IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大成建設株式会社の特許一覧

特開2024-68537出来形管理システム、出来形管理方法および位置取得システム
<>
  • 特開-出来形管理システム、出来形管理方法および位置取得システム 図1
  • 特開-出来形管理システム、出来形管理方法および位置取得システム 図2
  • 特開-出来形管理システム、出来形管理方法および位置取得システム 図3
  • 特開-出来形管理システム、出来形管理方法および位置取得システム 図4
  • 特開-出来形管理システム、出来形管理方法および位置取得システム 図5
  • 特開-出来形管理システム、出来形管理方法および位置取得システム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068537
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】出来形管理システム、出来形管理方法および位置取得システム
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/18 20060101AFI20240513BHJP
   G06Q 50/08 20120101ALI20240513BHJP
【FI】
E02D17/18 Z
G06Q50/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179066
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】片山 三郎
(72)【発明者】
【氏名】太田 兵庫
(72)【発明者】
【氏名】石井 喬之
(72)【発明者】
【氏名】廣江 亮太
【テーマコード(参考)】
2D044
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
2D044CA00
5L049CC07
5L050CC07
(57)【要約】
【課題】従来よりも出来形を管理するのに要する負担を軽減できる出来形管理システム、出来形管理方法および位置取得システムを提供する。
【解決手段】土工事における出来形を管理する出来形管理システム100であって、振動ローラ1の振動を検出する振動検出手段4と、振動ローラ1の位置を検出する位置検出手段5と、振動検出手段4が検出した振動情報および位置検出手段5が検出した位置情報に基づいて、前記出来形に関する出来形情報を作成する出来形管理装置3と、を備える。出来形管理装置3は、締め固め作業で発生する振動力を振動検出手段4で検出した時間帯に取得された位置情報を用いて前記出来形情報を作成する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土工事における出来形を管理する出来形管理システムであって、
振動ローラの振動を検出する振動検出手段と、
前記振動ローラの位置を検出する位置検出手段と、
前記振動検出手段が検出した振動情報および前記位置検出手段が検出した位置情報に基づいて、前記出来形に関する出来形情報を作成する出来形管理装置と、を備え、
前記出来形管理装置は、締め固め作業で発生する振動力を前記振動検出手段で検出した時間帯に取得された位置情報を用いて前記出来形情報を作成する、
ことを特徴とする出来形管理システム。
【請求項2】
前記振動検出手段は、前記振動ローラに取り付けられた発信機であり、
前記発信機は、加速度センサを備えており、締固め作業で発生する振動力を検出した場合に電波を発信し、
前記出来形管理装置は、前記発信機が電波を発信している時間帯に取得された位置情報を用いて前記出来形情報を作成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の出来形管理システム。
【請求項3】
前記発信機が発信する電波を受信する受信機を備え、
前記受信機は、前記発信機が取り付けられた振動ローラに取り付けられており、
前記出来形管理装置は、電波強度が所定値以上の電波を前記受信機が受信した時間帯に取得された位置情報を用いて前記出来形情報を作成する、
ことを特徴とする請求項2に記載の出来形管理システム。
【請求項4】
前記出来形情報は、前記振動ローラの走行軌跡に当該振動ローラの幅情報を加えることで、締固め作業を完了した施工済み領域を面形状として表したものであり、
前記出来形管理装置は、前記土工事の設計情報に施工済み領域を反映させた画像データを表示部に表示させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の出来形管理システム。
【請求項5】
土工事における出来形を管理する出来形管理方法であって、
振動ローラの振動および位置を検出する検出工程と、
前記検出工程で検出した振動情報および位置情報に基づいて、前記出来形に関する出来形情報を作成する出来形管理工程と、を有し、
前記出来形管理工程では、締め固め作業で発生する振動力を検出した時間帯に取得された位置情報を用いて前記出来形情報を作成する、
ことを特徴とする出来形管理方法。
【請求項6】
振動ローラの位置情報を取得する位置取得システムであって、
振動ローラの振動を検出する振動検出手段と、
前記振動ローラの位置を検出する位置検出手段と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、締め固め作業で発生する振動力を前記振動検出手段で検出した時間帯に取得された位置情報を出力する、
ことを特徴とする位置取得システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土工事における出来形を管理する出来形管理システム、出来形管理方法および位置取得システムに関する。
【背景技術】
【0002】
土工事(例えば、ダムや大規模造成工事など)において、日々の施工数量を算出するために、現地の出来形を測量によって算出することが行われている。これに関連して、例えば、特許文献1,2に記載された技術が知られている。
【0003】
特許文献1には、盛立工事現場を移動して転圧する振動ローラから送信される位置情報を用いて出来形情報を作成することが記載されている。
また、特許文献2には、航空機や無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicleまたはドローン:Drone)に搭載されたカメラにより撮影された写真から、2次元現況地形データを取得することが記載されている。また、特許文献2には、無人航空機に搭載された3次元レーザスキャナ装置を用いて計測されたデータから、3次元現況地形データの点群データ(3次元点群データ)を取得することが記載されている。
特許文献1,2に記載された技術を用いることで、出来形の管理に要する作業員の負担を軽減することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-168991号公報
【特許文献2】特開2021-149395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1,2に記載された技術は、日々の出来形を管理することを想定した場合に以下の問題点があり、作業員の負担軽減が十分ではなかった。
特許文献1では、盛立工事現場を移動する振動ローラが位置情報を送信するが、振動ローラは転圧を行う以外にも盛立工事現場を移動するため、出来形の管理に不要な位置情報についても送信されてしまうことが考えられる。そのため、出来形の管理を行う際のデータの整理が面倒である。また、振動ローラによる転圧作業には有振動と無振動の作業が存在するが、有振動と無振動の転圧回数を正確に把握することができない。
また、特許文献2では、航空機や無人航空機を用いて撮影や計測を行う特別な工程が必要となり、計測の精度を高めるためには他の作業を一時的に中断する必要がある。そのため、計測のために作業を中断した分だけ作業工程が長期化してしまう。
このような観点から、本発明は、従来よりも出来形を管理するのに要する負担を軽減できる出来形管理システム、出来形管理方法および位置取得システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る出来形管理システムは、土工事における出来形を管理する出来形管理システムである。この出来形管理システムは、振動ローラの振動を検出する振動検出手段と、前記振動ローラの位置を検出する位置検出手段と、前記振動検出手段が検出した振動情報および前記位置検出手段が検出した位置情報に基づいて、前記出来形に関する出来形情報を作成する出来形管理装置とを備える。前記出来形管理装置は、締め固め作業で発生する振動力を前記振動検出手段で検出した時間帯に取得された位置情報を用いて前記出来形情報を作成する。
本発明に係る出来形管理システムにおいては、振動ローラの有振動状態を判別して位置情報を取得することができる。ここで、土工事は、ダンプトラックで土を運び、ブルドーザで土を敷均して、最後に振動ローラで転圧して仕上げるのが一般的である。そのため、振動ローラの位置情報が分かれば、出来形を計測したことに等しいといえる。また、振動ローラは転圧を行う以外にも施工現場を移動するが、有振動状態で移動するのは転圧を行う場合のみであるので、振動ローラの振動の有無と位置情報とを関連付けることで、出来形の管理に不要な位置情報を排除することができる。つまり、転圧作業における有振動の転圧のみの位置情報を取得することができる。その結果、特別な作業工程を要することなく、日々の出来形管理を自動で行うことが可能となる。
【0007】
前記振動検出手段は、前記振動ローラに取り付けられた発信機である。例えば、前記発信機は、加速度センサを備えており、締固め作業で発生する振動力を検出した場合に電波を発信する。前記出来形管理装置は、前記発信機が電波を発信している時間帯に取得された位置情報を用いて前記出来形情報を作成する。
このようにすると、有振動状態である振動ローラの位置情報を容易に取得することが可能である。
【0008】
前記発信機が発信する電波を受信する受信機を備える。例えば、前記受信機は、前記発信機が取り付けられた振動ローラに取り付けられる。前記出来形管理装置は、電波強度が所定値以上の電波を前記受信機が受信した時間帯に取得された位置情報を用いて前記出来形情報を作成する。
一台の振動ローラに取り付けられた発信機と受信機の距離は不変であるので、受信機が受信する電波の電波強度は常に所定値以上となる。そのため、複数の振動ローラが作業現場で作業を行っていた場合であっても、他の振動ローラに取り付けられた発信機が発信する電波と、自身の振動ローラに取り付けられた発信機が発信する電波とを混同し難い。したがって、複数の振動ローラが作業現場で作業を行う場合であっても正確に出来形を管理することが可能である。
【0009】
前記出来形情報は、前記振動ローラの走行軌跡に当該振動ローラの幅情報を加えることで、締固め作業を完了した施工済み領域を面形状として表したものであってよい。その場合、前記出来形管理装置は、前記土工事の設計情報に施工済み領域を反映させた画像データを表示部に表示させる。
このようにすると、土工事の進捗を一目で把握することが可能である。
【0010】
本発明に係る出来形管理方法は、土工事における出来形を管理する出来形管理方法である。この出来形管理方法は、振動ローラの振動および位置を検出する検出工程と、前記検出工程で検出した振動情報および位置情報に基づいて、前記出来形に関する出来形情報を作成する出来形管理工程とを有する。前記出来形管理工程では、締め固め作業で発生する振動力を検出した時間帯に取得された位置情報を用いて前記出来形情報を作成する。
本発明に係る出来形管理方法においては、振動ローラの有振動状態を判別して位置情報を取得することができる。振動ローラの位置情報が分かれば、出来形を計測したことに等しいといえる。また、振動ローラは転圧を行う以外にも施工現場を移動するが、有振動状態で移動するのは転圧を行う場合のみであるので、振動ローラの振動の有無と位置情報とを関連付けることで、出来形の管理に不要な位置情報を排除することができる。つまり、転圧作業における有振動の転圧のみの位置情報を取得することができる。その結果、特別な作業工程を要することなく、日々の出来形管理を自動で行うことが可能となる。
【0011】
本発明に係る位置取得システムは、振動ローラの位置情報を取得する位置取得システムである。この位置取得システムは、振動ローラの振動を検出する振動検出手段と、前記振動ローラの位置を検出する位置検出手段と、制御装置とを備える。前記制御装置は、締め固め作業で発生する振動力を前記振動検出手段で検出した時間帯に取得された位置情報を出力する。
本発明に係る位置取得システムにおいては、振動ローラの有振動状態を判別して位置情報を取得することができる。振動ローラの位置情報が分かれば、出来形を計測したことに等しいといえる。また、振動ローラは転圧を行う以外にも施工現場を移動するが、有振動状態で移動するのは転圧を行う場合のみであるので、振動ローラの振動の有無と位置情報とを関連付けることで、出来形の管理に不要な位置情報を排除することができる。つまり、転圧作業における有振動の転圧のみの位置情報を取得することができる。その結果、位置取得システムによる位置情報を用いることで、特別な作業工程を要することなく、日々の出来形管理を自動で行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、従来よりも出来形を管理するのに要する負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る出来形管理システムの概念図である。
図2】本発明の実施形態に係る出来形管理システムのシステム構成図である。
図3】本発明の実施形態に係る振動ローラの概略側面図である。
図4】出来形情報のイメージである。
図5】進捗管理情報のイメージである。
図6】本発明の実施形態に係る出来形管理システムにおける出来形管理方法の工程を示したフローチャートの例示である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施をするための形態を、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。なお、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0015】
≪実施形態に係る出来形管理システムの構成≫
図1ないし図3を参照して、実施形態に係る出来形管理システム100の構成について説明する。図1は、出来形管理システム100の概念図である。図2は、出来形管理システム100のシステム構成図である。図3は、振動ローラ1の概略側面図である。出来形管理システム100は、土工事における日々の出来形を管理するシステムである。本実施形態では、土工事として盛土工事を想定して説明する。
【0016】
図1に示すように、出来形管理システム100は、一台以上の振動ローラ1と、クラウドシステム2と、出来形管理装置3とを備える。振動ローラ1および出来形管理装置3は、クラウドシステム2との間でデータの送受信が可能である。
振動ローラ1は、施工現場を走行しながら地面を転圧する。振動ローラ1は、振動機能を有し、ローラを振動させた状態で地面を転圧することが可能である。
クラウドシステム2は、土工事の施工に関する情報を取得して保有するシステムである。クラウドシステム2には、例えば、振動ローラ1の位置情報が記憶されている。
【0017】
出来形管理装置3は、土工事における日々の出来形を管理する装置である。出来形管理装置3は、例えば、クラウドシステム2に記憶される振動ローラ1の位置情報を用いて、出来形に関する出来形情報を作成する。出来形情報は、例えば締固め作業を完了した施工済み領域を面形状として表したものである。
なお、出来形管理システム100の構成はここで示すものに限定されず、例えば、出来形管理装置3がクラウドシステム2の一部または全部の機能を有していてもよい(つまり、出来形管理システム100は、一台以上の振動ローラ1と、出来形管理装置3とで構成されてもよい)。
【0018】
図2に示すように、振動ローラ1は、当該振動ローラ1の振動を検出する振動検出手段4と、当該振動ローラ1の位置を検出する位置検出手段5とを備える。振動検出手段4が検出した振動情報および位置検出手段5が検出した位置情報は、クラウドシステム2に送信され、出来形管理装置3による出来形の管理に利用される。本実施形態では、振動検出手段4として加速度型のビーコン(「加速度ビーコン31」と称する)を想定し、位置検出手段5として測位用の信号受信装置32を想定する。加速度ビーコン31は、加速度センサを備えており、予め規定した閾値以上の加速度が検出された際に電波を発信する発信機である。信号受信装置32は、例えば、GPS(Global Positioning System)で用いる電波の受信装置である。なお、振動ローラ1は、自動走行が可能であってもよく、その場合には操縦者が振動ローラ1に搭乗せずに施工現場を走行する。
【0019】
図3に示すように、振動ローラ1は、車体10と、車体10の下部に配置される走行機構20とを備える。車体10は、振動ローラ1の本体となる部分である。車体10は、操縦席11と、図示しないに駆動手段(例えば、エンジンやモータ)とを備える。走行機構20は、アーティキュレート機構21と、前輪としてのローラ22と、後輪としてのタイヤ23とを備える。
【0020】
アーティキュレート機構21は、振動ローラ1を旋回させるための機構であり、車体10の下部に設置される。アーティキュレート機構21は、ローラ22を回転自在に保持する前輪保持部21aと、タイヤ23を回転自在に保持する後輪保持部21bと、前輪保持部21aおよび後輪保持部21bを連結するセンターピン21cとを備える。前輪保持部21aと後輪保持部21bとの間には、ステアリングシリンダ(図示せず)が介設されている。図示しない制御部から進行方向を修正する制御指令を受信すると、ステアリング角度に応じてステアリングシリンダが伸縮する。そして、ステアリングシリンダが伸縮すると、センターピン21cを中心に前輪保持部21aおよび後輪保持部21bが屈折し、それに伴いローラ22およびタイヤ23の方向が変化する。
【0021】
ローラ22は、締固め作業に用いる振動力を発生される振動発生装置22bを備え、振動しながら回転することで地面を転圧する。ローラ22は、防振装置22aを介して前輪保持部21aに連結されている。ローラ22と前輪保持部21aとの間に防振装置22aを設けることで、ローラ22の振動が車体10に伝わらないようになっている。ローラ22には、加速度ビーコン31が設置されている。加速度ビーコン31は、振動発生装置22bが発生した振動力を検出しやすい位置に設置されるのがよく、例えば紐、粘着テープ、マグネットなどの固定手段を用いて振動発生装置22bに直接固定される。
【0022】
加速度ビーコン31は、ローラ22が備える振動発生装置22bが発生する振動を検出し、振動の検出によって電波を発信する。加速度ビーコン31は、例えば、予め規定した閾値以上の加速度が検出された際に電波を発信する。ここでの閾値は、振動発生装置22bが振動を発生している場合と発生していない場合とを区別できるものであればよい。これにより、本実施形態における加速度ビーコン31が発信する電波は、それ自体がローラ22で振動が発生していることを示す振動情報となる。なお、加速度ビーコン31(振動検出手段4)は、振動の有無に関わらずに電波を発信し、発信する信号の内容を変更することで振動の有無を知らせるようにしてもよい。
【0023】
図2に示すように、振動ローラ1は、発信機である加速度ビーコン31が発信した電波(振動情報)を受信するビーコン電波受信装置33を備える。つまり、振動ローラ1には、発信機である加速度ビーコン31と、受信機であるビーコン電波受信装置33とが設置されている。ビーコン電波受信装置33は、制御装置34と有線接続されており、例えば操縦席11内に設置される。ビーコン電波受信装置33は、加速度ビーコン31から受信した電波(振動情報)を所定のプロトコルのデータに変換し、変換したデータを制御装置34に送信することができる。
【0024】
ビーコン電波受信装置33は、電波強度(RSSI)を測定する機能を有しており、加速度ビーコン31が発信した電波強度を測定可能である。ビーコン電波受信装置33は、例えば、予め規定した閾値以上の電波強度が検出された際に振動情報を制御装置34に送信する。本実施形態では、一台の振動ローラ1に着目した場合、発信機である加速度ビーコン31と受信機であるビーコン電波受信装置33との距離が不変であるので、ビーコン電波受信装置33が受信する電波の電波強度は常に所定値以上となる。そのため、複数の振動ローラ1が作業現場で作業を行っていた場合であっても、他の振動ローラ1に取り付けられた加速度ビーコン31が発信する電波と、自身の振動ローラ1に取り付けられた加速度ビーコン31が発信する電波とを混同し難い。なお、加速度ビーコン31をID(識別情報)によって管理してもよく、その場合、ビーコン電波受信装置33は、例えばID(識別情報)を含んだ電波を受信する。この方法によっても、電波の発信元の特定が可能である。
【0025】
図2に示す信号受信装置32は、図示しない測位用衛星から発信される電波を受信する機器である。測位用衛星は、全球測位衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)で使用される衛星であって、自身の位置情報(軌道位置情報)や時刻情報を周期的に送信する。測位用衛星は、例えば、GPS(Global Positioning System)衛星、GLONASS(Global Navigation Satellite System)衛星、Galileo衛星、準天頂衛星などであってよい。信号受信装置32は、制御装置34と有線接続されており、例えば操縦席11内に設置される。信号受信装置32は、アンテナを介して測位用衛星から軌道位置情報や時刻情報などを受信し、受信した軌道位置情報や時刻情報を用いて自身の位置を計算する。位置の計算方法は特に限定されず、例えば精度の高い位置情報を求めることが可能なRTK(Real Time Kinematic)を用いるのがよい。そして、信号受信装置32は、求めた位置情報を制御装置34に送信する。なお、測位用衛星に代えてトータルステーションやSLAM(Simultaneous Localization And Mapping)を用いて振動ローラ1の位置情報を求めてもよい。つまり、振動ローラ1の位置を求める方法は様々な技術を用いることができる。
【0026】
制御装置34は、信号受信装置32、ビーコン電波受信装置33およびインターネット通信装置35に有線接続されている。制御装置34は、加速度ビーコン31で検出した振動情報をビーコン電波受信装置33から受信し、また、信号受信装置32から計算した位置情報を受信する。制御装置34は、インターネット通信装置35を介して、受信した振動情報および位置情報をクラウドシステム2に送信する。制御装置34は、振動情報および位置情報をリアルタイムに送信してもよいし、特定の時間帯の情報をまとめて送信してもよい。制御装置34は、振動情報と位置情報とを関連付けてクラウドシステム2に送信する。振動情報と位置情報とを関連付ける方法は特に限定されない。本実施形態では、制御装置34が、加速度ビーコン31が電波を発信している時間帯に取得された位置情報のみをクラウドシステム2に送信する。これにより、本実施形態における振動ローラ1から送信される位置情報は、それ自体が位置情報に振動情報が関連付けられた情報となっている。なお、加速度ビーコン31(振動検出手段4)が振動の有無に関わらずに電波を発信する場合、制御装置34は、例えば時刻を用いて振動情報と位置情報との関連付けを行う。そして、制御装置34は、時刻を用いて関連付けた振動情報および位置情報をクラウドシステム2に送信する。
【0027】
なお、加速度ビーコン31(振動検出手段4)、信号受信装置32(位置検出手段5)、ビーコン電波受信装置33および制御装置34をまとめて「位置取得システム200」と称する。位置取得システム200は、締め固め作業で発生する振動力を振動検出手段4で検出した時間帯に取得された位置情報を出力する。位置取得システム200は、市場で販売されている汎用的な振動ローラに後付け可能な構成であるのがよい。
【0028】
図2に示すように、クラウドシステム2は、記憶部2aと、情報整理部2bとを備える。情報整理部2bは、振動情報と位置情報とを関連付けた状態で記憶部2aに格納する。本実施形態では、加速度ビーコン31が電波を発信している時間帯に取得された位置情報のみを取得するので、情報整理部2bは、振動ローラ1から受信した全ての位置情報を記憶部2aに格納する。記憶部2aに記憶される振動ローラ1の位置情報は、時間経過に対応付けられており、位置情報を時間経過に基づいて辿ることで振動ローラ1の走行軌跡が分かる。なお、時刻によって振動情報と位置情報との関連付けが行われている場合、情報整理部2bは、ローラ22が振動を発生している時間帯の位置情報と、それ以外の時間帯の位置情報とを区別可能な状態で記憶部2aに格納するのがよい。
【0029】
図2に示す出来形管理装置3は、出来形を管理するための装置であり、例えば、施工の管理者によって操作される。出来形管理装置3は、PC(Personal Computer)、携帯型端末(例えば、モバイル端末やスマートフォン)などであってよい。図2に示すように、出来形管理装置3は、出来形情報作成部3aと、出来形表示処理部3bとを備える。出来形情報作成部3aおよび出来形表示処理部3bは、例えばCPU(Central Processing Unit)がROM(Read Only Memory)等に格納された出来形管理アプリケーションプログラムを実行処理することにより実現される。
【0030】
出来形情報作成部3aは、加速度ビーコン31が電波を発信している時間帯に取得された位置情報を取得して、出来形に関する出来形情報を作成する。本実施形態では、出来形情報作成部3aがクラウドシステム2を介して振動ローラ1の位置情報を取得することにしているが、振動ローラ1から位置情報を直接取得してもよい。出来形情報は、例えば締固め作業を完了した施工済み領域を面形状として表したものである。出来形情報作成部3aは、例えば、振動ローラ1の走行軌跡に当該振動ローラ1の幅情報を加えることで、図4に示すように締固め作業を完了した施工済み領域Kを作成する。図4は、出来形情報としての施工済み領域Kのイメージである。
【0031】
また、出来形情報作成部3aは、土工事の設計情報に施工済み領域Kを反映させた進捗管理情報を作成してもよい。進捗管理情報のイメージを図5に示す。図5に示す進捗管理情報9は、設計情報Jに施工済み領域Kを反映させたものである。図5に示す設計情報Jは、最下層、中間層および最上層の3層構造であり、下の層から順番に盛土が施工される。図5では中間層の途中まで施工が完了した状態を示している。つまり、最下層の上面には、締固め作業を完了した施工済み領域K1が反映されている。中間層の上面には、「7/1」に締固め作業を完了した施工済み領域K2aと、「7/2」に締固め作業を完了した施工済み領域K2bと、「7/3」に締固め作業を完了した施工済み領域K2cとが反映されている。中間層の一部の領域(施工済み領域K2cの右側の領域)は、施工を行っていない状態なので施工済み領域Kが反映されておらず、施工が完了した後で施工済み領域Kが反映される。同様に、最上層の上面は、施工を行っていない状態なので施工済み領域Kが反映されておらず、施工が完了した後で施工済み領域Kが反映される。なお、進捗管理情報9は、施工済み領域Kを含むために出来形情報の一例である。
【0032】
図2に示す出来形表示処理部3bは、出来形情報を表示させる機能である。出来形表示処理部3bは、出来形情報を自身が有する表示部(図示せず)に表示させてもよいし、出来形情報を他の装置(図示せず)に送信して当該他の装置の表示部に表示させてもよい。例えば、出来形表示処理部3bは、図5に示す進捗管理情報9を表示部に表示させる。これにより、土工事の進捗を一目で把握することが可能である。
【0033】
≪実施形態に係る出来形管理システムの動作≫
図6を参照して(適宜、図1ないし図3を参照)、実施形態に係る出来形管理システム100の動作(出来形管理方法)について説明する。図6は、実施形態に係る出来形管理システム100における出来形管理方法の工程を示したフローチャートの例示である。
【0034】
振動ローラ1の信号受信装置32(位置検出手段5)は、受信した測位用信号を用いて位置情報を算出し、制御装置34に当該位置情報を送信する(ステップS1)。また、振動ローラ1の加速度ビーコン31(振動検出手段4)は、加速度センサが検出した振動加速度が閾値以上であるかを判定する(ステップS2)。加速度ビーコン31は、振動加速度が閾値以上でない場合には電波(振動情報)を発信しない(ステップS3)。この場合には、制御装置34が位置情報のみを取得することになる(位置情報を取得したタイミングで振動情報を取得しない)。そのため、制御装置34は、位置情報を記録しないと判定し、信号受信装置32から取得した位置情報をクラウドシステム2に送信しない(ステップS7)。
【0035】
ステップS2で振動加速度が閾値以上である場合(ステップS2で「Yes」)、加速度ビーコン31(振動検出手段4)は、電波(振動情報)を発信し、ビーコン電波受信装置33は、電波(振動情報)を受信する(ステップS4)。ビーコン電波受信装置33は、受信した電波(振動情報)のRSSIが閾値以上であるかを判定し(ステップS5)、電波(振動情報)のRSSIが閾値以上でない場合には自機の加速度ビーコン31(振動検出手段4)から発信された電波ではないと判定する(ステップS6)。この場合には、ビーコン電波受信装置33は、制御装置34に振動情報を送信せず、制御装置34が位置情報のみを取得することになる(位置情報を取得したタイミングで振動情報を取得しない)。そのため、制御装置34は、位置情報を記録しないと判定し、信号受信装置32から取得した位置情報をクラウドシステム2に送信しない(ステップS7)。
【0036】
ステップS5でRSSIが閾値以上である場合(ステップS5で「Yes」)、ビーコン電波受信装置33は、制御装置34に電振動情報を送信し、制御装置34が位置情報および振動情報を取得することになる(位置情報を取得したタイミングで振動情報を取得する)。そのため、制御装置34は、位置情報を記録すると判定し、信号受信装置32から取得した位置情報をクラウドシステム2に送信する(ステップS8)。ステップS1ないしステップ8の処理は繰り返し実行される。これにより、制御装置34は、加速度ビーコン31が電波を発信している時間帯に取得された位置情報のみをクラウドシステム2に送信することになる。振動ローラ1から送信される位置情報は、それ自体が位置情報に振動情報が関連付けられた情報となっている。
【0037】
クラウドシステム2の情報整理部2bは、振動ローラ1から受信した位置情報を記憶部2aに格納する。出来形管理装置3の出来形情報作成部3aは、加速度ビーコン31が電波を発信している時間帯に取得された位置情報をクラウドシステム2から取得して、出来形に関する出来形情報を作成する。出来形表示処理部3bは、出来形情報作成部3aによって作成された出来形情報を表示部に表示させる。
【0038】
以上のように、実施形態に係る出来形管理システム100においては、振動ローラ1の有振動状態を判別して位置情報を取得することができる。ここで、土工事は、ダンプトラックで土を運び、ブルドーザで土を敷均して、最後に振動ローラで転圧して仕上げるのが一般的である。そのため、振動ローラの位置情報が分かれば、出来形を計測したことに等しいといえる。また、振動ローラは転圧を行う以外にも施工現場を移動するが、有振動状態で移動するのは転圧を行う場合のみであるので、振動ローラの振動の有無と位置情報とを関連付けることで、出来形の管理に不要な位置情報を排除することができる。その結果、特別な作業工程を要することなく、日々の出来形管理を自動で行うことが可能となる。
また、加速度ビーコン31は後付けが可能であると共に設置が容易である。そのため、本実施形態のように、振動検出手段4として加速度ビーコン31を用いることによって、有振動状態である振動ローラ1の位置情報を容易に取得することが可能である。
【0039】
ここまで本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を変えない範囲で実施することができる。
例えば、本実施形態では、振動検出手段4として加速度ビーコン31を想定していた。しかしながら、振動検出手段4は加速度ビーコン31に限定されず、例えば、振動発生装置22bをON/OFFするボタンやその信号から振動情報を検出してもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 振動ローラ
2 クラウドシステム
2a 記憶部
2b 情報整理部
3 出来形管理装置
3a 出来形情報作成部
3b 出来形表示処理部
4 振動検出手段
5 位置検出手段
10 車体
11 操縦席
20 走行機構
21 アーティキュレート機構
22 ローラ
22a 防振装置
22b 振動発生装置
23 タイヤ
31 加速度ビーコン(発信機)
32 信号受信装置
33 ビーコン電波受信装置(受信機)
34 制御装置
35 インターネット通信装置
100 出来形管理システム
200 位置取得システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6