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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068526
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】車両の、小児を含む乗員保護装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 22/10 20060101AFI20240513BHJP
   B60N 2/42 20060101ALI20240513BHJP
   B60N 2/888 20180101ALI20240513BHJP
   A47C 7/38 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
B60R22/10 105
B60N2/42
B60N2/888
A47C7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179052
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 正広
(74)【代理人】
【識別番号】100182051
【弁理士】
【氏名又は名称】松川 直宏
(74)【代理人】
【識別番号】100179280
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 育郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180747
【弁理士】
【氏名又は名称】小森 剛彦
(72)【発明者】
【氏名】清野 悟史
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084DD07
3B087CD04
3B087DC05
(57)【要約】
【課題】車両のシートに着座する乗員が成人である場合であっても小児である場合であっても、不要な違和感を与え難くしながら保護する。
【解決手段】乗員保護装置20は、車両1に乗る小児12を含む乗員10が着座可能なシート4(5)と、乗員10に前掛けされるシートベルト6を有する三点式シートベルト装置60と、を有する。シート4(5)のヘッドレスト部材54は、バック部材52に取り付けられるヘッドレスト本体54と、ヘッドレスト本体54についての車両1の前側に離間して設けられるクッション部材55と、ヘッドレスト本体54を貫通して設けられ、シートベルト6を挿通可能なベルトアンカ孔21と、を有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に乗る小児を含む乗員が着座可能なシートと、
前記シートに着座している乗員に前掛けされるシートベルトを有する三点式シートベルト装置と、
を有し、
前記シートは、
小児を含む乗員が背をもたれかけさせるために設けられるバック部材と、
前記バック部材の上側に設けられるヘッドレスト部材と、を有し、
前記ヘッドレスト部材は、
前記バック部材に取り付けられるヘッドレスト本体と、
前記ヘッドレスト本体についての前記車両の前側に離間して設けられるクッション部材と、
前記ヘッドレスト本体を貫通して設けられ、前記シートベルトを挿通可能なベルトアンカ孔と、
を有する、車両の、小児を含む乗員保護装置。
【請求項2】
前記ヘッドレスト部材は、
前記ヘッドレスト本体において回動可能に設けられ、前記クッション部材を、前記ヘッドレスト本体の前側に離間している第一位置に支持可能な支持アームと、
前記ヘッドレスト本体に形成され、前記ヘッドレスト本体において前記ベルトアンカ孔へ連通する脱着用通路と、
前記シートベルトが前記脱着用通路を通じて前記ベルトアンカ孔まで挿通される際に前記脱着用通路において前記シートベルトを検出するベルト検出部材を有し、前記ベルト検出部材による前記シートベルトの挿通検出に基づいて前記支持アームを上へ回動させて、前記クッション部材を、前記ヘッドレスト本体の前側に離間している前記第一位置から後方へ跳ね上げる跳上機構と、
を有する、
請求項1記載の、車両の、小児を含む乗員保護装置。
【請求項3】
前記跳上機構は、
前記クッション部材が前記第一位置にある場合において、前記支持アームを回動しないように規制する回動規制係合部材と、
前記クッション部材が前記第一位置にある状態において、前記支持アームに回動する力を付勢する跳上力付勢部材と、
前記ベルト検出部材による前記シートベルトの挿通検出に基づいて、前記回動規制係合部材を解除することにより、前記支持アームを上へ回動させる跳上連動部材と、
をさらに有する、
請求項2記載の、車両の、小児を含む乗員保護装置。
【請求項4】
前記クッション部材は、メインクッション部と、前記メインクッション部についての前記ベルトアンカ孔の側に設けられるサブクッション部と、を有し、
前記ヘッドレスト部材は、
前記クッション部材を前記ヘッドレスト本体の前側の第一位置に支持している前記支持アームが上へ回動することに連動させて、前記サブクッション部を、前記メインクッション部の側へ折り畳む折畳機構、を有する、
請求項2または3記載の、車両の、小児を含む乗員保護装置。
【請求項5】
前記折畳機構は、
一端が前記メインクッション部を通じて前記サブクッション部に接続される折畳ワイヤを有し、
前記折畳ワイヤの他端を、前記支持アームについての上への回動にしたがって引き込むことにより、前記サブクッション部を、前記メインクッション部の側へ折り畳む、
請求項4記載の、車両の、小児を含む乗員保護装置。




【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の、小児を含む乗員保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車といった車両は、車両の乗員が着座可能なシート、を有する。
また、車両は、車両の乗員保護装置として、シートに着座している乗員に前掛けされる三点式のシートベルト装置、を一般的に有する。
【0003】
ところで、車両には、成人の男性や女性だけでなく、小児が乗ることがある。
この場合であっても、シートベルトは、基本的に成人と同様の位置において、シートに着座している小児に対して前掛けされる。
【0004】
しかしながら、小児は、成人と比べて体格が小さく、座高も低い。
その一方で、シートベルトについての乗員の腰部から肩部にかけて斜めにたすき掛けされるショルダ部は、基本的に、シートに成人が着座した場合においてその成人の肩部を抑えるように車両に設けられている。
このため、シートベルトのショルダ部は、シートに着座している小児の肩部を良好に抑えるようになり難い。
また、小児は、成人と比べて体格が小さいため、シートベルトを用いてシートに対して拘束するようにしても、拘束されるシートの上で体の位置や姿勢が変化し易い。シートベルトのショルダ部は、シートに着座している小児の肩部からずれ落ち易い。
その結果、前突などによる衝撃入力の際に、小児の肩部がシートベルトのショルダ部から外れて、小児の上体などがシートから内前側へ向けて倒れ込んだり移動したりしてしまう可能性が残る。
特に、シートベルトのショルダ部が小児の首部に直接に当たらないように、シートベルトのショルダ部の上支点の位置を下げるように調整した場合には、シートベルトのショルダ部が寝てその傾きが大きくなるので、これらの事態が生じ易くなると考えられる。
また、このような傾向は、シートの座面部材の上に載せるジュニアシートなどの補助具を用いたとしても、大きく変わらないと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-315911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、特許文献1は、シートのバック部材の上側において上下方向に調節可能に設けられるヘッドレスト部材に、シートベルトを挿通することを開示する。
これにより、シートベルトのショルダ部は、シートに着座している小児の上体の中央に近づく。シートベルトのショルダ部は、小児の肩部を、成人の肩部に対してするものと同様に拘束し易くなる。
シートベルトのショルダ部は、肩幅などの体格が小さい小児であっても、その肩部を良好に拘束できるようなると考えられる。シートベルトのショルダ部は、体格が小さい小児の肩部を、体格が大きい成人の肩部と同等に立った小さな傾きにおいて、拘束して支えることができると考えられる。
【0007】
しかしながら、特許文献1では、ヘッドレスト部材にベルトガイド部材を設けて、ベルトガイド部材による貫通孔がヘッドレスト部材の前面に開口している。シートベルトは、このベルトガイド部材に通されることにより、ヘッドレスト部材を挿通している。
このため、特許文献1のシートに成人が着座した場合、その成人の頭部は、ヘッドレスト部材に設けられるベルトガイド部材に対して直接に当たる。シートに着座している成人は、頭部がヘッドレスト部材に当たった際にベルトガイド部材にも当たり、その当たりについて違和感を得る可能性が高い。
【0008】
このように車両の乗員保護装置には、シートに着座する乗員が成人である場合であっても小児である場合であっても、これらの乗員に対して不要な違和感を与え難くしながら、これらの乗員を良好に保護することが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一形態に係る車両の、小児を含む乗員保護装置は、車両に乗る小児を含む乗員が着座可能なシートと、前記シートに着座している乗員に前掛けされるシートベルトを有する三点式シートベルト装置と、を有し、前記シートは、小児を含む乗員が背をもたれかけさせるために設けられるバック部材と、前記バック部材の上側に設けられるヘッドレスト部材と、を有し、前記ヘッドレスト部材は、前記バック部材に取り付けられるヘッドレスト本体と、前記ヘッドレスト本体についての前記車両の前側に離間して設けられるクッション部材と、前記ヘッドレスト本体を貫通して設けられ、前記シートベルトを挿通可能なベルトアンカ孔と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明において、シートに着座する乗員が背をもたれかけさせるために設けられるバック部材の上側に設けられるヘッドレスト部材は、バック部材に取り付けられるヘッドレスト本体と、ヘッドレスト本体についての車両の前側に離間して設けられるクッション部材と、で構成される。そして、ヘッドレスト部材は、クッション部材についての車両の後側に位置するヘッドレスト本体に、シートベルトを挿通可能なベルトアンカ孔が貫通して設けられる。
この場合、ヘッドレスト本体のベルトアンカ孔にシートベルトを挿通することにより、シートベルトのショルダ部の上端は、シートに着座している小児の上体の中央に近づく。シートベルトのショルダ部は、肩幅などの体格が小さい小児について、その肩部を良好に抑えることができるようになることが期待できる。
しかも、シートベルトを挿通可能なベルトアンカ孔は、クッション部材についての車両の後側に離間して位置するヘッドレスト本体に設けられる。この場合、シートに着座している成人の頭部は、クッション部材に当たり、ベルトアンカ孔が設けられているヘッドレスト本体に対して直接に当たり難い。成人は、ヘッドレスト部材にシートベルトを挿通可能なベルトアンカ孔が設けられているとしても、ベルトアンカ孔が直接当たる場合のような違和感を得ることはない。
このように本発明では、シートに着座する乗員が成人である場合であっても小児である場合であっても、これらの乗員に対して不要な違和感を与え難くしながら、これらの乗員を良好に保護することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の第一実施形態に係る自動車の模式的な説明図である。
図2図2は、図1の自動車の助手席用シートに成人男性が着座している状態の模式的な正面図である。
図3図3は、図2の自動車の助手席用シートに小児が着座している状態の模式的な正面図である。
図4図4は、小児がジュニアシートを用いて、図2の自動車の助手席用シートに着座している状態の模式的な正面図である。
図5図5は、図1の自動車に適用される、本発明の第一実施形態に係る、小児を含む乗員の保護装置の説明図である。
図6図6は、小児が、ジュニアシートを用いて、図5の助手席用シートに着座している状態の模式的な正面図である。
図7図7は、本発明の第二実施形態に係る、小児を含む乗員の保護装置の跳上機構の説明図である。
図8図8は、シートベルトがヘッドレスト本体の脱着用通路へ挿入されて、図7の跳上機構の回転軸部材の回動が解除されている状態の説明図である。
図9図9は、本発明の第三実施形態に係る、小児を含む乗員の保護装置の折畳機構の説明図である。
図10図10は、図9の折畳機構の作動状態の説明図である。
図11図11は、第三実施形態での跳上機構および折畳機構の作動状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0013】
[第一実施形態]
図1は、本発明の第一実施形態に係る自動車1の模式的な説明図である。図1は、自動車1を左側から見た図である。
自動車1は、乗員10が乗って移動することができる車両の一例である。車両には、この他にもたとえばトラック、バス、電車、パーソナルモビリティなどがある。
以下の説明において、上下左右前後は、図1の自動車1を基準に使用する。
図1の自動車1には、複数の乗員10が乗車している。乗員10は、自動車1の車体2に設けられたシート5に着座している。
【0014】
図2は、図1の自動車1の助手席用シート48に成人男性11が着座している状態の模式的な正面図である。図2は、助手席用シート48を前側から見た図である。
助手席用シート48は、図2に示すように、座面部材51、バック部材52、ヘッドレスト部材53、を有する。座面部材51は、その上面に乗員10が座る。図2では、乗員10としての成人男性11が座っている。バック部材52は、座面部材51の後縁において立設される。バック部材52の上には、ヘッドレスト部材53が設けられる。ヘッドレスト部材53は、後述するようにフットロッド58によりバック部材52に取り付けられ、バック部材52の上側において上下方向に調節可能である。このような構造の助手席用シート48に、成人男性11は、着座する。成人男性11は、バック部材52に背をもたれかけさせることができる。また、頭部を、ヘッドレスト部材53に当てることができる。
【0015】
また、助手席用シート48に着座している乗員である成人男性11の前には、三点式シートベルト装置60のシートベルト6が斜めに前掛けされている。三点式シートベルト装置60は、シートベルト6、テンショナ8、下ベルトアンカ9、上ベルトアンカ7、タング18、バックル19、を有する。
シートベルト6は、幅広で長尺のベルトである。長尺のシートベルト6の一端は、テンショナ8に取り付けられる。テンショナ8は、自動車1に衝撃が入力される場合に、シートベルト6を巻き取り、シートベルト6の引出しを制限したり、する。長尺のシートベルト6の他端は、下ベルトアンカ9に取り付けられる。下ベルトアンカ9は、自動車1の車体2に設けられるたとえばBピラー3の下部に固定される。
また、長尺のシートベルト6には、上ベルトアンカ7、タング18、が通される。上ベルトアンカ7は、自動車1の車体2に設けられるBピラー3の上部において一般的に上下位置をスライド調整可能に設けられる。タング18は、バックル19と着脱可能である。バックル19は、助手席用シート48より車体2の車幅方向の中央側の位置に取り付けられる。助手席用シート48に着座している成人男性11は、Bピラー3に沿って上下に延在しているシートベルト6を自ら車幅方向の内側へ引いて、自身の前側を通すようにしてタング18をバックル19に装着する。これにより、シートベルト6は、助手席用シート48に着座している成人男性11の前に斜めに前掛けされている。シートベルト6は、下ベルトアンカ9とタング18との間のラップ部62により、成人男性11の腰を助手席用シート48の着座位置に拘束できる。また、シートベルト6は、タング18と上ベルトアンカ7との間のショルダ部61により、助手席用シート48の着座位置に着座している成人男性11の上体を、バック部材52から離れないように拘束できる。シートベルト6のショルダ部61は、着座している成人男性11の上体の胸部中央および外側の左鎖骨を通るように斜めにたすき掛けされることにより、助手席用シート48の着座位置に着座している成人男性11の上体をバック部材52から離れないように良好に拘束することができる。
【0016】
このようなシートベルト6を用いることにより、自動車1は、前突などの入力があった場合に乗員がシート5から離れ難くなるように拘束され得る。これにより、自動車1は、乗員を保護することができる。
なお、図2の助手席用シート48は、不図示のドライバ用シートとともに、図1の自動車1の前側のシート5として設けられる。図1の自動車1の後側のシート5は、助手席用シート48と同様の構造の乗員ごとの個別のシートであっても、複数の乗員が並んで着座する車幅方向に長い構造のベンチシートであってもよい。ベンチシートを用いる場合でも、自動車1は、一般的に、乗員の着座位置ごとに、図2と同様の三点式シートベルト装置60を設けている。
【0017】
図3は、図2の自動車1の助手席用シート48に小児12が着座している状態の模式的な正面図である。図3は、助手席用シート48を前側から見た図である。
図3に示すように、小児12が助手席用シート48に着座する場合、その体格が小さく、座高も低い。
その一方で、シートベルト6についての乗員10の腰部から肩部にかけて斜めにたすき掛けされるショルダ部61は、基本的に、シート5に成人が着座した場合においてその成人の肩部を抑えるように自動車1に設けられている。
このため、シート5に着座している小児12に対して前掛けされるシートベルト6のショルダ部61は、助手席用シート48に着座している小児12の頭部に当たる可能性がある。
このような事態への対策として、三点式シートベルト装置60では、上ベルトアンカ7を上下動させて、その位置を上下に調整できるようになっている。シートベルト6のショルダ部61は、図中に破線で示す位置Lまで下げることができる。これにより、シートベルト6のショルダ部61は、助手席用シート48に着座している小児12の頭部と干渉することなく、小児12の左鎖骨の上を通るようになる。
【0018】
しかしながら、このようにシートベルト6のショルダ部61を下げてしまうと、ショルダ部61は、車幅方向に寝てその傾きが大きくなり、車幅方向に対する角度が鋭角になる。
また、小児は、成人と比べて体格が小さく、上体が薄いため、シートベルト6を用いてシート5に対して拘束するようにしても、拘束される助手席用シート48の上で体の位置や姿勢が変化し易い。シートベルト6と小児の身体との接触面積も小さい。小児についての胸部拘束性は高くない。
その結果、シートベルト6のショルダ部61は、助手席用シート48に着座している小児の肩部からずれ落ち易い。
また、前突などによる衝撃入力の際に、小児の肩部がシートベルト6のショルダ部61から外れて、図中に破線矢印で示すように、小児の上体などが、助手席用シート48から内前側へ向けて倒れ込んだり移動したりしてしまう可能性が残る。
このように、シートベルト6のショルダ部61は、助手席用シート48に着座している小児の肩部を、成人の肩部と同様に良好に抑えられるようにはなり難い。
【0019】
図4は、小児12がジュニアシート17を用いて、図2の自動車1の助手席用シート48に着座している状態の模式的な正面図である。図4は、助手席用シート48を前側から見た図である。
図4において、自動車1の助手席用シート48の座面部材51の上には、補助具としてのジュニアシート17が載置されている。ジュニアシート17は、シートベルト6などを通して、座面部材51の上に取り付けられる。
そして、小児12は、ジュニアシート17の上に着座している。
ジュニアシート17の形状により、小児12は、助手席用シート48の上で体の位置や姿勢が変化し難くなり得る。
また、このように場合、補助具としてのジュニアシート17などを用いることにより、小児12の首部や頭部の高さ位置は、成人男性11のそれらに近づく。
シートベルト6のショルダ部61は、図3と比べて、車幅方向に寝る傾きが小さくなり、車幅方向に対する角度が大きくなる。
その結果、シートベルト6のショルダ部61は、図3と比べて、助手席用シート48に着座している小児12の肩部からずれ落ち難くなると考えられる。
また、前突などによる衝撃入力の際に、小児12の肩部がシートベルト6のショルダ部61から外れて、図中に破線矢印で示すように、小児12の上体などが、助手席用シート48から内前側へ向けて倒れ込んだり移動したりしてしまう可能性が低くなると考えられる。
【0020】
しかしながら、図4のようにジュニアシート17などの補助具を用いたとしても、図2の成人男性11の場合と比べて、シートベルト6のショルダ部61は、車幅方向に寝てその傾きが大きくなり、車幅方向に対する角度が鋭角になる。
したがって、小児についての保護性能は、成人男性11と同等のものとなっているとは、断言し難い。
このように自動車1の乗員の保護装置には、シート5に着座する乗員が成人である場合であっても小児である場合であっても、これらの乗員を良好に保護できるようにすることが求められる。
なお、本実施形態では、自動車1に設けられるシート5の例として助手席用シート48を説明している。上述した課題およびこれから記述する実施形態の説明は、自動車1に設けられる他のシート5についても同様に成立し適用可能である。
【0021】
図5は、図1の自動車1に適用される、本発明の第一実施形態に係る、小児を含む乗員の保護装置20の説明図である。図5は、助手席用シート48を、自動車1の左側から見た図である。
図6は、小児12が、ジュニアシート17を用いて、図5の助手席用シート48に着座している状態の模式的な正面図である。図6は、助手席用シート48を、自動車1の前側から見た図である。
図5および図6の、小児を含む乗員の保護装置20は、自動車1において、助手席用シート48のヘッドレスト部材53として設けられている。
乗員の保護装置20は、ヘッドレスト本体54、ベルトアンカ孔21、クッション部材55、左右の支持アーム32、回転軸部材31、を有する。
【0022】
ヘッドレスト本体54は、フットロッド58により助手席用シート48のバック部材52に取り付けられ、バック部材52の上側において上下方向に調節可能である。
【0023】
ベルトアンカ孔21は、シートベルト6を挿通可能なスリット状の孔である。ベルトアンカ孔21は、ヘッドレスト本体54についての車幅方向外側である左側の下部において、ヘッドレスト本体54を前後方向に沿って貫通するように、開設される。なお、ベルトアンカ孔21は、後述するようにシートベルト6を挿通するためのものである。ベルトアンカ孔21は、乗員10の荷重により変形しないことが望まれる。このため、ベルトアンカ孔21は、剛性があるプラスチック製の枠体などにより、ヘッドレスト本体54に画成することが望まれる。
【0024】
回転軸部材31は、ヘッドレスト本体54を、車幅方向において貫通する。回転軸部材31は、ヘッドレスト本体54に対して、手動により回動可能に設けられるとよい。
【0025】
クッション部材55は、ヘッドレスト本体54より車幅方向に長尺なクッション材である。クッション部材55は、ヘッドレスト本体54より一回り大きくしてよい。
【0026】
支持アーム32は、略L字型に形成された剛性部材である。略L字型の支持アーム32の一端は、回転軸部材31に取り付けられる。左右の支持アーム32は、回転軸部材31とともに、ヘッドレスト本体54に対して、自動車1の車幅方向に沿った軸の周囲で回動することができる。
【0027】
そして、略L字型の支持アーム32の他端は、クッション部材55に取り付けられる。クッション部材55の車幅方向の両端は、左右の支持アーム32により、ヘッドレスト本体54に支持される。
クッション部材55は、左右の支持アーム32により回転軸部材31と一体化されている。
これにより、クッション部材55は、図5に実線で示すように、ヘッドレスト本体54の前側において、ヘッドレスト本体54から離間する第一位置P1に位置することができる。
また、クッション部材55は、人手で押し上げられることにより、図5に実線で示す第一位置P1から、上後側へ跳ね上げることができる。図5には、クッション部材55についての跳ね上げた位置である第二位置P2が示されている。また、図6においてクッション部材55は、第二位置P2にある。
【0028】
このようにヘッドレスト本体54から前へ離間する第一位置P1に、クッション部材55を設けることにより、助手席用シート48に着座する成人男性11の頭部は、直接的にはクッション部材55と当たる。成人男性11の頭部は、ベルトアンカ孔21が形成されているヘッドレスト本体54と直接的に当たらないようにできる。成人男性11は、ヘッドレスト部材53に当てた頭部が、ベルトアンカ孔21が形成されているヘッドレスト本体54と直接的に当たらないため、ベルトアンカ孔21が形成されているヘッドレスト本体54について違和感を得ることがない。また、クッション部材55は、ヘッドレスト本体54により支持されているため、成人男性11が鞭打ちし難くなる。
【0029】
これに対して仮にたとえばヘッドレスト本体54の前側にクッション部材55を離間して設けない場合、助手席用シート48に着座する成人男性11の頭部は、ヘッドレスト本体54に設けられるベルトアンカ孔21に対して直接に当たる。助手席用シート48に着座している成人男性11は、頭部がヘッドレスト本体54に当たった際にベルトアンカ孔21にも当たり得る。そして、助手席用シート48に着座している成人男性11は、ベルトアンカ孔21についての当たりについて、違和感を得てしまう。特に、ベルトアンカ孔21が、剛性があるプラスチック製の枠体などにより、ヘッドレスト本体54に画成されている場合、助手席用シート48に着座している成人男性11は、ベルトアンカ孔21による不均一な当たりについて、強い違和感を得てしまう可能性がある。
【0030】
ヘッドレスト本体54のクッション性は、ベルトアンカ孔21を設けることにより、基本的に車幅方向において不均一なものとなってしまう。この場合、前突の際に頭部がヘッドレスト本体54へ向けて強く当たる際に、頭部がヘッドレスト部材53に対して均一に沈み込み難くなる。その結果、成人男性11の首部には、ヘッドレスト部材53のクッション性が車幅方向において対照性を有する場合には作用し得ない、望ましくない力が作用してしまう可能性がある。
【0031】
また、助手席用シート48に小児12が着座する場合、図6および図5に示すように、シートベルト6についての、小児12の前に斜めにたすき掛けされるショルダ部61は、ヘッドレスト本体54のベルトアンカ孔21からタング18へ延在する。
このため、シートベルト6のショルダ部61は、助手席用シート48に着座している小児12の頭部に当たらないようになる。なお、ヘッドレスト本体54は、バック部材52の上で上下動させることにより、その位置を上下に調整できる。
また、シートベルト6のショルダ部61は、助手席用シート48に着座している小児12の左鎖骨の上を通るようになる。
しかも、シートベルト6のショルダ部61についての、車幅方向に対する角度は、図2の成人男性11の場合と同等である。シートベルト6のショルダ部61は、車幅方向に寝た状態になり難い。
その結果、シートベルト6は、成人と比べて体格が小さい小児12が助手席用シート48に着座する場合であっても、小児12を助手席用シート48に対して良好に拘束することが可能とになる。小児12は、拘束される助手席用シート48の上で体の位置や姿勢が変化し難くなり得る。
また、シートベルト6のショルダ部61は、助手席用シート48に着座している小児12の肩部からずれ落ち難くなる。小児12の上体は、助手席用シート48から内前側へ向けて倒れ込むように移動し難くなる。
このように、シートベルト6のショルダ部61は、助手席用シート48に着座している小児12の肩部を良好に抑えることが期待できる。
【0032】
また、図5の第一位置P1にある場合、クッション部材55は、助手席用シート48に着座している小児12の頭部に当たる可能性がある。この場合、クッション部材55は、手動により、第二位置P2まで跳ね上げることができる。これにより、助手席用シート48に着座している小児の頭部に、クッション部材55が当たらないようにできる。助手席用シート48に着座している小児12は、違和感を得にくくなる。
また、このようにクッション部材55は、ヘッドレスト本体54から取り外すことなく、助手席用シート48に着座している小児12の頭部と当たらない位置まで退避させることができる。クッション部材55を、ヘッドレスト本体54から取り外す場合、その保管場所などが必要になる。本実施形態では、このような保管場所が不要である。また、取り外したクッション部材55についての装着忘れや置き忘れが生じることもない。
【0033】
このように、本実施形態では、助手席用シート48に成人が着座している場合でも、小児12などの小児が着座している場合でも、快適性と衝突時の乗員拘束性とを両立することができる。
【0034】
以上のように、本実施形態において、助手席用シート48に着座する乗員が背をもたれかけさせるために設けられるバック部材52の上側において上下方向に調節可能に設けられるヘッドレスト部材53は、バック部材52に取り付けられるヘッドレスト本体54と、ヘッドレスト本体54についての自動車1の前側に離間して設けられるクッション部材55と、で構成される。そして、ヘッドレスト部材53は、クッション部材55についての自動車1の後側に位置するヘッドレスト本体54に、シートベルト6を挿通可能なベルトアンカ孔21が貫通して設けられる。
この場合、ヘッドレスト本体54のベルトアンカ孔21にシートベルト6を挿通することにより、シートベルト6のショルダ部61の上端は、助手席用シート48に着座している小児の上体の鎖骨の上に近づく。シートベルト6のショルダ部61は、肩幅などの体格が小さい小児について、その肩部を良好に抑えることができるようになることが期待できる。
しかも、シートベルト6を挿通可能なベルトアンカ孔21は、クッション部材55についての自動車1の後側に離間して位置するヘッドレスト本体54に設けられる。この場合、助手席用シート48に着座している成人の頭部は、クッション部材55に当たり、ベルトアンカ孔21が設けられているヘッドレスト本体54に対して直接に当たり難い。成人は、ヘッドレスト部材53にシートベルト6を挿通可能なベルトアンカ孔21が設けられているとしても、ベルトアンカ孔21が直接当たる場合のような違和感を得ることはない。
また、ヘッドレスト部材53についての成人の頭部が直接に当たるクッション部材55には、シートベルト6を挿通可能なベルトアンカ孔21が設けられない。クッション部材55のクッション性は、ベルトアンカ孔21により制限されることなく、車幅方向において対照性を持たせることが可能である。前突などの衝撃入力の際に、成人の頭部は、クッション部材55へ向けて強く当たる際に、車幅方向において対照性を有する状態に支えられ得る。成人の首部には、望ましくない力が作用し難い。
このように本実施形態では、助手席用シート48といったシート5に着座する乗員が成人である場合であっても小児である場合であっても、これらの乗員に対して不要な違和感を与え難くしながら、これらの乗員を良好に保護することが可能である。
本実施形態では、自動車1のシート5に成人が着座した場合であっても、小児が着座した場合であっても、それらの乗員についての快適性と衝突時の乗員拘束性とを高いレベルで両立することができる。
【0035】
なお、上述した本実施形態の説明では、シートベルト6は、ヘッドレスト本体54のベルトアンカ孔21に挿通されている状態について説明している。
シートベルト6は、ヘッドレスト本体54のベルトアンカ孔21に常に挿通している必要はない。たとえば後述する実施形態のようにヘッドレスト本体54にスリット状の脱着用通路22を設けて、シートベルト6は、このスリット状の脱着用通路22を通じて、ヘッドレスト本体54のベルトアンカ孔21に脱着できるようにしてよい。
【0036】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について説明する。以下においては、主に、上述した実施形態との相違点について説明する。上述した実施形態と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0037】
図7は、本発明の第二実施形態に係る、小児を含む乗員の保護装置20の跳上機構30の説明図である。
図8は、シートベルト6がヘッドレスト本体54の脱着用通路22へ挿入されて、図7の跳上機構30の回転軸部材31の回動が解除されている状態の説明図である。
図7および図8は、助手席用シート48を、自動車1の後側から見た図である。
【0038】
図7および図8において、ヘッドレスト本体54には、ベルトアンカ孔21とともに、スリット状の脱着用通路22が設けられる。
【0039】
スリット状の脱着用通路22は、ヘッドレスト本体54についての車幅方向の外側である左側面からベルトアンカ孔21まで連通している。シートベルト6は、このスリット状の脱着用通路22を通じて、ヘッドレスト本体54のベルトアンカ孔21に対して脱着することができる。
【0040】
また、クッション部材55は、左右の支持アーム32により、ヘッドレスト本体54を車幅方向に貫通して回動可能な回転軸部材31と一体化されている。
【0041】
そして、本実施形態のヘッドレスト本体54には、跳上機構30が設けられる。跳上機構30は、上述した回転軸部材31および左右の支持アーム32とともに、ベルト検出部材33、跳上ワイヤ34、係合爪部材36、係合スプリング37、歯車部材38、回動スプリング39、を有する。
【0042】
ベルト検出部材33は、たとえば板状の回転部材でよい。板状のベルト検出部材33は、その一端がスリット状の脱着用通路22に突出するように、回動可能に設けられる。
【0043】
歯車部材38は、ヘッドレスト本体54の内部において、回転軸部材31に固定される。歯車部材38は、回転軸部材31とともに、ヘッドレスト本体54の内部において回動できる。
【0044】
係合爪部材36は、回転軸部材31の近くにおいて揺動可能に設けられる。係合爪部材36の一端は、係合スプリング37の付勢力により、歯車部材38に押圧される。このように係合爪部材36の一端が歯車部材38に押圧して係合されることにより、回転軸部材31および歯車部材38は、回動できなくなる。回転軸部材31は、クッション部材55を回動しないように、図5の第一位置P1や第二位置P2に保持することができる。歯車部材38と係合爪部材36とは、回動規制係合部材として、クッション部材55が第一位置P1にある場合において、支持アーム32を回動しないように規制することができる。
【0045】
回動スプリング39は、たとえば回転軸部材31に巻き付けられる捩じりバネでよい。回動スプリング39は、クッション部材55が図5の第一位置P1にある状態において、第二位置P2へ向けて回動させる付勢力を回転軸部材31に対して与える跳上力付勢部材として機能する。
【0046】
跳上ワイヤ34は、板状のベルト検出部材33の他端と、係合爪部材36の他端とを連結する。また、本実施形態では、跳上ワイヤ34の向きを変えるために、第一ガイド部材35が設けられている。跳上ワイヤ34は、第一ガイド部材35において屈曲している。
【0047】
乗員は、助手席用シート48に小児12などの小児を着座させる場合、図7に示すように、シートベルト6を、ヘッドレスト本体54のスリット状の脱着用通路22へ挿入する。そして、乗員は、シートベルト6を、ヘッドレスト本体54のベルトアンカ孔21に挿通させる。
この際、跳上機構30において、スリット状の脱着用通路22に一端が突出している板状のベルト検出部材33は、挿入されるシートベルト6により押されて、回動する。このように板状のベルト検出部材33は、シートベルト6の挿通を検出する。そして、板状のベルト検出部材33は、その他端により、跳上ワイヤ34を引く。跳上ワイヤ34は、係合スプリング37の付勢力に抗して、係合爪部材36の他端を引き上げる。
これにより、係合爪部材36の一端は、図8に示すように、歯車部材38から離間する。係合爪部材36と歯車部材38との係合が解除されることにより、回動が規制されていた回転軸部材31および歯車部材38は、解放されて、回動スプリング39の付勢力にしたがって上へ回動する。回転軸部材31と一体化されている左右の支持アーム32およびクッション部材55も、上へ回動する。
その結果、クッション部材55は、乗員の手を煩わすことなく自動的に、図5のヘッドレスト本体54の前側の第一位置P1から、上後側の第二位置P2へ向けて跳ね上げられる。
乗員は、シートベルト6を、ヘッドレスト本体54のスリット状の脱着用通路22へ挿入するだけで、クッション部材55を自動的に第一位置P1から第二位置P2へ跳ね上げさせることができる。
【0048】
以上のように、本実施形態のヘッドレスト部材53を構成するヘッドレスト本体54は、クッション部材55を、ヘッドレスト本体54の前側に離間する第一位置P1に支持可能な支持アーム32と、ヘッドレスト本体54の自動車1の車幅方向の側面からベルトアンカ孔21へ連通するスリット状の脱着用通路22と、を有する。これにより、シートベルト6は、脱着用通路22を通じてベルトアンカ孔21まで挿通することができる。シートベルト6は、ヘッドレスト本体54に対して着脱可能にできる。
しかも、ヘッドレスト部材53の跳上機構30は、シートベルト6が脱着用通路22を通じてベルトアンカ孔21まで挿通される際に、脱着用通路22に突出して設けられてシートベルト6を検出するベルト検出部材33、を有する。そして、跳上機構30は、このベルト検出部材33によるシートベルト6の挿通検出に基づいて、支持アーム32を上へ回動させて、クッション部材55を、ヘッドレスト本体54の前側に離間している第一位置P1から後方へ跳ね上げる。これにより、クッション部材55は、ヘッドレスト本体54の前側に離間している第一位置P1から後方へ跳ね上がる。
このように、本実施形態において、ヘッドレスト本体54の前側に離間している第一位置P1にあるクッション部材55は、シート5に小児を着座させる際の成人の乗員により直接に操作されることなく、第一位置P1から後方へ跳ね上げられるようになる。成人の乗員は、シート5に小児を着座させる際に、自らクッション部材55を後方へ移動させる操作をする必要がない。しかも、クッション部材55は、ヘッドレスト本体54の後方へ移動しているため、シート5に着座する小児の頭部やシートベルト6と、ヘッドレスト本体54の前側において干渉し難くなる。
【0049】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態について説明する。以下においては、主に、上述した実施形態との相違点について説明する。上述した実施形態と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0050】
図9は、本発明の第三実施形態に係る、小児を含む乗員の保護装置20の折畳機構40の説明図である。
図10は、図9の折畳機構40の作動状態の説明図である。図9および図10は、助手席用シート48を、自動車1の上側から見た図である。
図11は、第三実施形態での跳上機構30および折畳機構40の作動状態の説明図である。図11は、助手席用シート48のヘッドレスト部材53および周辺部分を、自動車1の左側から見た図である。
【0051】
本実施形態の、小児を含む乗員の保護装置20は、図7および図8の跳上機構30ともに、折畳機構40を有する。なお、図9および図10では、図示の都合から、跳上機構30については、回転軸部材31のみを示している。
【0052】
また、本実施形態の跳上機構30は、上述した実施形態の左右の支持アーム32の中の、車幅方向の内側である右の支持アーム32のみを有する。
右の支持アーム32の他端には、支持プレート44が連結される。
支持プレート44は、ヘッドレスト本体54より短い板状を有する。支持プレート44は、ヘッドレスト本体54から前側へ離間する位置において、回転軸部材31と略平行となるように、右の支持アーム32の他端に連結される。
支持プレート44の前側に、クッション部材55が貼着される。クッション部材55についての車幅方向の外側となる左端は、支持プレート44の左端より左側へ突出する。クッション部材55は、上述した実施形態と同様に、ヘッドレスト本体54より車幅方向に長尺に形成され、ヘッドレスト本体54の前側を全体的にカバーしている。
このように本実施形態の跳上機構30の支持プレート44と回転軸部材31とは、支持プレート44とともに、クッション部材55を片持ちで支持する。このため、回転軸部材31は、ヘッドレスト本体54から、その車幅方向の内側のみから外へ突出する短いものとなっている。
【0053】
クッション部材55は、メインクッション部56と、メインクッション部56についての車幅方向外側に設けられるサブクッション部57と、を有する。
【0054】
メインクッション部56は、クッション部材55についての、支持プレート44に貼着される部分でよい。
【0055】
サブクッション部57は、クッション部材55についての、支持プレート44から、車幅方向の外側へ突出している部分でよい。
このように、サブクッション部57は、メインクッション部56についての、ベルトアンカ孔21の側に設けられる。
【0056】
クッション部材55の内部には、プレート部材が設けられる。プレート部材は、たとえば、可撓性のプラスチック材料をメッシュ状の平板状に一体成型したものでよい。
メッシュ状の平板状のプレート部材は、メインクッション部56に収まるメインプレート部41と、サブクッション部57に収まるサブプレート部42と、メインプレート部41とサブプレート部42とを連結する脆弱部43と、を有する。脆弱部43は、たとえばプレート部材の他の部分であるメインプレート部41やサブプレート部42より薄く形成されることにより、脆弱に形成されてよい。このような構造のメッシュ状の板状のプレート部材は、それを屈曲させる力が作用すると、脆弱部43において折れ曲がり易くなる。屈曲させる力が作用しなくなると、プレート部材は、元の平板状に戻ることができる。
また、プレート部材において、サブプレート部42は、支持プレート44と前後方向において部分的に重なる。この場合、サブプレート部42は、支持プレート44の上で、メインプレート部41と直線状となるように戻ることができる。
【0057】
そして、本実施形態の折畳機構40は、折畳ワイヤ45、引込アーム46、を有する。
【0058】
引込アーム46は、ヘッドレスト本体54の内部において、回転軸部材31に取り付けられる。
【0059】
折畳ワイヤ45は、引込アーム46の先端と、サブプレート部42との間を連結する。引込アーム46とサブプレート部42との間に連結される折畳ワイヤ45は、ヘッドレスト本体54の内部に固定配置される第二ガイド部材47、右の支持アーム32の内部、およびメインクッション部56の内部に挿通される。
このように、折畳ワイヤ45の一端は、メインクッション部56を通じてサブクッション部57に接続される。折畳ワイヤ45の他端は、支持アーム32に接続される。
【0060】
このような構造の乗員の保護装置20では、図9に示すように、乗員がシートベルト6をヘッドレスト本体54のスリット状の脱着用通路22へ挿入すると、上述した実施形態と同様に、その挿入検出に基づいて跳上機構30の回転軸部材31が回動する。回転軸部材31とともに、右の支持アーム32、支持プレート44、およびクッション部材55は、ヘッドレスト本体54の前側に離間する第一位置P1から上後側へ向けて跳ね上がる。本実施形態において、クッション部材55は、図11に示すように、ヘッドレスト本体54の後側に離間する第三位置P3まで回動するように跳ね上げられる。このようにクッション部材55が、第二位置P2ではなく、第三位置P3まで跳ね上げられることにより、自動車1のドライバが助手席側を見た時の視野は、クッション部材55により遮られ難くなる。ドライバの視野は、クッション部材55がない場合と同等に確保され得る。
【0061】
また、このようにクッション部材55が第一位置P1から第三位置P3まで跳ね上げるように回転軸部材31が回転することにより、回転軸部材31に取り付けられる引込アーム46は、図10に示すように、ヘッドレスト本体54の内部において、回転軸部材31の後側に来るように大きく回動する。引込アーム46は、図9の回転軸部材31の前側へ突出する位置から、図10の回転軸部材31の後側へ突出する位置まで回動する。引込アーム46の先端が、第二ガイド部材47から離れることにより、引込アーム46は、折畳ワイヤ45を、引き込む。
その結果、折畳ワイヤ45は、サブプレート部42を大きく引く。クッション部材55においてサブプレート部42が設けられているサブクッション部57は、サブプレート部42とともに、車幅方向の内側へ向けて大きく引き込まれる。
ヘッドレスト本体54の後側の第三位置P3へ跳ね上げられるクッション部材55では、サブクッション部57がメインクッション部56の方向へ向かって大きく屈曲する。
このように、折畳ワイヤ45は、右の支持アーム32についての上への回動にしたがって引き込まれることにより、サブクッション部57を、メインクッション部56の側へ折り畳むことができる。
その結果、ヘッドレスト本体54の後側の第三位置P3へ跳ね上げられるクッション部材55は、ヘッドレスト本体54のベルトアンカ孔21に挿通されているシートベルト6と、ヘッドレスト本体54の後側において当たらないようになる。
【0062】
以上のように、本実施形態において、ヘッドレスト部材53のクッション部材55は、メインクッション部56と、メインクッション部56についてのベルトアンカ孔21の側に設けられるサブクッション部57と、を有する。そして、ヘッドレスト部材53は、さらに、クッション部材55をヘッドレスト本体54の前側の第一位置P1に支持している右の支持アーム32が上へ回動することに連動させて、サブクッション部57を、メインクッション部56の側へ折り畳む、折畳機構40、を有する。
これにより、クッション部材55は、第一位置P1からヘッドレスト本体54の後側の第三位置P3まで移動したとしても、ベルトアンカ孔21に挿通されているシートベルト6と、ヘッドレスト本体54の後側において、干渉し難くなる。
【0063】
これに対し、上述した実施形態のクッション部材55を、ヘッドレスト本体54の後側の第三位置P3まで跳ね上げてしまうと、クッション部材55や左側の支持アーム32が、ヘッドレスト本体54のベルトアンカ孔21に挿通されているシートベルト6と当たる。この場合、シートベルト6の動きは、クッション部材55や左側の支持アーム32により阻害され得る。本実施形態では、クッション部材55を、ヘッドレスト本体54の後側の第三位置P3まで跳ね上げても、クッション部材55のサブクッション部57をメインクッション部56の側へ折り畳むため、このような干渉を発生させないようにでき、シートベルト6の速やかな動きを阻害しないようにできる。
【0064】
また、本実施形態では、乗員の手を煩わすことなく、ヘッドレスト本体54の後側の第三位置P3へ跳ね上げたクッション部材55を、シートベルト6と干渉し難くなるように折り畳むことができる。
【0065】
以上の実施形態は、本発明の好適な実施形態の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
【0066】
上述した実施形態では、自動車1の助手席用シート48を例として、本発明を適用した場合を説明している。上述した本発明の実施形態に係る構成は、自動車1の他のシート5についても適用できる。
【符号の説明】
【0067】
1…自動車(車両)、2…車体、3…Bピラー、4…助手席用シート、5…シート、6…シートベルト、7…上ベルトアンカ、8…テンショナ、9…下ベルトアンカ、10…乗員、11…成人男性、12…小児、17…ジュニアシート、18…タング、19…バックル、20…乗員の保護装置、21…ベルトアンカ孔、22…脱着用通路、30…跳上機構、31…回転軸部材、32…支持アーム、33…ベルト検出部材、34…跳上ワイヤ、35…第一ガイド部材、36…係合爪部材、37…係合スプリング、38…歯車部材、39…回動スプリング、40…折畳機構、41…メインプレート部、42…サブプレート部、43…脆弱部、44…支持プレート、45…折畳ワイヤ、46…引込アーム、47…第二ガイド部材、51…座面部材、52…バック部材、53…ヘッドレスト部材、54…ヘッドレスト本体、55…クッション部材、56…メインクッション部、57…サブクッション部、58…フットロッド、60…三点式シートベルト装置、61…ショルダ部、62…ラップ部


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11