IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社オメガの特許一覧

<>
  • 特開-廃棄物処理装置 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068544
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】廃棄物処理装置
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/40 20220101AFI20240513BHJP
   C02F 1/10 20230101ALI20240513BHJP
   C02F 1/02 20230101ALI20240513BHJP
   B01D 53/72 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
B09B3/40 ZAB
C02F1/10
C02F1/02 B
B01D53/72
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179076
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】399049981
【氏名又は名称】株式会社オメガ
(72)【発明者】
【氏名】中村 信一
【テーマコード(参考)】
4D002
4D004
4D034
【Fターム(参考)】
4D002AA40
4D002AC10
4D002BA05
4D002BA08
4D002CA04
4D002DA17
4D002DA51
4D004AA14
4D004CA22
4D004CA24
4D004CB01
4D004CB33
4D004CB42
4D034AA11
4D034AA26
4D034BA03
4D034CA04
4D034CA18
(57)【要約】
【課題】効率がよい処理を行うことができる廃棄物処理装置を提供しようとするもの。
【解決手段】剛球状加熱媒体1を複数個貯留して廃棄物を供給する貯留槽2を有し、前記剛球状加熱媒体1を昇温させて廃棄物に伝熱するようにした。前記剛球状加熱媒体1を誘導加熱により昇温するようにしてもよい。前記剛球状加熱媒体1の貯留槽2の下方に廃棄物を供給するようにしてもよい。前記剛球状加熱媒体1が遠赤外線を放射するようにしてもよい。前記剛球状加熱媒体1が磁性を有するようにしてもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
剛球状加熱媒体(1)を複数個貯留して廃棄物を供給する貯留槽(2)を有し、前記剛球状加熱媒体(1)を昇温させて廃棄物に伝熱するようにしたことを特徴とする廃棄物処理装置。
【請求項2】
前記剛球状加熱媒体(1)を誘導加熱により昇温するようにした請求項1記載の廃棄物処理装置。
【請求項3】
前記剛球状加熱媒体(1)の貯留槽(2)の下方に廃棄物を供給するようにした請求項1又は2記載の廃棄物処理装置。
【請求項4】
前記剛球状加熱媒体(1)が遠赤外線を放射するようにした請求項1乃至3のいずれかに記載の廃棄物処理装置。
【請求項5】
前記剛球状加熱媒体(1)が磁性を有するようにした請求項1乃至4のいずれかに記載の廃棄物処理装置。
【請求項6】
前記剛球状加熱媒体(1)の貯留槽(2)を約900℃以上に昇温し、排ガスを供給して酸化するようにした請求項1乃至5のいずれかに記載の廃棄物処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、効率がよい処理を行うことができる廃棄物処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴム等の廃棄物を燃焼し熱を回収するリサイクルシステムに関する提案があった(特許文献1)。
すなわち、タイヤを含めたゴム製品等の廃棄に大きな問題となっていた。タイヤを含む自動車部品の処分は環境汚染などの観点により、粗大ごみで捨てることができず、廃棄物処理法で適正処理困難物に指定されており、適切な方法で処分する必要があった。
この従来提案は、ゴムの廃棄物を焼却することで発生した熱を回収し、その熱によって蒸気を発生させる蒸気発生装置と、前記蒸気を熱プレス成型機まで運ぶ蒸気搬送経路と、前記ゴムの廃棄物又はゴムの原料を型に供給し、前記蒸気の熱を利用して熱プレスによってゴムの成形品を形成する熱プレス成型機と、を備えたこととし、廃棄物を燃焼させ、廃棄物の燃焼から生成した熱をゴムの成形品を成形する際に利用することによって、熱を有効に活用することが可能である、というものである。
これに対し、効率がよい処理を行うことができる廃棄物処理装置に対する要望があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7050258号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこでこの発明は、効率がよい処理を行うことができる廃棄物処理装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するためこの発明では次のような技術的手段を講じている。
(1)この発明の廃棄物処理装置は、剛球状加熱媒体を複数個貯留して廃棄物を供給する貯留槽を有し、前記剛球状加熱媒体を昇温させて廃棄物に伝熱するようにしたことを特徴とする。
【0006】
前記廃棄物として、排水、(高濃度)廃液などの液体、また排ガスなどの気体、さらに廃タイヤ、廃プラスチック類、廃ソーラーパネル、廃家電製品などの粉砕物・破砕片などの固体を例示することができる。
剛球状加熱媒体として、鉄球・鋼球(例えば直径φ8-11mm、比重 約7.8程度)、Si-C球(例えば直径φ4-8mm、比重約3.5程度)、セラミックス球、ベアリングなどを例示することができる。これら鉄球・鋼球、Si-C球、セラミックス球、ベアリングを混合して使用してもよい。
廃棄物の処理の態様として、含有成分の熱分解(や蒸発等)を例示することができる。
【0007】
剛球状加熱媒体の加熱手段として、LNGバーナー、誘導加熱(IH)を例示することができる。剛球状加熱媒体を昇温する温度として、約450℃~950℃を例示することができる。約900℃以上に昇温すると、出てきた排ガスを急速に200℃以下に冷却することによりダイオキシンの生成を回避することができる。
また、剛球状加熱媒体を約900℃に昇温して廃棄物としてのVOCガスを熱分解して脱臭することができる。さらに、廃棄物としての炭化水素ガスをバーニングしてCO2化することもできる。
【0008】
この廃棄物処理装置によると、剛球状加熱媒体を複数個貯留して廃棄物を供給する貯留槽を有するので、貯留槽の形状や大きさに応じて剛球状加熱媒体を適宜個数 貯留してここに廃棄物を供給することができる。
そして、前記剛球状加熱媒体を昇温させて廃棄物に伝熱するようにしたので、適宜個数を貯留して昇温させた剛球状加熱媒体のそれぞれの表面から廃棄物に対して伝熱することができる。
【0009】
剛球状加熱媒体(略球状で半径rとする)は球状体1個の表面積Sは4πr2であって、この表面積(S=4πr2)が廃棄物への伝熱面積となる。具体的には、剛球状加熱媒体(例えば直径φ11mm)1個の表面積は3.8cm2である。
ここで、剛球状加熱媒体を100A管の貯留槽(内径105.3mmで断面積87cm2)に一段当たり88個×82段=7,216個を貯留した場合の剛球状加熱媒体の全表面積は27,421cm2である。
【0010】
すると、100A管の貯留槽に溶融金属を入れた場合の表面積87cm2(表層)に対し、剛球状加熱媒体の全表面積27,421cm2は315倍となり、伝熱面積に大きな差が生じることとなる。
なお、剛球状加熱媒体を積層する段数、全体的な高さなどにより、廃棄物に対する加熱条件等を制御することができる。
【0011】
(2)前記剛球状加熱媒体を誘導加熱により昇温するようにしてもよい。
このようにすると、誘導加熱(IH)用のコイルを用いて剛球状加熱媒体を加熱してLNGのような火種なしで昇温することができ、廃棄物が引火性を有する物質の場合の安全性を担保することができる。
そして、前記誘導加熱(IH)用のコイルの外周に、冷却水を回す冷却筒を配設することができる。このようにすると、昇温する剛球状加熱媒体の貯留槽の外側の冷却筒により作業環境の利便性を向上させることができる。
【0012】
(3)前記剛球状加熱媒体の貯留槽の下方に廃棄物を供給するようにしてもよい。
このようにすると、剛球状加熱媒体の貯留槽の下方に供給されて気化した廃棄物(排ガス)が、上方に上がってくる過程で上方の剛球状加熱媒体(ヒーターとして機能)に接触してさらに伝熱されることとなり、十分な加熱作用を受けることとなる。
【0013】
また、気化した廃棄物(排ガス)が上方の剛球状加熱媒体に接触して、排ガス中に付帯していた無機塩類や炭化成分などが付着していくこととなり、最終的に離脱した排ガスの純度が向上することとなる。したがって、廃棄物として排水や廃液を供給した場合、排出される排ガスとして(成分としては純水に近い)ピュアな水蒸気を得ることができる。これにより、前記水蒸気を冷却して液化することにより軟水器として使用することもできる。
そして、この蒸気によりタービンを回して自家発電をしたり、(床)暖房や冷房に利用することができる。
【0014】
(4)前記剛球状加熱媒体が遠赤外線を放射するようにしてもよい。
このようにすると、剛球状加熱媒体から放射状に遠赤外線を発散させて(これを利用して)廃棄物に対する熱線の浸透性を高めて芯の方まで熱することができる。
【0015】
(5)前記剛球状加熱媒体が磁性を有するようにしてもよい。
このようにすると、剛球状加熱媒体が磁性を有するようにすることにより(例えばフェライト)、着磁(磁性を帯びる)した剛球状加熱媒体について、温度上昇によって消磁(磁性が消失する)させることができ、この性質を廃棄物処理に応用することができる。
【0016】
(6)前記剛球状加熱媒体の貯留槽を約900℃以上に昇温し、排ガスを供給して酸化するようにしてもよい。
このようにすると、排ガス中に炭化水素(CO2より地球温暖化係数が高い)が含まれていても二酸化炭素化してから大気中に排出することができ、地球温暖化に配慮した処理を行うことができる。また、約900℃以上に昇温して約200℃以下に急冷すると、(塩化物イオンの共存下であっても)ダイオキシンの再合成を回避することができる。
【0017】
(電解スクラバー槽)
剛球状加熱媒体を複数個貯留した貯留槽での廃棄物処理後の排ガスは、電解スクラバー槽に通して浄化することができる。スクラバー水の電気分解は、食塩やオゾンの共存下で行うことができる。食塩の共存下で電気分解を行った場合、スクラバー水中に電解次亜塩素酸(HOCl)が生成し、オゾンの圧入下で電気分解を行った場合、スクラバー水中に酸素ラジカル(・O)が生成することとなる。
【0018】
(突沸の回避)
貯留槽に液体状の廃棄物(排水、廃液など)を供給すると、剛球状加熱媒体の外表面に広がって加熱処理されることとなり、液状の加熱媒体(例えば加熱した溶融金属)を使用した場合のような突沸(液中での液体から気体への急激な膨張)を回避して処理することができる。
【0019】
(炭化物の離形性)
剛球状加熱媒体を用いると、加熱媒体として液状の加熱媒体(加熱した溶融金属など)を使用する場合よりも、熱処理後の炭化物や熱分解残渣物の分離・取り出しの際の離形性がよい。これは、液状の加熱媒体の場合、炭化物や熱分解残渣物が絡まったり固着したりすることがあるからである。
【0020】
(逆洗浄等)
貯留槽の剛球状加熱媒体にゴミが溜ると逆洗浄するようにしてもよい。逆洗浄には、電解水を使用したり高圧エアを用いたりすることができる。この廃棄物処理装置は二台乃至三台を設置して、二台は交互運転し(片方の運転中はもう片方の逆洗浄等の整備を行う)、一台は予備機として置いておくことができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明は上述のような構成であり、次の効果を有する。
適宜個数を貯留して昇温させた剛球状加熱媒体のそれぞれの表面から廃棄物に対して伝熱することができるので、効率がよい処理を行うことができる廃棄物処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】この発明の廃棄物処理装置の実施形態の貯留槽を説明する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1に示すように、この実施形態の廃棄物処理装置は、剛球状加熱媒体1を複数個貯留して廃棄物を供給する貯留槽2を有し、前記剛球状加熱媒体1を昇温させて廃棄物に伝熱するようにした。
【0024】
前記廃棄物として排水を処理した。剛球状加熱媒体1として、真鋼球(直径φ11mm、比重 7.84)を使用した。廃棄物の処理の態様として、排水中の含有成分の熱分解を行った。剛球状加熱媒体1の加熱手段として誘導加熱(IH)を利用し、剛球状加熱媒体1を昇温する温度として約900℃に昇温した。
【0025】
そして、剛球状加熱媒体1(ヒーターとして機能)の貯留槽2の下方から廃棄物(排水)を供給した。すると、剛球状加熱媒体1の貯留槽2の下方に供給されて気化した廃棄物(排水からの排ガス)が、上方に上がってくる過程で上方の剛球状加熱媒体1に接触してさらに伝熱されることとなり、十分な加熱作用を受けることとなった。
【0026】
剛球状加熱媒体1(真球状で半径r)は球状体1個の表面積Sは4πr2であって、この表面積(S=4πr2)が廃棄物への伝熱面積となった。剛球状加熱媒体1(直径φ11mm)1個の表面積は3.8cm2である。
そして、剛球状加熱媒体1を100A管の貯留槽2(内径105.3mmで断面積87cm2)に一段当たり88個×82段=7,216個を貯留し、剛球状加熱媒体1の全表面積は27,421cm2となった。
すると、100A管の貯留槽2に、仮に溶融金属(易融金属など)を入れた場合の表面積87cm2(表層面)に対し、剛球状加熱媒体1の全表面積27,421cm2は315倍となり、伝熱面積に大きな差が生じることとなった。
【0027】
そして、前記剛球状加熱媒体1を誘導加熱方式により昇温したので、誘導加熱(IH)用のコイルCを用いて加熱してLNGのような火種なしで昇温することができ、廃棄物(排水)が引火性を有する物質(例えばメチルイソブチルケトン等)を含有する場合の安全性を担保することができた。
また、前記誘導加熱(IH)用のコイルCの外周に、冷却水を回す冷却筒Pを配設したので、昇温する剛球状加熱媒体1の貯留槽2の外側の冷却筒Pにより作業環境の利便性を向上させることができた。
【0028】
次に、この実施形態の廃棄物処理装置の使用状態を説明する。
この廃棄物処理装置によると、剛球状加熱媒体1(直径φ11mmの真鋼球)を複数個(7,216個)貯留して廃棄物(排水)を供給する貯留槽2を有するので、貯留槽2の形状や大きさに応じて剛球状加熱媒体1を貯留してここに廃棄物を供給することができた。
【0029】
そして、前記剛球状加熱媒体1(直径φ11mmの真鋼球)を昇温させて廃棄物(排水)に伝熱するようにしたので、適宜個数(7,216個)を貯留して昇温させた剛球状加熱媒体1のそれぞれの表面から廃棄物(排水とその排ガス)に対して伝熱することができ、効率がよい処理を行うことができた。
【産業上の利用可能性】
【0030】
効率がよい処理を行うことができることによって、種々の廃棄物処理装置の用途に適用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 剛球状加熱媒体
2 貯留槽
図1