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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068575
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】ステッチャー及びタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/30 20060101AFI20240513BHJP
【FI】
B29D30/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179123
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日野 大輔
(72)【発明者】
【氏名】鬼松 博幸
【テーマコード(参考)】
4F215
4F501
【Fターム(参考)】
4F215AH20
4F215AM32
4F215AR02
4F215VA02
4F215VD01
4F215VD02
4F215VD03
4F215VK02
4F215VL11
4F215VL27
4F215VP07
4F215VP10
4F215VP11
4F215VR03
4F501TA02
4F501TC01
4F501TC02
4F501TC03
4F501TD03
4F501TE10
4F501TE22
4F501TE28
4F501TL07
4F501TL10
4F501TR06
4F501TT03
4F501TU02
4F501TV11
4F501TV14
(57)【要約】
【課題】
ステッチローラーによる第1予備成形体及び第2予備成形体の変形を抑制可能なステッチャーを提供する。
【解決手段】
本開示は、シリンダチューブ及びピストンロッドを有するエアシリンダと、ピストンロッドに取り付けられ、第1予備成形体に第2予備成形体を押し当てるステッチローラーと、ステッチローラーが第2予備成形体に加える力を調整可能な空気給排ユニットと、ピストンロッドのストローク位置を測定する位置センサと、ステッチングの実施中において、ピストンロッドのストローク位置を取得し、取得したピストンロッドのストローク位置が予め設定した基準位置よりも第2予備成形体寄りに位置しているとき、空気給排ユニットに制御信号を送信して、ステッチローラーが第2予備成形体に加える力を低減させる制御装置と、を備えている、ステッチャーである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤの製造工程において、環状の第1予備成形体に環状の第2予備成形体を外方から押し当てて前記第1予備成形体と前記第2予備成形体を貼り合わせるステッチングを実施するためのステッチャーであって、
シリンダチューブ及びピストンロッドを有するエアシリンダと、
前記エアシリンダのピストンロッドに取り付けられ、前記第2予備成形体に接触して前記第2予備成形体に力を加えることにより、前記第1予備成形体に前記第2予備成形体を押し当てるステッチローラーと、
前記シリンダチューブへの空気の供給と前記シリンダチューブからの空気の排出を切り替えることで、前記ステッチローラーが前記第2予備成形体に加える力を調整可能な空気給排ユニットと、
前記ピストンロッドのストローク位置を測定する位置センサと、
ステッチングの実施中において、前記位置センサから前記ピストンロッドのストローク位置を取得し、取得した前記ピストンロッドのストローク位置が予め設定した基準位置よりも前記第2予備成形体寄りに位置しているとき、前記空気給排ユニットに制御信号を送信して、前記ステッチローラーが前記第2予備成形体に加える力を低減させる制御装置と、を備えている、ステッチャー。
【請求項2】
タイヤの製造工程において、環状の第1予備成形体に環状の第2予備成形体を外方から押し当てて前記第1予備成形体と前記第2予備成形体を貼り合わせるステッチングを実施するためのステッチャーであって、
シリンダチューブ及びピストンロッドを有するエアシリンダと、
前記エアシリンダのピストンロッドに取り付けられ、前記第2予備成形体に接触して前記第2予備成形体に力を加えることにより、前記第1予備成形体に前記第2予備成形体を押し当てるステッチローラーと、
前記ピストンロッドのストローク位置を測定する位置センサと、
前記エアシリンダを前記第1予備成形体及び前記第2予備成形体の半径方向であるタイヤ半径方向に移動可能な径方向駆動装置と、
ステッチングの実施中において、前記位置センサから前記ピストンロッドのストローク位置を取得し、取得した前記ピストンロッドのストローク位置が予め設定した基準位置よりも前記第2予備成形体寄りに位置しているとき、前記径方向駆動装置に制御信号を送信して、前記エアシリンダをタイヤ半径方向外方に移動させることにより、前記ステッチローラーが前記第2予備成形体に加える力を低減させる制御装置と、を備えている、ステッチャー。
【請求項3】
前記エアシリンダを前記第1予備成形体及び前記第2予備成形体の軸方向であるタイヤ軸方向に移動可能な軸方向駆動装置をさらに備え、
前記制御装置は、ステッチングの実施中において、前記エアシリンダのタイヤ軸方向位置に応じて前記基準位置の設定を順次更新する、請求項1又は2に記載のステッチャー。
【請求項4】
前記タイヤ軸方向に対する前記エアシリンダの傾斜角度を変更可能な回動装置をさらに備え、
前記制御装置は、ステッチングの実施中において、前記エアシリンダのタイヤ軸方向位置、及び、タイヤ軸方向に対する前記エアシリンダの傾斜角度に応じて前記基準位置の設定を順次更新する、請求項3に記載のステッチャー。
【請求項5】
前記第1予備成形体と前記第2予備成形体を接合させた後に、請求項1又は2に記載のステッチャーを用いて前記第1予備成形体に前記第2予備成形体を押し当てることで未架橋タイヤを形成し、形成した未架橋タイヤを加圧及び加熱することでタイヤを得る、タイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タイヤの製造工程におけるステッチングを実施するためのステッチャー及びタイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの製造工程では、タイヤを構成する環状の第1予備成形体に、同じくタイヤを構成する環状の第2予備成形体を外方から押し当て、両者を貼り合わせるステッチング(圧着)が実施される。このステッチングはステッチャーを用いて実施することができる。ステッチャーは、エアシリンダとエアシリンダの先端部分に取り付けられたステッチローラーを備えており、ステッチローラーが第2予備成形体に接触して力を加えることにより、第1予備成形体に第2予備成形体を押し当てることができる(下記の特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-12342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常は、ステッチローラーが第2予備成形体に加える力と第2予備成形体がステッチローラーを押し返す力が釣り合っている。ところが、この釣り合いが一時的に崩れて、ステッチローラーが第1予備成形体及び第2予備成形体を変形させてしまう場合がある。これを踏まえ、本開示は、ステッチローラーによる第1予備成形体及び第2予備成形体の変形を抑制可能なステッチャーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、タイヤの製造工程において、環状の第1予備成形体に環状の第2予備成形体を外方から押し当てて前記第1予備成形体と前記第2予備成形体を貼り合わせるステッチングを実施するためのステッチャーであって、シリンダチューブ及びピストンロッドを有するエアシリンダと、前記エアシリンダのピストンロッドに取り付けられ、前記第2予備成形体に接触して前記第2予備成形体に力を加えることにより、前記第1予備成形体に前記第2予備成形体を押し当てるステッチローラーと、前記シリンダチューブへの空気の供給と前記シリンダチューブからの空気の排出を切り替えることで、前記ステッチローラーが前記第2予備成形体に加える力を調整可能な空気給排ユニットと、前記ピストンロッドのストローク位置を測定する位置センサと、ステッチングの実施中において、前記位置センサから前記ピストンロッドのストローク位置を取得し、取得した前記ピストンロッドのストローク位置が予め設定した基準位置よりも前記第2予備成形体寄りに位置しているとき、前記空気給排ユニットに制御信号を送信して、前記ステッチローラーが前記第2予備成形体に加える力を低減させる制御装置と、を備えている、ステッチャーである。
【発明の効果】
【0006】
本開示のステッチャーによれば、ステッチローラーによる第1予備成形体及び第2予備成形体の変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、ステッチャーの正面図である。
図2図2は、ステッチャーの側面図である。
図3図3は、ステッチャーの空気系統の概略図である。
図4図4は、ステッチング方法を示す図である。
図5図5は、変形抑制プログラムのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<ステッチャーの構造>
以下、本実施形態に係るステッチャー100について説明する。ステッチャー100は、環状(ここではトロイド状)の第1予備成形体101の外周面に、環状(ここでは円筒状)の第2予備成形体102を押し当てて両者を貼り合わせるステッチングを実施する。本実施形態の第1予備成形体101はいわゆる生タイヤ基体(タイヤ中間体とも呼ばれる)であり、第2予備成形体102はいわゆるトレッドリング(トレッド部材とも呼ばれる)である。なお、以下では、第1予備成形体101と第2予備成形体102を合わせて、予備成形体110と称する。
【0009】
図1は、ステッチャー100の正面図である。また、図2は、図1の紙面左方から見たステッチャー100の側面図である。さらに、図3は、ステッチャー100の空気系統の概略図である。図1の紙面左右方向が予備成形体110の軸方向(以下、「タイヤ軸方向」と称す)であり、図1の紙面上下方向が予備成形体110の径方向(以下、「タイヤ径方向」と称す)である。図2では、紙面に対して垂直な方向がタイヤ軸方向であり、紙面上下方向がタイヤ径方向である。
【0010】
本実施形態のステッチャー100は、タイヤ軸方向から見て予備成形体110の頂部付近(12時位置付近)に位置している(図2参照)。ただし、予備成形体110に対するステッチャー100の位置(周方向位置)は限定されない。例えば、ステッチャー100は、タイヤ軸方向から見て、予備成形体110の下端付近(6時位置付近)に位置していてもよい。また、ステッチャー100は、予備成形体110の複数の周方向位置に対応して配置されていてもよい。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係るステッチャー100は、互いに面対象である第1ユニット11と第2ユニット12とを備えている。第1ユニット11と第2ユニット12は、予備成形体110のタイヤ軸方向中央(いわゆる赤道)を通りタイヤ軸方向に垂直な面に対して対称である。なお、ステッチャー100は、第1ユニット11と第2ユニット12のうちいずれか一方のみを有していてもよい。
【0012】
図1及び図3に示すように、第1ユニット11及び第2ユニット12は、それぞれエアシリンダ20と、エアシリンダ20の空気を給排する空気給排ユニット30と、エアシリンダ20に取り付けられたステッチローラー40と、エアシリンダ20を保持するシリンダベース50と、エアシリンダ20を回動する回動装置60と、シリンダベース50をタイヤ径方向に移動させる径方向駆動装置70とを備えている。また、ステッチャー100は、第1ユニット11及び第2ユニット12をタイヤ軸方向に移動させる軸方向駆動装置80と、ステッチャー100を制御する制御装置90とを備えている。以下、これらの構成要素について順に説明する。
【0013】
エアシリンダ20は、後述するステッチローラー40を保持する機器である。図1に示すように、エアシリンダ20は、管状のシリンダチューブ21と、シリンダチューブ21内を移動するピストン28(図3参照)に固定されたピストンロッド22とを有している。ピストンロッド22には、ピストンロッド22の長手方向に対して垂直な方向に延びる支持軸部材23が設けられている。また、ピストンロッド22のうち後述するシリンダベース50に対向する部分には、シリンダベース50に向かって突出する2つの突起片24が設けられている。
【0014】
さらに、図3に示すように、本実施形態のエアシリンダ20は、単動式であって、シリンダチューブ21内に位置するスプリング25と、シリンダチューブ21内における空気を給排する1つの給排口26を有している。ただし、エアシリンダ20は、複動式であって、スプリング25を有しておらず、ピストン28の前後にそれぞれ位置する2つの給排口26を有していてもよい。また、エアシリンダ20は、シリンダチューブ21に対するピストンロッド22の位置、つまりピストンロッド22のストローク位置を測定する位置センサ27が取り付けられている。本実施形態の位置センサ27はピストンロッド22と接触しない非接触式であるが、位置センサ27の形式はこれに限定されない。
【0015】
空気給排ユニット30は、シリンダチューブ21内における空気を給排するユニットである。つまり、空気給排ユニット30は、シリンダチューブ21内に空気を供給できるともに、シリンダチューブ21内から空気を排出することができる。本実施形態の空気給排ユニット30は、エアシリンダ20の給排口26に接続された給排配管31と、給排配管31に接続された電磁弁32と、電磁弁32に向かって空気を供給する供給配管33と、電磁弁32から外部に向かって空気を排出する排出配管34とを有している。本実施形態では、電磁弁32の開閉を切り替えることで、シリンダチューブ21への空気の供給とシリンダチューブ21からの空気の排出を切り替えることができる。なお、空気給排ユニット30の構成は上記のものに限定されない。例えば、空気給排ユニット30は、電磁弁32に代えて、シリンダチューブ21内の空気圧力を制御する電空レギュレータを有していてもよい。
【0016】
ステッチローラー40は、第2予備成形体102に接して第2予備成形体102に力を加え、第1予備成形体101に第2予備成形体102を押し当てる部材である。図1に示すように、ステッチローラー40は、支持軸部材23を介してピストンロッド22に取り付けられている。また、ステッチローラー40は、ピストンロッド22の長手方向に対して垂直な方向に延びる回転軸回りに回転することができる。なお、第1ユニット11のステッチローラー40と第2ユニット12のステッチローラー40は互いに対向するように配置されている。
【0017】
また、ステッチローラー40が第2予備成形体102に加える力は、空気給排ユニット30によってシリンダチューブ21への空気の供給とシリンダチューブ21からの空気の排出を切り替えることにより調整できる。例えば、ピストンロッド22のストローク位置が一定である場合、空気給排ユニット30がシリンダチューブ21に空気を供給すれば、シリンダチューブ21内の空気圧力が上昇し、ステッチローラー40が第2予備成形体102に加える力は大きくなる。一方、空気給排ユニット30がシリンダチューブ21から空気を排出すれば、シリンダチューブ21内の空気圧力が低下し、ステッチローラー40が第2予備成形体102に加える力は小さくなる。なお、エアシリンダ20が複動式であっても、シリンダチューブ21内の空気圧力を調整することで、ステッチローラー40が第2予備成形体102に加える力を調整することができる。
【0018】
シリンダベース50は、エアシリンダ20を保持する部材である。本実施形態のシリンダベース50は扇状の板材である。ただし、シリンダベース50の形状はこれに限定されない。また、シリンダベース50は2つのガイド51を有している。ピストンロッド22のストローク位置が予め定めた位置にあるときのステッチローラー40の先端位置を基準点41とすると、ガイド51はこの基準点41を中心とする円弧状の長孔である。各ガイド51には、エアシリンダ20に固定された突起片24がそれぞれ挿入されている。これらの突起片24がガイド51に沿って移動することで、基準点41を中心にしてエアシリンダ20が回動する。
【0019】
回動装置60は、タイヤ軸方向(図1の紙面左右方向)に対するエアシリンダ20の傾斜角度を変更する、つまりエアシリンダ20を回動させる装置である。回動装置60は、ラックギア61と、ピニオンギア62と、ピニオンモータ63とを有している。ラックギア61は、基準点41を中心とする円弧状のギアであって、シリンダベース50の端部に固定されている。ピニオンギア62は、ラックギア61と噛み合い、ピニオンモータ63によって回転駆動される。ピニオンモータ63がピニオンギア62を回転させることにより、ピニオンギア62はラックギア61に沿って移動する。
【0020】
また、ピニオンモータ63は、エアシリンダ20に固定された連結部材64に保持されている。つまり、ピニオンギア62は、ピニオンモータ63及び連結部材64を介してエアシリンダ20に連結されている。なお、ピニオンギア62の回転中心、2つの突起片24、及び、基準点41は一直線上に並んでいる。回動装置60は上記の構成を備えるため、ピニオンモータ63がピニオンギア62を回転させることにより、エアシリンダ20を滑らかに回動させることができる。
【0021】
径方向駆動装置70は、シリンダベース50をタイヤ径方向に移動させる装置である。図2に示すように、径方向駆動装置70は、タイヤ径方向に延びる径方向駆動ねじ棒71と、径方向駆動ねじ棒71に取り付けられているとともに、シリンダベース50が固定されている径方向駆動ナット72と、径方向駆動ねじ棒71を回転させる径方向駆動モータ73と、径方向駆動ねじ棒71及び径方向駆動モータ73を保持する径方向駆動ベース74とを有している。
【0022】
径方向駆動モータ73が径方向駆動ねじ棒71を回転させると、径方向駆動ナット72が径方向駆動ねじ棒71に沿ってタイヤ径方向に移動する。これによりシリンダベース50がタイヤ径方向に移動し、ひいてはエアシリンダ20及びステッチローラー40がタイヤ径方向に移動する。
【0023】
軸方向駆動装置80は、シリンダベース50をタイヤ軸方向に移動させる装置である。シリンダベース50をタイヤ軸方向に移動させることで、第1ユニット11及び第2ユニット12全体がタイヤ軸方向に移動する。図1に示すように、軸方向駆動装置80は、タイヤ軸方向に延びる軸方向駆動ねじ棒81と、軸方向駆動ねじ棒81に取り付けられているとともに、径方向駆動装置70の径方向駆動ベース74が固定されている軸方向駆動ナット82と、軸方向駆動ねじ棒81を回転させる軸方向駆動モータ83と、軸方向駆動ねじ棒81及び軸方向駆動モータ83を保持する軸方向駆動ベース84とを有している。
【0024】
軸方向駆動モータ83が軸方向駆動ねじ棒81を回転させると、軸方向駆動ナット82が軸方向駆動ねじ棒81に沿ってタイヤ軸方向に移動する。これにより径方向駆動装置70の径方向駆動ベース74がタイヤ径方向に移動し、ひいてはシリンダベース50、エアシリンダ20、及び、ステッチローラー40がタイヤ軸方向に移動する。なお、軸方向駆動ねじ棒81が一の方向に回転すると第1ユニット11と第2ユニット12の軸方向駆動ナット82は互いに近づくように移動し、軸方向駆動ねじ棒81が他の方向に回転すると第1ユニット11と第2ユニット12の軸方向駆動ナット82は互いに離れるように移動する。
【0025】
制御装置90は、ステッチャー100全体を制御する装置である。制御装置90は、プロセッサ、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、及び、I/Oインターフェース等を有している。制御装置90の不揮発性メモリには後述する変形抑制プログラムを含む種々のプログラム、及び、種々のデータが保存されている。制御装置90のプロセッサは、保存されているプログラムに基づき揮発性メモリを用いて演算処理を行う。
【0026】
図3に示すように、制御装置90は、位置センサ27と電気的に接続されており、位置センサ27から測定信号を受信することにより、ピストンロッド22のストローク位置を取得することができる。また、制御装置90は、空気給排ユニット30と電気的に接続されており、空気給排ユニット30に制御信号を送信することにより、シリンダチューブ21内の空気量を調整でき、ひいてはステッチローラー40が第2予備成形体102に加える力を調整することができる。
【0027】
<ステッチング方法>
続いて、上述したステッチャー100を用いたステッチング方法について説明する。ステッチは、タイヤの製造工程の一部であって、第1予備成形体101に第2予備成形体102を外方から押し当て、両者を貼り合わせる工程である。図4は、ステッチング方法を説明する図である。ここで、図4に示すように、本実施形態の第2予備成形体102には、スチールワイヤで形成された2枚のベルト103が含まれている。これら2枚のベルト103はタイヤ径方向に重ねられている。なお、断面視において、第2予備成形体102の表面は、タイヤ軸方向中央付近では直線状であるのに対し、ベルト103のタイヤ軸方向端部付近よりもベルト軸方向外側では湾曲している。
【0028】
本実施形態に係るステッチング方法は、図4の(a)、(b)、(c)、(d)の順で実施される。なお、ステッチングは、予備成形体110を中心軸回りに回転させながら行う。また、図4では、第1ユニット11の動作のみを示すが、第2ユニット12も第1ユニット11と同様に動作する。
【0029】
ステッチングでは、まず、図4の(a)で示すように、ステッチローラー40を第2予備成形体102に接触させ、第2予備成形体102に力を加える。そして、この状態で、エアシリンダ20を第2予備成形体102のタイヤ軸方向中央からタイヤ軸方向外方に移動させる。エアシリンダ20のタイヤ軸方向への移動は、軸方向駆動装置80(図1参照)によって行うことができる。
【0030】
続いて、図4の(b)で示すように、ステッチローラー40がベルト103のタイヤ軸方向端部付近に達すると、そのままエアシリンダ20をタイヤ軸方向外方に移動させつつ、エアシリンダ20の回動を開始する。
【0031】
さらに、図4の(c)で示すように、ステッチローラー40がベルト103のタイヤ軸方向端部よりもタイヤ軸方向外側に達したときにも、そのままエアシリンダ20をタイヤ軸方向外方に移動させつつ、エアシリンダ20を回動させる。
【0032】
続いて、図4(d)で示すように、ステッチローラー40が第2予備成形体102の端部付近に達したとき、エアシリンダ20を回動させつつ、エアシリンダ20のタイヤ軸方向への移動を停止して、エアシリンダ20をタイヤ径方向内方に移動させる。これにより第1予備成形体101に第2予備成形体102が押し当てられ、両者を貼りつけることができる。以上が、ステッチャー100を用いたステッチング方法の説明である。
【0033】
また、タイヤの製造工程においては、上記のステッチングを行う前に第1予備成形体101をトロイド状に膨張させ、第1予備成形体101の外周面に環状の第2予備成形体102を接合させる。そして、接合させた第1予備成形体101及び第2予備成形体102に対して上記のステッチャー100を用いたステッチングを行うことで、第1予備成形体101と第2予備成形体102から成る未架橋タイヤ(ローカバーとも呼ばれる)を形成する。さらに、形成した未架橋タイヤを加圧及び加熱することで、第1予備成形体101及び第2予備成形体102に含まれるゴムが架橋反応を起こしてタイヤを得ることができる。
【0034】
<変形抑制プログラム>
次に、変形抑制プログラムについて説明する。ステッチングの実施中においては、ステッチローラー40が第2予備成形体102に加える力と第2予備成形体102がステッチローラー40を押し返す力の釣り合いが一時的に崩れて、ステッチローラー40が第1予備成形体101及び第2予備成形体102を変形させてしまう場合がある。変形抑制プログラムは、このステッチローラー40による第1予備成形体101及び第2予備成形体102の変形を抑制するプログラムである。
【0035】
図5は、変形抑制プログラムのフロー図である。変形抑制プログラムは、ステッチングの実施中において、制御装置90によって実行される。図5に示すように、変形抑制プログラムが開始されると、制御装置90は、はじめに基準位置を設定する(ステップS1)。この「基準位置」は、ステッチングの実施中の正常時におけるピストンロッド22のストローク位置である。つまり、「基準位置」は、ステッチローラー40による第1予備成形体101及び第2予備成形体102の変形が発生していない時、又は、その変形が許容範囲内である時のピストンロッド22のストローク位置である。
【0036】
本実施形態では、制御装置90は、エアシリンダ20のタイヤ軸方向位置、及び、タイヤ軸方向に対するエアシリンダ20の傾斜角度に応じて基準位置を設定する。前述のとおり、本実施形態のステッチングではエアシリンダ20をタイヤ軸方向に移動させつつ回動させるため、エアシリンダ20のタイヤ軸方向位置、及び、タイヤ軸方向に対するエアシリンダ20の傾斜角度に応じて基準位置を設定することにより、基準位置を適切な値に設定することができる。ただし、基準位置は一定であってもよく、エアシリンダ20のタイヤ軸方向位置、又は、タイヤ軸方向に対するエアシリンダ20の傾斜角度のいずれか一方に応じて設定してもよい。
【0037】
続いて、制御装置90は、ピストンロッド22のストローク位置を取得する(ステップS2)。前述のとおり、制御装置90は、位置センサ27から測定信号を受信することにより、ピストンロッド22のストローク位置を取得することができる。
【0038】
続いて、制御装置90は、ステップS2で取得したピストンロッド22のストローク位置が、ステップS1で設定した基準位置よりも第2予備成形体102寄りに位置しているか否かを判定する(ステップS3)。なお、ピストンロッド22のストローク位置が、基準位置よりも第2予備成形体102寄りに位置している場合は、ステッチローラー40による第1予備成形体101及び第2予備成形体102の変形が生じていると考えられる。
【0039】
ステップS3において、ピストンロッド22のストローク位置が、基準位置よりも第2予備成形体102寄りに位置していると判定した場合(ステップS3でYES)、制御装置90は、ステッチローラー40が第2予備成形体102に加える力を低減させる(ステップS4)。具体的には、空気給排ユニット30に制御信号を送信して、シリンダチューブ21内の空気量を調整することにより、ステッチローラー40が第2予備成形体102に加える力を低減させる。これにより、ステッチローラー40は、第2予備成形体102に押し戻されて、第1予備成形体101及び第2予備成形体102は変形前の形状に戻ることができる。つまり、ステッチローラー40による第1予備成形体101及び第2予備成形体102の変形を抑制することができる。ステップS4を経た後は、ステップS1に戻って各ステップを繰り返す。なお、各ステップを繰り返すことにより、ステップS1の基準位置の設定は順次更新されていく。
【0040】
一方、ステップS3において、ピストンロッド22のストローク位置が、基準位置よりも第2予備成形体102寄りに位置していないと判定した場合(ステップS3でNO)、制御装置90は、ステップS4を経ることなく、ステップS1に戻って各ステップを繰り返す。以上が、変形抑制プログラムの説明である。
【0041】
<変形例>
上記の実施形態では、変形抑制プログラムのステップS4において、制御装置90が、シリンダチューブ21内の空気量を調整することにより、ステッチローラー40が第2予備成形体102に加える力を低減させている。ただし、別の方法によって、ステッチローラー40が第2予備成形体102に加える力を低減させてもよい。例えば、制御装置90は、ステップS4において、径方向駆動装置70に制御信号を送信して、エアシリンダ20をタイヤ半径方向外方に移動させることにより、ステッチローラー40が第2予備成形体102に加える力を低減させてもよい。
【0042】
また、上記の実施形態では、第2予備成形体102が第1予備成形体101の外周面に貼り合わせられるトレッドリングである場合について説明したが、第2予備成形体102は第1予備成形体101の側面に貼り合わされるサイドウォールを形成する部材であってもよい。
【0043】
<開示項目>
(項目1)
タイヤの製造工程において、環状の第1予備成形体に環状の第2予備成形体を外方から押し当てて前記第1予備成形体と前記第2予備成形体を貼り合わせるステッチングを実施するためのステッチャーであって、シリンダチューブ及びピストンロッドを有するエアシリンダと、前記エアシリンダのピストンロッドに取り付けられ、前記第2予備成形体に接触して前記第2予備成形体に力を加えることにより、前記第1予備成形体に前記第2予備成形体を押し当てるステッチローラーと、前記シリンダチューブへの空気の供給と前記シリンダチューブからの空気の排出を切り替えることで、前記ステッチローラーが前記第2予備成形体に加える力を調整可能な空気給排ユニットと、前記ピストンロッドのストローク位置を測定する位置センサと、ステッチングの実施中において、前記位置センサから前記ピストンロッドのストローク位置を取得し、取得した前記ピストンロッドのストローク位置が予め設定した基準位置よりも前記第2予備成形体寄りに位置しているとき、前記空気給排ユニットに制御信号を送信して、前記ステッチローラーが前記第2予備成形体に加える力を低減させる制御装置と、を備えている、ステッチャー。
【0044】
この構成によれば、ステッチローラーによる第1予備成形体及び第2予備成形体の変形を抑制することができる。
【0045】
(項目2)
タイヤの製造工程において、環状の第1予備成形体に環状の第2予備成形体を外方から押し当てて前記第1予備成形体と前記第2予備成形体を貼り合わせるステッチングを実施するためのステッチャーであって、シリンダチューブ及びピストンロッドを有するエアシリンダと、前記エアシリンダのピストンロッドに取り付けられ、前記第2予備成形体に接触して前記第2予備成形体に力を加えることにより、前記第1予備成形体に前記第2予備成形体を押し当てるステッチローラーと、前記ピストンロッドのストローク位置を測定する位置センサと、前記エアシリンダを前記第1予備成形体及び前記第2予備成形体の半径方向であるタイヤ半径方向に移動可能な径方向駆動装置と、ステッチングの実施中において、前記位置センサから前記ピストンロッドのストローク位置を取得し、取得した前記ピストンロッドのストローク位置が予め設定した基準位置よりも前記第2予備成形体寄りに位置しているとき、前記径方向駆動装置に制御信号を送信して、前記エアシリンダをタイヤ半径方向外方に移動させることにより、前記ステッチローラーが前記第2予備成形体に加える力を低減させる制御装置と、を備えている、ステッチャー。
【0046】
この構成であっても、ステッチローラーによる第1予備成形体及び第2予備成形体の変形を抑制することができる。
【0047】
(項目3)
前記エアシリンダを前記第1予備成形体及び前記第2予備成形体の軸方向であるタイヤ軸方向に移動可能な軸方向駆動装置をさらに備え、前記制御装置は、ステッチングの実施中において、前記エアシリンダのタイヤ軸方向位置に応じて前記基準位置の設定を順次更新する、項目1又は2に記載のステッチャー。
【0048】
この構成によれば、基準位置を適切に設定することができる。
【0049】
(項目4)
前記タイヤ軸方向に対する前記エアシリンダの傾斜角度を変更可能な回動装置をさらに備え、前記制御装置は、ステッチングの実施中において、前記エアシリンダのタイヤ軸方向位置、及び、タイヤ軸方向に対する前記エアシリンダの傾斜角度に応じて前記基準位置の設定を順次更新する、項目3に記載のステッチャー。
【0050】
この構成によれば、基準位置を適切に設定することができる。
【0051】
(項目5)
前記第1予備成形体と前記第2予備成形体を接合させた後に、項目1又は2に記載のステッチャーを用いて前記第1予備成形体に前記第2予備成形体を押し当てることで未架橋タイヤを形成し、形成した未架橋タイヤを加圧及び加熱することでタイヤを得る、タイヤの製造方法。
【0052】
この方法によれば、未架橋タイヤを成形するにあたり、ステッチローラーによる第1予備成形体及び第2予備成形体の変形を抑制することができる。その結果、未架橋タイヤの成形を適切に行うことができ、ユニフォミティの高いタイヤを得ることができる。
【符号の説明】
【0053】
20 エアシリンダ
21 シリンダチューブ
22 ピストンロッド
27 位置センサ
30 空気給排ユニット
31 給排配管
32 電磁弁
40 ステッチローラー
60 回動装置
70 径方向駆動装置
80 軸方向駆動装置
90 制御装置
100 ステッチャー
101 第1予備成形体
102 第2予備成形体
図1
図2
図3
図4
図5