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特開2024-68503変形硬貨判定装置、硬貨識別機、硬貨処理機及び変形硬貨判定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068503
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】変形硬貨判定装置、硬貨識別機、硬貨処理機及び変形硬貨判定方法
(51)【国際特許分類】
   G07D 5/02 20060101AFI20240513BHJP
【FI】
G07D5/02 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179016
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】大野 佑介
【テーマコード(参考)】
3E002
【Fターム(参考)】
3E002AA01
3E002AA17
3E002BD01
3E002BD05
3E002CA01
3E002CA06
3E002CA14
(57)【要約】
【課題】微小変形した硬貨であっても、高い精度で変形硬貨として検出することができる変形硬貨判定装置、硬貨識別機、硬貨処理機及び変形硬貨判定方法を提供する。
【解決手段】硬貨の画像から前記硬貨の複数の半径を算出する半径算出手段と、前記画像から前記硬貨の基準半径を算出する基準半径算出手段と、前記基準半径に基づく基準半径データに対する前記複数の半径に基づく複数の半径データのばらつきを表す第1特徴量を算出する第1特徴量算出手段と、前記第1特徴量に基づき、前記硬貨が変形硬貨であるか否かを判定する変形硬貨判定手段とを備える変形硬貨判定装置である。
【選択図】 図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬貨の画像から前記硬貨の複数の半径を算出する半径算出手段と、
前記画像から前記硬貨の基準半径を算出する基準半径算出手段と、
前記基準半径に基づく基準半径データに対する前記複数の半径に基づく複数の半径データのばらつきを表す第1特徴量を算出する第1特徴量算出手段と、
前記第1特徴量に基づき、前記硬貨が変形硬貨であるか否かを判定する変形硬貨判定手段とを備える変形硬貨判定装置。
【請求項2】
前記半径算出手段は、前記複数の半径を取得するための点が、前記硬貨の外周上で所定の間隔を空けて位置するようにして前記複数の半径を算出する請求項1に記載の変形硬貨判定装置。
【請求項3】
前記基準半径データに対する前記複数の半径データのばらつきは、前記基準半径データと前記複数の半径データの差のばらつき、又は、前記基準半径データに対する前記複数の半径データの比のばらつきである請求項1又は2に記載の変形硬貨判定装置。
【請求項4】
前記第1特徴量は、下記式(1)により算出される値である請求項1又は2に記載の変形硬貨判定装置。
【数1】
【請求項5】
前記第1特徴量算出手段は、
互いに隣接するp個(ただし、pは2以上の自然数)毎に前記複数の半径を組み分けし、
前記複数の半径データとして、前記1つの組毎に、p個の前記半径に基づく合算値を算出し、
前記合算値に基づき前記第1特徴量を算出する請求項1又は2に記載の変形硬貨判定装置。
【請求項6】
前記第1特徴量算出手段は、前記基準半径データとして、前記1つの組毎に、前記合算値の算出に用いられた半径の数と前記基準半径との積の値を算出する請求項5に記載の変形硬貨判定装置。
【請求項7】
前記変形硬貨判定装置は、さらに前記画像から算出された基準直径に対する前記画像から算出された複数の直径のばらつきを表す第2特徴量を算出する第2特徴量算出手段を備え、
前記変形硬貨判定手段は、前記第1特徴量及び前記第2特徴量に基づき、前記硬貨が変形硬貨であるか否かを判定する請求項1又は2に記載の変形硬貨判定装置。
【請求項8】
前記基準直径に対する前記複数の直径のばらつきは、前記基準直径と前記複数の直径の差のばらつき、又は、前記基準直径に対する前記複数の直径の比のばらつきである請求項7に記載の変形硬貨判定装置。
【請求項9】
前記第2特徴量は、下記式(2)により算出される値である請求項7に記載の変形硬貨判定装置。
【数2】
【請求項10】
前記第1特徴量及び前記第2特徴量に基づき第3特徴量を算出する第3特徴量算出手段をさらに備え、
前記変形硬貨判定手段は、前記第3特徴量に基づき、前記硬貨が変形硬貨であるか否かを判定する請求項7に記載の変形硬貨判定装置。
【請求項11】
前記第3特徴量は、前記第1特徴量と前記第2特徴量との積である請求項10に記載の変形硬貨判定装置。
【請求項12】
請求項1又は2に記載の変形硬貨判定装置を備える硬貨識別機。
【請求項13】
請求項12に記載の硬貨識別機を備える硬貨処理機。
【請求項14】
硬貨の画像から前記硬貨の複数の半径を算出する半径算出ステップと、
前記画像から前記硬貨の基準半径を算出する基準半径算出ステップと、
前記基準半径に基づく基準半径データに対する前記複数の半径に基づく複数の半径データのばらつきを表す第1特徴量を算出する第1特徴量算出ステップと、
前記第1特徴量に基づき、前記硬貨が変形硬貨であるか否かを判定する変形硬貨判定ステップとを含む変形硬貨判定方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、変形硬貨判定装置、硬貨識別機、硬貨処理機及び変形硬貨判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、硬貨の画像をカメラで撮像し、撮像された画像に基づいて硬貨の変形レベルを判定し、判定した変形レベルによって変形硬貨であるか否かを判別する変形硬貨判別手法が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、変形した硬貨を検出する硬貨処理装置に適用される変形硬貨判別方法であって、前記硬貨の画像を取得する画像取得工程と、前記画像取得工程によって取得された前記画像の特徴に基づいて前記硬貨の中心を設定する中心設定工程と、前記中心設定工程によって設定された前記硬貨の中心について極座標変換した画像を取得する極座標画像取得工程と、前記極座標画像取得工程によって取得された画像の特徴に基づいて前記硬貨の金種を識別する識別工程と、前記極座標画像取得工程によって取得された画像に基づいて前記硬貨における外周部の軌道の欠損量を検出する欠損量検出工程と、前記欠損量検出工程によって検出された前記欠損量と前記識別工程によって識別された前記硬貨の金種ごとに予め記憶されている閾値とに基づいて前記硬貨が変形しているか否かを判別する判別工程とを含んだことを特徴とする変形硬貨判別方法及び当該変形硬貨判別方法を実行する硬貨処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5572450号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の方法では、外周に沿って欠損量を取得するため、硬貨の外周が部分的に大きく変形している場合には変形が検出可能である。しかし、微小変形(例えば、楕円のような形状の変形)の場合、欠損量が小さくなるため検出精度が高くないという問題があった。
このような微小変形を検出するために閾値の範囲を狭く設定する方法も考えられるが、この場合、ゴミや機械部品等の写り込み等によるノイズがあると誤検出が発生しやすくなるという問題が生じる。そのため、閾値の範囲を調整することで、検出精度を向上させることは難しかった。
【0006】
本開示は、上記問題を鑑みてなされたものであり、本開示の目的は、微小変形した硬貨であっても、高い精度で変形硬貨として検出することができる変形硬貨判定装置、硬貨識別機、硬貨処理機及び変形硬貨判定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、(1)本開示の第1の態様に係る変形硬貨判定装置は、硬貨の画像から前記硬貨の複数の半径を算出する半径算出手段と、前記画像から前記硬貨の基準半径を算出する基準半径算出手段と、前記基準半径に基づく基準半径データに対する前記複数の半径に基づく複数の半径データのばらつきを表す第1特徴量を算出する第1特徴量算出手段と、前記第1特徴量に基づき、前記硬貨が変形硬貨であるか否かを判定する変形硬貨判定手段とを備える。
【0008】
(2)上記(1)に記載の変形硬貨判定装置において、前記半径算出手段は、前記複数の半径を取得するための点が、前記硬貨の外周上で所定の間隔を空けて位置するようにして前記複数の半径を算出してもよい。
【0009】
(3)上記(1)又は(2)に記載の変形硬貨判定装置において、前記基準半径データに対する前記複数の半径データのばらつきは、前記基準半径データと前記複数の半径データの差のばらつき、又は、前記基準半径データに対する前記複数の半径データの比のばらつきであってもよい。
【0010】
(4)上記(1)~(3)のいずれかに記載の変形硬貨判定装置において、前記第1特徴量は、下記式(1)により算出される値であってもよい。
【0011】
【数1】
【0012】
(5)上記(1)~(4)のいずれかに記載の変形硬貨判定装置では、前記第1特徴量算出手段は、互いに隣接するp個(ただし、pは2以上の自然数)毎に前記複数の半径を組み分けし、前記複数の半径データとして、前記1つの組毎に、p個の前記半径に基づく合算値を算出し、前記合算値に基づき前記第1特徴量を算出してもよい。
【0013】
(6)上記(5)に記載の変形硬貨判定装置において、前記第1特徴量算出手段は、前記基準半径データとして、前記1つの組毎に、前記合算値の算出に用いられた半径の数と前記基準半径との積の値を算出してもよい。
【0014】
(7)上記(1)~(6)のいずれかに記載の変形硬貨判定装置は、さらに前記画像から算出された基準直径に対する前記画像から算出された複数の直径のばらつきを表す第2特徴量を算出する第2特徴量算出手段を備え、前記変形硬貨判定手段は、前記第1特徴量及び前記第2特徴量に基づき、前記硬貨が変形硬貨であるか否かを判定してもよい。
【0015】
(8)上記(7)に記載の変形硬貨判定装置において、前記基準直径に対する前記複数の直径のばらつきは、前記基準直径と前記複数の直径の差のばらつき、又は、前記基準直径に対する前記複数の直径の比のばらつきであってもよい。
【0016】
(9)上記(7)又は(8)に記載の変形硬貨判定装置において、前記第2特徴量は、下記式(2)により算出される値であってもよい。
【0017】
【数2】
【0018】
(10)上記(7)~(9)のいずれかに記載の変形硬貨判定装置は、前記第1特徴量及び前記第2特徴量に基づき第3特徴量を算出する第3特徴量算出手段をさらに備え、前記変形硬貨判定手段は、前記第3特徴量に基づき、前記硬貨が変形硬貨であるか否かを判定してもよい。
【0019】
(11)上記(10)に記載の変形硬貨判定装置において、前記第3特徴量は、前記第1特徴量と前記第2特徴量との積であってもよい。
【0020】
(12)本開示の第2の態様に係る硬貨識別機は、(1)又は(2)に記載の変形硬貨判定装置を搭載されている。
【0021】
(13)本開示の第3の態様に係る硬貨処理機は、(12)に記載の硬貨識別機を備える。
【0022】
(14)また、本開示の第4の態様に係る変形硬貨判定方法は、硬貨の画像から前記硬貨の複数の半径を算出する半径算出ステップと、前記画像から前記硬貨の基準半径を算出する基準半径算出ステップと、前記基準半径に基づく基準半径データに対する前記複数の半径に基づく複数の半径データのばらつきを表す第1特徴量を算出する第1特徴量算出ステップと、前記第1特徴量に基づき、前記硬貨が変形硬貨であるか否かを判定する変形硬貨判定ステップとを含む。
【発明の効果】
【0023】
本開示によれば、微小変形した硬貨であっても、高い精度で変形硬貨として検出することができる変形硬貨判定装置、硬貨識別機、硬貨処理機及び変形硬貨判定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、実施形態1に係る変形硬貨判定装置の構成を説明するブロック図である。
図2図2は、実施形態1に係る変形硬貨判定装置の動作の一例を説明するフローチャートである。
図3A図3Aは、本開示の実施形態1に係る変形硬貨判定装置において、半径算出手段が硬貨の画像から硬貨の複数の半径を算出する方法の一例を模式的に示す説明図である。
図3B図3Bは、本開示の実施形態1に係る変形硬貨判定装置において、半径算出手段が硬貨の画像から硬貨の複数の半径を算出する方法の一例を模式的に示す説明図である。
図4図4は、本開示の実施形態1に係る変形硬貨判定装置において、基準半径算出手段が硬貨の画像から硬貨の基準半径を算出する方法の一例を模式的に示す説明図である。
図5図5は、実施形態1の変形例に係る変形硬貨判定装置における、半径データ及び基準半径データの算出方法の一例を模式的に示す説明図である。
図6図6は、実施形態2に係る変形硬貨判定装置の構成を説明するブロック図である。
図7図7は、実施形態2に係る変形硬貨判定装置の動作の一例を説明するフローチャートである。
図8図8は、本開示の実施形態2に係る変形硬貨判定装置において、第2特徴量算出手段が直径を算出する方法の一例を模式的に示す説明図である。
図9図9は、実施形態2の変形例1に係る変形硬貨判定装置の構成を説明するブロック図である。
図10図10は、実施形態2の変形例2に係る変形硬貨判定装置の構成を説明するブロック図である。
図11図11は、実施形態2の変形例2に係る変形硬貨判定装置の動作の一例を説明するフローチャートである。
図12図12は、本開示の実施形態2の変形例2に係る変形硬貨判定装置において、半径算出手段が硬貨の画像から硬貨の複数の半径を算出する方法の一例を模式的に示す説明図である。
図13図13は、本開示の硬貨識別機の構成を説明するブロック図である。
図14図14は、閾値情報の一例を示す図である。
図15図15は、本開示の硬貨処理機の一例を模式的に示す側面断面図である。
図16図16は、本開示の硬貨処理機の動作の一例を説明するフローチャートである。
【0025】
以下、本開示に係る変形硬貨判定装置及び変形硬貨判定方法の実施形態を詳細に説明する。
【0026】
また、以下の説明において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して適宜用い、その繰り返しの説明は適宜省略する。また、構造を説明する図面には、互いに直交するXYZ座標系を適宜示している。
【0027】
(実施形態1)
本開示の実施形態1に係る変形硬貨判定装置は、硬貨の画像から上記硬貨の複数の半径を算出する半径算出手段と、上記画像から上記硬貨の基準半径を算出する基準半径算出手段と、上記基準半径に基づく基準半径データに対する上記複数の半径に基づく複数の半径データのばらつきを表す第1特徴量を算出する第1特徴量算出手段と、上記第1特徴量に基づき、上記硬貨が変形硬貨であるか否かを判定する変形硬貨判定手段とを備える。
【0028】
本開示の実施形態1に係る変形硬貨判定装置において、変形硬貨を判定できる原理を説明する。
硬貨を平面視した際の輪郭が真円である場合、硬貨の中心から硬貨の外周までの距離(すなわち半径)は、外周の部分によらず一定である。
しかし、硬貨に変形が生じると、硬貨を平面視した際の輪郭が歪み、真円ではなくなるので、硬貨の中心から硬貨の外周までの距離は外周の位置により変化する。つまり、硬貨の中心から硬貨の外周までの距離は一定で無くばらついている。
逆に言えば、硬貨の中心から硬貨の外周までの距離のばらつきが大きいと、その硬貨は、変形している可能性が高い。
そのため、硬貨の基準半径に対して硬貨の複数の半径のばらつきを1つの特徴量として算出することで、当該硬貨が変形しているか否かを高い精度で判定することができる。
また、半径及び基準半径そのものだけではなく、半径及び基準半径から算出されたパラメータ(例えば、複数の半径の合算値や基準半径を整数倍した数等)であっても、そのばらつきは半径のばらつきを反映することができる。
そこで、本開示の変形硬貨判定装置では、基準半径に基づく基準半径データに対する複数の半径に基づく複数の半径データのばらつきを第1特徴量として算出することにより、当該硬貨が変形しているか否かを高い精度で判定可能である。
このような変形硬貨判定装置について、以下に図面を用いて説明する。
【0029】
図1は、実施形態1に係る変形硬貨判定装置の構成を説明するブロック図である。
図1に示すように、変形硬貨判定装置10は、半径算出手段11と、基準半径算出手段12と、第1特徴量算出手段13と、変形硬貨判定手段14とを備える。
なお、半径算出手段11と、基準半径算出手段12と、第1特徴量算出手段13と、変形硬貨判定手段14は、電子計算機に組み込まれ、CPU等のコントローラ(プロセッサ)にてプログラムを実行することによって機能してもよい。
【0030】
次に、図2を用いて、実施形態1に係る変形硬貨判定装置の動作について説明する。
図2は、実施形態1に係る変形硬貨判定装置の動作の一例を説明するフローチャートである。
【0031】
図2に示すように変形硬貨判定装置10では、まず、半径算出手段11が硬貨の画像から硬貨の複数の半径を算出する(工程S11)。
【0032】
次に、基準半径算出手段12が、硬貨の画像から硬貨の基準半径を算出する(工程S12)。
【0033】
次に、第1特徴量算出手段13が、基準半径に基づく基準半径データに対する複数の半径に基づく複数の半径データのばらつきを表す第1特徴量を算出する(工程S13)。
【0034】
次に、変形硬貨判定手段14が、第1特徴量に基づき、硬貨が変形硬貨であるか否かを判定し(工程S14)、変形硬貨判定装置10の動作が終了する。
【0035】
以下、各工程を、図面を用いて例示しながら詳述する。
【0036】
<半径算出ステップ(工程S11)>
図3A及び図3Bは、本開示の実施形態1に係る変形硬貨判定装置において、半径算出手段が硬貨の画像から硬貨の複数の半径を算出する方法の一例を模式的に示す説明図である。
半径算出ステップ(工程S11)では、図3Aに示すように、まず、硬貨20の中心21が検出された硬貨の画像を準備する(なお、以下の説明において、「硬貨の中心」、「硬貨の外周」等は、硬貨の画像上における位置を意味し、硬貨そのものの位置を意味するものではない)。
硬貨20の中心21を検出する方法としては、従来公知の方法を用いることができる。例えば、硬貨の外周22を検出し、検出された硬貨の外周22の軌道に基づいて硬貨の中心21の位置を検出してもよい。
【0037】
次に、図3Bに示すように、半径算出手段11が硬貨の中心21を軸に、硬貨20を32分割するような硬貨の外周22上の各点P(P~P32)を検出する。そして、硬貨の外周22上の各点P(P~P32)から硬貨の中心21までの距離を、硬貨20の複数の半径r(r~r32)として算出する。
【0038】
なお、図3Bでは、複数の半径rを取得するための各点Pが、硬貨の外周22に等間隔に位置するようにして複数の半径rを算出しているが、本開示の変形硬貨判定装置では、各点Pの間隔は等間隔でなくてもよく、各点Pが、硬貨の外周22上で所定の間隔を空けて位置するようにして複数の半径rを算出してもよい。なお、「所定の間隔」とは、あらかじめ任意に設定する間隔であり、半径算出手段11は、その設定に従い、各点Pを検出してもよい。
また、図3Bでは、硬貨の中心21を軸に、硬貨20を32分割する硬貨の外周上の点Pに基づき、複数の半径rを取得しているが、本開示の変形硬貨判定装置では、2以上の半径rを取得できれば、分割の数は特に限定されない。
【0039】
<基準半径算出ステップ(工程S12)>
図4は、本開示の実施形態1に係る変形硬貨判定装置において、基準半径算出手段が硬貨の画像から硬貨の基準半径を算出する方法の一例を模式的に示す説明図である。
図4に示すように、(工程S12)では、基準半径算出手段12が、(工程S11)で検出した硬貨の外周22上の各点P(P~P32)のうち、硬貨の中心21から各点Pを結ぶ線分の角度が180°になる点Pのペアを検出し(図4では、便宜上、P及びP17をペアとなる点Pとして例示する)、ペアとなる点P間の距離(ペアとなる2つの点Pから算出された2つの半径の合計、例えば、図4中、rとr17の合計値)を硬貨20の直径Rとして算出する。
そして、算出された複数の直径Rを、長さ順にソートし、例えば、中央の4本の直径Rの平均を算出して基準直径Rを算出してもよい。当該基準直径Rの1/2の値を基準半径rとしてもよい。
なお、上記説明では、基準直径Rを中央の4本の直径Rの平均として算出したが、中央の所定本数、たとえば中央の2本の平均を算出して基準直径Rとしてもよい。
【0040】
また、基準半径rは、上記(工程S11)で算出した複数の硬貨の半径rを長さ順にソートし、中央の所定本数の平均値としてもよく、全ての半径rの平均値としてもよい。
【0041】
また、図4では、硬貨の中心21を軸に、硬貨20を32分割する硬貨の外周上の点Pに基づき、基準半径rを算出したが、本開示の変形硬貨判定装置では、半径rを算出するための点Pとは異なる別の硬貨の外周上の点を用いて基準半径rを算出してもよい。
【0042】
<第1特徴量算出ステップ(工程S13)>
(工程S13)では、第1特徴量算出手段13が、基準半径rに基づく基準半径データに対する複数の半径rに基づく複数の半径データのばらつきを表す第1特徴量を算出する。
【0043】
基準半径rに基づく基準半径データとは、基準半径rそのものであってもよく、基準半径rを整数倍した値であってもよい。このように、基準半径データは、基準半径rのみに基づく値であってもよい。
【0044】
複数の半径rに基づく複数の半径データとは、複数の半径rそのものであってよく、各々が所定の個数の半径rの和であってもよく、各々が所定の個数の半径rの平均であってもよい。このように、複数の半径データは、複数の半径rのみに基づく値であってもよい。
【0045】
第1特徴量は、基準半径データに対する複数の半径rに基づく複数の半径データのばらつきを表す。第1特徴量(ばらつき)は、全半径データが基準半径データと同じであればゼロ又は1となる。つまり、第1特徴量を、半径データと基準半径データとの差に基づき算出する場合、全半径データが基準半径データと同じであれば第1特徴量はゼロとなる。また、第1特徴量を、半径データと基準半径データとの比に基づき算出する場合、全半径データが基準半径データと同じであれば第1特徴量は1となる。
これらの数値を基準とすると、半径データのばらつきが大きければ大きいほど、第1特徴量は、当該基準からの乖離が大きな値となる。半径データと基準半径データとの差に基づき算出する場合、第1特徴量は、通常では正の値となるが、負の値であってもよい。半径データと基準半径データとの比に基づき算出する場合、第1特徴量は、通常では正の値となる。
このように、基準半径データに対する複数の半径データのばらつきは、基準半径データと複数の半径データの差のばらつき、及び、基準半径データに対する複数の半径データの比のばらつきのいずれかであってもよい。
【0046】
基準半径データと複数の半径データの差のばらつきは、例えば、以下の式(1)により算出することができる。
【0047】
【数3】
【0048】
なお、上記式(1)において、複数の半径データに順に付与した番号とは、半径データに重複なしで、1から連番で付与した番号であり、その最大の番号は、第1特徴量の算出に用いた半径データの数と等しくなる。
【0049】
上記式(1)で算出される第1特徴量は、基準半径データと各半径データの差を二乗した値を合計し、その値を、半径データの数で割った値である。
基準半径データが基準半径rそのものであり、基準半径rが各半径rの平均値であり、かつ、各半径データが各半径rそのものである場合、第1特徴量は硬貨20の各半径rの分散を意味する。
【0050】
第1特徴量が上記式(1)により得られる値の場合、硬貨の変形が微小な変形であっても、その値は大きくなる。そのため、このような第1特徴量を用いることにより精度よく変形硬貨を検出することができる。
【0051】
なお、基準半径データに対する複数の半径データのばらつきとして、基準半径データに対する複数の半径データの比のばらつきを用いる場合は、第1特徴量は、例えば、基準半径データに対する各半径データの比を合計し、その値を、半径データの数で割った値であってもよい。
【0052】
<変形硬貨判定ステップ(工程S14)>
(工程S14)では、変形硬貨判定手段14が、第1特徴量に基づき、硬貨20が変形硬貨であるか否かを判定する。
判定の基準は、あらかじめ第1閾値を設定し、第1特徴量が、第1閾値の範囲に含まれるか否かで、硬貨20が変形硬貨であるか否かを判定してもよい。
例えば、第1特徴量が第1閾値を超えた場合、当該第1特徴量を有する硬貨を変形硬貨と判定し、第1特徴量が第1閾値以下である場合、当該第1特徴量を有する硬貨を変形していない硬貨と判定してもよい。
【0053】
変形硬貨判定装置10を用いることにより、種々の変形硬貨を検出することができる。特に、V字変形貨(特に曲がり量が少ない曲り貨)を効果的に検出することができる。
【0054】
なお、本開示の変形硬貨判定装置では、<第1特徴量算出ステップ(工程S13)>の前に、半径データ及び基準半径データを算出できれば、各ステップを行う順番は限定されない。
【0055】
(実施形態1の変形例)
次に、実施形態1の変形例について説明する。
実施形態1の変形例に係る変形硬貨判定装置では、(工程S13)において第1特徴量算出手段が、互いに隣接するp個(ただし、pは2以上の自然数)毎に複数の半径を組み分けし、複数の半径データとして、1つの組毎に、p個の半径に基づく合算値を算出し、合算値に基づき第1特徴量を算出する点が上記変形硬貨判定装置10と異なる。
また、実施形態1の変形例に係る変形硬貨判定装置では、第1特徴量算出手段は、基準半径データとして、1つの組毎に、合算値の算出に用いられた半径の数と基準半径との積の値を算出してもよい。
【0056】
このように半径データ及び基準半径データを算出する方法を以下に説明する。
【0057】
図5は、実施形態1の変形例に係る変形硬貨判定装置における、半径データ及び基準半径データの算出方法の一例を模式的に示す説明図である。
【0058】
実施形態1に係る変形例の変形硬貨判定装置では、(工程S13)において、図5に示すように、第1特徴量算出手段が、互いに隣接する4個毎に半径を組み分けする。
すなわち、第1グループGにはr~rが含まれ、第2グループGにはr~rが含まれ、第3グループGにはr~r12が含まれ、第4グループGにはr13~r16が含まれ、第5グループGにはr17~r20が含まれ、第6グループGにはr21~r24が含まれ、第7グループGにはr25~r28が含まれ、第8グループGにはr29~r32が含まれるように組み分けを行う。
【0059】
次に、第1特徴量算出手段は、グループ毎に4つの半径rの値を合計し、その値を半径データとする。これにより8個の半径データを取得することができる。また、基準半径rの値を4倍して基準半径データとする。
第1特徴量算出手段13は、この半径データ及び基準半径データを用いて第1特徴量を算出してもよい。
このように第1特徴量を算出することにより、グループ毎に、半径データ及び基準半径データを算出することができる。
【0060】
なお、半径算出手段が複数の半径を算出する際、硬貨の画像が不鮮明である場合や、画像上のゴミやノイズの影響で、部分的に半径が取得できない場合がある。
このような場合、その部分のデータを、半径データ及び基準半径データを算出に用いなくてもよい。
実施形態1に係る変形例の変形硬貨判定装置では、グループ毎に半径データ及び基準半径データ算出するので、グループ内の1つの半径が取得できなかったとしても、他の部分の半径を用いることにより、そのグループにおける半径データ及び基準半径データを算出することができる。
例えば、図5において、第1グループGの半径rが取得できない場合、半径データを半径r、半径r及び半径rの合計値としてもよい。また、基準半径データを、半径データの算出に用いられた半径の数(すなわち、3)と基準半径rとの積の値としてもよい。
【0061】
なお、図5では、互いに隣接する4個毎に半径の組み分けを行っているが、実施形態1に係る変形例の変形硬貨判定装置では1つの組に含まれる半径rの数は、2個以上であれば特に限定されない。
【0062】
(変形硬貨判定方法)
上記本開示の変形硬貨判定装置では、硬貨の画像から硬貨の複数の半径を算出する半径算出ステップと、画像から硬貨の基準半径を算出する基準半径算出ステップと、基準半径に基づく基準半径データに対する複数の半径に基づく複数の半径データのばらつきを表す第1特徴量を算出する第1特徴量算出ステップと、第1特徴量に基づき、硬貨が変形硬貨であるか否かを判定する変形硬貨判定ステップとを行うことにより、変形硬貨を判定している。このような各ステップを含む方法は、本開示の変形硬貨判定方法でもある。
【0063】
(実施形態2)
実施形態2に係る変形硬貨判定装置は、半径算出手段と、基準半径算出手段と、第1特徴量算出手段と、変形硬貨判定手段とに加え、第2特徴量算出手段を備え、変形硬貨判定手段が、第1特徴量及び第2特徴量に基づき、硬貨が変形硬貨であるか否かを判定する点が、上記実施形態1に係る変形硬貨判定装置と異なる。
なお、第2特徴量とは、基準直径に対する複数の直径のばらつきのことを意味する。
このような変形硬貨判定装置について、以下に図面を用いて説明する。
【0064】
図6は、実施形態2に係る変形硬貨判定装置の構成を説明するブロック図である。
図6に示すように、変形硬貨判定装置110は、半径算出手段111と、基準半径算出手段112と、第1特徴量算出手段113と、第2特徴量算出手段115と、変形硬貨判定手段114とを備える。
なお、半径算出手段111と、基準半径算出手段112と、第1特徴量算出手段113と、第2特徴量算出手段115と、変形硬貨判定手段114とは電子計算機に組み込まれ、CPU等のコントローラ(プロセッサ)にてプログラムを実行することによって機能してもよい。
【0065】
次に、図7を用いて、実施形態2に係る変形硬貨判定装置の動作について説明する。
図7は、実施形態2に係る変形硬貨判定装置の動作の一例を説明するフローチャートである。
【0066】
図7に示すように変形硬貨判定装置110では、まず、半径算出手段111が硬貨の画像から硬貨の複数の半径を算出する(工程S21)。
【0067】
次に、基準半径算出手段112が、硬貨の画像から硬貨の基準半径を算出する(工程S22)。
【0068】
次に、第1特徴量算出手段113が、基準半径に基づく基準半径データに対する複数の半径に基づく複数の半径データのばらつきを表す第1特徴量を算出する(工程S23)。
【0069】
次に、第2特徴量算出手段115が、基準半径及び半径から基準直径及び直径を算出し、基準直径に対する複数の直径のばらつきを表す第2特徴量を算出する(工程S24)。
【0070】
次に、変形硬貨判定手段114が、第1特徴量及び第2特徴量に基づき、硬貨が変形硬貨であるか否かを判定し(工程S25)、変形硬貨判定装置110の動作が終了する。
【0071】
以下、各工程を、図面を用いて例示しながら詳述する。
なお、(工程S21)~(工程S23)は、上記(工程S11)~(工程S13)と同じ処理であるので、ここでの説明は省略する。
【0072】
<第2特徴量算出ステップ(工程S24)>
<直径算出サブステップ(工程S24-1)>
図8は、本開示の実施形態2に係る変形硬貨判定装置において、第2特徴量算出手段が直径を算出する方法の一例を模式的に示す説明図である。
図8に示すように、(工程S24)では、半径算出手段111が、(工程S21)で検出した硬貨の外周22上の各点P(P~P32)のうち、硬貨の中心21から各点Pを結ぶ線分の角度が180°になる点Pのペアを検出し、ペアとなる点P間の距離(ペアとなる2つの点Pから算出された2つの半径の合計)を硬貨20の直径R(R~R16)として算出する。
【0073】
<基準直径算出サブステップ(工程S24-2)>
次に、算出された硬貨20の直径Rを、長さ順にソートし、例えば、中央の4本の直径Rの平均を算出して基準直径Rを算出してもよい。なお、上記説明では、基準直径Rを中央の4本の直径Rの平均として算出したが、中央の所定本数、たとえば中央の2本の平均を算出して基準直径Rとしてもよく、全ての直径の平均値と基準直径Rとしてもよい。
【0074】
なお、(工程S22)において、基準半径rを算出する際に、硬貨20の直径R及び基準直径Rを算出している場合には、(工程S24-1)及び(工程S24-2)を省略してもよい。
【0075】
また、直径Rが、基準直径Rよりも大きい値の場合、当該直径Rの値を、基準直径Rと同じ値にする処理を行ってもよい。
硬貨の変形のうち頻度が高い変形は、主面部分が曲がる変形である。このような変形硬貨を平面視すると、楕円状に見える。硬貨が楕円状に見える場合、変形部分では、直径が短くなる。
また、硬貨の変形のうち、硬貨の一部が厚さ方向に潰れる等により、硬貨を平面視した際に、硬貨の通常の輪郭よりもはみ出るような変形は稀である。
そのため、直径Rが基準直径Rよりも大きい値になる場合、ゴミや画像上のノイズ等の影響で直径Rが、実際の値よりも大きく算出されている可能性が高い。このような直径Rを、変形硬貨であるか否かの判定に用いると誤検出の原因となる場合がある。
そのため、直径Rが、基準直径Rよりも大きい場合、当該直径Rを基準直径Rの値とすると、上記誤検出される確率を減少させることができる。
【0076】
<第2特徴量算出サブステップ(S24-3)>
本工程では、第2特徴量算出手段115が、基準直径Rに対する複数の直径Rのばらつきを表す第2特徴量を算出する。
【0077】
第2特徴量(ばらつき)は、全直径Rが基準直径Rと同じであればゼロ又は1となる。つまり、第2特徴量を、直径Rと基準直径Rとの差に基づき算出する場合、全直径Rが基準直径Rと同じであれば第2特徴量はゼロとなる。また、第2特徴量を、直径Rと基準直径Rとの比に基づき算出する場合、全直径Rが基準直径Rと同じであれば第2特徴量は1となる。これらの数値を基準とすると、直径Rのばらつきが大きければ大きいほど、第2特徴量は、当該基準からの乖離が大きな値となる。直径Rと基準Rとの差に基づき算出する場合、第2特徴量は、通常では正の値となるが、負の値であってもよい。直径Rと基準直径Rとの比に基づき算出する場合、第2特徴量は、通常では正の値となる。
このように、基準直径Rに対する複数の直径Rのばらつきは、基準直径Rと複数の直径Rの差のばらつき、及び、基準直径Rと複数の直径Rの比のばらつきのいずれかであってもよい。
【0078】
基準直径Rと複数の直径Rの差のばらつきは、例えば、以下の式(2)により算出することができる。
【0079】
【数4】
【0080】
なお、上記式(2)において、複数の直径に順に付与した番号とは、直径に重複なしで、1から連番で付与した番号であり、その最大の番号は、第2特徴量の算出に用いた直径の数と等しくなる。
【0081】
上記式(2)で算出される第2特徴量は、基準直径Rと各直径の差を二乗した値を合計し、その値を、直径の数で割った値である。
基準直径Rが各直径Rの平均値である場合、第2特徴量は硬貨20の各直径Rの分散を意味する。
【0082】
なお、基準直径Rに対する複数の直径Rのばらつきとして、基準直径Rと複数の直径Rの比のばらつきを用いる場合は、第2特徴量は、例えば、基準直径Rに対する各直径Rの比を合計し、その値を、直径Rの数で割った値であってもよい。
【0083】
<変形硬貨判定ステップ(工程S25)>
(工程S25)では、変形硬貨判定手段114が、第1特徴量及び第2特徴量に基づき、硬貨20が変形硬貨であるか否かを判定する。
判定の基準は、あらかじめ第1閾値及び第2閾値を設定し、第1特徴量が、第1閾値の範囲に含まれるか否か、及び、第2特徴量が第2閾値の範囲に含まれるか否かで、硬貨20が変形硬貨であるか否かを判定してもよい。
【0084】
例えば、第1特徴量が第1閾値の範囲に含まれていない場合、及び、第2特徴量が第2閾値の範囲に含まれていない場合の両方を満たす場合、その硬貨20を、変形硬貨であると判定し、第1特徴量が第1閾値の範囲に含まれる場合、及び、第2特徴量が第2閾値の範囲に含まれる場合の少なくとも一方を満たす場合、その硬貨20を変形していない硬貨であると判定してもよい。
また、第1特徴量が第1閾値の範囲の含まれない場合、及び、第2特徴量が第2閾値の範囲に含まれていない場合のうち少なくとも一方の場合を満たす場合、その硬貨20は、変形硬貨であると判定し、第1特徴量が第1閾値の範囲に含まれる場合、及び、第2特徴量が第2閾値の範囲に含まれる場合の両方を満たす場合、その硬貨20を変形していない硬貨と判定してもよい。
このような判定基準はあらかじめ設定することができる。
【0085】
なお、本開示の実施形態2に係る変形硬貨判定装置では、<変形硬貨判定ステップ(工程S25)>の前に第1特徴量及び第2特徴量を算出することができれば、各ステップを行う順番は限定されない。
【0086】
ここで、実施形態2に係る変形硬貨判定装置において、第1特徴量及び第2特徴量の2つを用いて、変形硬貨であるか否かを判定する理由を説明する。
【0087】
第1特徴量は、基準半径に基づく基準半径データに対する複数の半径に基づく複数の半径データのばらつきを表す。
第1特徴量を算出する際、各半径が、硬貨の中心を基準に算出されると、硬貨が変形し、硬貨に凹みや膨れがある場合、基準半径データに対する複数の半径データのばらつきは大きくなる。すなわち、第1特徴量は、硬貨の変形に対し影響を受けやすい特徴量であると言える。
ただ、硬貨の半径を算出する際、まず、硬貨の中心を検出すると、検出された硬貨の中心が、真の硬貨の中心からずれる場合がある。この場合、基準半径データに対する複数の半径データのばらつきは大きくなる。すなわち、第1特徴量は、検出された硬貨の中心と、真の硬貨の中心とのずれに対し影響を受けやすい特徴量であると言える。
つまり、基準半径データに対する複数の半径データのばらつきが大きい場合、硬貨が変形しているのか、検出された硬貨の中心が真の硬貨の中心からずれているのかを、第1特徴量のみに基づいて判定することが困難となる可能性がある。
【0088】
第2特徴量は、基準直径に対する複数の直径のばらつきを表す。
第2特徴量を算出する際、各直径が、硬貨の中心を通る線分から算出されると、検出された硬貨の中心が真の硬貨の中心からずれていたとしても、その影響は受けにくい。すなわち第2特徴量は、検出された硬貨の中心と真の硬貨の中心とのずれに対し影響を受けにくい特徴量であると言える。
【0089】
そこで、第1特徴量及び第2特徴量の2つを用いて、変形硬貨であるか否かを判定することで、検出された硬貨の中心と真の硬貨の中心とのずれを考慮した判定を行うことができる。
【0090】
なお、直径を算出する部分の一方端に凹みが生じており、もう一方端に膨らみが生じている場合、その部分で測定した直径は、他の部分で測定した直径と同等程度になる場合がある。このような場合、硬貨が変形しているにも関わらず、基準直径に対する複数の直径のばらつきが大きくなりにくい。一方、第1特徴量であれは、このような場合であっても、基準半径データに対する複数の半径データのばらつきは大きくなる。すなわち、第1特徴量は第2特徴量よりも、硬貨の変形に対し影響を受けやすい特徴量であると言える。
【0091】
そのため、第1特徴量及び第2特徴量の2つを用いて、変形硬貨であるか否かを判定することで、第1特徴量のみ又は第2特徴量のみを用いるよりも精度よく変形硬貨を検出することができる。
【0092】
以上より、実施形態2に係る変形硬貨判定装置110は、検出された硬貨の中心と真の硬貨の中心とのずれにあまり影響を受けることなく、変形硬貨を検出することができる変形硬貨判定装置である。
【0093】
(実施形態2の変形例1)
次に、実施形態2の変形例1について説明する。
図9は、実施形態2の変形例1に係る変形硬貨判定装置の構成を説明するブロック図である。
図9に示すように、変形硬貨判定装置110aは、第3特徴量算出手段116を備える点が、上記変形硬貨判定装置110と異なる。
【0094】
変形硬貨判定装置110aは、(工程S24)の後、かつ(工程S25)の前に、第1特徴量及び第2特徴量に基づき第3特徴量を算出する。
そして、(工程S25)において、変形硬貨判定手段114は、第3特徴量に基づき、硬貨が変形硬貨であるか否かを判定する。
判定の基準は、あらかじめ第3閾値を設定し、第3特徴量が、第3閾値の範囲に含まれるか否かで、硬貨20が変形硬貨であるか否かを判定してもよい。
すなわち、第3特徴量が第3閾値の範囲を超えた場合、その硬貨を変形硬貨と判定し、第3特徴量が第3閾値の範囲内である場合、その硬貨を変形していない硬貨と判定してもよい。
【0095】
第3特徴量の算出方法は特に限定されないが、第3特徴量は、第1特徴量と第2特徴量との積であってもよい。
【0096】
ここで、第1特徴量が上記式(1)から算出された値であり、第2特徴量が上記式(2)から算出された値であり、第3特徴量が第1特徴量と第2特徴量との積である場合を例に挙げ、以下に、変形硬貨であるか否かを判定できる理由を説明する。
【0097】
第1特徴量が上記式(1)から算出された値である場合、基準半径データに対する複数の半径データのばらつきが大きいほど大きな値となり、当該ばらつきが小さいほど小さな値となる。
また、第2特徴量が上記式(2)から算出された値である場合、基準直径に対する複数の直径のばらつきが大きいほど大きな値となり、当該ばらつきが小さいほど小さな値となる。
【0098】
このような場合において、第1特徴量の値が大きい場合、硬貨が変形していること、及び、検出された硬貨の中心が真の硬貨の中心からずれていることのうち少なくとも一方が生じている可能性が高い。また、第1特徴量の値が小さい場合、硬貨があまり変形しておらず、かつ、検出された硬貨の中心が真の硬貨の中心からあまりずれていない可能性が高い。
【0099】
さらに、第2特徴量の値が大きい場合は、硬貨が大きく変形している可能性が高い。
また、第2特徴量の値が小さい場合は、検出された硬貨の中心が真の硬貨の中心からあまりずれていない可能性が高い。
【0100】
硬貨に変形が生じている場合、第1特徴量が大きくなり、かつ、第2特徴量も大きくなる。
硬貨に変形が生じていないが、検出された硬貨の中心が真の硬貨の中心からずれている場合、第1特徴量は大きくなり、第2特徴量は小さくなる傾向を示す。
硬貨に変形が生じておらず、検出された硬貨の中心が真の硬貨の中心からずれていない場合は、第1特徴量が小さくなり、第2特徴量は小さくなる傾向を示す。
第3特徴量が第1特徴量と第2特徴量との積であると、第3特徴量の値は、硬貨に変形が生じている場合が最も大きな値となり、硬貨に変形が生じていないが検出された硬貨の中心が真の硬貨の中心からずれている場合が次に大きな値となり、硬貨に変形が生じておらず、検出された硬貨の中心が真の硬貨の中心からずれていない場合が、最も小さな値となる傾向を示す。
【0101】
そこで、第3特徴量を用いると、硬貨に変形が生じている場合に算出される第3特徴量と、硬貨に変形が生じていないが、検出された硬貨の中心が真の硬貨の中心からずれている場合に算出される第3特徴量との間に閾値を設定することが可能になり、変形硬貨であるか否かをより高精度に判定することができる。
【0102】
(実施形態2の変形例2)
次に本開示の実施形態2の変形例2に係る変形硬貨判定装置について説明する。
実施形態2に係る変形硬貨判定装置は、半径算出手段、基準半径算出手段、第1特徴量算出手段、変形硬貨判定手段及び第2特徴量算出手段に加え、直径算出手段、基準直径算出手段及びを備える点が上記変形硬貨判定装置110と異なる。
また、上記変形硬貨判定装置110では、基準直径及び直径を、半径算出手段により算出された半径を用いて算出していたが、本開示の実施形態2の変形例2に係る変形硬貨判定装置では、別途直径算出手段及び基準直径算出手段、直径及び基準直径を別途算出する点が上記変形硬貨判定装置110と異なる。
【0103】
図10は、実施形態2の変形例2に係る変形硬貨判定装置の構成を説明するブロック図である。
図10に示す変形硬貨判定装置110bは、半径算出手段111と、基準半径算出手段112と、第1特徴量算出手段113と、直径算出手段117、基準直径算出手段118及び第2特徴量算出手段115、変形硬貨判定手段114とを備える。
なお、半径算出手段111と、基準半径算出手段112と、第1特徴量算出手段113と、直径算出手段117、基準直径算出手段118と、第2特徴量算出手段115と、変形硬貨判定手段114とは電子計算機に組み込まれ、CPU等のコントローラ(プロセッサ)にてプログラムを実行することによって機能してもよい。
【0104】
次に、図11を用いて、実施形態1に係る変形硬貨判定装置の動作について説明する。
図11は、実施形態2の変形例2に係る変形硬貨判定装置の動作の一例を説明するフローチャートである。
【0105】
図11に示すように変形硬貨判定装置110bでは、まず、半径算出手段111が硬貨の画像から硬貨の複数の半径を算出する(工程S31)。
【0106】
次に、基準半径算出手段112が、硬貨の画像から硬貨の基準半径を算出する(工程S32)。
【0107】
次に、第1特徴量算出手段113が、基準半径に基づく基準半径データに対する複数の半径に基づく複数の半径データのばらつきを表す第1特徴量を算出する(工程S33)。
【0108】
また、図11に示すように、変形硬貨判定装置110では、直径算出手段117が硬貨の画像から硬貨の複数の直径を算出する(工程S34)。
【0109】
次に、基準直径算出手段118が、硬貨の画像から硬貨の基準直径を算出する(工程S35)。
【0110】
次に、第2特徴量算出手段115が、基準直径に対する複数の直径のばらつきを表す第2特徴量を算出する(工程S36)。
【0111】
なお、変形硬貨判定装置110bでは、(工程S31)~(工程S33)と並列して、(工程S34)~(工程S36)を行ってもよい。
なお、実施形態2の変形例2に係る変形硬貨判定装置では、後述する<変形硬貨判定ステップ(工程S37)>の前に第1特徴量及び第2特徴量を算出することができれば、各ステップを行う順番は限定されない。
【0112】
次に、変形硬貨判定手段114が、第1特徴量及び第2特徴量に基づき、硬貨が変形硬貨であるか否かを判定し(工程S37)、変形硬貨判定装置110bの動作が終了する。
【0113】
以下、各工程を、図面を用いて例示しながら詳述する。
なお、(工程S31)~(工程S33)及び(工程S37)は、それぞれ、上記変形硬貨判定装置110における(工程S21)~(工程S23)及び(工程S25)と同じであるので、ここでの説明は省略する。
【0114】
<直径算出ステップ(工程S34)>
図12は、本開示の実施形態2の変形例2に係る変形硬貨判定装置において、半径算出手段が硬貨の画像から硬貨の複数の半径を算出する方法の一例を模式的に示す説明図である。
直径算出ステップ(工程S34)では、図12に示すように、硬貨の中心21を軸に、硬貨20を32分割するような硬貨の外周22上の各点P´(P´~P32´)を検出する。
【0115】
次に、各点P´(P´~P32´)のうち、硬貨の中心21から各点P´を結ぶ線分の角度が180°になる点P´のペアを検出し、ペアとなる点P´間の距離(ペアとなる2つの点P´から算出された2つの半径の合計)を硬貨20の直径R´(R´~R16´)として算出する。
なお、図12では、複数の直径R´を取得するための各点P´が、硬貨の外周22に等間隔に位置するようにして複数の直径R´を算出しているが、本開示の変形硬貨判定装置では、各点P´の間隔は等間隔でなくてもよく、各点P´が、硬貨の外周上で所定の間隔を空けて位置するようにして直径R´を算出してもよい。
また、図12では、硬貨の中心21を軸に、硬貨20を32分割する硬貨の外周上の点P´に基づき、複数の直径R´を取得しているが、本開示の変形硬貨判定装置では、2以上の直径R´を取得できれば、分割の数は特に限定されない。
また、図12では、硬貨の外周22上の各点P´を検出してから、直径R´を算出しているが、変形硬貨判定装置110bでは、硬貨の中心21を通る直線と、硬貨の外周22との交点から直径R´を算出してもよい。
【0116】
<基準直径算出ステップ(工程S35)>
次に、(工程S35)では、(工程S34)で算出した直径R´を、長さ順にソートし、中央の4本の直径R´の平均を算出して基準直径R´を算出してもよい。
なお、上記説明では、基準直径R´を中央の4本の直径R´の平均として算出したが、中央の所定本数、たとえば中央の2本の平均を算出して基準直径R´としてもよく、全ての直径の平均値と基準直径R´としてもよい。
【0117】
また、直径R´が、基準直径R´よりも大きい値の場合、当該直径Rの値を、基準直径R´と同じ値にする処理を行ってもよい。
【0118】
<第2特徴量算出ステップ(工程S36)>
(工程S36)では、第2特徴量算出手段115が、基準直径R´に対する複数の直径R´のばらつきを表す第2特徴量を算出する。
なお、第2特徴量の算出方法は、上記(工程S24-3)で説明した方法と同じであってもよい。
【0119】
(実施形態3)
次に、本開示の変形硬貨判定装置を備える硬貨識別機、及び、当該硬貨識別機を備える硬貨処理機について説明する。
図13は、本開示の硬貨識別機の構成を説明するブロック図である。
図13に示す硬貨識別機201は、撮像部231と、記憶部234と、制御部235とを備えている。
また、記憶部234は、画像情報234aと、標準画像情報234bと、閾値情報234cとを記憶し、制御部235は、画像取得部235aと、位置決定部235bと、金種識別部235cと、変形硬貨判定部210とをさらに備えている。
【0120】
なお、硬貨識別機201は、上記本開示の実施形態1又は実施形態2の変形硬貨判定装置を、変形硬貨判定部210として備えている。
【0121】
撮像部231は、硬貨に対して緑光等の可視光や赤外光のうち1光源又は複数の光源を照射する光照射装置と光照射装置から照射した光が硬貨に反射した反射光を受光するCCD(Charge Coupled Device)カメラ/CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)カメラとを備えている。そして、撮像部231は、硬貨の画像を撮像し、撮像された画像データを画像取得部235aへ渡す。
【0122】
記憶部234は、RAM(Random Access Memory)や不揮発性メモリといった記憶デバイスであり、画像情報234a、及び、閾値情報234cを記憶する。画像情報234aは、撮像部231で撮像された硬貨の画像データである。
【0123】
閾値情報234cは、変形硬貨の判定の際に使用する閾値データである。変形硬貨判定部210では、算出した特徴量(第1特徴量、第1特徴量と第2特徴量との組み合わせ、又は、第3特徴量)が閾値情報234cの閾値の範囲に含まれているか否かで変形硬貨であるか否かを判定する。ここで、閾値情報234cの詳細について図14を用いて説明する。
【0124】
図14は、閾値情報の一例を示す図である。図14に示すように、閾値情報234cは、「金種」項目と、「閾値」項目とを含んでいる。
【0125】
「金種」ごとに、「閾値」を設定しておき、第1特徴量、第1特徴量と第2特徴量との組み合わせ、又は、第3特徴量と閾値とを比較する際、硬貨の金種に対応する閾値を用いる。
【0126】
これにより、硬貨識別機201では、硬貨の金種ごとの特徴による変形率の違いを包含することが可能となり、より高精度に変形硬貨であるか否かを判定することができる。なお、閾値情報234cの閾値は、金種ごとではなく、1種類のみでもよい。
【0127】
図13の説明に戻り、硬貨識別機201についての説明をつづける。制御部235は、硬貨識別機201の全体制御を行う制御部である。画像取得部235aは、撮像部231で撮像された硬貨の画像データを取得し、記憶部234の画像情報234aへ渡す処理を行う処理部である。
【0128】
位置決定部235bは、画像情報234aから硬貨の中心及び外周を決定する処理を行う処理部である。
具体的には、位置決定部235bは、画像情報234aに映る硬貨の仮の中心を設定し、硬貨の外周を含む部分画像を切り出し、外周を検出する。その後、位置決定部235bは、検出された硬貨の外周の軌道に基づいて硬貨の中心位置を補正する。これにより、硬貨の中心及び外周の位置を決定する。
【0129】
金種識別部235cは、位置決定部235bによって決定された中心位置及び画像情報234aに映る硬貨の大きさや模様等によって金種、硬貨の表裏を識別する処理を行う処理部である。また、金種識別部235cは、記憶部234に予め記憶される金種ごとの標準画像情報234bとの比較によって正貨であるか否かを識別する処理を併せて行う。なお、金種識別部235cは、金種を識別する際、硬貨の重さや厚み等によって識別することとしてもよい。
【0130】
変形硬貨判定部210は、上記実施形態1及び実施形態2で説明したように、変形硬貨であるか否かを判定する。
【0131】
次に、上記本開示の硬貨識別機を備える本開示の硬貨処理機について説明する。
図15は、本開示の硬貨処理機の一例を模式的に示す側面断面図である。
【0132】
図15に示すように、硬貨処理機202は、略直方体形状の筐体240と、筐体240の外部から内部に硬貨を投入するための投入口241と、投入口241に投入された硬貨を後述する硬貨繰出ユニット244へ供給するための供給部242とを備えている。
【0133】
さらに、硬貨処理機202に備える筐体240内部には、制御部260が設けられ、各構成要素を制御する。
なお、制御部260は、硬貨識別機201等を含めた硬貨処理機202全体を制御する部分である。
【0134】
硬貨処理機202は、供給部242から供給された硬貨を貯留するとともに硬貨を繰出す硬貨繰出ユニット244をさらに備える。硬貨繰出ユニット244には、繰出された硬貨を筐体240の内部で搬送する搬送部245が接続されている。
【0135】
搬送部245には、略水平方向に延びる搬送路246が設けられ、硬貨繰出ユニット244から繰出された硬貨が搬送路246に沿って1枚ずつ搬送される。搬送路246の上方には図示しないベルト状の硬貨押さえ機構が設けられ、搬送路246上で搬送される硬貨の浮きを防止する。
【0136】
また、搬送部245の上流側には、硬貨識別機201が設けられ、硬貨が硬貨識別機201を通過する際、硬貨識別機201の撮像部により硬貨の画像が撮像される。一方、搬送部245の下流側には、選別部247が設けられ、搬送部245から搬送路246経由で搬送された硬貨が、金種識別部235cによって識別された識別結果等に基づいて選別され、各開口部248a、248b、248c、248dへ送られる。
【0137】
具体的には、硬貨識別機201の変形硬貨判定部210によって変形硬貨であると判定された硬貨、金種識別部235cによって識別することができない硬貨、又は、正貨でないと識別された硬貨は、リジェクト硬貨としてリジェクト部232へ排出される。
【0138】
その際、リジェクト硬貨は、選別部247の下方に設けられるリジェクト硬貨開口部248a及びリジェクト硬貨シュート251を介して筐体240の外部からアクセス可能なリジェクト部232へ排出されることとなる。
【0139】
また、金種識別部235cによって識別された金種ごとに、硬貨は、選別部247の下方に設けられる開口部248b、248c、248d及びシュート249を介して金種別の収納部233へ収納される。
【0140】
なお、上記説明では、変形硬貨であると判定された硬貨は、リジェクト部232へ排出されることとしたが、リサイクル使用しないこととして、収納部233へ収納されてもよい。また、リジェクト用の収納部を硬貨処理機202内に別に設け、変形硬貨であると判定された硬貨はリジェクト用の収納部へ分別されて収納されてもよい。
【0141】
また、上記説明では、金種ごとに選別されて収納部233へ収納されることとしたが、複数金種が混合状態で収納されてもよい。収納部233に収納された硬貨は、筐体240の扉243を開けることにより、現金の回収業務を行う銀行の行員等によって回収されることとなる。
【0142】
また、硬貨繰出ユニット244の下方には、異物排出シュート250が設けられており、硬貨繰出ユニット244から異物排出シュート250へ送られた異物等は、リジェクト硬貨シュート251を介してリジェクト部232へ排出される。
【0143】
ここで、開口部248b、248c、248dと収納部233との間に、図示しない一時貯留部を設けてもよく、一時貯留部に貯留された硬貨を、所定時に収納部233へ収納することとしてもよい。
【0144】
このように、硬貨処理機202では、投入口241に投入された硬貨は、硬貨繰出ユニット244へ送られ、硬貨繰出ユニット244から繰出された硬貨は、搬送路246上の硬貨識別機201を通過後、選別部247によって選別される。
【0145】
具体的には、制御部235によって変形硬貨であると判定された場合、リジェクト硬貨としてリジェクト部232へ返却され、正常な硬貨は収納部233へ収納される。
【0146】
次に、図16を用いて、本開示の硬貨処理機の動作について説明する。
図16は、本開示の硬貨処理機の動作の一例を説明するフローチャートである。
【0147】
図16に示すように、画像取得部235aは、撮像部231で撮像された硬貨の画像を取得し(工程S101)、記憶部234の画像情報234aへ渡す。
【0148】
その後、位置決定部235bは、画像情報234aに基づいて硬貨の仮の中心を設定し(工程S102)、仮の中心に基づき硬貨の外周の決定を行う(工程S103)。
【0149】
そして、位置決定部235bは、(工程S103)で決定した硬貨の外周に基づき硬貨の中心の位置を補正し(工程S104)、補正した硬貨の中心に基づき、再度硬貨の外周の決定を行う(工程S105)。
【0150】
つづいて、金種識別部235cは、(工程S104)で決定された硬貨の中心の位置及び画像情報234aに映る硬貨の大きさや模様等によって金種、硬貨の表裏を識別する(工程S106)。
【0151】
そして、変形硬貨判定部210は、(工程S104)及び(工程S105)で決定した硬貨の中心の位置及び硬貨の外周、並びに、(工程S106)で識別した金種に対応する閾値に基づいて変形硬貨であるか否かを判定する(工程S107)。
【0152】
変形硬貨判定部210は、変形硬貨であると判定した場合(工程S108,Yes)、かかる硬貨をリジェクト部232へ排出し(工程S109)、硬貨処理機202が実行する変形硬貨判定処理を終了する。
【0153】
一方、変形硬貨判定部210は、変形硬貨ではなく正常な硬貨であると判定した場合(工程S108,No)、かかる硬貨を収納部233へ収納し(工程S110)、硬貨処理機202が実行する変形硬貨判定処理を終了する。
【産業上の利用可能性】
【0154】
以上のように、本開示に係る変形硬貨判定装置は、精度良く変形硬貨を検出する場合に有用である。
【符号の説明】
【0155】
10、110、110a、110b 変形硬貨判定装置
11、111 半径算出手段
12、112 基準半径算出手段
13、113 第1特徴量算出手段
14、114 変形硬貨判定手段
20 硬貨
21 硬貨の中心
22 硬貨の外周
115 第2特徴量算出手段
116 第3特徴量算出手段
117 直径算出手段
118 基準直径算出手段
201 硬貨識別機
202 硬貨処理機
210 変形硬貨判定部
231 撮像部
232 リジェクト部
233 収納部
234 記憶部
234a 画像情報
234b 標準画像情報
234c 閾値情報
235 制御部
235a 画像取得部
235b 位置決定部
235c 金種識別部
240 筐体
241 投入口
242 供給部
243 扉
244 硬貨繰出ユニット
245 搬送部
246 搬送路
247 選別部
248a、248b、248c、248d 開口部
249 シュート
250 異物排出シュート
251 リジェクト硬貨シュート
260 制御部

図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16