(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068500
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 21/14 20060101AFI20240513BHJP
【FI】
H02K21/14 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179010
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩津 勇
(72)【発明者】
【氏名】難波 雅史
(72)【発明者】
【氏名】長田 育充
(72)【発明者】
【氏名】北山 武志
(72)【発明者】
【氏名】服部 宏之
(72)【発明者】
【氏名】阿久根 亮
(72)【発明者】
【氏名】柴田 寛之
【テーマコード(参考)】
5H621
【Fターム(参考)】
5H621AA03
5H621BB10
5H621HH01
5H621PP01
(57)【要約】
【課題】モータシステムを大型化させることなく、ロータの回動動作とロック機能を同時に実現する回転電機を提供する。
【解決手段】第1ロータ16と、回転軸14の軸方向に沿って第1ロータ16と分割され、回転軸14を回転中心として第1ロータ16に対して相対的に回動可能な第2ロータ18と、回転軸14に設けられた中空領域内に軸方向に駆動可能な回動ロックシャフト38と、回動ロックシャフト38の動きに連動して回転軸14の径方向に沿って駆動可能であり、回転軸14と第2ロータ18とが一体に回転するロック状態と、回転軸14に対して第2ロータ18を相対的に回動させる回動状態と、を切り替える伝達プレート34と、を備え、回動ロックシャフト38によって伝達プレート34に与えられた荷重によって第2ロータ18の回動トルクが補助される、及び/又は、第2ロータ18の回動トルクによって伝達プレート34への荷重が補助される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータと、前記ステータに対向して配置されたロータと、を備える回転電機であって、
前記ロータは、回転軸に固定された第1ロータと、前記回転軸の軸方向に沿って前記第1ロータと分割され、前記回転軸を回転中心として前記第1ロータに対して相対的に回動可能な第2ロータと、
前記回転軸に設けられた中空領域内に前記軸方向に駆動可能な回動ロックシャフトと、
前記回動ロックシャフトの動きに連動して前記回転軸の径方向に沿って駆動可能であり、前記回転軸と前記第2ロータとが一体に回転するロック状態と、前記回転軸に対して前記第2ロータを相対的に回動させる回動状態と、を切り替える伝達プレートと、
を備え、
前記回動ロックシャフトによって前記伝達プレートに与えられた荷重によって前記第2ロータの回動トルクが補助される、及び/又は、前記第2ロータの回動トルクによって前記伝達プレートへの荷重が補助されることを特徴とする回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機であって、
前記第2ロータの周方向に沿って径方向に高さが変化する斜面を備え、前記伝達プレートと前記斜面とが接触するロック補助構造を有することを特徴とする回転電機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回転電機であって、
前記第2ロータと共に回転し、前記伝達プレートが嵌まり込むことによって前記第2ロータと前記回転軸とを前記ロック状態とする溝部を備えることを特徴とする回転電機。
【請求項4】
請求項1に記載の回転電機であって、
前記伝達プレートは、前記第2ロータの回転軸を通って径方向に亘って設けられた貫通穴に配置されていることを特徴とする回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の移動体の駆動用モータには、小型・高効率と同時に、広い運転範囲が求められる。低速時のトルク増加による小型化のため、強力な磁石をロータに用いるなど、ロータの起磁力増加が行われている。しかしながら、起磁力の高いロータを用いた場合、高速走行時には弱め磁束制御が必要であり、当該制御に伴う電流の増加によりモータ効率が低下することが懸念される。
【0003】
そこで、運転状況に合わせてロータの起磁力を可変にするために、ロータを軸方向に分割したモータ構造が提案されている(特許文献1~5)。低速でトルクが必要な場合、軸方向の磁極の向きを揃え(同極:N極とN極及びS極とS極を揃えた状態)、起磁力を増加させる。高速で起磁力を抑制したい場合、軸方向の磁極の向きを変化させる(逆極:N極とS極を揃えた状態)。以下、磁極が揃った状態を「同極」、磁極が反対向きになった状態を「逆極」と示す。このようなモータ構造では、軸方向に分割したロータを捻って同極と逆極を切り替える回動動作と、同極及び逆極でモータとして駆動させるためにそれぞれのロータ状態を保持するためのロック機能が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-064942号公報
【特許文献2】特開2011-160631号公報
【特許文献3】特開2011-015523号公報
【特許文献4】特開2016-131450号公報
【特許文献5】特開2017-225231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1~3の技術では、回動動作とロック機能を同じ動力源(アクチュエータやオイルポンプ)で実現している。そのため、専用の外部アクチュエータや高圧オイルポンプを追加で設ける必要があり、モータシステムが大型化してしまう。特に、ロック機能に比べて、回動動作に必要な力(トルク)が大きいため、それに合わせた追加の構成要素が必要になる。また、バネによってロック機構を実現又は補助した場合、回動動作に必要な力が増してしまう。したがって、回動動作に必要な力(トルク)がさらに増大し、モータシステムがより大型化するという問題がある。
【0006】
また、上記特許文献4の技術では、回動動作をステータ巻線に通電する電流により行い、ロック機能は小型の電磁クラッチにより行う。また、上記特許文献5の技術では、回動動作をステータ巻線に通電する電流により行い、ロック機能にリミッタ(ストッパ)機能を追加して行う。これらの従来技術では、回動動作とロック機能の動力源を分けたことで、他の従来構造に比べてモータシステムを小型にできる。しかしながら、モータ構造の外側にロックのための機構を追加で設けており、依然としてモータシステム全体は大型化するという問題がある。さらに、リミッタ機能を追加してロック機能を実現する構成では、位置検出センサの追加が必要である。加えて、ロック制御の応答性が悪い場合、ロックができない可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの態様は、ステータと、前記ステータに対向して配置されたロータと、を備える回転電機であって、前記ロータは、回転軸に固定された第1ロータと、前記回転軸の軸方向に沿って前記第1ロータと分割され、前記回転軸を回転中心として前記第1ロータに対して相対的に回動可能な第2ロータと、前記回転軸に設けられた中空領域内に前記軸方向に駆動可能な回動ロックシャフトと、前記回動ロックシャフトの動きに連動して前記回転軸の径方向に沿って駆動可能であり、前記回転軸と前記第2ロータとが一体に回転するロック状態と、前記回転軸に対して前記第2ロータを相対的に回動させる回動状態と、を切り替える伝達プレートと、を備え、前記回動ロックシャフトによって前記伝達プレートに与えられた荷重によって前記第2ロータの回動トルクが補助される、及び/又は、前記第2ロータの回動トルクによって前記伝達プレートへの荷重が補助されることを特徴とする回転電機である。
【0008】
また、前記第2ロータの周方向に沿って径方向に高さが変化する斜面を備え、前記伝達プレートと前記斜面とが接触するロック補助構造を有することが好適である。
【0009】
また、前記第2ロータと共に回転し、前記伝達プレートが嵌まり込むことによって前記第2ロータと前記回転軸とを前記ロック状態とする溝部を備えることが好適である。
【0010】
また、前記伝達プレートは、前記第2ロータの回転軸を通って径方向に亘って設けられた貫通穴に配置されていることが好適である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、モータシステムを大型化させることなく、ロータの回動動作とロック機能を実現する回転電機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態における回転電機システムの構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態におけるロータの構成を示す断面図である。
【
図3】本発明の実施の形態におけるロータの構成を示す断面斜視図である。
【
図4】本発明の実施の形態におけるロータの作用を説明する断面図である。
【
図5】本発明の実施の形態におけるロータの作用を説明する断面斜視図である。
【
図6】本発明の実施の形態における伝達プレートの構成を示す図である。
【
図7】本発明の実施の形態におけるロータの作用を説明する断面図である。
【
図8】本発明の実施の形態におけるロータの構成の変形例を示す断面斜視図である。
【
図9】本発明の実施の形態における回転数に対する逆起電圧割合及びトルク割合の変化を示す図である。
【
図10】本発明の実施の形態における回動動作中の特性の時間変化を示す図である。
【
図11】本発明の実施の形態における同極状態から逆極状態への切り替えタイミングを説明するための図である。
【
図12】本発明の実施の形態における逆極状態から同極状態への切り替えタイミングを説明するための図である。
【
図13】本発明の実施の形態における回動制御を説明するための図である。
【
図14】本発明の実施の形態における好適な回動制御を説明するための図である。
【
図15】本発明の実施の形態における同極状態から逆極状態への遷移制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態における回転電機システム100は、
図1に示すように、回転電機102、駆動回路104、電源106及び制御装置108を含んで構成される。回転電機システム100は、例えばハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車等に搭載される。回転電機システム100は、駆動力を発生させるモータとして使用可能であると共に、発電機、モータ及び発電機の両方の機能をもつモータジェネレータとしても使用可能である。
【0014】
回転電機102は、筐体10、ステータ12、回転軸14、第1ロータ16、第2ロータ18、ロック機構20、軸受22及びロック駆動機構24を含んで構成される。なお、軸受22を設けず、回転軸14に対して第2ロータ18を摺動させるような構成としてもよい。
【0015】
回転電機102は、制御装置108に制御される駆動回路104によって、電源106から供給される電力を用いて回転軸14に対して駆動力を発生させる。また、回転軸14に与えられた回転エネルギーを駆動回路104によって電力に変換して電源106へ回生させる。駆動回路104は、電源106からの電力を交流に変換するインバータを含んで構成することができる。電源106は、例えば二次電池を含む蓄電システムを含んで構成することができる。
【0016】
筐体10は、回転電機102を機械的に支持するための構成である。筐体10内に、ステータ12、回転軸14、第1ロータ16、第2ロータ18、ロック機構20、軸受22及びロック駆動機構24が収納される。
【0017】
ステータ12は、ステータコアとステータコイルを備える。ステータコアは、電磁鋼板を回転軸14の軸方向に積層した積層体からなる中空円筒形状の部材である。ただし、ステータコアを構成する材料は、電磁鋼板に限定されるものではなく、アモルファス金属、ナノ結晶軟磁性材料、圧粉磁芯等の磁性体とすることができる。ステータコイルは、ステータコアの内周面に設けられた複数のスロットに配置されたコイルである。駆動回路104を介して電源106からステータコイルに電流を流すことによって、ステータコイルに磁場を発生させることができる。
【0018】
回転軸14には、第1ロータ16及び第2ロータ18が軸方向に沿って間隔をおいて配置される。本実施の形態における回転電機システム100では、2つに分割された第1ロータ16a,16bの間に第2ロータ18が配置される。ただし、第1ロータ16及び第2ロータ18は、3分割構造に限定されるものではなく、軸方向に分割されて互いに相対的に回動できる構造であればよい。
【0019】
第1ロータ16a,16bは、回転軸14に固定されている。また、第2ロータ18は、回転軸14に対して回転方向において移動可能に設置されている。すなわち、第2ロータ18は、回転軸14に対して相対的に回転可能とされている。例えば、第2ロータ18は、軸受22を介して回転軸14に取りつけられており、軸受22によって回転軸14に対して回転可能とされている。
【0020】
第1ロータ16(16a,16b)は、回転軸14に固定される基部と、基部の外周側に電磁鋼板を軸方向に積層した積層体を備える。ただし、積層体を構成する材料は、電磁鋼板に限定されるものではなく、アモルファス金属、ナノ結晶軟磁性材料、圧粉磁芯等の磁性体とすることができる。
【0021】
第2ロータ18は、電磁鋼板を軸方向に積層した積層体を備える。ただし、積層体を構成する材料は、電磁鋼板に限定されるものではなく、アモルファス金属、ナノ結晶軟磁性材料、圧粉磁芯等の磁性体とすることができる。
【0022】
本実施の形態では、
図2の断面模式図に示すように、第1ロータ16及び第2ロータ18には周方向に沿って等間隔に磁石30が配置される。磁石30は、例えば、45°置きに交互にN極とS極とが入れ替わるように8極の磁石30が配置される。なお、
図2では代表的に第2ロータ18を示しており、磁石30の磁極の方向をそれぞれS極からN極に向かう矢印で示している。第1ロータ16についても磁石30の配置は同様である。ただし、
図2の断面模式図は磁石30の配置の一例を示したものであり、磁石30の配置はこれに限定されるものではない。
【0023】
さらに、第2ロータ18は、回転軸14に対して固定できるようにロック機構20が設けられる。本実施の形態では、第2ロータ18と回転軸14との間にロック機構20が設けられる。ロック機構20は、回転軸14内に設けられたロック駆動機構24によって駆動される。
【0024】
回転電機システム100の通常の運転時は、ロック機構20によって第2ロータ18を回転軸14に対して回転しないような状態として、第1ロータ16(16a,16b)及び第2ロータ18の両方が回転軸14の回転に寄与する状態とする。一方、界磁調整時は、ロック機構20を開放して第2ロータ18を回転軸14を回転中心として回転可能として、第1ロータ16(16a,16b)に対して第2ロータ18を相対的に回転させ、周方向の位置を調整することで、ロータ全体としての界磁を調整することができる。
【0025】
このような構成において、ロック機構20を結合状態として回転軸14に対して第1ロータ16(16a,16b)及び第2ロータ18が回転しない状態(通常運転状態)でステータ12のステータコイルに電流を流して回転磁界を形成することでステータ12に対して回転軸14を回転させる出力トルクを発生させることができる。また、逆に、回転軸14の回転エネルギーをステータ12のステータコイルに流れる電流に変換して回生させることができる。
【0026】
また、ロック機構20を開放状態して回転軸14に対して第2ロータ18が回転可能な状態(調整状態)でステータ12のステータコイルに流す電流を制御することで、第1ロータ16(16a,16b)から回転軸14へ出力トルクを発生させつつ、第1ロータ16(16a,16b)と第2ロータ18との磁極の相対位相角(スキュー角)を調整することができる。なお、ステータ12のステータコイルに流す電流はいわゆるベクトル制御することが好適である。
【0027】
以下、第1ロータ16a及び第1ロータ16bのN極と第2ロータ18のN極が軸方向に沿って揃い、第1ロータ16a及び第1ロータ16bのS極と第2ロータ18のS極が軸方向に沿った状態を同極という。また、第1ロータ16a及び第1ロータ16bのN極と第2ロータ18のS極が軸方向に沿って揃い、第1ロータ16a及び第1ロータ16bのS極と第2ロータ18のN極が軸方向に沿った状態を逆極という。
【0028】
図3~
図6を参照して、ロック機構20及びロック駆動機構24について説明する。ロック機構20は、ピン32、伝達プレート34及びハブ36を含んで構成される。また、ロック駆動機構24は、回動ロックシャフト38を含んで構成される。
【0029】
回転軸14は、第1ロータ16及び第2ロータ18の回転の軸方向に延びる中空領域14aを有する。回動ロックシャフト38は、ロック機構20に含まれるピン32が挿入されるピン孔38aを備えた円柱形状を有する。回動ロックシャフト38は、回転軸14の中空領域14aにおいて第2ロータ18の内周領域に該当する領域に配置される。回動ロックシャフト38は、アクチュエータ等の外部からの駆動力によって回転軸14の軸方向(
図3中の矢印方向)に移動可能に設けられる。
【0030】
ピン32は、回動ロックシャフト38に設けられたピン孔38aに挿入される。回動ロックシャフト38を回転軸14の軸方向に移動させると、回動ロックシャフト38と共にピン32も軸方向に移動する。
【0031】
伝達プレート34は、回転軸14と第2ロータ18とをロック状態にすると共に、回転軸14と第2ロータ18との間で動力を伝達するために設けられる部材である。伝達プレート34は、
図6に示すように、板状の部材である。伝達プレート34は、回動ロックシャフト38の中心軸を通って径方向に亘って設けられた貫通穴38b内に配置される。伝達プレート34は、貫通穴38b内において回転軸14(回動ロックシャフト38)の径方向に移動可能である。
【0032】
伝達プレート34の径方向の長さは、回転軸14の外径よりも大きくする。具体的には、伝達プレート34の径方向の長さは、伝達プレート34の一端がハブ溝36aに嵌合した状態において、他端が斜面36dに接触できる程度に回転軸14の外径よりも大きくする。また、伝達プレート34の径方向の長さは、回転電機システム100を同極から逆極又は逆極から同極にする回動動作中においてハブ溝36cの内周面に接触しない程度の大きさとする。
【0033】
伝達プレート34には、
図6に示すように、ピン32を通すための誘導穴34aが設けられる。誘導穴34aは、伝達プレート34が回動ロックシャフト38の貫通穴38bに配置されたときに、回転軸14の軸方向及び径方向の両方に対して斜めの方向に沿って設けられる。回動ロックシャフト38と共に移動するピン32が誘導穴34aに通された状態において回動ロックシャフト38と共にピン32が軸方向に移動した場合、伝達プレート34は
図6の移動方向と示した矢印の方向に誘導される。
【0034】
ハブ36は、円筒形状を有する部材である。ハブ36は、回転軸14と第2ロータ18のコアとの間に配置される。ハブ36の外周は第2ロータ18の内周と係合するように構成され、ハブ36は第2ロータ18と一体に回転する。
【0035】
ハブ36の内周面には、伝達プレート34の両端がそれぞれ嵌まり込むことができるハブ溝36aが設けられる。ハブ溝36aは、第1ロータ16a及び第1ロータ16bに対して第2ロータ18が同極となる状態において伝達プレート34の一端が嵌まり込む位置、及び、第1ロータ16a及び第1ロータ16bに対して第2ロータ18が逆極となる状態において伝達プレート34の他端が嵌まり込む位置に設けられる。
【0036】
ハブ36の内周面には、さらに回動範囲を規制するハブ溝36bが設けられる。ハブ溝36bには回転軸14の外周に設けられた突起(キー部)14cが嵌まり、ハブ溝36b内において突起14cが動ける範囲において回転軸14に対する第2ロータ18の回動範囲が規制される。
【0037】
また、ハブ36の内周面には、ハブ溝36cが設けられる。ハブ溝36cは、ハブ溝36aと連通するようにハブ36の周方向に沿って設けられる。ハブ溝36cの径方向の深さは、同極から逆極又は逆極から同極へと遷移する回動動作中に伝達プレート34の端部がハブ36の内周面と構造的に干渉しない深さとする。さらに、ハブ溝36cにおいてハブ溝36aが設けられた側とは反対の端部には、ハブ36の周方向に沿って径方向にハブ溝36cの深さが徐々に浅くなるように高さが変化する斜面36dが設けられる。
【0038】
以下、
図4~
図7を参照して、本実施の形態におけるロック機構20及びロック駆動機構24の作用を説明する。ここでは、ロック機構20及びロック駆動機構24を用いて、回転電機システム100を同極から逆極にする場合の作用について説明する。
【0039】
図4は、回転軸14の軸方向に対して垂直な面における第2ロータ18の断面を示している。
図4(a)は同極のロック状態、
図4(b)は同極から逆極への回動中、
図4(c)は逆極のロック状態を示している。
図5は、第2ロータ18の内部構造を示す部分断面斜視図である。
図5(a)は同極のロック状態、
図5(b)は同極から逆極への回動中、
図5(c)は逆極のロック状態を示している。
図6は、伝達プレート34の構成を示す図である。
図7は、回転軸14の軸方向に対して垂直な面における伝達プレート34、回動ロックシャフト38、回転軸14、ハブ36の拡大断面を示している。
図7(a)は同極のロック状態、
図7(b)及び
図7(c)は同極から逆極への回動中、
図7(d)は逆極のロック状態を示している。
図7(a)~
図7(c)では領域A1の部分拡大図を併せて示し、
図7(d)では領域A2の部分拡大図を併せて示している。
【0040】
図4(a)、
図5(a)及び
図7(a)に示すように、回転電機システム100が同極のとき、ピン32が誘導穴34aの一端(
図5(a)において下側の端部)に位置するように回動ロックシャフト38に外力が与えられる。誘導穴34aに通されたピン32によって、伝達プレート34の一端をハブ36の内周面へ押し上げる(
図4、
図5及び
図7において上向き)。
【0041】
また、回転電機システム100では、斜面36dによって伝達プレート34を押し上げる力が追加で与えられる。同極のロック状態では、
図7(a)に示すように、回転軸14及び回動ロックシャフト38に対して相対的に反時計回りに伝達プレート34へ回動トルクが与えられている。この状態において、伝達プレート34の一端(
図4(a),
図5(a)及び
図7(a)において下端)と斜面36dとが当接し、伝達プレート34の回動トルクによって伝達プレート34に対して斜面36dに垂直方向の力が与えられる。そして、斜面36dに垂直方向の力の分力として、径方向に沿って伝達プレート34を押し上げる力F1が加えられる。
【0042】
同極のロック状態では、伝達プレート34がハブ36の内周面側に押し付けられることによって、伝達プレート34の当該一端(
図4(a),
図5(a)及び
図7(a)において上端)がハブ36のハブ溝36aに嵌合した状態となる。また、回転軸14に設けられた突起14cはハブ36のハブ溝36b内の一端に当接した状態となる。
【0043】
回転電機システム100がモータとして力行動作している場合、第1ロータ16及び第2ロータ18は正転方向(
図4(a)においてCCW方向)に回転し、当該正転方向にトルクを出力する。同極ロック状態において力行動作時には、ハブ36のハブ溝36b内の一端に当接した回転軸14の突起14cによって第2ロータ18の力行トルクが回転軸14に伝達される。すなわち、力行動作状態では、伝達プレート34の端部には力行トルクは印加されていない。一方、回転電機システム100がジェネレータとして回生動作している場合、第1ロータ16及び第2ロータ18は正転方向に回転し、回生トルクを逆転方向(
図4(a)においてCCW方向とは逆方向)に出力する。このような回生動作状態では、ハブ36に設けられたハブ溝36aに嵌合した伝達プレート34の端部によって第2ロータ18の回生トルクが回転軸14に伝達される。
【0044】
次に、同極から逆極にするために第2ロータ18を回動状態にする。外力により回動ロックシャフト38を移動させる(
図5(a)の矢印方向)と、回動ロックシャフト38と共にピン32も移動し、誘導穴34aの斜面にしたがって伝達プレート34が押し下げられる(
図4、
図5及び
図7において下向き)。これに伴って伝達プレート34の端部がハブ溝36aから外れ、第2ロータ18と回転軸14のロックが解除される。したがって、第2ロータ18の回動に必要な回動トルクの増加を抑制することができる。
【0045】
この状態において、ステータ12のステータコイルに流す電流を制御することで、第2ロータ18を回動させるためのトルク(回動トルク)を与える。これによって、
図7(b)に示すように、第2ロータ18の回動動作が開始される。
【0046】
なお、回転電機システム100がモータとして力行動作しているときに同極ロック状態から回動状態へ遷移させれば、回転軸14の突起14cによって第2ロータ18のトルクが回転軸14に伝達され、伝達プレート34の端部によってトルクが伝達されていない状態において回動状態へ遷移させることができる。すなわち、ロック解除の際に伝達プレート34がハブ36のハブ溝36aから押されておらず、ロック解除に必要な力を増加させない。押される場合は、当接面で摩擦が発生して、ロック解除に必要な力が増加する。したがって、回動ロックシャフト38の軸方向に沿った移動に必要な外力の増加を抑制することができる。
【0047】
また、同極から逆極への回動開始時には、伝達プレート34を押し下げる力によってハブ36を回転軸14に対して相対的に回動させる回転トルクがハブ36に与えられる。
図7(b)に示すように、伝達プレート34の一端(
図7(b)において下端)が斜面36dに当接しており、伝達プレート34を押し下げる力が斜面36dに垂直な力として与えられる。そして、当該力の分力F2によって、伝達プレート34に対する回転トルクが与えられる。これによって、回転軸14に対して伝達プレート34が相対的に回動する速度が増加する。
【0048】
なお、逆極から同極への遷移時には、
図7(a)に示したように、斜面36dから伝達プレート34に対して伝達プレート34を押し上げる力F1が与えられ、伝達プレート34がハブ溝36aに嵌合してロック状態とするまでの速度が増加する。
【0049】
回動動作を続けると、
図4(b)、
図5(b)及び
図7(c)に示すように、伝達プレート34が斜面36dから外れた状態となる。このとき、
図7(c)に示すように、伝達プレート34の両端は、ハブ36に設けられたハブ溝36cの内面には接触せず、回転軸14と伝達プレート34との相対的な回動に対する伝達プレート34による機械的な抵抗はない。
【0050】
さらに回動が進むと、第2ロータ18が逆極の位置まで回動され、ハブ36に設けられた別のハブ溝36aが伝達プレート34の位置まで移動する。また、押され続けた回動ロックシャフト38と共にピン32が移動し、ピン32が誘導穴34aの一端(
図5(c)において上側の端部)に位置する。すなわち、誘導穴34aに通されたピン32によって、伝達プレート34の一端をハブ36の内周面へ押し下げる(
図4、
図5及び
図7において下向き)。
【0051】
また、回転電機システム100では、斜面36dによって伝達プレート34を押し下げる力が追加で与えられる。逆極のロック状態では、
図7(d)に示すように、回転軸14及び回動ロックシャフト38に対して相対的に時計回りに伝達プレート34へ回動トルクが与えられている。この状態において、伝達プレート34の一端(
図4(c),
図5(c)及び
図7(d)において上端)と斜面36dとが当接し、伝達プレート34の回動トルクによって伝達プレート34に対して斜面36dに垂直方向の力が与えられる。そして、斜面36dに垂直方向の力の分力として、径方向に沿って伝達プレート34を押し下げる力F3が加えられる。これによって、伝達プレート34の一端がハブ溝36aに嵌合してロック状態とするまでの速度が増加する。
【0052】
逆極のロック状態では、伝達プレート34がハブ36の内周面側に押し付けられることによって、伝達プレート34の当該一端(
図4(c),
図5(c)及び
図7(d)において下端)がハブ36のハブ溝36aに嵌合した状態となる。また、回転軸14に設けられた突起14cはハブ36のハブ溝36b内において同極ロック状態のときと反対側の一端に当接した状態となる。
【0053】
回転電機システム100がモータとして力行動作している場合、第1ロータ16及び第2ロータ18は正転方向(
図4(c)においてCCW方向)に回転し、当該正転方向にトルクを出力する。逆極ロック状態において力行動作時には、ハブ36に設けられたハブ溝36aに嵌合した伝達プレート34の端部によって第2ロータ18の力行トルクが回転軸14に伝達される。一方、回転電機システム100がジェネレータとして回生動作している場合、第1ロータ16及び第2ロータ18は正転方向に回転し、回生トルクを逆転方向(
図4(c)においてCCW方向とは逆方向)に出力する。このとき、ハブ36のハブ溝36b内の一端に当接した回転軸14の突起14cによって第2ロータ18の回生トルクが回転軸14に伝達される。すなわち、回生動作状態では、伝達プレート34の端部には回生トルクは印加されていない。
【0054】
なお、ロック機構20及びロック駆動機構24を用いて、逆極状態から同極状態へ遷移させる場合には逆の操作を行えばよい。このとき、回転電機システム100が回生動作しているときに逆極ロック状態から回動状態へ遷移させれば、回転軸14の突起14cとハブ36のハブ溝36bによってトルクが伝達され、伝達プレート34の端部によってトルクが伝達されていない状態において回動状態へ遷移させることができる。すなわち、伝達プレート34がハブ36のハブ溝36aから押されておらず、ロック解除に必要な力を増加させない。押される場合は、当接面で摩擦が発生して、ロック解除に必要な力が増加する。したがって、回動ロックシャフト38の軸方向に沿った移動に必要な外力の増加を抑制することができる。
【0055】
以上のように、回転電機システム100では、回動ロックシャフト38を軸方向に動かすことによって同極又は逆極のロック状態を解除し、ステータ12への通電によって回転軸14に対して第2ロータ18を相対的に回動させることで同極状態と逆極状態とを相互に遷移させることができる。なお、回転軸14と第2ロータ18とのロック機能は、回動ロックシャフト38を押し続けることによって、ロック機構20及びロック駆動機構24以外の外部機構や追加センサを必要とすることなく受動的に行うことが可能である。
【0056】
また、伝達プレート34を用いたシンプルな構成によってロック状態とロック解除状態を実現することができる。さらに、回動動作中において伝達プレート34が第2ロータ18の中心部に配置されるため、回転による遠心力の影響を受け難い構造となっている。
【0057】
また、回転電機システム100では、第2ロータ18の内部にロック機構20及びロック駆動機構24を配置しており、回動動作はステータ12への通電によって行うために回転電機システム100の体積を増加させることなく同極状態と逆極状態を実現することができる。また、ロックのためのスキュー角の検出手段や制御も不要である。
【0058】
さらに、伝達プレート34とハブ36に設けられた斜面36dとの作用によって、回動ロックシャフト38によって伝達プレート34に与えられる荷重をハブ36の回動を加速させるために利用し、同極と逆極との遷移に掛かる時間を短縮することができる。また、ハブ36の回動トルクを伝達プレート34によるハブ36に対するロック動作を加速させるために利用し、同極及び逆極のロック状態とするまでに掛かる時間を短縮することができる。
【0059】
なお、
図8に示すように、回動ロックシャフト38に対して軸方向に沿って片側から力を印加し続けるためのバネ等の弾性体40を回転軸14の中空部に設けた構成としてもよい。バネ等の弾性体40を設けることで、回動ロックシャフト38に対して片側から外力を印加し続けることが可能になる。これによって、回転電機システム100の回動ロックシャフト38を外部から駆動するアクチュエータ等が停止した状態においても同極ロック状態又は逆極ロック状態を維持することが可能になる。
【0060】
回動ロックシャフト38に対して外力を与える機構に特別なアクチュエータを設けることなく、例えば、ベアリングやギア等に使用する潤滑油の油圧を利用して動作させることもできる。この場合、元々からある潤滑油のポンプが利用できるため、アクチュエータ等の外部から駆動力を与える機構を追加する必要がなく、システム全体を小型にできる。
[回転電機システムの制御]
【0061】
ところで、第1ロータ16及び第2ロータ18の界磁磁束を増加させて、回転電機システム100のトルクを増加させた場合、磁石(界磁)により発生する誘起電圧(逆起電圧)が増加する。これによって、例えば、回転電機システム100がインバータによる駆動である場合に誘起電圧がスイッチング素子の耐圧を上回ると、スイッチング素子を破損してしまうおそれがある。そこで、回転電機システム100におけるトルクの増加と逆起電圧を上限以下に抑制することを同時に実現する必要がある。
【0062】
なお、以下の説明において、回転数とは第1ロータ16又は第2ロータ18が単位時間当たりに回転する回数(回転速度)を意味する。例えば、毎分当たりの回転数の単位はrpmである。
【0063】
例えば、第1ロータ16a及び第1ロータ16bと第2ロータ18との軸方向の分割割合を4:1とし、上限回転数の半分の回転数において第2ロータ18を回動させることで磁極の1/4を同極から逆極にすると、軸方向の半分でN極とS極による磁石磁束が打ち消しあう。その結果、界磁磁束が半減され、逆起電圧も半減し、高速回転時においてもスイッチング素子を破損することなく制御が可能になる。
図9(a)及び
図9(b)は、この場合における第1ロータ16及び第2ロータ18の回転数に対する逆起電力割合とトルク割合の変化を示す。回転電機システム100における駆動可能な領域では、比較モータに対して低速時のトルクを増加することができる。
【0064】
回転電機システム100に適した第2ロータ18の回動制御は以下の通りである。回転数N1までは、第1ロータ16と第2ロータ18とを同極で駆動し、力行トルクにより加速する。
【0065】
回転数が回転数N1に達したときに、第2ロータ18を同極から逆極へ回動させる回動制御モード1に移行する。回動制御モード1では、回転軸14に出力されるトルク(出力トルク)を維持しつつ、第1ロータ16に対して第2ロータ18を相対的に回動させるための回動トルクを同時に出力させて回動動作を実施する。具体的には、同極状態では、第1ロータ16及び第2ロータ18の両方によって出力トルクを出力し、回動制御モード1における回動動作中は、第1ロータ16によって出力トルクを維持しつつ、第2ロータ18によって回動トルクが出力されるようにステータ12のステータコイルに通電する電流を制御する。
【0066】
このようにして、回転数N1以上となった場合、第2ロータ18を第1ロータ16に対して逆極とした状態で回転電機システム100を駆動する。
【0067】
逆極で駆動中に車両へのブレーキ操作等が行われると、回生トルクによる減速が生ずる。減速によって回転数N2に達したときに、第2ロータ18を逆極から同極へ回動させる回動制御モード2に移行する。回動制御モード2では、回動制御モード1と同様に、出力トルクを維持しつつ、回動トルクを同時に出力させて回動動作を実施する。具体的には、逆極時では、第1ロータ16と第2ロータ18の両方で出力ルクを出力し、回動制御モード2における回動動作中は、第1ロータ16によって出力トルクを維持しつつ、第2ロータ18によって回動トルクが出力されるようにステータ12のステータコイルに通電する電流を制御する。
【0068】
このように、回転数N2以下となった場合、第2ロータ18を第1ロータ16に対して同極とした状態で回転電機システム100を駆動する。
【0069】
ここで、回転数N1と回転数N2を同一とすると、当該回転数付近において同極から逆極又は逆極から同極への回動動作が繰り返されるチャタリング現象を生ずるおそれがある。そこで、回転数N1>回転数N2に設定することが好適である。このように、同極から逆極への回動動作を開始する基準となる回転数N1と逆極から同極への回動動作を開始する回転数N2にヒステリシスを設けることによってチャタリング現象を抑制することができる。
【0070】
さらに、同極から逆極への回動動作に比べて、逆極から同極への回動動作において出力トルクを維持しながら出力できる回動トルクが小さくなり、回動動作が可能な条件が制限される。そこで、逆極から同極への回動制御モード2に移行する条件として、回転数制約(回転数N2)のみならず、トルクの制約も追加することが好適である。すなわち、第1ロータ16及び第2ロータ18の回転数が回転数N2以下であり、かつ、出力トルクが基準となるトルクT2以下となる条件において回動制御モード2に移行させることが好適である。
【0071】
特に、回転電機システム100が逆極状態の回生動作中であり、第1ロータ16及び第2ロータ18の回転数が回転数N1から減少している状況では、回動制御モード2には移行させず、回生動作中は逆極状態にて回転電機システム100を駆動させる。その後、再加速が行われて力行状態に移行する場合や回転電機システム100が停止した場合には出力トルクは0になるか、または、0を跨いで負の回生トルクから正の力行トルクに移行することになる。そこで、出力トルクが0又はその近傍の状態において、回動制御モード2に移行して回動動作を行うことが好適である。なお、出力トルクが0に近いほどより大きな回動トルクを出力することができるので、第1ロータ16に対して第2ロータ18を逆極から同極へと回動させ易くなる。
【0072】
図10は、同極から逆極へ遷移させる回動制御モード1における回動動作中の回転数、位相差角、出力トルク(アウトプットトルク)、第1ロータ16のトルク(主ロータトルク)及び第2ロータ18のトルク(回動ロータトルク)の時間変化の一例を示す。トルク(アウトプットトルク、主ロータトルク、回動ロータトルク)は、磁界解析によって計算した値である。これらの特性は、最大電流を上限以下にしたときの結果を示している。
【0073】
これらの結果は、出力トルク(アウトプットトルク)を所定値に維持したままで回動動作が実現できることを示している。また、同極ロック状態を解除するとともにステータ12のステータコイルへ通電する電流の制御を切り替えて回動制御モード1に移行し、位相差角に応じて当該電流制御条件を変更することで第1ロータ16のトルク(主ロータトルク)にて出力トルク(アウトプットトルク)を維持しながら、第2ロータ18のトルク(回動トルク)によって第2ロータ18を回動できる。また、回動動作の終了後、逆極ロック状態として、その際にステータ12のステータコイルへ通電する電流の制御も変更する。
【0074】
図11及び
図12は、出力トルク(アウトプットトルク)を所定値に維持した状態において同極から逆極、及び、逆極から同極への回動トルクの回転数に対する変化の例と回動動作が可能な条件(領域)を示す。
図11及び
図12において印×で示した条件が回動動作への切り替えに好適な条件を示している。記号(1)は回動制御モード1への移行に好適な条件、記号(2)と記号(3)は回動制御モード2への移行に好適な条件を示す。なお、記号(2)は、回転数が回転数N2以下になった条件を示し、記号(3)は、回転数が回転数N2以下になった条件に加えてトルクが0付近になった条件を示す。
【0075】
また、
図13及び
図14は、第2ロータ18の回動動作に伴うトルクショックを抑制する方法を示す。
図13に示すように、回転電機システム100において出力トルクが最大である状態において回転数を増加させる場合、所定の回転数において同極状態から逆極状態に遷移させると切り替え時にトルクのギャップが生じて回転電機システム100にトルクショックが生ずるおそれがある。そこで、
図14に示すように、所定の回転数において同極状態から逆極状態に遷移させる前に回転電機システム100の出力トルクを低減させるように駆動範囲を制限する制御を行うことが好適である。例えば、出力トルクが逆極状態における最大トルクとなるようにステータ12のステータコイルへの電流を制御した後、同極状態から逆極状態への遷移させる制御を行う。これによって、同極から逆極への切り替え時におけるトルクのギャップの発生を防止し、回転電機システム100のトルクショックを抑制することができる。
【0076】
上記のように、回転電機システム100では、同極状態かつ力行状態であるときに回転軸14に設けられた突起14cによってトルクが伝達される。このように突起14cでトルク伝達している状態では、ロック機構20にトルクが掛かっていないため、外力によってロック駆動機構24を動かすことでロックを解除することができる。このとき、第1ロータ16及び第2ロータ18の出力トルクは突起14cによって伝達されているので、ロック解除に伴う出力トルクの減少は生じない。一方、出力トルクが逆方向の回生状態では、ロック機構20によってトルクが伝達される。このようにロック機構20でトルク伝達している状態では、ロック機構20にトルクが掛かっているため、外力によってロック駆動機構24を動かすだけではロックを解除することができない。そこで、同極状態から逆極状態へ遷移させる場合、回転電機システム100が力行状態であるときに行う。
【0077】
図15は、同極状態から逆極状態へ遷移させる制御のフローチャートを示す。以下、当該フローチャートを参照して、回転電機システム100を同極状態から逆極状態へ遷移させる制御について説明する。
【0078】
ステップS10では、同極状態において通常の駆動制御が行われる。ステップS12では、回転数が回転数N1以上となったか否かが判定される。回転数が回転数N1以上であればステップS14に処理を移行させ、回転数N1未満であればステップS12に処理を戻す。ステップS14では、ロック駆動機構24を駆動させる。ステップS16では、ロックが解除されたか否かが判定される。ロックが解除されればステップS18に処理を移行させ、ロックが解除されていなければステップS14に処理を戻してロック駆動機構24の駆動を継続する。ロックの解除の検出は、センサを用いて行うことができる。例えば、回動ロックシャフトの位置をセンサによって検出し、回動ロックシャフトの位置によってロック状態かロック解除状態かを検出することができる。
【0079】
ステップS18では、第1ロータ16に対して相対的に第2ロータ18を回動させる。このとき、ロック駆動機構24の駆動は継続させる。ステップS20では、ロックが完了したか否かが判定される。第2ロータ18を回動させつつロック駆動機構24の駆動を継続することで回転電機システム100は逆極状態でロック状態となる。ロックが完了した場合にはステップS22に処理を移行させ、ロックが完了していない場合にはステップS18から処理を繰り返す。ステップS22では、逆極状態において通常の駆動制御が開始される。
【0080】
逆極状態から同極状態への遷移の制御は上記フローと同様に行うことができる。この場合、ステップS10では逆極状態における通常制御を行い、ステップS22では同極状態における通常制御を行う。また、ステップS12における判定では、回転数が回転数N2以下となることを条件とすればよい。さらに、当該条件にトルクが0付近になった条件を加えてもよい。
【0081】
[発明の構成]
[構成1]
ステータと、前記ステータに対向して配置されたロータと、を備える回転電機であって、
前記ロータは、回転軸に固定された第1ロータと、前記回転軸の軸方向に沿って前記第1ロータと分割され、前記回転軸を回転中心として前記第1ロータに対して相対的に回動可能な第2ロータと、
前記回転軸に設けられた中空領域内に前記軸方向に駆動可能な回動ロックシャフトと、
前記回動ロックシャフトの動きに連動して前記回転軸の径方向に沿って駆動可能であり、前記回転軸と前記第2ロータとが一体に回転するロック状態と、前記回転軸に対して前記第2ロータを相対的に回動させる回動状態と、を切り替える伝達プレートと、
を備え、
前記回動ロックシャフトによって前記伝達プレートに与えられた荷重によって前記第2ロータの回動トルクが補助される、及び/又は、前記第2ロータの回動トルクによって前記伝達プレートへの荷重が補助されることを特徴とする回転電機。
[構成2]
構成1に記載の回転電機であって、
前記第2ロータの周方向に沿って径方向に高さが変化する斜面を備え、前記伝達プレートと前記斜面とが接触するロック補助構造を有することを特徴とする回転電機。
[構成3]
構成1又は2に記載の回転電機であって、
前記第2ロータと共に回転し、前記伝達プレートが嵌まり込むことによって前記第2ロータと前記回転軸とを前記ロック状態とする溝部を備えることを特徴とする回転電機。
[構成4]
構成1~3のいずれか1項に記載の回転電機であって、
前記伝達プレートは、前記第2ロータの回転軸を通って径方向に亘って設けられた貫通穴に配置されていることを特徴とする回転電機。
【符号の説明】
【0082】
10 筐体、12 ステータ、14 回転軸、14a 中空領域、14c 突起(キー部)、16(16a,16b) 第1ロータ、18 第2ロータ、20 ロック機構、22 軸受、24 ロック駆動機構、30 磁石、32 ピン、34 伝達プレート、34a 誘導穴、36 ハブ、36a,36b,36c ハブ溝、36d 斜面、38 回動ロックシャフト、38a ピン孔、38b 貫通穴、40 弾性体、100 回転電機システム、102 回転電機、104 駆動回路、106 電源、108 制御装置。