(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068569
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】車いす
(51)【国際特許分類】
A61G 5/12 20060101AFI20240513BHJP
A61G 5/02 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
A61G5/12 706
A61G5/02
A61G5/12 705
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179114
(22)【出願日】2022-11-08
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年10月5日~10月7日に第49回国際福祉機器展H.C.R.2022にて公開
(71)【出願人】
【識別番号】502327953
【氏名又は名称】三貴ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】日比野 吉高
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大寛
(57)【要約】
【課題】所望のティルト姿勢やリクライニング姿勢に正確かつ容易に変更し得る車いすを提案する。
【解決手段】記憶装置にリクライニング姿勢とティルト姿勢とを示す姿勢情報を記憶でき、操作コントローラが操作されることにより、記憶装置から読み込んだ姿勢情報に従って電動アクチュエータを駆動制御して、当該姿勢情報の示すリクライニング姿勢やティルト姿勢に変更するようにしたものである。かかる構成によれば、操作コントローラの操作により、記憶装置に記憶した所望のティルト姿勢やリクライニング姿勢に正確かつ容易に変更できる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の主車輪が設けられたベースフレーム部と、
前記ベースフレーム部に設けられ、使用者の臀部を支持する着座部と、
前記ベースフレーム部に設けられ、前記着座部に着座された使用者の背を支持する背もたれ部と、
前記背もたれ部を、前記着座部に対して前後方向へ傾動させるリクライニング機構と、
前記リクライニング機構を介して、前記背もたれ部を、所定のリクライニング傾動範囲内で傾動させると共に、該リクライニング傾動範囲内における任意のリクライニング姿勢で保持するリクライニング駆動手段と、
前記ベースフレーム部に対して、前記着座部と前記背もたれ部とを一体的に前後方向へ傾動させるティルト機構と、
前記ティルト機構を介して、前記着座部と前記背もたれ部とを、一体的に所定のティルト傾動範囲内で傾動させると共に、該ティルト傾動範囲内における任意のティルト姿勢で保持するティルト駆動手段と、
前記リクライニング駆動手段と前記ティルト駆動手段とを夫々駆動制御する駆動制御手段と、
前記使用者および/または介助者の操作により、前記駆動制御手段を駆動させる駆動操作手段と
を備え、
前記駆動制御手段は、
前記リクライニング姿勢を示す情報を記憶するリクライニング記憶手段と、
前記駆動操作手段の操作により、前記リクライニング駆動手段を駆動制御して、前記リクライニング記憶手段に記憶された前記情報のリクライニング姿勢に背もたれ部を傾動して保持する処理内容と、
前記ティルト姿勢を示す情報を記憶するティルト記憶手段と、
前記駆動操作手段の操作により、前記ティルト駆動手段を駆動制御して、前記ティルト記憶手段に記憶された前記情報のティルト姿勢に前記着座部と前記背もたれ部とを傾動して保持する処理内容と
を備えたものであることを特徴とする車いす。
【請求項2】
リクライニング駆動手段による背もたれ部の傾動中に、当該傾動に抗する負荷を検出するリクライニング負荷検出手段と、
ティルト駆動手動による着座部および背もたれ部の傾動中に、当該傾動に抗する負荷を検出するティルト負荷検出手段と
を備え、
駆動制御手段は、
前記リクライニング駆動手段の駆動による前記背もたれ部の傾動中に、前記リクライニング負荷検出手段により検出した負荷が所定のリクライニング負荷閾値に達すると、当該負荷を低減させる方向へ該背もたれ部を所定量傾動させる処理内容と、
前記ティルト駆動手段の駆動による前記着座部および前記背もたれ部の傾動中に、前記ティルト負荷検出手段により検出した負荷が所定のティルト負荷閾値に達すると、当該負荷を低減させる方向へ該着座部および該背もたれ部を所定量傾動させる処理内容と
を備えたものであることを特徴とする請求項1に記載の車いす。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背もたれ部を傾動させるリクライニング機能と、着座部および背もたれ部を一体的に傾動させるティルト機能とを有する車いすに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な車いすは、背もたれ部を前後方向へ傾動させるリクライニング機能を備えている。さらに、近年では、着座部と背もたれ部とを一体的に傾動させるティルト機能を備えた構成も知られており、例えば特許文献1の構成が提案されている。この特許文献1の従来構成は、椅子(着座部と背もたれ部とを有する構成)を傾動させるリンク機構と、リンク機構を駆動させる電動アクチュエータと、電動アクチュエータを制御するティルト駆動制御装置とを備え、使用者が操作コントローラを操作することにより、前記ティルト駆動制御装置により電動アクチュエータを駆動制御して椅子を傾動させるものである。ここで、操作コントローラの操作方法としては、使用者が、操作コントローラの操作選択スイッチを操作してティルトを選択した後に、再度操作選択スイッチを押下することによって椅子が傾動し、操作選択スイッチの押下を解除することによって椅子の傾動が停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した特許文献1の従来構成にあっては、椅子の姿勢を変える際に、該椅子が所望の姿勢となるまで操作コントローラの操作選択スイッチを押下し続けて、当該所望の姿勢となったタイミングで該操作選択スイッチの押下を解除するという、該操作選択スイッチの操作を要する。このように従来構成では、操作選択スイッチを押下解除するタイミングによって椅子の姿勢が決まることから、所望の姿勢とするためには、操作選択スイッチをタイミング良く押下解除しなければならなかった。そのため、例えば、椅子の姿勢を変更した後に変更前と同じ姿勢に戻したい場合には、当該姿勢となったタイミングで操作選択スイッチを押下解除する必要がある。しかし、このタイミングを計って押下解除することが難しく、押下解除するタイミングがずれると、姿勢も変わってしまうことから、変更前の姿勢に正確に戻すことが難しいという問題があった。そもそも使用者が変更前の姿勢を忘れてしまい、該姿勢に戻せないこともあった。
【0005】
本発明は、所望のティルト姿勢やリクライニング姿勢に容易に変更し得る車いすを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、左右一対の主車輪が設けられたベースフレーム部と、前記ベースフレーム部に設けられ、使用者の臀部を支持する着座部と、前記ベースフレーム部に設けられ、前記着座部に着座された使用者の背を支持する背もたれ部と、前記背もたれ部を、前記着座部に対して前後方向へ傾動させるリクライニング機構と、前記リクライニング機構を介して、前記背もたれ部を、所定のリクライニング傾動範囲内で傾動させると共に、該リクライニング傾動範囲内における任意のリクライニング姿勢で保持するリクライニング駆動手段と、前記ベースフレーム部に対して、前記着座部と前記背もたれ部とを一体的に前後方向へ傾動させるティルト機構と、前記ティルト機構を介して、前記着座部と前記背もたれ部とを、一体的に所定のティルト傾動範囲内で傾動させると共に、該ティルト傾動範囲内における任意のティルト姿勢で保持するティルト駆動手段と、前記リクライニング駆動手段と前記ティルト駆動手段とを夫々駆動制御する駆動制御手段と、前記使用者および/または介助者の操作により、前記駆動制御手段を駆動させる駆動操作手段とを備え、前記駆動制御手段は、前記リクライニング姿勢を示す情報を記憶するリクライニング記憶手段と、前記駆動操作手段の操作により、前記リクライニング駆動手段を駆動制御して、前記リクライニング記憶手段に記憶された前記情報のリクライニング姿勢に背もたれ部を傾動して保持する処理内容と、前記ティルト姿勢を示す情報を記憶するティルト記憶手段と、前記駆動操作手段の操作により、前記ティルト駆動手段を駆動制御して、前記ティルト記憶手段に記憶された前記情報のティルト姿勢に前記着座部と前記背もたれ部とを傾動して保持する処理内容とを備えたものであることを特徴とする車いすである。
【0007】
かかる構成にあっては、背もたれ部が如何なリクライニング姿勢にある場合でも、駆動操作手段を操作することによって、リクライニング記憶手段に記憶された情報のリクライニング姿勢に正確かつ容易に変更できる。同様に、着座部と背もたれ部とが如何なティルト姿勢にある場合でも、駆動操作手段を操作することによって、ティルト記憶手段に記憶された情報のティルト姿勢に正確かつ容易に変更できる。このように本発明の構成によれば、使用者や介助者は、所望のリクライニング姿勢とティルト姿勢とを記憶させることにより、これら姿勢に正確かつ容易に変更できる。
【0008】
前述した本発明の車いすにあって、リクライニング駆動手段による背もたれ部の傾動中に、当該傾動に抗する負荷を検出するリクライニング負荷検出手段と、ティルト駆動手動による着座部および背もたれ部の傾動中に、当該傾動に抗する負荷を検出するティルト負荷検出手段とを備え、駆動制御手段は、前記リクライニング駆動手段の駆動による前記背もたれ部の傾動中に、前記リクライニング負荷検出手段により検出した負荷が所定のリクライニング負荷閾値に達すると、当該負荷を低減する方向へ該背もたれ部を所定量傾動させる処理内容と、前記ティルト駆動手段の駆動による前記着座部および前記背もたれ部の傾動中に、前記ティルト負荷検出手段により検出した負荷が所定のティルト負荷閾値に達すると、当該負荷を低減する方向へ該着座部および該背もたれ部を所定量傾動させる処理内容とを備えたものである構成が提案される。
【0009】
かかる構成にあっては、背もたれ部の傾動中(リクライニング姿勢の変更中)や着座部と背もたれ部との一体的な傾動中(ティルト姿勢の変更中)に負荷を検知すると、当該負荷を低減させる方向へ傾動させるようにしたから、例えばリクライニング姿勢を変更する傾動中やティルト姿勢を変更する傾動中に使用者の身体が挟まれた場合に、これを検出して逆方向へ動くため、該身体が挟まった状態を解消できる。こうした負荷の検知により低減方向へ傾動させる構成を備えることによって、駆動操作手段により姿勢変更する本発明の構成において安全性を飛躍的に高めることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の車いすは、駆動操作手段の操作によって、リクライニング記憶手段に記憶されたリクライニング姿勢とティルト記憶手段に記憶されたティルト姿勢とに正確かつ容易に変更できる。これにより、リクライニング姿勢やティルト姿勢を変更した後に、使用者や介助者が駆動操作手段を操作すれば、所望のリクライニング姿勢やティルト姿勢に正確に戻すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】リクライニングの作動態様を示す説明図である。
【
図4】リクライニングとティルトとを行った態様を示す説明図である。
【
図5】リクライニングとティルトとを制御する回路の説明図である。
【
図7】姿勢作動制御処理を示すフローチャートである。
【
図8】リクライニング中に負荷を検知した場合における作動態様を示す説明図である。
【
図9】実施例2の構成における、フットフレーム部27を上下方向へ傾動させる作動態様を示す説明図である。
【
図10】実施例2の構成における、着座部6を左右方向へ傾動させる作動態様を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明にかかる車いすを具体化した実施例1,2を、以下で詳細に説明する。
【実施例0013】
本実施例の車いす1は、
図1に示すように、金属製パイプまたはFRP製パイプ等で構成された本体フレーム2を備える。本体フレーム2は、左右の主車輪3を支持するベースフレーム部11と、着座部6および背もたれ部7を有する可動フレーム部12とを備え、該可動フレーム部12がベースフレーム部11に前後方向へ傾動可能に設けられている。
【0014】
ベースフレーム部11は、左右一対のベースサイドフレーム部14により構成されており、左右のベースサイドフレーム部14が、両者間に配設された前記可動フレーム部12を介して対設されてなる。ベースサイドフレーム部14は、前後方向の第一ベースフレーム部15と、該第一ベースフレーム部15の上側に設けられた第二ベースフレーム部16と、前記可動フレーム部12を傾動可能に支持する支持ベースフレーム部17とを備えており、第二ベースフレーム部16が第一ベースフレーム部15に接合されると共に支持ベースフレーム部17が第二ベースフレーム部16に接合されて、一体化されてなる。そして、左右の第一ベースフレーム部15には、主車輪3が回転自在にそれぞれ配設されると共に、左右の支持ベースフレーム部17には、キャスタ構造の前輪4が旋回自在に夫々配設されている。
【0015】
左右の第二ベースフレーム部16には、上下方向の支持杆部19が立設されており、該支持杆部19の上部に肘掛け部20が取り付けられている。そして、前記した可動フレーム部12が、左右の支持ベースフレーム部17にティルト軸18を介して前後方向へ傾動可能に支持されている。また、第一ベースフレーム部15には、前記ティルト軸18を略中心とする円弧状に形成された部位が設けられている。
【0016】
可動フレーム部12は、左右一対のサイドフレーム部21を備え、左右のサイドフレーム部21が連結ベースフレーム部(図示せず)により連結されている。サイドフレーム部21には、主フレーム部24と、主フレーム部24に取り付けられた前後方向の座フレーム部25と、主フレーム部24の後部に取り付けられた上下方向の背もたれフレーム部26と、主フレーム部24の前部に取り付けられたフットフレーム部27とを備える。そして、左右の主フレーム部24が、前記した左右の支持ベースフレーム部17にティルト軸18を介して傾動可能に設けられている。これにより、可動フレーム部12が、左右のベースサイドフレーム部14間で、ベースフレーム部11に対して前後方向へ傾動可能となっている。
【0017】
左右の座フレーム部25には、着座シート28が左右に差し渡されて載置されており、該着座シート28は、左右の座フレーム部25によって支持されている。こうした左右の座フレーム部25と着座シート28とにより、前記した着座部6が構成されている。
【0018】
背もたれフレーム部26は、主フレーム部24にリクライニング軸29を介して前後方向へ傾動可能に取り付けられている。左右の背もたれフレーム部26の間には、前記着座部6に着座した使用者の肩から頭部を支えるヘッドレスト部30が配設されており、該ヘッドレスト部30によって左右の背もたれフレーム部26が連結されている。さらに、左右の背もたれフレーム部26には、図示しない布製の背もたれシート部材が差し渡されている。こうした左右の背もたれフレーム部26とヘッドレスト部30と背もたれシート部材とによって、前記した背もたれ部7が構成されている。
【0019】
左右のフットフレーム部27には、フットレスト部31がそれぞれ取り付けられている。
【0020】
次に、背もたれ部7をリクライニングさせる構造と可動フレーム部12をティルトさせる構造とについて説明する。
【0021】
背もたれ部7は、前述したように左右の背もたれフレーム部26が主フレーム部24にリクライニング軸29を介して傾動可能に設けられていることから、該リクライニング軸29を中心として可動フレーム部12に対して前後方向へ傾動できる。
【0022】
図1に示すように、主フレーム部24の後部には、第一装置支持部33が上下方向へ傾動可能に取り付けられており、該第一装置支持部33に第一電動アクチュエータ34が固定されている。第一電動アクチュエータ34は、装置本体34aとシリンダ34bとを備え、装置本体34aに設けられた駆動機構(モータ等の駆動機を含む)によってシリンダ34bが装置本体34aに対して進退作動されるものである。この第一電動アクチュエータ34は、装置本体34aが第一装置支持部33に固定されており、シリンダ34bの先端部が左右一方の背もたれフレーム部26に上下方向へ回転自在に連結されている。ここで、左右一方の背もたれフレーム部26には、後方へ突出された連結突部35が設けられており、該連結突部35の後端部に、前記第一電動アクチュエータ34のシリンダ34bの先端部が回転自在に取り付けられている。
【0023】
このように配設された第一電動アクチュエータ34を駆動させることにより、背もたれ部7を主フレーム部24に対して傾動させることができる。すなわち、第一電動アクチュエータ34のシリンダ34bを先端方向(上方)へ前進させることによって、背もたれ部7を主フレーム部24に対して前方へ傾動できる一方、該シリンダ34bを装置本体34a側(下方)へ後退させることによって、背もたれ部7を主フレーム部24に対して後方へ傾動できる(
図2参照)。
【0024】
ここで、第一電動アクチュエータ34は、シリンダ34bを前進できる上限位置と後退できる下限位置とが定まっており、上限位置と下限位置との間の範囲でシリンダ34bを進退移動させることができる。そして、本実施例では、シリンダ34bの上限位置で背もたれ部7が略垂直方向に沿った姿勢(
図1参照)となるように構成されており、シリンダ34bを後退させることによって背もたれ部7が後方へ傾動され、下限位置で後傾した姿勢(
図2参照)まで傾動できる。このようにシリンダ34bの上限位置における背もたれ部7の位置から、下限位置における背もたれ部7の位置に至る範囲が、背もたれ部7をリクライニングできる範囲である。さらに、第一電動アクチュエータ34は、シリンダ34bを上限位置と下限位置との間の任意位置で停止させて保持できる。
【0025】
このように第一電動アクチュエータ34を駆動させることにより、背もたれ部7を、主フレーム部24(着座部6)に対してリクライニングさせた所望のリクライニング姿勢で保持できる。尚、第一電動アクチュエータ34は、従来から公知のものを適用できることから、その詳細については省略する。
【0026】
一方、可動フレーム部12は、前述したように左右のベースサイドフレーム部14にティルト軸18を介して傾動可能に設けられていることから、該ティルト軸18を中心としてベースフレーム部11に対して前後方向へ傾動できる。
【0027】
可動フレーム部12を構成する主フレーム部24の下部には、第二装置支持部37が上下方向へ傾動可能に取り付けられており、該第二装置支持部37に第二電動アクチュエータ38が固定されている。第二電動アクチュエータ38は、前述した第一電動アクチュエータ34と同様に、装置本体38aとシリンダ38bとを備え、装置本体38aに設けられた駆動機構(モータ等の駆動機を含む)によってシリンダ38bが進退作動されるものである。この第二電動アクチュエータ38は、装置本体38aが第二装置支持部37に固定されており、シリンダ38bの先端部が左右一方のベースサイドフレーム部14に上下方向へ回転自在に連結されている。ここで、シリンダ38bの先端部は、前述した第一ベースフレーム部15の円弧状部位に連結されている。
【0028】
このように配設された第二電動アクチュエータ38を駆動させることにより、可動フレーム部12をベースフレーム部11に対して傾動させることができる。すなわち、第二電動アクチュエータ38のシリンダ38bを先端方向(前方)へ前進させることによって、可動フレーム部12をベースフレーム部11に対して後方へ傾動できる一方、該シリンダ38bを装置本体38a側(後方)へ後退させることによって、可動フレーム部12をベースフレーム部11に対して前方へ傾動できる。
【0029】
ここで、第二電動アクチュエータ38は、前述した第一電動アクチュエータ34と同様に、シリンダ38bを前進できる上限位置と後退できる下限位置とが定まっており、上限位置と下限位置との間の範囲でシリンダ38bを進退移動させることができる。そして、本実施例では、シリンダ38bの上限位置で可動フレーム部12の着座部6が略水平方向に沿った姿勢(
図1参照)となるように構成されており、シリンダ38bを後退させることによって可動フレーム部12(着座部6)が後方へ傾動され、下限位置で後傾した姿勢(
図3参照)まで傾動できる。このようにシリンダ38bの上限位置における可動フレーム部12の位置から、下限位置における可動フレーム部12の位置に至る範囲が、可動フレーム部12をティルトできる範囲である。さらに、第二電動アクチュエータ38は、シリンダ38bを上限位置と下限位置との間の任意位置で停止させて保持できる。
【0030】
このように第二電動アクチュエータ38を駆動させることにより、可動フレーム部12を前後方向へ傾動させて、着座部6と背もたれ部7とをベースフレーム部11に対してティルトさせた所望のティルト姿勢で保持できる。尚、こうした第二電動アクチュエータ38は、従来から公知のものを適用できることから、その詳細については省略する。
【0031】
本実施例の車いす1には、
図5に示すように、第一電動アクチュエータ34と第二電動アクチュエータ38とを駆動制御する制御装置40と、各アクチュエータ34,38および制御装置40に電力を供給するバッテリ42と、使用者や介助者等により操作される操作コントローラ43とを備える。ここで、各アクチュエータ34,38への電力供給は、バッテリ42から制御装置40を介して行うように構成されている。また、操作コントローラ43は、肘掛け部20や背もたれフレーム部26に設けられたフック部(図示せず)に取り付けたり、該フック部から取り外したりすることができるようになっている。
【0032】
制御装置40は、図示しないCPUと、ROMやRAM等の記憶装置41とを備え、CPUが記憶装置41に記憶されたプログラムに従って各アクチュエータ34,38を駆動制御する。記憶装置41には、書き換え可能な記憶領域に、リクライニング姿勢やティルト姿勢を示す姿勢情報が記憶される。この姿勢情報には、リクライニング姿勢における第一電動アクチュエータ34のシリンダ34bの進退位置を示す情報と、ティルト姿勢における第二電動アクチュエータ38のシリンダ38bの進退位置を示す情報とが含まれる。尚、本実施例にあっては、記憶装置41の前記記憶領域に少なくとも六個の姿勢情報を記憶できる構成としている。
【0033】
操作コントローラ43は、リクライニング用の第一作動スイッチ44aおよび第二作動スイッチ44bと、ティルト用の第三作動スイッチ45aおよび第四作動スイッチ45bと、姿勢情報を記憶装置41に記憶させるSETスイッチ46と、記憶装置41に記憶させた姿勢情報に紐付けられる登録番号スイッチ47a~47fとを備える。操作コントローラ43は、これら各スイッチが押圧操作されると、各スイッチに対応する信号を制御装置40へ送信する。
【0034】
第一作動スイッチ44aが押圧操作されると、当該押圧操作による信号を受信した制御装置40は、第一電動アクチュエータ34を駆動制御して、背もたれ部7を後方へ傾動させる。第二作動スイッチ44bが押圧操作されると、当該押圧操作による信号を受信した制御装置40は、第一電動アクチュエータ34を駆動制御して、背もたれ部7を前方へ傾動させる。第三作動スイッチ45aが押圧操作されると、当該押圧操作による信号を受信した制御装置40は、第二電動アクチュエータ38を駆動制御して、可動フレーム部12を後方へ傾動させる。第四作動スイッチ45bが押圧操作されると、当該押圧操作による信号を受信した制御装置40は、第二電動アクチュエータ38を駆動制御して、可動フレーム部12を前方へ傾動させる。これら各作動スイッチ44a,44b,45a,45bの押圧操作による各信号は、押圧操作されている間で継続して送信される。制御装置40は、これら各信号を受信している間で、各電動アクチュエータ34,38を継続して駆動制御し、信号の受信が停止すると、各電動アクチュエータ34,38の駆動を停止する制御を行う。
【0035】
SETスイッチ46と登録番号スイッチ47a~47fとが押圧操作されると、制御装置40では、操作時における前記姿勢情報(リクライニング姿勢を示す情報とティルト姿勢を示す情報)とを、記憶装置41に記憶する処理を実行する。本実施例では、六個の登録番号スイッチ47a~47fが設けられており、各登録番号スイッチ47a~47fの示す第一~第六登録番号にそれぞれ一の姿勢情報を対応付けて記憶できる。そして、押圧操作された登録番号スイッチ47a~47fに対応する登録番号に姿勢情報が既に記憶されている場合には、新たな姿勢情報に書き換えられる。
【0036】
また、制御装置40には、第一電動アクチュエータ34のシリンダ34bを進退作動させる際に流れる電流を検出する第一電流検出部49と、第二電動アクチュエータ38のシリンダ38bを進退作動させる際に流れる電流を検出する第二電流検出部50とを備える。ここで、第一電流検出部49は、第一電動アクチュエータ34へ電流を流す回路に設けられた抵抗器などの電子部品の組み合わせによって構成されている。同様に、第二電流検出部50は、第二電動アクチュエータ38へ電流を流す回路に設けられた抵抗器などの電子部品の組み合わせによって構成されている。制御装置40では、これら電流検出部49,50によって、第一電動アクチュエータ34の駆動時に流れる電流量のデータと、第二電動アクチュエータ38の駆動時に流れる電流量のデータとを検出する。
【0037】
次に、前記した制御装置40により実行される姿勢登録処理(
図6)と姿勢作動制御処理(
図7)とについて説明する。姿勢登録処理は、着座部6(主フレーム部24)に対する背もたれ部7の傾動位置(リクライニング姿勢)を示す情報と、ベースフレーム部11に対する可動フレーム部12の傾動位置(ティルト姿勢)を示す情報とを、前記制御装置40の記憶装置41に記憶する処理である。一方、姿勢作動制御処理は、背もたれ部7を傾動させる制御(第一電動アクチュエータ34の駆動制御)と可動フレーム部12を傾動させる制御(第二電動アクチュエータ38の駆動制御)とを実行する処理である。
【0038】
尚ここで、本実施例の制御装置40は、電源の自動ON/OFF機能を備えており、操作コントローラ43のいずれか一のスイッチが操作されると、電源ONとなってバッテリ42から電力が供給される。そして、操作コントローラ43のスイッチが所定時間(例えば10秒間)操作されないと、電源OFFとなってバッテリ42からの電力供給が停止される。こうした電源をON/OFFする制御処理については、従来から公知のものを適用できることから、詳細を省略する。
【0039】
姿勢登録処理は、
図6に示すように、S10で、SETスイッチ46の押圧操作により送信される信号を入力したか否かを判定する。ここで、この信号を入力した場合には、肯定判定(Yes)されてS15に進み、入力していない場合には、否定判定(No)されて姿勢登録処理を終了する。
【0040】
S15では、登録番号スイッチ47a~47fの押圧操作により送信される信号を入力したか否かを判定する。ここで、この信号を入力した場合には、肯定判定(Yes)されてS20に進み、入力していない場合には、否定判定(No)されて、信号の入力までS15が繰り返される。
【0041】
S20では、姿勢情報記憶処理を実行する。この姿勢情報記憶処理では、現時点における第一電動アクチュエータ34のシリンダ34bの停止位置を示す情報と第二電動アクチュエータ38のシリンダ38bの停止位置を示す情報とを含む姿勢情報を、S15で確認した一の登録番号スイッチに示す登録番号に対応付けて、記憶装置41に記憶される。具体的には、S15で登録番号スイッチ47aの信号を確認した場合には、第一登録番号に姿勢情報が対応付けて記憶される。尚、各シリンダ34b,38bの停止位置を示す情報としては、例えば、各シリンダ34b,38bを進退作動させる駆動機(モータ等)の駆動量(モータの回転量など)が使用され得る。
【0042】
姿勢作動制御処理は、
図7に示すように、S100で、登録番号スイッチ47a~47fの押圧操作により送信される信号を入力したか否かを判定する。ここで、この信号を入力した場合には、肯定判定(Yes)されてS140に進み、入力していない場合には、否定判定(No)されてS105に進む。
【0043】
S105では、各作動スイッチ44a,44b,45a,45bの押圧操作により送信される信号を入力したか否かを判定する。ここで、いずれかの信号を入力した場合には、肯定判定(Yes)されてS110に進み、入力していない場合には、否定判定(No)されて姿勢作動制御処理を終了する。
【0044】
S110では姿勢変更作動開始処理を実行する。姿勢変更作動開始処理では、各作動スイッチ44a,44b,45a,45bから入力した信号に応じて、各電動アクチュエータ34,38を駆動制御する。具体的には、第一作動スイッチ44aから信号を入力した場合には、第一電動アクチュエータ34を駆動開始させて、シリンダ34bを後退させる。第二作動スイッチ44bから信号を入力した場合には、第一電動アクチュエータ34を駆動開始させて、シリンダ34bを前進させる。第三作動スイッチ45aから信号を入力した場合には、第二電動アクチュエータ38を駆動開始させて、シリンダ38bを後退させる。第四作動スイッチ45bから信号を入力した場合には、第二電動アクチュエータ38を駆動開始させて、シリンダ38bを前進させる。こうした電動アクチュエータ34,38の駆動は、後述するS125又はS130の各処理が実行されるまで継続される。
【0045】
S115では、第一電流検出部49と第二電流検出部50とにより検出した電流量が、予め設定された負荷閾値に達したか否かを判定する。ここで、負荷閾値に達した場合には、肯定判定(Yes)されてS130に進み、入力していない場合には、否定判定(No)されてS120に進む。本実施例にあって、負荷閾値は、第一電流検出部49用のもの(第一負荷閾値)と第二電流検出部50用のもの(第二負荷閾値)とが設定されている。第一負荷閾値は、例えば、背もたれ部7の傾動中に着座部6との間に使用者の身体が挟まれた場合に第一電動アクチュエータ34に流れる電流値に基づいて設定されており、常態で背もたれ部7の傾動時に第一電動アクチュエータ34に流れる電流値に比して高い値である。一方、第二負荷閾値は、例えば、可動フレーム部12の傾動中に背もたれ部7や着座部6とベースフレーム部11との間に使用者の身体が挟まれた場合に第二電動アクチュエータ38に流れる電流値に基づいて設定されており、常態で可動フレーム部12の傾動時に流れる電流値に比して高い値である。尚、こうした第一負荷閾値と第二負荷閾値とは、実験により実測された電流値に基づいて設定される。
【0046】
S120では、S105で確認した作動スイッチ44a,44b,45a,45bからの信号入力が停止したか否かを判定する。ここで、信号を入力停止した場合には、肯定判定(Yes)されてS125に進み、入力していない場合には、否定判定(No)されてS115に進む。
【0047】
S125では、姿勢変更作動終了処理を実行する。姿勢変更作動終了処理では、作動スイッチ44a,44b,45a,45bの押圧操作が解除されることによって、該押圧操作による信号の入力が停止すると、当該信号により駆動中の電動アクチュエータ34,38を駆動停止し、該電動アクチュエータ34,38のシリンダ34b,38bを停止位置で保持する。第一,第二作動スイッチ44a,44bからの信号入力が停止した場合には、第一電動アクチュエータ34の駆動を停止させて、シリンダ34bを該停止時の位置で保持する。一方、第三,第四作動スイッチ45a,45bからの信号入力が停止した場合には、第二電動アクチュエータ38の駆動を停止させて、シリンダ38bを該停止時の位置で保持する。こうしたS125の処理後に姿勢作動制御処理を終了する。
【0048】
前記したS115の肯定判定から進むS130では、作動反転処理を実行する。作動反転処理では、S110又は後述のS145により駆動している電動アクチュエータ34,38の駆動を停止させ、当該駆動と逆方向へシリンダ34b,38bを作動させるように電動アクチュエータ34,38を所定時間(例えば、1秒間)駆動させる。例えば、第一電動アクチュエータ34がシリンダ34bを後退させていた場合には、当該駆動を停止させて、該シリンダ34bを前進させるように駆動させる。そして、シリンダ34bを前進させる駆動を所定時間(1秒間)実行させると、当該駆動を停止させて、当該停止時の位置でシリンダ34bを保持する。こうしたS130の処理後に姿勢作動制御処理を終了する。
【0049】
一方、前記したS100の肯定判定から進むS140では、姿勢情報読込処理を実行する。姿勢情報読込処理では、S100で確認した登録番号スイッチ47a~47fの信号に従って、当該信号の示す登録番号に対応付けた姿勢情報を、記憶装置41から読み込む。
【0050】
S145では、姿勢変更作動開始処理を実行する。この姿勢変更作動開始処理では、S140で読み込んだ姿勢情報に従って、各電動アクチュエータ34,38を駆動制御し、当該姿勢情報の示すリクライニング姿勢やティルト姿勢に向けて電動アクチュエータ34,38のシリンダ34b,38bを進退作動させる。例えば、姿勢情報が現時点の姿勢よりも後傾のリクライニング姿勢を示す情報である場合には、第一電動アクチュエータ34の駆動を開始させて、シリンダ34bを後退させる。また、例えば、姿勢情報が、現時点の姿勢と異なるリクライニング姿勢とティルト姿勢とを含む場合には、第一電動アクチュエータ34と第二電動アクチュエータ38とを駆動開始させて、各シリンダ34b,38bを進退作動させる。こうした電動アクチュエータ34,38の駆動は、前記S130又は後述するS165の各処理が実行されるまで継続される。
【0051】
S150では、第一電流検出部49と第二電流検出部50とにより検出した電流量が、予め設定された負荷閾値に達したか否かを判定する。ここで、負荷閾値に達した場合には、肯定判定(Yes)されてS130に進み、入力していない場合には、否定判定(No)されてS155に進む。このS150の処理は、前述したS115と同様の処理である。
【0052】
S155では、S100で確認した登録番号スイッチ47a~47fからの信号入力が停止したか否かを判定する。ここで、信号を入力停止した場合には、肯定判定(Yes)されてS165に進み、入力していない場合には、否定判定(No)されてS160に進む。
【0053】
S160では、前記S140で読み込んだ姿勢情報の示すリクライニング姿勢やティルト姿勢となったか否かを判定する。ここで、これら姿勢になった場合には、肯定判定(Yes)されてS165に進み、該姿勢に達していない場合には、否定判定(No)されてS150に進む。
【0054】
S165では、姿勢変更作動終了処理を実行する。姿勢変更作動終了処理では、S145で駆動開始させた電動アクチュエータ34,38の駆動を停止させて、該電動アクチュエータ34,38のシリンダ34b,38bを駆動停止時における位置で保持する。これにより、前記S160の肯定判定から実行された場合には、S140で読み込んだ姿勢情報の示す姿勢で停止保持する一方、前記S155の肯定判定から実行された場合には、登録番号スイッチ47a~47fの押圧解除したタイミングにおける姿勢で停止保持する。こうしたS165の処理後に姿勢作動制御処理を終了する。
【0055】
次に、操作コントローラ43の操作によりリクライニングさせる作動態様とティルトさせる作動態様とについて説明する。
例えば、
図1に示す姿勢から背もたれ部7をリクライニングさせる場合には、使用者が操作コントローラ43の第一作動スイッチ44aを押圧操作する。これにより、第一電動アクチュエータ34が駆動して、シリンダ34bが後退するに従って、背もたれ部7が着座部6に対して後傾していく。このシリンダ34bの後退は、使用者が第一作動スイッチ44aを押圧操作している間で継続する。この後に、使用者が第一作動スイッチ44aの押圧操作を解除すると、第一電動アクチュエータ34が駆動停止してシリンダ34bを当該停止時の位置で保持する。これにより、
図2に示すように、所望のリクライニング姿勢で保たれる。
【0056】
このリクライニング姿勢で、使用者が操作コントローラ43のSETスイッチ46と登録番号スイッチ47aとを順次押圧操作すると、当該リクライニング姿勢を示す姿勢情報が第一登録番号に対応付けられて記憶装置41に記憶される。
【0057】
前記リクライニング姿勢から背もたれ部7を起こす場合には、操作コントローラ43の第二作動スイッチ44bを押圧操作する。これにより、背もたれ部7が前方へ傾動し、第二作動スイッチ44bの押圧操作を解除した位置で背もたれ部7が停止保持される。そして、この停止位置におけるリクライニング姿勢で保たれる。
【0058】
また、例えば、
図1に示す姿勢から着座部6と背もたれ部7とを一体的にティルトさせる場合には、使用者が操作コントローラ43の第三作動スイッチ45aを押圧操作する。これにより、第二電動アクチュエータ38が駆動して、シリンダ38bが後退するに従って、可動フレーム部12がベースフレーム部11に対して後傾していく。このシリンダ38bの後退は、使用者が第三作動スイッチ45aを押圧操作している間で継続する。この後に、使用者が第三作動スイッチ45aの押圧操作を解除すると、第二電動アクチュエータ38が駆動停止してシリンダ38bを当該停止時の位置で保持する。これにより、
図3に示すように、所望のティルト姿勢で保たれる。
【0059】
このティルト姿勢で、使用者が操作コントローラ43のSETスイッチ46と登録番号スイッチ47bとを順次押圧操作すると、当該ティルト姿勢を示す姿勢情報が第二登録番号に対応付けられて記憶装置41に記憶される。
【0060】
前記ティルト姿勢から着座部6と背もたれ部7とを一体的に起こす場合には、操作コントローラ43の第四作動スイッチ45bを押圧操作する。これにより、可動フレーム部12が前方へ傾動し、第四作動スイッチ45bの押圧操作を解除した位置で可動フレーム部12が停止保持される。そして、この停止位置におけるティルト姿勢で保たれる。
【0061】
さらにまた、例えば、
図2に示すリクライニング姿勢からティルトさせる場合には、使用者が操作コントローラ43の第三作動スイッチ45aを押圧操作する。これにより、着座部6と背もたれ部7との相対的な位置関係が保たれたままで、可動フレーム部12がベースフレーム部11に対して後傾していく。その後、第三作動スイッチ45aの押圧操作が解除されると、
図4に示すティルト姿勢で保たれる。尚、このティルト姿勢で、操作コントローラ43のSETスイッチ46と登録番号スイッチ47cとが順次押圧操作されると、当該ティルト姿勢を示す姿勢情報が第三登録番号に対応付けられて記憶装置41に記憶される。
【0062】
一方、姿勢情報を記憶した登録番号スイッチ47a~47fを押圧操作すると、押圧操作した登録番号スイッチの登録番号に対応つけられた姿勢に変更できる。例えば、
図4に示すティルト姿勢の状態で、登録番号スイッチ47aが押圧操作されると、第一登録番号に対応付けられた姿勢情報に従って、第二電動アクチュエータ38を駆動させてシリンダ38bを前進させる。これにより、可動フレーム部12をベースフレーム部11に対して前方へ傾動させて、前記した
図2に示すリクライニング姿勢に変更して保持する。同様に、
図4に示すティルト姿勢の状態で、登録番号スイッチ47bが押圧操作されると、第二登録番号に対応付けられた姿勢情報に従って、第一電動アクチュエータ34を駆動させてシリンダ34bを前進させる。これにより、背もたれ部7を着座部6に対して前方へ傾動させて、前記した
図3に示すティルト姿勢に変更して保持する。
【0063】
尚ここで、本実施例にあっては、登録番号スイッチ47a~47fの操作による各電動アクチュエータ34,38の駆動を、各登録番号スイッチ47a~47fの登録番号に夫々対応つけられた姿勢に到達すること、又は登録番号スイッチ47a~47fの操作解除によって停止する。そのため、各登録番号の姿勢に変更するには、該姿勢に到達するまで(電動アクチュエータ34,38が停止するまで)、登録番号スイッチ47a~47fを押圧操作し続ける必要がある。そして、各登録番号の姿勢に到達する前に、登録番号スイッチの操作を解除すると、当該解除したタイミングで電動アクチュエータ34,38が駆動停止して、この停止した姿勢で保持される。このように本実施例の構成は、予め記憶された姿勢に、半自動で変更できる。
【0064】
また、例えば、
図8(A)に示すように、操作コントローラ43の第一作動スイッチ44aの押圧操作により背もたれ部7が後方へ傾動している間に、使用者の身体が挟まる等することによって、第一電流検出部49で検出された電流量が第一負荷閾値に達すると、背もたれ部7の後方への傾動を停止して、
図8(B)に示すように、該背もたれ部7を前方へ所定時間(1秒間)傾動させて停止させる。このように背もたれ部7の傾動中に、常態を異なる負荷が検知されると、背もたれ部7を逆方向へ傾動させて、該負荷を軽減させる。同様に、可動フレーム部12の傾動中に第二電流検出部50の電流量が第二負荷閾値に達した場合には、該可動フレーム部12の傾動を停止して、逆方向へ所定時間(1秒間)傾動させて停止させる。
【0065】
本実施例の車いす1は、前述したように、操作コントローラ43の作動スイッチ44a,44b,45a,45bが操作されることにより、所望のリクライニング姿勢やティルト姿勢に容易に変更することができる。そして、リクライニング姿勢やティルト姿勢にある状態で、この姿勢を示す姿勢情報を操作コントローラ43の操作により記憶でき、記憶後に操作コントローラ43の登録番号スイッチ47a~47fが操作されることによって、記憶した姿勢情報のリクライニング姿勢やティルト姿勢に半自動で変更できる。このようにリクライニング姿勢やティルト姿勢を記憶すれば、如何な姿勢にある状態でも操作コントローラ43の操作により、記憶したリクライニング姿勢やティルト姿勢に正確かつ容易に変更することができる。
【0066】
また、本実施例の構成は、背もたれ部7の傾動中に第一電動アクチュエータ34に流れる電流量が第一負荷閾値に達すると、背もたれ部7を逆方向へ所定時間(1秒間)傾動させて停止させると共に、可動フレーム部12の傾動中に第二電動アクチュエータ38に流れる電流量が第二負荷閾値に達すると、可動フレーム部12を逆方向へ所定時間(1秒間)傾動させて停止させる。これにより、前記傾動中に使用者の身体が挟まれた場合に、逆方向へ傾動することで、この挟まれた状態をすぐに解消できる。さらに、逆方向への傾動を所定時間(1秒間)のみ実行するようにしていることから、逆方向への傾動によって身体の他の部位が挟まったりする等の二次的な事故の発生を抑制できる。このように本実施例の構成によれば、姿勢を変更する際に身体が挟まる等の事故が発生することを抑制でき、安全性を飛躍的に高めることができる。
【0067】
前述した実施例にあって、可動フレーム部12に固定される着座部6と該可動フレーム部12にリクライニング軸29を介して傾動可能に取り付けられた背もたれ部7との構造により、本発明にかかるリクライニング機構が構成されている。第一電動アクチュエータ34が、本発明にかかるリクライニング駆動手段に相当する。着座部6と背もたれ部7とを有する可動フレーム部12がティルト軸18を介してベースフレーム部11に傾動可能に取り付けられた構造により、本発明にかかるティルト機構が構成されている。第二電動アクチュエータ38が、本発明にかかるティルト駆動手段に相当する。制御装置40が、本発明にかかる駆動制御手段に相当する。操作コントローラ43が、本発明にかかる駆動操作手段に相当する。制御装置40の記憶装置41が、本発明にかかるリクライニング記憶手段とティルト記憶手段とに相当する。第一電流検出部49が、本発明にかかるリクライニング負荷検出手段に相当し、第二電流検出部50が、本発明にかかるティルト負荷検出手段に相当する。第一負荷閾値が、本発明にかかるリクライニング負荷閾値に相当し、第二負荷閾値が、本発明にかかるティルト負荷閾値に相当する。
実施例2の構成は、前記実施例1の構成に加えて、操作コントローラの操作により左右のフットフレーム部27(およびフットレスト部31)を前後方向へ傾動させる機能と、および該操作コントローラの操作により着座部6を左右方向へ傾動させる機能とを備えたものである。尚、実施例2にあっても、前述した実施例1と同様のリクライニング機能とティルト機能とを有している。これらについては説明を適宜省略する。
第三電動アクチュエータ62を駆動させることにより、フットフレーム部27を可動フレーム部12に対して前後方向へ傾動させることができる。すなわち、第三電動アクチュエータ62のシリンダ62bを先端方向(前方)へ前進させることによって、フットフレーム部27を可動フレーム部12に対して前方へ傾動できる一方、該シリンダ62bを装置本体62a側(後方)へ後退させることによって、フットフレーム部27を後方へ傾動できる。ここで、第三電動アクチュエータ62は、前述した第一,第二電動アクチュエータ34,38と同様に、シリンダ62bを前進できる上限位置と後退できる下限位置とが定まっており、上限位置と下限位置との間の範囲でシリンダ38bを進退移動させることができる。そして、第三電動アクチュエータ62は、シリンダ62bを上限位置と下限位置との間の任意位置で停止させて保持でき、該任意位置における姿勢でフットフレーム部27を保持できる。
操作コントローラのフットフレーム用作動スイッチが押圧操作されることにより、制御装置40が第三電動アクチュエータ62を駆動制御して、フットフレーム部27を前後方へ傾動させる。また、操作コントローラの着座用作動スイッチが押圧操作されることにより、制御装置40が第四電動アクチュエータ76を駆動制御して、着座部6を左右方へ傾動させる。ここで、フットフレーム用作動スイッチと着座用作動スイッチとは、前記したリクライニング用とティルト用との作動スイッチと同様に、押圧操作されている間で各スイッチに対応した信号が継続して制御装置40へ送信することから、制御装置40は、これら各信号を受信している間で各電動アクチュエータ62,76を駆動制御し、該信号の受信が停止すると、各電動アクチュエータ62,76を駆動停止する制御を行う。
さらに、操作コントローラには、実施例1と同様にSETスイッチと六個の登録番号スイッチとが設けられており、これらが押圧操作されると、制御装置40では、操作時におけるフットフレーム部27の姿勢を示す情報と着座部6の姿勢を示す情報とを、該操作時におけるリクライニング姿勢の情報およびティルト姿勢の情報と共に、記憶装置41に記憶する処理を行う。このように実施例2では、前記フットフレーム部27の姿勢、着座部6の姿勢、リクライニング姿勢、およびティルト姿勢の各情報を含む一の姿勢情報が、各登録番号スイッチの示す第一~第六登録番号に、それぞれ対応付けて記憶される。
このように姿勢情報が記憶された登録番号スイッチが押圧操作されると、押圧操作された登録番号スイッチの登録番号に対応つけられた姿勢(リクライニング姿勢、ティルト姿勢、フットフレーム部27の姿勢、および着座部6の姿勢)に変更し、当該姿勢で保持する。ここで、各登録番号の姿勢に変更するには、実施例1と同様に、該姿勢に到達するまで登録番号スイッチを押圧操作し続ける必要がある。
また、実施例2の構成にあって、制御装置40には、第三電動アクチュエータ62のシリンダ62bを進退作動させる際に流れる電流を検出する第三電流検出部(図示せず)と、第四電動アクチュエータ76のシリンダ76bを進退作動させる際に流れる電流を検出する第四電流検出部(図示せず)とを備える。そして、フットフレーム部27の傾動中に、第三電流検出部が予め設定された第三負荷閾値に達すると、フットフレーム部27を逆方向へ所定時間(1秒間)傾動させて停止される。同様に、着座部6の傾動中に、第四電流検出部が予め設定された第三負荷閾値に達すると、着座部6を逆方向へ所定時間(1秒間)傾動させて停止させる。これにより、これら傾動中に使用者の身体がフットフレーム部27や着座部6に挟まれた場合に、この挟まれた状態を解除できる。尚、第三負荷閾と第四負荷閾値とは、前記第一,第二負荷閾値と同様に、実験により実測された電流値に基づいて設定される。
実施例2の構成は、操作コントローラのフットレスト用作動スイッチが操作されることにより、フットフレーム部27の姿勢を容易に変更できると共に、該操作コントローラの着座用作動スイッチが操作されることにより、着座部6の姿勢を容易に変更できる。そして、各登録番号スイッチ47a~47fが操作されることによって、リクライニング姿勢、ティルト姿勢、フットフレーム部27の姿勢、および着座部6の姿勢に半自動で変更できる。また、フットフレーム部27の傾動中に第三電動アクチュエータ62に流れる電流量が第三負荷閾値に達すると、フットフレーム部27を逆方向へ所定時間傾動させて停止させると共に、着座部6の傾動中に第四電動アクチュエータ76に流れる電流量が第四負荷閾値に達すると、着座部6を逆方向へ所定時間傾動させて停止させる。このように実施例2では、背もたれ部7、可動フレーム部12、フットフレーム部27、および着座部6のいずれの傾動中にあっても、使用者の身体が挟まれた場合に、逆方向へ傾動することで、この挟まれた状態を解消できる。
このように実施例2の構成は、リクライニングとティルトとの機能に加えて、フットフレーム部27を前後方向へ傾動させる機能と着座部6を左右方向へ傾動させる機能とを備えたものであり、いずれも操作コントローラの操作によって容易に変更することができる。そして、使用者の身体が挟まれる等した場合にも、これを直ちに解消でき、安全性にも優れている。
本発明は、前述した実施例1,2に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜変更することが可能である。例えば、前述の実施例における各部の寸法形状は、適宜変更することができる。
実施例1では、リクライニング姿勢とティルト姿勢との姿勢情報を記憶可能な記憶数を最大六個に設定したが、この記憶数は適宜変更して設定することができる。実施例2にもあっても姿勢情報の記憶数は適宜変更できる。
実施例1にあって、操作コントローラの登録番号スイッチの操作によりリクライニング姿勢とティルト姿勢との両方を変更する場合には、両方を同時に変更開始するようにしても良いし、一方を先に変更した後に他方を変更するようにしても良い。さらには、両方に変更が同時に終了するように、一方を先に変更開始し、その後に他方を変更開始するようにしても良い。実施例2も同様に、全ての姿勢を同時に変更開始するようにしても良いし、所定の順序で変更開始するようにしても良い。
実施例1,2では、登録番号に対応付けられた姿勢へ変更する駆動を、登録番号スイッチを押圧操作している間に限って実行するようにしたが、これに限らず、例えば、登録番号スイッチを押圧操作すれば、その後に押圧解除しても前記姿勢へ変更されるようにしても良い。
実施例1,2では、記憶装置に記憶される姿勢情報を、シリンダを駆動する駆動機(モータ等)の駆動量に基づく情報としたが、これに限らず、例えば、該駆動機へ供給する電力量に基づく情報とすることもできる。
実施例1では、リクライニング中に第一電動アクチュエータに流れる電流が第一負荷閾値に達した場合と、ティルト中に第二電動アクチュエータに流れる電流が第二負荷閾値に達した場合とで、逆方向へ傾動させる時間を同じとしたが、互いに異なる時間を設定することも可能である。また、逆方向へ所定時間傾動させる構成に限らず、例えば、逆方向へ所定角度傾動させる構成とすることも可能である。実施例2にあっても同様に設定することが可能である。
実施例1,2では、制御装置の電流検出部(抵抗器等の電子部品で構成されたもの)によって検出した電流に基づいて、電動アクチュエータにかかる負荷を検出する構成としたが、これに限らず、例えば、電動アクチュエータに流れる電流を専用で検出するセンサを設けて、該センサにより前記負荷を検出するようにしても良い。
実施例1では、第一,第二電動アクチュエータがシリンダを進退移動する構成のものとしたが、これに限らず、様々なタイプのアクチュエータを適用することが可能である。例えば、リクライニング軸とティルト軸との回転角度を検出できるものであれば、一般的なモータやステッピングモータ等によりギアを介して該リクライニング軸と該ティルト軸とを夫々傾動させる構成のものを用いることができる。実施例2にあっても同様に様々なタイプのアクチュエータを適用可能である。
実施例2では、左右のフットフレーム部を左右の第三電動アクチュエータによって夫々傾動させる構成であるが、これに限らず、左右のフットフレーム部を一の第三電動アクチュエータによって一体的に傾動させる構成としても良い。
実施例1,2では、制御装置が電源の自動ON/OFF機能を備えた構成としたが、これに限らず、電源をON/OFFさせるメインスイッチを設ける構成としても良い。