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特開2024-68484船舶推進システムおよびそれを備える船舶
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068484
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】船舶推進システムおよびそれを備える船舶
(51)【国際特許分類】
   B63H 25/42 20060101AFI20240513BHJP
【FI】
B63H25/42 N
B63H25/42 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178983
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保田 悠太
(72)【発明者】
【氏名】田形 彰大
(72)【発明者】
【氏名】内藤 克俊
(57)【要約】
【課題】船首にバウスラスタを備え船尾に複数の推進機を備える船舶推進システムおよび船舶に適した具体的な方位制御技術を提供する。
【解決手段】船舶推進システム100は、船体の船首に備えられ、左右方向の推進力を発生するバウスラスタBTと、船体の船尾に備えられ、それぞれ転舵角の変更が可能な少なくとも2機の船外機OMと、メインコントローラ50とを含む。メインコントローラは、船体の方位を制御する方位制御のために、バウスラスタの推進力を制御し、2機の船外機の推進力および転舵角を制御する。方位制御は、バウスラスタの推進力を制御して船体の方位を調整するバウスラスタモードと、バウスラスタの推進力を制御し、かつ2機の船外機をそれぞれ前進運転および後進運転して船体の方位を調整する併用モードとを含む。メインコントローラは、所定の遷移条件に基づいて、バウスラスタモードと併用モードとの間で遷移する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体の船首に備えられ、左右方向の推進力を発生するバウスラスタと、
前記船体の船尾に備えられ、それぞれ転舵角の変更が可能な少なくとも2機の推進機と、
前記船体の方位を制御する方位制御のために、前記バウスラスタの推進力を制御し、かつ前記2機の推進機の推進力および転舵角を制御するコントローラと、を含み、
前記方位制御は、前記バウスラスタの推進力を制御して前記船体の方位を調整するバウスラスタモードと、前記バウスラスタの推進力を制御し、かつ前記2機の推進機をそれぞれ前進運転および後進運転して前記船体の方位を調整する併用モードとを含み、
前記コントローラは、前記方位制御において、所定の遷移条件に基づいて、前記バウスラスタモードと前記併用モードとの間で遷移する、船舶推進システム。
【請求項2】
前記バウスラスタモードにおいて、前記2機の推進機は前記船体の方位の調整に寄与する推進力を発生しない、請求項1に記載の船舶推進システム。
【請求項3】
前記遷移条件が、前記バウスラスタモードから前記併用モードへ遷移するための併用モード遷移条件を含み、前記併用モード遷移条件が、前記バウスラスタに対する出力要求値が第1閾値以上であること(以下「第1遷移条件」という。)、および前記船体の前後方向への推進力要求値が第2閾値以上であること(以下「第2遷移条件」という。)のうちの一つ以上を含む、請求項1に記載の船舶推進システム。
【請求項4】
前記第1遷移条件および前記第2遷移条件のうちの少なくとも一つが成立すると、前記バウスラスタモードから前記併用モードへ遷移する、請求項3に記載の船舶推進システム。
【請求項5】
前記遷移条件が、前記併用モードから前記バウスラスタモードへ遷移するためのバウスラスタモード遷移条件を含み、前記バウスラスタモード遷移条件が、前記バウスラスタに対する出力要求値が第3閾値以下であること(以下「第3遷移条件」という。)、および前記船体の前後方向への推進力要求値が第4閾値以下であること(以下「第4遷移条件」という。)のうちの一つ以上を含む、請求項1に記載の船舶推進システム。
【請求項6】
前記第3遷移条件および前記第4遷移条件の両方が成立すると、前記併用モードから前記バウスラスタモードに遷移する、請求項5に記載の船舶推進システム。
【請求項7】
前記バウスラスタの出力上限を設定するために操作者によって操作される出力上限設定ユニットを含み、
前記出力上限設定ユニットによって設定される出力上限に基づいて、前記第1遷移条件の前記第1閾値が可変設定される、請求項3に記載の船舶推進システム。
【請求項8】
前記バウスラスタの出力上限を設定するために操作者によって操作される出力上限設定ユニットを含み、
前記出力上限設定ユニットによって設定される出力上限に基づいて、前記第3遷移条件の前記第3閾値が可変設定される、請求項5に記載の船舶推進システム。
【請求項9】
前記コントローラは、前記船体の移動方向に対抗する方向に船首または船尾を向けて前記船体の位置を保持する自動操船制御において、前記方位制御を実行する、請求項1に記載の船舶推進システム。
【請求項10】
前記コントローラは、前記船体の位置は保持せず、かつ船首の方位を目標方位に保持する自動操船制御において、前記方位制御を実行する、請求項1に記載の船舶推進システム。
【請求項11】
前記目標方位を設定するために操作者によって操作される目標方位設定ユニットをさらに含み、
前記目標方位設定ユニットによって設定される前記目標方位の変更量が第5閾値以上のとき、前記バウスラスタモードから前記併用モードに遷移し、
前記船首の方位が前記目標方位に達し、かつ前記船体のヨーレートが第6閾値以下であり、かつ前記2機の推進機の出力が第7閾値以下であるとき、前記併用モードから前記バウスラスタモードに遷移する、請求項10に記載の船舶推進システム。
【請求項12】
前記コントローラは、設定されたルート上に前記船体の位置を保持し、かつ船首の方位を目標方位に保持する自動操船制御において、前記方位制御を実行する、請求項1に記載の船舶推進システム。
【請求項13】
前記コントローラは、船首方位を維持しながら航走する自動操船制御において、前記方位制御を実行する、請求項1に記載の船舶推進システム。
【請求項14】
船体と、
前記船体に備えられる、請求項1~13のいずれか一項に記載の船舶推進システムと、を含む、船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、船舶推進システムおよびそれを備える船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、船舶の方位を所定の方向に保持するための操船装置を開示している。船舶は、船尾に舵および推進装置(プロペラ)を備え、船首および船尾付近にそれぞれスラスタを備えている。これらのアクチュエータが、外乱(風、波、潮流等)の影響および方位偏差に応じて制御される。方位保持動作では、外乱または方位偏差が大きいときには、舵、プロペラおよびスラスタの全てにより大きい推力を発生させる状態とされる。一方、外乱および方位偏差がいずれも小さいときには、スラスタのみにより小さい推力を発生させる状態とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-1199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、船体の船首にバウスラスタを備え、船尾に複数の推進機を備える船舶推進システムを研究している。このような船舶推進システムの構成は特許文献1には開示がなく、特許文献1の方位保持制御をそのまま適用することも必ずしも適切ではないので、改善の余地がある。
【0005】
そこで、この発明の一実施形態は、船首にバウスラスタを備え船尾に複数の推進機を備える船舶推進システムおよび船舶に適した具体的な方位制御技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の一実施形態は、船体の船首に備えられ、左右方向の推進力を発生するバウスラスタと、前記船体の船尾に備えられ、それぞれ転舵角の変更が可能な少なくとも2機の推進機と、前記船体の方位を制御する方位制御のために、前記バウスラスタの推進力を制御し、かつ前記2機の推進機の推進力および転舵角を制御するコントローラと、を含む、船舶推進システムを提供する。前記方位制御は、前記バウスラスタの推進力を制御して前記船体の方位を調整するバウスラスタモードと、前記バウスラスタの推進力を制御し、かつ前記2機の推進機をそれぞれ前進運転および後進運転して前記船体の方位を調整する併用モードとを含む。前記コントローラは、前記方位制御において、所定の遷移条件に基づいて、前記バウスラスタモードと前記併用モードとの間で遷移する。
【0007】
この構成によれば、バウスラスタモードでは、バウスラスタの推進力によって船体に回頭モーメントが与えられ、船体の方位が調整される。一方、併用モードでは、バウスラスタの推進力だけでなく、船尾の2機の推進機をそれぞれ前進運転および後進運転することにより、これらの推進機の推進力によっても船体に回頭モーメントを与えて、船体の方位が調整される。したがって、併用モードにおいては、バウスラスタモードのときよりも大きな回頭モーメントを船体に与えることができる。適切な遷移条件を定めてバウスラスタモードと併用モードとの間で遷移することにより、精度の高い方位制御を実現できる。
【0008】
前記バウスラスタモードにおいて、前記2機の推進機の推進力および転舵角が併せて制御されてもよい。たとえば、2機の推進機がいずれも前進運転または後進運転され、それらの2機の推進機の推進力および転舵角が船体の方位制御のために調整されてもよい。
【0009】
また、方位制御に加えて、位置制御も行われてもよい。具体的には、バウスラスタの推進力の制御および/または2機の推進機の制御(推進力および転舵角の制御)によって、船体の位置を調整するための位置制御が行われてもよい。方位制御および位置制御が同時に行われる場合には、バウスラスタが発生する推進力の一部が方位制御に寄与し、その残りの推進力が位置制御に寄与してもよい。また、推進機が発生する推進力の一部が方位制御に寄与し、その残りの推進力が位置制御に寄与してもよい。バウスラスタモードにおいては、バウスラスタの推進力によって船体の方位を調整できるので、船尾の推進機は方位調整のために多くの推進力を分配する必要がない。それにより、位置制御の精度を高めることができる。
【0010】
この発明の一実施形態においては、前記バウスラスタモードにおいて、前記2機の推進機は前記船体の方位の調整に寄与する推進力を発生しない。
【0011】
船尾の2機の推進機は、停止状態とされてもよく、船体の位置を調整する位置制御のために推進力および転舵角が制御されてもよい。推進機を停止状態とすれば、静音性を高めることができる。また、船体の位置調整のために推進機の推進力を用いる場合には、その推進力は専ら位置制御のために利用することができ、方位制御のために分配しなくてもよいので、位置制御の精度を高めることができる。
【0012】
この発明の一実施形態においては、前記遷移条件が、前記バウスラスタモードから前記併用モードへ遷移するための併用モード遷移条件を含み、前記併用モード遷移条件が、前記バウスラスタに対する出力要求値が第1閾値以上であること(以下「第1遷移条件」という。)、および前記船体の前後方向への推進力要求値が第2閾値以上であること(以下「第2遷移条件」という。)のうちの一つ以上を含む。
【0013】
目標方位に対する船体の方位偏差が大きい場合や、外乱のために方位偏差が減らない状況では、大きな回頭モーメントが必要となるので、バウスラスタに対する出力要求値が大きくなる。すると、第1遷移条件が充足されて併用モードに遷移し、大きな回頭モーメントによって、船体の方位を目標方位へと導くことができる。一方、本発明者の研究によれば、船尾の推進機が発生する前後方向の推進力が大きい状況では、バウスラスタの推進力による回頭モーメントが効率的に働かず、回頭モーメントが不足することが分かっている。このような状況では、第2遷移条件が充足されて併用モードに遷移し、必要な回頭モーメントを確保して、船体を目標方位へと導くことができる。よって、第1遷移条件および第2遷移条件の少なくとも一つ以上を併用モード遷移条件とすることにより、方位制御の精度を高めることができる。
【0014】
この発明の一実施形態においては、前記第1遷移条件および前記第2遷移条件のうちの少なくとも一つが成立すると、前記バウスラスタモードから前記併用モードへ遷移する。
【0015】
この構成により、第1遷移条件および第2遷移条件のいずれかが成立すれば併用モードに遷移するので、方位制御の精度を高めることができる。
【0016】
この発明の一実施形態においては、前記遷移条件が、前記併用モードから前記バウスラスタモードへ遷移するためのバウスラスタモード遷移条件を含み、前記バウスラスタモード遷移条件が、前記バウスラスタに対する出力要求値が第3閾値以下であること(以下「第3遷移条件」という。)、および前記船体の前後方向への推進力要求値が第4閾値以下であること(以下「第4遷移条件」という。)のうちの一つ以上を含む。
【0017】
目標方位に対する船体の方位偏差が小さくなり、外乱の影響も少ないときには、方位調整のために必要な回頭モーメントが小さくなり、それに応じて、バウスラスタに対する出力要求値が小さくなる。すると、バウスラスタモードへの遷移のための第3遷移条件が充足される。一方、船尾の推進機が発生する前後方向の推進力があまり大きくないときに、バウスラスタの推進力による回頭モーメントが船体に効率的に作用する。このような状況のときに、バウスラスタモードへの遷移のための第4遷移条件が充足される。バウスラスタモードでは、船尾の推進機は、船体の方位調整のために多くの推進力を分配する必要がないので、その推進力の大部分を位置制御のために分配したり、あるいは推進力の発生を停止して静音性を高めたりすることができる。
【0018】
この発明の一実施形態においては、前記第3遷移条件および前記第4遷移条件の両方が成立すると、前記併用モードから前記バウスラスタモードに遷移する。
【0019】
この構成では、第3遷移条件および第4遷移条件の両方の成立がバウスラスタモードへの遷移の条件となるので、バウスラスタモードによって充分に方位調整が行える状況で、併用モードからバウスラスタモードに遷移する。それにより、船尾の推進機は、船体の方位調整のために多くの推進力を分配する必要がないので、その推進力の大部分を位置制御のために分配したり、あるいは推進力の発生を停止して静音性を高めたりすることができる。
【0020】
この発明の一実施形態においては、前記船舶推進システムは、前記バウスラスタの出力上限を設定するために操作者によって操作される出力上限設定ユニットを含み、前記出力上限設定ユニットによって設定される出力上限に基づいて、前記第1遷移条件の前記第1閾値が可変設定される。
【0021】
バウスラスタの出力上限を操作者(典型的には使用者)が操作することで、バウスラスタが発生する推進力を調整できる。それにより、使用者の練度や好みに応じたチューニングが可能になる。たとえば、出力上限を大きく設定して運動性能を高めたり、出力上限を低く設定してエネルギー消費を少なくしたりすることができる。このような出力上限の設定に連動して第1閾値を自動的に可変設定することで、追加の設定操作を要することなく、併用モードからバウスラスタへの遷移を適切に生じさせることができる。
【0022】
この発明の一実施形態においては、前記船舶推進システムは、前記バウスラスタの出力上限を設定するために操作者によって操作される出力上限設定ユニットを含み、前記出力上限設定ユニットによって設定される出力上限に基づいて、前記第3遷移条件の前記第3閾値が可変設定される。
【0023】
この構成によれば、バウスラスタの出力上限の設定に連動して第3遷移条件を自動的に可変設定することで、追加の設定操作を要することなく、バウスラスタモードから併用モードへの遷移を適切に生じさせることができる。
【0024】
この発明の一実施形態においては、前記コントローラは、前記船体の移動方向に対抗する方向に船首または船尾を向けて前記船体の位置を保持する自動操船制御において、前記方位制御を実行する。
【0025】
バウスラスタモードにおいては、たとえば、バウスラスタの推進力による方位制御によって船体の移動方向に対向する方向に船首または船尾を向け、その一方で、船尾の推進機を前進運転または後進運転することで船体の位置を保持する位置制御を行うことができる。船尾の推進機は、必要に応じて転舵されてもよく、その推進力の一部が方位制御に寄与してもよい。
【0026】
この発明の一実施形態においては、前記コントローラは、前記船体の位置は保持せず、かつ船首の方位を目標方位に保持する自動操船制御において、前記方位制御を実行する。
【0027】
この場合のデフォルトモードは、バウスラスタモードが好ましく、船尾の推進機は実質的に推進力を発生しない停止状態とすることが好ましい。バウスラスタは、前後方向の推進力を実質的に船体に与えないので、船尾の推進機を停止状態とすることで、船体を潮流とともに移動させながら、船体の方位を保持できる。加えて、船尾の推進機を停止状態とすることで、静音性を高めることができる。
【0028】
この発明の一実施形態においては、前記船舶推進システムは、前記目標方位を設定するために操作者によって操作される目標方位設定ユニットをさらに含み、前記目標方位設定ユニットによって設定される前記目標方位の変更量が第5閾値以上のとき、前記バウスラスタモードから前記併用モードに遷移し、前記船首の方位が前記目標方位に達し、かつ前記船体のヨーレートが第6閾値以下であり、かつ前記2機の推進機の出力が第7閾値以下であるとき、前記併用モードから前記バウスラスタモードに遷移する。
【0029】
この構成によれば、目標方位の変更量が大きいときには、併用モードに遷移するので、大きな回頭モーメントを船体に与えて、船体の方位を変更後の目標方位へと速やかに導くことができる。一方、目標方位に達すると、船体のヨーレートが小さく、かつ船尾の推進機の出力が小さいことを条件にバウスラスタモードに遷移する。したがって、船体挙動が安定し、推進機が大きな推進力を与えていない状況で、スムーズにバウスラスタモードに遷移できる。
【0030】
この発明の一実施形態においては、前記コントローラは、設定されたルート上に前記船体の位置を保持し、かつ船首の方位を目標方位に保持する自動操船制御において、前記方位制御を実行する。
【0031】
バウスラスタモードにおいては、たとえば、バウスラスタの推進力による方位制御によって船体の方位が目標方位に保持され、その一方で、船尾の推進機を前進運転または後進運転することで船体の位置をルート上に保持する位置制御を行うことができる。船尾の推進機は、必要に応じて転舵されてもよく、その推進力の一部が方位制御に寄与してもよい。
【0032】
また、目標方位設定ユニットによって目標方位の変更が可能であってもよい。この場合に、目標方位の変更に伴って、前述の第1遷移条件、第2遷移条件、第3遷移条件および第4遷移条件のうちの一つ以上に基づき、バウスラスタモードと併用モードとの間で遷移してもよい。また、前述の場合と同様に、第5閾値、第6閾値および第7閾値に基づく判断に応じて、バウスラスタモードと併用モードとの間で遷移してもよい。
【0033】
この発明の一実施形態においては、前記コントローラは、船首方位を維持しながら航走する自動操船制御において、前記方位制御を実行する。
【0034】
とりわけ、低速航走時にはバウスラスタの推進力による回頭モーメントが効率的に船体に作用するので、所定速度以下の低速航走時の方位制御に利用されるのが好ましい。バウスラスタモードでは、船尾の推進機が必要に応じて転舵され、その推進力の一部が方位制御に寄与してもよい。たとえば、外乱の影響などにより、船首方位が目標方位から大きくずれた場合に、バウスラスタモードから併用モードに遷移して、船首方位を速やかに回復することができる。
【0035】
この発明の一実施形態は、船体と、前記船体に備えられる、前述のような特徴を有する船舶推進システムと、を含む、船舶を提供する。
【発明の効果】
【0036】
この発明によれば、船首にバウスラスタを備え船尾に複数の推進機を備える船舶推進システムおよび船舶に適した具体的な方位制御技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、この発明の一実施形態に係る船舶推進システムが搭載された船舶の構成例を説明するための平面図である。
図2図2は、船舶推進システムの構成例を説明するためのブロック図である。
図3図3は、ジョイスティックユニットの構成例を説明するための斜視図である。
図4A図4Aは、連携モードにおけるジョイスティックモードを説明するための図であり、ジョイスティックの操作とそれに対応する船体の挙動(並進)とを示す。
図4B図4Bは、連携モードにおけるジョイスティックモードを説明するための図であり、ジョイスティックの操作とそれに対応する船体の挙動(その場回頭)とを示す。
図5A-5B】図5Aおよび図5Bは、それぞれ非連携モードおよび連携モードにおける並進の例を説明するための図である。
図5C-5D】図5Cおよび図5Dは、連携モードにおける回頭を伴う並進の例を説明するための図である。
図6A-6C】図6A図6Bおよび図6Cは、方位制御のためのバウスラスタモードの例を説明するための図である。
図6D-6E】図6Dおよび図6Eは、方位制御のための併用モードの例を説明するための図である。
図7図7は、位置保持モードの特徴を説明するためのフローチャートである。
図8図8は、位置保持モードにおける一つの動作例を示す。
図9図9は、位置保持モードにおける他の動作例を示す。
図10図10は、方位保持モードの特徴を説明するためのフローチャートである。
図11図11は、バウスラスタモードを利用する方位保持モードにおける船体の挙動の一例を説明するための図である。
図12図12は、ルート追従方位保持モードの特徴を説明するためのフローチャートである。
図13図13は、ルート追従保持モードにおける非連携モードと連携モードとの比較を示す。
図14図14は、自動操舵中の方位制御の特徴を説明するためのフローチャートである。
図15図15は、バウスラスタの出力レベルの設定に関する特徴を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0039】
図1は、この発明の一実施形態に係る船舶推進システム100が搭載された船舶1の構成例を説明するための平面図である。船舶1は、船体2と、船体2の船首に備えられ、左右方向の推進力を発生するバウスラスタBTと、船体2の船尾3に備えられた転舵角変更可能な推進機の一例である船外機OMと、を含む。この実施形態では、複数機、より具体的には2機の船外機OMが船尾3に備えられている。
【0040】
2機の船外機OMは、船体2の左右方向に並んで船尾3に配置されている。2機の船外機OMを区別するときには、相対的に右側に配置されている船外機OMを右船外機OMsといい、相対的に左側に配置されている船外機OMを左船外機OMpという。この例では、右船外機OMsは、船体2の前後方向に延びる中心線2aに対して右側に配置されており、左船外機OMpは、中心線2aに対して左側に配置されている。より具体的には、右船外機OMsおよび左船外機OMpは、中心線2aに対して左右対称に配置されている。
【0041】
各船外機OMは、水中に配置されるプロペラ20を備えており、プロペラ20の回転によって推進力を発生し、その推進力を船体2に与えるように構成されている。船外機OMは、左右に回動可能であるように船尾3に取り付けられており、それによって、プロペラ20が発生する推進力の方向が左右に変化するように構成されている。たとえば、中心線2aに平行な前後方向を基準として、前後方向に対してプロペラ20が発生する推進力の方向のなす角が転舵角と定義される。船外機OMは、付属の転舵機構26(図2参照)によって左右に回動され、それによって転舵角が変化するように構成されている。転舵角は、前後方向に平行なときを零とし、船外機OMの後端が右側に振られる方向の転舵角に正符号を付与し、船外機OMの後端が左側に振られる方向の転舵角に負符号を付与して表されてもよい。
【0042】
バウスラスタBTは、船体2の船首部において、船体2を左右に貫通する筒状のトンネル41内に配置されたプロペラ40を備えている。プロペラ40は、正転方向および逆転方向、すなわち双方向に回転可能であり、それによって、バウスラスタBTは、右方向または左方向の推進力を船体2に与えることができる。この実施形態では、バウスラスタBTが発生する推進力の方向は、左右方向のほかに設定することはできない。
【0043】
船体2の内部には、乗船者のための居住空間4が確保されている。この居住空間4内に操船席5が設けられている。操船席5には、ステアリングホイール6、リモコンレバー7、ジョイスティック8、ゲージ9(表示パネル)などが備えられている。ステアリングホイール6は、船舶1の針路を変更するために使用者によって操作される操作子である。リモコンレバー7は、船外機OMの推進力の大きさ(出力)およびその方向(前進または後進)を変更するために使用者によって操作される操作子であり、アクセル操作子に相当する。ジョイスティック8は、ステアリングホイール6およびリモコンレバー7の代わりに、操船のために使用者によって操作される操作子である。これらの操作子のほかに、バウスラスタBTを操作するための専用の操作子45(図2参照)が設けられてもよい。
【0044】
図2は、船舶1に備えられる船舶推進システム100の構成例を説明するためのブロック図である。船舶推進システム100は、2機の船外機OMおよびバウスラスタBTを含む。船外機OMは、エンジン船外機または電動船外機のいずれの形態であってもよい。図2には、エンジン船外機の例を示す。
【0045】
各船外機OMは、エンジンECU(電子制御ユニット)21、ステアリングECU22、エンジン23、シフト機構24、プロペラ20、転舵機構26などを備えている。エンジン23が発生する動力が、シフト機構24を介してプロペラ20に伝達される。転舵機構26は、船外機OMが発生する推進力の方向を左右に変化させる機構であり、船外機OMのボディを船体2(図1参照)に対して左右に旋回させる。シフト機構24は、前進位置、後進位置およびニュートラル位置のうちのいずれかのシフト位置を選択可能に構成されている。シフト位置が前進位置のとき、エンジン23の回転が伝達されることによってプロペラ20が正転方向に回転し、船外機OMは前進方向に推進力を発生する前進運転の状態となる。シフト位置が後進位置のとき、エンジン23の回転が伝達されることによってプロペラ20が逆転方向に回転し、船外機OMは後進方向に推進力を発生する後進運転の状態となる。ニュートラル位置のとき、エンジン23とプロペラ20との間の動力伝達が遮断され、船外機OMはアイドリング状態となる。
【0046】
各船外機OMは、さらに、スロットルアクチュエータ27およびシフトアクチュエータ28を備えており、これらはエンジンECU21によって制御される。スロットルアクチュエータ27は、エンジン23のスロットルバルブ(図示せず)を作動させる電動アクチュエータ(典型的には電動モータを含む。)である。シフトアクチュエータ28は、シフト機構24を作動させるためのアクチュエータである。船外機OMは、さらに、ステアリングECU22によって制御される転舵アクチュエータ25を備えている。転舵アクチュエータ25は、転舵機構26の駆動源であり、典型的には、電動モータを含む。転舵アクチュエータ25は、電動ポンプ式の油圧装置を含んでいてもよい。
【0047】
バウスラスタBTは、プロペラ40と、プロペラ40を駆動する電動モータ42と、電動モータ42を制御するモータコントローラ43とを備えている。
【0048】
船舶推進システム100は、さらに、メインコントローラ50を備えている。メインコントローラ50は、プロセッサ50aおよびメモリ50bを含み、メモリ50bに格納されたプログラムをプロセッサ50aが実行することによって、複数の機能を達成するように構成されている。メインコントローラ50は、船体2内に構築された船内ネットワーク55(CAN:コントロールエリアネットワーク)に接続されている。船内ネットワーク55には、リモコンユニット17、リモコンECU51、ジョイスティックユニット18、GPS(Global Positioning System)受信機52、方位センサ53などが接続されている。
【0049】
船内ネットワーク55には、2機の船外機OM(OMs,OMp)にそれぞれ対応した2つのリモコンECU51(51s,51p)が接続されている。これらのリモコンECU51s,51pには、船外機制御ネットワーク56を介して、それぞれ、右船外機OMsおよび左船外機OMpのエンジンECU21およびステアリングECU22が接続されている。メインコントローラ50は、船内ネットワーク55に接続された様々なユニットと信号を授受し、それにより、船外機OMおよびバウスラスタBTを制御し、かつその他のユニットを制御する。メインコントローラ50は、複数の制御モードを有し、各制御モードに応じて予め定められた態様で各ユニットを制御する。
【0050】
船外機制御ネットワーク56には、ステアリングホイールユニット16が接続されている。ステアリングホイールユニット16は、ステアリングホイール6の操作角を表す操作角信号を船外機制御ネットワーク56に出力する。その操作角信号は、リモコンECU51およびステアリングECU22によって受信される。ステアリングECU22は、ステアリングホイールユニット16が生成する操作角信号またはリモコンECU51が生成する転舵角指令に応答し、いずれかに応じて転舵アクチュエータ25を制御し、それによって、船外機OMの転舵角を制御する。
【0051】
リモコンユニット17は、リモコンレバー7の操作位置を表す操作位置信号を生成する。右船外機OMsおよび左船外機OMpにそれぞれ対応するように、右リモコンレバー7sおよび左リモコンレバー7pが備えられている。
【0052】
ジョイスティックユニット18は、ジョイスティック8の操作位置を表す操作位置信号を生成し、かつジョイスティックユニット18に備えられた操作ボタン180の操作信号を生成する。
【0053】
リモコンECU51は、船外機制御ネットワーク56を介して、エンジンECU21に対し、推進力指令を送出する。推進力指令は、シフト位置を指令するためのシフト指令と、エンジン出力(具体的にはエンジン回転速度)を指令するための出力指令とを含む。また、リモコンECU51は、船外機制御ネットワーク56を介して、ステアリングECU22に対して、転舵角指令を送出する。
【0054】
リモコンECU51は、メインコントローラ50の制御モードに応じて異なる制御動作を実行する。たとえば、ステアリングホイール6およびリモコンレバー7による操船のための制御モードでは、リモコンECU51は、エンジンECU21に対して、リモコンユニット17が生成する操作位置信号に応じた推進力指令(シフト指令および出力指令)を与える。また、リモコンECU51は、ステアリングECU22に対して、ステアリングホイールユニット16が生成する操作角信号に従うように指令する。一方、ステアリングホイール6およびリモコンレバー7の操作によらない操船のための制御モードでは、リモコンECU51は、メインコントローラ50の指令に従う。すなわち、リモコンECU51は、メインコントローラ50が生成する推進力指令(シフト指令および出力指令)ならびに転舵角指令に従って、推進力指令(シフト指令および出力指令)をエンジンECU21に送出し、かつ転舵角指令をステアリングECU22に送出する。たとえば、ジョイスティック8による操船のための制御モード(ジョイスティックモード)では、メインコントローラ50は、ジョイスティックユニット18が生成する信号に応じて、推進力指令(シフト指令および出力指令)ならびに転舵角指令を生成する。それらに従って、船外機OMの推進力の大きさおよび方向(前進または後進)ならびに転舵角が制御される。
【0055】
エンジンECU21は、シフト指令に応じてシフトアクチュエータ28を駆動してシフト位置を制御し、出力指令に応じてスロットルアクチュエータ27を駆動してスロットル開度を制御する。ステアリングECU22は、転舵角指令に応じて転舵アクチュエータ25を制御し、船外機OMの転舵角を制御する。
【0056】
バウスラスタBTのモータコントローラ43は、船内ネットワーク55に接続されており、メインコントローラ50からの指令に応答して電動モータ42を作動させるように構成されている。メインコントローラ50は、モータコントローラ43に対して、推進力指令を与える。推進力指令は、シフト指令(回転方向指令)および出力指令(回転速度指令)を含む。シフト指令は、プロペラ20を停止、前進回転または後進回転させることを指令する回転方向指令である。出力指令は、発生すべき推進力、具体的には回転速度の目標値の指令である。モータコントローラ43は、シフト指令(回転方向指令)および出力指令に応じて電動モータ42の回転方向および回転速度を制御する。
【0057】
バウスラスタBTのための専用の操作子45は、この例では、モータコントローラ43に接続されている。使用者は、操作子45を操作してバウスラスタBTの回転方向および回転速度を調節することもできる。
【0058】
GPS受信機52は、位置検出装置の一例であり、地球を周回する人工衛星からの電波を受信して船舶1の位置を特定し、船舶1の位置を表す位置データと、船舶1の移動速度を表す速度データとを出力する。これらのデータは、メインコントローラ50によって取得され、船舶1の位置および/または方位の表示や制御のために用いられる。
【0059】
方位センサ53は、船舶1の方位を検出して、方位データを生成する。その方位データはメインコントローラ50によって利用される。
【0060】
船内ネットワーク55には、さらに、ゲージ9が接続されている。ゲージ9は、操船のための各種情報を表示するための表示装置である。ゲージ9は、たとえば、メインコントローラ50、リモコンECU51、およびモータコントローラ43と通信可能である。それにより、ゲージ9は、船外機OMの運転状態、バウスラスタBTの運転状態、船舶1の位置および/または方位などの情報を表示することができる。ゲージ9には、タッチパネルやボタン等の入力装置10が備えられていてもよい。使用者(操作者)が入力装置10を操作することにより、操作信号が船内ネットワーク55に送出され、様々な設定や指令が行えるようになっていてもよい。ゲージ9に関連する表示制御信号を伝達するために、船内ネットワーク55とは別のネットワークが構築されていてもよい。
【0061】
船内ネットワーク55には、さらにアプリケーションスイッチパネル60が接続されている。アプリケーションスイッチパネル60は、予め定義した機能の実行を指令するための複数のファンクションスイッチ61を含む。たとえば、ファンクションスイッチ61は、自動操船を指令するためのスイッチを含んでいてもよい。より具体的には、一つのファンクションスイッチ61は、前進中に船首方位を維持する自動操舵を行う船首保持モード(Heading Hold)を指令するために割り当てられていてもよい。また、別のファンクションスイッチ61は、前進中に船首方位を保持し、かつ直進する進路を保持する自動操舵を行う直進保持モード(Course Hold)を指令するために割り当てられていてもよい。さらに別のファンクションスイッチ61は、指定した複数の通過点を順に通る経路(ルート)に従って航行させる自動操舵を行うルート追従モード(Track Point)を指令するために割り当てられていてもよい。さらに別のファンクションスイッチ61は、所定の航走パターン(ジグザグパターン、スパイラルパターンなど)に従って航走させる自動操舵を行うパターン航走モード(Pattern Steer)を指令するために割り当てられていてもよい。
【0062】
図3は、ジョイスティックユニット18の構成例を説明するための斜視図である。ジョイスティックユニット18は、前後左右(すなわち、360度の全方位)に傾倒させることができ、かつ軸まわりに回す(ツイストする)ことができるジョイスティック8を備えている。ジョイスティックユニット18は、この例では、さらに、複数の操作ボタン180を備えている。複数の操作ボタン180は、ジョイスティックボタン181および保持モード設定ボタン182~184を含む。
【0063】
ジョイスティックボタン181は、ジョイスティック8を用いる制御モード(操船モード)、すなわち、ジョイスティックモードを選択するときに操船者によって操作される操作子である。
【0064】
保持モード設定ボタン182,183,184は、位置/方位保持系の制御モード(自動操船モードの一つ)を設定するために使用者によって操作される操作ボタンである。より具体的には、保持モード設定ボタン182は、船舶1の位置および船首方位(または船尾方位)を保持する定点保持モード(Stay Point)を設定するために操作される。保持モード設定ボタン183は、船舶1の位置を保持し船首方位(または船尾方位)は保持しない位置保持モード(Fish Point)を設定するために操作される。保持モード設定ボタン184は、船首方位(または船尾方位)を保持し位置の保持は行わない方位保持モード(Drift Point)を設定するために操作される。
【0065】
メインコントローラ50の制御モードは、操作系の観点からは、通常モード、ジョイスティックモードおよび自動操船モードに分類できる。
【0066】
通常モードは、ステアリングホイールユニット16が生成する操作角信号に応じて転舵制御を行い、かつリモコンレバー7の操作信号(操作位置信号)に応じて推進力制御を行う制御モードである。この実施形態では、通常モードは、メインコントローラ50のデフォルト制御モードである。転舵制御とは、具体的には、ステアリングホイールユニット16が生成する操作角信号またはリモコンECU51が生成する転舵角指令に応じて、ステアリングECU22が転舵アクチュエータ25を駆動させる制御動作をいう。これにより、船外機OMのボディが左右に転舵して、船体2に対する推進力の方向が左右に変化する。推進力制御とは、具体的には、リモコンECU51がエンジンECU21に与える推進力指令(シフト指令および出力指令)に応じて、エンジンECU21がシフトアクチュエータ28およびスロットルアクチュエータ27を駆動させる制御動作をいう。これにより、船外機OMのシフト位置が前進位置、後進位置またはニュートラル位置に設定され、かつエンジン出力(具体的にはエンジン回転速度)が変化する。
【0067】
ジョイスティックモードは、ジョイスティックユニット18のジョイスティック8の操作信号に応じて転舵制御および推進力制御を行う制御モードである。
【0068】
ジョイスティックモードでは、船外機OMに対する転舵制御および推進力制御が行われる。すなわち、メインコントローラ50がリモコンECU51に転舵角指令および推進力指令を与え、リモコンECU51がそれらをステアリングECU22およびエンジンECU21に与える。
【0069】
自動操船モードは、ステアリングホイール6、リモコンレバー7およびジョイスティック8の操作によることなく、メインコントローラ50等の働きによって、転舵制御および/または推進力制御を自動で行う制御モードである。すなわち、自動操船が行われる。自動操船には、航走時に使用される航走系の自動操船と、位置および方位の一方または両方を維持する位置/方位保持系の自動操船とがある。航走系の自動操船の例は、ファンクションスイッチ61の操作によって指令される前述の自動操舵である。位置/保持系の自動操船は、保持モード設定ボタン182,183,184の操作によって指令される、定点保持モード、位置保持モードおよび方位保持モードによる操船を含む。
【0070】
この実施形態では、さらに、ジョイスティックモードおよび自動操船モードにおいて、船外機OMおよびバウスラスタBTを連携させて目的とする船体挙動を達成する連携モードと、このような連携を行わない非連携モードとを選択することができる。連携モード/非連携モードを選択するために使用者によって操作される選択操作子は、たとえば、アプリケーションスイッチパネル60のいずれかのファンクションスイッチ61に割り当てられてもよい。連携モードにおいては、メインコントローラ50は、船外機OMに対する転舵制御および推進力制御に加えて、バウスラスタBTに対する推進力制御を実行する。
【0071】
図4Aおよび図4Bは、連携モードにおけるジョイスティックモードを説明するための図であり、ジョイスティック8の操作とそれに対応する船体2の挙動とを示す。メインコントローラ50は、ジョイスティックボタン181によってジョイスティックモードが指令されると、ジョイスティックモードに従って制御処理を実行する。ジョイスティックモードの指令よりも前に連携モードが指令されているか、またはジョイスティックモードの指令の後に連携モードが指令されると、メインコントローラ50は、連携モードによるジョイスティックモードの制御を実行する。連携モードが指令されていなければ、メインコントローラ50は、非連携モードによるジョイスティックモードの制御を実行する。
【0072】
メインコントローラ50は、ジョイスティック8の傾倒方向を進行方向指令と解釈し、ジョイスティック8の傾倒量を当該方向への推進力の大きさの指令と解釈する。また、メインコントローラ50は、ジョイスティック8の軸周りの回動方向(中立位置を基準とした回動方向)を回頭方向指令と解釈し、回動量(中立位置を基準とした回動量)を回頭速度指令と解釈する。そして、メインコントローラ50は、それらの指令を実現するための転舵角指令および推進力指令をリモコンECU51に入力し、かつバウスラスタBTのモータコントローラ43に推進力指令を入力する。リモコンECU51は、転舵角指令および推進力指令を船外機OMのステアリングECU22およびエンジンECU21にそれぞれ送信する。それにより、船外機OMは、指令された転舵角へと転舵され、かつ指令された推進力を発生するようにシフト位置およびエンジン回転速度を制御する。また、モータコントローラ43は、指令された方向および大きさの推進力を発生するように電動モータ42の回転方向および回転速度を制御する。
【0073】
ジョイスティックモードにおいては、ジョイスティック8を回動させることなく傾倒させる操作を行うと、船体2は、回頭することなく、すなわち、方位を保持した状態で、ジョイスティック8の傾倒方向へと移動する。つまり、船体2が並進移動する船体挙動となる。この並進移動の例が、図4Aに表されている。
【0074】
並進移動は、典型的には、図5Aおよび図5Bに示すように、2機の船外機OMs,OMpの推進力作用線71s,71pを船体2内で交差させ、一方の船外機OMを前進運転し、他方の船外機OMを後進運転することによって実現される。推進力作用線71s,71pは、船外機OMs,OMpの推進力72s,72pの作用点を通り、推進力72s,72pの方向に沿って引いた直線である。2機の船外機OMは、平面視で「ハ」の字状(逆V字状)の転舵状態(いわゆるトーイン状態)とされる。このように、推進力作用線71s,71pが船体2内で交差し、2機の船外機が「ハ」の字状(逆V字状)となるときの船外機OMの転舵角を、以下では「並進モード舵角」という。
【0075】
非連携モードでは、図5Aに示すように、バウスラスタBTは停止状態とされ、2機の船外機OMの転舵角は、それらの推進力作用線71s,71pが船体2の旋回中心70(抵抗中心)で交差するように制御される。それにより、2機の船外機OMs,OMpがそれぞれ発生する推進力72s,72pの合力である合成推進力73は、船体2にモーメントを与えることなく、船体2を並進(平行移動)させる。
【0076】
一方、連携モードでは、図5Bに示すように、バウスラスタBTが作動して、推進力を発生する。2機の船外機OMの転舵角は、それらの推進力作用線71s,71pが船体2の旋回中心70(抵抗中心)よりも後方で交差するように制御される。2機の船外機OMがそれぞれ発生する推進力72s,72pの合成推進力73の作用点は、推進力作用線71s,71pの交点であり、したがって、船体2に旋回中心70まわりのモーメントを与える。一方、バウスラスタBTが発生する推進力74も、船体2に対して旋回中心70まわりのモーメントを与える。そこで、2機の船外機OMの合成推進力73およびバウスラスタBTの推進力74がそれぞれ船体2に与えるモーメントがつり合うように船外機OMおよびバウスラスタBTの推進力72s,72p,74が制御される。それにより、船体2は回頭することなく並進(平行移動)することになる。バウスラスタBTを併用する連携モードにおいては、並進に寄与する全体の推進力が非連携モードよりも大きくなるので、船体2をスムーズに並進させることができる。
【0077】
並進モード舵角は、この実施形態では、2機の船外機OMの推進力作用線71s,71pが、船体2内において旋回中心70を通って前後方向に延びる直線(旋回中心70が中心線2a上にあるときには中心線2a)上で交差するときの2機の船外機OMの転舵角である。非連携モードにおいては、船体2を回頭させない場合の並進モード舵角は、2機の船外機OMの推進力作用線71s,71pが旋回中心70で交差するときの2機の船外機OMの転舵角である。連携モードにおいては、船体2を回頭させない場合の並進モード舵角は、2機の船外機OMの推進力作用線71s,71pが旋回中心70よりも後方で交差するときの2機の船外機OMの転舵角である。連携モードでは、並進モード舵角の絶対値は、船外機OMの最大転舵角(たとえば機構限界の転舵角)の絶対値であってもよい。
【0078】
ジョイスティック8を傾倒させ、かつ回動する操作を行うと、船体2がジョイスティック8の傾倒方向に移動しながら、ジョイスティック8の回動方向に回頭する船体挙動が得られる。たとえば、連携モードでは、図5Cおよび図5Dに示すように、バウスラスタBTの推進力74と2機の船外機OMの合成推進力73との大小関係のバランスによって、船体2を回頭させながら並進させることができる。
【0079】
非連携モードでは、図示は省略するが、2機の船外機OMの推進力作用線71s,71pを旋回中心70の前方または後方で交差させるように、2機の船外機OMの転舵角を制御することで、船体2を並進させながら回頭させることができる。
【0080】
2機の船外機OMの合成推進力73は、各船外機OMの推進力72s,72pの方向および大きさ、すなわち、転舵角および出力(エンジン回転速度)に依存する。すなわち、同じエンジン出力であっても、図5Cに示すように転舵角の絶対値を小さくして、2機の船外機OMの間の角度を比較的狭くした状態(閉じた状態)とすれば合成推進力73は比較的小さくなる。また、同じエンジン出力であっても、図5Dに示すように転舵角の絶対値を大きくして、2機の船外機OMの間の角度を比較的広くした状態(開いた状態)とすれば合成推進力73は比較的大きくなる。
【0081】
また、ジョイスティックモードにおいて、ジョイスティック8を傾倒させることなく回動させる操作(ねじり操作)を行うと、船体2は位置をほとんど変えることなくジョイスティック8の回動方向へと回頭する。すなわち、船体2がその場回頭を行う船体挙動となる。その場回頭の例が図4Bに表されている。
【0082】
このとき、2機の船外機OMは、転舵角が零とされ、2機の船外機OMは中心線2aに平行な方向の推進力を発生する。すなわち、2機の船外機OMの推進力作用線は、は中心線2aに平行、すなわち、前後方向に平行となる。このときの2機の船外機OMの転舵角を、以下では「回頭モード舵角」という。その場回頭のとき、一方の船外機OMは前進運転され、他方の船外機OMは後進運転される。それにより、船体2に対して旋回中心まわりのモーメントを与えることができる。左まわり(平面視で反時計回り)にその場回頭するときには、右船外機OMsは前進運転、左船外機OMpは後進運転される。右まわり(平面視で時計回り)にその場回頭するときには、右船外機OMsは後進運転、左船外機OMpは前進運転される。
【0083】
非連携モードにおいては、バウスラスタBTは停止状態とされる。連携モードにおいては、さらに、バウスラスタBTも推進力を発生し、回頭を促進する。すなわち、左まわり(平面視で反時計回り)にその場回頭するときには、バウスラスタBTは左方向の推進力を船体2に与える。右まわり(平面視で時計回り)にその場回頭するときには、バウスラスタBTは右方向の推進力を船体2に与える。
【0084】
保持モード設定ボタン182,183,184(図3参照)の操作によってそれぞれ設定される、前述の定点保持モード(Stay Point)、位置保持モード(Fish Point)、および方位保持モード(Drift Point)は、保持モードの例である。これらの保持モードにおいては、操船者の手動操作を伴うことなく、船外機OMの推進力および転舵角が制御される。連携モードにおいては、さらに、バウスラスタBTの推進力が制御される。
【0085】
たとえば、定点保持モード(Stay Point)においては、メインコントローラ50は、GPS受信機52が生成する位置データおよび速度データと、方位センサ53が出力する方位データとに基づいて、船外機OM出力および転舵角を制御する。連携モードにおいては、さらにバウスラスタBTの推進力も制御される。それにより、船体2の位置変動および方位変動が抑制される。
【0086】
位置保持モード(Fish Point)においては、メインコントローラ50は、GPS受信機52が生成する位置データおよび速度データに基づいて、船外機OMの推進力および転舵角を制御する。連携モードにおいては、さらにバウスラスタBTの推進力も制御される。それにより、船体2の位置変動が抑制される。位置保持モードでは、たとえば、GPS受信機52が生成する位置データの変化に基づき、船体2の移動方向が検出される。その移動方向に船首または船尾を向けるように船体2の方位を維持するための方位制御が行われる。そのようにして船体2の方位が維持された状態で、前後方向の推進力が船体2に与えられ、それによって、船体2の位置が維持される。
【0087】
方位保持モード(Drift Point)においては、メインコントローラ50は、方位センサ53が生成する方位データに基づいて、船外機OMの推進力および転舵角を制御する。連携モードにおいては、さらにバウスラスタBTの推進力も制御される。それにより、船体2の方位変動が抑制される。連携モードにおいては、後述するとおり、バウスラスタBTの推進力のみで船体2の方位を維持するための制御が行われてもよい。
【0088】
図6A図6Eは、方位制御のための2つのモードの例を説明するための図である。この実施形態では、方位制御は、バウスラスタBTの推進力を制御して船体2の方位を調整するバウスラスタモード(図6A図6C参照)と、バウスラスタBTの推進力を制御し、かつ2機の船外機OMをそれぞれ前進運転および後進運転して船体2の方位を調整する併用モードとを含む(図6Dおよび図6E参照)。
【0089】
図6A図6Bおよび図6Cに示すバウスラスタモードの一例においては、2機の船外機OMは、船体2の方位に寄与する推進力を発生しない。バウスラスタモードのときには、2機の船外機OMは船体2の位置を調整するための位置制御のために必要に応じて駆動される。たとえば、2機の船外機OMの転舵角は零とされ、2機の船外機OMは、中心線2aに沿って前進方向または後進方向の推進力72s,72pを船体2に与える。すなわち、2機の船外機OMは、両方とも前進運転(図6A参照)、両方とも停止(ニュートラル)(図6B参照)、または両方とも後進運転(図6C参照)される。
【0090】
併用モードにおいて、図6Dおよび図6Eに示すように、2機の船外機OMの転舵角は零(すなわち、回頭モード舵角)とされる。そして、2機の船外機OMは、中心線2aに沿って前進方向または後進方向の推進力72s,72pを船体に与える。ただし、併用モードにおいては、2機の船外機OMは、一方が前進運転され他方が後進運転される。それにより、2機の船外機OMは、船体2に対して旋回中心70まわりの一方向(図6Dでは時計回り方向、図6Eでは反時計回り方向)のモーメントを与える。より具体的には、2機の船外機OMは、バウスラスタBTと同じ方向のモーメントを船体2に与え、それによって、船体2の回頭を促進する。船体2が回頭しているときに、その回頭方向とは反対方向のモーメントを船体2に与えて、ブレーキとして機能させることもできる。
【0091】
なお、図6A図6Cに示すバウスラスタモードの一例では、船外機OMの転舵角が零とされているが、方位制御のために船外機OMの転舵角が調整されてもよい。すなわち、バウスラスタモードの他の例では、バウスラスタBTの推進力だけでなく、船外機OMの推進力も方位の調整に寄与する。ただし、この場合でも、2機の船外機OMは、両方とも前進運転(図6A参照)、両方とも停止(ニュートラル)(図6B参照)、または両方とも後進運転(図6C参照)される。1機の船外機OMのみが推進力を発生してもよいが、その場合には、他方の船外機OMは停止状態とされる。
【0092】
バウスラスタモードにおいては、船外機OMは、船体2の方位調整のために多くの推進力を分配する必要がないので、その推進力の大部分を位置制御のために分配したり、あるいは推進力の発生を停止して静音性を高めたりすることができる。とくに、シフトインの回数が少なくなることにより、静音性が高められる。
【0093】
図7は、位置保持モード(Fish Point)の特徴を説明するためのフローチャートである。位置保持モードは、船体2の移動方向に対向する方向に船首または船尾を向けて船体2の位置を保持する自動操船制御である。位置保持モードのための保持モード設定ボタン183が操作されると、メインコントローラ50は、GPS受信機52から船体2の現在位置の情報を得て目標位置に設定し、船体2をその目標位置に保持するための位置制御を実行する(ステップS1)。また、メインコントローラ50は、GPS受信機52から出力される位置データおよび/または速度データに基づいて、船体2の移動方向を求め、その移動方向に対抗する方向を目標方位に設定する。メインコントローラ50は、方位センサ53によって検出される船体方位(船首方位)が目標方位またはその180度反転した方位(以下、位置保持モードにおける目標方位はこれらの両方を含むものとする。)に一致するように、方位制御を行う(ステップS2)。
【0094】
この方位制御において、メインコントローラ50は、所定の遷移条件に基づいて、制御モードをバウスラスタモードと併用モードとの間で遷移させる。初期モードは、バウスラスタモードであってもよい。遷移条件は、バウスラスタモードから併用モードへ遷移するための併用モード遷移条件(ステップS4,S5)を含む。また、遷移条件は、併用モードからバウスラスタモードへ遷移するためのバウスラスタモード遷移条件(ステップS7,S8)を含む。
【0095】
併用モード遷移条件は、次の第1遷移条件および第2遷移条件のうちの一つ以上を含む。この実施形態では、併用モード遷移条件は、第1遷移条件および第2遷移条件の両方を含む。第1遷移条件および第2遷移条件の判断は、いずれを先に行ってもよく、実質的に同時に行ってもよい。
【0096】
第1遷移条件:バウスラスタBTに対する出力要求値が第1閾値以上である(ステップS4)。
【0097】
第2遷移条件:船体2の前後方向への推進力要求値が第2閾値以上である(ステップS5)。
【0098】
メインコントローラ50は、バウスラスタモードのとき(ステップS3でステップS4へ分岐)、第1遷移条件および第2遷移条件のうちの少なくとも一つが成立すると(ステップS4またはS5でYES)、バウスラスタモードから併用モードへ遷移する(ステップS6)。
【0099】
バウスラスタモード遷移条件は、次の第3遷移条件および第4遷移条件のうちの一つ以上を含む。この実施形態では、バウスラスタモード遷移条件は、第3遷移条件および第4遷移条件の両方を含む。第3遷移条件および第4遷移条件の判断は、いずれを先に行ってもよく、実質的に同時に行ってもよい。
【0100】
第3遷移条件:バウスラスタBTに対する出力要求値が第3閾値以下である(ステップS7)。
【0101】
第4遷移条件:船体2の前後方向への推進力要求値が第4閾値以下である(ステップS8)。
【0102】
メインコントローラ50は、併用モードのとき(ステップS3でステップS7へ分岐)、第3遷移条件および第4遷移条件の両方が成立すると(ステップS7でYES、かつステップS8でYES)、併用モードからバウスラスタモードへ遷移する(ステップS9)。
【0103】
バウスラスタモード中は、メインコントローラ50は、方位センサ53が検出する検出方位と目標方位との偏差が小さくなるように、モータコントローラ43に対して推進力指令を与える。推進力指令は、シフト指令(回転方向指令)と、出力指令(回転速度指令)とを含む。出力指令の値が出力要求値に相当する。目標方位に対する検出方位の偏差が大きいほどバウスラスタBTに対する出力要求値が大きくなる。また、外乱の影響により、バウスラスタBTを駆動しても偏差が小さくならない場合には、フィードバック制御によって、出力要求値が増加させられる。
【0104】
一方、バウスラスタモード中は、メインコントローラ50は、2機の船外機OMの両方を前進運転または後進運転させることにより、船体2の位置を維持するための位置制御を実行する(図6A図6C参照)。すなわち、バウスラスタBTによって船体2の方位を外乱(風や潮流等)に抗する方向に維持し、その方向に沿って船外機OMが前進方向または後進方向の推進力を船体2に与えることによって、船体2の位置が保持される。メインコントローラ50は、GPS受信機52が出力する船体2の実際の位置(検出位置)を目標位置に一致させるように、船外機OMに対して推進力指令を与える。推進力指令は、シフト指令(シフト位置指令)と、出力指令(推進力の大きさの指令)とを含む。出力指令の値が船体2の前後方向への推進力要求値に相当する。目標位置に対する検出位置の偏差が大きいほど、前後方向への推進力要求値が大きくなる。また、船外機OMを駆動しても位置偏差が小さくならない場合には、フィードバック制御によって、推進力要求値が増加させられる。バウスラスタBTによって方位の調整を行うことができるので、船外機OMの推進力の大部分は位置の調整のために用いることができる。それにより、精度のよい位置保持が可能になる。
【0105】
併用モードにおいては、メインコントローラ50は、2機の船外機OMの一方を前進運転し他方を後進運転することにより、船外機OMの推進力によって船体2に対して旋回中心70まわりのモーメントを与えて、船体2の回頭をアシストする(図6Dおよび図6E参照)。さらに、メインコントローラ50は、2機の船外機OMの推進力によって、船体2の位置を維持するための位置制御も実行する。すなわち、船外機OMの推進力の一部は船体2を回頭させるために用いられ、船外機OMの推進力の残りは船体2に前後方向の推進力を与えるために用いられる。こうして、バウスラスタBTおよび船外機OMの推進力を併用して、外乱に抗する方向に船体2の方位を維持し、その方向に沿って船外機OMが前進方向または後進方向の推進力を船体2に与えることによって、船体2の位置が保持される。メインコントローラ50は、バウスラスタBTの推進力のみでは不足するモーメントを補い、かつ検出位置を目標位置に一致させるように、出力指令を設定して、船外機OMに対して推進力指令を与える。併用モードでは、バウスラスタBTおよび船外機OMの両方によって大きなモーメントを船体2に与えることができるので、船体2の方位を適切に保持できる。
【0106】
第1~第4閾値に基づく判断に応じて、バウスラスタモードと併用モードとの間での適切な遷移が生じ、それによって、精度の高い方位制御および位置制御を実現できる。
【0107】
第1閾値は、第3閾値以上であることが好ましく、第3閾値よりも大きくすることにより、モード遷移に対してヒステリシスを与えることができる。同様に、第2閾値は、第4閾値以上であることが好ましく、第4閾値よりも大きくすることにより、モード遷移に対してヒステリシスを与えることができる。
【0108】
図8は、位置保持モード(Fish Point)における一つの動作例を示しており、主として方位ずれを解消するときの動作例を示す。保持モード設定ボタン183が操作されて位置保持モードが開始されると、風および潮流等の外乱81による船体2の位置ずれに基づいて外乱方向が推測される(段階8A)。そして、外乱81に対抗する方向が目標方位に設定され、その目標方位に向けて船体2の回頭が開始される(段階8B)。たとえば、初期モードはバウスラスタモードであり、バウスラスタBTによって外乱81に対抗する方向のモーメントが船体2に与えられる。目標方位に対する検出方位のずれに基づいて、バウスラスタBTに対する出力要求値がフィードバック制御される。
【0109】
バウスラスタBTだけの推進力によって方位偏差を解消できない状態が続くと(段階8C)、第1遷移条件が充足されることにより、併用モードに遷移する。すると、2機の船外機OMは、一方が前進運転、他方が後進運転とされることにより、バウスラスタBTと同じ方向のモーメントを船体2に与える(段階8D)。それにより、大きな回頭モーメントが船体2に作用し、方位偏差が解消されていく。それによって、バウスラスタBTに対する出力要求値が減少して第3遷移条件が充足される。加えて、第4遷移条件も併せて充足されると、バウスラスタモードに遷移する(段階8E)。
【0110】
図9は、位置保持モード(Fish Point)における他の動作例を示しており、主として位置ずれを解消するときの動作例を示す。保持モード設定ボタン183が操作されて位置保持モードが開始されると、風および潮流等の外乱81による船体2の位置ずれに基づいて外乱方向が推測され(段階9A)。そして、外乱81に対抗する方向が目標方位に設定され、その目標方位に向けて船体2の回頭が開始される(段階9B)。たとえば、初期モードはバウスラスタモードであり、バウスラスタBTによって外乱81に対抗する方向のモーメントが船体2に与えられる。船体2が外乱81に対抗する方向(目標方位)に向くと(段階9C)、目標位置に対する位置ずれは、船体2の前後方向の位置ずれとなる。この位置ずれは、船外機OMの推進力によって補償される。外乱81が大きいときには、フィードバック制御によって、前後方向の推進力要求値が大きくなる(段階9D)。そして、第2遷移条件が充足されると、併用モードに遷移する(段階9E)。
【0111】
本発明者の研究によれば、船外機OMが発生する前後方向の推進力が大きくなると、バウスラスタBTによる船体回頭の効率が悪くなることが分かっている。そこで、前後方向の推進力要求値が大きくなって第2遷移条件が充足されると、併用モードに遷移する。併用モードでは、船外機OMの推進力は、船体2の前後方向の位置ずれの解消のために用いられ、かつ船体2の方位の調整のためにも用いられる。それにより、前後方向に比較的大きな推進力が発生しているときでも、バウスラスタBTおよび船外機OMの両方の推進力によって、船体2に必要なモーメントを与え、それによって、方位保持性を向上できる。併用モードによって、位置ずれが解消され、方位偏差も少なくなると、第3遷移条件および第4遷移条件がともに充足されて、バウスラスタモードに遷移する。
【0112】
併用モードにおいては、船外機OMが発生する推進力は船体2にモーメントを与えるために分配されるので、前後方向の推進力が減少する。しかし、バウスラスタBTも推進力を発生し、船体2にモーメントを与えるので、船外機OMが船体2の回頭のために分配すべき推進力の割合は比較的少ない。したがって、併用モードにおいても、充分な位置保持性能を維持しながら、船体2に対して大きな回頭モーメントを与えることができる。非連携モードでは、バウスラスタBTの推進力が用いられないので、船外機OMの推進力の大きな部分が船体2の回頭のために分配される。そのため、連携モードに比較すると、船体2の位置保持性能は低くなる。
【0113】
前述のとおり、バウスラスタモードの一例では、船外機OMの推進力は船体2の回頭に寄与しないが、バウスラスタモードの他の例では船外機OMの推進力が船体2に前後方向の推進力を与え、かつ船体2にモーメントを与えてもよい。たとえば、2機の船外機OMの推進力の方向をほぼ平行にし、それらの推進力の大きさを異ならせることにより、船体2に対してモーメントを与えることができる。また、2機の船外機OMの推進力の方向をほぼ平行に保って、それらを転舵することによっても船体2に対してモーメントを与えることができる。このように、バウスラスタモードにおいて、2機の船外機OMの推進力および/または転舵角の制御によって、船外機OMが船体2の方位調整に寄与してもよい。
【0114】
図10は、方位保持モード(Drift Point)の特徴を説明するためのフローチャートである。方位保持モードは、船首方位(または船尾方位)を保持し、船体位置の保持は行わない自動操船のための制御モードである。方位保持モードのための保持モード設定ボタン184が操作されると、メインコントローラ50は、方位センサ53から現在方位の情報を得て、その現在方位を目標方位に設定し、船体2をその目標方位に保持するための方位制御を実行する(ステップS11)。目標方位は、たとえば、ゲージ9に付属の入力装置10を操作することによって、変更(微調整)することができる(目標方位変更機能)。この場合、入力装置は、目標方位設定ユニットの一例である。また、いずれかのファンクションスイッチ61に目標方位の変更(微調整)の機能が割り当てられていてもよい。この場合、ファンクションスイッチ61は、目標方位設定ユニットの一例である。
【0115】
方位保持モード中の方位制御は、この例では、原則として、前述のバウスラスタモードであり、前述の併用モード遷移条件が充足されても、併用モードには遷移しない。
【0116】
ただし、目標方位を変更するための操作がされた場合には、例外的に、併用モードへの遷移が生じる。
【0117】
具体的には、たとえば、バウスラスタモード中に(ステップS12でステップS13へ分岐)、入力装置10(目標方位設定ユニット)によって目標方位の設定が変更されるとする。その変更後の目標方位と従前の目標方位の差、すなわち、目標方位の変更量が第5閾値以上のときには(ステップS13)、バウスラスタモードから併用モードに遷移する(ステップS14)。
【0118】
その後、船体2の回頭によって、併用モード中に(ステップS12でステップS15へ分岐)、船首方位が変更後の目標方位に達する(ステップS15:YES)。このとき、船体2のヨーレートが第6閾値以下であり(ステップS16:YES)、かつ2機の船外機OMの出力が第7閾値以下であるとき(ステップS17:YES)、併用モードからバウスラスタモードに復帰する(ステップS18)。これにより、船外機OMの推進力を利用して船体2を速やかに回頭させることができ、使用者が設定する目標方位へと速やかに船体2を向けることができる。
【0119】
船体2のヨーレートが第6閾値以下(ステップS17)であり、かつ船外機OMの出力が第7閾値以下(ステップS17)であることをモード遷移の条件とすることにより、併用モードからバウスラスタモードへの遷移が滑らかになり、かつバウスラスタモードでの方位保持が容易になる。
【0120】
船体2のヨーレートは、たとえば、メインコントローラ50が、方位センサ53の検出方位に対する微分演算を行うことによって得ることができる。むろん、ヨーレートセンサを備えて、その出力を利用してもよい。
【0121】
なお、たとえば、バウスラスタモード中に前述の第1遷移条件(図7のステップS4参照)が充足されると併用モードに遷移するようにしてもよい。また、併用モード中に前述の第3条件(図7のステップS8参照)が充足されるとバウスラスタモードに復帰するようにしてもよい。
【0122】
図11は、バウスラスタモードを利用する方位保持モードにおける船体の挙動の一例を説明するための図である。方位保持モードは、典型的には、船体2の方位を保持しながら、潮流85に乗って船体2を移動させるとき、たとえば流し釣りを行うときに利用される。非連携モードでは、船外機OMの推進力のみによって船体2にモーメントを与えるため、船体2にはモーメントのみならず前後方向の推進力が作用してしまう場合がある。そのため、潮流85に乗った経路90で船体2を移動させるのが理想的であるところ、実際には、前後にずれた経路91,92に沿って船体2が移動する場合がある。これに対して、連携モードでは、バウスラスタモードによる方位制御が行われるので、船体2に対して前後方向の推進力を実質的に作用させることなく、船体2の方位を保持できる。それにより、理想的な経路90にほぼ従って船体2を移動させることができる。
【0123】
バウスラスタモード中の方位の調整は、バウスラスタBTの推進力によって行われ、船外機OMは推進力を発生する必要がない。そのため、方位保持モード中の静音性を向上でき、流し釣りに適した船舶運転状態とすることができる。また、船外機OMを停止状態(アイドリング状態)に保持できることで、シフト機構24の作動音の発生も抑制でき、かつシフトインに伴う振動の発生も抑制できる。
【0124】
図12は、方位保持モード(Drift Point)において、船体2の移動ルートを設定する場合の特徴を説明するためのフローチャートである。方位保持モードのための保持モード設定ボタン184が操作されて方位保持モードに入った状態で、アプリケーションスイッチパネル60のファンクションスイッチ61を操作してルート追従モード(Track Point)を指令すると、航行ルートを設定することができる。具体的には、たとえば、ゲージ9に付属の入力装置10を操作して複数の通過点を指定でき、それによって、複数の通過点を順に通る経路(ルート)を設定できる。メインコントローラ50は、設定されたルート上に船体2の位置を保持し、かつ船首の方位を保持する自動操船モード(Drift Point Track)の制御を実行する。この自動操船モードを、以下では、「ルート追従方位保持モード」という。
【0125】
ルート追従方位保持モードにおいては、メインコントローラは、GPS受信機52から船体2の位置情報を得て、設定された航行ルート上に船体2の位置を保持するための位置制御(ルート追従制御)を実行する(ステップS21)。また、ルート追従方位保持モードにおいては、メインコントローラ50は、方位センサ53から現在方位の情報を得て、その現在方位を目標方位に設定し、船体2の方位をその目標方位に保持するため方位制御を実行する(ステップS22)。
【0126】
したがって、ルート追従方位保持モードにおいては、位置保持モード(Fish Point)の場合と同様に、位置制御および方位制御が実行される。方位制御は、位置保持モードの場合とほぼ同様である。すなわち、初期モードは、たとえばバウスラスタモードである。バウスラスタモードにおいて(ステップS23からステップS24に分岐)、前述の第1遷移条件(ステップS24)および第2遷移条件(ステップS25)の少なくとも一つが成立すると、バウスラスタモードから併用モードへ遷移する(ステップS26)。また、併用モード中に(ステップS23からステップS27に分岐)、前述の第3遷移条件(ステップS28)および第4遷移条件(ステップS29)の両方が成立すると、バウスラスタモードに遷移する(ステップS30)。ただし、ルート追従方位保持モード中にルート追従がキャンセルされて通常の方位保持モードに切り換えられると(ステップS27:YES)、第3遷移条件および第4遷移条件の充足/不充足によらずに、バウスラスタモードに遷移する(ステップS30)。その後は、方位保持モードのための制御が行われる(図10参照)。
【0127】
ルート追従方位保持モードにおいては、位置保持モードの場合と同様に、2機の船外機OMの転舵角は零とされ、2機の船外機OMは、中心線2aに沿って前進方向または後進方向の推進力を船体に与える。バウスラスタモードにおいては、2機の船外機OMは、両方とも前進運転、両方とも停止(ニュートラル)、または両方とも後進運転される。これにより、船体2の位置が設定されたルート上に保持される。併用モードにおいては、2機の船外機OMは、一方が前進運転され他方が後進運転される。それにより、2機の船外機OMは、船体2に対して旋回中心まわりの一方向(時計回り方向または反時計回り方向)のモーメントを与える。より具体的には、2機の船外機OMは、バウスラスタBTと同じ方向のモーメントを船体2に与え、それによって、船体2の回頭を促進する。
【0128】
ルート追従保持モードにおいては、船外機OMが発生する推進力によって船体2の位置が前後方向に変化させられる。前後方向の推進力が大きいときには、バウスラスタBTによる回頭性が減少するので、それを補うために併用モードへと遷移し、船外機OMの推進力を船体2の回頭のためにも利用するようにしている。
【0129】
なお、方位保持モードの場合と同様に、たとえば、ゲージ9に付属の入力装置10またはファンクションスイッチ61を操作することによって、目標方位の変更が可能であってもよい(目標方位変更機能)。この場合に、目標方位の変更に伴って、第1遷移条件(ステップS24)または第2遷移条件(ステップS25)が充足されると、併用モードに遷移する(ステップS26)。また、併用モードに遷移した後、第3遷移条件(ステップS28)および第4遷移条件(ステップS29)が充足されると、バウスラスタモードに遷移する(ステップS30)。なお、目標方位が変更されたときには、図10の場合と同様の処理によって、バウスラスタモードと併用モードとの間で遷移してもよい。
【0130】
図13は、ルート追従保持モードにおける非連携モードと連携モードとの比較を示す。非連携モードでは、船体2の方位を保持するために船外機OMの推進力によって船体2にモーメントを与え、さらに船体2の前後方向の位置制御にも船外機OMの推進力が用いられる。そのため、位置制御のための推進力が不足する場合があり、それにより、参照符号96で示すように、船体2の経路が設定ルート95から大きくずれる場合がある。連携モードでは、バウスラスタモードでの制御が支配的になり、その間、船体2の方位の制御はバウスラスタBTが担い、船体2の位置制御を船外機OMが担う。それにより、参照符号97で示すように、船体2の経路を設定ルート95に精度良く従わせることができる。参照符号951,952,952は、設定ルート95を規定する通過点を表す。
【0131】
図14は、自動操舵中の方位制御の特徴を説明するためのフローチャートである。ここでは、一例として、連携モード中に船体2の方位を維持する船首保持モード(Heading Hold)による自動操舵を行う場合の方位制御を説明する。航走速度が充分に大きければ、船外機OMを転舵させることによって、船体2の方位を維持しながら前進させることができる。一方、所定速度(たとえば5km/h)以下の極低速航走時には、船外機OMのシフト機構24を間欠的にシフトインさせることにより、エンジン23の動力を間欠的にプロペラ20に伝達する間欠シフト運転が行われる。プロペラ20に動力が伝達されない期間には、船外機OMは推進力を発生しないので、船外機OMを転舵しても船体2に対して有効な回頭モーメントを与えることができない。
【0132】
そこで、航走速度が所定値以下になると(または間欠シフト運転が開始されると)(ステップS41:YES)、メインコントローラ50は、バウスラスタBTを駆動して方位制御を実行する(ステップS42)。バウスラスタBTを駆動することによって、シフトイン状態かシフトアウト状態かによらずに、すなわち、船外機OMの推進力が船体2に伝達されているかどうかによらずに、船体2を回頭させることができるので、船体2の方位を目標方位に維持することができる。
【0133】
前進中に船首を保持する船首保持モードでの極低速時の方位制御は、バウスラスタモードのみで行ってもよく、前述の位置保持モード(図7参照)の場合と同様に、第1~第4遷移条件に応じて、バウスラスタモードと併用モードとでモード遷移してもよい。極低速航走時に外乱によってバウスラスタBTの推進力のみでは目標方位に船首を向けられない場合には、併用モードに遷移することにより、船首方位を維持しやすくなる。
【0134】
図15は、バウスラスタBTの出力レベルの設定に関する特徴を説明するための図である。たとえば、入力装置10を操作することによって、使用者(操作者)は、バウスラスタBTの出力レベル(出力上限)を設定することができる。それにより、使用者は、バウスラスタBTによって発生する回頭モーメントを好みの大きさに調整することができる。この例では、レベル(Lv)1~5の5段階での設定を行うことができ、かつ各レベルで低(Low)、中(Medium)および高(High)の3段階に切り換えることができる。図15中の数値は、バウスラスタの出力レベルの最大値を100%として表してある。この実施形態では、入力装置10は、出力上限設定ユニットの一例である。
【0135】
メインコントローラ50は、こうして設定された出力レベルを上限値としてバウスラスタBTを駆動するための推進力指令をモータコントローラ43に与える。
【0136】
たとえば、レベル5-高(High)に設定されると、バウスラスタBTの最大出力値(100%)までを利用するようにバウスラスタBTが制御される。したがって、バウスラスタBTによって大きな回頭モーメントを得ることができるので、優れた運動性能を実現できる。その一方で、バウスラスタBTの電動モータ42の消費電力が大きくなるのでバッテリ(図示せず)が短時間に消費される。また、電動モータ42の発熱量が大きくなる。
【0137】
一方、レベル1-低(Low)に設定されると、バウスラスタBTの出力上限が抑制されるので、バウスラスタBTによって生成される回頭モーメントは比較的小さくなる。その一方で、バウスラスタBTの消費電力を抑制でき、かつ電動モータ42の発熱量を抑制できるので、バウスラスタBTを利用できる時間(稼働時間)が長くなるメリットがある。
【0138】
この実施形態では、前述の第1遷移条件における第1閾値は、バウスラスタBTの出力レベルの設定に連動して変更される。すなわち、出力レベルが大きいほど、第1閾値は大きな値に設定される。また、この実施形態では、前述の第3遷移条件における第3閾値も、バウスラスタBTの出力レベルの設定に連動して変更される。すなわち、出力レベルが大きいほど、第3閾値は大きな値に設定される。このように、第1閾値および/または第3閾値が出力レベルの設定に応じて自動的に変更されることにより、使用者が追加の設定操作を行わなくても、バウスラスタモードと併用モードとを適切に遷移させることができ、精度の高い方位制御を行える。
【0139】
以上、この発明の一実施形態について説明してきたが、この発明は、さらに他の形態でも実施することができる。
【0140】
たとえば、前述の実施形態では、2機の船外機OMが船尾3に備えられる構成について説明したが、船外機OMの数は1機であってもよく、3機以上であってもよい。また、前述の実施形態では、エンジン船外機の例について主として説明したが、電動船外機が用いられてもよい。さらに、推進機は、船外機である必要はなく、船内機、船内外機(スターンドライブ)、ウォータジェット等の他の形態であってもよい。
【0141】
また、前述の実施形態では、左右方向のみの推進力の発生が可能なバウスラスタBTを用いる例を示したが、電動トローリングモータのように、転舵可能な推進機を船首に備え、左右方向に推進力を発生する推進機を代わりに用いてもよい。すなわち、本発明におけるバウスラスタは、船首に備えられ左右方向に推進力を発生できる推進機であり、左右方向以外の方向に推進力を発生できる推進機であってもよい。
【0142】
さらに、前述の実施形態では、船外機OMおよびバウスラスタBTを連携制御する連携モードと、このような連携を行わない非連携モードとを有する船舶推進システム100について説明したが、非連携モードは省かれてもよい。
【0143】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0144】
1:船舶、2:船体、3:船尾、9:ゲージ、10:入力装置、18:ジョイスティックユニット、20:プロペラ、23:エンジン、24:シフト機構、25:転舵アクチュエータ、26:転舵機構、40:プロペラ、42:電動モータ、43:モータコントローラ、50:メインコントローラ、52:GPS受信機、53:方位センサ、60:アプリケーションスイッチパネル、61:ファンクションスイッチ、100:船舶推進システム、BT:バウスラスタ、OM:船外機、OMs:右船外機、OMp:左船外機
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A-5B】
図5C-5D】
図6A-6C】
図6D-6E】
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15