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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068540
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】車両の上部車体構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/04 20060101AFI20240513BHJP
   B62D 25/06 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
B62D25/04 C
B62D25/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179071
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】森本 誠
(72)【発明者】
【氏名】清下 大介
(72)【発明者】
【氏名】高 爽
(72)【発明者】
【氏名】谷本 晃一
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB55
3D203BB59
3D203BB62
3D203BB63
3D203BB64
3D203CA25
3D203CA45
3D203CA58
3D203CA62
(57)【要約】
【課題】質量、コストを極力増大させることがなく、側突時にセンターピラーレインの車幅方向内側への侵入量を抑制すること。
【解決手段】センターピラーレイン33と、該センターピラーレイン33の上端部343が固定されるルーフレール11と、を備え、ルーフレール11は、車幅方向に突出して車両前後方向に連続して延びる膨出部15aを有し、膨出部15aは、上端部343が固定される固定部37rと、センターピラーレイン33から車両前後方向に離間する末端部38と、を備えた。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センターピラーレインと、該センターピラーレインの上端部が固定されるルーフレールと、を備え、
前記ルーフレールは、車幅方向に突出して車両前後方向に延びる膨出部を有し、
前記膨出部は、前記上端部が固定される固定部と、前記センターピラーレインから車両前後方向に離間する末端部と、を有することを特徴とする
車両の上部車体構造。
【請求項2】
前記膨出部は前記ルーフレールの側面部に設けられた
請求項1に記載の車両の上部車体構造。
【請求項3】
前記センターピラーレインから後方へ延びる前記膨出部を第1膨出部とし、
前記第1膨出部の前記末端部に対して後方において隣接する位置に、車幅方向に突出する第2膨出部が設けられた
請求項1又は請求項2に記載の車両の上部車体構造。
【請求項4】
前記ルーフレールの上面部又は下面部の車両前後方向における、前記第1膨出部と前記第2膨出部との間と同じ位置に、車幅方向に延びるビード部が設けられた
請求項3に記載の車両の上部車体構造。
【請求項5】
前記ビード部は、前記ルーフレールの前記上面部から上方へ突出する上面ビード部とし、
前記ルーフレールの前記下面部には、車幅方向に延びるとともに下方へ突出する一対の下面ビード部とを有し、
前記下面ビード部は、前記下面部の車両前後方向における、前記第1膨出部と前記第2膨出部との間を隔てた各位置に互いに隣接して設けられた
請求項4に記載の車両の上部車体構造。
【請求項6】
前記ルーフレールから車幅方向内側へ延びるルーフレインを備え、
前記センターピラーレインを前縁辺とするとともに前記ルーフレールを上縁辺とするドア開口部が形成され、
前記ドア開口部における前記センターピラーレインと前記ルーフレールとの角部は、車両側面視で弧形状に形成され、
前記固定部の後方に位置する前記末端部は、
前記角部の後端位置より後方に位置し、且つ、前記センターピラーレインに対して後側で最も近接する前記ルーフレインの前端位置より前方に位置することを特徴とする
請求項1に記載の車両の上部車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、センターピラーと、該センターピラーの上端部が固定されるルーフレールとを備えた車両の上部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車幅方向の両端部において車両前後方向に延びる左右一対のルーフレールと、左右一対のルーフレールを車幅方向に連結するルーフレインとを備えた車両の上部において、ルーフレールに上端部が接合されて下方へ延びるセンターピラーに対して側突荷重が入力時に、該側突荷重をルーフレインを介して車幅方向の反対側へ伝達する構造が知られている。
【0003】
ところで、センターピラーに側突荷重の入力時に、上述したように車幅方向の反対側への荷重分散を効率よく行う必要があるが、センターピラーとルーフレールとの結合部は一般に強度が低くなり易く、またセンターピラーとルーフレールとの剛性差によって応力が集中し易い。
【0004】
このため、センターピラーに対して側突荷重が入力時に、結合部においてルーフレールが変形するおそれがあり、その場合、該変形したルーフレールと共に車室内に侵入するセンターピラーの侵入量が増大するおそれがある。
【0005】
その対策として例えば、ルーフレインの板厚を厚くすることが考えられるが、質量、コストの増大を招く。例えば、車幅方向外側からの衝撃荷重の入力に対して前記結合部を補強するものとして特許文献1が提案されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術は、結合部においてセンターピラーとルーフレールとの夫々に複雑なビードを複数設けたり、ルーフレインからセンターピラーまで延びる特殊なガセットを設ける等して結合部を補強するものであるため、質量およびコストを抑制するという課題について改善の余地がある。
【0007】
すなわち、特許文献1には、車幅方向外側からの衝撃荷重の入力に対して、結合部においてルーフレールを折れない程度まで頑強に補強する技術は開示されているが、ルーフレールの折れ変形位置をコントロールすることで、結果としてセンターピラーレイン上端部の車室側への変位量を抑制するという技術思想について何ら着目されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2019-89488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、質量、コストを極力増大させることがなく、側突時にセンターピラーレインの車幅方向内側への侵入量を抑制できる車両の上部車体構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の車両の上部車体構造は、センターピラーレインと、該センターピラーレインの上端部が固定されるルーフレールと、を備え、前記ルーフレールは、車幅方向に突出して車両前後方向に延びる膨出部を有し、前記膨出部は、前記上端部が固定される固定部と、前記センターピラーレインから車両前後方向に離間する末端部と、を有することを特徴とする。
【0011】
前記構成によれば、側突時に、前記センターピラーレインから前記膨出部に側突荷重が入力され、前記センターピラーレインから車両前後方向に離間する前記末端部に応力が集中し、該末端部において前記ルーフレールの車幅方向内側への変形を生じさせることができる。
【0012】
すなわち、前記固定部から車両前後方向にオフセットした前記末端部において前記ルーフレールが変形するため、前記固定部において、前記センターピラーレインとの剛性差で前記ルーフレールが変形する場合と比較して、前記センターピラーレインの前記上端部の車幅方向内側への変位量を抑制できる。
【0013】
この発明の態様として、前記膨出部は前記ルーフレールの側面部に設けられた構成としてもよい。
前記構成によれば、前記センターピラーレインから前記ルーフレールへ入力される車幅方向内方への荷重を効率よく受け止めることができる。
【0014】
この発明の態様として、前記センターピラーレインから後方へ延びる前記膨出部を第1膨出部とし、前記第1膨出部の前記末端部に対して後方において隣接する位置に、車幅方向に突出する第2膨出部が設けられた構成としてもよい。
【0015】
前記構成によれば、前記ルーフレールの前記末端部において応力集中を誘発することができる。
従って、前記ルーフレールを前記末端部において確実に変形させることができるため、前記ルーフレールの変形位置をより正確にコントロールして変位量を確実に抑制できる。
【0016】
この発明の態様として、前記ルーフレールの上面部又は下面部の車両前後方向における、前記第1膨出部と前記第2膨出部との間と同じ位置に、車幅方向に延びるビード部が設けられた構成としてもよい。
【0017】
前記構成によれば、前記第1膨出部と前記第2膨出部との間において、応力集中を誘発することができる。
従って、前記末端部において確実に折れ変形させることができるため、前記ルーフレールの変形位置をより正確にコントロールして変位量を確実に抑制できる。
【0018】
この発明の態様として、前記ビード部は、前記ルーフレールの前記上面部から上方へ突出する上面ビード部とし、前記ルーフレールの前記下面部には、車幅方向に延びるとともに下方へ突出する一対の下面ビード部とを有し、前記下面ビード部は、前記下面部の車両前後方向における、前記第1膨出部と前記第2膨出部との間を隔てた各位置に互いに隣接して設けられた構成としてもよい。
【0019】
前記構成によれば、前記第1膨出部と前記第2膨出部との間に応力が集中した際に、該間を起点として前記ルーフレールが上方へ突き出すような折れ変形を誘発することができる。
【0020】
この発明の態様として、前記ルーフレールから車幅方向内側へ延びるルーフレインを備え、前記センターピラーレインを前縁辺とするとともに前記ルーフレールを上縁辺とするドア開口部が形成され、前記ドア開口部における前記センターピラーレインと前記ルーフレールとの角部は車両側面視で弧形状に形成され、前記固定部の後方に位置する前記末端部は、前記角部の後端位置より後方に位置し、且つ、前記センターピラーレインに対して後側で最も近接する前記ルーフレインの前端位置より前方に位置することを特徴とする。
【0021】
前記構成によれば、前記末端部が前記固定部に近すぎると、側突時に前記センターピラーレインの幅方向内側変位の抑制効果が低減するが、遠すぎると側突時に前記固定部から前記末端部への荷重伝達がうまくいかず狙いの位置で前記ルーフレールを車幅方向内側へと変位させることができない。
【0022】
これに対して前記構成によれば、側突時に末端部に応力を集中させ、前記センターピラーレインの幅方向内側変位の抑制効果を高めるための狙いの位置で前記ルーフレールを確実に変形させることができる。
【発明の効果】
【0023】
前記構成によれば、質量、コストを極力増大させることがなく、側突時にセンターピラーレインの車幅方向内側への侵入量を抑制できる車両の上部車体構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本実施形態の車両の上部車体構造を示す斜視図
図2】本実施形態の車両の上部車体構造を車両右側面に対して上方から視た要部を示す斜視図
図3】本実施形態の車両の上部車体構造の要部を示す側面図
図4図3のA-A線矢視断面図
図5】(a)は本実施形態のルーフレールが変形した様子を模式的に示した上下方向の直交断面図、(b)は側突時に従来のルーフレールが変形した様子を模式的に示した上下方向の直交断面図
図6】(a)は側突前の本実施形態のルーフレールの結合部周辺を模式的に示す側面図、(b)は側突時における、本実施形態のルーフレールの結合部周辺の挙動をシミュレーション解析した結果を図6(a)に対応して示す側面図
図7】(a)は側突前の従来のルーフレールの結合部周辺を模式的に示す側面図、(b)は側突時における、従来のルーフレールの結合部周辺の挙動をシミュレーション解析した結果を図7(a)に対応して示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づいて本発明の上部車体構造を採用した実施形態の車両Vを4ドアの乗用車を例に挙げて詳述する。
なお、本実施形態の上部車体構造1の構造について、車両Vの右側の構造に基づいて説明する。図中、矢印Fは車両前方、矢印Uは車両上方、矢印OUTは車幅方向外側(車室外側)、矢印INは車幅方向内側(車室側)を夫々示すものとする。また、図中、「×」印は主要なスポット溶接個所を示す。
【0026】
図1図2に示すように、本実施形態の車両Vの上部車体構造1は、左右両端に設けられた左右一対のルーフレール11と、車体の屋根の板状部分を形成するルーフパネル2(図1参照)と、左右のルーフレール11の間において前方から後方へ向かって配設されるフロントヘッダ3、ルーフレイン21およびリアヘッダ4と、ルーフレール11から下方へ延びるセンターピラー31とを備えている。
【0027】
また、車体の左右両側の側部には、前席のドア開口部7fと後席のドア開口部7rとが形成され、ルーフレール11は、ドア開口部7f,7rの上方に設けられるとともに、センターピラー31は、前席のドア開口部7fと後席のドア開口部7rとの間に設けれている。すなわち、前席のドア開口部7fは、ルーフレール11を上縁辺とするとともにセンターピラー31を後縁辺とする。後席のドア開口部7rは、ルーフレール11を上縁辺とするとともにセンターピラー31を前縁辺とする。
【0028】
図1図4に示すように、ルーフレール11はルーフサイドレールとも称し、車体上部の車幅方向の両端部において車両前後方向に延びる閉断面11sを構成する車体剛性部材であり、図1に示すように、前側においてはフロントピラー5に、後側においてはリアピラー6に、そして前後方向の中間付近においてはセンターピラー31に上下方向に連結されている。
【0029】
ルーフレール11は、車幅方向外側に位置するルーフレールアウタ12と、車幅方向内側に位置するルーフレールインナ13(図4参照)を備えている。
【0030】
図1図3に示すように、ルーフレールアウタ12は、車両前後方向の直交断面が車幅方向外側へ凸状のハット状に形成され、上方程車幅方向内側へ延びる側面部121と、側面部121の上端から上方かつ車幅方向内側へ延びる上面部122と上面部122の車幅方向内端から車幅方向内側へ突出する上端フランジ部123と、側面部121の下端から車幅方向内側へ延びる下面部124と、下面部124の車幅方向内端から下方へ突出する下端フランジ部125とを備えている。
【0031】
ルーフレールインナ13は、概ね平坦な板状に形成され、図2図4に示すように、上方程車幅方向内側へ延びる側面部131(図4参照)と、側面部131の上端から上方へ突出する上端フランジ部133(図2参照)と、側面部131の下端から下方へ突出する下端フランジ部135(図2参照)とを備えている。
【0032】
そして、ルーフレールアウタ12とルーフレールインナ13とは、上端フランジ部123,133同士、下端フランジ部125,135同士が突き合わされ、スポット溶接等で接合固定されている。
図1図4に示すように、ルーフレールアウタ12の側面部121には、車幅方向外側へ突出する膨出部15が複数設けられている。膨出部15については後述する。
【0033】
図1図3に示すように、ルーフパネル2は、左右一対のルーフレール11の間の領域を覆うように該領域に配置された平面視で略平板状の部材であり、鋼板等で形成されている。なお、図1図3以外の図面においてはルーフパネル2の図示を省略している。
【0034】
図1に示すように、フロントヘッダ3とリアヘッダ4は共に、車幅方向に延びる閉断面を有する車体剛性部材であり、フロントヘッダ3はルーフパネル2の前部に、リアヘッダ4はルーフパネル2の後部に夫々に接合されている。
【0035】
ルーフレイン21は、ルーフレインフォースメントとも称し、車体の屋根の骨格を形成する。ルーフレイン21は、ルーフパネル2を下側から支持可能に車幅方向に延びる部材であり、左右のルーフレール11の間に架設されている。ルーフレイン21は、フロントヘッダ3とリアヘッダ4の間において車両前後方向に間隔を隔てて複数が配置されている。
【0036】
本実施形態において複数のルーフレイン21のうち、前から2列目に配置されたルーフレイン21は中間ルーフレイン21aとして、車両前後方向における、センターピラー31の配設位置と同じ位置に架設されている。
【0037】
ここで、複数のルーフレイン21のうち、センターピラー31より後方に位置するとともに、該センターピラー31に最も近接するルーフレイン21、すなわち中間ルーフレイン21aよりさらに1列後方へ配置されたルーフレイン21を、後側ルーフレイン21bと設定する。
なお、中間ルーフレイン21aは、センターピラー31の配設位置と同じ位置に架設されていれば、本実施形態のように前から2列目に配置されたルーフレイン21に限らない。
【0038】
センターピラー31はBピラーとも称し、ルーフレール11から下方へ延びて、その下部が図4に示すようにサイドシル8に結合される。なお、サイドシル8は、車両下部の車幅方向の両端部において車両前後方向に延びる閉断面8sを有する車体剛性部材である。
【0039】
図1図4に示すように、センターピラー31は、上下方向の直交断面が車幅方向外側へ凸状のハット形状に形成されたセンターピラーアウタレイン33(「センターピラーアウタ33」と略記する)と、概ね平坦状に形成されたセンターピラーインナレイン32(「センターピラーインナ32」と略記する)(図2参照)とを有し、上下方向に延びる閉断面31sを有する車体剛性部材である。
【0040】
ルーフレール11と、センターピラー31、当例ではセンターピラーアウタ33との結合部Cは、ルーフレール11に対してセンターピラー31の上端部がT字状に交差するように結合されている。
具体的に図2に示すように、センターピラーインナ32の上端部321は、結合部Cにおいてルーフレールインナ13の下端フランジ部135に車幅方向外側から重合させ、該重合部分においてスポット溶接等により接合固定されている。
【0041】
図2図3に示すように、センターピラーアウタ33の上部34は、センターピラーインナ32の上端部321よりも上方へ延び、上部本体部341と、上部本体部341の上端から車幅方向外側へ延びる縦面部342と、縦面部342の車幅方向外端から上方へ延びる上端部343とで一体に形成されている。
【0042】
センターピラーアウタ33の上部本体部341は、ルーフレールアウタ12の下端フランジ部125に、同じく縦面部342は下面部124に、上端部343は側面部121に夫々スポット溶接等により接合固定されている。センターピラーアウタ33の上端部343は、上部34の車両前後方向の全長に亘って、車両前後方向および車両上下方向に延びる平板状に形成されている。
【0043】
センターピラー31の閉断面31sは、センターピラーアウタ33の上部34の上部本体部341の上端に至るまで上下方向に連続して延びている。すなわち、閉断面31sは、センターピラーアウタ33の上部34においてはセンターピラーアウタ33とセンターピラーインナ32との間ではなくセンターピラーアウタ33とルーフレールアウタ12との間に形成されている。
【0044】
さらに、センターピラーアウタ33の上部34において、上述したように縦面部342がルーフレールアウタ12の下面部124に接合される。これにより、センターピラー31の上下方向へ延びる閉断面31sは、ルーフレールアウタ12の下面部124によって上方から塞がれている。
【0045】
また、センターピラー31の上部(34)がルーフレール11に結合される結合部Cの付け根部分は、上方程前後方向の両側へ徐々に拡大して形成されている。これに伴ってドア開口部7f,7rにおけるセンターピラー31とルーフレール11との角部71f,71rは車両側面視で弧形状に形成されている。
【0046】
続いて、ルーフレールアウタ12における、複数の膨出部15およびその周辺の構造について説明する。
図1図3に示すように、複数の膨出部15は、ルーフレールアウタ12の側面部121の前後方向の略全長に亘って、前後方向に互いに隣接するが隙間を隔てて一列に配設されている。図4に示すように、複数の膨出部15は、何れも車幅方向外側へ突出し、上下方向の幅および車幅方向外側への突出長さが略同じに形成されている。
【0047】
図2図4に示すように、膨出部15は、ルーフレールアウタ12の側面部121における、センターピラーアウタ33との結合部Cにおいても車両前後方向に沿って複数配設されている。これら膨出部15は何れもセンターピラーアウタ33の上端部343を側面部121に対して接合する台座部として上述したように、車幅方向の外側が平坦状に形成されている。
【0048】
そして図2図4に示すように、結合部Cにおいて、ルーフレールアウタ12の側面部121における複数の膨出部15に対して、センターピラーアウタ33の上端部343が車幅方向外側から当接し、上述したように、上端部343がルーフレールアウタ12の側面部121にスポット溶接等で接合固定されている(図中「×」印参照)。このスポット溶接等で接合固定した固定部37は、上端部343の前後方向に複数設けられている。
【0049】
結合部Cにおける、複数の膨出部15のうち、最も後側に位置する膨出部15を第1膨出部15aとする。第1膨出部15aは、前端がセンターピラーアウタ33の上端部343の後部に位置し、該第1膨出部15aの前端には、該上端部343に設けられた複数の固定部37のうち、最も後方に位置する後側固定部37rが位置する。
【0050】
第1膨出部15aは、センターピラーアウタ33の上端部343の後端よりも車両後方へ延びている。これにより、第1膨出部15aの後端に位置する末端部38は、センターピラーアウタ33の上端部343の後端に対して車両後方へ離間する。
【0051】
具体的に図2に示すように、第1膨出部15aの末端部38は、ルーフレール11の前後方向における、後席のドア開口部7rにおける、センターピラー31とルーフレール11との角部71rの後端位置、すなわちセンターピラーアウタ33のコーナーRどまりの位置Paより後方に位置し、且つ、後側ルーフレイン21bの前端位置Pbより前方に位置する。
【0052】
また図1図4に示すように、複数の膨出部15のうち、第1膨出部15aの末端部38に対して後方において隣接(近接)する膨出部15を第2膨出部15bとする。
本実施形態において、第1膨出部15aと第2膨出部15bは、車両前後方向に直線状に連続して延び、車両前後方向の両端部を弧形状とする長円形状に形成されている。さらに、第1膨出部15aと第2膨出部15bは互いに前後方向において、車幅方向外側へ膨出していない隙間sを隔てて配設されている。
なお、第1膨出部15aの末端部38は、第1膨出部15aと隙間sとの境界に位置するとともに第1膨出部15aの弧形状の後端に沿って形成される稜線(段差部)であって、車両前後方向において剛性差が生じる部位である。
【0053】
また本実施形態において、第1膨出部15aの末端部38と第2膨出部15bの前端とは、互いの間に隙間sを有して前後方向に互いに離間するが、これに限らず、互いの間に隙間sを有さずに互いに点状に接触する形態であってもよい。
【0054】
本実施形態において第2膨出部15bは、第1膨出部15aよりも車両前後方向に短く形成されているが、図2に示すように、後側ルーフレイン21bの前端21bfを車両前後方向に跨ぐように延びている。これにより本実施形態において、第1膨出部15aの末端部38のみならず、第1膨出部15aと第2膨出部15bとの隙間sは、後側ルーフレイン21bの前端位置Pbよりも前方に位置する。
【0055】
また図1図3に示すように、ルーフレール11の上面部122には、上方へ突出するとともに車幅方向に延びる上面ビード部41が設けられている。上面ビード部41は、ルーフレール11の上面部122の前後方向における、第1膨出部15aと第2膨出部15bとの隙間sと同じ位置に設けられている。
【0056】
さらに、ルーフレール11の下面部124には、下方へ突出するとともに車幅方向に延びる下面ビード部42が設けられている。下面ビード部42は、ルーフレール11の上面部122の前後方向における、第1膨出部15aと第2膨出部15bとの隙間sを隔てた各位置に互いに隣接して一対が設けられている。
【0057】
上述した車両の上部車体構造1は、図1図4に示すように、センターピラーアウタ33と、該センターピラーアウタ33の上端部343が固定されるルーフレール11と、を備え、ルーフレール11は、車幅方向に突出して車両前後方向に連続して延びる膨出部15を有し、膨出部15は、上端部343が固定される後側固定部37rと、センターピラーアウタ33から車両前後方向に離間する末端部38と、を有することを特徴とする。
【0058】
前記構成によれば、質量、コストを極力増大させることがなく、側突時にセンターピラーアウタ33の車幅方向内側への侵入量を抑制できる。
詳述すると、車室への侵入量を抑制するためには、センターピラー31に側突荷重が入力時に、車幅方向の反対側への荷重分散を効率よく行う必要がある。しかし、センターピラー31とルーフレール11との結合部Cには一般に、両部材31,11の剛性差によって応力が集中し易いため、上述した車幅方向の反対側への効率的な荷重分散が困難となるおそれがある。
【0059】
特にルーフトップが車幅方向の両外側に対して中央側が高さ方向にオフセットしているデザインを採用した車両においては、ルーフレイン21についても車幅方向の両外側に対して中央側が上方向にオフセットするように湾曲する場合が多い。この場合、側突荷重が入力時に、ルーフレイン21は上方への曲げ変形が誘発され、ルーフレイン21による車両側方への荷重分散が効率よく行えず、センターピラー31の車室への侵入量が増大するおそれがある。
【0060】
これに対して本実施形態によれば、側突時に、センターピラーアウタ33からルーフレール11の第1膨出部15aに側突荷重が入力され、第1膨出部15aに沿って車両後方へと伝達される。さらに、センターピラーアウタ33から車両後方に離間する末端部38に応力が集中し(後述する図6(b)参照)、末端部38においてルーフレール11の車幅方向内側へ変形を生じさせることができる。
【0061】
すなわち、図5(a)に示す本実施形態のように、後側固定部37rから車両後方にオフセットした末端部38においてルーフレール11が車幅方向内側へ変形するため、図5(b)に示す従来構成のように、後側固定部37rにおいて、センターピラーアウタ33との剛性差でルーフレール11が車幅方向内側へ変形する場合と比較して、センターピラー31の上部(34)の車幅方向内側への変位量を抑制できる(d<d’)。
【0062】
なお、図5(a)は本実施形態のルーフレール11が側突時に変形した様子を上下方向の直交断面視で示した模式図、図5(b)は従来のルーフレールが側突時に変形した様子を上下方向の直交断面視で示した模式図でありである。
【0063】
従って本実施形態は、側突時にルーフレール11の折れ変形位置をコントロールすることで、結合部Cにおいてルーフレール11が折れ変形しない程度に該結合部Cを頑強に補強する場合と比して質量、コストを極力増大させることがなく、センターピラーアウタ33の車幅方向内側への侵入量を抑制できる。
この発明の態様として、図1図4に示すように、第1膨出部15aはルーフレール11の車幅方向外側の側面部121に設けられたものである。
【0064】
前記構成によれば、センターピラー31からルーフレール11へ入力される車幅方向内方への荷重を効率よく受け止めることができる。
【0065】
この発明の態様として、同図に示すように、センターピラー31から後方へ延びる膨出部15を第1膨出部15aとし、第1膨出部15aの末端部38に対して後方において隣接する位置に、車幅方向に突出する第2膨出部15bが設けられたものである。
【0066】
前記構成によれば、第2膨出部15bを有することで、側突時に、センターピラーアウタ33からルーフレール11の後側固定部37rへと入力され、後側固定部37rから末端部38へと伝達される荷重が、末端部38より後方へと分散され難くなり、ルーフレール11の末端部38において応力集中を誘発することができる。
【0067】
従って、ルーフレール11を狙いの位置である末端部38において変形させることができるため、ルーフレール11の変形位置をより正確にコントロールして車幅方向外側へのセンターピラー31の変位量を確実に抑制できる。
【0068】
この発明の態様として、図2に示すように、ルーフレール11の上面部122の車両前後方向における、第1膨出部15aと第2膨出部15bとの間と同じ位置に、車幅方向に延びる上面ビード部41が設けられたものである。
【0069】
前記構成によれば、前後方向に対向する第1膨出部15aと第2膨出部15bとの間は、上面ビード部41が設けられた上面部122に対しても剛性差を生じるため、車幅方向においても応力集中を誘発することができる。
【0070】
これにより、末端部38においてルーフレール11を確実に折れ変形させることができる。すなわち、より正確にルーフレール11の折れ変形位置をコントロールして車幅方向外側へのセンターピラー31の変位量を確実に抑制できる。
【0071】
この発明の態様として、図2図3に示すように、ルーフレール11の下面部124には、車幅方向に延びるとともに下方向へ突出する一対の下面ビード部42とを有し、下面ビード部42は、下面部124の車両前後方向における、第1膨出部15aと第2膨出部15bとの隙間sを隔てた各位置に互いに隣接して設けられたものである。
【0072】
前記構成によれば、第1膨出部15aと第2膨出部15bとの間の隙間sに応力が集中した際に、該隙間sを起点としてルーフレール11が上方へ突き出すような折れ変形を誘発することができる。
【0073】
この発明の態様として、図2に示すように、ルーフレール11から車幅方向内側へ延びるルーフレイン21を備え、センターピラー31を前縁辺とするとともにルーフレール11を上縁辺とする、後席のドア開口部7rが形成され、ドア開口部7rにおけるセンターピラー31とルーフレール11との角部71rは車両側面視で弧形状に形成され、末端部38は角部71rの後端位置Pa(すなわち、センターピラーアウタ33のコーナーRどまりの位置Pa)より後方に位置し、且つ、センターピラー31に対して後側で最も近接する後側ルーフレイン21bの前端位置Pbより前方に位置することを特徴とする。
前記構成によれば、側突時にセンターピラー31の幅方向内側への変位を抑制できる。
【0074】
詳述すると、末端部38が後側固定部37rに近すぎるとセンターピラー31の幅方向内側変位の抑制効果が低減する。
一方、図7(a)に示すように、末端部38が後側固定部37rから遠すぎると、図7(b)に示すように、膨出部150aに沿った荷重の伝達がうまくいかず、後側固定部37rから末端部38に至る途中部分において意に反してルーフレール11が変形する。すなわち、狙いの位置に設けた末端部38においてルーフレール11の変形を適切に誘発させることができない。
【0075】
これに対して図6(a)に示す本実施形態のように、末端部38が角部71rの後端位置Paより後方に位置し、且つ、後側ルーフレイン21bの前端位置Pbより前方に位置することで、図6(b)に示すように、側突時に末端部38に応力を集中させ、センターピラー31の幅方向内側変位の抑制効果が高い狙いの位置でルーフレール11を確実に変形させることができる。
従って、側突時にセンターピラー31の幅方向内側への変位を抑制できる。
【0076】
なお、図6(b)、図7(b)では、側突時にルーフレール11が折れ変形する際にルーフレール11に応力集中が加わる領域にドットを付して表示するとともに、応力集中の大きさに応じてドットを密に(濃く)表示している。
【0077】
この発明の構成と上述の実施形態との対応において、ドア開口部は後席のドア開口部7rに対応し、同様に
センターピラーレインはセンターピラーアウタレイン33に対応し、
固定部は後側固定部37rに対応し、
ルーフレインは後側ルーフレイン21bに対応し、
ルーフレールの側面部はルーフレールアウタ12の側面部121に対応し、
ルーフレールの上面部はルーフレールアウタ12の上面部122に対応し、
ルーフレールの下面部はルーフレールアウタ12の下面部124に対応し、
第1膨出部と第2膨出部との間は隙間sに対応するが、この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施形態を得ることができる。
【0078】
例えば、上述した実施形態においてはルーフレール11の上面部122に上面ビード部41が設けられるとともに、ルーフレール11の下面部124に、一対の下面ビード部42が設けられた構成としたが、本発明は、この構成に限らず、例えば、ルーフレール11の上面部122に上面ビード部41を設けずに、ルーフレール11の下面部124のみ下面ビード部42を設けてもよい。その場合、下面ビード部42は、ルーフレール11の下面部124の前後方向における、第1膨出部15aと第2膨出部15bとの隙間sと同じ位置に設けられることが、末端部38においてルーフレール11の変形を誘発できる観点で好ましい。
【符号の説明】
【0079】
1…車両の下部車体構造
7r…後席のドア開口部(ドア開口部)
11…ルーフレール
15a…第1膨出部(第1膨出部、膨出部)
15b…第2膨出部
21b…後側ルーフレイン(ルーフレイン)
33…センターピラーアウタレイン
37r…後側固定部(固定部)
38…末端部
41…上面ビード部
42…下面ビード部
71r…角部
121…ルーフレールアウタの側面部(ルーフレールの側面部)
122…ルーフレールアウタの上面部(ルーフレールの上面部)
124…ルーフレールアウタの下面部(ルーフレールの下面部)
343…センターピラーアウタの上端部
s…隙間(第1膨出部と第2膨出部との間)
Pa…角部の後端位置
Pb…後側ルーフレインの前端位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7