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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068527
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】車両のフロア構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20240513BHJP
【FI】
B62D25/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179053
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 正広
(74)【代理人】
【識別番号】100182051
【弁理士】
【氏名又は名称】松川 直宏
(74)【代理人】
【識別番号】100179280
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 育郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180747
【弁理士】
【氏名又は名称】小森 剛彦
(72)【発明者】
【氏名】松澤 公雄
(72)【発明者】
【氏名】海老澤 朋也
(72)【発明者】
【氏名】中澤 孝典
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB06
3D203BB08
3D203BB12
3D203BB22
3D203CA53
(57)【要約】
【課題】車両のフロア構造の変形が生じ難くなるようにする。
【解決手段】車両1のフロア構造は、車両1の車体2を構成するフロアパネル31についての車幅方向の外縁に沿って延在するサイドシル11と、車体2の車幅方向の中央部分において車体2の前後方向に沿って延在する中央骨格部材13と、車体2の車幅方向に沿って延在して、サイドシル11と中央骨格部材13とを連結するように延在する第一クロスメンバ17と、第一クロスメンバ17より車体2の後方において車体2の車幅方向に沿って延在して、サイドシル11と中央骨格部材13とに連結される第二クロスメンバ15と、サイドシル11と第一クロスメンバ17との連結部分と、中央骨格部材13と第二クロスメンバ15との連結部分との間に斜め筋交い状に設けられる補強部材40と、を有する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車体を構成するフロアパネルについての車幅方向の外縁に沿って延在するサイドシルと、
前記車体の車幅方向の中央部分において前記車体の前後方向に沿って延在する中央骨格部材と、
前記車体の車幅方向に沿って延在して、前記サイドシルと前記中央骨格部材とを連結するように延在する第一クロスメンバと、
前記第一クロスメンバより前記車体の後方において前記車体の車幅方向に沿って延在して、前記サイドシルと前記中央骨格部材とに連結される第二クロスメンバと、
前記サイドシルと前記第一クロスメンバとの連結部分と、前記中央骨格部材と前記第二クロスメンバとの連結部分との間に斜め筋交い状に設けられる補強部材と、
を有する、車両のフロア構造。
【請求項2】
前記フロアパネルは、前記車両において乗員が乗車する車室の床部を構成する車室フロア部を有し、
前記中央骨格部材は、前記車体の車幅方向の中央部分において前記車室フロア部より上へ突出して設けられるトンネル構造、または前記トンネル構造の傍において前記車体の前後方向へ延在するトンネル骨格部材であり、
前記車室フロア部の上には、前記車体の車幅方向に沿って延在して、前記中央骨格部材としての前記トンネル構造またはトンネル骨格部材と前記サイドシルとを連結する前側クロスメンバおよび後側クロスメンバが設けられ、
前記車室フロア部の後側には、前記車体の車幅方向に沿って延在するリアクロスメンバが設けられ、
前記第一クロスメンバが、前記後側クロスメンバであり、
前記第二クロスメンバが、前記リアクロスメンバであり、
前記サイドシルは、車室フロア部より上へ突出するように設けられ、
前記補強部材は、前記サイドシル、前記後側クロスメンバ、前記中央骨格部材、および前記リアクロスメンバにより囲われる空間内において、前記フロアパネルの前記車室フロア部の上面に固着される、
請求項1記載の、車両のフロア構造。
【請求項3】
前記補強部材は、屈曲による角部を持たない湾曲した断面構造に形成されている、
請求項1または2記載の、車両のフロア構造。
【請求項4】
前記補強部材は、
前記補強部材の延在方向に長い補強本体と、
前記補強本体の少なくとも一端において分岐して形成される複数の取付部と、を有し、
前記補強本体は、前記フロアパネルの前記車室フロア部の上面において、前記サイドシルから離間するように固着され、
複数の前記取付部は、前記サイドシルと前記第一クロスメンバとに分けて固着される、
請求項3記載の、車両のフロア構造。
【請求項5】
前記サイドシルと前記中央骨格部材との間において前記車体の前後方向に沿って延在するように、前記フロアパネルの下面に固着される縦通部材、を有し、
前記補強部材は、前記補強本体についての、前記縦通部材と重なる部位から突出する中間取付部、を有し、
前記中間取付部と前記縦通部材とは、前記フロアパネルを介在して固着される、
請求項4記載の、車両のフロア構造。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフロア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車といった車両では、乗員が乗車してシートに着座する車室が設けられる。車両は、車室の床面などを構成するためのフロアパネルが用いられる。
フロアパネルについての車両の車幅方向の外縁には、サイドシルが設けられる。サイドシルは、車両の前後方向に沿って延在する。
フロアパネルについての車両の車幅方向の中央部には、トンネル構造などが設けられる。トンネル構造は、車室において車両の前後方向に沿って延在する。トンネル構造の車幅方向の傍には、トンネル骨格部材がトンネル構造に沿うように車体の前後方向へ延在してよい。
サイドシルの前端、トンネル構造の前端、およびトンネル骨格部材の前端は、車幅方向に延在するバルクヘッドまたはフロントクロスメンバに共通に連結される。バルクヘッドは、車室の前面を構成する。
サイドシルの後端と、トンネル構造の後端、およびトンネル骨格部材の後端とは、車幅方向に延在するフロアパネルの立上部またはリアクロスメンバに連結される。フロアパネルの立上部には、さらに後方へ延在するリアフロアパネルが設けられてよい。
このような構造を用いて、車両の車体には、乗員が乗車する車室が画成される。フロアパネルについての、たとえばバルクヘッドから立上部までの区間は、車室フロア部として、車室の床部を構成する。
また、フロアパネルの車室フロア部の上には、車体の車幅方向に沿って延在する複数のフロアクロスメンバが設けられる。各フロアクロスメンバは、中央骨格部材としてのトンネル構造またはトンネル骨格部材とサイドシルとを連結する。なお、フロアクロスメンバは、車体の両側部に設けられる左右のサイドシルを連結するように設けることもできる。そして、たとえば特許文献1にあるように、複数のフロアクロスメンバとしての、前側クロスメンバと後側クロスメンバとの上には、前側のシートが取り付けられる。
また、近年の車両では、さらに、フロアパネルの下に、縦通部材が設けられることがある。縦通部材は、サイドシルとトンネル構造との間において、車両の前後方向に沿って延在する。縦通部材の前には、フロントビームが連結される。
ここで、サイドシル、トンネル構造、トンネル骨格部材、バルクヘッド、フロントクロスメンバ、リアクロスメンバ、前側クロスメンバ、後側クロスメンバ、および、縦通部材は、骨格部材である。骨格部材は、たとえばハット断面形状に形成されるとともに、スポット溶接などによりフロアパネルに固着され、車体の車室に剛性を与える。車体に入力される衝撃は、骨格部材を通じて、また複数の骨格部材により分散されて、入力の反対側へ伝達される。これにより、車室などの変形が抑制され得る。
このようなフロア構造などを採用することにより、衝突などの衝撃を吸収できる車室が、車両に設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-005565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようなフロア構造を有する車両では、車体の側面に、他の車両などが衝突する可能性がある。
上述した前側クロスメンバ、後側クロスメンバは、車体の側面から入力される衝撃を、トンネル構造やトンネル骨格部材へ逃がすことができる。このような骨格部材の作用により、側突する車両の車室は、車幅方向において大きく変形し難くできる。
【0005】
しかしながら、側突において、他の車両は、その前面などにおいて面状に当たるとは限らない。車体の側面には、電柱、壁角、他の車両の角などが当たる可能性がある。
この場合、車体の側面への入力は、前後幅を持つ面状なものではなく、一点集中的なものになり得る。
入力が一点集中的なものになると、車体は、面状の入力がある場合と比べて大きく変形してしまう可能性がある。
【0006】
特に、サイドシルに立設されているBピラーや後側クロスメンバより前側となる位置で電柱などが衝突すると、Bピラーや後側クロスメンバより前側の部分が、車幅方向の中央方向へ向けて大きく変形してしまう可能性がある。
この場合、後側クロスメンバより前側のフロア部分は、車幅方向の中央側へ向けて大きく押し込まれるように変形して、車幅方向において大きく深く圧縮されるように変形してしまう可能性がある。
また、走行中の車両は、電柱などと衝突した後においても、さらに前へ進行しようとする可能性がある。衝突した後の進行の程度は、衝突前の車両の速度に応じたものになる。
衝突後に車両が前へ進行すると、電柱などはさらに車体へ食い込み易くなる。
その結果、電柱などに側突した車体は、後側クロスメンバより前側のフロア部分だけでなく、後側クロスメンバより後側のフロア部分についても大きく変形する可能性がある。サイドシルや縦通部材などは、後側クロスメンバより後側において、大きく曲がる可能性がある。
【0007】
そして、車両の車体においてこれらの大きな変形が生じると、前側クロスメンバや後側クロスメンバが折れ曲がったり、そのフロアクロスメンバの折曲部分や後側クロスメンバより後側の立上部の近くの部分においてフロアパネルが破断したり、する可能性も生じ得る。
また、前側クロスメンバや後側クロスメンバが折れ曲がると、その上に取り付けられるシートの位置は、変化する。たとえばシートの位置が下がると、シートの乗員に対して展開するサイドエアバッグなどの高さ位置は、シートから展開しているとしても、乗員の肩より低くなる。サイドエアバッグなどのエアバックは、本来の乗員の保護性能を十分に発揮することができなくなる可能性がある。
また、後側クロスメンバより後側のフロア部分は、後列のシートに着座する乗員の足下になる。後側クロスメンバより後側のフロア部分が大きく変形してしまうと、後列のシートに着座する乗員に対して影響を与える可能性がある。
【0008】
このように車両では、そのフロア構造において上述したような変形が生じ難くなるようにすることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一形態に係る車両のフロア構造は、車両の車体を構成するフロアパネルについての車幅方向の外縁に沿って延在するサイドシルと、前記車体の車幅方向の中央部分において前記車体の前後方向に沿って延在する中央骨格部材と、前記車体の車幅方向に沿って延在して、前記サイドシルと前記中央骨格部材とを連結するように延在する第一クロスメンバと、前記第一クロスメンバより前記車体の後方において前記車体の車幅方向に沿って延在して、前記サイドシルと前記中央骨格部材とに連結される第二クロスメンバと、前記サイドシルと前記第一クロスメンバとの連結部分と、前記中央骨格部材と前記第二クロスメンバとの連結部分との間に斜め筋交い状に設けられる補強部材と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明において、車両のフロア構造は、サイドシル、中央骨格部材、第一クロスメンバ、および、第二クロスメンバ、を有する。サイドシルは、車両の車体を構成するフロアパネルについての車幅方向の外縁に沿って延在する。中央骨格部材は、車体の車幅方向の中央部分において車体の前後方向に沿って延在する。第一クロスメンバは、車体の車幅方向に沿って延在して、サイドシルと中央骨格部材とを連結するように延在する。第二クロスメンバは、第一クロスメンバより車体の後方において車体の車幅方向に沿って延在して、サイドシルと中央骨格部材とに連結される。
そして、本発明では、このようなフロアの骨格構造に対して、補強部材が追加される。補強部材は、サイドシルと第一クロスメンバとの連結部分と、中央骨格部材と第二クロスメンバとの連結部分との間に、斜め筋交い状に設けられる。補強部材は、サイドシル、第一クロスメンバ、中央骨格部材、および第二クロスメンバにより囲われる空間において、斜め筋交い状に設けられる。
このため、車体の側面に電柱などが衝突し、車体の側面に対して一点集中的な入力があったとしても、第一クロスメンバより後側において変形が生じ難くなる。第一クロスメンバより後側においてサイドシルなどが大きく湾曲するように変形し難くなる。また、補強部材を追加により第一クロスメンバより後側のフロア構造が維持されることにより、第一クロスメンバより前側のフロア部分についても、車幅方向の中央側へ向けて強く押し込まれて、車幅方向の中央側へ向けて圧縮されるように変形し難くなる。したがって、本発明では、第一クロスメンバより前側において電柱などがサイドシルへ側突するとしても、サイドシルやフロアパネルなどが車幅方向の中央側へ向けて大きく変形することが抑制され得る。フロアパネルは、破断し易くなる。
このように本発明では、補強部材が追加されていない車両のフロア構造において生じる可能性がある変形を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の実施形態に係る車両としての自動車の説明図である。
図2図2は、図1の自動車において採用可能なフロア構造と、面状の側突による変形との一例の模式的な説明図である。
図3図3は、図2のフロア構造の自動車の側面に対して、電柱による一点集中的な入力が作用する場合の変形の一例の模式的な説明図である。
図4図4は、フロアクロスメンバとしての前側クロスメンバが下側へ折れ曲がるように変形する場合の課題の模式的な説明図である。
図5図5は、本発明の第一実施形態で採用する自動車のフロア構造を、車体の左側から見た模式的な説明図である。
図6図6は、図5の自動車のフロア構造を、車体の上側から見た模式的な説明図である。
図7図7は、図5の自動車のフロア構造で用いることができる、補強部材の断面構造の模式的な説明図である。
図8図8は、車体の左側での図7の補強部材についてのフロアパネルの固着状態と、側突入力とについての模式的な説明図である。
図9図9は、図5および図6のフロア構造の自動車の側面に対して、一点集中的な側突入力が作用する場合の変形の一例の模式的な説明図である。
図10図10は、第一実施形態の変形例に係る補強部材の断面構造の模式的な説明図である。
図11図11は、図10の変形例の補強部材についてのフロアパネルの固着状態と、側突入力とについての模式的な説明図である。
図12図12は、第二実施形態での補強部材についてのフロアパネルの固着状態と、側突入力とについての模式的な説明図である。
図13図13は、第三実施形態での補強部材についてのフロアパネルの固着状態と、側突入力とについての模式的な説明図である。
図14図14は、第四実施形態での補強部材についてのフロアパネルの固着状態と、側突入力とについての模式的な説明図である。
図15図15は、第四実施形態での補強部材の補強本体の断面構造の模式的な説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0013】
[第一実施形態]
図1は、本発明の実施形態に係る車両としての自動車1の説明図である。
図1の自動車1は、車両の一例である。自動車1は、ドライバの操作に基づいて走行することができるだけでなく、ドライバの操作を支援する運転支援による走行や、自動運転による走行が可能なものであってよい。
そして、自動車1は、たとえば図1に示すように、その側面に他の自動車などの物体70が衝突することがある。
自動車1は、このような側突があった場合でも、乗員などをできるかぎり保護することが求められる。
【0014】
図2は、図1の自動車1において採用可能なフロア構造と、面状の側突による変形との一例の模式的な説明図である。図2の自動車1の車体2は、その左側面に、他の自動車71などが面状に側突して変形している状態にある。
図2の自動車1の車体2には、乗員が乗車する車室3が設けられる。車室3には、ドライバなどの乗員が着座するための複数の前側のシート21と、後側のシート22と、が設けられる。複数の前側のシート21は、自動車1の車幅方向に並べて設けられてよい。ドライバなどの乗員は、各前側のシート21に一人ずつ着座できる。後側のシート22は、車幅方向に長尺のベンチシートでよい。長尺の後側のシート22には、複数の乗員が並んで着座できる。
【0015】
そして、車体2は、車室3の床面などを構成するためのフロアパネル31を有する。フロアパネル31についての自動車1の車体2の車幅方向の中央部分には、フロアパネル31より上へ突出するトンネル構造12が設けられる。トンネル構造12は、車室3において、自動車1の車体2の前後方向に延在する。
また、自動車1は、左右対称に設けられる骨格部材として、たとえば、サイドシル11、トンネル骨格部材13、バルクヘッド14、リアクロスメンバ15、前側クロスメンバ16、後側クロスメンバ17、縦通部材18、Bピラー19、を有する。
【0016】
サイドシル11は、フロアパネル31についての車体2の車幅方向の外縁に設けられる。サイドシル11は、車体2の前後方向に沿って延在する。これにより、サイドシル11は、自動車1の車体2を構成するフロアパネル31についての車幅方向の外縁に沿って延在する。
【0017】
トンネル骨格部材13は、トンネル構造12の車幅方向の傍において、トンネル構造12に沿うように車体2の前後方向へ延在する。これにより、トンネル骨格部材13およびトンネル構造12は、車体2の車幅方向の中央部分において車体2の前後方向に沿って延在する中央骨格部材として機能できる。
【0018】
バルクヘッド14は、車室3の前面の一部を構成するように、車体2の前部分に設けられる。なお、バルクヘッド14の前側には、さらに、車幅方向の略全幅にわたるように延在する不図示のフロントクロスメンバが設けられてよい。サイドシル11の前端、トンネル構造12の前端、および、トンネル骨格部材13の前端は、車室3の前側において車幅方向に延在する前側連結部材としてのバルクヘッド14およびフロントクロスメンバに共通に連結される。
【0019】
リアクロスメンバ15は、車体2の後部分において、車幅方向の略全幅にわたるように延在するように設けられる。サイドシル11の後端と、トンネル構造12の後端、および、トンネル骨格部材13の後端は、車室3の後側において車幅方向に延在する後側連結部材としてのフロアパネル31の後述する立上部32およびリアクロスメンバ15に連結される。
そして、フロアパネル31についての、バルクヘッド14、左右一対のサイドシル11、およびリアクロスメンバ15により囲われている内側部分は、車室3の床面を構成し、車室フロア部34として機能する。
【0020】
前側クロスメンバ16は、フロアパネル31の車室フロア部34の上において、車体2の車幅方向に沿って延在する。前側クロスメンバ16は、中央骨格部材としてのトンネル構造12またはトンネル骨格部材13とサイドシル11とを連結する。
後側クロスメンバ17は、前側クロスメンバ16より後側において、車体2の車幅方向に沿って延在する。後側クロスメンバ17は、中央骨格部材としてのトンネル構造12またはトンネル骨格部材13とサイドシル11とを連結する。また、Bピラー19の下端は、サイドシル11とともに、後側クロスメンバ17に連結されてよい。
このように前側クロスメンバ16および後側クロスメンバ17といったフロアクロスメンバは、中央骨格部材としてのトンネル構造12またはトンネル骨格部材13とサイドシル11とを連結する。
なお、フロアクロスメンバは、車体2の両側部に設けられる左右のサイドシル11を連結するように設けられてもよい。
そして、複数のフロアクロスメンバとしての、前側クロスメンバ16と後側クロスメンバ17との上には、前側のシート21が取り付けられる。
【0021】
縦通部材18は、フロアパネル31の下において、車体2の前後方向に沿って延在する。縦通部材18は、フロアパネル31の下面に固着される。縦通部材18の前端は、バルクヘッド14や、不図示のフロントビームが連結されてよい。縦通部材18の後端は、リアクロスメンバ15とサイドシル11との連結部分に接合されてよい。このように自動車1の車体2の前後方向に沿って延在する縦通部材18は、車幅方向においては、サイドシル11とトンネル構造12との間に位置することになる。
【0022】
これらの骨格部材は、たとえば、ハット断面形状に形成されて、フロアパネル31に対してスポット溶接などにより固着されてよい。これにより、骨格部材は、車体2のフロアパネル31および車室3に剛性を与えることができる。車体2に入力される衝撃は、骨格部材を通じて、また複数の骨格部材により分散されて、車体2の反対側へ伝達され得る。これにより、車室3などの変形が抑制され得る。
このようなフロア構造を採用することなどにより、自動車1には、衝突などの衝撃を吸収することができる車室3が構成される。
【0023】
ところで、上述するようにこのようなフロア構造を有する自動車1では、図2に示すように、車体2の側面に、他の自動車71などが真横方向から衝突する可能性がある。
上述した前側クロスメンバ16、後側クロスメンバ17は、車体2の側面から入力される衝撃を、トンネル構造12やトンネル骨格部材13へ逃がすことができる。このような骨格部材の作用により、側突する自動車1の車室3は、車幅方向において大きく変形し難くできる。
また、図2における他の自動車71は、自動車1の車体2の側面に対して、面状に衝突している。このような面状の側突が生じる場合、自動車1の車体2は、基本的にその衝撃を上述したフロア構造の骨格部材により効率よく車体2の反対側へ伝達させることができる。自動車1の側面についての変形は、衝撃による入力の大きさに比べて、小さくすることが可能である。
【0024】
しかしながら、側突において、他の自動車71は、その前面などにおいて面状に当たるとは限らない。車体2の側面には、電柱72、壁角、他の自動車71の角なとが当たる可能性がある。
【0025】
図3は、図2のフロア構造の自動車1の側面に対して、電柱72による一点集中的な入力が作用する場合の変形の一例の模式的な説明図である。
図3において電柱72は、自動車1の車体2の側面についての、後側クロスメンバ17およびBピラー19より前側となる部位に、斜め前方向から衝突している。
この場合、車体2の側面への入力は、図2のように前後幅を持つ面状なものではなく、一点集中的なものになる。
一点集中的な入力があると、車体2は、面状の入力がある場合と比べて大きく変形してしまう可能性がある。
【0026】
特に、図3に示すように後側クロスメンバ17およびBピラー19より前側となる位置に電柱72などが衝突すると、後側クロスメンバ17およびBピラー19より前側の部分は、車幅方向の中央方向へ向けて大きく変形してしまう可能性がある。
この場合、後側クロスメンバ17およびBピラー19より前側のフロア部分は、車幅方向の中央側へ向けて大きく押し込まるように変形し、車幅方向において大きく深く圧縮されるように変形してしまう可能性がある。
また、走行中の自動車1は、電柱72などと衝突した後においても、走行の慣性などによりさらに前へ進行する可能性がある。衝突した後の進行の程度は、衝突前の自動車1の速度などに応じて増減する。
衝突後に自動車1が前へ進行すると、電柱72などは、車体2の側面に食い込んだ位置から後側へ向けてさらに食い込み得る。電柱72などは、車体2に対して、最初に側突した位置から斜め後方へ向かうように車体2へ食い込み得る。
このような側突となる場合、電柱72などと側突した車体2は、後側クロスメンバ17およびBピラー19より前側のフロア部分だけでなく、後側クロスメンバ17およびBピラー19より後側のフロア部分についても大きく変形し得る。後側クロスメンバ17およびBピラー19より前側からそれらの後側までにかけて前後方向に沿って延在するサイドシル11や縦通部材18などは、後側クロスメンバ17より後側などにおいて、大きく曲がる可能性がある。
【0027】
また、自動車1の車体2においてこのような大きな変形が生じると、前側クロスメンバ16や後側クロスメンバ17は、折れ曲がる可能性が高まる。図3の位置P1に示すように、フロアパネル31は、前側クロスメンバ16や後側クロスメンバ17が折曲している部分において破断する可能性がある。図3の位置P2に示すように、フロアパネル31は、後側クロスメンバ17より後側に位置するフロアパネル31の立上部32の前近くの部分において破断する可能性がある。また、フロアパネル31の下側には、縦通部材18に沿って、高圧配線61などが設けられることがある。前側クロスメンバ16や後側クロスメンバ17の折れ曲がりは、高圧配線61に負担をかける可能性がある。
また、後側クロスメンバ17より後側のフロア部分は、図3の範囲P3に示すように、後側のシート22に着座する乗員の足下になる。後側クロスメンバ17より後側のフロア部分が大きく歪むように変形してしまうと、後側のシート22に着座する乗員に対して影響を与えてしまう可能性がある。
また、前側クロスメンバ16や後側クロスメンバ17が折れ曲がると、その上に取り付けられているシートの位置が変化する。たとえばシートの位置が下がると、シートの乗員に対して展開するサイドエアバッグなどの高さ位置は、シートから展開しているとしても、乗員の肩より低くなる。サイドエアバッグなどのエアバックは、本来の乗員の保護性能を十分に発揮することができなくなる可能性がある。
【0028】
図4は、フロアクロスメンバとしての前側クロスメンバ16が下側へ折れ曲がるように変形する場合の課題の模式的な説明図である。
図4において前側クロスメンバ16は、下側へ折れ曲がっている。この場合、前側のシート21も下がる。その結果、前側のシート21の乗員に対して展開するサイドエアバッグ60などの高さ位置は、乗員の肩より低くなる。サイドエアバッグ60は、乗員の肩の高さで展開することで得られる本来の乗員の保護性能を、十分に発揮することができなくなる可能性がある。
【0029】
このように自動車1では、そのフロア構造について、上述したような一点集中的な側突の入力に対して、車体2の変形が生じ難くなるようにすることが望まれる。
【0030】
図5は、本発明の第一実施形態で採用する自動車1のフロア構造を、車体2の左側から見た模式的な説明図である。
フロアパネル31は、車室3の後側となる部分において上へ屈曲されて、立上部32を有する。また、立上部32の上端には、その上端から後方へ向けて延在するリアフロア部33が設けられる。立上部32の上には、後側のシート22が取り付けられる。フロアパネル31についての、たとえばバルクヘッド14から立上部32までの区間は、車室フロア部34として、車室3の床部を構成する。
また、サイドシル11は、車室フロア部34より上へ突出するように設けられている。
図6は、図5の自動車1のフロア構造を、車体2の上側から見た模式的な説明図である。
図5および図6において、自動車1の基本的なフロア構造は、図2および図3で説明したものと同じである。
【0031】
そして、図5および図6のフロア構造では、長尺の補強部材40が、左右両側に追加される。
長尺の補強部材40は、フロアパネル31の車室フロア部34の上面に対して、スポット溶接などにより固着される。長尺の補強部材40は、サイドシル11と後側クロスメンバ17との連結部分と、トンネル骨格部材13とリアクロスメンバ15との連結部分との間に、斜め筋交い状に設けられる。
また、長尺の補強部材40は、一端がサイドシル11と後側クロスメンバ17とにスポット溶接などにより固着され、他端がトンネル骨格部材13とリアクロスメンバ15とにスポット溶接などにより固着されてよい。
このような補強部材40は、サイドシル11についてのフロアパネル31の車室フロア部34より上へ突出する部分、後側クロスメンバ17、トンネル骨格部材13、および、リアクロスメンバ15により囲われる空間内において、フロアパネル31の車室フロア部34の上面に固着されることになる。ここで、後側クロスメンバ17は、第一クロスメンバとして機能する。トンネル骨格部材13は、中央骨格部材として機能する。リアクロスメンバ15は、第一クロスメンバより車体2の後方において車体2の車幅方向に沿って延在する第二クロスメンバとして機能する。
【0032】
図7は、車体2の左側での図5の自動車1のフロア構造で用いることができる、補強部材40の断面構造の模式的な説明図である。
図7の補強部材40の断面は、たとえば図6のA-A断面によるものでよい。
図8は、図7の補強部材40についてのフロアパネル31の固着状態と、側突入力とについての模式的な説明図である。
なお、車体2の右側での補強部材40は、図7とは上下逆の配置になる。
【0033】
図7に示すように、補強部材40は、長尺の湾曲断面部41と、湾曲断面部41の両側の長辺に設けられる一対の固定片部42と、を有する。
湾曲断面部41は、円弧状にゆるやかに湾曲した断面構造を基本として形成されよい。このように円弧状に湾曲した断面構造は、ハット断面形状の骨格部材とは異なり、屈曲による角部を持たない湾曲した断面構造である。
固定片部42は、図8に示すように、フロアパネル31に対して、スポット溶接などにより固着される。図8の破線円は、スポット溶接点43を示している。
これにより、補強部材40は、図7に示すように、フロアパネル31の上において、円弧状の低背で突出するように、設けられる。補強部材40によるフロアパネル31の上面からの突出量は、低く抑えることができる。後側のシート22に着座する乗員の足下でのフロアの凹凸は、抑えられる。
【0034】
図9は、図5および図6の本実施形態のフロア構造の自動車1の側面に対して、一点集中的な側突入力が作用する場合の変形の一例の模式的な説明図である。
図9において、電柱72は、図3と同様に、後側クロスメンバ17およびBピラー19より前側において、自動車1の車体2の側面に衝突している。
しかしながら、本実施形態のフロア構造では、図3のフロア構造とは異なり、後側クロスメンバ17およびBピラー19の後側に、長尺の補強部材40が設けられている。
長尺の補強部材40は、サイドシル11、後側クロスメンバ17、トンネル骨格部材13、および、リアクロスメンバ15により囲われる略矩形の空間において、その矩形の対角の間に筋交い状に設けられている。後側クロスメンバ17の後側における側突に対する剛性は、格段に高まる。
また、サイドシル11やBピラー19を通じて車体2に入力される側突の衝撃は、前側クロスメンバ16および後側クロスメンバ17だけでなく、長尺の補強部材40にも分散され得る。
【0035】
したがって、後側クロスメンバ17およびBピラー19より前側となる位置で電柱72が衝突しても、図9に示すように、後側クロスメンバ17およびBピラー19より前側の部分は、車幅方向の中央方向へ向けて大きく変形し難くなる。
また、走行中の自動車1は、電柱72と衝突した後においても、さらに前へ進行しようとする可能性がある。このような衝突後の進行があったとしても、電柱72はさらに車体2へ食い込み難くなる。
また、後側クロスメンバ17より後側のフロア部分は、長尺の補強部材40により直接的に補強されているので、大きく変形し難くなる。サイドシル11や縦通部材18などは、後側クロスメンバ17より後側において、大きく曲がり難くなる。
【0036】
以上のように、本実施形態では、フロアパネル31についての、自動車1において乗員が乗車する車室3の床部を構成する車室フロア部34の車幅方向の中央部分には、フロアパネル31より上へ突出するようにトンネル構造12が設けられる。トンネル構造12の傍には、トンネル構造12に沿うように車体2の前後方向へ延在するトンネル骨格部材13が設けられる。また、フロアパネル31についての車幅方向の外縁には、その外縁に沿って延在するサイドシル11が設けられる。そして、トンネル骨格部材13とサイドシル11との間には、前側クロスメンバ16および後側クロスメンバ17が、車体2の車幅方向に沿って延在して設けられる。前側クロスメンバ16および後側クロスメンバ17は、トンネル骨格部材13などの中央骨格部材とサイドシル11とを連結する。また、車室フロア部34の後側には、車体2の車幅方向に沿って延在するリアクロスメンバ15が設けられる。リアクロスメンバ15の端部は、サイドシル11と連結される。
本実施形態では、このようなフロアの骨格構造に対して、補強部材40が追加される。補強部材40は、サイドシル11と後側クロスメンバ17との連結部分と、トンネル骨格部材13とリアクロスメンバ15との連結部分との間に、斜め筋交い状に設けられる。補強部材40は、サイドシル11、後側クロスメンバ17、トンネル骨格部材13、およびリアクロスメンバ15により囲われる空間内において、フロアパネル31の車室フロア部34の上面に固着される。
このため、車体2の側面に電柱72などが衝突し、車体2の側面に対して一点集中的な入力があったとしても、後側クロスメンバ17より後側において変形が生じ難くなる。後側クロスメンバ17より後側においてサイドシル11やトンネル骨格部材13が大きく変形し難くなる。また、後側クロスメンバ17より後側のフロア構造が維持されることにより、後側クロスメンバ17より前側のフロア部分についても、車幅方向の中央側へ向けて大きく押し込まれるように変形し難くなる。後側クロスメンバ17より前側のフロア部分は、車幅方向において全体的に大きく圧縮されるように変形し難くなる。Bピラー19やその下端付近においてサイドシル11に取り付けけられる後側クロスメンバ17より前側において電柱72などが衝突したとしても、フロアパネル31などが大きく変形し難くなり得る。フロアパネル31は、破断し易くなる。
このように本実施形態では、補強部材40が追加されていない自動車1のフロア構造において生じ得る変形を抑制できる。
【0037】
本実施形態では、補強部材40を追加していない自動車1の車体2において生じる可能性がある大きな変形が生じ難くなる。前側クロスメンバ16や後側クロスメンバ17が折れ曲がり難くなる。前側クロスメンバ16や後側クロスメンバ17が折れ曲がることによるフロアパネル31の破断や、後側クロスメンバ17より後側部分でのフロアパネル31の破断が、生じ難くなる。また、フロアパネル31の下側において縦通部材18に沿って設けられる高圧配線61などに、負担をかけ難くできる。
また、本実施形態では、前側クロスメンバ16や後側クロスメンバ17の折れ曲がりを抑制できる。前側クロスメンバ16や後側クロスメンバ17の上に取り付けられている前側のシート21の位置も上下に変化し難くなる。その結果、本実施形態では、前側のシート21の位置が上下へ変化した場合において危惧されるサイドエアバッグ60などの展開高さ位置のずれが生じ難くなる。サイドエアバッグ60は、その本来の高さ位置で展開して、乗員の肩などを良好に保護し得る。乗員の保護性能は、十分に発揮され得る。
また、本実施形態では、後側クロスメンバ17より後側のフロア部分について、大きな変形が生じ難くなる。したがって、後側のシート22に着座する乗員に対して影響を与え難くなる。
【0038】
本実施形態では、さらに、補強部材40は、屈曲による角部を持たない湾曲した断面構造に形成されている。これにより、補強部材40は、低背となり、フロアパネル31の上面から上への突出量を抑えることができる。
また、屈曲による角部を持たない湾曲した断面構造の補強部材40は、図8に示すように、補強部材40の延在方向からずれた向きの入力F2が作用したとしても、その入力に耐えて変形することなく、形状を維持することができる。補強部材40は、その延在方向からずれた向きの入力F2が作用しても、その延在方向から入力F1が作用する場合と同様に、変形することなく、それらの入力F1,F2を車幅方向の内側へ伝えることができる。
【0039】
これに対し、補強部材40が、一般的な骨格部材のように、たとえばハット断面形状に形成される場合、屈曲による角部に応力が集中し易い。ハット断面形状の補強部材40は、その延在方向からずれた向きの入力が作用すると、屈曲による角部において変形しやすい。このような変形があったとしても、ずれた向きの入力を車幅方向の内側へ伝えられるようにするためには、補強部材40の断面や素材の厚さを増やす必要がある。補強部材40についての、フロアパネル31の上面から上への突出量は、大きくする必要がある。
【0040】
図10は、第一実施形態の変形例に係る補強部材40の断面構造の模式的な説明図である。
図11は、図10の変形例の補強部材40についてのフロアパネル31の固着状態と、側突入力とについての模式的な説明図である。
図10および図11に示す長尺の補強部材40は、家型の断面形状に形成されている。このような断面形状の補強部材40は、サイドシル11、後側クロスメンバ17、トンネル骨格部材13、および、リアクロスメンバ15により囲われる略矩形の空間において、その矩形の対角の間に筋交い状に設けることが可能である。そして、このような家型の断面形状の補強部材40を設けることにより、後側クロスメンバ17の後側における側突に対する剛性が高まることが期待できる。
【0041】
しかしながら、家型の断面形状の補強部材40では、図11に示すように、補強部材40の延在方向からずれた向きの入力F2が作用すると、それにより折れ曲がるように変形し易い。家型の断面形状の補強部材40は、たとえば図11に示す位置P4において、屈曲するように変形する可能性がある。
このように補強部材40が、屈曲による角部を持つ断面構造である場合、補強部材40への入力の向きが延在方向からずれると、補強の効果が低下し易くなると予想される。
たとえば図3のように後側クロスメンバ17より前側において電柱72などが深く食い込む場合、補強部材40への入力の向きは、その延在方向からずれやすい。
仮にこのような変形が後側クロスメンバ17より前側において生じている場合、図11のように屈曲による角部を持つ断面構造の補強部材40では、その後の入力の向きがその延在方向から大きくずれてゆくことにより、変形して補強性能が低下し易くなる。
これに対し、本実施形態の補強部材40は、図7および図8に示すように、屈曲による角部を持たない断面構造である。その結果、本実施形態の補強部材40は、後側クロスメンバ17より前側において上述した変形が生じていて、その後の入力の向きが延在方向から大きくずれるとしても、変形し難くなる。本実施形態の補強部材40は、後側クロスメンバ17より前側において上述した変形が生じている場合でも、その補強性能が低下し難い。本実施形態の補強部材40は、補強部材40の延在方向からずれた向きの入力F2が作用しても、その延在方向から入力F1が作用する場合と同様に、その変形を抑制して、それらの入力F1,F2を車幅方向の内側へ伝えることができる。
【0042】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る自動車1のフロア構造を説明する。以下の説明では、主に、上述した実施形態との相違点について説明する。
【0043】
図12は、第二実施形態での補強部材40についてのフロアパネル31の固着状態と、側突入力とについての模式的な説明図である。
図12において、長尺の補強部材40は、補強部材40の延在方向に長い補強本体44と、補強本体44の両端の各々において2つずつ分岐して並べて形成される複数の取付部45~48と、を有する。
ここで、補強本体44と、複数の取付部45~48とは、一枚の鋼板を補強部材40の外形に沿ってプレス加工などにより切り出した一体的なものでよい。
【0044】
補強本体44は、上述した図7および図8の補強部材40と同様に屈曲による角部を持たないように、円弧状に湾曲した断面構造に形成される。
また、補強本体44は、その長辺において、フロアパネル31とスポット溶接などにより固着される。
これにより、補強部材40の補強本体44は、サイドシル11、後側クロスメンバ17、トンネル骨格部材13、および、リアクロスメンバ15により囲われる略矩形の空間において、その矩形の対角の間において筋交い状となる向きで設けられる。
また、補強部材40の補強本体44は、フロアパネル31の上において、円弧状の低背で突出するように、設けられる。
【0045】
複数の取付部45~48の中の、第一の取付部45は、フロアパネル31の上に固着された補強本体44から後側クロスメンバ17へ至るように長尺に形成される。第一の取付部45の先端部分は、後側クロスメンバ17とスポット溶接などにより固着される。
第二の取付部46は、フロアパネル31の上に固着された補強本体44からサイドシル11へ至るように長尺に形成される。第二の取付部46の先端部分は、サイドシル11とスポット溶接などにより固着される。
第三の取付部47は、フロアパネル31の上に固着された補強本体44からトンネル骨格部材13へ至るように長尺に形成される。第三の取付部47の先端部分は、トンネル骨格部材13とスポット溶接などにより固着される。
第四の取付部48は、フロアパネル31の上に固着された補強本体44からリアクロスメンバ15へ至るように長尺に形成される。第四の取付部48の先端部分は、リアクロスメンバ15とスポット溶接などにより固着される。
【0046】
このように補強本体44と複数の取付部45~48とを有する長尺の補強部材40は、サイドシル11と後側クロスメンバ17との連結部分と、トンネル骨格部材13とリアクロスメンバ15との連結部分との間に斜め筋交い状に設けられる。補強部材40は、サイドシル11、後側クロスメンバ17、トンネル骨格部材13、およびリアクロスメンバ15により囲われる空間内において、フロアパネル31の車室フロア部34の上面に固着される。
【0047】
また、補強部材40の中の、フロアパネル31の上に固着される補強本体44は、フロアパネル31の車室フロア部34の上面において、サイドシル11などから離間するように固着されている。
また、第一の取付部45は、後側クロスメンバ17と固着され、第二の取付部46は、サイドシル11と固着されている。
【0048】
図2に示すように、車体2の側面に対して面状の入力がある場合、その入力は、サイドシル11を車幅方向の中央側へ押し込む性質のものとなる。
この場合、サイドシル11は、その入力を、フロントクロスメンバ、バルクヘッド14、前側クロスメンバ16、後側クロスメンバ17、リアクロスメンバ15、さらには補強部材40へ分散して伝達しながら、車幅方向の中央側へ向けて移動するように変形しようとする。
そして、本実施形態において、補強部材40の中のフロアパネル31の上に固着される部分である補強本体44は、サイドシル11から、車幅方向の中央側へ離間している。
このため、サイドシル11に連結されている補強部材40は、サイドシル11についての車幅方向の中央側へ向けての移動変形を阻害しないようにできる。
補強部材40は、サイドシル11と連結されているにもかかわらず、サイドシル11についての車幅方向の中央側へ向けての移動変形を阻害しないようにできる。
【0049】
また、本実施形態において、補強部材40の複数の取付部45~48はすべて長尺に形成されている。このため、フロアパネル31の上に固着される部分である補強本体44は、サイドシル11だけでなく、後側クロスメンバ17、トンネル骨格部材13、およびリアクロスメンバ15のすべてから離間している。したがって、図9のような一点集中的な側突の入力以外の入力について、補強部材40は、サイドシル11、後側クロスメンバ17、トンネル骨格部材13、およびリアクロスメンバ15の本来の働きを阻害しないようにできる。たとえば前突などの際の働きを阻害しないようにできる。
【0050】
以上のように、本実施形態の補強部材40は、補強部材40の延在方向に長い補強本体44と、補強本体44の両端の各々において分岐するように並べて形成される複数の長尺な取付部45~48と、を有する。
そして、補強部材40の補強本体44は、フロアパネル31の車室フロア部34の上面において、サイドシル11から中央側へ離間するように固着される。
また、補強部材40の複数の長尺な取付部45~48は、サイドシル11と後側クロスメンバ17とに分けて固着される。
これにより、補強部材40は、たとえば車体2の側面へ面状の入力があった場合に、サイドシル11についての車幅方向の中央側への変形を阻害し難くなる。
しかも、補強部材40は、その補強本体44がサイドシル11から中央側へ離間するように設けられているにもかかわらず、複数の長尺な取付部45~48によりサイドシル11と後側クロスメンバ17とに直接に固着されている。その結果、補強部材40は、一点集中的な側突の入力がある場合には、後側クロスメンバ17より後側のフロア構造についての筋交いとして機能して、そのフロア構造の形状を維持するように機能することができる。
このように本実施形態の補強部材40は、面状の側突での車体2の側面部分の変形を阻害することなく、一点集中的な側突の入力による車体2の変形を抑制することができる。
【0051】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態に係る自動車1のフロア構造を説明する。以下の説明では、主に、上述した実施形態との相違点について説明する。
【0052】
図13は、第三実施形態での補強部材40についてのフロアパネル31の固着状態と、側突入力とについての模式的な説明図である。
図13の補強部材40は、車幅方向の中央側の第三の取付部47および第四の取付部48が、短尺である。それ以外は、図12の補強部材40と同様である。
第三の取付部47は、フロアパネル31の上に固着された補強本体44からトンネル骨格部材13へ至るように形成される。第三の取付部47の先端部分は、トンネル骨格部材13とスポット溶接などにより固着される。
第四の取付部48は、フロアパネル31の上に固着された補強本体44からリアクロスメンバ15へ至るように形成される。第四の取付部48の先端部分は、リアクロスメンバ15とスポット溶接などにより固着される。
【0053】
このように複数の取付部の中の、第三の取付部47および第四の取付部48が短尺に形成されることにより、補強部材40の補強本体44は、図12のものと比べて、トンネル骨格部材13およびリアクロスメンバ15に近い位置まで延長して形成すことができる。また、補強本体44は、トンネル骨格部材13およびリアクロスメンバ15に近い位置において、フロアパネル31とスポット溶接などにより固着できる。
その結果、補強部材40についてのフロアパネル31の上に固着される部分である補強本体44は、上述した実施形態と比べてトンネル骨格部材13およびリアクロスメンバ15に近い位置においてフロアパネル31に固着できる。
補強本体44は、その延在方向からの入力F1またはそれからずれた向きの入力F2があったとしても、トンネル骨格部材13およびリアクロスメンバ15に対する一定の角度姿勢を維持し易くなる。
補強本体44は、トンネル骨格部材13およびリアクロスメンバ15に対する角度姿勢が維持されることにより、上述した実施形態と比べて、より強い入力に対してもその姿勢を維持して、衝撃を伝達する機能を良好に発揮することができる。
【0054】
また、複数の取付部の中の、第一の取付部45および第二の取付部46は、長尺のままである。したがって、補強部材40は、たとえば車体2の側面へ面状の入力があった場合に、サイドシル11についての車幅方向の中央側への変形を阻害し難い。
【0055】
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態に係る自動車1のフロア構造を説明する。以下の説明では、主に、上述した実施形態との相違点について説明する。
【0056】
図14は、第四実施形態での補強部材40についてのフロアパネル31の固着状態と、側突入力とについての模式的な説明図である。
図14の補強部材40は、補強本体44、および第一の取付部45から第四の取付部48による複数の取付部とともに、第一の中間取付部51、第二の中間取付部52、を有する。このような補強部材40は、一枚の鋼板を補強部材40の外形に沿ってプレス加工などにより切り出した一体的なものでよい。
【0057】
第一の中間取付部51、および第二の中間取付部52は、補強本体44についての略中央部分から、逆向きに突出するように設けられる。
具体的には、第一の中間取付部51、および第二の中間取付部52は、フロアパネル31の下側に設けられる縦通部材18と重なるように、補強本体44についての縦通部材18と重なる略中央部分から突出するように設けられる。
そして、第一の中間取付部51、および第二の中間取付部52は、フロアパネル31を介在して、縦通部材18と重ねて、スポット溶接などにより固着される。
【0058】
このように補強部材40が、縦通部材18と重ねて固着される第一の中間取付部51および第二の中間取付部52を有することにより、補強部材40のそのものの剛性が高くなる。補強部材40の補強本体44は、上述した実施形態のものと比べて、変形し難くなる。
【0059】
図15は、第四実施形態での補強部材40の補強本体44の断面構造の模式的な説明図である。
補強部材40としての剛性が第一の中間取付部51および第二の中間取付部52により高められているため、円弧状に湾曲した断面構造を有する補強本体44は、図7の補強部材40と比べて低背に形成されている。
【0060】
以上のように、本実施形態の補強部材40は、補強本体44についての、縦通部材18と重なる部位から突出する複数の中間取付部51~52、を有する。複数の中間取付部51~52の各々は、フロアパネル31を介在して、縦通部材18と固着される。
これにより、補強部材40は、補強本体44の途中から突出して設けられる複数の中間取付部51~52により補強されて、さらに変形し難くなる。補強部材40は、一点集中的な側突での入力があったとしても、また、その入力方向が補強部材40の延在方向からずれていたとしても、その入力に耐えて形状を維持でき、その入力を車幅方向の内側へ伝えることができる。
また、本実施形態では、複数の中間取付部51~52が縦通部材18により補強されている。これにより、補強部材40は、それ単体での強度を減らすことが可能である。補強部材40は、上述した実施形態のものより低背にできる。補強部材40が低背となることにより、補強部材40によるフロアパネル31の上面から上への突出量をさらに抑えることができる。
【0061】
以上の実施形態は、本発明に好適な実施形態の例であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更が可能である。
【0062】
上述した実施形態では、補強部材40は、後側クロスメンバ17とリアクロスメンバ15との間にのみ設けられている。
この他にもたとえば、補強部材40は、前側クロスメンバ16と後側クロスメンバ17との間に設けられても、それらの双方の間に設けられてもよい。
ただし、前側クロスメンバ16と後側クロスメンバ17との間のみに補強部材40を追加しても、後側クロスメンバ17より後側における変形を直接的に抑制することができない。また、前側のシート21は、自動車1を運転操作するドライバなどが着座する。前側クロスメンバ16と後側クロスメンバ17との間のフロアパネル31の上に補強部材40が固着されて床面が凹凸になると、ドライバについての運転操作の快適性などが低下すると予想される。
また、後側クロスメンバ17とリアクロスメンバ15との間、および、前側クロスメンバ16と後側クロスメンバ17との間の双方に、補強部材40を追加する場合、補強部材40の追加による車重増加などが顕著化し易くなると考えられる。
上述するように後側クロスメンバ17とリアクロスメンバ15との間のみに補強部材40を追加するだけでも、後側クロスメンバ17より後側だけでなく、後側クロスメンバ17より前側である前側クロスメンバ16と後側クロスメンバ17との間についてもフロア変形を抑制する効果が期待できる。
【符号の説明】
【0063】
1…自動車(車両)、2…車体、3…車室、11…サイドシル、12…トンネル構造(中央骨格部材)、13…トンネル骨格部材(中央骨格部材)、14…バルクヘッド、15…リアクロスメンバ(第二クロスメンバ)、16…前側クロスメンバ、17…後側クロスメンバ(第一クロスメンバ)、18…縦通部材、19…Bピラー、21…前側のシート、22…後側のシート、31…フロアパネル、32…立上部、33…リアフロア部、34…車室フロア部、40…補強部材、41…湾曲断面部、42…固定片部、43…スポット溶接点、44…補強本体、45~50…取付部、51~52…中間取付部、60…サイドエアバッグ、70…物体、71…他の自動車、72…電柱


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15