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特開2024-68564高周波コイルユニットおよび磁気共鳴イメージング装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068564
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】高周波コイルユニットおよび磁気共鳴イメージング装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20240513BHJP
【FI】
A61B5/055 350
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179106
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】弁理士法人山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】羽原 秀太
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 伸一郎
(72)【発明者】
【氏名】今村 幸信
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AB34
4C096CC05
4C096CC40
(57)【要約】
【課題】傾斜磁場コイルによる渦電流抑制のための導体パターン設計の複雑さを回避しつつ、照射効率向上と傾斜磁場コイルによる渦電流発熱抑制とのバランスのとれたRFシールドを提供する。
【解決手段】
高周波コイルユニットを構成する要素の1つである円筒状のRFシールドが、絶縁シートの表裏両面に形成されたパターン化された導電薄膜が丸められることで構成されており、パターン化された導電薄膜は、表と裏のパターンが円筒の中心軸方向に鏡面対称であり、表のパターンは中心軸方向に2分割され、2分割されたパターンの片側は更に周方向に2分割され、それぞれの独立した3つパターンの島は、円筒軸方向から短冊を形成する形でスリットが入るが、それぞれの短冊は一か所で上下方向につながる部分がある、ことを特徴とする。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端に配置されたリング導体及び当該両端のリング導体をつなぐ複数のラング導体を有する円筒状のRFコイルと、当該RFコイルの外周を覆うように配置された円筒状のRFシールドとを含む高周波コイルユニットであって、
前記RFシールドは、絶縁シートと当該絶縁シートの表面及び裏面に形成された導体パターンとを含み、前記導体パターンは、円筒の軸方向に、大きさが異なる第1及び第2の導体領域に分割されており、各導体領域は、円筒の軸方向の少なくとも一か所において円筒の周方向に沿った接続部を有し且つ円筒の軸方向に沿って部分的に形成された複数のスリットによって部分的に区切られた複数の短冊を含み、且つ、前記円筒の周方向に沿った接続部は円筒の1周の少なくとも1か所で切断され、且つ、その切断部の位置は表面の導体パターン及び裏面の導体パターンにおいて周方向でずれた位置であり、
表面の導体パターンと裏面の導体パターンは、一方の第1の導体領域と他方の第2導体領域とが重なるように配置され、且つ、第1の導体領域と第2の導体領域とが重なる部分において、表面の導体パターンのスリットと裏面の導体パターンのスリットとが円周方向にずれていることを特徴とする高周波コイルユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の高周波コイルユニットであって、
前記複数のスリットは、それぞれ、軸方向の一部に不連続部を有し、当該不連続部を介して隣接する短冊がつながっていることを特徴とする高周波コイルユニット。
【請求項3】
請求項2に記載の高周波コイルユニットであって、
前記不連続部は、前記RFコイルのリング導体に重なる位置に形成されていることを特徴とする高周波コイルユニット。
【請求項4】
請求項2に記載の高周波コイルユニットであって、
前記不連続部の幅は、当該不連続部に生じうる渦電流と、前記RFコイルのリング導体に流れる電流とに基づき決定されることを特徴とする高周波コイルユニット。
【請求項5】
請求項1に記載の高周波コイルユニットであって、
前記第1及び第2の導体領域のうち、大きさが小さい導体領域の磁場中心側の端部から前記周方向の接続部までの幅は、前記RFコイルの円筒軸方向の長さの半分未満であって、かつ、大きさが小さい導体領域の円筒軸方向の幅は、前記RFコイルのリング導体の円筒軸方向の幅の3倍以上であることを特徴とする高周波コイルユニット。
【請求項6】
請求項1に記載の高周波コイルユニットであって、
第1の導電領域に形成された複数のスリットと、第2の導電領域に形成された複数のスリットは、それぞれ、スリット間隔は同じであって、前記第1の導電領域のスリットと前記第2の導電領域のスリットとが互い違いに形成されていること特徴とする高周波コイルユニット。
【請求項7】
請求項1に記載の高周波コイルユニットであって、
第1の導電領域に形成された複数のスリットと、第2の導電領域に形成された複数のスリットは、それぞれ、スリット間隔は同じであって、
表面の導体パターンと裏面の導体パターンとは、一方の導体パターンの第1及び第2の導電領域に形成されたスリットと、他方の導体パターンの第1及び第2の導電領域に形成されたスリットが互い違いとなるように配置されていることを特徴とする高周波コイルユニット。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の高周波コイルユニットを備えたことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
前記高周波コイルユニットが照射コイルである請求項8に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴イメージング装置に用いられる高周波コイルユニットに関し、特に高周波コイルユニットに備えられるRFシールドに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging)装置(以下、「MRI装置」という)では、静磁場マグネットが発生する均一な静磁場中に配置された被検体に電磁波である高周波信号(以下「RF(Radio Frequency)信号」という)を照射し、被検体内の核スピンを励起するとともに、核スピンが発生する電磁波であるNMR(Nuclear Magnetic Resonance:核磁気共鳴)信号を受信して信号処理することにより、被検体の磁気共鳴画像を取得する。
【0003】
RF信号の照射とNMR信号の受信とは、ラジオ周波数の電磁波を送信あるいは受信するRFアンテナもしくはRFコイル等のアンテナ装置によって行われる。このようなアンテナ装置として、バードケージ型(鳥かご型)コイルを用いる高周波コイルユニットが知られている。
【0004】
通常、良く使用されるバードケージ型コイルは、エンドリングとなる円環状の2つのリング導体と、それら2つのリング導体を接続する直線状の複数のラング(横木)導体と、キャパシタ、ダイオード、給電ケーブル(図示せず)等を有し、キャパシタがリング導体に等間隔で設けられたギャップに挿入され、ダイオードがラング導体のギャップに挿入されて構成されている。
【0005】
このような円筒形のバードケージ型コイルは、通常、RFシールドと呼ばれる円筒形状の導体によって囲繞され、バードケージ型コイルに設けられるキャパシタは、RFシールドとラング導体とリング導体とにより、MRI装置における特定の周波数で共振するように調整される。バードケージ型コイルでは、照射するRF信号が作るRF磁場(「照射磁場」ともいう)の均一空間の広がりが、単純なループコイルやサドル(鞍型)コイルに比べて高いことが特徴である。この特徴により、現在、バードケージ型コイルはトンネル型水平磁場MRI装置における送信コイルの標準型となっている。
【0006】
水平磁場MRI装置では、磁場に磁場勾配を与える傾斜磁場コイルは、通常、円筒状に成型された円筒形の傾斜磁場コイルが用いられ、バードケージ型コイルは、そのRFシールドが円筒形傾斜磁場コイルの内筒面に設置される場合が多い。
【0007】
このようなRFシールドが満たすべき重要な要件の一つは、RF周波数、たとえば1.5テスラのMRI装置ではおよそ64MHz、においてなるべく良い電気伝導度を持つこと、もう一つは、傾斜磁場コイルが発する数kHz程度の周波数領域で、傾斜磁場コイルから発生する磁場で渦電流が誘起されても過剰に発熱せず、燃えたりしないことである。しかし、例えばRFシールドとして電気伝導度が優れた銅薄膜を使用すると、渦電流のため、発熱して溶けてしまうなどの問題があり、上記2つの要件の両立が求められる。
【0008】
2つの要請を満たすために、RFシールドの両面に銅箔を使用し、タイル状のパターンを作って表面と裏面とをキャパシタとしてつなぎ、64MHz付近ではほぼ抵抗が無いが、渦電流は1つのタイル内でしか生じないようにする方法がある(特許文献1、2)。この方法をタイル化の方法と呼ぶ。
【0009】
例えば、特許文献2に開示されたRFシールドのパターンでは、表裏でタイルが円周方向に互い違いなるように重ねることが記載されている。しかし、このパターンでは、バードケージ型コイルのリング部分に相当する近い場所に、周方向に接続部が無く、バードケージ型コイルのQ値が落ちてしまって実用は困難である。仮に、特許文献2に開示されたRFシールドのパターンに、周方向に接続部があった場合においても、円筒軸に垂直な方向のスリットを有していないため、X、Y、Zの傾斜磁場が作る渦電流に対応できず、渦電流の発熱を抑えるのには不十分である。
【0010】
一方、特許文献1に開示されたRFコイルでは、両面銅箔パターンをタイル化したRFシールドにおいて、図9に示すように、円筒の軸線方向の両側の領域192、194と、その間の領域(中央の領域)184とを分けて、両側の領域はタイル(短冊)185の長手方向が周方向に並び、中央の領域184ではタイルの長手方向が円筒の軸線方向に並ぶ構成としている。なお図9には表側のパターン(上図)と裏側のパターン(下図)を示しているが裏側のパターンの説明は省略する。このような構成により、上記RFシールドは、両側の領域192、194ではバードケージ型コイルのリング導体に流れる電流に沿って電流が流れ、中央の領域184ではバードケージ型コイルのラング導体に流れる電流に沿って電流が流れ、渦電流の発生場所をタイル内に限定しながら、良い電気伝導度を維持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第5367261号明細書
【特許文献2】米国特許第5574372号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
傾斜磁場コイルが作る磁場によってRFシールド上に発生する渦電流の大きさは、傾斜磁場コイルが作る磁場強度に比例する。傾斜磁場コイルはX方向、Y方向及びZ方向の3軸方向に傾斜磁場を発生する3組の傾斜磁場コイルから成り、円筒形の傾斜磁場コイルではそれら3組の傾斜磁場コイルを円筒の厚み方向に重ねた構造になっている。従ってRFシールドに発生する渦電流は、3組の傾斜磁場コイルのうち、円筒の最も内側に配置された傾斜磁場コイル即ちRFシールドに一番近い位置にある傾斜磁場コイルによる影響が一番大きい。例えば、図8に示す傾斜磁場コイルでは、X方向傾斜磁場コイル(402)の楕円状のパターンが最もRFシールドの近くにあり、図8中、左右に配置されている。通常、X方向傾斜磁場コイルが作る磁場が一番強くなる場所は、左右の楕円パターンの中心部付近(太い一点鎖線で示す位置)である。つまり、円筒軸の磁場中心からの距離がD502の距離で傾斜磁場コイルが作る磁場が強い。
【0013】
特許文献1に記載されたRFシールドでは、円筒の軸方向の両側の領域で周方向に沿ってタイル化したパターンとしているが、このRFシールドのパターンにおいて、傾斜磁場コイルが作る磁場が最も強くなる位置、つまり磁場中心から図8の距離D502で、渦電流の発生をできるだけ抑制するためには、タイルの幅を変えて設計する必要がある。つまり特許文献1に記載されたRFシールドについて、傾斜磁場コイルの配置を考慮して渦電流を低減しようとすると、パターンが複雑化し、設計が難しい。特にタイル幅の決定は、実験的に行う方法でも、計算で行う方法でも検証すべき項目が多く、多大な労力を必要とする。
【0014】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、バードケージ型照射コイルのRFシールドとして、照射効率を保ち、渦電流による発熱を防ぎつつ、設計が比較的簡単なRFシールドパターンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明の高周波コイルユニットは、RFシールドのパターンが次の特徴を持つ。絶縁体の両面に導電薄膜のパターンを設けたシートを円筒状にしたRFシールドであって、渦電流による発熱を防ぐため、表裏の導電薄膜に短冊状のパターンを形成し、その短冊を円筒の軸方向に配置したものとし、円筒の軸方向両端で表裏の短冊が互い違いに重なる構成とする。またRFコイルのリング導体に対応する部分は、リング導体に流れる電流のミラー電流が通る部分にできるだけ切断部作らないようにして、RF周波数における良い電気伝導度を確保するためと、キャパシタとしての容量を確保するために、短冊がつながる構成とする。
【0016】
即ち、本発明の高周波コイルユニットは、両端に配置されたリング導体及び当該両端のリング導体をつなぐ複数のラング導体を有する円筒状のRFコイルと、当該RFコイルの外周を覆うように配置された円筒状のRFシールドとを含み、RFシールドは、絶縁シートと当該絶縁シートの表面及び裏面に形成された導体パターンとを含む。導体パターンは、円筒の軸方向に、大きさが異なる第1及び第2の導体領域に分割されており、各導体領域は、円筒の軸方向の少なくとも一か所において円筒の周方向に沿った接続部を有し且つ円筒の軸方向に沿って部分的に形成された複数のスリットによって部分的に区切られた複数の短冊を含み、且つ、前記円筒の周方向に沿った接続部は円筒の1周の少なくとも1か所で切断され、且つ、その切断部の位置は絶縁シートの表面及び裏面において周方向でずれた位置(同じ位置ではない)である。
表面の導体パターンと裏面の導体パターンは、一方の第1の導体領域と他方の第2導体領域とが重なるように配置され、且つ、第1の導体領域と第2の導体領域とが重なる部分において、表面の導体パターンのスリットと裏面の導体パターンのスリットとが円周方向にずれている。
【発明の効果】
【0017】
照射コイルの効率を落とすことが無く、かつ、傾斜磁場による渦電流の発熱が少なく、設計に必要な工数を低減したバードケージ型照射コイル用RFシールドを提供することができ、それにより照射効率がよく耐久性に優れた高周波コイルユニットが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】MRI装置の概略構成図である。
図2】照射コイルと傾斜磁場コイルの構成を示す斜視図である。
図3】バードケージ型照射コイルの斜視図である。
図4】バードケージ型照射コイルとRFシールドの模式断面図である。
図5】照射コイルと傾斜磁場コイルの模式断面図である。
図6】本発明のRFコイルユニットのRFシールドパターン(実施例1)を説明する図である。
図7図6のRFシールドパターンの表裏面を組み合わせた図である。
図8】傾斜磁場コイルの構成を右から見た図である。
図9】先行技術のRFシールドパターンを示す図である。
図10】先行技術を用いた実際の設計パターン図の例である。
図11】本発明のRFコイルユニットのRFシールドパターン(実施例2)を説明する図である。
図12図11のRFシールドパターンの表裏面を組み合わせた図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係る高周波コイルユニット、それが適用されるMRI装置について図面を参照して説明する。
【0020】
[MRI装置の全体構成]
MRI装置100の概略構成図を図1に示す。MRI装置100は、被検体112が配置される計測空間に静磁場を形成するマグネット101と、静磁場に所定の方向の磁場勾配を与える傾斜磁場コイル102と、高周波信号(RF信号)を被検体112に送信するとともに被検体112から発生する核磁気共鳴信号(NMR信号)を受信するRFアンテナ103と、RF信号(RF波)のパルス波形を生成してRFアンテナ103に送信するとともに、RFアンテナ103が受信したNMR信号に対し信号処理を行う送受信機104と、傾斜磁場コイル102に電流を供給する傾斜磁場電源109と、送受信機104及び傾斜磁場電源109の駆動を制御するとともに、種々の情報処理及びオペレータによる操作を受け付けるデータ処理部105と、データ処理部105の処理結果を表示するための表示装置108と、被検体112を載置するベッド111と、を備える。
【0021】
MRI装置100は、マグネット101が形成する静磁場の方向によって、水平磁場方式と垂直磁場方式とに区別される。本実施形態に係るRFコイルユニットが適用される水平磁場方式のMRI装置では、一般的に、マグネット101は円筒状のボア(中心空間)を有し、図1において左右方向(RFコイルユニットの中心軸と一致する方向)の静磁場を発生し、トンネル型MRI装置と呼ばれる。
【0022】
傾斜磁場コイル102は、X、Y、Zの互いに直交する3軸方向に傾斜磁場を発生する3組のコイルからなり、図2に示すように、上述した水平磁場方式のMRI装置では、3組のコイル、即ちXコイル402、Yコイル403及びZコイル404をそれぞれ絶縁性のシートを挟んで積層し、円筒状にした構造を有する。多くの場合、3組のコイルのうち、Xコイル402が円筒の最内側、Zコイル404が円筒の最外側となるように配置されている。
【0023】
Zコイル404は、円筒の周方向に巻かれたソレノイドコイルで、円筒の軸方向に傾斜磁場を発生し、Yコイル403及びXコイル402は、軸と直交するする方向に傾斜磁場を発生するもので、一対のコイルが、それぞれ、円筒の軸方向中央に対し対称に配置され、且つYコイル403とXコイル404とが、円筒の周方向に90度ずれた位置に配置されている。なお図2では、図示を簡略化して、Yコイル403及びXコイル404を単純なループで示しているが、実際には、所定の傾斜磁場を発生するため複雑なパターンとなっている。
【0024】
RFアンテナ103は、所定の周波数で共振し、2チャンネルを有するバードケージ型の送信あるいは送受信アンテナであり、上述した傾斜磁場コイル102の内側に配置される。なお人体の各部位を詳細に撮影する場合においては、送信のアンテナと受信のアンテナに異なるものを用いる場合がほとんどである。送信には、体全体を覆う、傾斜磁場コイル内部に据付けられた大きな照射アンテナを用い、受信には人体表面近くに設置した局所アンテナを用いることが多い。この場合、局所アンテナは受信専用である場合がほとんどである。
【0025】
傾斜磁場電源109と傾斜磁場コイル102とは傾斜磁場制御ケーブル107で接続される。また、RFアンテナ103と送受信機104とは送受信ケーブル106で接続される。送受信機104は、シンセサイザ、パワーアンプ、受信ミキサ、アナログデジタルコンバータ、送受信切り替えスイッチ等(いずれも図示せず)を備える。
【0026】
データ処理部105は、送受信機104及び傾斜磁場電源109を制御し、静磁場中に配置された被検体112に対し、RFアンテナ103及び傾斜磁場コイル102から、断続的にRF信号を照射するとともに、傾斜磁場を印加する。また、そのRF信号に共鳴して被検体112から発せられるNMR信号をRFアンテナ103にて受信し、信号処理を行い、画像を再構成する。被検体112は、例えば、人体の所定の部位である。
【0027】
[RFアンテナの構成]
以下、本実施形態のMRI装置に適用されるRFアンテナ103の詳細を説明する。RFアンテナ103は、バードケージ型コイルと、バードケージ型コイルを囲繞して配置されるRFシールド(以下、シールドと略す)とからなる。
【0028】
バードケージ型コイル200は、図3に示すように、円環状の2つのリング導体203、直線状の複数のラング導体204、キャパシタ、ダイオード、給電ケーブル(図示せず)等を有している。エンドリングとなるようにRFコイルの両端に配置されたリング導体203それぞれの中心軸、及びラング導体204が配置される円筒面の中心軸は一致するように配置されている。リング導体203にはそれぞれ周方向に等間隔にギャップ201が設けられ、ラング導体204は、ラング導体が配置される円筒面に沿って等間隔に配置され、ラング導体204の両端部にはそれぞれギャップ201で区切られたリング導体203の部分(手前側)、ギャップ201で区切られたリング導体203の部分(奥側)が接続されている。
【0029】
このバードケージ型コイル200は、キャパシタがリング導体203それぞれに等間隔で設けられたギャップ201に挿入されて、ギャップ201で区切られたリング導体の部分同士の間に接続され、ダイオードがラング導体204のギャップ202に挿入されて、ギャップ202で区切られたラング導体の部分同士の間に接続されている。キャパシタは、リング導体203とラング導体204とRFシールドとにより高周波信号または核磁気共鳴信号の周波数で共振するよう調整されている。
【0030】
バードケージ型コイル200の仕様は、特に限定されないが、一例を示すと、直径がおよそ710mm、全長がおよそ550mmであり、リング導体部分にのみキャパシタを設置するハイパス型と呼ばれるバードケージ型コイルである。ラング導体の数は24本で各ラング導体の中央の切り欠きにはダイオードが設置され、RF信号を照射しない時間には、受信コイルとのカップリングを防止するため、ダイオードに逆バイアスをかけてコイルの共振を生じさせないようにする。このバードケージ型コイルは、1.5テスラのトンネル型のMRI装置に使用することができ、円筒の両端に配置された各リング導体のそれぞれに24箇所設置されるキャパシタの値はおよそ200pFとした場合、1.5テスラのMRI装置のRF共振周波数である63.8MHzに共振する。
【0031】
図4に、バードケージ型コイル200を用いたRFアンテナ103を円筒軸に垂直な面で切った断面を示す。図4に示すように、RFシールド300は、バードケージ型コイル200の外周を囲繞するように配置されており、バードケージ型コイル200及びRFシールド300で高周波コイルユニット即ちRFアンテナ103を構成する。RFシールド300は導電体から成る円筒の筒で構成され、傾斜磁場コイルの内面に貼り付けられている場合もある。
【0032】
RFシールド300は、絶縁シートの表裏両面に形成された導電薄膜をエッチングなどにより一部剥離してパターン化し、パターン形成後のシートを、円筒軸を中心に丸め、一部を接続して円筒状に形成したものである。このような構造のRFシールド300は、表裏の導電薄膜がキャパシタとして機能する。絶縁シート及び導電薄膜の厚みは、RFシールドのキャパシタとしての機能と機械的な強度を考慮して決定する。具体的には、絶縁シートの厚みは表裏の導体が構成するキャパシタの容量に関係し、薄い方が、キャパシタ容量が増えてRF抵抗は減るが、あまりに薄いと構造的に弱くなり、穴が開くなどの破損リスクが上がる。また導電薄膜の厚みは、厚いほうがRF抵抗を少なくすることができるが、厚くすると傾斜磁場による渦電流も増大するので、RF抵抗が増えない範囲で薄くすることが好ましい。
一例として、表裏の導電素材は厚み18ミクロンの銅とし、間の絶縁シートは厚み100ミクロンのFR-4(ガラスエポキシ)とした場合を考えている。銅の厚みを例として18ミクロンとしたが、これはRF周波数(1.5テスラMRI装置ではおよそ64MHz)での表皮厚みよりは厚くした方が、RF抵抗が増えなくて良い。表皮厚みとは下記式で定義される長さである。
【数1】
fは周波数、μは比透磁率、μは真空の透磁率、σは電気伝導度である。
銅薄膜で周波数が64MHzの時、表皮厚みはおよそ8.2ミクロンであり、薄膜厚みが18ミクロンあればRF周波数での電気伝導度は厚みが薄いことで低下することはほぼないと言える。
【0033】
またバードケージ型コイル200のリング導体とRFシールド300と距離、即ちRFシールドの半径d300と、バードケージ型コイル200のリング導体の半径d200との差分(d300-d200)は、高周波コイルユニットの照射効率に大きくかかわる設計上重要なパラメータである。従って、この差分を適正な値とするように、RFシールド300の大きさを決定し、RFシールド300を製造する。
【0034】
また傾斜磁場コイル102(402~404)との位置関係は、図2に示すようにXコイル402が円筒の内側に配置された傾斜磁場コイル102では、図5に示すように、RFシールド300に最も近い位置にXコイル402が位置する。なお図5は、傾斜磁場コイル及びRFコイルを円筒軸面に垂直な断面で切る状態を示した図である。RFシールド300では、傾斜磁場コイル102に電流が流れることにより発生する渦電流を抑制することが重要となり、特に最も接近してXコイル402による渦電流の対策が重要である。
【0035】
即ち、前述したように、RFシールドが満たすべき主な要件は、(1)RF周波数、たとえば1.5テスラのMRI装置ではおよそ64MHz、において良い電気伝導度を持つこと、(2)傾斜磁場コイルが発する数kHz程度の周波数領域で、傾斜磁場コイルから発生する磁場で渦電流が誘起されても過剰に発熱せず、燃えたりしないことである。本実施形態のRFシールドは、次の構成を備える。
【0036】
上記(1)(2)の要件を満たすため、本実施形態のRFシールドは以下のように構成される。すなわち、両面銅箔シートで形成され、長手方向が円筒の軸方向である短冊からなるパターンを持ち、円筒の両端領域では表裏のパターンの短冊が互い違いとなって重なり、中央領域では表裏の短冊が互い違いとなることなく重なる。また両側領域の、バードケージ型コイルのリング導体に近い部分で、短冊(導体部分)がつながったパターンを有する。さらに周方向で少なくとも一か所切断部(導体が途切れた部分:不連続部)を設け、広い面積の表裏のキャパシタでつながった構成とする。バードケージ型コイルのラング導体に近い部分(中央領域)についても、円筒軸方向に少なくとも一か所の切断部を有し、広い面積の表裏のキャパシタでつながった構成とする。
【0037】
切断部の幅は、当該切断部に生じうる渦電流と、RFコイルのリング導体に流れる電流とに基づき決定される。また両側領域及び中央領域の切断部は、少なくとも一か所あればよく、キャパシタの面積を確保するためには、少ないことが望ましい。
【0038】
本実施形態のRFシールドは、渦電流が強い両側領域の部分において、スリットを持つ短冊状のパターンを並べた構造としたことにより、渦電流に起因する発熱を抑制できる。またバードケージ型コイルのリング導体に近い部分及びラング導体に近い部分のいずれにおいても、広い面積の表裏のキャパシタでつながった構成となり、磁気共鳴周波数(例えば64MHz)付近ではほぼ抵抗が無く照射効率に優れ、耐久性に優れたRFコイルユニットが提供される。
【0039】
以下、具体的な実施例を挙げて、本実施形態のRFシールドのパターンについて説明する。
【0040】
<実施例1>
実施例1のRFシールド300の導電薄膜パターンを、図6及び図7を参照して説明する。なお図6は、円筒状のRFシールド300を円周方向に展開した状態を示す図であり、図6の上図は、表側(円筒外周面)のパターン(以下、表パターンという)601、下図は、裏側(円筒内周面)のパターン(以下、裏パターンという)602を示している。即ち、図6の水平方向が円筒の軸方向であり、図示する表パターン601及び裏パターン602は、それぞれ、上端と下端とを接続することで円筒状の形状となる。但し、図6に示すパターンは、説明を簡単にするために、実際のRFシールドのスケールとは異なっている。
【0041】
図示するように円筒状のRFシールド300は、表パターン601と裏パターン602とは、円筒の中心軸方向を左右とすると、左右対称である。以下、代表して表パターンの詳細を説明する。
【0042】
表パターン601は、周方向に沿った切断部614により左右2つの領域(導体領域)604、605に分割され、左側の領域604は、更に位置606で軸方向の切断部613により上下に分割されている。左右の領域の大きさは、小さいほうの領域604の周方向接合部から磁場中心方向端部までの円筒軸方向の幅(すなわち図7に示す幅704と[中央部715の幅の半分]との差分)は、バードケージ型コイル200の円筒軸方向の長さ(リング導体間の間隔)の半分未満であって、領域604の円筒軸方向の幅はバードケージ型コイル200のリング導体の円筒軸方向の幅の3倍以上であることが好ましい。
このように2つの切断部で分割された表パターンは、合計3つの領域(以下、島ともいう)に分割されている。領域605は領域604より左右方向の長さが長い。従って表と裏とでは、切断部614は円筒の軸方向にずれた位置となる。
【0043】
それぞれの島は、左右から短冊を形成する形でスリット611、612が入るが、左右のスリットはつながっておらず、それぞれの短冊は一か所で上下方向につながる部分603がある。この短冊が上下方向につながる部分603の位置(軸方向の位置)は、バードケージ型コイルのリング導体の近傍即ちパターンの中心からの距離704(図7)がリング導体間の間隔の半分の距離であることが好ましく、その幅(軸方向の長さ)は、渦電流の発熱が許容される範囲で広いことが望ましい。また短冊の円周方向(図中、上下方向)の幅は、領域604、605ともに同じ幅であるが、一方は、他方に対し半幅ずれて形成されている。図示する例では、領域604は上端及び下端の短冊は半幅である。
【0044】
裏パターン602は、このように構成された表パターン601を左右逆にしたものである。これら表と裏のパターンは、シート状にパターンを作った後、円筒状に丸められて、端部を一部はんだ付け等で電気的に導通させる。この際、右側の領域604で上辺と下辺とを導通させる。これにより右側の領域604のパターンは、円筒状にしたときに、位置606を切断部として、それ以外が電気的につながった一つの領域となる。一方、左側の領域では、上辺と下辺とは1ミリ程度のギャップを設けて導通させない。裏面も同様に領域604の方は電気的に導通させるが、領域605の方は導通させない。
【0045】
このような表パターンと裏パターンとを重ね合わせた状態を図7に示す。図7において、太線は表パターン、細線は裏パターンである。図示するように、表裏の短冊形状の重ね合わせにおいて、表パターン601の領域604と裏パターン602の領域605とが重なる左側の部分714、及び表パターン601の領域605と裏パターン602の領域604とが重なる右側の部分714では、領域604と領域605における短冊の配置が半幅ずれていることから、表裏の短冊は互い違いに重ね合わされる。一方、表パターン601の領域605と裏パターン602の領域605とが重なる中央の部分(中央部)715においてはスリットが一致しており、短冊は互い違いにはならずに重ね合わせられる。
【0046】
その結果、左右の部分714では、短冊が互い違いになっていることで、バードケージ型コイルのリング電流、すなわち周方向の電流をうまく流すことができ、またさらに、スリットによって切れずに周方向につながっている部分703とその両側の部分とで、表裏の銅箔で構成されるキャパシタを介して周方向に電流をつなげることができる。一方、中央部715については、バードケージ型コイル200のラング導体が配置されていて、周方向の電流は生じないので、この部分では互い違いにする必要はなく、また、互い違いにしない方が表裏の1つの短冊同士の重なる面積が増える利点がある。
【0047】
本実施形態のRFシールドの効果を、図9に示した先行技術のRFシールドの薄膜パターンと比較して説明する。
【0048】
先行技術のRFシールドの薄膜パターンは、図9に示したように、短冊(タイル)を設けること、バードケージ型コイルのリング導体とそれを接続するラング導体とに対応して、表裏それぞれについて、軸方向の左右と中央部分とでパターンを異ならせており、本実施形態のRFシールドと共通している。
【0049】
しかし、先行技術の薄膜パターンは、中心部では短冊の長手方向が軸方向、両端部では周方向であるのに対し、本実施形態では、短冊の長手方向はすべて軸方向である。また先行技術のパターンでは、短冊状のスリットの太さが各所で異なるので傾斜磁場による渦電流も不均一に発生し、発熱分布の予想が難しくなるが、本実施形態のRFシールドのパターンでは、短冊の幅がどこでも等しいので渦電流による発熱が主に傾斜磁場コイルの作る磁場の強弱に応じて発生し、予想や対策がしやすいという利点もある。
【0050】
さらに図8に示したように、円筒状の傾斜磁場コイルにおいて、XあるいはY方向の傾斜磁場が一番強い点は中心から距離D502離れた場所であり、その部分で渦電流が過大にならないように短冊の幅を決める必要がある。このため先行技術のRFシールドでは、図10に示すように、両端の短冊の幅は、端部に近い側802で狭く、リング導体の近く803では表裏のパターンが重なる面積をなるべく増やすために広くすることが望ましく、すなわち幅を段階的に変える設計が必要となる。また、この部分では周方向に短冊ができているため、短冊の幅をWとし、円筒の1周の長さをLとすると、表裏の重なる面積はW×L/2である。
【0051】
一方、本実施形態のRFシールドでは、距離D502の場所で渦電流が過大にならないような幅を1つ決めれば良く、短冊の幅は1種類で済む。また、この部分(距離D502の位置)の表裏のパターンは、短冊どうしが周方向につながっているので、領域604の幅、すなわち714の長さをVとすると、重なり面積はV×Lとなる。短冊の幅(702)Wに対し、714の長さVはWの7倍程度とすることができるで、短冊の重なり面積V×Lは、先行技術における重なり面積W×L/2の14倍ほど大きくなる。すなわち14倍表裏のパターンで構成するキャパシタの容量が大きく、キャパシタのインピーダンス成分は1/14となり、前述のRF周波数における電気伝導度の向上(複素インピーダンスの減少)に大きく寄与することになる。
【0052】
さらに、複数の短冊が隣接する点についてみると、本実施例では2つの領域604、605の短冊が交互に配列しているため、例えば一つの面では図7に示す位置711で表裏の片面だけで3つの短冊が合わさるが、従来技術では、円筒軸方向の両側の領域192、194のパターンは表裏の片面だけで4つの短冊が合わさる点が多く存在する。電磁界シミュレーションによれば、バードケージ型コイルの鏡像電流が比較的大きな部分に、多くの短冊の角が集まる点があると、局所的に大きなRF電流が流れて発熱する場合があることがわかっており、RF局所電流は、短冊が3つ集まる点よりも4つ集まる点の方が数倍おおきくなることが予想される。従って本実施例の構成は、従来技術のパターンに比べて、RF局所電流による発熱を抑制する効果も高い。
【0053】
以上説明したように、本実施形態のRFシールドによれば、表裏の薄膜パターンを(1)軸方向の長さが異なる二つの領域に分割し、いずれの領域にも長手方向が円筒の軸方向となる短冊を形成し、(2)円筒の両端側に短冊が周方向につながる部分を設ける、構成とすることにより、傾斜磁場に起因する渦電流の発生とそれによる発熱を抑制しながら、RF周波数における電気伝導度を向上し、コイルの照射効率を高く維持することができる、という効果を得ることができる。さらに、本実施形態のRFシールドによれば、傾斜磁場強度が高くなる円筒の軸方向両端側で表裏を合わせた短冊の作るキャパシタ面積を広く取ることで、RF周波数における電気伝導度を向上し、コイルの照射効率を高く維持することができる。
【0054】
<実施例2>
本実施例のRFシールドの薄膜パターンは、実施例1のRFシールドのパターンと同様に、表裏、各1か所で短冊が円筒軸方向に分割され、かつ、周方向にも分割されているが、実施例1では円筒軸方向に分割された2つの領域で、短冊が半幅ずれて作られているが、本実施例では、2つの領域で短冊の幅方向(円周方向)のずれはなく、代わりに、表パターンと裏パターンとで、短冊が周方向に半幅ずれていることが異なる。
【0055】
以下、図11及び図12を参照して、本実施例のRFシールドの薄膜パターンを説明する。図11は、表パターン1101と裏パターン1102を示す図で、図6と同様に、円筒状のRFシールドを円筒の軸を中心として周方向に展開した状態を示している。また図12は、表パターン1101と裏パターン1102とを重ねた状態を示し、裏パターンは点線で示している。
【0056】
表パターン1101は、切断部1114によりパターンが切断され、円筒軸方向に2つの領域1104、1105に分割される。領域1105は、軸方向の中央を含み、領域1104より広い。さらに表パターン1101は、切断部1111によりパターンが切断され、展開した状態では4つの領域(島)に分かれている。各領域は、円筒軸方向から短冊を形成する形でスリット1103が入るが、それぞれの短冊は2か所(1113で示す位置)で周方向につながる部分がある。また上端及び下端の短冊は、それ以外の短冊の幅(周方向の長さ)の半幅である。
【0057】
このような表パターン1101は、丸めて円筒状にした際に、半分の幅の短冊は電気的に接続される。すなわち端部1112が導体の接続が切れた切断部となる。
【0058】
裏パターン1102も、切断部1114で円筒の軸方向に分割される。切断部1114の位置は、表パターンの切断部1114の位置と、左右対称の関係にある。裏パターン1102は円筒軸方向にパターンを切断する切断部(表パターンの切断部1111)はない。結果として裏パターン1102は2つの島に分割される。裏パターン1102にも、表パターン1101と同様に、円筒軸方向から短冊を形成する形でスリットが入り、それぞれの短冊は2か所(1113で示す位置)で周方向につながる部分がある。すべての短冊の幅は、表パターン1101の上下の短冊以外の短冊と同じ幅である。
【0059】
このような裏パターン1102は、丸めて円筒状にした際に、上下の短冊同士は電気的に接続されない。
【0060】
これらのパターンの表裏一体化した状態では、図12に示すように、X傾斜磁場コイルの強度が高い端部側では、実施例1と同様の短冊の配置となっており、実施例1と同様に、渦電流の発生を制限することができる。また位置1113においてバードケージ型コイルのリング導体に流れる電流、即ち周方向に流れる電流に沿ってパターンが連続しているので、RF周波数における電気伝導度を向上し、コイルの照射効率を高く維持することができる。すなわち本実施例のパターンでも実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0061】
なお複数の短冊が合わさる点については、実施例1では、一面のパターンで見ると表裏の片面だけで最大3つの短冊が合わさる点があったのに対し、本実施例では、例えば点1211等で表裏の片面だけで4つの短冊が合わさるため、それらの点が、バードケージ型コイルの鏡像電流が大きい部分にあると局所的に大きなRF電流が流れる可能性があるが、切断部1114の位置を調整することで、回避することができる。
【0062】
また本実施例の薄膜パターンは、円筒状にする際に表裏2つのパターンのうち一方だけを上下で電気接続すればよいので、表裏両面に電気接続箇所がある実施例1の薄膜パターンと比較してRFシールドの製造を容易にできる。例えば接続作業をしやすい内側のパターンのみを図11に示す表パターンとしておくことで、シート状に表裏パターンを形成した後、裏パターンを外側にして円筒状に丸め、その状態で内側から電気的な接続を行えばよいので作業性が向上する。
【0063】
以上、説明したように、本発明のRFシールドは、長手方向が円筒軸方向となる短冊で構成し、少なくとも円筒の両側では表裏の短冊が互い違いに重なり短冊がつながる部分を持つことが特徴であり、それによって傾斜磁場による渦電流の発生とそれに伴う発熱を抑制し、またRF周波数における電気伝導度を向上し、RFコイルの照射効率を高く維持することができる。このような本発明のRFシールドは、パターンが単純で、従来技術のように短冊の幅を異なる長さをいくつも考慮して決定する必要がなく、主に短冊がつながる部分(接続部)の長さ(703)と短冊の幅W(702)を決めるだけでよいので、設計が簡単である。
【符号の説明】
【0064】
100:MRI装置、101:マグネット、102:傾斜磁場コイル、103:RFアンテナ、104:送受信機、105:データ処理部、106:送受信ケーブル、107:傾斜磁場制御ケーブル、108:表示装置、109:傾斜磁場電源、111:ベッド、112:被検体、200:バードケージ型コイル、203:リング導体、204:ラング導体、300:RFシールド、402,403,404:傾斜磁場コイル、601,602:RFシールドのパターン(表と裏)、1101,1102:RFシールドのパターン(表と裏)

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12