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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068492
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】飛行体、及び荷役方法
(51)【国際特許分類】
   B64C 25/36 20060101AFI20240513BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20240513BHJP
   B64C 27/28 20060101ALI20240513BHJP
   B64C 25/10 20060101ALI20240513BHJP
   B64D 1/22 20060101ALI20240513BHJP
   B64C 17/02 20060101ALI20240513BHJP
   B64D 9/00 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
B64C25/36
B64C39/02
B64C27/28
B64C25/10
B64D1/22
B64C17/02
B64D9/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178994
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】中川 勇
(72)【発明者】
【氏名】阿部 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】利根川 大
(72)【発明者】
【氏名】森崎 雄貴
(57)【要約】
【課題】種々の環境下で柔軟に荷役を行うことが可能な汎用性の高い飛行体を提供する。
【解決手段】飛行体は、機体と、機体に設けられた推力装置と、機体から外側に向かって突出する複数の当接部材と、当接部材の少なくとも一つが障害物に対して当接方向一方側から当接している際に、当接方向一方側に向かって推力を発生させる当接推力発生装置と、機体に設けられて、貨物を吊架可能な吊架部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体と、
該機体に設けられた推力装置と、
前記機体から外側に向かって突出する複数の当接部材と、
該当接部材の少なくとも一つが障害物に対して当接方向一方側から当接している際に、前記当接方向一方側に向かって推力を発生させる当接推力発生装置と、
前記機体に設けられて、貨物を吊架可能な吊架部と、
を備える飛行体。
【請求項2】
前記推力装置は、その推力方向を変化させることが可能な推力方向変更部を有し、該推力方向変更部が前記当接推力発生装置を構成する請求項1に記載の飛行体。
【請求項3】
前記当接部材は、
前記機体から外側に向かって延びる支持部と、
該支持部の先端から突出するとともに、回動軸を中心として回動可能な回動突出部と、
を有する請求項1又は2に記載の飛行体。
【請求項4】
前記支持部は、自身の延在する方向に伸縮可能である請求項3に記載の飛行体。
【請求項5】
前記吊架部に併設されたウエイトと、
前記吊架部を前記機体の中心軸と交差する第一方向に移動可能に支持するとともに、前記第一方向における前記吊架部の移動した側とは反対側に向かってウエイトを移動させる移動機構と、
をさらに備える請求項1に記載の飛行体。
【請求項6】
前記移動機構は、
前記機体に固定され、前記第一方向に延びる主レールと、
該主レールに入れ子状に接続されて前記第一方向に進退動可能であるとともに前記吊架部を支持する第一副レールと、
前記主レールに入れ子状に接続されて前記第一方向に進退動可能であるとともに前記ウエイトを支持する第二副レールと、
を有する請求項5に記載の飛行体。
【請求項7】
前記移動機構は、前記吊架部、及び前記ウエイトを、前記機体の前記中心軸回りに回動可能に支持する回動部をさらに有する請求項5又は6に記載の飛行体。
【請求項8】
請求項1に記載の飛行体を用いて荷役作業を行う荷役方法であって、
前記飛行体を前記障害物の近傍まで飛行させるステップと、
前記当接部材の先端を前記障害物に当接方向一方側から当接させるステップと、
前記当接推力発生装置が発生させる前記当接方向一方側への前記推力によって前記当接部材を前記障害物に押圧するステップと、
前記貨物を積み下ろしするステップと、
を含む荷役方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、飛行体、及び荷役方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マルチコプターやドローン等の無人の飛行体を用いて、建築資材や貨物等を運搬する技術に注目が集まっている。下記特許文献1に記載された技術では、遠隔操作可能な飛行体を使って、資材の大きさや形状に限定されることなく、安定して資材を空中運搬することが可能とされている。具体的には、この飛行体は、機体の中心下部に吊架部を有する。吊架部によって貨物を吊り下げた状態で運搬と積み下ろしができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-007371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の吊架部を機体の中心下部に有する場合、例えば壁等の障害物の近傍で貨物の積み下ろしを行おうとすると、貨物の重量バランスによっては機体の姿勢制御が難しくなり、貨物を壁際に十分に近づけることができない。このため、飛行体の使用できる環境が限定的になってしまうという課題があった。
【0005】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、種々の環境下で柔軟に荷役を行うことが可能な汎用性の高い飛行体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る飛行体は、機体と、該機体に設けられた推力装置と、前記機体から外側に向かって突出する複数の当接部材と、該当接部材の少なくとも一つが障害物に対して当接方向一方側から当接している際に、前記当接方向他方側に向かって推力を発生させる当接推力発生装置と、を備える。
【0007】
本開示に係る荷役方法は、上記の飛行体を用いて荷役作業を行う荷役方法であって、前記飛行体を前記障害物の近傍まで飛行させるステップと、前記当接部材の先端を前記障害物に前記当接方向一方側から当接させるステップと、前記当接推力発生装置が発生させる前記当接方向他方側への前記推力によって前記当接部材を前記障害物に押圧するステップと、前記貨物を積み下ろしするステップと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、種々の環境下で柔軟に荷役を行うことが可能な汎用性の高い飛行体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の第一実施形態に係る飛行体の構成を示す側面図である。
図2】本開示の第一実施形態に係る荷役方法の各ステップを示すフローチャートである。
図3】本開示の第一実施形態に係る推力装置の変形例を示す拡大図である。
図4】本開示の第二実施形態に係る飛行体の構成を示す側面図である。
図5】本開示の第二実施形態に係る移動機構の構成を示す平面図である。
図6】本開示の第二実施形態に係る飛行体において、移動機構を伸長させた際の様子を示す側面図である。
図7】本開示の第二実施形態に係る飛行体の変形例を示す側面図である。
図8】本開示の第二実施形態に係る当接部材の変形例を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第一実施形態>
以下、本開示の第一実施形態に係る飛行体1、及び荷役方法について、図1図2を参照して説明する。この飛行体1は、例えば建設現場等で、貨物80としての建設資材を運搬するために用いられる。なお、建設資材以外の貨物80の運搬に用いることも可能である。
【0011】
(飛行体の構成)
図1に示すように、飛行体1は、機体10と、推力装置12と、当接部材60と、当接推力発生装置70と、吊架部30と、を備える。
【0012】
(機体の構成)
機体10は、中心軸Xを中心とする円盤状、又は多角形板状、矩形板状をなしている。ここで言う中心軸Xとは、機体10の幾何学的な重心を通る線を指す。機体10の内部には、送受信装置、バッテリー、ジャイロセンサー等の様々な装置が格納されている。
【0013】
(推力装置の構成)
推力装置12は、機体10から外側に向かって突出するアーム部13と、このアーム部13の先端に取り付けられたファン14と、を有する。推力装置12の数は設計や仕様に応じて適宜決定されてよい。ファン14は、プロペラ15と、電動機16と、を有し、電動機16に電流を供給することでプロペラ15が回転駆動される。プロペラ15が回転することによって空気が圧送され、主として中心軸X方向への揚力と、この揚力に交差する方向への推進力が発生する。つまり、プロペラ15の推力方向は可変であることが望ましい。
【0014】
(当接部材の構成)
当接部材60は、機体10、又は推力装置12からさらに外側に向かって突出する棒状をなしている。当接部材60は、機体10の中心軸Xに対する周方向に間隔をあけて複数設けられている。それぞれの当接部材60は、推力装置12から延びる支持部61と、支持部61の先端に設けられた球状部62と、を有する。支持部61は、推力装置12のプロペラ15の回転半径と干渉しない位置に設けられ、かつ干渉しない方向に延びている。球状部62は、支持部61の先端を中心とする球形をなしている。球状部62は、例えば弾性変形可能な樹脂材料等で形成されていることが望ましい。
【0015】
(当接推力発生装置)
機体10には、上記の推力装置12とは別に、当接推力発生装置70が設けられている。当接推力発生装置70は、一例として機体10の側面に複数設けられている。具体的には、中心軸Xに対する周方向に間隔をあけて複数の当接推力発生装置70が設けられている。当接推力発生装置70は、上述の当接部材60を障害物90に当接させた際に、当接部材60をさらに障害物90に向けて押圧させるように推力を発生させる。以下では、当接部材60が障害物90に当接する方向を当接方向Aと呼ぶ。つまり、当接推力発生装置70は、当接方向A一方側から当接部材60が障害物90に当接している際に、同じ当接方向A一方側に向かって推力を発生させる。当接推力発生装置70の具体例としては、推力装置12と同様のプロペラ15を有する装置が考えられる。
【0016】
(吊架部の構成)
吊架部30は、機体10の中心軸X上における下部に設けられている。吊架部30は、例えばフック状をなすことで貨物80を吊り下げることが可能な部材である。
【0017】
(荷役方法)
次いで、上記の飛行体1を用いて貨物80を運搬する荷役方法について、図2を参照して説明する。同図に示すように、この荷役方法では、ステップS1で、壁等の障害物90の近傍まで飛行体1を飛行させる。次に、ステップS2では、当接部材60の先端を当接方向A一方側から障害物90の表面に当接させる。ここで、少なくとも2つ以上の当接部材60が障害物90に当接していることが望ましい。さらに、ステップS3では、当接推力発生装置70によって、当接方向A一方側に向かって推力を発生させる。これにより、当接部材60の先端が障害物90に対して当該推力の分だけ押圧された状態となる。したがって、機体10が当接部材60と障害物90との接点と、推力装置12による上昇力(推力)とによって支持されることとなる。この状態で、貨物80の積み下ろしを行う(ステップS4)。以上により、本実施形態に係る荷役方法の全ステップが完了する。
【0018】
(作用効果)
続いて、上記の飛行体1による貨物80の運搬について説明する。飛行体1によって貨物80を運搬する際には、まず吊架部30に貨物80を取り付ける。この作業は飛行体1をホバリングさせた状態で行うことが望ましい。その後、遠隔操縦によって飛行体1を目的地まで飛行させる。目的地に到着したら、吊架部30と貨物80の接続を解除して、当該貨物80を下ろす。これにより、通常時の貨物80の運搬が完了する。
【0019】
ところで、壁等の障害物90の近傍に貨物80を運搬したいという要請もある。この場合、貨物80の重量バランスによっては機体10の姿勢制御が難しくなり、貨物80を壁際に十分に近づけることができない。このため、飛行体1の使用できる環境が限定的になってしまうという課題があった。その結果、飛行体1による荷役作業が制約を受け、作業効率の向上を図ることができないという課題があった。この課題を解決するために、本実施形態に係る飛行体1、及び荷役方法では、上述の各構成と各ステップを採用している。
【0020】
上記構成、及びによれば、当接部材60を当接方向A一方側から障害物90に当接させた状態で、当接推力発生装置70によって当接方向A一方側に推力を発生させることで、飛行体1全体が障害物90に押圧された状態となる。つまり、機体10は、当接部材60と障害物90との接点と、推力装置12による上昇力(推力)とによって支持されることとなる。これにより、飛行体1の姿勢が安定するため、荷役作業を円滑かつ効率的に進めることが可能となる。特に、障害物90の近傍では、推力装置12による推力が影響を受けやすいものの、上記構成によれば、当接部材60による支持が得られることによって、機体10の姿勢が不安定化する可能性を大きく低減することができる。
【0021】
以上、本開示の第一実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成、及び方法に種々の変更と改修を施すことが可能である。
例えば、図3に変形例として示すように、推力装置12に、その推力方向を変化させることが可能な推力方向変更部17をさらに設けることも可能である。この場合、推力方向を変更することによって、上述した当接方向A一方側に向かう推力を発生させることができる。即ち、推力方向変更部17を有する推力装置12が、上述の当接推力発生装置70を兼ねることとなる。この構成によれば部品点数を削減することができるため、飛行体1の製造コストやメンテナンスコストを低減することができる。また、外装部品が削減されることで、機体10の空力性能低下が抑制されるため、航続距離や航行速度を従前どおりに維持することも可能となる。
【0022】
さらに、機体10に、機体10の姿勢をモニターするジャイロセンサーを設け、当該ジャイロセンサーと当接推力発生装置70とを連動させる構成を採ることも可能である。この場合、ジャイロセンサーが機体10の姿勢変化を検出すると、当接推力発生装置70が動作して、当接部材60を障害物に当接・押圧させる。これにより、不用意な姿勢変化が生じた場合に、当接部材60、及びジャイロセンサーを用いて、機体10の姿勢を安定化させることが可能となる。したがって、飛行体1を用いた荷役作業の円滑性や効率性をさらに向上させることができる。
【0023】
<第二実施形態>
続いて、本開示の第二実施形態について、図4から図6を参照して説明する。なお、上述の第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。図4に示すように、本実施形態では、当接部材60が自身の延在方向に伸縮可能であることに加えて、機体10の下部に、吊架部30と併設されるようにして、移動機構20と、ウエイト40と、がさらに設けられている。
【0024】
具体的には、当接部材60は、上述した支持部61がテレスコピックに伸縮可能な構成を有している。したがって、図4中に示すように、機体10の幅方向の両側に障害物90が存在する場合には、これらに近接するようにして一対以上の当接部材60を伸長させることが可能とされている。なお、障害物90が一方側のみに存在する場合であっても同様に当接部材60を伸長させることが可能である。
【0025】
(移動機構の構成)
機体10本体の下部には、移動機構20が設けられている。移動機構20は、吊架部30、及びウエイト40を第一方向Dに移動可能に支持する装置である。図5に示すように、移動機構20は、主レール21と、第一副レール22と、第二副レール23と、を有する。主レール21は、第一方向Dに延びるとともに、機体10の下部に固定されている。ここで言う第一方向Dとは、機体10の中心軸Xに直交する水平方向を指す。
【0026】
第一副レール22、及び第二副レール23は、主レール21に対して入れ子状に接続されている。第一副レール22は、主レール21の下面側で第一方向Dに進退動可能である。第二副レール23は、主レール21の上面側で第一方向Dに進退動可能である。なお、図5の例では、それぞれ1つずつの第一副レール22、及び第二副レール23を有する構成について示しているが、設計や仕様に応じて、それぞれ複数ずつの第一副レール22、及び第二副レール23を設けることも可能である。
【0027】
第一副レール22、及び第二副レール23は、不図示の駆動源によって第一方向Dに進退動可能である。駆動源への指令信号は、遠隔にいる操縦者の送信機によって生成・送信される。つまり、機体10の操縦と合わせて、移動機構20の動作を遠隔から行うことが可能とされている。
【0028】
吊架部30は、上記の第一副レール22の下面に設けられている。第一副レール22が第一方向Dに移動すると、吊架部30、及び貨物80も当該第一方向Dに移動する。
【0029】
(ウエイトの構成)
第二副レール23には、ウエイト40が一体に取り付けられている。ウエイト40は、例えばタングステン等の密度の高い金属材料で形成されていることが望ましい。第二副レール23が第一方向Dに移動するとウエイト40も当該第一方向Dに移動する。より具体的には、上記の吊架部30、及び貨物80が第一方向Dの一方側に移動した場合には、第二副レール23、及びウエイト40は第一方向Dの他方側に移動するように構成されている。つまり、吊架部30、及び貨物80の移動によって生じる重心の移動、及びモーメントが、反対方向へのウエイト40の移動によって是正されるように構成されている。したがって、望ましくは、第一副レール22の移動量と、第二副レール23の移動量は同等であるか、又は比例関係にある。
【0030】
(作用効果)
上記構成によれば、当接部材60が伸縮可能であることによって、障害物90に挟まれた狭隘な空間や、反対に障害物90同士の間の距離が大きい空間でも、当接部材60をこれら障害物90に当接させて機体10の姿勢を安定化させることができる。これにより、荷役作業の効率化が図られるとともに、荷役作業に際しての飛行体1の汎用性を向上させることも可能となる。
【0031】
さらに、上記構成によれば、移動機構20を動作させて、貨物80が吊架された吊架部30を第一方向Dに移動させることで、機体10の中心軸Xから離れた位置でも当該貨物80を積み下ろしすることができる。この時、貨物80が中心軸Xの位置から離れたことによって機体10の重心移動やモーメントが生じても、移動機構20によってウエイト40を第一方向Dの反対側(つまり、貨物80の移動した側とは反対側)に移動させることで、重心位置の変化を是正し、モーメントを打ち消すことが可能となる。これにより、障害物90の近傍でも、機体10の姿勢に不用意な変化を生じることなく、安定的に貨物80の積み下ろしを行うことができる。したがって、荷役作業に際しての飛行体1の汎用性が高まり、作業効率を大きく向上させることが可能となる。
【0032】
また、上記構成によれば、主レール21に対して、第一副レール22と第二副レール23とが第一方向Dに入れ子状に接続されていることで、これら第一副レール22と第二副レール23の移動方向を第一方向Dのみに限定することができる。したがって、操縦者は、障害物90に対する機体10の向きさえ決定すれば、移動機構20によってどの方向に貨物80を移動させるかを決定する必要がない。つまり、移動機構20の操作が単純化されるため、飛行体1による荷役作業をより容易に行うことができる。さらに、これら主レール21、第一副レール22、及び第二副レール23が互いに入れ子状に接続されていることで、主レール21上に第一副レール22と第二副レール23が格納された状態での寸法体格を小さく抑えることもできる。これにより、飛行体1の空力性能の低下が最小限に抑えられ、航続距離や航行速度を従前どおりに維持することができる。
【0033】
以上、本開示の第二実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。例えば、上記第二実施形態では、移動機構20が機体10に対して固定されている例について説明した。しかしながら、変形例として図7に示すように、移動機構20を機体10に対して回動可能に支持する回動部50をさらに設けることも可能である。回動部50を動作させることによって、移動機構20自体が機体10の中心軸X回りに回動できるように構成されている。この構成によれば、回動部50によって吊架部30、及びウエイト40を回動させることで、機体10自体の姿勢や向きを変えずに、貨物80が積み下ろしされる位置や方向を柔軟に調節することができる。これにより、荷役作業の正確性や効率性をさらに向上させることが可能となる。
【0034】
また、上記第二実施形態では、ウエイト40が第二副レール23に固定されている例について説明した。しかしながら、ウエイト40が第二副レール23に対して着脱可能に取り付けられていてもよい。この場合、貨物80の重量に応じて、重さの異なる複数のウエイト40の中から最適なものを選択して第二副レール23に取り付けることができる。したがって、貨物80の重量によらず、安定的に重心位置の是正を行うことができる。その結果、荷役作業に対する飛行体1の汎用性をより一層向上させることが可能となる。
【0035】
加えて、当接部材60の変形例として図8に示すような構成を採ることも可能である。同図の例では、当接部材60の球状部62に、回動突出部63がさらに設けられている。回動突出部63は、球状部62の外表面から突出するとともに、球状部62の中心位置に設けられた回動軸を中心として回動可能である。この構成によれば、例えばアールを有する湾曲面等の障害物90に近接して荷役を行う際に、湾曲面のアールに応じて回動突出部63の向き(回動角度)を変えることで、当該湾曲面に対して垂直方向から押圧力をかけることができる。これにより、飛行体1の姿勢をさらに安定させることができる。
【0036】
<付記>
各実施形態に記載の飛行体1、及び荷役方法は、例えば以下のように把握される。
【0037】
(1)第1の態様に係る飛行体1は、機体10と、該機体10に設けられた推力装置12と、前記機体10から外側に向かって突出する複数の当接部材60と、該当接部材60の少なくとも一つが障害物90に対して当接方向A一方側から当接している際に、前記当接方向A一方側に向かって推力を発生させる当接推力発生装置70と、前記機体10に設けられ、貨物80を吊架可能な吊架部30と、を備える。
【0038】
上記構成によれば、当接部材60を当接方向A一方側から障害物90に当接させた状態で、当接推力発生装置70によって当接方向A一方側に推力を発生させることで、飛行体1全体が障害物90に押圧された状態となる。これにより、飛行体1の姿勢が安定するため、荷役作業を円滑かつ効率的に進めることが可能となる。
【0039】
(2)第2の態様に係る飛行体1は、(1)の飛行体1であって、前記推力装置12は、その推力方向を変化させることが可能な推力方向変更部を有し、該推力方向変更部が前記当接推力発生装置70を構成する。
【0040】
上記構成によれば、推力方向変更部が当接推力発生装置70を兼ねることによって、部品点数が削減され、製造コストやメンテナンスコストを低減することができる。
【0041】
(3)第2の態様に係る飛行体1は、(1)又は(2)の飛行体1であって、前記当接部材60は、前記機体10から外側に向かって延びる支持部61と、該支持部61の先端から突出するとともに、回動軸を中心として回動可能な回動突出部63と、を有する。
【0042】
上記構成によれば、例えばアールを有する湾曲面等の障害物90に近接して荷役を行う際に、湾曲面のアールに応じて回動突出部63の向き(回動角度)を変えることで、当該湾曲面に対して垂直方向から押圧力をかけることができる。これにより、飛行体1の姿勢をさらに安定させることができる。
【0043】
(4)第4の態様に係る飛行体1は、(3)の飛行体1であって、前記支持部61は、自身の延在する方向に伸縮可能である。
【0044】
上記構成によれば、支持部61が伸縮可能であることによって、障害物90との距離に合わせて当接部材60の長さを変化させることができる。これにより、荷役作業に際しての飛行体1の汎用性をさらに高めることができる。
【0045】
(5)第2の態様に係る飛行体1は、(1)から(4)のいずれか一態様に係る飛行体1であって、前記吊架部30に併設されたウエイト40と、前記吊架部30を前記機体10の中心軸Xと交差する第一方向Dに移動可能に支持するとともに、前記第一方向Dにおける前記吊架部30の移動した側とは反対側に向かってウエイト40を移動させる移動機構20と、をさらに備える。
【0046】
上記構成によれば、貨物80が吊架された吊架部30を第一方向Dに移動させることで、機体10の中心軸Xから離れた位置でも当該貨物80を積み下ろしすることができる。この時、貨物80が中心軸Xの位置から離れたことによって機体10の重心移動が生じても、移動機構20によってウエイト40を第一方向Dの反対側に移動させることで、重心位置を是正することが可能となる。
【0047】
(6)第6の態様に係る飛行体1は、(5)の飛行体1であって、前記移動機構20は、前記機体10に固定され、前記第一方向Dに延びる主レール21と、該主レール21に入れ子状に接続されて前記第一方向Dに進退動可能であるとともに前記吊架部30を支持する第一副レール22と、前記主レール21に入れ子状に接続されて前記第一方向Dに進退動可能であるとともに前記ウエイト40を支持する第二副レール23と、を有する。
【0048】
上記構成によれば、主レール21に対して、第一副レール22と第二副レール23とが第一方向Dに入れ子状に接続されていることで、これら第一副レール22と第二副レール23の移動方向を第一方向Dのみに限定することができる。つまり、移動機構20の操作が単純化されるため、飛行体1の操縦を容易に行うことができる。さらに、これらが入れ子状に接続されていることで、第一副レール22と第二副レール23が格納された状態での寸法体格を小さく抑えることもできる。
【0049】
(7)第7の態様に係る飛行体1は、(5)又は(6)の飛行体1であって、前記移動機構20は、前記吊架部30、及び前記ウエイト40を、前記機体10の前記中心軸X回りに回動可能に支持する回動部50をさらに有する。
【0050】
上記構成によれば、回動部50によって吊架部30、及びウエイト40を回動させることで、機体10の姿勢を変えずに、貨物80が積み下ろしされる位置や方向を柔軟に調節することができる。
【0051】
(8)第8の態様に係る荷役方法は、(1)から(7)のいずれか一態様に係る飛行体1を用いて荷役作業を行う荷役方法であって、前記飛行体1を前記障害物90の近傍まで飛行させるステップS1と、前記当接部材60の先端を前記障害物90に当接方向A一方側から当接させるステップS2と、前記当接推力発生装置70が発生させる前記当接方向A一方側への前記推力によって前記当接部材60を前記障害物90に押圧するステップS3と、前記貨物80を積み下ろしするステップS4と、を含む。
【0052】
上記方法によれば、当接部材60を当接方向A一方側から障害物90に当接させた状態で、当接推力発生装置70によって当接方向A他方側に推力を発生させることで、飛行体1全体が障害物90に押圧された状態となる。これにより、飛行体1の姿勢が安定するため、荷役作業を円滑かつ効率的に進めることが可能となる。
【符号の説明】
【0053】
1…飛行体
10…機体
12…推力装置
13…アーム部
14…ファン
15…プロペラ
16…電動機
17…推力方向変更部
20…移動機構
21…主レール
22…第一副レール
23…第二副レール
30…吊架部
40…ウエイト
50…回動部
60…当接部材
61…支持部
62…球状部
63…回動突出部
70…当接推力発生装置
80…貨物
90…障害物
A…当接方向
D…第一方向
X…中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8