(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068534
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】磁石埋込型回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 1/276 20220101AFI20240513BHJP
【FI】
H02K1/276
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179062
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 久芳
(72)【発明者】
【氏名】沢井 美香
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622AA04
5H622CA02
5H622CA07
5H622CA10
5H622CA14
5H622PP10
(57)【要約】
【課題】着磁性能・減磁性能を更に向上させることが可能な磁石埋込型回転電機を提供する。
【解決手段】可変磁束モータ(磁石埋込型回転電機)は、ロータ(回転子)の周方向に沿って配置された複数の永久磁石と、永久磁石の、ロータの周方向両端に形成されて、ロータを取り囲むステータ(固定子)で発生した磁束を、永久磁石をロータの半径方向に沿って通過するように誘導するフラックスバリア(第1の磁束偏向部)と、を備える。フラックスバリアは、ロータの回転中心側の辺縁に沿って流れる磁束を、フラックスバリアに接する永久磁石に誘導するとともに、フラックスバリアの、ロータの円周側の辺縁に沿って流れる磁束を、ロータの周方向に隣接する別のフラックスバリアに誘導する、永久磁石に対してロータの周方向外側に向けて突出する第1の突出部(磁束誘導部)を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子の内部に、当該回転子の周方向に沿って配置された複数の永久磁石と、
前記永久磁石の、前記回転子の周方向両端に形成されて、前記回転子を取り囲む固定子で発生した磁束を、前記永久磁石を前記回転子の半径方向に沿って通過するように誘導する第1の磁束偏向部と、を備える磁石埋込型回転電機であって、
前記第1の磁束偏向部の、前記回転子の回転中心側の辺縁に沿って流れる磁束を、前記第1の磁束偏向部に接する前記永久磁石に誘導するとともに、前記第1の磁束偏向部の、前記回転子の円周側の辺縁に沿って流れる磁束を、前記第1の磁束偏向部と、前記回転子の周方向に隣接する別の第1の磁束偏向部に誘導する、前記永久磁石に対して前記回転子の周方向外側に向けて突出する磁束誘導部を備える、
磁石埋込型回転電機。
【請求項2】
前記磁束誘導部の突出方向は、前記第1の磁束偏向部の、前記回転子の周方向外側の辺縁を形成する壁面と、100°乃至120°の角度をなす、
請求項1に記載の磁石埋込型回転電機。
【請求項3】
前記第1の磁束偏向部の、前記回転子の半径方向内側に、前記磁束誘導部と重なるように形成される第2の磁束偏向部を更に備える、
請求項1または請求項2に記載の磁石埋込型回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁石埋込型回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
回転子に永久磁石を埋め込んで、永久磁石によるマグネットトルクと、固定子で発生した回転磁界によるリラクタンストルクと、によって回転する磁石埋込型回転電機が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された可変磁束モータでは、永久磁石の嵌装位置と永久磁石の磁気特性とを改善することによって、永久磁石の磁束特性を向上させている。しかし、昨今のモータに対する高出力化の要請から、永久磁石の磁束特性を更に向上させることが望まれている。
【0005】
本発明の目的は、着磁性能・減磁性能を更に向上させることが可能な磁石埋込型回転電機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明の磁石埋込型回転電機は、回転子の内部に、当該回転子の周方向に沿って配置された複数の永久磁石と、前記永久磁石の、前記回転子の周方向両端に形成されて、前記回転子を取り囲む固定子で発生した磁束を、前記永久磁石を前記回転子の半径方向に沿って通過するように誘導する第1の磁束偏向部と、を備える磁石埋込型回転電機であって、前記第1の磁束偏向部の、前記回転子の回転中心側の辺縁に沿って流れる磁束を、前記第1の磁束偏向部に接する前記永久磁石に誘導するとともに、前記第1の磁束偏向部の、前記回転子の円周側の辺縁に沿って流れる磁束を、前記第1の磁束偏向部と、前記回転子の円周方向に隣接する別の第1の磁束偏向部に誘導する、前記永久磁石に対して前記回転子の円周方向外側に向けて突出する磁束誘導部を備えることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、回転子の中を流れる磁束を永久磁石に集中させることができる。したがって、着磁性能・減磁性能が更に向上した磁石埋込型回転電機を提供することができる。
【0008】
また、本発明に係る磁石埋込型回転電機において、前記磁束誘導部の突出方向は、前記第1の磁束偏向部の、前記回転子の周方向外側の辺縁を形成する壁面と、100°乃至120°の角度をなす。
【0009】
この構成によれば、回転子の中を流れる磁束を、確実に永久磁石に集中させることができる。
【0010】
また、本発明に係る磁石埋込型回転電機は、前記第1の磁束偏向部の、前記回転子の半径方向内側に、前記磁束誘導部と重なるように形成される第2の磁束偏向部を更に備える。
【0011】
この構成によれば、固定子で発生した磁束を、より一層確実に永久磁石に集中させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、着磁性能・減磁性能を更に向上させることが可能な磁石埋込型回転電機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態に係る可変磁束モータの断面構造の一例を示す断面図である。
【
図2】
図2は、可変磁束モータおける磁束の流れの一例を説明する図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る可変磁束モータが備える永久磁石のレイアウトと、フラックスバリアの形状およびレイアウトを説明する図である。
【
図4】
図4は、可変磁束モータの適用例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本実施形態は、本発明の磁石埋込型回転電機を、可変磁束モータに適用した例である。
【0015】
(可変磁束モータの構造)
図1を用いて、本発明の実施形態の可変磁束モータ10の概略構成を説明する。
図1は、実施形態に係る可変磁束モータの断面構造の一例を示す断面図である。
【0016】
可変磁束モータ10は、回転子が備える永久磁石の磁束を変化させることによって、自身の回転特性を変化させることが可能なモータである。このような可変磁束モータ10の一例として、例えば、磁石埋め込み型同期モータ(IPMモータ:Interior Permanent Magnet)がある。可変磁束モータ10は、ステータ12(固定子)と、ロータ14(回転子)とを備える。可変磁束モータ10は、本開示における磁石埋込型回転電機の一例である。なお、可変磁束モータ10は、スタータと発電機を兼ねるISG(Integrated Starter Generator)であってもよい。
【0017】
ステータ12は、ロータ14を回転させる力を発生させる部分である。ステータ12の内部には、コイル13が設置される。
図1の可変磁束モータ10は、ステータ12に内蔵されたコイル13に、例えば三相交流電流を流すことによって駆動される。したがって、可変磁束モータ10は、三相交流の各相の電流が流れる3種類のコイル13a,コイル13b,コイル13cを備える。なお、ステータ12に流す交流電流の相数は問わない。
【0018】
ロータ14は、ステータ12の内側にエアギャップを介して回転可能に設置される。ロータ14は、回転軸17の周りに回転する。ロータ14は、例えば、銅板で形成されている。ロータ14の内部には、コイル13に流れる三相交流電流によって発生した磁束が流れる。
【0019】
ロータ14の外周近傍には、回転軸17に沿って延びる空洞が形成される。この空洞には、ロータ14の周方向に沿って、複数の永久磁石15が埋設される。複数の永久磁石15には、ロータ14の周方向に沿って、交互に異なる向きの磁極が設定される。具体的には、ロータ14に埋設された、ある永久磁石15に、ロータ14の半径方向外側にN極、ロータ14の半径方向内側にS極の磁極が設定された場合、当該永久磁石15に隣接する別の永久磁石15には、ロータ14の半径方向外側にS極、ロータ14の半径方向内側にN極の磁極が設定される。
【0020】
永久磁石15の、ロータ14の周方向両端には、フラックスバリア16aとフラックスバリア16bと呼ばれる空洞がそれぞれ形成される。フラックスバリア16aとフラックスバリア16bとは、永久磁石15が埋設される空洞と連通している。フラックスバリア16aとフラックスバリア16bとは、ステータ12に設置されたコイル13を流れる電流によって発生してロータ14の内部を流れる磁束を集中させて、永久磁石15をロータ14の半径方向に沿って通過するように誘導する。なお、フラックスバリア16aとフラックスバリア16bには、永久磁石15をより確実に保持するために、樹脂材料が充填されてもよい。フラックスバリア16aとフラックスバリア16bとは、本開示における第1の磁束偏向部の一例である。
【0021】
フラックスバリア16aとフラックスバリア16bとは、空洞になっているため、透磁率が低い。したがって、フラックスバリア16a,16bは磁気抵抗が大きいため、ロータ14の内部を流れて、フラックスバリア16a,16bに到達した磁束は、フラックスバリア16a,16bの内部を通過しにくい。可変磁束モータ10に設置されたフラックスバリア16a,16bは、このような磁束を通しにくいという性質を利用して、ロータ14の内部における磁束の向きをコントロールする。詳しくは後述する(
図2参照)。
【0022】
また、可変磁束モータ10の、ロータ14の半径方向に対して、フラックスバリア16a,16bの内側(ロータ14の回転中心側)には、フラックスバリア16c,16dが形成される。フラックスバリア16c,16dは、本開示における第2の磁束偏向部の一例である。フラックスバリア16c,16dが形成される位置について、詳しくは後述する(
図2参照)。
【0023】
可変磁束モータ10は、ステータ12に流す電流の大きさと向きとを変更することによって、ロータ14の内部に回転磁界を発生させる。そして、ロータ14が備える永久磁石15に、回転磁界によって発生してロータ14の内部を流れる磁束を集中させることによって、永久磁石に着磁・減磁を行い、永久磁石の動作点を変更する。これによって、永久磁石の磁束密度が変化するため、可変磁束モータ10のトルクと回転特性とが変化する。具体的には、磁束密度を増大させることによって、例えば低回転時により高いトルクを発揮させる。また、磁束密度を低減させることによって、例えば高回転時におけるモータの効率を向上させる。
【0024】
(可変磁束モータにおける磁束の流れ)
図2を用いて、可変磁束モータ10における磁束の流れについて説明する。
図2は、可変磁束モータおける磁束の流れの一例を説明する図である。
【0025】
磁束の流れの一例として、コイル13に流れる三相交流電流によって発生した磁束が、
図2に示す永久磁石15a、および永久磁石15aの近傍を通過して、永久磁石15aと隣接する永久磁石15bに至る経路について説明する。
【0026】
永久磁石15aの近傍で発生した磁束は、永久磁石15aに接するフラックスバリア16aの外縁に沿って、ロータ14の内部に進行する。このとき、フラックスバリア16aの外縁に、ロータ14の円周方向(以下、単に周方向と呼ぶ)外側に向けて突出するように形成された第1の突出部18(
図3参照)は、フラックスバリア16aに沿って流れる磁束を、フラックスバリア16aと、ロータ14の周方向に隣接する別のフラックスバリア16bに誘導する。そして、フラックスバリア16bに誘導された磁束は、フラックスバリア16bの、ロータ14の回転中心側の辺縁、即ち、フラックスバリア16bとフラックスバリア16dとの間を流れて、フラックスバリア16bに接する永久磁石15bに至る(矢印A1)。
【0027】
また、矢印A1付近のステータ12からの磁束の一部は、フラックスバリア16aの、ロータ14の回転中心側の外縁に沿って、フラックスバリア16aと隣接する別のフラックスバリア16bに誘導される。そして、フラックスバリア16bは、当該フラックスバリア16bの、ロータ14の回転中心側の辺縁に沿う磁束、即ち、フラックスバリア16bとフラックスバリア16dとの間を流れる磁束の向きを、フラックスバリア16bに接する永久磁石15bに誘導する(矢印B1)。なお、フラックスバリア16dは、互いに隣接するフラックスバリア16a,16bの内側(ロータ14の回転中心側)に、フラックスバリア16a,16bと重なるように形成される。また、フラックスバリア16cも同様に、互いに隣接するフラックスバリア16a,16bの内側(ロータ14の回転中心側)に、フラックスバリア16a,16bと重なるように形成される。
【0028】
このように、フラックスバリア16a,16b,16dは、磁束を永久磁石15bに誘導する。なお、コイル13に流れる三相交流電流の位相によっては、ロータ14の内部に発生する磁束の向きが逆になる。そのときは、ロータ14の内部に発生した磁束は、矢印A1,B1の逆向きに進行する。
【0029】
なお、コイル13に流れる三相交流電流によって発生した磁束のうち、
図2に示す永久磁石15cの近傍を通過して、永久磁石15cと隣接する永久磁石15bに至る経路は、前記した磁束の経路と、永久磁石15bに関して線対称になる。即ち、矢印A2,B2に沿う磁束の流れが発生する。
【0030】
(永久磁石のレイアウトおよびフラックスバリアの形状およびレイアウト)
図3を用いて、可変磁束モータ10が備える永久磁石15のレイアウトと、フラックスバリア16a,16bの形状およびレイアウトについて説明する。
図3は、実施形態に係る可変磁束モータが備える永久磁石のレイアウトと、フラックスバリアの形状およびレイアウトを説明する図である。
【0031】
可変磁束モータ10において、永久磁石15と、フラックスバリア16aと、フラックスバリア16bとは、永久磁石15の中心を通りロータ14の半径方向に沿う中心線20に関して線対称に配置される。即ち、フラックスバリア16aとフラックスバリア16bとは、中心線20に関して線対称な形状を有している。
【0032】
フラックスバリア16aの、永久磁石15に接していない側には、ロータ14の回転中心側に、ロータ14の周方向に突出した第1の突出部18が形成される。第1の突出部18の内側(ロータ14の円周側)の辺縁は、フラックスバリア16aの永久磁石15と接しない側の壁面21aと所定の角度θをなすように形成される。また、第1の突出部18の外側(ロータ14の回転中心側)の辺縁は、フラックスバリア16aの壁面21aと所定の角度θをなすように形成される。角度θは、例えば100°乃至120°である。なお、角度θの適正値は、可変磁束モータ10の仕様等に応じて、当該可変磁束モータに内蔵される永久磁石15に磁束を集中できるように設定される。
【0033】
第1の突出部18は、ロータ14の円周側において、フラックスバリア16aに沿って流れる磁束を、フラックスバリア16aの左側に隣接する、
図3に非図示のフラックスバリア16bに誘導する。または、磁束をその逆向きに誘導する。即ち、第1の突出部18の、ロータ14の円周側の辺縁において、磁束は、矢印F1の方向に流れる。また、第1の突出部18は、ロータ14の回転中心側において、フラックスバリア16aに沿って流れる磁束を、永久磁石15に向かう方向または永久磁石15から流れ出す方向、即ち矢印E1に沿って流す。
【0034】
また、フラックスバリア16aの永久磁石15と当接する側には、ロータ14の回転中心側に突出した第2の突出部19が形成される。第2の突出部19は、永久磁石15よりもロータ14の回転中心側に突出するように形成される。また、第2の突出部19の、ロータ14の回転中心側の辺縁は、第1の突出部18の、ロータ14の回転中心側の辺縁の接線22aを延長した位置にある。
【0035】
第2の突出部19は、フラックスバリア16aによる磁束の誘導を補助する。即ち、フラックスバリア16aは、第1の突出部18に沿って流れる磁束を、永久磁石15をロータ14の半径方向に沿って通過するように誘導する。また、第2の突出部19は、永久磁石15からロータ14の回転中心側に流出した磁束の流れを、第1の突出部18に向ける。
【0036】
フラックスバリア16bも、フラックスバリア16aと同様に、第1の突出部18と、第2の突出部19とを有する。第1の突出部18と第2の突出部19との作用は、前記した通りである。
【0037】
即ち、フラックスバリア16bの、永久磁石15に接していない側には、ロータ14の回転中心側に、ロータ14の周方向外側に向けて突出した第1の突出部18が形成される。第1の突出部18の内側(ロータ14の円周側)の辺縁は、フラックスバリア16bの永久磁石15と接しない側の壁面21bと所定の角度θをなすように形成される。また、第1の突出部18の外側(ロータ14の回転中心側)の辺縁は、フラックスバリア16bの壁面21bと所定の角度θをなすように形成される。角度θは、例えば100°乃至120°である。なお、角度θの適正値は、可変磁束モータ10の仕様等に応じて、当該可変磁束モータに内蔵される永久磁石15に磁束を集中できるように設定される。
【0038】
フラックスバリア16bの第1の突出部18は、ロータ14の円周側において、フラックスバリア16bに沿って流れる磁束を、フラックスバリア16bの右側に隣接する、
図3に非図示のフラックスバリア16aに誘導する。または、磁束をその逆向きに誘導する。即ち、第1の突出部18の、ロータ14の円周側の辺縁において、磁束は、矢印F2の方向に流れる。
【0039】
また、フラックスバリア16bの第1の突出部18は、ロータ14の回転中心側において、フラックスバリア16bに沿って流れる磁束を、永久磁石15に向かう方向または永久磁石15から流れ出す方向、即ち矢印E2に沿って流す。なお、フラックスバリア16bが備える第2の突出部19は、第1の突出部18の、ロータ14の回転中心側の辺縁の接線22bを延長した位置にあって、矢印E2に沿う磁束の流れを生み出す。
【0040】
なお、フラックスバリア16aとフラックスバリア16bとは、中心線20に関して線対称な形状を有しているため、ロータ14の周方向に沿って形成されたフラックスバリア16aが備える第1の突出部18と、当該フラックスバリア16aに隣接するフラックスバリア16bが備える第1の突出部18とは、互いに向かい合う状態で配置される。
【0041】
永久磁石15は、ロータ14の外周の位置から第1の距離d1だけ内側の位置に、周方向に沿って配置される。第1の距離d1は、例えば2mm乃至4mmである。第1の距離d1が2mmを下回ると、ロータ14の強度が不足する。一方、第1の距離d1が4mmを超えると、永久磁石15に磁束を十分に集中できなくなる。
【0042】
また、フラックスバリア16a,16bの、ロータ14の外周側の辺縁は、ロータ14の外周の位置から第2の距離d2だけ内側の位置に、周方向に沿って配置される。第2の距離d2は、例えば1mm乃至2mmである。第2の距離d2が1mmを下回ると、ロータ14の強度が不足する。一方、第2の距離d2が2mmを超えると、磁束がロータ14の外周とフラックスバリア16a,16bとの隙間に多く流れてしまうため、永久磁石15に磁束を十分に集中できなくなる。
【0043】
ロータ14が回転した際に、永久磁石15には、ロータ14の半径方向外側に向かう遠心力が作用する。そのため、永久磁石15を、ロータ14の外周に近い位置に設置すると、永久磁石15に作用する遠心力によって、永久磁石15とロータ14の外周との間の領域に大きい応力が作用して、最悪の場合、ロータ14が破壊される可能性がある。
【0044】
また、ロータ14が回転した際に、フラックスバリア16a,16bには、ロータ14の半径方向外側に向かう遠心力が作用する。そのため、フラックスバリア16a,16bを、ロータ14の外周に近い位置に形成すると、フラックスバリア16a,16bの円周側外縁とロータ14の外周との間の領域に大きい応力が作用して、最悪の場合、ロータ14が破壊される可能性がある。
【0045】
一方、可変磁束モータ10に高い性能を発揮させるためには、永久磁石15とフラックスバリア16a,16bとは、できるだけロータ14の外周に近い位置に設置するのが望ましい。本開示の発明者は、永久磁石15とフラックスバリア16a,16bの設置位置を何通りか変更して、可変磁束モータ10を運転させながら、ロータ14にかかる応力の変化を観測した。その結果、前記したように、永久磁石15を、ロータ14の外周の位置から第1の距離d1=2mm乃至4mmの位置に設置して、フラックスバリア16a,16bのロータ14の外周側の辺縁を、ロータ14の外周の位置から第2の距離d2=1mm乃至2mmの位置に設置すると、可変磁束モータ10の強度を低下させずに、必要な磁束変化を得られるとの評価結果を得た。
【0046】
(可変磁束モータの適用例)
図4を用いて、可変磁束モータ10の適用例を説明する。
図4は、可変磁束モータの適用例を説明する図である。
【0047】
可変磁束モータ10は、例えば、当該可変磁束モータ10によって駆動される車両の運転状態に応じて、永久磁石の磁化を変えることができるため、低速域での大トルク化と、高速域での高効率化を両立することができる。
【0048】
例えば、着磁によって磁束を増加させた状態(
図4の駆動モードMa)では、可変磁束モータ10により大きいトルクを発揮させることができる。したがって、例えば坂道発進時等の大トルクが必要な状態に見合った、車両の駆動特性を実現することができる。
【0049】
一方、減磁によって磁束を減少させた状態(
図4の駆動モードMb)では、高回転時において可変磁束モータ10の効率を向上させることができる、したがって、例えば高速道路運転時に見合った、車両の駆動特性を実現することができる。このように、可変磁束モータ10は、車両の走行環境に応じたモータの駆動特性を発揮させることができる。
【0050】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、実施形態に係る可変磁束モータ10(磁石埋込型回転電機)は、ロータ14(回転子)の内部に、当該ロータ14の周方向に沿って配置された複数の永久磁石15と、永久磁石15の、ロータ14の周方向両端に形成されて、ロータ14を取り囲むステータ12(固定子)で発生した磁束を、永久磁石15をロータ14の半径方向に沿って通過するように誘導するフラックスバリア16a,16b(第1の磁束偏向部)と、を備える。そして、フラックスバリア16a,16bは、フラックスバリア16a,16bの、ロータ14の回転中心側の辺縁に沿って流れる磁束を、フラックスバリア16a,16bに接する永久磁石15に誘導するとともに、フラックスバリア16a,16bの、ロータ14の円周側の辺縁に沿って流れる磁束を、フラックスバリア16a,16bと、ロータ14の周方向に隣接する別のフラックスバリア16b,16aに誘導する、永久磁石15に対してロータ14の周方向外側に向けて突出する第1の突出部18(磁束誘導部)を備える。したがって、ロータ14の中を流れる磁束を、永久磁石15に集中させることができるため、着磁性能・減磁性能を更に向上させることができる。
【0051】
また、実施形態に係る可変磁束モータ10(磁石埋込型回転電機)において、第1の突出部18(磁束誘導部)は、フラックスバリア16a,16b(第1の磁束偏向部)の、ロータ14(回転子)の周方向外側の辺縁を形成する壁面と、100°乃至120°の角度をなす。したがって、ステータ12(固定子)で発生した磁束を、より一層確実に永久磁石15に集中させることができる。
【0052】
また、実施形態に係る可変磁束モータ10(磁石埋込型回転電機)は、フラックスバリア16b,16a(第1の磁束偏向部)の、ロータ14の半径方向内側に、第1の突出部18(磁束誘導部)と重なるように形成されるフラックスバリア16c,16d(第2の磁束偏向部)を更に備える。したがって、ステータ12(固定子)で発生した磁束を、より一層確実に永久磁石15に集中させることができる。
【0053】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、上述した実施の形態は、例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能である。また、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。また、この実施の形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0054】
10 可変磁束モータ(磁石埋込型回転電機)
12 ステータ(固定子)
13,13a,13b,13c コイル
14 ロータ(回転子)
15,15a,15b,15c 永久磁石
16a,16b フラックスバリア(第1の磁束偏向部)
16c,16d フラックスバリア(第2の磁束偏向部)
17 回転軸
18 第1の突出部(磁束誘導部)
19 第2の突出部
20 中心線
21a,21b 壁面
22a,22b 接線
d1 第1の距離
d2 第2の距離
Ma,Mb 駆動モード
θ 角度