺しとなり、クリップ30がクリップ座20から容易に外れることはない。
この間、クリップ姿勢保持部材7の姿勢保持部分7bは、クリップ30を外側から囲繞してピックアップ部材4の挟み部分4bがクリップ30の凹溝32mから離脱しないように且つクリップ30が傾かないようにクリップ30の姿勢を保持する。
【0045】
一方、この間、クリップ姿勢保持部材7の姿勢保持部分7bは、装着の進行と共にクリップ取付部21やリブ22の先端に接触する。上記のように姿勢保持部分7bには、開口端8cに至る切込溝9が形成されているので、クリップ取付部21やリブ22がこの切込溝9の間に入り込み、或いはクリップ取付部21やリブ22に接触した可撓片7dが撓む。
これによって、姿勢保持部分7bの残りの可撓片7dがクリップ30の姿勢を周囲から保持しつつクリップ30を真っ直ぐな姿勢を保ったままスムーズに押し込むことになる(
図13(a)(b))。
【0046】
なお、クリップ姿勢保持部材7の姿勢保持部分7bの切込溝9が、
図5(c)(d)のようにリブ22に一致するように挟み部分4bの中間部分にて左右2か所に設けられている場合、
図14(a)(b)のように、切込溝9にリブ22やクリップ取付部21が入り込み、切込溝9の間の広い幅の可撓片7dがクリップ30の本体部分30aを両側から挟み込み、上記同様に、クリップ30の倒れを防止する。
【0047】
そして、上記のように、クリップ座20のクリップ取付部21に設けられた係合孔21aにクリップ30に設けられた係止爪32eが係止すると、クリップ30のクリップ座20への装着は完了し、クリップ取付治具1を引き上げる。クリップ30はクリップ座20に装着された状態でクリップ座20に残る。
このような作業を繰り返して内装パネル10の全てのクリップ座20にクリップ30を装着する。
【0048】
この作業は、上記のように作業者がクリップ取付治具1の把持部3を握ってピックアップ部材4をクリップ30に向かって下し、ピックアップ部材4がその弾性力でクリップ30を挟んだところを引き上げれば自動的にクリップ30が整列具50からピックアップされ、これを内装パネル10のクリップ座20まで移動させ、クリップ座20に向かってクリップ取付治具1を下し、クリップ30がクリップ座20に嵌め殺し状態で装着された後、クリップ取付治具1を持ち上げれば作業が終了するという簡単な動作で完了するため、非常に作業性がよい。次に、内装パネル10の装着作業に移る。
【0049】
車体側には、車両用の内装パネル10を固定するための固定フレーム100が設けられ、この固定フレーム100には、固定孔101が複数箇所に設けられている。
全クリップ座20にクリップ30が装着された状態となると、内装パネル10の固定フレーム100への装着が行われる。装着は、内装パネル10の装着面11を固定フレーム100側に向け、内装パネル10のクリップ座20を固定孔101に押し込むことで行われる(
図15、
図16)。
押し込むに連れて、脚部32の脚サイド部分32c及び脚中央部分32bの傾斜部分32tが固定孔101によって内側に大きく押され、当該部分が一旦大きく内側に変形する。
その後、更にクリップ座20が固定孔101に押し込まれると、脚部32の脚サイド部分32cのく字形に突曲した係止用屈曲部32kが固定孔101を通過する。この部分が通過すると、脚サイド部分32c及び脚中央部分32bの弾発力により元の状態に拡幅する。その結果、クリップ30の係止用屈曲部32kが固定孔101に係合した状態となり、車両用の内装パネル10の固定フレーム100への装着状態が完成する。
【0050】
(実施形態2)
クリップ姿勢保持部材7の実施形態2を
図6に示す。この場合のクリップ姿勢保持部材7は、クリップ姿勢保持部材7はピックアップ部材4の外側に設けられている。クリップ姿勢保持部材7は、実施形態1と同様に、把持部3から突出している。そして、クリップ姿勢保持部材7の内側にてその開口端7cから下方にピックアップ部材4の挟み部分4bが突出している。
【0051】
クリップ姿勢保持部材7の開口端7cは、図示していないが実施例1と同様、クリップ30をピックアップした状態でクリップ30の脚部32の中間付近に一致する長さに形成されている。
そして、クリップ姿勢保持部材7の開口端7cから基部方向に設けられた切込溝9は、実施形態1と同様に切り込まれている。切込溝9は、実施形態1と同様、クリップ姿勢保持部材7の開口端7c全周に設けてもよいが、少なくともピックアップ部材4の挟み部分4bの間に設けられる。
【0052】
次に、実施形態2のクリップ取付治具1を使用したクリップ30の装着方法であるが、手順は実施形態1と基本的に同じあるが、クリップ姿勢保持部材7がピックアップ部材4の外側に設けられているので、クリップ30とクリップ姿勢保持部材7の間の隙間が実施形態1より広く、クリップ30が実施形態1より倒れやすい。
【0053】
実施形態2の作業も、実施形態1と同様で、安全且つ非常に作業性がよい。
なお、クリップ取付治具1によるクリップ30の装着作業は単純作業なので、把持部3を図示しないロボットアームに装着し、自動作業とすることもできる。
【符号の説明】
【0054】
1:クリップ取付治具、2:治具本体、3:把持部、4:ピックアップ部材、4a:脚部、4b:挟み部分、4h:挟み部分の開き間隔、4m:挟み部分の横幅、5:固定部材、7:クリップ姿勢保持部材、7a:本体部分、7b:姿勢保持部分、7c:開口端、7d:可撓片、8:外套部材、8c:開口端、9:切込溝、9b:切り込み端、10:内装パネル、10a:パネル本体、11:装着面、20:クリップ座、21:クリップ取付部、21a:係合孔、22:リブ、22a:張り出し部分、22b:ストッパ面、30:クリップ、31:本体部分、32:脚部、32a:スリット孔、32b:脚中央部分、32c:脚サイド部分、32d:脚先端部分、32e:係止爪、32f:係止面、32g:脚先端突条、32h:ストレート部分の外面間の幅、32k:係止用屈曲部、32m:凹溝、32s:ストレート部分、32t:傾斜部分、50:整列具、51:装着立片、100:固定フレーム、101:固定孔