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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068538
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】超音波受信装置、及び超音波受信方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20240513BHJP
【FI】
A61B8/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179067
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 広樹
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601DE09
4C601DE12
4C601EE01
4C601EE04
4C601EE07
4C601EE22
4C601GB04
4C601GB06
4C601HH02
4C601HH21
4C601HH38
4C601JB02
4C601JB34
4C601JB53
4C601LL26
(57)【要約】
【課題】処理負担を抑制しつつ適応型受信ビームフォーミングを送信開口合成に適用すること。
【解決手段】超音波受信装置は、取得部と、整相加算処理部と、送信開口合成部と、適応型受信ビームフォーミング部と、を備える。前記取得部は、送信方向が異なる超音波の送受信を時系列に実行されることで生成されたチャネル単位の第1反射波データを取得する。前記整相加算処理部は、前記第1反射波データのそれぞれについて、伝播経路に応じた整相加算処理をチャネル単位で実行し、第2反射波データを生成する。前記送信開口合成部は、前記第2反射波データを用いて複数の送信方向についての加算処理をチャネル単位で実行し、送信開口合成された第3反射波データを生成する。前記適応型受信ビームフォーミング部は、前記第3反射波データに対して適応型受信ビームフォーミングを実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信方向が異なる超音波の送受信を時系列に実行されることで生成されたチャネル単位の第1反射波データを取得する取得部と、
前記第1反射波データのそれぞれについて、伝播経路に応じた整相加算処理をチャネル単位で実行し、第2反射波データを生成する整相加算処理部と、
前記第2反射波データを用いて複数の送信方向についての加算処理をチャネル単位で実行し、送信開口合成された第3反射波データを生成する送信開口合成部と、
前記第3反射波データに対して適応型受信ビームフォーミングを実行する適応型受信ビームフォーミング部と、
を備える超音波受信装置。
【請求項2】
前記送信開口合成部により合成された複数の前記第2反射波データに対するコヒーレンシーの評価値を算出する算出部を更に備える、
請求項1に記載の超音波受信装置。
【請求項3】
前記算出部は、前記評価値に基づいた値を、前記適応型受信ビームフォーミングの実行により生成された第4反射波データに乗算する、
請求項2に記載の超音波受信装置。
【請求項4】
前記第1反射波データから高調波成分を抽出する抽出部を更に備え、
前記整相加算処理部は、前記抽出部により抽出された前記高調波成分に対して前記整相加算処理を実行する、
請求項1に記載の超音波受信装置。
【請求項5】
前記抽出部は、超音波の送受信を時系列に実行されることで生成された前記第1反射波データと、当該超音波から位相変調された超音波の送受信を時系列に実行されることで生成された前記第1反射波データと、に基づいて前記高調波成分を抽出する、
請求項4に記載の超音波受信装置。
【請求項6】
前記取得部は、平面波又は球面拡散波である超音波に対応する前記第1反射波データを取得する、
請求項1に記載の超音波受信装置。
【請求項7】
前記適応型受信ビームフォーミング部は、Minimum Variance方式の前記適応型受信ビームフォーミングを実行する、
請求項1から請求項6の何れか一項に記載の超音波受信装置。
【請求項8】
前記適応型受信ビームフォーミング部は、Delay Multiply and Sum方式の前記適応型受信ビームフォーミングを実行する、
請求項1から請求項6の何れか一項に記載の超音波受信装置。
【請求項9】
送信方向が異なる超音波の送受信を時系列に実行されることで生成されたチャネル単位の第1反射波データを取得し、
前記第1反射波データのそれぞれについて、伝播経路に応じた整相加算処理をチャネル単位で実行し、第2反射波データを生成し、
前記第2反射波データを用いて複数の送信方向についての加算処理をチャネル単位で実行し、送信開口合成された第3反射波データを生成し、
前記第3反射波データに対して適応型受信ビームフォーミングを実行する、
ことを含む超音波受信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、超音波受信装置、及び超音波受信方法に関する。
【0002】
従来、均一性が高く、ノイズの少ない画像を生成する送信開口合成を実行する超音波診断装置が知られている。また、画像の分解能を向上させる適応型受信ビームフォーミングを実行する超音波診断装置が知られている。
【0003】
そして、適応型受信ビームフォーミングを送信開口合成に適用することにより、更なる画質の向上を期待することができる。
【0004】
しかしながら、適応型受信ビームフォーミングは、処理負担が大きいため、送信開口合成に適用させることは現実的ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-187014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、処理負担を抑制しつつ適応型受信ビームフォーミングを送信開口合成に適用することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る超音波受信装置は、取得部と、整相加算処理部と、送信開口合成部と、適応型受信ビームフォーミング部とを備える。前記取得部は、送信方向が異なる超音波の送受信を時系列に実行されることで生成されたチャネル単位の第1反射波データを取得する。前記整相加算処理部は、前記第1反射波データのそれぞれについて、伝播経路に応じた整相加算処理をチャネル単位で実行し、第2反射波データを生成する。前記送信開口合成部は、前記第2反射波データを用いて複数の送信方向についての加算処理をチャネル単位で実行し、送信開口合成された第3反射波データを生成する。前記適応型受信ビームフォーミング部は、前記第3反射波データに対して適応型受信ビームフォーミングを実行する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態に係る超音波診断装置の構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、受信ビームフォーミングの一例を示す図である。
図3図3は、送信開口合成の送信の一例を示す図である。
図4図4は、送信開口合成の受信の一例を示す図である。
図5図5は、適応型受信ビームフォーミングを送信開口合成に適用する処理の一例を示すフローチャートである。
図6図6は、本実施形態に係る超音波診断装置が実行する適用処理の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、変形例1に係る超音波診断装置の構成の一例を示すブロック図である。
図8図8は、変形例1に係る超音波診断装置が実行する適用処理の一例を示すフローチャートである。
図9図9は、変形例2に係る超音波診断装置の構成の一例を示すブロック図である。
図10図10は、変形例2に係る超音波診断装置が実行する適用処理の一例を示すフローチャートである。
図11図11は、変形例3に係る超音波診断装置の構成の一例を示すブロック図である。
図12図12は、変形例3に係る超音波診断装置が実行する適用処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、実施形態に関する超音波受信装置、及び超音波受信方法について説明する。以下の実施形態では、同一の参照符号を付した部分は同様の動作をおこなうものとして、重複する説明を適宜省略する。
【0010】
図1は、本実施形態に係る超音波診断装置100の構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、超音波診断装置100は、超音波プローブ101、入力インタフェース102、ディスプレイ103、及び装置本体104を有する。超音波プローブ101、入力インタフェース102、及びディスプレイ103は、装置本体104と通信可能に接続される。
【0011】
超音波プローブ101は、複数の圧電素子101bが配列されたアレイ部101aを有する。アレイ部101aは、装置本体104が有する送受信回路110から供給される駆動信号に基づき超音波を発生する。また、超音波プローブ101は、被検体Pからの反射波を受信して電気信号に変換する。なお、超音波プローブ101は、装置本体104と着脱自在に接続される。
【0012】
超音波プローブ101から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として超音波プローブ101が有するアレイ部101aにて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。
【0013】
なお、超音波プローブ101の形態は特に問わず、如何なる形態の超音波プローブが用いられてもよい。例えば、超音波プローブ101は、被検体Pを2次元で走査する1Dアレイプローブであってもよい。また、超音波プローブ101は、被検体Pを3次元で走査するメカニカル4Dプローブや2Dアレイプローブであってもよい。
【0014】
入力インタフェース102は、操作者から各種の指示及び情報の入力操作を受け付ける。具体的には、入力インタフェース102は、操作者から受け付けた入力操作を電気信号へ変換して装置本体104の処理回路170に出力する。例えば、入力インタフェース102は、トラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、及び音声入力回路等によって実現される。なお、入力インタフェース102は、マウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース102の例に含まれる。
【0015】
ディスプレイ103は、各種の情報及び画像を表示する。具体的には、ディスプレイ103は、処理回路170から送られる情報及び画像のデータを表示用の電気信号に変換して出力する。例えば、ディスプレイ103は、液晶モニタやCRT(Cathode Ray Tube)モニタ、タッチパネル等によって実現される。なお、超音波診断装置100が備える出力装置としては、ディスプレイ103に限らず、例えば、スピーカーを備えていても良い。例えば、スピーカーは、装置本体104の処理状況を操作者に通知するために、ビープ音等の所定の音声を出力する。
【0016】
装置本体104は、超音波プローブ101が受信した反射波信号に基づいて超音波画像を生成する装置である。例えば、装置本体104は、超音波プローブ101が受信した2次元の反射波データに基づいて2次元の超音波画像を生成する。また、装置本体104は、超音波プローブ101が受信した3次元の反射波データに基づいて3次元の超音波画像を生成する。
【0017】
装置本体104は、図1に示すように、送受信回路110、バッファメモリ120、信号処理回路130、画像生成回路140、記憶回路150、NW(network)インタフェース160、及び処理回路170を有する。送受信回路110、バッファメモリ120、信号処理回路130、画像生成回路140、記憶回路150、NWインタフェース160、及び処理回路170は、互いに通信可能に接続される。
【0018】
送受信回路110は、パルス発生器、送信遅延部、パルサ等を有し、超音波プローブ101に駆動信号を供給する。パルス発生器は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。また、送信遅延部は、超音波プローブ101から発生される超音波をビーム状に集束し、かつ送信指向性を決定するために必要な圧電素子101bごとの遅延時間を、パルス発生器が発生する各レートパルスに対し与える。また、パルサは、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ101に駆動信号(駆動パルス)を印加する。すなわち、送信遅延部は、各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、アレイ部101aの面から送信される超音波の送信方向を任意に調整する。
【0019】
また、送受信回路110は、プリアンプ、A/D(Analog to Digital)変換器、直交検波回路等を有し、超音波プローブ101が受信した反射波信号に対して各種処理を行って反射波データを生成する。
【0020】
プリアンプは、反射波信号をチャンネルごとに増幅してゲイン調整(ゲイン補正)を行なう。A/D変換器は、ゲイン補正された反射波信号をA/D変換することでゲイン補正された反射波信号をデジタル信号に変換する。直交検波回路は、A/D変換された反射波信号をベースバンド帯域の同相信号(I信号、I:In-phase)と直交信号(Q信号、Q:Quadrature-phase)とに変換する。
【0021】
直交検波回路は、I信号およびQ信号を、反射波データとして出力する。以下、I信号及びQ信号を総称する場合、IQ信号という。また、IQ信号はA/D変換されたデジタルデータであるため、IQデータともいう。
【0022】
送受信回路110は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の半導体集積回路により実現される。また、送受信回路110は、取得部111、遅延補正部112、送信開口合成部113、及び適応型受信ビームフォーミング部114を備える。
【0023】
取得部111は、アレイ部101aに複数配列された圧電素子101bにより検出された反射波を示す反射波データである第1反射波データを取得する。さらに詳しくは、アレイ部101aは、複数のタイミングでそれぞれ異なる方向に超音波を送信する。また、アレイ部101aは、複数のタイミングでそれぞれ異なる方向に送信した超音波が反射した反射波を受信する。すなわち、取得部111は、送信方向が異なる超音波の送受信を時系列に実行されることで生成されたチャネル単位の反射波を示す第1反射波データを取得する。ここで、チャネル単位とは、例えば圧電素子101b単位である。しかし、チャネル単位とは、これに限定されず、例えば複数の圧電素子101bにより一つのチャネルを形成するようにしてもよい。
【0024】
遅延補正部112は、第1反射波データのそれぞれについて、伝播経路に応じた整相加算処理をチャネル単位で実行し、第2反射波データを生成する。すなわち、遅延補正部112は、圧電素子101bから送信された超音波が反射するまでの往路と、超音波が反射してから圧電素子101bまでの復路との伝播経路に応じた遅延を第1反射波データに付加する。遅延補正部112は、第1反射波データに遅延を付加することで、反射波に遅延が付加された反射波データである第2反射波データを生成する。
【0025】
送信開口合成部113は、第2反射波データを用いて複数の送信方向についての加算処理をチャネル単位で実行し、送信開口合成された第3反射波データを生成する。送信開口合成は、複数のタイミングでそれぞれ異なる方向に送信した超音波が反射された反射波をチャネル単位で合成することにより音場の均一性を向上させる処理である。
【0026】
ここで、アレイ部101aは、異なる複数の方向に超音波を送信する。そのため、同一の圧電素子101bにより検出された複数の反射波は、複数のタイミングでそれぞれ異なる方向に送信された超音波が反射されたものである。したがって、送信開口合成部113は、第2反射波データを用いて複数の送信方向についての加算処理をチャネル単位で実行することで送信開口合成を実現することができる。
【0027】
適応型受信ビームフォーミング部114は、送信開口合成部113による合成で生成された第3反射波データに対して適応型受信ビームフォーミングを実行する。適応型受信ビームフォーミング部114は、第3反射波データに対して適応型受信ビームフォーミングを実行することで第4反射波データを生成する。
【0028】
さらに詳しくは、適応型受信ビームフォーミングは、各圧電素子101bが受信した反射波に遅延を加える処理や、遅延を加えた反射波を加算する処理において、特定の演算を行うことにより画質を向上させる処理である。例えば、適応型受信ビームフォーミングは、受信した反射波の振幅や位相を補正して不要は成分を抑圧するMV(Minimum Variance)方式や、乗算により遅延ずれに対する応答を過敏にするDMAS(Delay Multiply and Sum)方式等がある。
【0029】
すなわち、適応型受信ビームフォーミング部114は、第3反射波データに対してMV方式の適応型受信ビームフォーミングを実行する。または、適応型受信ビームフォーミング部114は、第3反射波データに対してDMAS方式の適応型受信ビームフォーミングを実行する。そして、適応型受信ビームフォーミング部114は、第4反射波データを反射波データとしてバッファメモリ120に記憶させる。
【0030】
バッファメモリ120は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子によって実現される。バッファメモリ120は、送受信回路110から出力された反射波データを記憶する。なお、バッファメモリ120は、第1反射波データ、第2反射波データ、又は第3反射波データなどのテンポラリーデータを記憶してもよい。
【0031】
信号処理回路130は、バッファメモリ120に記憶された反射波データを取得する。また、信号処理回路130は、バッファメモリ120から取得した反射波データに対して、対数増幅、包絡線検波処理等を行なって、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。また、信号処理回路130は、バッファメモリ120から取得した反射波データから速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、速度、分散、パワー等の移動体情報を多点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。
【0032】
また、信号処理回路130は、2次元の反射波データ及び3次元の反射波データの両方について処理可能である。すなわち、信号処理回路130は、2次元の反射波データから2次元のBモードデータを生成し、3次元の反射波データから3次元のBモードデータを生成する。また、信号処理回路130は、2次元の反射波データから2次元のドプラデータを生成し、3次元の反射波データから3次元のドプラデータを生成する。
【0033】
画像生成回路140は、信号処理回路130が生成したデータから超音波画像を生成する。例えば、画像生成回路140は、信号処理回路130が生成した2次元のBモードデータから反射波の強度を輝度で表した2次元のBモード画像を生成する。
【0034】
また、例えば、画像生成回路140は、信号処理回路130が生成した2次元のドプラデータから、血流情報が映像化された2次元のドプラ画像を生成する。2次元のドプラ画像は、血流の平均速度を表す速度画像データ、血流の分散値を表す分散画像データ、血流のパワーを表すパワー画像データ、又は、これらを組み合わせた画像データである。また、画像生成回路140は、ドプラ画像として、血流の平均速度、分散値、パワー等の血流情報がカラーで表示されるカラードプラ画像を生成したり、1つの血流情報がグレースケールで表示されるドプラ画像を生成したりする。
【0035】
また、例えば、画像生成回路140は、信号処理回路130が生成した1走査線上のBモードデータの時系列データから、Mモード画像を生成することも可能である。また、画像生成回路140は、信号処理回路130が生成したドプラデータから、血流や組織の速度情報を時系列に沿ってプロットしたドプラ波形を生成することも可能である。
【0036】
ここで、画像生成回路140は、一般的には、超音波走査の走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示用の超音波画像を生成する。具体的には、画像生成回路140は、超音波プローブ101による超音波の走査形態に応じて座標変換を行なうことで、表示用の超音波画像を生成する。また、画像生成回路140は、スキャンコンバート以外に種々の画像処理として、例えば、スキャンコンバート後の複数の画像フレームを用いて、輝度の平均値画像を再生成する画像処理(平滑化処理)や、画像内で微分フィルタを用いる画像処理(エッジ強調処理)等を行なう。また、画像生成回路140は、超音波画像データに、種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディーマーク等を合成する。
【0037】
すなわち、Bモードデータ及びドプラデータは、スキャンコンバート処理前のデータであり、画像生成回路140が生成するデータは、スキャンコンバート処理後の表示用の画像データである。以下、スキャンコンバート処理前のデータ(Bモードデータ及びドプラデータ)を、「RAWデータ」ともいう。
【0038】
画像生成回路140は、RAWデータである2次元のBモードデータや2次元のドプラデータから、2次元の超音波画像である、2次元のBモード画像や2次元のドプラ画像を生成する。また、画像生成回路140は、例えば2次元のBモード画像上にカラードプラ画像を重畳させた重畳画像も生成することができる。
【0039】
記憶回路150は、各種のデータを記憶する。例えば、記憶回路150は、超音波送受信、画像処理及び表示処理を行なうための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見等)や、診断プロトコルや各種ボディーマーク等の各種データを記憶する。例えば、記憶回路150は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子や、ハードディスク(Hard Disk Drive:HDD)、光ディスク等によって実現される。
【0040】
また、記憶回路150が記憶するデータは、NWインタフェース160を経由して、外部装置へ転送することができる。なお、外部装置は、例えば、画像診断を行う医師が使用するPC(Personal Computer)やタブレット端末、画像を保管する画像保管装置、プリンター等である。
【0041】
NWインタフェース160は、装置本体104と外部装置との間で行われる通信を制御する。具体的には、NWインタフェース160は、外部装置から各種の情報を受信し、受信した情報を処理回路170に出力する。例えば、NWインタフェース160は、ネットワークカードやネットワークアダプタ、NIC(Network Interface Controller)等によって実現される。
【0042】
処理回路170は、超音波診断装置100の処理全体を制御する。具体的には、処理回路170は、入力インタフェース102を介して操作者から入力された各種設定要求や、記憶回路150から読み込んだ各種制御プログラム及び各種データに基づき、送受信回路110、信号処理回路130、及び画像生成回路140の処理を制御する。また、処理回路170は、超音波画像の表示を制御する。
【0043】
また、処理回路170は、表示制御機能171を実行する。ここで、例えば、処理回路170の構成要素である表示制御機能171の各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路150に記憶されている。処理回路170は、プロセッサである。例えば、処理回路170は、プログラムを記憶回路150から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路170は、図1の処理回路170内に示された各機能を有することとなる。なお、図1においては単一のプロセッサにて、表示制御機能171にて行われる処理機能が実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路170を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。また、図1においては単一の記憶回路150が各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明したが、複数の記憶回路を分散して配置して、処理回路170は個別の記憶回路から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。
【0044】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphical Processing Unit)或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路150に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路150にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
【0045】
表示制御機能171は、画像生成回路140により生成された超音波画像をディスプレイ103などに表示する。すなわち、表示制御機能171は、適応型受信ビームフォーミング部114により生成された第4反射波データに基づいた超音波画像をディスプレイ103などに表示する。表示制御機能171は、表示制御部の一例である。
【0046】
ここで、適応型受信ビームフォーミングについて説明する。図2は、受信ビームフォーミングの一例を示す図である。アレイ部101aの圧電素子101bは、圧電素子101bから送信された超音波を反射する反射音源Rにより反射された反射波を受信する。反射波は、反射音源Rを中心に同心円状に広がる。そのため、配列されている各圧電素子101bが反射波を受信するタイミングは異なる。そこで、超音波診断装置100は、タイミングを合わせるために反射波に遅延を付加する。また、超音波診断装置100は、遅延を付加した反射波を合成することで、強調された反射音源Rからの反射波を取得する。これが、整相加算やDAS(Delay-and-Sum)と呼ばれる、受信ビームフォーミングにおける基本的な処理方法である。超音波診断装置100は、遅延を付加する際や反射波を合成する際に、適応型受信ビームフォーミングの方式に応じた演算を行うことで適応型受信ビームフォーミングを実行する。本発明で用いる適応型受信ビームフォーミングは、整相遅延処理に対し、補正遅延を加える、遅延後信号から重みを算出し適用する等の追加・修正が施された処理を指す。適応型ビームフォーミングには多くの先行研究例があり、一例として、Minimum Variance法、Coherence Factor Imaging法、DMAS(Delay Multiply and Sum)法、などが挙げられる。
【0047】
次に、送信開口合成について説明する。図3は、送信開口合成の送信の一例を示す図である。図4は、送信開口合成の受信の一例を示す図である。図3に示すように、アレイ部101aは、超音波のそれぞれの送信を示す各送信番号において、所定の時間間隔を空けて複数の方向に超音波を送信する。送信用の開口部の大きさは有限であるため、形成される超音波の指向性は空間的に広がりを持つ。そのため、超音波は、異なる方向に送信された場合であっても、同一の反射音源Rで反射することがある。この場合、アレイ部101aは、それぞれ異なる方向に送信された複数の超音波が反射されることで、同一方向から向かってくる反射波を同一の圧電素子101bが受信する。
【0048】
図4に示すように、アレイ部101aは、それぞれ異なる方向に送信された複数の超音波のそれぞれの反射波を用いて整相加算を行うことで、所定の領域からの反射信号を得る。図4では、一例として、異なる遅延量を与えることで、同一の反射波列から、異なる3方向の反射信号を生成している。
【0049】
超音波診断装置100は、それぞれ異なる方向に送信された複数の超音波のそれぞれの反射波のうち、同一の圧電素子101bが受信した反射波を異なる送信間で整相合成する。例えば、図4中の点線枠で示すように、超音波診断装置100は、送信番号#1、送信番号#2、及び送信番号#3のそれぞれの反射波を整相加算して送信間で共通する領域の反射信号を得て、それら反射信号を送信間でさらに加算する。これにより、超音波診断装置100は、音場の均一性および信号対雑音比を向上させる。
【0050】
次に、適応型受信ビームフォーミングを送信開口合成に適用する方法について説明する。
【0051】
図5は、適応型受信ビームフォーミングを送信開口合成に適用する処理の一例を示すフローチャートである。なお、図5に示すフローチャートでは、送信番号#0から送信番号#2まで超音波を送信した場合について説明しているが、何れの送信番号までを対象にするかは任意である。
【0052】
超音波診断装置は、送信番号#0により送信した超音波に対して、超音波プローブが有する複数の圧電素子のそれぞれが受信した反射波を示す反射波データを取得する(ステップS11)。
【0053】
超音波診断装置は、圧電素子ごとの反射波データに遅延を付加する補正を実行する(ステップS12)。
【0054】
超音波診断装置は、遅延が付加された反射波データに対して、適応型受信ビームフォーミングを実行する(ステップS13)。
【0055】
超音波診断装置は、送信番号#1により送信した超音波に対応する反射波データについて、ステップS11からステップS13までと同様の処理をステップS14からステップS16で実行する。
【0056】
超音波診断装置は、送信番号#2により送信した超音波に対応する反射波データについて、ステップS11からステップS13までと同様の処理をステップS17からステップS19で実行する。
【0057】
超音波診断装置は、超音波の送信間で反射波データを加算処理により合成する(ステップS15)。すなわち、超音波診断装置は、送信開口合成を実行する。
【0058】
以上により、超音波診断装置は、適応型受信ビームフォーミングを送信開口合成に適用することができる。
【0059】
しかしながら、図5に示す処理の場合、超音波診断装置は、適応型受信ビームフォーミングを超音波の送信ごとに実行しているため処理負担が大きい。また、超音波診断装置は、医療従事者が超音波画像を見ながら操作されるため、リアルタイム性が求められる。超音波診断装置のリアルタイム性を最大化するには、撮像領域をスキャンするために必要な超音波往復伝搬時間に相当する時間間隔で画像を更新させることが望ましい。ところが、適応型受信ビームフォーミングを超音波の送信ごとに実行し、その増大した処理時間が撮像領域の超音波スキャンに要する時間を上回った場合、超音波診断装置は、画像遅れを防ぐために超音波画像の更新レートを低下させる等の対策を必要とし、結果としてリアルタイム性が劣化してしまう。
【0060】
そこで、超音波診断装置100は、処理負担を抑制しつつ、適応型受信ビームフォーミングを送信開口合成に適用する適用処理を実行する。
【0061】
図6は、本実施形態に係る超音波診断装置100が実行する適用処理の一例を示すフローチャートである。適用処理は、適応型受信ビームフォーミングを送信開口合成に適用した処理である。なお、図6に示す適用処理では、送信番号#0から送信番号#2まで超音波を送信した場合について説明しているが、何れの送信番号までを対象にするかは任意である。
【0062】
取得部111は、送信番号#0により送信した超音波に対して、超音波プローブ101が有する複数の圧電素子101bのそれぞれが受信した反射波を示す反射波データを取得する(ステップS31)。すなわち、取得部111は、第1超音波データを取得する。
【0063】
遅延補正部112は、各圧電素子101bの反射波データに遅延を付加する補正を実行する(ステップS32)。さらに詳しくは、遅延補正部112は、圧電素子101bから反射音源Rまでの往路と、反射音源Rから圧電素子101bまでの復路との伝播経路に応じた遅延を付加する。すなわち、遅延補正部112は、第2超音波データを生成する。
【0064】
超音波診断装置100は、送信番号#1により送信した超音波に対応する反射波データについて、ステップS31及びステップS32と同様の処理をステップS33及びステップS34で実行する。
【0065】
超音波診断装置100は、送信番号#2により送信した超音波に対応する反射波データについて、ステップS31及びステップS32と同様の処理をステップS35及びステップS36で実行する。
【0066】
送信開口合成部113は、超音波の送信間で各圧電素子101bの反射波データを加算処理により合成する(ステップS37)。すなわち、送信開口合成部113は、複数の第2超音波データを加算処理により合成する送信開口合成を実行する。これにより、送信開口合成部113は、第3超音波データを生成する。
【0067】
適応型受信ビームフォーミング部114は、合成された反射波データに対して、適応型受信ビームフォーミングを実行する(ステップS38)。すなわち、適応型受信ビームフォーミング部114は、第3超音波データに対して、MV方式やDMAS方式の適応型受信ビームフォーミングを実行することで第4超音波データを生成する。
【0068】
以上により、超音波診断装置100は、適用処理を終了する。図6に示す適用処理は、超音波の送信間で反射波データを合成した後に、適応型受信ビームフォーミングを実行する。したがって、超音波診断装置100は、超音波の送信ごとに適応型受信ビームフォーミングを実行する必要が無いため、処理負担を抑制することができる。
【0069】
以上のように、本実施形態に係る超音波診断装置100は、異なる複数の方向に超音波を送信し、複数の反射波の受信した場合に、複数の反射波のそれぞれの複数の反射波データを送信開口合成により合成後、合成した反射波データに対して適応型受信ビームフォーミングを実行する。これにより、超音波診断装置100は、超音波の送信ごとに適応型受信ビームフォーミングを実行する場合と比べて、処理負担を抑制することができる。したがって、本実施形態に係る超音波診断装置100は、処理負担を抑制しつつ適応型受信ビームフォーミングを送信開口合成に適用することができる。
【0070】
さらに、図5に示す処理では、超音波の送信ごとに適応型受信ビームフォーミングを実行しているため、個々の送信に応じた最適化が行われる。言い換えると、図5に示す処理において、適応型受信ビームフォーミングは、複数の超音波の送信ごとに最適化を行っていない。一方、超音波診断装置100は、送信開口合成を実行した後に適応型受信ビームフォーミングを実行している。すなわち、超音波診断装置100は、複数の超音波の送信に対して最適化を行っている。したがって、超音波診断装置100は、図5に示す適応型受信ビームフォーミングの後に送信開口合成を実行する処理により生成された超音波画像よりも、画質を向上させることができる。
【0071】
(変形例1)
変形例1に係る超音波診断装置100aは、各圧電素子101bの受信信号位相の一致度を示すコヒーレンシーを評価し画質を向上させる、いわゆるCoherence Factor Imaging法への応用例を示す。
【0072】
図7は、変形例1に係る超音波診断装置100aの構成の一例を示すブロック図である。送受信回路110aは、コヒーレンシー評価部115を備える。
【0073】
コヒーレンシー評価部115は、位相の一致度を示すコヒーレンシーの評価値を算出する。さらに詳しくは、コヒーレンシー評価部115は、送信開口合成部113により合成された複数の第2反射波データに対するコヒーレンシーの評価値を算出する。コヒーレンシー評価部115は、算出部の一例である。
【0074】
ここで、反射波データの位相は、送信した超音波の反射地点から超音波を送信した焦点までの距離が近づくに従い小さくなる。すなわち、コヒーレンシーの評価値は、送信した超音波の反射地点から超音波を送信した焦点までの距離が近づくに従い小さくなる。したがって、焦点から遠い位置で反射した反射波の反射波データは、重みが小さくなる。よって、コヒーレンシー評価部115は、コヒーレンシーの評価値に基づいた値を、適応型受信ビームフォーミングの実行により生成された第4反射波データに乗算する。例えば、コヒーレンシー評価部115は、コヒーレンシーの評価値を、適応型受信ビームフォーミングの実行により生成された第4反射波データに乗算する。または、コヒーレンシー評価部115は、コヒーレンシーの評価値に限らず、評価値に応じた重みなどを第4反射波データに乗算する。そして、コヒーレンシー評価部115は、適応型受信ビームフォーミングを実行後の第4反射波データに、コヒーレンシーの評価値を乗算することで画質を向上させることができる。
【0075】
図8は、変形例1に係る超音波診断装置100aが実行する適用処理の一例を示すフローチャートである。なお、図8に示す適用処理では、送信番号#0から送信番号#2まで超音波を送信した場合について説明しているが、何れの送信番号までを対象にするかは任意である。
【0076】
取得部111は、送信番号#1により送信した超音波に対して、超音波プローブ101が有する複数の圧電素子101bのそれぞれが受信した反射波を示す反射波データを取得する(ステップS51)。すなわち、取得部111は、第1超音波データを取得する。
【0077】
遅延補正部112は、各圧電素子101bの反射波データに遅延を付加する補正を実行する(ステップS52)。さらに詳しくは、遅延補正部112は、圧電素子101bから反射音源Rまでの往路と、反射音源Rから圧電素子101bまでの復路との伝播経路に応じた遅延を付加する。すなわち、遅延補正部112は、第2超音波データを生成する。
【0078】
超音波診断装置100aは、送信番号#1により送信した超音波に対応する反射波データについて、ステップS51及びステップS52と同様の処理をステップS53及びステップS54で実行する。
【0079】
超音波診断装置100aは、送信番号#2により送信した超音波に対応する反射波データについて、ステップS51及びステップS52と同様の処理をステップS55及びステップS56で実行する。
【0080】
送信開口合成部113は、超音波の送信間で反射波データを加算処理により合成する(ステップS57)。すなわち、送信開口合成部113は、複数の第2超音波データを加算処理により合成する送信開口合成を実行する。これにより、送信開口合成部113は、第3超音波データを生成する。
【0081】
コヒーレンシー評価部115は、ステップS57で加算した送信間の反射波データにおいて、反射波データの位相の一致度を示すコヒーレンシーの評価値を算出する(ステップS58)。すなわち、コヒーレンシー評価部115は、複数の第2反射波データに対するコヒーレンシーの評価値を算出する。
【0082】
適応型受信ビームフォーミング部114は、送信開口合成により合成された第3反射波データに対して、適応型受信ビームフォーミングを実行する(ステップS59)。すなわち、適応型受信ビームフォーミング部114は、第3超音波データに対して、MV方式やMDAS方式の適応型受信ビームフォーミングを実行することで第4超音波データを生成する。
【0083】
コヒーレンシー評価部115は、適応型受信ビームフォーミングを実行後の反射波データにコヒーレンシーの評価値を乗算する(ステップS60)。すなわち、コヒーレンシー評価部115は、第4超音波データにコヒーレンシーの評価値を乗算することで第5超音波データを生成する。そして、コヒーレンシー評価部115は、第5超音波データを超音波データとしてバッファメモリ120に記憶させる。
【0084】
以上により、変形例1に係る超音波診断装置100aは、適用処理を終了する。なお、本変形例ではコヒーレンシーの評価に加えて適応型受信ビームフォーミングを実行する構成としているが、適応型受信ビームフォーミングを用いるか、すなわち複数の第2反射波データを加算する従来のビームフォーミングを用いるか、は任意である。
【0085】
以上のように、変形例1に係る超音波診断装置100aは、第2反射波データから複数の第2超音波データからコヒーレンシーの評価値を算出する。そして、超音波診断装置100aは、評価値に応じた値を第4超音波データに乗算する。ここで、コヒーレンシーの評価値は、対象となった反射波データのもとになった超音波が、焦点から離れた位置に送信されるに従い下がる。したがって、超音波診断装置100aは、評価値に応じた値を第4超音波データに乗算することで超音波画像の画質を向上させることができる。
【0086】
(変形例2)
変形例2は、生体内の超音波伝搬の非線形現象により生じた高調波成分を映像化する組織ハーモニックイメージング(THI:Tissue Harmonic Imaging)に適用する。
【0087】
図9は、変形例2に係る超音波診断装置100bの構成の一例を示すブロック図である。送受信回路110bは、高調波成分抽出部116を備える。
【0088】
送受信回路110bは、送信ビームフォーミングにおいて、位相の異なる超音波を超音波プローブ101に送信させる。例えば、送受信回路110bは、超音波を集束した集束波を送信する送信ビームフォーミングにおいて、超音波を送信するごとに位相を180度変調する。また、送受信回路110bは、180度変調した超音波を送信する。そして、送受信回路110bは、送信ビームフォーミングにおいて、位相変調と超音波の送信とを繰り返し実行する。なお、送受信回路110bは、位相変調を180度に限らず、他の角度だけ位相を変調してもよい。
【0089】
さらに、送受信回路110bは、振幅を変調して送信してもよい。
【0090】
高調波成分抽出部116は、反射波データが示す反射波信号から高調波成分を抽出する。例えば、高調波成分抽出部116は、取得部111により取得された第1反射波データから高調波成分を抽出する。高調波成分抽出部116は、抽出部の一例である。
【0091】
さらに詳しくは、高調波成分抽出部116は、位相及び送信方向が異なる超音波の送受信を時系列に実行されることで生成された複数の第1反射波データを加算することにより、偶数次の高調波成分を抽出する。さらに詳しくは、高調波成分抽出部116は、超音波の送受信を時系列に実行されることで生成された第1反射波データと、この超音波から位相変調された超音波の送受信を時系列に実行されることで生成された第1反射波データと、に基づいて高調波成分を抽出する。
【0092】
例えば、高調波成分抽出部116は、0度の位相で送信した超音波に対応した反射波の第1反射波データと、180度位相変調を行い送信した超音波に対応した反射波の第1反射波データとに基づいて高調波成分を抽出する。すなわち、高調波成分抽出部116は、位相の異なる第1反射波データを加算することにより偶数次の高調波成分を抽出する。高調波成分抽出部116は、偶数次の高調波成分を抽出した場合に、反射波から抽出した高調波成分を示す反射波データである第5反射波データを生成する。
【0093】
遅延補正部112bは、第5反射波データに遅延を付加する補正を実行する。すなわち、遅延補正部112bは、高調波成分抽出部116により抽出された反射波の高調波成分に対して整相加算処理を実行する。さらに詳しくは、遅延補正部112bは、圧電素子101bから反射音源Rまでの往路と、反射音源Rから圧電素子101bまでの復路との伝播経路に応じた遅延を第5反射波データに付加することで、第2超音波データを生成する。
【0094】
図10は、変形例2に係る超音波診断装置100bが実行する適用処理の一例を示すフローチャートである。なお、図10に示す適用処理では、送信番号#0から送信番号#5まで超音波を送信した場合について説明しているが、何れの送信番号までを対象にするかは任意である。
【0095】
送信番号#0において、超音波プローブ101は、送信ビームフォーミングにより超音波を集束して送信する。取得部111は、送信番号#0により送信した超音波に対して、超音波プローブ101が有する複数の圧電素子101bのそれぞれが受信した反射波を示す反射波データを取得する(ステップS71)。すなわち、取得部111は、第1超音波データを取得する。
【0096】
送信番号#1において、超音波プローブ101は、送信番号#0から位相を180度変調した上で、送信ビームフォーミングにより超音波を集束して送信する。取得部111は、送信番号#1により送信した超音波に対して、超音波プローブ101が有する複数の圧電素子101bのそれぞれが受信した反射波を示す反射波データを取得する(ステップS72)。すなわち、取得部111は、第1超音波データを取得する。
【0097】
高調波成分抽出部116は、第1反射波データと、この第1反射波データに対応する超音波から180度位相変調された超音波に対する反射波を示す第1反射波データと、を加算することにより高調波成分を抽出する(ステップS73)。すなわち、高調波成分抽出部116は、ステップS71で取得した第1反射波データと、ステップS72で取得した第1反射波データと、を加算することにより高調波成分を抽出する。これにより、高調波成分抽出部116は、反射波から抽出した高調波成分を示す第5反射波データを生成する。
【0098】
遅延補正部112bは、抽出された高調波成分の反射波データに遅延を付加する補正を実行する(ステップS74)。さらに詳しくは、遅延補正部112bは、圧電素子101bから反射音源Rまでの往路と、反射音源Rから圧電素子101bまでの復路との伝播経路に応じた遅延を付加する。すなわち、遅延補正部112bは、第5反射波データに遅延を付加することで第2超音波データを生成する。
【0099】
また、超音波診断装置100bは、ステップS75からステップS78において、ステップS71からステップS74と同様の処理を実行する。
【0100】
また、超音波診断装置100bは、ステップS79からステップS82において、ステップS71からステップS74と同様の処理を実行する。
【0101】
送信開口合成部113は、超音波の送信間で反射波データを加算処理により合成する(ステップS83)。すなわち、送信開口合成部113は、複数の第2超音波データを加算処理により合成する送信開口合成を実行する。これにより、送信開口合成部113は、第3超音波データを生成する。
【0102】
適応型受信ビームフォーミング部114は、合成された反射波データに対して、適応型受信ビームフォーミングを実行する(ステップS84)。例えば、適応型受信ビームフォーミング部114は、第3超音波データに対して、DMAS方式やMV方式の適応型受信ビームフォーミングを実行することで第4超音波データを生成する。
【0103】
以上により、超音波診断装置100bは、適用処理を終了する。
【0104】
以上のように、変形例2に係る超音波診断装置100bは、第1反射波データから抽出した高調波成分に対して、送信開口合成と適応型受信ビームフォーミングとを実行する。このように、超音波診断装置100bは、生体内の超音波伝搬の非線形現象により生じた高調波成分を映像化する組織ハーモニックイメージングに対して、送信開口合成と適応型受信ビームフォーミングとの実行を適用することができる。
【0105】
(変形例3)
変形例3は、超音波プローブ101は、超音波を平面波または球面拡散波により送信する。そして、超音波診断装置100cは、平面波または球面拡散波により送信した超音波の反射波を用いて、適応型受信ビームフォーミングを送信開口合成に適用する。
【0106】
図11は、変形例3に係る超音波診断装置100cの構成の一例を示すブロック図である。
【0107】
さらに詳しくは、超音波プローブ101が有するアレイ部101aの圧電素子101bは、偏光角を変更しながら、超音波を平面波または球面拡散波により送信する。例えば、超音波プローブ101は、偏光角を15度ずつ変えながら、超音波を平面波または球面拡散波により送信する。言い換えると、送受信回路110cは、偏光角を15度ずつ変えながら、超音波を平面波または球面拡散波を超音波プローブ101に送信させる。
【0108】
また、超音波プローブ101が有するアレイ部101aの圧電素子101bは、平面波または球面拡散波により送信した超音波に対応する反射波を受信する。すなわち、取得部111は、平面波又は球面拡散波である超音波に対応する反射波を示す第1反射波データを取得する。
【0109】
図12は、変形例3に係る超音波診断装置100cが実行する適用処理の一例を示すフローチャートである。なお、図12に示す適用処理では、送信番号#0から送信番号#2まで超音波を送信した場合について説明しているが、何れの送信番号までを対象にするかは任意である。
【0110】
超音波プローブ101は、送信番号#0において、平面波により偏向角-15度の超音波を送信する。取得部111は、送信番号#0により送信した超音波に対して、超音波プローブ101が有する複数の圧電素子101bのそれぞれが受信した反射波を示す反射波データを取得する(ステップS91)。すなわち、取得部111は、第1超音波データを取得する。
【0111】
遅延補正部112は、各圧電素子101bの反射波データに遅延を付加する補正を実行する(ステップS92)。さらに詳しくは、遅延補正部112は、圧電素子101bから反射音源Rまでの往路と、反射音源Rから圧電素子101bまでの復路との伝播経路に応じた遅延を付加する。すなわち、遅延補正部112は、第2超音波データを生成する。
【0112】
超音波プローブ101は、送信番号#1において、平面波により偏向角0度の超音波を送信する。超音波診断装置100cは、ステップS91及びステップS92と同様の処理をステップS93及びステップS94で実行する。
【0113】
超音波プローブ101は、送信番号#2において、平面波により偏向角0度の超音波を送信する。超音波診断装置100cは、ステップS91及びステップS92と同様の処理をステップS95及びステップS96で実行する。
【0114】
送信開口合成部113は、超音波の送信間で反射波データを加算処理により合成する(ステップS97)。すなわち、送信開口合成部113は、複数の第2超音波データを加算処理により合成する送信開口合成を実行する。これにより、送信開口合成部113は、第3超音波データを生成する。
【0115】
適応型受信ビームフォーミング部114は、合成された反射波データに対して、適応型受信ビームフォーミングを実行する(ステップS98)。すなわち、適応型受信ビームフォーミング部114は、第3超音波データに対して、MV方式やMDAS方式の適応型受信ビームフォーミングを実行することで第4超音波データを生成する。
【0116】
以上により、超音波診断装置100cは、適用処理を終了する。
【0117】
以上のように、変形例3に係る超音波診断装置100cは、平面波または球面拡散波により送信した超音波に対応した反射波を示す反射波データに対して送信開口合成と適応型受信ビームフォーミングとの実行を適用することができる。
【0118】
(変形例4)
本実施形態では、送受信回路110、110a、110b、110cが取得部111、遅延補正部112、112b、送信開口合成部113、適応型受信ビームフォーミング部114、及びコヒーレンシー評価部115を備えると説明した。すなわち、取得部111、遅延補正部112、112b、送信開口合成部113、適応型受信ビームフォーミング部114、及びコヒーレンシー評価部115は、ハードウェアにより実現されると説明した。しかしながら、取得部111、遅延補正部112、112b、送信開口合成部113、適応型受信ビームフォーミング部114、及びコヒーレンシー評価部115の全部又は一部は、プログラムにより実行されてもよい。すなわち、処理回路170は、プログラムを実行することで取得部111、遅延補正部112、112b、送信開口合成部113、適応型受信ビームフォーミング部114、及びコヒーレンシー評価部115の全部又は一部の機能を実現してもよい。
【0119】
(変形例5)
本実施形態では、装置本体104が、取得部111、遅延補正部112、112b、送信開口合成部113、適応型受信ビームフォーミング部114、及びコヒーレンシー評価部115を備えていると説明した。すなわち、装置本体104が、超音波受信装置を備えていると説明した。しかしながら、取得部111、遅延補正部112、112b、送信開口合成部113、適応型受信ビームフォーミング部114、及びコヒーレンシー評価部115の全部又は一部は、装置本体104に限らず、超音波プローブ101が備えていてもよい。すなわち、超音波プローブ101が、超音波受信装置を備えていてもよい。
【0120】
以上説明した少なくとも1つの実施形態等によれば、処理負担を抑制しつつ適応型受信ビームフォーミングを送信開口合成に適用することができる。
【0121】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0122】
以上の実施形態に関し、発明の一側面および選択的な特徴として以下の付記を開示する。
【0123】
(付記1)
送信方向が異なる超音波の送受信を時系列に実行されることで生成されたチャネル単位の第1反射波データを取得する取得部と、
前記第1反射波データのそれぞれについて、伝播経路に応じた整相加算処理をチャネル単位で実行し、第2反射波データを生成する整相加算処理部と、
前記第2反射波データを用いて複数の送信方向についての加算処理をチャネル単位で実行し、送信開口合成された第3反射波データを生成する送信開口合成部と、
前記第3反射波データに対して適応型受信ビームフォーミングを実行する適応型受信ビームフォーミング部と、
を備える超音波受信装置。
【0124】
(付記2)
前記送信開口合成部により合成された複数の前記第2反射波データに対するコヒーレンシーの評価値を算出する算出部を更に備えてもよい。
【0125】
(付記3)
前記算出部は、前記評価値に基づいた値を、前記適応型受信ビームフォーミングの実行により生成された第4反射波データに乗算してもよい。
【0126】
(付記4)
前記第1反射波データから高調波成分を抽出する抽出部を更に備えてもよい。
前記整相加算処理部は、前記抽出部により抽出された前記高調波成分に対して前記整相加算処理を実行してもよい。
【0127】
(付記5)
前記抽出部は、超音波の送受信を時系列に実行されることで生成された前記第1反射波データと、当該超音波から位相変調された超音波の送受信を時系列に実行されることで生成された第1反射波データと、に基づいて高調波成分を抽出してもよい。
【0128】
(付記6)
前記取得部は、平面波又は球面拡散波である超音波に対応する前記第1反射波データを取得してもよい。
【0129】
(付記7)
前記適応型受信ビームフォーミング部は、Minimum Variance方式の前記適応型受信ビームフォーミングを実行してもよい。
【0130】
(付記8)
前記適応型受信ビームフォーミング部は、Delay Multiply and Sum方式の前記適応型受信ビームフォーミングを実行してもよい。
【0131】
(付記9)
前記適応型受信ビームフォーミングを実行することにより生成された第4反射波データに基づいた超音波画像を表示する表示制御部を更に備えてもよい。
【0132】
(付記10)
送信方向が異なる超音波の送受信を時系列に実行されることで生成されたチャネル単位の第1反射波データを取得し、
前記第1反射波データのそれぞれについて、伝播経路に応じた整相加算処理をチャネル単位で実行し、第2反射波データを生成し、
前記第2反射波データを用いて複数の送信方向についての加算処理をチャネル単位で実行し、送信開口合成された第3反射波データを生成し、
前記第3反射波データに対して適応型受信ビームフォーミングを実行する、
ことを含む超音波受信方法。
【符号の説明】
【0133】
100、100a、100b、100c 超音波診断装置
101 超音波プローブ
101a アレイ部
101b 圧電素子
102 入力インタフェース
103 ディスプレイ
104 装置本体
110、110a、110b、110c 送受信回路
111 取得部
112、112b 遅延補正部
113 送信開口合成部
114 適応型受信ビームフォーミング部
115 コヒーレンシー評価部
116 高調波成分抽出部
120 バッファメモリ
130 信号処理回路
140 画像生成回路
150 記憶回路
160 NWインタフェース
170 処理回路
171 表示制御機能
P 被検体
R 反射音源
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