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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068524
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】被服用冷却装置
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/002 20060101AFI20240513BHJP
   A41D 13/005 20060101ALI20240513BHJP
   F04D 29/42 20060101ALI20240513BHJP
   F04D 25/08 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
A41D13/002 105
A41D13/005 108
A41D13/005 103
F04D29/42 H
F04D25/08 301Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179046
(22)【出願日】2022-11-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】517312135
【氏名又は名称】株式会社リブレ
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀井 邦彦
【テーマコード(参考)】
3B011
3B211
3H130
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AA05
3B011AB01
3B011AB11
3B011AC02
3B011AC03
3B011AC18
3B011AC21
3B211AA01
3B211AA05
3B211AB01
3B211AB11
3B211AC02
3B211AC03
3B211AC18
3B211AC21
3H130AA13
3H130AB06
3H130AB26
3H130AB45
3H130AC25
3H130BA66H
3H130BA66Z
3H130BA69H
3H130BA69Z
3H130DF01Z
3H130DF09Z
3H130DJ01Z
3H130DJ06Z
3H130EA01A
3H130EA01Z
3H130EA04A
3H130EA04Z
3H130EA07A
(57)【要約】
【課題】被服を着用する人に使い勝手が良く、かつ冷風を効率良く送ることができる被服用冷却装置を提供する。
【解決手段】被服用冷却装置1は、ハウジング30内にペルチェ素子と、ペルチェ素子の一面に形成された冷却フィンと、他面に形成された放熱フィンと、冷却フィンと放熱フィンに風を送る送風ファンを配置し、被服に装着されて被服内を冷却する。被服用冷却装置1には、送風ファンが外気を取り入れるための空気取入口31が、ハウジング30に開口し、冷却フィンを通過した冷風が排気される第1送風口42(冷風口)と、放熱フィンを通過した熱風が排気される放熱口とが、ハウジングの正反対の方向に開口している。第1送風口42(冷風口)は第1フランジ43を有し、第1フランジ43が、被服に形成された開口部の内外周面と着脱自在に結合される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、前記ハウジング内にペルチェ素子と、前記ペルチェ素子の一面に形成された冷却フィンと、前記一面と反対面に形成された放熱フィンと、前記冷却フィンと前記放熱フィンに風を送る送風ファンが配置され、被服に装着されて被服内を冷却する被服用冷却装置において、
前記送風ファンが外気を取り入れるための空気取入口が、前記ハウジングに開口していること、
前記冷却フィンを通過した冷風が排気される冷風口と、前記放熱フィンを通過した熱風が排気される放熱口とが、前記ハウジングの正反対の方向に開口していること、
前記冷風口はフランジを有し、前記フランジが、前記被服に形成された開口部の内外周面と着脱自在に結合されること、
を特徴とする被服用冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載する被服用冷却装置において、
前記フランジを前記内外周面に取り付けるための補強部材を有すること、
を特徴とする被服用冷却装置。
【請求項3】
請求項1に記載する被服用冷却装置において、
前記空気取入口が、前記冷風口と同じ側にある前記ハウジングの面に形成され、前記被服内の空気を取り込むこと、
を特徴とする被服用冷却装置。
【請求項4】
請求項1に記載する被服用冷却装置において、
前記空気取入口が、前記放熱口と同じ側にある前記ハウジングの面に形成され、外気を取り込むこと、
を特徴とする被服用冷却装置。
【請求項5】
請求項1に記載する被服用冷却装置において、
制御部を有し、前記制御部で前記ペルチェ素子に供給する直流電流の極性を逆転させることにより、請求項2または請求項3の作用を切り替え可能とすること、
を特徴とする被服用冷却装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5に記載する被服用冷却装置のいずれか1つにおいて、
前記ハウジングが、前記被服に形成されたポケットに挿入されること、
前記ポケットには、前記被服側または前記外気側の少なくとも1面がメッシュで形成されていること、
を特徴とする被服用冷却装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジングと、このハウジング内にペルチェ素子と、ペルチェ素子の一面に形成された冷却フィンと、一面と反対面に形成された放熱フィンと、冷却フィンと放熱フィンに風を送る送風ファンを配置してなり、被服に装着して被服内を冷却する被服用冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人にとって不快な猛暑日は近年、年間を通じて数多くあり、このような猛暑日には、熱中症の防止策として、小まめな水分補給をはじめ、適度な冷房装置の使用が、奨励されている。しかしながら、冷房装置の設備がない、または冷房の効きが十分でない等の理由により、猛暑下の屋外で働く作業者や、屋内の蒸し暑い環境下で働く作業者、炎天下でレクリエーションやスポーツ、観戦等を行っている人は、冷房装置で涼を取ることはできない。そこで、避暑を求める人向けに、空調機能を備えた衣服が普及し、近年では、ペルチェ素子を利用した空調ユニットを装着した空調衣服も開発されている。その一例が、特許文献1,2に開示されている。
【0003】
特許文献1は、衣服内部と衣服外部とを仕切る仕切板にペルチェ素子を装着し、仕切板の衣服内部側に、ペルチェ素子の一面の熱を伝導させる第1熱伝導部材と、第1熱伝導部材で熱交換した空気を衣服内部側に拡散させる第1のファンを備えると共に、仕切板の衣服外部側に、ペルチェ素子の他面の熱を伝導させる第2熱伝導部材と、第2熱伝導部材で熱交換した空気を衣服外部側に放出させる第2のファンを備えた熱交換ユニットである。この熱交換ユニットは、衣服の生地に取り付けられる。
【0004】
特許文献2は、着用者の腰に配置される吸入口から空気を流路に取り込み、流路に取り込んだ空気をペルチェ素子で冷却し、冷却した空気を帯状の排出口に誘導して、着用者の背の中央や首周りに排出する空調ユニットを有した機能服である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-97799号公報
【特許文献2】特開2019-70215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1,2には、以下の問題があった。特許文献1は、仕切板に取付けたペルチェ素子を挟み、衣服内部側と衣服外部側にそれぞれ、熱伝導部材とファンとを一列状に配置した構造になっているため、熱交換ユニット全体が必然的に大型化してしまう。それ故に、人が、特許文献1の熱交換ユニットの付いた衣服を着用して作業や動作等を行うとき、熱交換ユニットが作業等の邪魔となり、身動きが取り取り難くなってしまう虞もある。従って、この熱交換ユニットを装着した衣服の使い勝手は良くない。
【0007】
また、特許文献2では、ペルチェ素子で冷却された空気の流路が、衣服の生地外側に配置されているため、猛暑日に機能服を着用した人が、炎天下で作業や動作等を行うときに、冷却された空気の流路が、炎天下に直に晒されてしまう。それ故に、吸入口から流路に取り込まれた空気が、ペルチェ素子で冷却されても、冷却した空気の流路が、高い外気温下で直射日光に照射されて温められてしまい、冷えた空気が、着用者の背や首周りに届かない虞もある。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、被服を着用する人に使い勝手が良く、かつ冷風を効率良く送ることができる被服用冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る被服用冷却装置は、以下の構成を有する。
(1)ハウジングと、前記ハウジング内にペルチェ素子と、前記ペルチェ素子の一面に形成された冷却フィンと、前記一面と反対面に形成された放熱フィンと、前記冷却フィンと前記放熱フィンに風を送る送風ファンが配置され、被服に装着されて被服内を冷却する被服用冷却装置において、前記送風ファンが外気を取り入れるための空気取入口が、前記ハウジングに開口していること、前記冷却フィンを通過した冷風が排気される冷風口と、前記放熱フィンを通過した熱風が排気される放熱口とが、前記ハウジングの正反対の方向に開口していること、前記冷風口はフランジを有し、前記フランジが、前記被服に形成された開口部の内外周面と着脱自在に結合されること、を特徴とする。
(2)(1)に記載する被服用冷却装置において、前記フランジを前記内外周面に取り付けるための補強部材を有すること、を特徴とする。
(3)(1)に記載する被服用冷却装置において、前記空気取入口が、前記冷風口と同じ側にある前記ハウジングの面に形成され、前記被服内の空気を取り込むこと、を特徴とする。
(4)(1)に記載する被服用冷却装置において、前記空気取入口が、前記放熱口と同じ側にある前記ハウジングの面に形成され、外気を取り込むこと、を特徴とする。
(5)(1)に記載する被服用冷却装置において、制御部を有し、前記制御部で前記ペルチェ素子に供給する直流電流の極性を逆転させることにより、(2)または(3)の作用を切り替え可能とすること、を特徴とする。
(6)(1)乃至(5)に記載する被服用冷却装置のいずれか1つにおいて、前記ハウジングが、前記被服に形成されたポケットに挿入されること、前記ポケットには、前記被服側または前記外気側の少なくとも1面がメッシュで形成されていること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記構成を有する本発明に係る被服用冷却装置の作用・効果について説明する。
【0011】
(1)ハウジングと、ハウジング内にペルチェ素子と、ペルチェ素子の一面に形成された冷却フィンと、一面と反対面に形成された放熱フィンと、冷却フィンと放熱フィンに風を送る送風ファンが配置され、被服に装着されて被服内を冷却する被服用冷却装置において、送風ファンが外気を取り入れるための空気取入口が、ハウジングに開口していること、冷却フィンを通過した冷風が排気される冷風口と、放熱フィンを通過した熱風が排気される放熱口とが、ハウジングの正反対の方向に開口していること、冷風口はフランジを有し、フランジが、被服に形成された開口部の内外周面と着脱自在に結合されること、を特徴とする。
【0012】
この特徴により、本発明に係る被服用冷却装置は、フランジを被服の開口部との着脱を行うだけで、簡単に被服のポケットに装着したり、取り外したりすることができる。そのため、被服を洗濯する場合等には、被服に、本発明に係る被服用冷却装置の着脱作業が簡単にでき、本発明に係る被服用冷却装置は、その使用者にとって使い勝手が良い。また、本発明に係る被服用冷却装置が被服のポケット内に装着され、本発明に係る被服用冷却装置の冷風口が、被服の被服内側に配置されるため、冷却フィンで生成された冷風は、炎天下で高温となっている外気側の熱影響を受け難く、一例として、10℃近傍に冷やされた低温を維持したまま、主として首筋や、多汗となる脇の下や脇腹等、冷やしたい身体の部位に直接、効率良く送風することができる。
【0013】
従って、本発明に係る被服用冷却装置によれば、被服の着用者にとって使い勝手が良く、かつ冷風を効率良く着用者に送ることができている、という優れた効果を奏する。
【0014】
(2)に記載する被服用冷却装置において、フランジを内外周面に取り付けるための補強部材を有すること、を特徴とする。
【0015】
この特徴により、本発明に係る被服用冷却装置を装着した被服の着用者が、大きな動作を伴って作業を行っている場合等でも、本発明に係る被服用冷却装置は、その動作に起因してポケットからの落下を抑制することができる。
【0016】
(3)に記載する被服用冷却装置において、空気取入口が、冷風口と同じ側にあるハウジングの面に形成され、被服内の空気を取り込むこと、を特徴とする。
【0017】
この特徴により、空気取入口に取入れる空気が、外気側の温度より低い状態にある(第1の使用環境)ときに、空気取入口に導入された空気は、冷却フィンで、より低い温度に冷やされ、ヒンヤリ感を十分に有した冷風になり易い。また、本発明に係る被服用冷却装置を装着した被服の着用者が、例えば、屋内で粉塵や油煙が漂う雰囲気下や、高温で湿気の多い雰囲気下にある設備で作業を行う場合等、屋内で過酷な雰囲気下にある場合(第2の使用環境)に、被服内側の空気が、空気取入口に取り入れられると、屋内の雰囲気にある空気以外の異物による悪影響が、本発明に係る被服用冷却装置に及ぶのを抑制することができる。
【0018】
(4)に記載する被服用冷却装置において、空気取入口が、放熱口と同じ側にあるハウジングの面に形成され、外気を取り込むこと、を特徴とする。
【0019】
この特徴により、外気側の空気と、被服内側の空気との温度差が、例えば、数℃程度、比較的小さい状態にある(第3の使用環境)ときに、空気取入口が、外気側の空気を取り入れば、空気取入口へと流通する空気に伴う抵抗が、概ね閉じた空間をなす被服内側から空気を導入する場合に比べて、小さく抑えることができる。そのため、本発明に係る被服用冷却装置では、送風ファンにより、空気取入口に導入する空気は、ペルチェ素子に向けてスムーズに流通し易く、冷風も、冷風口からスムーズな流れで送風できるようになる。
【0020】
(5)に記載する被服用冷却装置において、制御部を有し、制御部でペルチェ素子に供給する直流電流の極性を逆転させることにより、(2)または(3)の作用を切り替え可能とすること、を特徴とする。
【0021】
この特徴により、本発明に係る被服用冷却装置の使用にあたり、前述した第1~第3の使用環境等、様々な使用環境がある中、本発明に係る被服用冷却装置は、その取り巻く環境下に合わせて、(2)の作用と(3)の作用とに臨機応変に対応することが可能である。しかも、制御部の操作により、ペルチェ素子での直流電流の極性を反転させた後、被服のポケット内で収容する、本発明に係る被服用冷却装置の向きを、被服内側と外気側に対して反転させるだけで、本発明に係る被服用冷却装置の使用態様は、(2)の作用と(3)の作用とを、簡単に切り替えることができる。
【0022】
(6)に記載する被服用冷却装置のいずれか1つにおいて、ハウジングが、被服に形成されたポケットに挿入されること、ポケットには、被服側または外気側の少なくとも1面がメッシュで形成されていること、を特徴とする。
【0023】
この特徴により、メッシュが、ポケットの被服内側の面に形成されていれば、ポケット内に収容した、本発明に係る被服用冷却装置の空気取入口に被服内の空気(内気)を、メッシュを通じて取り入れることができる。また、メッシュが、ポケットの外気側の面に形成されていれば、ポケット内に収容した、本発明に係る被服用冷却装置の空気取入口に外気側の空気を、メッシュを通じて取り入れることができる。また、メッシュが、ポケットの被服内側と外気側の両面に形成されていると、空気取入口に取り込む空気は、内気と外気の双方を対象とすることができる。これにより、本発明に係る被服用冷却装置は、前述した(2)の作用と(3)の作用とを選択的に使い分けて使用される場合でも、対応可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施形態に係る被服用冷却装置を示す正面図である。
図2図1中、A矢視から見た側面図である。
図3図1中、B矢視から見た側面図である。
図4図1中、C矢視から見た側面図である。
図5図1中、D矢視から見た側面図である。
図6図1中、E部の拡大図である。
図7図1に示す被服用冷却装置の分解斜視図である。
図8】実施形態に係る被服用冷却装置内のペルチェ素子を示す説明図である。
図9】実施形態に係る被服用冷却装置の第1使用例を示す模式図である。
図10】実施形態に係る被服用冷却装置の第2使用例を示す模式図である。
図11】実施形態に係る被服用冷却装置の被服に形成されたポケットを示す説明図である。
図12図11中、F-F矢視断面図であり、被服の内外周面に補強部材を取り付けてハウジングのフランジを固定した場合を示す図である。
図13図11中、F-F矢視断面図であり、被服の内外周面でハウジングのフランジを固定した場合を示す図である。
図14】実施形態に係る被服用冷却装置を被服のポケットに入れて第2使用例で用いる様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る被服用冷却装置について、実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。本発明に係る被服用冷却装置は、被服を着用した人の熱気を帯びた身体を冷やすための装置である。この被服用冷却装置は、被服に形成されたポケットに挿入して装着され、例えば、猛暑下の屋外で働く作業者や、屋内の蒸し暑い環境下で働く作業者、炎天下でのレクリエーションやスポーツ、観戦等を行っている人等、冷風を求める人に使用される。被服は、作業時に着衣する作業服のほか、娯楽やレジャー、イベントや行事、スポーツ、ジョギング、自転車等をはじめ、様々な用途で着用可能な多目的の上着・ベスト・ズボン等である。
【0026】
図1は、実施形態に係る被服用冷却装置を示す正面図である。図2は、図1中、A矢視から見た側面図であり、図1中、B矢視から見た側面図を図3に、図1中、C矢視から見た側面図を図4に、図1中、D矢視から見た側面図を図5に、図1中、E部の拡大図を図6に、それぞれ示す。図7は、図1に示す被服用冷却装置の分解斜視図である。なお、本実施形態に係る被服用冷却装置1において、図1中、左右方向を長手方向とし、図1中、上下方向を短手方向とし、図1を示す紙面の垂直方向を厚さ方向として、図2以降の各図でも、図1に定義した方向に準じる。また、各図では、ペルチェ素子11や送風ファン20向けの電源の図示を省略している。
【0027】
図1図5に示すように、被服用冷却装置1は、ペルチェ素子11、冷却フィン13、放熱フィン14、制御部15、送風ファン20、及びハウジング30等を備えている。ペルチェ素子11は、ハウジング30内に配設されている。被服用冷却装置1は、ペルチェ素子11と送風ファン20に電力を供給する電源(図示せず)を有し、本実施形態では、ハウジング30とは別置型の電源が、ペルチェ素子11、制御部15、及び送風ファン20と電気的に接続可能になっている。
【0028】
ハウジング30は、上部材30Aと下部材30Bとを互いに突き合わせ、内部空間を有した状態で接合することにより、略平板状の態様で形成されている。ハウジング30の外形は、長手方向L一方側(図1中、上下方向上側)の外周縁を円弧状に、その反対の長手方向L他方側(図1中、上下方向下側)の外周縁を直線状とした長手方向L両側の外周縁を、短手方向S両側(図1中、左右方向)で直線状の外周縁で接続した形状となっている。
【0029】
図7に示すように、送風ファン20は、ハウジング30内に設けられ、長手方向L一方側(図7中、左上-右下方向左側)の外周縁寄りに配置されている。送風ファン20は、本実施形態では、遠心送風機の一種である多翼送風機(シロッコファン)である。シロッコファンは、回転の中心軸に対し、その周方向に沿って複数の羽根を環状に配置した略筒状の送風機で、中心軸に沿って吸い込まれた風を、回転する羽根同士の間から径外方向に吹き出す。なお、送風ファンは、シロッコファン以外にも、例えば、プロペラファン(軸流)、ターボファン等であっても良い。
【0030】
ハウジング30は、上部材30Aの上面30Aaの一部を開口した空気取入口31を有している。空気取入口31は、送風ファン20に対して空気を取り入れるための開口となっており、長手方向L一方側(図1中、図1中、上下方向上側)の外周縁寄りに配置されている。また、ハウジング30には、第1送風口42と第2送風口45とが、当該ハウジング30(上部材30A、下部材30B)の正反対の方向に配置されている。第1送風口42は、ハウジング30の上部材30Aの一部を開口して形成され、第2送風口45は、ハウジング30の下部材30Bの一部を開口して形成されている。
【0031】
すなわち、第1送風口42は、ハウジング30の厚さ方向Tに対し、空気取入口31と同じ上部材30Aの上面30Aa側で、上面30Aaとほぼ面一に形成されている。他方、第2送風口45は、図2図5に示すように、ハウジング30の厚さ方向Tに対し、空気取入口31とは反対側にある下部材30Bの下面30Ba側に、下面30Baと高低差(段差)を付けて下面30Baと離間した形態で形成されている。
【0032】
第1送風口42は、その周囲に形成された第1フランジ43を有している。また、第2送風口45は、その周囲に形成された第2フランジ46を有している。ハウジング30の内部空間は、空気取入口31と、第1送風口42と、第2送風口45と連通しており、空気取入口31から流入した空気は、ハウジング30内を流通して、第1送風口42と第2送風口45から流出可能となっている。
【0033】
次に、ペルチェ素子11について、説明する。図7に示すように、ペルチェ素子11は、冷却フィン13及び放熱フィン14と共に、冷却モジュール10を構成してハウジング30内に設けられ、長手方向L一方側(図7中、左上-右下方向右側)の外周縁寄りに配置されている。すなわち、冷却モジュール10は、図1図5に示すように、互いに正反対の向きで配置された第1送風口42と第2送風口45との間に挟まれた態様で、配置されている。
【0034】
図8は、実施形態に係る被服用冷却装置内のペルチェ素子を示す説明図である。ペルチェ素子11は、板状の半導体熱電素子の一種である。ペルチェ素子11に直流電流が供給されると、図8に示すように、ペルチェ素子11の平板部12では、ペルチェ効果により、一面12aが吸熱(冷却)すると同時に、他面12bが発熱(加熱)する。冷却モジュール10は、ペルチェ素子11を挟むその一面12aに冷却フィン13を形成してなると共に、一面12aの反対側にある他面12b(反対面)に放熱フィン14を形成してなる。冷却モジュール10は、ペルチェ素子11に供給する直流電流の向きを逆転させることを可能とした制御部15と、電気的に接続されている。
【0035】
冷却モジュール10では、ペルチェ素子11において、電流が一の向きで供給される場合、一面12a側に形成されたフィンは、冷却フィン13となり、他面12b側に形成されたフィンは、放熱フィン14となる。この状態の下、制御部15を操作して、ペルチェ素子11に供給する直流電流の向きが逆転されると、ペルチェ素子11に供給される電流は、一の向きとは反対の他の向きとなる。この場合、一の向きで冷却フィン13であったフィンは、放熱フィン14となり、一の向きで放熱フィン14であったフィンは、冷却フィン13となり、直流電流の向きが逆になると、ペルチェ素子11の平板部12では、冷却面と加熱面とが入れ替わる。
【0036】
被服用冷却装置1は、送風ファン20により、空気取入口31からハウジング30内に取入れた空気ARを冷却モジュール10に送り込むことにより、冷却フィン13を通過した冷風を冷風口から排気させると同時に、放熱フィン14を通過した熱風を放熱口から排気させる。このとき、空気取入口31に取入れる空気ARを、被服70とその着用者の身体側との間にある被服70の内側(図9及び図10中、被服内側70in)から取り込む第1の場合(第1使用例)と、被服70を挟み、着用者の身体とは反対側の被服70の外側(図9及び図10中、外気側70out)から取り込む第2の場合(第2使用例)がある。
【0037】
図9は、実施形態に係る被服用冷却装置の第1使用例を示す模式図である。被服用冷却装置1が第1使用例で使用される場合、空気取入口31が、ハウジング30の厚さ方向Tに対し、冷風口(第1送風口42)と同じ側にある上部材30Aの上面30Aaに形成され、被服70の内側(被服内側)から空気ARを取り込むようになっている。すなわち、図9に示すように、第1送風口42は、送風ファン20により、空気取入口31から取入れた空気ARを送風し、冷却フィン13を通過した冷風CFを、被服70の内側(被服内側70in)に排気するための冷風口となる。他方、第2送風口45は、送風ファン20により、空気取入口31から取入れた空気ARを送風し、放熱フィン14を通過した熱風HFを、被服70の外側(外気側70out)に排気するための放熱口となる。
【0038】
図10は、実施形態に係る被服用冷却装置の第2使用例を示す模式図である。被服用冷却装置1が第2使用例で使用される場合、空気取入口31が、ハウジング30の厚さ方向Tに対し、放熱口(第1送風口42)と同じ側にある上部材30Aの上面30Aaに形成され、被服70の外側(外気側)から空気ARを取り込むようになっている。すなわち、図10に示すように、第1送風口42は、送風ファン20により、空気取入口31から取入れた空気ARを送風し、放熱フィン14を通過した熱風HFを、被服70の外側(外気側70out)に排気するための放熱口となる。他方、第2送風口45は、送風ファン20により、空気取入口31から取入れた空気ARを送風し、冷却フィン13を通過した冷風CFを、被服70の内側(被服内側70in)に排気するための冷風口となる。
【0039】
前述したように、被服用冷却装置1が第1使用例で使用される場合、冷風口は第1送風口42となり、冷風CFが第1送風口42から排気される。また、被服用冷却装置1が第2使用例で使用される場合、冷風口は第2送風口45となり、冷風CFが第2送風口45から排気される。
【0040】
このとき、第1使用例で使用される場合の第1送風口42では、図6に示すように、当該第1送風口42を第1フランジ43手前で囲う壁部の周りに、第1風穴44が形成され、被服70の内側にある空間に接した状態になっていると、冷風CFが被服70内側にある空間に拡散して送風することが可能になる。同様に、第2使用例で使用される場合の第2送風口45では、図6に示すように、当該第2送風口45を第2フランジ46手前で囲う壁部の周りに、第2風穴47が形成され、被服70内側にある空間に接した状態になっていると、冷風CFが被服70の内側にある空間に拡散して送風することが可能になる。
【0041】
次に、被服用冷却装置1を装着する被服70について、説明の都合上、第2使用例で使用する被服用冷却装置1を被服70に装着する場合を挙げて、説明する。図11は、実施形態に係る被服用冷却装置の被服に形成されたポケットを示す説明図であり、図11中、F-F矢視断面図を図12及び図13に示す。図14は、実施形態に係る被服用冷却装置を被服のポケットに入れて第2使用例で用いる様子を示す図である。
【0042】
図11図14に示すように、被服70には、ポケット71が形成されている。被服70が上着、ベスト等、上半身に着用するものである場合には、ポケット71は、被服70のうち、主として首筋や、多汗となる脇の下や脇腹等に相当する部分に配置されている。また、被服70が、ズボン等、下半身に着用するものである場合には、ポケット71は、被服70のうち、主に太ももの付け根付近等に相当する部分に配置されている。
【0043】
ここで、被服70に設けるポケット71の配置位置について、簡単に説明する。暑い環境下に晒された人体は、暑さによって熱中症になるリスクや、自律神経に多大な悪影響も及ぼしてしまう。そのため、そのような防止策として、まず脳に流れる動脈の血液を冷やすことが要となり、発汗作用を促して体温調整の働きを正常に保つことが求められる。脳に流れる血液を効果的に冷やすためには、首筋、脇の下、そして太ももの付け根にある動脈を冷やすことが良いとされている。首筋の場合、首の後ろの髪の生え際付近のほか、特に喉の左右の辺りには、頸動脈があり、動脈に触れる部分を冷風等で冷して、血液が冷やされると、冷えた血液が全身を回る。これにより、体温を下げることができるようになるからである。
【0044】
また、脇の下は、ちょうど体温計を挟む部位であり、動脈のある部分である。脇の下の動脈は、腕に向けて存在しており、脇の下にある動脈や、上腕の内側に近い柔らかい部分にある動脈の血液が冷やされると、冷えた血液が全身を回る。これにより、体温を下げることができるようになるからである。しかも、脇の下を冷風で晒すことにより、脇の下にかいた汗による気化熱で、肌の表面温度が低下することにより、清涼感を得ることもできる。太ももの付け根の場合、太もも前面と、腰骨と、股とを結ぶ線の内側3分の1にあたる位置には、足先に向かう太い動脈があり、特に、この太い動脈の血液が冷やされると、冷えた血液が全身を回る。これにより、体温を下げることができるようになるからである。
【0045】
このような知見の下、首筋及び脇の下にある動脈と、必要に応じて太ももの付け根にある動脈を冷やすため、図14に示すように、被服70のうち、首筋や脇の下に相当する部分と、太ももの付け根に相当する部分に、ポケット71は形成されている。そして、これらのポケット71に収容された被服用冷却装置1により、冷風口から排気される冷風CFが、首筋や脇の下のほか、太ももの付け根に直接、または近接した態様に送風されて被服70の着用者の身体を冷やす。
【0046】
ポケット71は、被服用冷却装置1をなすハウジング30本体を、ポケット71内に挿入して収容する。具体的には、被服用冷却装置1が第2使用例で使用される場合では、被服用冷却装置1は、図10及び図12に示すように、ハウジング30において、空気取入口31及び第1送風口42を外気側70out(図12中、左側)に、第2送風口45を被服内側70in(図12中、右側)に向けた配置でポケット71内に収容される。なお、被服用冷却装置1が第1使用例で使用される場合では、被服用冷却装置1は、図10に示したハウジング30とは反対の向きで、空気取入口31及び第1送風口42を被服70の内側(図9中、被服内側70in)に、第2送風口45を被服70の外側(図10中、外気側70out)に向けた配置でポケット71内に収容される。
【0047】
ポケット71の内側と外側にはそれぞれ、図12に示すように、開口部72が、被服70の一部を開口して形成されている。開口部72は、ポケット71に挿入された被服用冷却装置1のハウジング30に対し、それぞれ第1送風口42、第2送風口45を挿通可能な大きさとなっている。開口部72の外縁である内外周面73は、ある程度の柔軟性を有した被服70の生地75(布等)に比べて、剛性の高い材質(例えば、皮製、ゴム製、樹脂製等)からなる高剛性部77で形成されている。
【0048】
また、ポケット71には、特に空気取入口31が配置される部分の面はメッシュ74で形成されている。メッシュ74は、本実施形態では、図12に示すように、ポケット71の外側(図12中、外気側70out)とポケット71の内側(図12中、被服内側70in)の双方に形成されている。すなわち、被服用冷却装置1が第2使用例で使用される場合では、図12に示すように、ポケット71の外側(外気側70out)がメッシュ74で形成され、外気による空気ARが、外気側70outからメッシュ74を通じてポケット71内の空気取入口31に取り込まれる。一方、被服用冷却装置1が第1使用例で使用される場合では、ポケット71の内側(参照する図12の右側)はメッシュ74で形成され、被服70内の空気ARが、被服内側70inからメッシュ74を通じてポケット71内の空気取入口31に取り込まれる。
【0049】
ポケット71に収容された第2使用例の被服用冷却装置1では、図12に示すように、ポケット71内で、冷風口である第2送風口45の第2フランジ46を、ポケット71内側にある被服70の開口部72に挿通させた後、開口部72の内外周面73と第2フランジ46との間に補強部材76を取付ける。補強部材76は、例えば、ゴムパッキン等、内外周面73と第2フランジ46との相対的なガタツキ(クリアランス)を抑制して、第2フランジ46と着脱自在に結合される部材である。同様に、図12に示すように、ポケット71内で、放熱口である第1送風口42の第1フランジ43を、ポケット71外側にある被服70の開口部72に挿通させた後、開口部72の内外周面73と第2フランジ46との間に補強部材76を取付ける。かくして、被服用冷却装置1は、補強部材76により、ポケット71内で被服70と結合して装着される。
【0050】
なお、実施形態では、第2使用例による被服用冷却装置1をポケット71に収容するにあたり、第1フランジ43を、ポケット71外側にある被服70の開口部72に挿通して、内外周面73と第1フランジ43との間に補強部材76を取付けた。しかしながら、図13に示すように、ポケット71に収容された被服用冷却装置1の第1フランジ43をポケット71外側に固定せず、第1フランジ43は、ポケット71と相対的にフリーな状態であっても良い。また、図13に示すように、第2フランジ46は、開口部72の内外周面73と、この内外周面73に取付けられた補強部材76との間に挿入され、双方の間で挟み込むことにより、被服用冷却装置1をポケット71内で結合されても良い。
【0051】
また、第1使用例による被服用冷却装置1をポケット71に収容する場合には、ポケット71内で、冷風口である第1送風口42の第1フランジ43を、ポケット71内側にある被服70の開口部72に挿通させた後、開口部72の内外周面73と第1フランジ43との間に補強部材76を取付ける。かくして、被服用冷却装置1は、補強部材76により、ポケット71内で被服70と結合して装着される。
【0052】
次に、本実施形態に係る被服用冷却装置1の作用・効果について説明する。
【0053】
本実施形態に係る被服用冷却装置1は、ハウジング30と、ハウジング30内にペルチェ素子11と、ペルチェ素子11の平板部12の一面12aに形成された冷却フィン13と、一面12aとは反対側の他面12bに形成された放熱フィン14と、冷却フィン13と放熱フィン14に風を送る送風ファン20が配置され、被服70に装着されて被服70内を冷却する被服用冷却装置において、送風ファン20が空気AR(外気)を取り入れるための空気取入口31が、ハウジング30に開口していること、冷却フィン13を通過した冷風CFが排気される冷風口(第1使用例の場合は第1送風口42、第2使用例の場合は第2送風口45)と、放熱フィン14を通過した熱風HFが排気される放熱口(第1使用例の場合は第2送風口45、第2使用例の場合は第1送風口42)とが、ハウジング30の厚さ方向Tに対し、正反対の方向に開口していること、冷風口がフランジ(第1使用例の場合は第1送風口42の第1フランジ43、第2使用例の場合は第2送風口45の第2フランジ46)を有し、フランジ(第1フランジ43または第2フランジ46)は、被服70に形成された開口部72の内外周面73と着脱自在に結合されること、を特徴とする。
【0054】
この特徴により、被服用冷却装置1は、フランジ(第1フランジ43または第2フランジ46)を被服70の開口部72との着脱を行うだけで、簡単に被服70のポケット71に装着したり、取り外したりすることができる。そのため、被服70を洗濯する場合等には、被服70に被服用冷却装置1の着脱作業が簡単にでき、被服用冷却装置1は、その使用者にとって使い勝手が良い。また、被服用冷却装置1が被服70のポケット71内に装着され、被服用冷却装置1の冷風口が、被服70の被服内側70inに配置されるため、冷却フィン13で生成された冷風CFは、炎天下で高温となっている外気側70outの熱影響を受け難く、一例として、10℃近傍に冷やされた低温を維持したまま、主として首筋や、多汗となる脇の下や脇腹等、冷やしたい身体の部位に直接、効率良く送風することができる。
【0055】
従って、本実施形態に係る被服用冷却装置1によれば、被服70の着用者にとって使い勝手が良く、かつ冷風CFを効率良く着用者に送ることができている、という優れた効果を奏する。
【0056】
また、本実施形態本実施形態に係る被服用冷却装置1では、フランジ(第1フランジ43または第2フランジ46)を開口部72の内外周面73に取り付けるための補強部材76を有すること、を特徴とする。
【0057】
この特徴により、被服用冷却装置1を装着した被服70の着用者が、大きな動作を伴って作業を行っている場合等でも、被服用冷却装置1は、その動作に起因してポケット71からの落下を抑制することができる。
【0058】
また、本実施形態本実施形態に係る被服用冷却装置1では、空気取入口31が、図9に示すように、第1使用例の場合、第1送風口42である冷風口と同じ側にあるハウジング30の上部材30Aの上面30Aaに形成され、被服70内の空気ARを取り込むこと、を特徴とする。
【0059】
この特徴により、空気取入口31に取入れる空気ARが、外気側70outの温度より低い状態にある(第1の使用環境)ときに、空気取入口31に導入された空気ARは、冷却フィン13で、より低い温度に冷やされ、ヒンヤリ感を十分に有した冷風CFになり易い。すなわち、被服用冷却装置1を装着した被服70の着用者が、特に真夏の炎天下にある外気側70outにいると、被服内側70inの温度は、外気側70outの温度より低くなることもある。ペルチェ素子11は、熱交換時に吸熱できる能力として、取入れた空気ARを吸熱するときに、外気側70outの高温な空気ARの吸熱量と同じ熱量で吸熱しようとした場合、被服内側70inの低温な空気ARをペルチェ素子11で熱交換を行えば、取入れた空気ARを、より低い温度で冷やすことが可能である。従って、被服内側70inの温度が、外気側70outの温度より低い場合には、空気取入口31が、外気側70outからの空気ARを取入れるよりも、空気ARを被服内側70inから取入れれば、被服用冷却装置1は、冷却フィン13でより低い温度に冷やされた冷風CFを送風することができるようになる。
【0060】
また、被服用冷却装置1を装着した被服70の着用者が、例えば、屋内で粉塵や油煙が漂う雰囲気下や、高温で湿気の多い雰囲気下にある設備で作業を行う場合等、屋内で過酷な雰囲気下にある場合(第2の使用環境)に、被服内側70inの空気ARが、空気取入口31に取入れられると、屋内の雰囲気にある空気AR以外の異物による悪影響が、被服用冷却装置1に及ぶのを抑制することができる。
【0061】
また、本実施形態本実施形態に係る被服用冷却装置1では、空気取入口が、図10に示すように、第2使用例の場合、第1送風口42である放熱口と同じ側にあるハウジング30の上部材30Aの上面30Aaに形成され、外気(空気AR)を取り込むこと、を特徴とする。
【0062】
この特徴により、外気側70outの空気ARと、被服内側70inの空気ARとの温度差が、例えば、数℃程度、比較的小さい状態にある(第3の使用環境)ときに、空気取入口31が、外気側70outの空気ARを取り入れれば、空気取入口31へと流通する空気ARに伴う抵抗が、概ね閉じた空間をなす被服内側70inから空気ARを導入する場合に比べて、小さく抑えることができる。そのため、被服用冷却装置1では、送風ファン20により、空気取入口31に導入する空気ARは、ペルチェ素子11(冷却モジュール10)に向けてスムーズに流通し易く、冷風CFも、冷風口からスムーズな流れで送風できるようになる。
【0063】
また、本実施形態本実施形態に係る被服用冷却装置1では、制御部15を有し、制御部15よりペルチェ素子11に供給する直流電流の極性を逆転させることにより、第1使用例の場合、または第2使用例の場合の作用を切り替え可能とすること、を特徴とする。
【0064】
この特徴により、被服用冷却装置1の使用にあたり、前述した第1~第3の使用環境等、様々な使用環境がある中、被服用冷却装置1は、その取り巻く環境下に合わせて、第1使用例の場合と第2使用例の場合とに臨機応変に対応することが可能である。しかも、制御部15の操作により、ペルチェ素子11での直流電流の極性を反転させた後、被服70のポケット71内で収容する被服用冷却装置1の向きを、被服内側70inと外気側70outに対して反転させるだけで、被服用冷却装置1の使用態様は、第1使用例の場合と第2使用例の場合とを、簡単に切り替えることができる。
【0065】
また、本実施形態本実施形態に係る被服用冷却装置1では、ハウジング30が、被服70に形成されたポケット71に挿入されること、ポケット71には、被服内側70inまたは外気側70outの少なくとも1面がメッシュ74で形成されていること、を特徴とする。
【0066】
この特徴により、メッシュ74が、ポケット71の被服内側70inの面に形成されていれば、ポケット71内に収容した被服用冷却装置1の空気取入口31に被服70内の空気AR(内気)を、メッシュ74を通じて取り入れることができる。また、メッシュ74が、ポケット71の外気側70outの面に形成されていれば、ポケット71内に収容した被服用冷却装置1の空気取入口31に外気側70outの空気ARを、メッシュ74を通じて取り入れることができる。また、メッシュ74が、ポケット71の被服内側70inと外気側70outの両面に形成されていると、空気取入口31に取り込む空気ARは、内気と外気の双方を対象とすることができる。これにより、被服用冷却装置1は、第1使用例と第2使用例とを選択的に使い分けて使用される場合でも、対応可能となる。
【0067】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できる。
【0068】
例えば、実施形態では、図14に示すように、被服70のうち、首筋と両脇と太もも近傍の位置にポケット71を配置して、各ポケット71に被服用冷却装置1を収容したが、図14はあくまでも見易さを重視して図示されたものである。そのため、被服に配置する被服用冷却装置1の位置は、図14に正確に図示されているものではなく、この図14に示した位置に限定されるものではない。すなわち、ポケットに入れて装着する被服用冷却装置1は、特に首筋や、多汗となる脇の下や脇腹を重点に置き、これらの部位の近くを通る動脈の血液を冷やすことと、身体で発汗し易い部位を冷やすことを可能とする位置を前提に、実際に被服70を着用する人の動き易さを考慮した位置に配置される。
【0069】
また、実施形態では、被服用冷却装置1の外形を、図1図5に示す形状としたが、被服用冷却装置1の外形形状は、実施形態に限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 被服用冷却装置
11 ペルチェ素子
12a (ペルチェ素子の)一面
12b (ペルチェ素子の)他面(反対面)
13 冷却フィン
14 放熱フィン
15 制御部
20 送風ファン
30 ハウジング
30Aa 上面(ハウジングの面)
31 空気取入口
42 第1送風口(第1使用例で冷風口、第2使用例で放熱口)
43 第1フランジ(第1使用例で第1送風口42が冷風口となる場合のフランジ)
45 第2送風口(第1使用例で放熱口、第1使用例で冷風口)
46 第2フランジ(第2使用例で第2送風口45が冷風口となる場合のフランジ)
70 被服
70in 被服側
70out 外気側
71 (被服の)ポケット
72 (被服の)開口部
73 内外周面
74 メッシュ
76 補強部材
AR 空気
HF 熱風
CF 冷風
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2023-03-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、前記ハウジング内にペルチェ素子と、前記ペルチェ素子の一面に形成された冷却フィンと、前記一面と反対面に形成された放熱フィンと、前記冷却フィンと前記放熱フィンに風を送る送風ファンが配置され、被服に装着されて被服内を冷却する被服用冷却装置において、
前記送風ファンが前記被服の外側から取り入れる外気、または前記被服内にある空気のいずれか一方の空気を取り入れるための空気取入口が、前記ハウジングに開口していること、
前記冷却フィンを通過した冷風が排気される冷風口と、前記放熱フィンを通過した熱風が排気される放熱口とが、前記ハウジングの正反対の方向に開口していること、
前記冷風口はフランジを有し、前記フランジが、前記被服に形成された開口部の内外周面と着脱自在に結合されること、
前記ペルチェ素子及び前記冷却フィンは、前記放熱口側に向けた前記冷風口からの投影で、前記冷風口と重ねた位置関係に配置されていること、
を特徴とする被服用冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載する被服用冷却装置において、
前記フランジを前記内外周面に取り付けるための補強部材を有すること、
を特徴とする被服用冷却装置。
【請求項3】
請求項1に記載する被服用冷却装置において、
前記空気取入口が、前記冷風口と同じ側にある前記ハウジングの面に形成され、前記被服内の空気を取り込むこと、
を特徴とする被服用冷却装置。
【請求項4】
請求項1に記載する被服用冷却装置において、
前記空気取入口が、前記放熱口と同じ側にある前記ハウジングの面に形成され、外気を取り込むこと、
を特徴とする被服用冷却装置。
【請求項5】
請求項1に記載する被服用冷却装置において、
制御部を有し、前記制御部で前記ペルチェ素子に供給する直流電流の極性を逆転させることにより、請求項2または請求項3の作用を切り替え可能とすること、
を特徴とする被服用冷却装置。
【請求項6】
請求項1に記載する被服用冷却装置において、
前記ハウジングが、前記被服に形成されたポケットに挿入されること、
前記ポケットには、前記被服側または前記外気側の少なくとも1面がメッシュで形成されていること、
を特徴とする被服用冷却装置。