(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068528
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】車両のフロア構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20240513BHJP
【FI】
B62D25/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179054
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 正広
(74)【代理人】
【識別番号】100182051
【弁理士】
【氏名又は名称】松川 直宏
(74)【代理人】
【識別番号】100179280
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 育郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180747
【弁理士】
【氏名又は名称】小森 剛彦
(72)【発明者】
【氏名】松澤 公雄
(72)【発明者】
【氏名】海老澤 朋也
(72)【発明者】
【氏名】中澤 孝典
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB06
3D203BB08
3D203BB12
3D203BB22
3D203CA53
(57)【要約】
【課題】車両のフロア構造の変形が生じ難くなるようにする。
【解決手段】車両1のフロア構造は、車体2を構成する第一クロスメンバ17、サイドシル11、第二クロスメンバ15、および中央骨格部材13に囲われる領域に設けられる第一補強部材40および第二補強部材50を有する。第一補強部材40の第一の三角体構造部44の一側面47が、第一クロスメンバ17に沿って延在するように第一クロスメンバ17の近くに設けられる。第一の三角体構造部44の他の一側面48が、サイドシル11と第一クロスメンバ17との前外連結部分26から中央骨格部材13と第二クロスメンバ15との後中連結部分27へ向かう筋交い方向28に沿って延在するように設けられる。第二補強部材50は、少なくとも後中連結部分27から前外連結部分26の方向へ向けて延在する立体構造部を有する。第一補強部材40と第二補強部材50とは、筋交い方向28において離間している。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車体を構成するフロアパネルについての車幅方向の外縁に沿って延在するサイドシルと、
前記車体の車幅方向の中央部分において前記車体の前後方向に沿って延在する中央骨格部材と、
前記車体の車幅方向に沿って延在して、前記サイドシルと前記中央骨格部材とを連結するように延在する第一クロスメンバと、
前記第一クロスメンバより前記車体の後方において前記車体の車幅方向に沿って延在して、前記サイドシルと前記中央骨格部材とに連結される第二クロスメンバと、
前記第一クロスメンバ、前記サイドシル、前記第二クロスメンバ、および前記中央骨格部材に囲われる領域に設けられる第一補強部材および第二補強部材と、
を有し、
前記第一補強部材は、
略三角形の上面および下面とともに、略三角形の各辺に対応する側面とを有する第一の三角体構造部を有し、
前記第一の三角体構造部の一側面が、前記第一クロスメンバに沿って延在するように前記第一クロスメンバの近くに設けられ、
前記第一の三角体構造部の他の一側面が、前記サイドシルと前記第一クロスメンバとの前外連結部分から前記中央骨格部材と前記第二クロスメンバとの後中連結部分へ向かう筋交い方向に沿って延在するように設けられ、
前記第二補強部材は、
少なくとも前記後中連結部分から前記前外連結部分の方向へ向けて延在する立体構造部を有し、
前記第一補強部材と前記第二補強部材とは、前記筋交い方向において離間している、
車両のフロア構造。
【請求項2】
前記フロアパネルは、前記車両において乗員が乗車する車室の床部を構成する車室フロア部を有し、
前記中央骨格部材は、前記車体の車幅方向の中央部分において前記車室フロア部より上へ突出して設けられるトンネル構造、または前記トンネル構造の傍において前記車体の前後方向へ延在するトンネル骨格部材であり、
前記車室フロア部の上には、前記車体の車幅方向に沿って延在して、前記中央骨格部材としての前記トンネル構造またはトンネル骨格部材と前記サイドシルとを連結する前側クロスメンバおよび後側クロスメンバが設けられ、
前記車室フロア部の後側には、前記車体の車幅方向に沿って延在するリアクロスメンバが設けられ、
前記第一クロスメンバが、前記後側クロスメンバであり、
前記第二クロスメンバが、前記リアクロスメンバであり、
前記サイドシルは、車室フロア部より上へ突出するように設けられ、
前記第一補強部材と前記第二補強部材とは、前記後側クロスメンバ、前記サイドシル、前記リアクロスメンバ、および前記中央骨格部材により囲われる領域において、前記フロアパネルの前記車室フロア部の上面に固着される、
請求項1記載の、車両のフロア構造。
【請求項3】
前記サイドシルと前記中央骨格部材との間において前記車体の前後方向に沿って延在するように、前記フロアパネルの下面に固着される縦通部材、を有し、
前記第一補強部材および前記第二補強部材の中の少なくとも前記第一補強部材は、前記フロアパネルを介在して、前記縦通部材と固着される、
請求項1または2記載の、車両のフロア構造。
【請求項4】
前記第二補強部材は、
略三角形の上面および下面とともに、略三角形の各辺に対応する側面とを有する第二の三角体構造部を有し、
前記第二の三角体構造部の一側面が、前記第二クロスメンバに沿って延在するように前記第二クロスメンバの近くに設けられ、
前記第二の三角体構造部の他の一側面が、前記筋交い方向に沿って延在するように設けられる、
請求項3記載の、車両のフロア構造。
【請求項5】
前記第一補強部材は、
前記第一の三角体構造部から前記筋交い方向に沿って突出する第一の突出部を有し、
前記第二補強部材は、
前記第二の三角体構造部から前記筋交い方向に沿って突出して、前記第一突出部と対向する第二の突出部を有し、
前記第一突出部と前記第二突出部とは、前記車両の前後方向において重ならないように離間している、
請求項4記載の、車両のフロア構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフロア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車といった車両では、乗員が乗車してシートに着座する車室が設けられる。車両は、車室の床面などを構成するためのフロアパネルが用いられる。
フロアパネルについての車両の車幅方向の外縁には、サイドシルが設けられる。サイドシルは、車両の前後方向に沿って延在する。
フロアパネルについての車両の車幅方向の中央部には、トンネル構造などが設けられる。トンネル構造は、車室において車両の前後方向に沿って延在する。トンネル構造の車幅方向の傍には、トンネル骨格部材がトンネル構造に沿うように車体の前後方向へ延在してよい。
サイドシルの前端、トンネル構造の前端、およびトンネル骨格部材の前端は、車幅方向に延在するバルクヘッドまたはフロントクロスメンバに共通に連結される。バルクヘッドは、車室の前面を構成する。
サイドシルの後端と、トンネル構造の後端、およびトンネル骨格部材の後端とは、車幅方向に延在するフロアパネルの立上部またはリアクロスメンバに連結される。フロアパネルの立上部には、さらに後方へ延在するリアフロアパネルが設けられてよい。
このような構造を用いて、車両の車体には、乗員が乗車する車室が画成される。フロアパネルについての、たとえばバルクヘッドから立上部までの区間は、車室フロア部として、車室の床部を構成する。
また、フロアパネルの車室フロア部の上には、車体の車幅方向に沿って延在する複数のフロアクロスメンバが設けられる。各フロアクロスメンバは、中央骨格部材としてのトンネル構造またはトンネル骨格部材とサイドシルとを連結する。なお、フロアクロスメンバは、車体の両側部に設けられる左右のサイドシルを連結するように設けることもできる。そして、たとえば特許文献1にあるように、複数のフロアクロスメンバとしての、前側クロスメンバと後側クロスメンバとの上には、前側のシートが取り付けられる。
また、近年の車両では、さらに、フロアパネルの下に、縦通部材が設けられることがある。縦通部材は、サイドシルとトンネル構造との間において、車両の前後方向に沿って延在する。縦通部材の前には、フロントビームが連結される。
ここで、サイドシル、トンネル構造、トンネル骨格部材、バルクヘッド、フロントクロスメンバ、リアクロスメンバ、前側クロスメンバ、後側クロスメンバ、および、縦通部材は、骨格部材である。骨格部材は、たとえばハット断面形状に形成されるとともに、スポット溶接などによりフロアパネルに固着され、車体の車室に剛性を与える。車体に入力される衝撃は、骨格部材を通じて、また複数の骨格部材により分散されて、入力の反対側へ伝達される。これにより、車室などの変形が抑制され得る。
このようなフロア構造などを採用することにより、衝突などの衝撃を吸収できる車室が、車両に設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようなフロア構造を有する車両では、車体の側面に、他の車両などが衝突する可能性がある。
上述した前側クロスメンバ、後側クロスメンバは、車体の側面から入力される衝撃を、トンネル構造やトンネル骨格部材へ逃がすことができる。このような骨格部材の作用により、側突する車両の車室は、車幅方向において大きく変形し難くできる。
【0005】
しかしながら、側突において、他の車両は、その前面などにおいて面状に当たるとは限らない。車体の側面には、電柱、壁角、他の車両の角などが当たる可能性がある。
この場合、車体の側面への入力は、前後幅を持つ面状なものではなく、一点集中的なものになり得る。
入力が一点集中的なものになると、車体は、面状の入力がある場合と比べて大きく変形してしまう可能性がある。
【0006】
特に、サイドシルに立設されているBピラーや後側クロスメンバより前側となる位置で電柱などが衝突すると、Bピラーや後側クロスメンバより前側の部分が、車幅方向の中央方向へ向けて大きく変形してしまう可能性がある。
この場合、後側クロスメンバより前側のフロア部分は、車幅方向の中央側へ向けて大きく押し込まれるように変形して、車幅方向において大きく深く圧縮されるように変形してしまう可能性がある。
また、走行中の車両は、電柱などと衝突した後においても、さらに前へ進行しようとする可能性がある。衝突した後の進行の程度は、衝突前の車両の速度に応じたものになる。
衝突後に車両が前へ進行すると、電柱などはさらに車体へ食い込み易くなる。
その結果、電柱などに側突した車体は、後側クロスメンバより前側のフロア部分だけでなく、後側クロスメンバより後側のフロア部分についても大きく変形する可能性がある。サイドシルや縦通部材などは、後側クロスメンバより後側において、大きく曲がる可能性がある。
【0007】
そして、車両の車体においてこれらの大きな変形が生じると、前側クロスメンバや後側クロスメンバが折れ曲がったり、そのフロアクロスメンバの折曲部分や後側クロスメンバより後側の立上部の近くの部分においてフロアパネルが破断したり、する可能性も生じ得る。
また、前側クロスメンバや後側クロスメンバが折れ曲がると、その上に取り付けられるシートの位置は、変化する。たとえばシートの位置が下がると、シートの乗員に対して展開するサイドエアバッグなどの高さ位置は、シートから展開しているとしても、乗員の肩より低くなる。サイドエアバッグなどのエアバックは、本来の乗員の保護性能を十分に発揮することができなくなる可能性がある。
また、後側クロスメンバより後側のフロア部分は、後列のシートに着座する乗員の足下になる。後側クロスメンバより後側のフロア部分が大きく変形してしまうと、後列のシートに着座する乗員に対して影響を与える可能性がある。
【0008】
このように車両では、そのフロア構造において上述したような変形が生じ難くなるようにすることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一形態に係る車両のフロア構造は、車両の車体を構成するフロアパネルについての車幅方向の外縁に沿って延在するサイドシルと、前記車体の車幅方向の中央部分において前記車体の前後方向に沿って延在する中央骨格部材と、前記車体の車幅方向に沿って延在して、前記サイドシルと前記中央骨格部材とを連結するように延在する第一クロスメンバと、前記第一クロスメンバより前記車体の後方において前記車体の車幅方向に沿って延在して、前記サイドシルと前記中央骨格部材とに連結される第二クロスメンバと、前記第一クロスメンバ、前記サイドシル、前記第二クロスメンバ、および前記中央骨格部材に囲われる領域に設けられる第一補強部材および第二補強部材と、を有し、前記第一補強部材は、略三角形の上面および下面とともに、略三角形の各辺に対応する側面とを有する第一の三角体構造部を有し、前記第一の三角体構造部の一側面が、前記第一クロスメンバに沿って延在するように前記第一クロスメンバの近くに設けられ、前記第一の三角体構造部の他の一側面が、前記サイドシルと前記第一クロスメンバとの前外連結部分から前記中央骨格部材と前記第二クロスメンバとの後中連結部分へ向かう筋交い方向に沿って延在するように設けられ、前記第二補強部材は、少なくとも前記後中連結部分から前記前外連結部分の方向へ向けて延在する立体構造部を有し、前記第一補強部材と前記第二補強部材とは、前記筋交い方向において離間している。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、フロアパネルについての、車両において乗員が乗車する車室の床部を構成する車室フロア部の車幅方向の中央部分には、車室フロア部より上へ突出するようにトンネル構造が設けられる。トンネル構造の傍には、トンネル構造に沿って車体の前後方向へ延在するトンネル骨格部材が設けられる。また、フロアパネルについての車幅方向の外縁には、その外縁に沿って延在するサイドシルが設けられる。そして、トンネル骨格部材とサイドシルとの間には、前側クロスメンバおよび後側クロスメンバが、車体の車幅方向に沿って延在して設けられ、これによりサイドシルと中央骨格部材とが連結される。また、車室フロア部の後側には、車体の車幅方向に沿って延在するリアクロスメンバが設けられる。リアクロスメンバの端部は、サイドシルと連結される。
【0011】
本発明では、このようなフロアの骨格構造に対して、第一補強部材および第二補強部材を追加する。第一補強部材と第二補強部材とは、第一クロスメンバ、サイドシル、第二クロスメンバ、および中央骨格部材に囲われる領域に設けられる。
このような補強をフロアの骨格構造に追加することにより、車体の側面に電柱などが衝突し、車体の側面に対して一点集中的な入力があったとしても、第一クロスメンバより後側において変形が生じ難くなる。第一クロスメンバより後側では、第一補強部材と第二補強部材とが、サイドシルと第一クロスメンバとの前外連結部分から中央骨格部材と第二クロスメンバとの後中連結部分へ向かう筋交い方向において、離間して設けられる。第一クロスメンバより後側において変形する場合、第一補強部材と第二補強部材とが当たり、それ以上の変形を抑制することができる。
しかも、第一クロスメンバより後側のフロア構造が維持されることにより、第一クロスメンバより前側のフロア部分は、車幅方向の中央側へ向けて強く押し込まれて、車幅方向において全体的に圧縮されるように変形してしまう、ことが抑制され得る。第一クロスメンバより前側において電柱などが衝突したとしても、第一クロスメンバより前側の部分が大きく変形し難くなり得る。
特に、本発明では、第一補強部材が、略三角形の上面および下面とともに、略三角形の各辺に対応する側面とを有する第一の三角体構造部を有する。そして、第一の三角体構造部の一側面は、第一クロスメンバに沿って延在するように第一クロスメンバの近くに設けられる。これにより、第一クロスメンバなどが折れ曲がり得る程度の大きい側突の入力があったとしても、第一クロスメンバなどが折れ曲がり難くなる。第一クロスメンバの折れ曲がりが抑制されることにより、第一クロスメンバより前側のフロア部分は、車幅方向において全体的に圧縮されるように変形することが起き難くなる。フロアパネルは、破断し易くなる。
【0012】
また、本発明では、フロアの骨格構造を補強するために、前外連結部分から後中連結部分へ向かう筋交い方向に沿って延在する長尺の筋交い部材を追加するのではなく、互いに離間して設けられる第一補強部材と第二補強部材とを用いる。このため、
たとえば、車体の側面に他の車両などが面状に側突して、サイドシルが車幅方向の中央側へ全体的に押し込まれるように変形しようとする場合に、その変形を阻害しないようにできる。
【0013】
このように本発明では、補強部材が追加されていない車両のフロア構造において生じ得る各種の変形が抑制され得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る車両としての自動車の説明図である。
【
図2】
図2は、
図1の自動車において採用可能なフロア構造と、面状の側突による変形との一例の模式的な説明図である。
【
図3】
図3は、
図2のフロア構造の自動車の側面に対して、電柱による一点集中的な入力が作用する場合の変形の一例の模式的な説明図である。
【
図4】
図4は、フロアクロスメンバとしての前側クロスメンバが下側へ折れ曲がるように変形する場合の課題の模式的な説明図である。
【
図5】
図5は、本発明の第一実施形態で採用する自動車のフロア構造を、車体の左側から見た模式的な説明図である。
【
図6】
図6は、
図5の自動車のフロア構造を、車体の上側から見た模式的な説明図である。
【
図7】
図7は、車体の左側での
図5の自動車のフロア構造で用いることができる、第一補強部材および第二補強部材の斜視図である。
【
図8】
図8は、
図7の第一補強部材および第二補強部材についてのフロアパネルとの固着状態と、側突入力とについての説明図である。
【
図9】
図9は、
図5および
図6のフロア構造の自動車の側面に対して、一点集中的な側突入力が作用する場合の変形の一例の説明図である。
【
図10】
図10は、
図5および
図6のフロア構造の自動車の側面に対して、平面的な側突入力が作用する場合の変形の一例の説明図である。
【
図11】
図11は、第二実施形態での第一補強部材および第二補強部材についてのフロアパネルの固着状態と、側突入力とについての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0016】
[第一実施形態]
図1は、本発明の実施形態に係る自動車1としての自動車1の説明図である。
図1の自動車1は、車両の一例である。自動車1は、ドライバの操作に基づいて走行することができるだけでなく、ドライバの操作を支援する運転支援による走行や、自動運転による走行が可能なものであってよい。
そして、自動車1は、たとえば
図1に示すように、その側面に他の自動車などの物体70が衝突することがある。
自動車1は、このような側突があった場合でも、乗員などをできるかぎり保護することが求められる。
【0017】
図2は、
図1の自動車1において採用可能なフロア構造と、面状の側突による変形との一例の説明図である。
図2の自動車1の車体2は、その左側面に、他の自動車71などが面状に側突して変形している状態にある。
図2の自動車1の車体2には、乗員が乗車する車室3が設けられる。車室3には、ドライバなどの乗員が着座するための複数の前側のシート21と、後側のシート22と、が設けられる。複数の前側のシート21は、自動車1の車幅方向に並べて設けられてよい。ドライバなどの乗員は、各前側のシート21に一人ずつ着座できる。後側のシート22は、車幅方向に長尺のベンチシートでよい。長尺の後側のシート22には、複数の乗員が並んで着座できる。
【0018】
そして、車体2は、車室3の床面などを構成するためのフロアパネル31を有する。フロアパネル31についての自動車1の車体2の車幅方向の中央部分には、フロアパネル31より上へ突出するトンネル構造12が設けられる。トンネル構造12は、車室3において、自動車1の車体2の前後方向に延在する。
また、自動車1は、左右対称に設けられる骨格部材として、たとえば、サイドシル11、トンネル骨格部材13、バルクヘッド14、リアクロスメンバ15、前側クロスメンバ16、後側クロスメンバ17、縦通部材18、Bピラー19、を有する。
【0019】
サイドシル11は、フロアパネル31についての車体2の車幅方向の外縁に設けられる。サイドシル11は、車体2の前後方向に沿って延在する。これにより、サイドシル11は、自動車1の車体2を構成するフロアパネル31についての車幅方向の外縁に沿って延在する。
【0020】
トンネル骨格部材13は、トンネル構造12の車幅方向の傍において、トンネル構造12に沿うように車体2の前後方向へ延在する。これにより、トンネル骨格部材13およびトンネル構造12は、車体2の車幅方向の中央部分において車体2の前後方向に沿って延在する中央骨格部材として機能できる。
【0021】
バルクヘッド14は、車室3の前面の一部を構成するように、車体2の前部分に設けられる。なお、バルクヘッド14の前側には、さらに、車幅方向の略全幅にわたるように延在する不図示のフロントクロスメンバが設けられてよい。サイドシル11の前端、トンネル構造12の前端、および、トンネル骨格部材13の前端は、車室3の前側において車幅方向に延在する前側連結部材としてのバルクヘッド14およびフロントクロスメンバに共通に連結される。
【0022】
リアクロスメンバ15は、車体2の後部分において、車幅方向の略全幅にわたるように延在するように設けられる。サイドシル11の後端と、トンネル構造12の後端、および、トンネル骨格部材13の後端は、車室3の後側において車幅方向に延在する後側連結部材としてのフロアパネル31の後述する立上部32およびリアクロスメンバ15に連結される。
そして、フロアパネル31についての、バルクヘッド14、左右一対のサイドシル11、およびリアクロスメンバ15により囲われている内側部分は、車室3の床面を構成し、車室フロア部34として機能する。
【0023】
前側クロスメンバ16は、フロアパネル31の車室フロア部34の上において、車体2の車幅方向に沿って延在する。前側クロスメンバ16は、中央骨格部材としてのトンネル構造12またはトンネル骨格部材13とサイドシル11とを連結する。
後側クロスメンバ17は、前側クロスメンバ16より後側において、車体2の車幅方向に沿って延在する。後側クロスメンバ17は、中央骨格部材としてのトンネル構造12またはトンネル骨格部材13とサイドシル11とを連結する。また、Bピラー19の下端は、サイドシル11とともに、後側クロスメンバ17に連結されてよい。
このように前側クロスメンバ16および後側クロスメンバ17といったフロアクロスメンバは、中央骨格部材としてのトンネル構造12またはトンネル骨格部材13とサイドシル11とを連結する。
なお、フロアクロスメンバは、車体2の両側部に設けられる左右のサイドシル11を連結するように設けられてもよい。
そして、複数のフロアクロスメンバとしての、前側クロスメンバ16と後側クロスメンバ17との上には、前側のシート21が取り付けられる。
【0024】
縦通部材18は、フロアパネル31の下において、車体2の前後方向に沿って延在する。縦通部材18は、フロアパネル31の下面に固着される。縦通部材18の前端は、バルクヘッド14や、不図示のフロントビームが連結されてよい。縦通部材18の後端は、リアクロスメンバ15とサイドシル11との連結部分に接合されてよい。このように自動車1の車体2の前後方向に沿って延在する縦通部材18は、車幅方向においては、サイドシル11とトンネル構造12との間に位置することになる。
【0025】
これらの骨格部材は、たとえば、ハット断面形状に形成されて、フロアパネル31に対してスポット溶接などにより固着されてよい。これにより、骨格部材は、車体2のフロアパネル31および車室3に剛性を与えることができる。車体2に入力される衝撃は、骨格部材を通じて、また複数の骨格部材により分散されて、車体2の反対側へ伝達され得る。これにより、車室3などの変形が抑制され得る。
このようなフロア構造を採用することなどにより、自動車1には、衝突などの衝撃を吸収することができる車室3が構成される。
【0026】
ところで、上述するようにこのようなフロア構造を有する自動車1では、
図2に示すように、車体2の側面に、他の自動車71などが真横方向から衝突する可能性がある。
上述した前側クロスメンバ16、後側クロスメンバ17は、車体2の側面から入力される衝撃を、トンネル構造12やトンネル骨格部材13へ逃がすことができる。このような骨格部材の作用により、側突する自動車1の車室3は、車幅方向において大きく変形し難くできる。
【0027】
しかしながら、側突において、他の自動車71は、その前面などにおいて面状に当たるとは限らない。他の自動車71は、その角で側突する可能性がある。また、車体2の側面には、電柱72、壁角、なとが当たる可能性がある。
図3は、
図2のフロア構造の自動車1の側面に対して、電柱72による一点集中的な入力が作用する場合の変形の一例の説明図である。
図3において電柱72は、自動車1の車体2の側面についての、後側クロスメンバ17およびBピラー19より前側となる部位に、斜め前方向から衝突している。
この場合、車体2の側面への入力は、
図2のように前後幅を持つ面状なものではなく、一点集中的なものになる。
一点集中的な入力があると、車体2は、面状の入力がある場合と比べて大きく変形してしまう可能性がある。
【0028】
特に、
図3に示すように後側クロスメンバ17およびBピラー19より前側となる位置に電柱72などが衝突すると、後側クロスメンバ17およびBピラー19より前側の部分は、車幅方向の中央方向へ向けて大きく変形してしまう可能性がある。
この場合、後側クロスメンバ17およびBピラー19より前側のフロア部分は、車幅方向の中央側へ向けて大きく押し込まるように変形し、車幅方向において大きく深く圧縮されるように変形してしまう可能性がある。
また、走行中の自動車1は、電柱72などと衝突した後においても、走行の慣性などによりさらに前へ進行する可能性がある。衝突した後の進行の程度は、衝突前の自動車1の速度などに応じて増減する。
衝突後に自動車1が前へ進行すると、電柱72などは、車体2の側面に食い込んだ位置から後側へ向けてさらに食い込み得る。電柱72などは、車体2に対して、最初に側突した位置から斜め後方へ向かうように車体2へ食い込み得る。
このような側突となる場合、電柱72などと側突した車体2は、後側クロスメンバ17およびBピラー19より前側のフロア部分だけでなく、後側クロスメンバ17およびBピラー19より後側のフロア部分についても大きく変形し得る。後側クロスメンバ17およびBピラー19より前側からそれらの後側までにかけて前後方向に沿って延在するサイドシル11や縦通部材18などは、後側クロスメンバ17より後側などにおいて、大きく曲がる可能性がある。
【0029】
また、自動車1の車体2においてこのような大きな変形が生じると、前側クロスメンバ16や後側クロスメンバ17は、折れ曲がる可能性が高まる。
図3の位置P1に示すように、フロアパネル31は、前側クロスメンバ16や後側クロスメンバ17が折曲している部分において破断する可能性がある。
図3の位置P2に示すように、フロアパネル31は、後側クロスメンバ17より後側に位置するフロアパネル31の立上部32の前近くの部分において破断する可能性がある。また、フロアパネル31の下側において縦通部材18に沿って設けられる高圧配線61などに負担をかけてしまう可能性がある。
また、後側クロスメンバ17より後側のフロア部分は、
図3の範囲P3に示すように、後側のシート22に着座する乗員の足下になる。後側クロスメンバ17より後側のフロア部分が大きく歪むように変形してしまうと、後側のシート22に着座する乗員に対して影響を与えてしまう可能性がある。
また、前側クロスメンバ16や後側クロスメンバ17が折れ曲がると、その上に取り付けられているシートの位置が変化する。たとえばシートの位置が下がると、シートの乗員に対して展開するサイドエアバッグなどの高さ位置は、シートから展開しているとしても、乗員の肩より低くなる。サイドエアバッグなどのエアバックは、本来の乗員の保護性能を十分に発揮することができなくなる可能性がある。
【0030】
図4は、フロアクロスメンバとしての前側クロスメンバ16が下側へ折れ曲がるように変形する場合の課題の説明図である。
図4において前側クロスメンバ16は、下側へ折れ曲がっている。この場合、前側のシート21も下がる。その結果、前側のシート21の乗員に対して展開するサイドエアバッグ60などの高さ位置は、乗員の肩より低くなる。サイドエアバッグ60は、乗員の肩の高さで展開することで得られる本来の乗員の保護性能を、十分に発揮することができなくなる可能性がある。
【0031】
このように自動車1では、そのフロア構造について、上述したような一点集中的な側突の入力に対して、車体2の変形が生じ難くなるようにすることが望まれる。
【0032】
図5は、本発明の第一実施形態で採用する自動車1のフロア構造を、車体2の左側から見た説明図である。
フロアパネル31は、車室3の後側となる部分において上へ屈曲されて、立上部32を有する。また、立上部32の上端には、その上端から後方へ向けて延在するリアフロア部33が設けられる。立上部32の上には、後側のシート22が取り付けられる。フロアパネル31についての、たとえばバルクヘッド14から立上部32までの区間は、車室フロア部34として、車室3の床部を構成する。
また、サイドシル11は、車室フロア部34より上へ突出するように設けられている。
図6は、
図5の自動車1のフロア構造を、車体2の上側から見た説明図である。
図5および
図6において、自動車1の基本的なフロア構造は、
図2および
図3で説明したものと同じである。
【0033】
そして、
図5および
図6のフロア構造では、第一補強部材40と第二補強部材50とによる補強構造が、左右両側に追加される。
第一補強部材40と第二補強部材50とによる補強構造は、第一クロスメンバとしての後側クロスメンバ17、サイドシル11、第二クロスメンバとしてのリアクロスメンバ15、および、中央骨格部材としてのトンネル骨格部材13に囲われる領域に設けられる。
【0034】
図7は、車体2の左側での
図5の自動車のフロア構造で用いることができる、第一補強部材40および第二補強部材50の斜視図である。
図8は、
図7の第一補強部材40および第二補強部材50についてのフロアパネル31との固着状態と、側突入力とについての説明図である。
なお、車体2の右側での補強部材40は、
図7とは上下逆の配置になる。
【0035】
第一補強部材40は、第一の三角体構造部44と、第一の三角体構造部44から突出する第一の突出部49と、を有する。
第一の三角体構造部44は、略三角形の上面45および下面46とともに、略三角形の各辺に対応する複数の側面47,48とを有する。
そして、第一の三角体構造部44の一側面47は、後側クロスメンバ17に沿って延在するように、後側クロスメンバ17の近くに設けられる。
第一の三角体構造部44の他の一側面48は、サイドシル11と後側クロスメンバ17との前外連結部分26から、トンネル骨格部材13とリアクロスメンバ15との後中連結部分27へ向かう筋交い方向28に沿って延在するように設けられる。
【0036】
第一の突出部49は、略四角柱形状の外形に形成される。
【0037】
第二補強部材50は、第二の三角体構造部54と、第二の三角体構造部54から突出する第二の突出部59と、を有する。
第二の三角体構造部54は、略三角形の上面55および下面56とともに、略三角形の各辺に対応する複数の側面57,58とを有する。
第二の三角体構造部54の一側面57は、リアクロスメンバ15に沿って延在するように、リアクロスメンバ15の近くに設けられる。
第二の三角体構造部54の他の一側面58は、前外連結部分26から後中連結部分27へ向かう筋交い方向28に沿って延在するように設けられる。
【0038】
第二の突出部59は、略四角柱形状の外形に形成される。
【0039】
第一補強部材40と第二補強部材50とは、上述した位置において、それらの下面がフロアパネル31に対してスポット溶接などにより固着される。
図8には、第一補強部材40の複数のスポット溶接点43と、第二補強部材50の複数のスポット溶接点43と、が示されている。第一補強部材40のスポット溶接点43の一部は、フロアパネル31をを介在して、縦通部材18と固着されている。
また、第二補強部材50は、後中連結部分から前外連結部分の方向へ向けて延在している。
【0040】
そして、第一補強部材40の第一の突出部49は、第一の三角体構造部44から筋交い方向に沿って突出する。
また、第二補強部材50の第二の突出部59は、第二の三角体構造部54から筋交い方向に沿って突出する。
このように筋交い方向に沿って突出している第一の突出部49と第二の突出部59とは、互いに離間するように対向する。
また、第一の突出部49と第二の突出部59とは、自動車1の前後方向において間隔Dで離間し、自動車1の前後方向において重ならないように設けられる。
【0041】
図9は、
図5および
図6のフロア構造の自動車の側面に対して、一点集中的な側突入力が作用する場合の変形の一例の説明図である。
図9において、電柱72は、
図3と同様に、後側クロスメンバ17およびBピラー19より前側において、自動車1の車体2の側面に衝突している。破線は、オリジナルの形状である。
しかしながら、本実施形態のフロア構造では、
図3のフロア構造とは異なり、後側クロスメンバ17およびBピラー19の後側に、第一補強部材40と第二補強部材50とが設けられている。
【0042】
第一補強部材40と第二補強部材50とは、サイドシル11、後側クロスメンバ17、トンネル骨格部材13、および、リアクロスメンバ15により囲われる略矩形の空間において、その矩形の対角の間に筋交い状に設けられている。後側クロスメンバ17の後側における側突に対する剛性は、格段に高まる。
そして、車体2が変形すると、第一補強部材40と第二補強部材50とは、
図9に示すように第一の突出部49が第二の突出部59に当たる。側突の入力の一部は、図中に破線矢印で示すように、互いに接している第一補強部材40および第二補強部材50により、車両2の反対側へ伝達される。サイドシル11やBピラー19を通じて車体2に入力される側突の衝撃は、前側クロスメンバ16および後側クロスメンバ17だけでなく、互いに接している第一補強部材40および第二補強部材50にも分散され得る。
このように第一の突出部49と第二の突出部59とが接触している第一補強部材40と第二補強部材50とは、後側クロスメンバ17、サイドシル11、リアクロスメンバ15、および、トンネル骨格部材13に囲われる領域の変形を抑制する。
また、第一補強部材40は、その第一補強部材40が後側クロスメンバ17に沿って延在するように、後側クロスメンバ17の近くに設けられる。これにより、後側クロスメンバ17は、折れ曲がり難くなる。
【0043】
したがって、後側クロスメンバ17およびBピラー19より前側となる位置で電柱72が衝突しても、後側クロスメンバ17およびBピラー19より前側の部分は、車幅方向の中央方向へ向けて大きく変形し難くなる。
また、走行中の自動車1は、電柱72と衝突した後においても、さらに前へ進行しようとする可能性がある。このような衝突後の進行があったとしても、電柱72はさらに車体2へ食い込み難くなる。
また、後側クロスメンバ17より後側のフロア部分は、長尺の補強部材40により直接的に補強されているので、大きく変形し難くなる。サイドシル11や縦通部材18などは、後側クロスメンバ17より後側において、大きく曲がり難くなる。
【0044】
図10は、
図5および
図6のフロア構造の自動車の側面に対して、平面的な側突入力が作用する場合の変形の一例の説明図である。破線は、変形前のオリジナル形状を示している。
この場合、サイドシル11は、車両2の前後方向に幅を持って全体的に、車幅方向の中央側へ押し込まれる。
このような変形があった場合、第一補強部材40も、サイドシル11とともに、車幅方向の中央側へ押し込まれ得る。
この際、第二補強部材50の第二の突出部59の前端は、第一補強部材40の第一の突出部49の後端とは、自動車1の前後方向において重なっていない。
したがって、第一補強部材40が、サイドシル11とともに、車幅方向の中央側へ押し込まれたとしても、第一補強部材40の第一の突出部49が、第二補強部材50の第二の突出部59に当たることは起き難くなる。
サイドシル11とともに車幅方向の中央側へ押し込まれる第一補強部材40は、第二補強部材50によりその変形の動きが阻害されることが起き難い。
【0045】
以上のように、本実施形態では、フロアパネル31についての、自動車1において乗員が乗車する車室3の床部を構成する車室フロア部34の車幅方向の中央部分には、車室フロア部34より上へ突出するようにトンネル構造12が設けられる。トンネル構造12の傍には、トンネル構造12に沿って車体2の前後方向へ延在するトンネル骨格部材13が設けられる。また、フロアパネル31についての車幅方向の外縁には、その外縁に沿って延在するサイドシル11が設けられる。そして、トンネル骨格部材13とサイドシル11との間には、前側クロスメンバ16および後側クロスメンバ17が、車体2の車幅方向に沿って延在して設けられ、これによりサイドシル11と中央骨格部材としてのトンネル骨格部材13とが連結される。また、車室フロア部34の後側には、車体2の車幅方向に沿って延在するリアクロスメンバ15が設けられる。リアクロスメンバ15の両端は、左右のサイドシル11と連結される。
本実施形態では、このようなフロアの骨格構造に対して、第一補強部材40および第二補強部材50を追加する。第一補強部材40と第二補強部材50とは、後側クロスメンバ17、サイドシル11、リアクロスメンバ15、およびトンネル骨格部材13に囲われる領域に設けられる。
【0046】
このような補強をフロアの骨格構造に追加することにより、車体2の側面に電柱72などが衝突し、車体2の側面に対して一点集中的な入力があったとしても、後側クロスメンバ17より後側において変形が生じ難くなる。後側クロスメンバ17より後側では、第一補強部材40と第二補強部材50とが、サイドシル11と後側クロスメンバ17との前外連結部分26からトンネル骨格部材13とリアクロスメンバ15との後中連結部分27へ向かう筋交い方向28において、離間して設けられる。後側クロスメンバ17より後側において変形する場合、第一補強部材40と第二補強部材50とが当たり、それ以上の変形を抑制することができる。
しかも、後側クロスメンバ17より後側のフロア構造が維持されることにより、後側クロスメンバ17より前側のフロア部分も変形が抑制され得る。後側クロスメンバ17より前側のフロア部分は、車幅方向の中央側へ向けて強く押し込まれて、車幅方向において全体的に圧縮されるように変形し難くなる。後側クロスメンバ17より前側において電柱72などが衝突したとしても、後側クロスメンバ17より前側の部分が大きく変形し難くなり得る。
特に、本実施形態では、第一補強部材40が、略三角形の上面および下面とともに、略三角形の各辺に対応する側面とを有する第一の三角体構造部44を有する。そして、第一の三角体構造部44の一側面47は、後側クロスメンバ17に沿って延在するように後側クロスメンバ17の近くに設けられる。これにより、後側クロスメンバ17などがそれ単体では折れ曲がり得る程度の大きい側突の入力があったとしても、後側クロスメンバ17などが折れ曲がり難くなる。たとえば後側クロスメンバ17が変形し始めると、その後側の近くに設けられる第一補強部材40に密着して、これらが一体的な骨格部材として機能し得る。これにより、後側クロスメンバ17の変形は抑制され得る。後側クロスメンバ17の折れ曲がりが抑制されることにより、後側クロスメンバ17より前側のフロア部分は、車幅方向において全体的に圧縮されるように変形することが起き難くなる。フロアパネル31は、破断し易くなる。
【0047】
また、本実施形態では、フロアの骨格構造を補強するために、前外連結部分26から後中連結部分27へ向かう筋交い方向28に沿って延在する長尺の筋交い部材を追加するのではなく、その筋交い方向28において離間して並べられる第一補強部材40と第二補強部材50とを用いている。このため、たとえば、車体2の側面に他の自動車71などが面状に側突して、サイドシル11が車幅方向の中央側へ全体的に押し込まれるように変形しようとする場合に、これらの補強部材40,50がその変形を阻害しないようにできる。
【0048】
このように本実施形態では、補強部材40,50が追加されていない自動車1のフロア構造において生じ得る各種の変形を抑制できる。
また、本実施形態では、第一クロスメンバとしての後側クロスメンバ17や前側クロスメンバ16の折れ曲がりを抑制できる。前側クロスメンバ16や後側クロスメンバ17の上に取り付けられている前側のシート21の位置も上下に変化し難くなる。その結果、本実施形態では、前側のシート21の位置が上下した場合において危惧されるサイドエアバッグ60などの高さ位置のずれが生じ難くなる。サイドエアバッグ60は、その本来の高さ位置で展開して、乗員の肩などを良好に保護し得る。乗員の保護性能は、十分に発揮され得る。また、本実施形態では、フロアパネル31の下側において縦通部材18に沿って設けられる高圧配線61などに負担をかけ難くできる。
また、本実施形態では、後側クロスメンバ17より後側のフロア部分について、大きな変形が生じ難い。したがって、後列のシート22に着座する乗員に対して影響を与え難くなる。
【0049】
本実施形態では、サイドシル11とトンネル骨格部材13との間において車体2の前後方向に沿って延在するようにフロアパネル31の下面に固着される縦通部材18、を有する。そして、第一補強部材40および第二補強部材50の中の少なくとも第一補強部材40が、フロアパネル31を介在して、縦通部材18と固着される。
これにより、本実施形態では、フロアパネル31には、第一クロスメンバとしての後側クロスメンバ17の近くに、縦通部材18により立体的に補強された第一補強部材40を設けることができる。また、フロアパネル31の下側に設けられている第一補強部材40は、フロアパネル31の上側に設けられる第一補強部材40と第二補強部材50との位置関係が変化しないように支えることができる。第一クロスメンバとしての後側クロスメンバ17は、第一補強部材40および縦通部材18により支持されて、より一層折れ曲がり難くなる。
【0050】
本実施形態では、第二補強部材50は、第一補強部材40と同様に、略三角形の上面および下面とともに、略三角形の各辺に対応する側面とを有する第二の三角体構造部54を有する。そして、第二の三角体構造部54の一側面57は、リアクロスメンバ15に沿って延在するようにリアクロスメンバ15の近くに設けられる。第二の三角体構造部54の他の一側面58は、筋交い方向28に沿って延在するように設けられる。リアクロスメンバ15は、後側クロスメンバ17と同様に折れ曲がるように変形し難くなる。
【0051】
本実施形態では、第一補強部材40の第一の三角体構造部44から筋交い方向28に沿って突出する第一の突出部49と、第二補強部材50の第二の三角体構造部54から筋交い方向28に沿って突出する第二の突出部59とは、自動車1の前後方向において重ならないように距離Dで離間している。これにより、車体2の側面に他の自動車71などが面状に側突して、サイドシル11が車幅方向の中央側へ全体的に押し込まれるように変形しようとする場合に、サイドシル11とともに押し込まれる第一の突出部49が第二の突出部59に当たり難くできる。第一の突出部49が第二の突出部59に当たると、サイドシル11は、車幅方向の中央側へ向けてそれ以上に変形し難くなる。本実施形態では、そのような変形の阻害状況を生じ難くできる。
【0052】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る自動車1のフロア構造を説明する。以下の説明では、主に、上述した実施形態との相違点について説明する。
【0053】
図11は、第二実施形態での第一補強部材40および第二補強部材50についてのフロアパネル31の固着状態と、側突入力とについての説明図である。
図11の第二補強部材50は、略四角柱形状の外形を有する柱状構造部65、を有する。
【0054】
柱状構造部65は、後中連結部分27から、筋交い方向28に沿って設けられる。柱状構造部65の先端に、第二の突出部59が形成される。
そして、第一補強部材40において、第一の三角体構造部44から筋交い方向28に沿って突出する第一の突出部49は、第二補強部材50の第二の突出部59と離間して対向する。
第一の突出部49と第二の突出部59とは、自動車1の前後方向において間隔Dで離間して、自動車1の前後方向において重ならないように設けられる。
【0055】
このような第一補強部材40および第二補強部材50の組み合わせであっても、上述した実施形態と同様の効果を奏することができる。
ただし、上述した実施形態の第二補強部材50は、第一補強部材40と同様に、略三角形の上面および下面とともに、略三角形の各辺に対応する側面とを有する第二の三角体構造部54を有する。そして、第二の三角体構造部54の一側面57は、リアクロスメンバ15に沿って延在するようにリアクロスメンバ15の近くに設けられる。
本実施形態の第二補強部材50は、このようなリアクロスメンバ15についての直接的な補強の機能は持たない。本実施形態では、リアクロスメンバ15についての補強の程度は、上述した実施形態のものより低くなると想定される。
【0056】
以上の実施形態は、本発明に好適な実施形態の例であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更が可能である。
【0057】
上述した実施形態では、補強部材40,50は、後側クロスメンバ17とリアクロスメンバ15との間にのみ設けられている。
この他にもたとえば、補強部材40,50は、前側クロスメンバ16と後側クロスメンバ17との間に設けられても、それらの双方の間に設けられてもよい。
ただし、前側クロスメンバ16と後側クロスメンバ17との間のみに補強部材40,50を追加しても、後側クロスメンバ17より後側における変形を直接的に抑制することができない。また、前側のシート21は、自動車1を運転操作するドライバなどが着座する。前側クロスメンバ16と後側クロスメンバ17との間のフロアパネル31の上に補強部材40,50が固着されて床面が凹凸になると、ドライバについての運転操作の快適性などが低下すると予想される。
また、後側クロスメンバ17とリアクロスメンバ15との間、および、前側クロスメンバ16と後側クロスメンバ17との間の双方に、補強部材40,50を追加する場合、補強部材40,50の追加による車重増加などが顕著化し易くなると考えられる。
上述するように後側クロスメンバ17とリアクロスメンバ15との間のみに補強部材40,50を追加するだけでも、後側クロスメンバ17より後側だけでなく、後側クロスメンバ17より前側である前側クロスメンバ16と後側クロスメンバ17との間についてもフロア変形を抑制する効果が期待できる。
【符号の説明】
【0058】
1…自動車(車両)、2…車体、3…車室、11…サイドシル、12…トンネル構造(中央骨格部材)、13…トンネル骨格部材(中央骨格部材)、14…バルクヘッド、15…リアクロスメンバ(第二クロスメンバ)、16…前側クロスメンバ、17…後側クロスメンバ(第一クロスメンバ)、18…縦通部材、19…Bピラー、21…前側のシート、22…後側のシート、31…フロアパネル、32…立上部、33…リアフロア部、34…車室フロア部、40…第一補強部材、43…スポット溶接点、44…第一の三角体構造部、49…第一の突出部、50…第二補強部材、54…第二の三角体構造部、59…第二の突出部、60…サイドエアバッグ、65…柱状構造部、70…物体、71…他の自動車、72…電柱