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特開2024-68578樹脂組成物、接着剤組成物、接着剤層付き積層体、カバーレイフィルム、ボンディングシート、電磁波シールド材及び複合体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068578
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】樹脂組成物、接着剤組成物、接着剤層付き積層体、カバーレイフィルム、ボンディングシート、電磁波シールド材及び複合体
(51)【国際特許分類】
   C08L 75/08 20060101AFI20240513BHJP
   C09J 175/08 20060101ALI20240513BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20240513BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20240513BHJP
   C09J 9/02 20060101ALI20240513BHJP
   C09J 7/35 20180101ALI20240513BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20240513BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20240513BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20240513BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
C08L75/08
C09J175/08
C09J163/00
C09J11/04
C09J9/02
C09J7/35
C08L63/00 A
C08G18/48 079
C08G18/32 006
B32B27/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179134
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 郁雄
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】安藤 勝
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 晃
(72)【発明者】
【氏名】平川 真
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
4J004
4J034
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AB17C
4F100AK01B
4F100AK42B
4F100AK49B
4F100AK51A
4F100AK53A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100CA23A
4F100CB00A
4F100GB41
4F100JA05A
4F100JA07A
4F100JB12A
4F100JD15A
4F100JG01A
4F100JG04B
4F100JJ07
4F100JK02
4F100JK06
4F100JL11A
4F100JL14B
4J002CD04X
4J002CD05X
4J002CK04W
4J002DA076
4J002FD116
4J002GJ01
4J004AA13
4J004AA14
4J004AA18
4J004AB05
4J004BA02
4J004CA06
4J004CA08
4J004CB03
4J004CE01
4J004FA04
4J034BA08
4J034CA04
4J034CA24
4J034CB03
4J034CB07
4J034CC03
4J034DA01
4J034DB04
4J034DC02
4J034DF02
4J034DG18
4J034HA01
4J034HA07
4J034HA11
4J034HC17
4J034HC22
4J034HC61
4J034HC73
4J034JA02
4J034KB02
4J034KC17
4J034KD02
4J034KE02
4J034MA02
4J034QB11
4J034QC08
4J034QD06
4J040EC001
4J040EF111
4J040EF121
4J040EF131
4J040EF281
4J040HA066
4J040JB10
4J040KA16
4J040KA32
4J040LA01
4J040LA08
4J040NA19
(57)【要約】
【課題】硬化物を高温高湿下に長期保管しても、硬化物を高温下に長期保管しても、硬化物の引張強さが保たれる樹脂組成物を提供する。
【解決手段】樹脂組成物は、分子内にヒドロキシ基を少なくとも2個有するポリフェニレンエーテル及びポリイソシアネートを重合成分に含むポリウレタン樹脂(A)と、エポキシ樹脂(B)とを含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内にヒドロキシ基を少なくとも2個有するポリフェニレンエーテル及びポリイソシアネートを重合成分に含むポリウレタン樹脂(A)と、エポキシ樹脂(B)とを含有する、樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリウレタン樹脂(A)が、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール及び前記ポリフェニレンエーテル以外のポリエーテルポリオールからなる群から選択される少なくとも1種のポリオールを重合成分にさらに含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリウレタン樹脂(A)が、重合成分として前記ポリフェニレンエーテル100質量部に対し前記ポリオールを1質量部~120質量部含む、請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリウレタン樹脂(A)が、エポキシ基と反応し得る官能基を有するジオールを重合成分にさらに含み、前記官能基を有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記官能基がカルボキシ基である、請求項4に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリウレタン樹脂(A)が鎖延長剤を重合成分にさらに含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記ポリウレタン樹脂(A)のガラス転移温度が100℃以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記ポリウレタン樹脂(A)の重量平均分子量が30000以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記樹脂組成物の硬化物を温度85℃且つ相対湿度85%の環境に24時間置いたときの吸水率が1%以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記ポリウレタン樹脂(A)100質量部に対し、前記エポキシ樹脂(B)を1質量部~60質量部含有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
導電性フィラー(C)をさらに含有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
前記ポリウレタン樹脂(A)と前記エポキシ樹脂(B)の合計量100質量部に対し、前記導電性フィラー(C)を10質量部~350質量部含有する、請求項11に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1~請求項12のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含有する、接着剤組成物。
【請求項14】
基材と、
前記基材上に配置された、請求項13に記載の接着剤組成物に基づく接着剤層と、を備える、
接着剤層付き積層体。
【請求項15】
絶縁フィルムと、
前記絶縁フィルム上に配置された、請求項13に記載の接着剤組成物に基づく接着剤層と、を備える、
カバーレイフィルム。
【請求項16】
離型フィルムと、
前記離型フィルム上に配置された、請求項13に記載の接着剤組成物に基づく接着剤層と、を備える、
ボンディングシート。
【請求項17】
請求項13に記載の接着剤組成物に基づく接着剤層又は硬化層を備える、電磁波シールド材。
【請求項18】
被着体と、
前記被着体に接する、請求項13に記載の接着剤組成物に基づく硬化層と、を備える、
複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂組成物、接着剤組成物、接着剤層付き積層体、カバーレイフィルム、ボンディングシート、電磁波シールド材及び複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂組成物は、接着剤、コーティング剤など各種の用途に使用されている。そして、用途に応じた樹脂組成物の性能向上を目的に成分及び組成の検討が行われている。
例えば特許文献1には、カルボキシ基を有する熱硬化性樹脂(A)、エポキシ樹脂、銅を主成分とする導電性フィラー(B)、硬化剤及びシランカップリング剤を含有する導電性接着剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-204628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポリウレタン樹脂とエポキシ樹脂とを含有する樹脂組成物の用途拡大の観点から、その硬化物の高温高湿下及び高温下における長期信頼性が要求されている。
【0005】
本開示は、硬化物を高温高湿下に長期保管しても、硬化物を高温下に長期保管しても、硬化物の引張強さが保たれる樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1>
分子内にヒドロキシ基を少なくとも2個有するポリフェニレンエーテル及びポリイソシアネートを重合成分に含むポリウレタン樹脂(A)と、エポキシ樹脂(B)とを含有する、樹脂組成物。
<2>
前記ポリウレタン樹脂(A)が、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール及び前記ポリフェニレンエーテル以外のポリエーテルポリオールからなる群から選択される少なくとも1種のポリオールを重合成分にさらに含む、<1>に記載の樹脂組成物。
<3>
前記ポリウレタン樹脂(A)が、重合成分として前記ポリフェニレンエーテル100質量部に対し前記ポリオールを1質量部~120質量部含む、<2>に記載の樹脂組成物。
<4>
前記ポリウレタン樹脂(A)が、エポキシ基と反応し得る官能基を有するジオールを重合成分にさらに含み、前記官能基を有する、<1>~<3>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<5>
前記官能基がカルボキシ基である、<4>に記載の樹脂組成物。
<6>
前記ポリウレタン樹脂(A)が鎖延長剤を重合成分にさらに含む、<1>~<5>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<7>
前記ポリウレタン樹脂(A)のガラス転移温度が100℃以上である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<8>
前記ポリウレタン樹脂(A)の重量平均分子量が30000以上である、<1>~<7>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<9>
前記樹脂組成物の硬化物を温度85℃且つ相対湿度85%の環境に24時間置いたときの吸水率が1%以下である、<1>~<8>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<10>
前記ポリウレタン樹脂(A)100質量部に対し、前記エポキシ樹脂(B)を1質量部~60質量部含有する、<1>~<9>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<11>
導電性フィラー(C)をさらに含有する、<1>~<10>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<12>
前記ポリウレタン樹脂(A)と前記エポキシ樹脂(B)の合計量100質量部に対し、前記導電性フィラー(C)を10質量部~350質量部含有する、<11>に記載の樹脂組成物。
<13>
<1>~<12>のいずれか1つに記載の樹脂組成物を含有する、接着剤組成物。
<14>
基材と、
前記基材上に配置された、<13>に記載の接着剤組成物に基づく接着剤層と、を備える、
接着剤層付き積層体。
<15>
絶縁フィルムと、
前記絶縁フィルム上に配置された、<13>に記載の接着剤組成物に基づく接着剤層と、を備える、
カバーレイフィルム。
<16>
離型フィルムと、
前記離型フィルム上に配置された、<13>に記載の接着剤組成物に基づく接着剤層と、を備える、
ボンディングシート。
<17>
<13>に記載の接着剤組成物に基づく接着剤層又は硬化層を備える、電磁波シールド材。
<18>
被着体と、
前記被着体に接する、<13>に記載の接着剤組成物に基づく硬化層と、を備える、
複合体。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、硬化物を高温高湿下に長期保管しても、硬化物を高温下に長期保管しても、硬化物の引張強さが保たれる樹脂組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本開示の実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
【0009】
本開示において「A及び/又はB」は、「A及びBのうちの少なくとも1つ」と同義である。つまり、「A及び/又はB」は、Aだけであってもよいし、Bだけであってもよいし、A及びBの組み合わせであってもよい、という意味である。
【0010】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0011】
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0012】
本開示において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0013】
本開示において各成分に該当する粒子は複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
【0014】
本開示において化合物を構造式で示すとき、炭化水素基及び/又は炭化水素鎖における炭素原子及び水素原子を表す記号(C及びH)を省略した構造式で示すことがある。
【0015】
<樹脂組成物>
本開示の樹脂組成物は、少なくとも、分子内にヒドロキシ基を少なくとも2個有するポリフェニレンエーテル及びポリイソシアネートを重合成分に含むポリウレタン樹脂(A)と、エポキシ樹脂(B)とを含有する。
【0016】
本開示の樹脂組成物は、ポリウレタン樹脂(A)が有する官能基とエポキシ樹脂(B)のエポキシ基との反応によって硬化する。
【0017】
ポリフェニレンエーテルは、ガラス転移温度(Tg)が高く耐熱性に優れる。ポリフェニレンエーテル自体のTgは一般的に200℃以上である。また、ポリフェニレンエーテルは、ほかのポリマー(例えばポリカーボネート)に比べて、吸水性が低い。
本開示の樹脂組成物の硬化物は、ポリウレタン樹脂(A)に内在する、耐熱性に優れ且つ吸水性が低いポリフェニレンエーテル部位を有することにより、高温高湿(例えば温度85℃且つ相対湿度85%)下に長期保管しても、高温(例えば温度125℃)下に長期保管しても、硬化物の引張強さが保たれる。
【0018】
樹脂組成物の硬化物が高温高湿下又は高温下において引張強さを保つことは、以下の式によって求める破断強度保持率によって評価できる。
破断強度保持率(%)=(F1/F0)×100
ここに、F0は、高温高湿下又は高温下に置く前の硬化物の破断強度(硬化物の破断時における引張応力、MPa)であり、F1は、高温高湿下又は高温下に置いた後の硬化物の破断強度(硬化物の破断時における引張応力、MPa)である。硬化物の破断強度(硬化物の破断時における引張応力、MPa)は、JIS K7127:1999「プラスチック-引張特性の試験方法」に準拠して、オートグラフを使用した測定法によって室温(25℃)で測定する。試験片の寸法は、厚さ100μm、幅10mmである。
【0019】
本開示の樹脂組成物の硬化物の破断強度保持率は、60%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、高いほど好ましく、100%が理想的である。
【0020】
本開示の樹脂組成物は、高温高湿下における樹脂成分の加水分解を抑制する観点から、その硬化物を温度85℃且つ相対湿度85%の環境に24時間置いたときの吸水率が1%以下であることが好ましく、0.7%以下であることがより好ましく、0.5%以下であることが更に好ましく、低いほど好ましく、0%が理想的である。
【0021】
本開示において樹脂組成物の硬化物の吸水率の求め方は下記のとおりである。
樹脂組成物を硬化させて厚さ100μmの硬化物を製造し、これを試料とする。試料を温度85℃/相対湿度85%の恒温恒湿器内に24時間置く。高温高湿下に置く前後において試料の質量をはかり、以下の式によって吸水率を算出する。
吸水率(%)=[(M1-M0)/M0]×100
ここに、M0は、高温高湿下に置く前の硬化物の質量であり、M1は、高温高湿下に置いた後の硬化物の質量である。
【0022】
本開示の樹脂組成物の用途として例えば、塗料、コーティング剤、粘着剤、接着剤、インクなどが挙げられる。本開示の樹脂組成物は、接着剤に好適である。
【0023】
以下、本開示の樹脂組成物の成分及び物性を詳細に説明する。
【0024】
[ポリウレタン樹脂(A)]
ポリウレタン樹脂(A)は、少なくとも、分子内にヒドロキシ基を少なくとも2個有するポリフェニレンエーテルと、ポリイソシアネートとを重合成分に含む。すなわち、ポリウレタン樹脂(A)は、少なくとも、分子内にヒドロキシ基を少なくとも2個有するポリフェニレンエーテルと、ポリイソシアネートとの反応生成物である。
【0025】
ポリフェニレンエーテルは、ガラス転移温度(Tg)が高く耐熱性に優れる。ポリフェニレンエーテル自体のTgは一般的に200℃以上である。また、ポリフェニレンエーテルは、ほかのポリマー(例えばポリカーボネート)に比べて、吸水性が低い。
ポリウレタン樹脂(A)は、耐熱性に優れ且つ吸水性が低いポリフェニレンエーテル部位を有することにより、高温高湿(例えば温度85℃且つ相対湿度85%)下において分解されにくい。
【0026】
ポリウレタン樹脂が高温高湿下において分解されにくいことは、以下の式によって求める重量平均分子量保持率によって評価できる。
重量平均分子量保持率(%)=(Mw1/Mw0)×100
ここに、Mw0は、高温高湿下に置く前のポリウレタン樹脂の重量平均分子量であり、Mw1は、高温高湿下に置いた後のポリウレタン樹脂の重量平均分子量である。
【0027】
ポリウレタン樹脂(A)の重量平均分子量保持率は、60%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、高いほど好ましく、100%が理想的である。
【0028】
以下、ポリウレタン樹脂(A)の重合成分及び物性を詳細に説明する。
本開示においてポリウレタン樹脂(A)を「ポリフェニレンエーテルポリウレタン樹脂」ともいう。
【0029】
-ポリフェニレンエーテルポリオール-
本開示において、分子内にヒドロキシ基を少なくとも2個有するポリフェニレンエーテルを「ポリフェニレンエーテルポリオール」ともいう。
【0030】
ポリフェニレンエーテルポリオールは、ヒドロキシ基を分子の末端に有していてもよく、ヒドロキシ基を分子の非末端に有していてもよい。
【0031】
ポリフェニレンエーテルポリオールは、ジオール、トリオール、テトラオール等のいずれでもよく、実施形態の一例においてジオールが好ましい。本開示において、分子内にヒドロキシ基を2個有するポリフェニレンエーテルを「ポリフェニレンエーテルジオール」ともいう。
【0032】
ポリフェニレンエーテルポリオール中のフェニレンは、主鎖中の連結位置について、o-フェニレン(1,2-フェニレン)、m-フェニレン(1,3-フェニレン)及びp-フェニレン(1,4-フェニレン)のいずれでよく、p-フェニレン(1,4-フェニレン)であることが好ましい。分子中のフェニレンの連結位置は、すべて同じであってもよく、そうでなくてもよい。
【0033】
ポリフェニレンエーテルポリオール中のフェニレンは、無置換であっても置換基を有していてもよい。置換基として例えば、炭素数1~4の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられ、メチル基又はエチル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。分子中の置換基は、すべて同じ基であってもよく、そうでなくてもよい。
【0034】
ポリフェニレンエーテルポリオールの実施形態の一例は、フェニレンがアルキル基2個で置換されたフェニレンオキサイドを構成単位として有する。本実施形態においてアルキル基は、炭素数1~4の直鎖状又は分岐状のアルキル基であることが好ましい。分子中のアルキル基は、すべて同じ基であってもよく、そうでなくてもよい。
【0035】
ポリフェニレンエーテルポリオールの実施形態の一例は、2,6-ジアルキル-1,4-フェニレンオキサイドを構成単位として有する。本実施形態においてアルキル基は、炭素数1~4の直鎖状又は分岐状のアルキル基であることが好ましい。分子中のアルキル基は、すべて同じ基であってもよく、そうでなくてもよい。
【0036】
ポリフェニレンエーテルポリオールの実施形態の一例は、フェニレンがメチル基2個で置換されたフェニレンオキサイド(すなわちジメチルフェニレンオキサイド)を構成単位として有する。
【0037】
ポリフェニレンエーテルポリオールの実施形態の一例は、2,6-ジメチル-1,4-フェニレンオキサイドを構成単位として有する。
【0038】
ポリフェニレンエーテルポリオールの分子量に制限はない。
ポリフェニレンエーテルポリオールの数平均分子量(Mn)は、実施形態の一例において、500~10000であることが好ましく、700~8000であることがより好ましく、1000~6000であることが更に好ましい。
【0039】
ポリフェニレンエーテルポリオールの実施形態の一例は、下記の式(1)で表される化合物である。
【0040】
【化1】
【0041】
式(1)中、Lは単結合又は2価の連結基を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表し、m及びnはそれぞれ独立に1以上の整数を表す。分子中のRは、すべて同じ基であってもよく、そうでなくてもよい。
【0042】
Lで表される2価の連結基として例えば、酸素原子、-C(R)(R)-が挙げられる。ここで、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又はフェニル基を表す。アルキル基及びフェニル基の水素原子は、ハロゲン原子(例えばフッ素原子)で置換されていてもよい。RとRとは互いに連結して環を形成していてもよい。
【0043】
以下に-C(R)(R)-の具体例を挙げるが、-C(R)(R)-はこれに限定されない。以下の構造式において「*」は主鎖への連結位置を意味する。
【0044】
【化2】
【0045】
式(1)中、Rは、水素原子又は炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であることが好ましく、水素原子、メチル基又はエチル基であることがより好ましく、水素原子又はメチル基であることが更に好ましい。分子中のRは、すべて同じ基であってもよく、そうでなくてもよい。
【0046】
式(1)中、mとnの合計は、先述の数平均分子量に見合う数であることが好ましい。
【0047】
ポリフェニレンエーテルポリオールの実施形態の一例は、下記の式(2)で表される化合物である。
【0048】
【化3】
【0049】
式(2)中、Lは単結合又は2価の連結基を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表し、m及びnはそれぞれ独立に1以上の整数を表す。分子中のRは、すべて同じ基であってもよく、そうでなくてもよい。
【0050】
式(2)中のLは、式(1)中のLと同義であり、具体的形態及び好ましい形態も同じである。
【0051】
式(2)中のRは、炭素数1~4の直鎖状又は分岐状のアルキル基であることが好ましく、メチル基又はエチル基であることがより好ましく、メチル基であることが更に好ましい。分子中のRは、すべて同じ基であってもよく、そうでなくてもよい。
【0052】
式(2)中のm及びnは、式(1)中のm及びnと同義であり、具体的形態及び好ましい形態も同じである。
【0053】
ポリフェニレンエーテルポリオールの実施形態の一例は、下記の式(3)で表される化合物である。
【0054】
【化4】
【0055】
式(3)中、p及びqはそれぞれ独立に1以上の整数を表す。
式(3)中、pとqの合計は、先述の数平均分子量に見合う数であることが好ましい。
【0056】
式(3)で表される化合物の市販品として、Noryl SA90(SABIC)が挙げられる。
【0057】
ポリフェニレンエーテルポリオールは、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
ポリウレタン樹脂(A)の全重合成分に占めるポリフェニレンエーテルポリオールの割合は、ポリウレタンのTgを高める観点と、ポリウレタンの吸水率を抑える観点とから、30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましい。
ポリウレタン樹脂(A)の全重合成分に占めるポリフェニレンエーテルポリオールの割合は、ポリウレタンに柔軟性を付与する観点から、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、80質量%以下が更に好ましい。
【0059】
-ポリイソシアネート-
ポリイソシアネートは、ジイソシアネート、トリイソシアネート、テトライソシアネート等のいずれでもよく、実施形態の一例においてジイソシアネートが好ましい。
【0060】
ポリイソシアネートとして例えば、芳香族ジイソシアネート、アラルキルジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、これらジイソシアネートの誘導体が挙げられる。
【0061】
芳香族ジイソシアネートとして例えば、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、2,6-ナフタレンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、ジフェニルエーテル-4,4’-ジイソシアネート等が挙げられる。
【0062】
アラルキルジイソシアネートとして例えば、m-キシリレンジイソシアネート、p-キシリレンジイソシアネート、テトラメチル-m-キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0063】
脂肪族ジイソシアネートとして例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0064】
脂環族ジイソシアネートとして例えば、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1-メチルシクロヘキサン-2,4-ジイソシアネート、1-メチルシクロヘキサン-2,6-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアナトエチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトエチル)シクロヘキサン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、ノルボルナン-2,5-ジイルジイソシアネート、ノルボルナン-2,6-ジイルジイソシアネート、ノルボルナン-2,5-ジイルビス(メチレン)ジイソシアネート、ノルボルナン-2,6-ジイルビス(メチレン)ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。
【0065】
ジイソシアネートの誘導体として例えば、イソシアネート基2個を環化二量化して得られるウレトジオン基を有するポリイソシアネート;イソシアネート基3個を環化三量化して得られるイソシアヌレート基又はイミノオキサジアジンジオン基を有するポリイソシアネート;イソシアネート基3個と水1分子とを反応させて得られるビウレット基を有するポリイソシアネート;等が挙げられる。
【0066】
ポリイソシアネートは、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリイソシアネートの種類に制限はなく、例えばポリウレタン樹脂(A)に付与する特性に応じて種類を選択可能である。得られるポリウレタンの黄変を抑制する観点からは、脂肪族ジイソシアネート又は脂環族ジイソシアネートが好ましく、脂環族ジイソシアネートがより好ましい。
【0067】
-ポリオール-
ポリウレタン樹脂(A)は、ポリフェニレンエーテルポリオール以外のポリオールを重合成分に含んでいてもよい。
本開示において、ポリフェニレンエーテルポリオール以外のポリオールを「第二のポリオール」ともいう。
【0068】
ポリウレタン樹脂(A)が第二のポリオールを重合成分に含む目的に制限はない。例えば、ポリフェニレンエーテルポリオールに由来するポリフェニレンエーテル部位は比較的剛直な構造であるところ、第二のポリオールを重合成分に含むことによってポリウレタン樹脂(A)に柔軟性を付与することができる。
【0069】
第二のポリオールの種類に制限はなく、例えばポリウレタン樹脂(A)に付与する特性に応じて種類を選択可能である。第二のポリオールは、ジオール、トリオール、テトラオール等のいずれでもよく、実施形態の一例においてジオールが好ましい。第二のポリオールは、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0070】
ポリウレタン樹脂(A)が第二のポリオールを重合成分に含む場合、第二のポリオールの重合量に制限はなく、第二のポリオールを重合成分に含む目的又はポリウレタン樹脂(A)に付与する特性に応じて重合量を選択可能である。
【0071】
ポリウレタン樹脂(A)の実施形態の一例は、重合成分として、ポリフェニレンエーテルポリオール100質量部に対し、第二のポリオールを1質量部~120質量部含むことが好ましく、10質量部~100質量部含むことがより好ましく、20質量部~80質量部含むことが更に好ましい。
【0072】
第二のポリオールとして例えば、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、及びポリエーテルポリオール(ただしポリフェニレンエーテルポリオールを除く。)が挙げられる。
【0073】
・ポリエステルポリオール
ポリエステルポリオールとして例えば、多価カルボン酸と多価アルコールのエステル化物;多価カルボン酸アルキルエステルと多価アルコールのエステル交換反応物;ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオール;などが挙げられる。
【0074】
多価カルボン酸及び多価カルボン酸アルキルエステルとして例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、2,2’-ビフェニルジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価又はそれ以上のポリカルボン酸;無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸等のカルボン酸無水物;アジピン酸ジクロリド等のカルボン酸ハロゲン化物;コハク酸ジメチル、フタル酸ジメチル等のカルボン酸アルキルエステル;などが挙げられる。多価カルボン酸は、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0075】
多価アルコールとして例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、3,3’-ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン、2,2-ビス(4,4’-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン等の2価アルコール;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,6-ヘキサントリオール等の3価アルコール;ペンタエリスリトール、ジグリセリン、α-メチルグルコシド、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、ジペンタエリスリトール、グルコース、フルクトース、スクロース等の4価~8価のアルコール;などが挙げられる。多価アルコールは、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0076】
・ポリカーボネートポリオール
ポリカーボネートポリオールとして例えば、カーボネート化合物と多価アルコールの脱アルコール反応又は脱フェノール反応で得られるポリカーボネートポリオールが挙げられる。
【0077】
カーボネート化合物として例えば、アルキレンカーボネート、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネートが挙げられる。アルキレンカーボネートとして例えば、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、1,2-プロピレンカーボネート、1,2-ブチレンカーボネート、1,3-ブチレンカーボネート、1,2-ペンチレンカーボネート等が挙げられる。ジアルキルカーボネートとして例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート等が挙げられる。ジアリールカーボネートとして例えば、ジフェニルカーボネート等が挙げられる。カーボネート化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0078】
多価アルコールとして、ポリエステルポリオールに係る先述の多価アルコールが挙げられる。多価アルコールは、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0079】
・ポリオレフィンポリオール
ポリオレフィンポリオールとして例えば、ポリブタジエンポリオール(例えば、ポリブタジエンの分子両末端にヒドロキシ基を導入したジオール)、水素化ポリブタジエンポリオール(例えば、水素化ポリブタジエンの分子両末端にヒドロキシ基を導入したジオール)、ポリイソプレンポリオール(例えば、ポリイソプレンの分子両末端にヒドロキシ基を導入したジオール)、水素化ポリイソプレンポリオール(例えば、水素化ポリイソプレンの分子両末端にヒドロキシ基を導入したジオール)等が挙げられる。
【0080】
・ポリエーテルポリオール
ポリエーテルポリオール(ただしポリフェニレンエーテルポリオールを除く。)として例えば、脂肪族ポリエーテルジオールが挙げられる。
脂肪族ポリエーテルジオールとして例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリアルキレンエーテルグリコールが挙げられる。
【0081】
第二のポリオールは、高分子ポリオールであることが好ましい。本開示において高分子ポリオールとは、数平均分子量(Mn)が600以上であるポリオールを意味する。
実施形態の一例において第二のポリオールのMnは、600~30000であることが好ましく、800~10000であることがより好ましく、1000~5000であることが更に好ましい。
【0082】
-エポキシ基と反応し得る官能基を有するジオール-
ポリウレタン樹脂(A)は、エポキシ基と反応し得る官能基を有するジオールを重合成分に含んでいてもよい。当該ジオールは、低分子ジオールであることが好ましい。本開示においてエポキシ基と反応し得る官能基を有するジオールに係る低分子ジオールとは、数平均分子量(Mn)が500以下であるジオールを意味する。エポキシ基と反応し得る官能基を有するジオールに係る低分子ジオールは、Mnが400以下のジオールであることが好ましく、Mnが300以下のジオールであることがより好ましい。エポキシ基と反応し得る官能基を有するジオールに係る低分子ジオールは、Mnが100以上であることが好ましい。
【0083】
ポリウレタン樹脂(A)は、エポキシ基と反応し得る官能基を有するジオールを重合成分に含むことによって、当該官能基を分子中に有する。ポリウレタン樹脂(A)は、当該官能基を分子の末端に有していてもよく、当該官能基を分子の非末端に有していてもよい。
【0084】
ポリウレタン樹脂(A)の実施形態の一例は、エポキシ基と反応し得る官能基を有するジオールを重合成分に含み、エポキシ基と反応し得る官能基を側鎖として有する。本実施形態のポリウレタン樹脂(A)は、エポキシ樹脂(B)と反応する際に、架橋構造を形成することができる。
【0085】
エポキシ基と反応し得る官能基を有するジオールの当該官能基の種類及び個数に制限はない。エポキシ基と反応し得る官能基を有するジオールは、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0086】
エポキシ基と反応し得る官能基を有するジオールとして例えば、少なくとも1個のカルボキシ基を有するジオールが挙げられる。ポリウレタン樹脂(A)の実施形態の一例は、カルボキシ基を有するジオールを重合成分に含み、カルボキシ基を側鎖として有する。
カルボキシ基を有するジオールとして例えば、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸等のカルボキシ基1個を有するジオールが挙げられる。
【0087】
エポキシ基と反応し得る官能基を有するジオールとして例えば、少なくとも1個のアミノ基を有するジオールが挙げられる。ポリウレタン樹脂(A)の実施形態の一例は、アミノ基を有するジオールを重合成分に含み、アミノ基を側鎖として有する。
アミノ基を有するジオールとして例えば、2-アミノ-1,3-プロパンジオール等が挙げられる。
【0088】
ポリウレタン樹脂(A)がエポキシ基と反応し得る官能基を有するジオールを重合成分に含む場合、当該ジオールの重合量に制限はない。
ポリウレタン樹脂(A)の実施形態の一例は、重合成分として、ポリフェニレンエーテルポリオール100質量部に対し、エポキシ基と反応し得る官能基を有するジオールを0.1質量部~30質量部含むことが好ましく、0.5質量部~20質量部含むことがより好ましく、1質量部~5質量部含むことが更に好ましい。
ポリウレタン樹脂(A)の実施形態の一例は、重合成分として、ポリフェニレンエーテルポリオール100質量部に対し、カルボキシ基を有するジオールを0.1質量部~20質量部含むことが好ましく、0.5質量部~10質量部含むことがより好ましく、1質量部~5質量部含むことが更に好ましい。
ポリウレタン樹脂(A)の実施形態の一例は、重合成分として、ポリフェニレンエーテルポリオール100質量部に対し、アミノ基を有するジオールを0.1質量部~20質量部含むことが好ましく、0.5質量部~10質量部含むことがより好ましく、1質量部~5質量部含むことが更に好ましい。
【0089】
-鎖延長剤-
ポリウレタン樹脂(A)は、鎖延長剤を重合成分に含んでいてもよい。
鎖延長剤の種類に制限はなく、例えばポリウレタンの公知の鎖延長剤を用いることができる。鎖延長剤は、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0090】
ポリウレタン樹脂(A)が鎖延長剤を重合成分に含む場合、鎖延長剤としては、ヒドロキシ基以外の官能基を有しない化合物であることが好ましく、ヒドロキシ基以外の官能基を有しない多価アルコールであることがより好ましく、ヒドロキシ基以外の官能基を有しないジオールであることが更に好ましい。
【0091】
鎖延長剤としての、ヒドロキシ基以外の官能基を有しない、化合物、多価アルコール及びジオールはそれぞれ、低分子化合物、低分子多価アルコール及び低分子ジオールであることが好ましい。本開示において鎖延長剤に係る低分子化合物、低分子多価アルコール及び低分子ジオールとはそれぞれ、数平均分子量(Mn)が500以下である、化合物、多価アルコール及びジオールを意味する。鎖延長剤に係る低分子化合物、低分子多価アルコール及び低分子ジオールはそれぞれ、Mnが400以下の化合物、多価アルコール及びジオールであることが好ましく、Mnが300以下の化合物、多価アルコール及びジオールであることがより好ましい。鎖延長剤に係る低分子化合物、低分子多価アルコール及び低分子ジオールはそれぞれ、Mnが50以上であることが好ましい。
【0092】
鎖延長剤として例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等のジオール;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,6-ヘキサントリオール等のトリオール;などが挙げられる。
【0093】
ポリウレタン樹脂(A)が鎖延長剤を重合成分に含む目的に制限はない。当該目的として例えば、本開示の樹脂組成物の用途に応じた特性をポリウレタン樹脂(A)に付与する目的、ポリウレタン樹脂(A)に側鎖を導入する目的などが挙げられる。例えば、主鎖(ここでの主鎖とはジオール中の2個のヒドロキシ基をつなぐ炭素鎖を意味する。)から分岐したアルキル基を有するジオールを鎖延長剤として用いることによって、ポリウレタン樹脂(A)に側鎖としてアルキル基を導入することができる。
【0094】
ポリウレタン樹脂(A)が鎖延長剤を重合成分に含む場合、鎖延長剤の重合量に制限はなく、鎖延長剤を重合成分に含む目的又はポリウレタン樹脂(A)に付与する特性に応じて重合量を選択可能である。
【0095】
ポリウレタン樹脂(A)の実施形態の一例は、重合成分として、ポリフェニレンエーテルポリオール100質量部に対し、鎖延長剤を1質量部~30質量部含むことが好ましく、3質量部~25質量部含むことがより好ましく、5質量部~20質量部含むことが更に好ましい。
【0096】
-ポリウレタン樹脂(A)の物性-
ポリウレタン樹脂(A)は、耐熱性の観点から、ガラス転移温度(Tg)が100℃以上であることが好ましく、110℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることが更に好ましい。
ポリウレタン樹脂(A)のTgは、通常200℃以下である。
【0097】
本開示においてポリウレタン樹脂のガラス転移温度(Tg)は、動的粘弾性測定によって求める。ポリウレタン樹脂を乾燥させた被膜を試験片とし、昇温速度2℃/min、周波数1Hzの条件にて、引張モードで試験片の動的粘弾性測定を行い、得られた曲線の損失正接の最大値をガラス転移温度(Tg)とする。
【0098】
ポリウレタン樹脂(A)は、加工性の観点から、重量平均分子量(Mw)が30000以上であることが好ましく、50000以上であることがより好ましく、70000以上であることが更に好ましい。
ポリウレタン樹脂(A)のMwは、有機溶剤への溶解性の観点から、200000以下であることが好ましい。
【0099】
ポリウレタン樹脂(A)は、加工性の観点から、数平均分子量(Mn)が5000以上であることが好ましく、8000以上であることがより好ましく、10000以上であることが更に好ましい。
ポリウレタン樹脂(A)のMnは、有機溶剤への溶解性の観点から、40000以下であることが好ましい。
【0100】
本開示においてポリウレタン樹脂の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography, GPC)により測定した、ポリスチレン換算の分子量である。
【0101】
ポリウレタン樹脂(A)の酸価(mgKOH/g)は、有機溶剤への溶解性の観点から、0~30であることが好ましく、1~20であることがより好ましく、2~10であることが更に好ましい。
【0102】
本開示においてポリウレタン樹脂の酸価(mgKOH/g)は、フェノールフタレイン溶液を指示薬として、試料を水酸化カリウムベンジルアルコール溶液で中和滴定して求める。
【0103】
ポリウレタン樹脂(A)は、高温高湿下における加水分解を抑制する観点から、温度85℃且つ相対湿度85%の環境に24時間置いたときの吸水率が1%以下であることが好ましく、0.7%以下であることがより好ましく、0.4%以下であることが更に好ましく、低いほど好ましく、0%が理想的である。
【0104】
本開示においてポリウレタン樹脂の吸水率の求め方は下記のとおりである。
ポリウレタン樹脂の有機溶剤溶液を乾燥させてフィルム状成形物を製造し、これを試料とする。試料を温度85℃/相対湿度85%の恒温恒湿器内に24時間置く。高温高湿下に置く前後において試料の質量をはかり、以下の式によって吸水率を算出する。
吸水率(%)=[(M1-M0)/M0]×100
ここに、M0は、高温高湿下に置く前の試料の質量であり、M1は、高温高湿下に置いた後の試料の質量である。
【0105】
-ポリウレタン樹脂(A)の製造方法-
ポリウレタン樹脂(A)の製造方法に制限はなく、ポリウレタン樹脂を製造する公知の製造方法を採用してよい。ポリフェニレンエーテルポリオールとポリイソシアネートと必要に応じて選択したその他の重合成分とを、一括して反応容器に仕込んでもよいし、分割して仕込んでもよい。反応容器として例えば、攪拌装置を備えた反応缶、ニーダー、二軸混練押出機が挙げられる。
【0106】
ポリウレタン樹脂(A)の製造は、イソシアネート基に対して不活性な溶媒の存在下又は非存在下に行うことができる。当該溶媒として例えば、エステル系溶媒(酢酸エチル、酢酸ブチル、酪酸エチル等)、エーテル系溶媒(ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等)、ケトン系溶媒(シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、芳香族炭化水素系溶媒(ベンゼン、トルエン、キシレン等)及びこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0107】
ポリウレタン樹脂(A)の製造に、ウレタン反応の公知の触媒を使用してもよい。ウレタン反応の触媒として例えば、錫系触媒(ジラウリン酸ジブチル錫、水酸化トリメチル錫、スタナスオクトエート等)、鉛系触媒、アミン系触媒などが挙げられる。
【0108】
ポリウレタン樹脂(A)の製造において、すべての重合成分のヒドロキシ基とイソシアネート基の合計個数比(イソシアネート基/ヒドロキシ基)は、0.9以上1.1以下であることが好ましく、0.95以上1.05以下であることがより好ましく、0.98以上1.02以下であることが更に好ましい。
【0109】
本開示の樹脂組成物は、ポリウレタン樹脂(A)を1種含有してもよく2種以上含有してもよい。
【0110】
本開示の樹脂組成物のフィラーを除く全固形分に占めるポリウレタン樹脂(A)の量は、樹脂組成物及び硬化物の耐湿熱性、耐熱性及び接着強度の観点から、50質量%~90質量%であることが好ましく、55質量%~85質量%であることがより好ましく、60質量%~80質量%であることが更に好ましい。
【0111】
[エポキシ樹脂(B)]
エポキシ樹脂(B)は、樹脂組成物に接着性を与え、樹脂組成物の硬化物に耐熱性を与える成分である。
【0112】
エポキシ樹脂(B)には、エポキシ基を有する高分子化合物と、エポキシ基を有する低分子化合物とが含まれる。エポキシ樹脂(B)の各分子が有するエポキシ基の個数は2個以上であることが好ましい。
【0113】
エポキシ樹脂(B)として例えば、オルトフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、p-ヒドロキシ安息香酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステル等のグリシジルエステル;ビスフェノールAのジグリシジルエーテル及びそのオリゴマー、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、テトラフェニルグリシジルエーテルエタン、トリフェニルグリシジルエーテルエタン、ソルビトールのポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールのポリグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類;フェノールノボラックエポキシ樹脂、o-クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;などが挙げられる。
【0114】
エポキシ樹脂(B)として例えば、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン骨格含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ターシャリーブチルカテコール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂なども挙げられる。
【0115】
エポキシ樹脂(B)は、樹脂組成物に接着性を与え、樹脂組成物の硬化物に耐熱性を与える観点から、トリスフェノールメタン骨格含有エポキシ樹脂を含むことが好ましい。
【0116】
エポキシ樹脂(B)は、樹脂組成物の硬化物により高い耐熱性を与える観点から、1分子に3個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。
【0117】
本開示の樹脂組成物は、エポキシ樹脂(B)を1種含有してもよく2種以上含有してもよい。
【0118】
本開示の樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂(B)の含有量は、樹脂組成物に接着性を与える観点から、ポリウレタン樹脂(A)100質量部に対し、1質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましく、10質量部以上であることが更に好ましく、15質量部以上であることが更に好ましい。
本開示の樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂(B)の含有量は、ポリフェニレンエーテル部位に基づく耐湿熱性、耐熱性及び接着強度を樹脂組成物及び硬化物に与える観点から、ポリウレタン樹脂(A)100質量部に対し、60質量部以下であることが好ましく、55質量部以下であることがより好ましく、50質量部以下であることが更に好ましく、45質量部以下であることが更に好ましい。
【0119】
本開示の樹脂組成物は、上記の特性を両立する観点から、ポリウレタン樹脂(A)100質量部に対し、エポキシ樹脂(B)を1質量部~60質量部含有することが好ましく、5質量部~55質量部含有することがより好ましく、10質量部~50質量部含有することが更に好ましく、15質量部~45質量部含有することが更に好ましい。
【0120】
本開示の樹脂組成物のフィラーを除く全固形分に占めるポリウレタン樹脂(A)及びエポキシ樹脂(B)の合計量は、樹脂組成物及び硬化物の耐湿熱性、耐熱性及び接着強度の観点から、50質量%以上であることが好ましく、65質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましい。本開示の樹脂組成物のフィラーを除く全固形分に占めるポリウレタン樹脂(A)及びエポキシ樹脂(B)の合計量は、100質量%であってもよい。
【0121】
[その他の樹脂]
本開示の樹脂組成物は、ポリウレタン樹脂(A)及びエポキシ樹脂(B)以外の樹脂を含んでいてもよい。当該樹脂の種類及び配合量は、本開示の樹脂組成物の用途に応じて選択可能である。当該樹脂として例えば、公知の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0122】
[導電性フィラー(C)]
本開示の樹脂組成物は、樹脂組成物及び硬化物に導電性を与える目的で、導電性フィラー(C)を含有していてもよい。本開示の樹脂組成物は、導電性フィラー(C)を1種含有してもよく2種以上含有してもよい。
【0123】
導電性フィラー(C)の体積抵抗率は、1.0×1011Ω・cm未満であることが好ましい。
【0124】
導電性フィラー(C)として例えば、金、白金、銀、銅、ニッケル等の導電性金属又はその合金からなる金属粒子;酸化インジウムスズ等の導電性金属酸化物からなる粒子;カーボンブラック;核体(例えば、樹脂粒子、シリカ粒子、金属粒子、金属酸化物粒子、カーボンブラック)を導電性金属、導電性金属の合金又は導電性ポリマーで被覆した粒子;などが挙げられる。
【0125】
導電性フィラー(C)の形状に限定はなく、球状、立方体状、板状、柱状、針状、棒状、フレーク状、葉状、樹枝状、ブドウ状などのいずれでもよい。
【0126】
導電性フィラー(C)の平均粒径は、樹脂組成物及び硬化物の導電性の観点と、樹脂組成物の貯蔵安定性の観点とから、1μm~100μmであることが好ましく、3μm~50μmであることがより好ましく、4μm~15μmであることが更に好ましい。
【0127】
本開示においてフィラーの平均粒径は、体積基準の粒度分布のメディアン径(D50)である。体積基準の粒度分布は、レーザー回折・散乱法によってフィラーの直径を測定して求める。レーザー回折・散乱法粒度分布測定装置として、LS13320(ベックマン・コールター社)及びそのトルネードドライパウダーサンプルモジュールが好適である。
【0128】
本開示の樹脂組成物が導電性フィラー(C)を含有する場合、導電性フィラー(C)の含有量は、樹脂組成物及び硬化物の導電性の観点と、樹脂組成物の貯蔵安定性の観点と、樹脂組成物及び硬化物の接着強度の観点とから、ポリウレタン樹脂(A)及びエポキシ樹脂(B)の合計量100質量部に対して、1質量部~500質量部であることが好ましく、5質量部~400質量部であることがより好ましく、10質量部~350質量部であることが更に好ましく、20質量部~200質量部であることが更に好ましい。
【0129】
[その他のフィラー]
本開示の樹脂組成物は、導電性を有しないフィラーを含んでいてもよい。本開示の樹脂組成物は、導電性を有しないフィラーを1種含有してもよく2種以上含有してもよい。
【0130】
導電性を有しないフィラーは、無機フィラーでもよく、有機フィラーでもよい。
導電性を有しない無機フィラーとして例えば、炭酸カルシウム粒子、酸化チタン粒子、酸化アルミニウム粒子、酸化亜鉛粒子、タルク粒子、シリカ粒子等が挙げられる。
導電性を有しない有機フィラーとして例えば、(メタ)アクリル樹脂粒子、ポリブタジエン粒子、ナイロン粒子、ポリオレフィン粒子、ポリエステル粒子、ポリカーボネート粒子、ポリビニルアルコール粒子、ポリビニルエーテル粒子、ポリビニルブチラール粒子、シリコーンゴム粒子、ポリウレタン粒子、フェノール樹脂粒子、ポリテトラフルオロエチレン粒子等が挙げられる。
【0131】
導電性を有しない無機フィラーの平均粒径は、樹脂組成物の貯蔵安定性の観点から、0.001μm~50μmであることが好ましく、0.005μm~30μmであることがより好ましく、0.01μm~10μmであることが更に好ましい。
【0132】
導電性を有しない有機フィラーの平均粒径は、樹脂組成物の貯蔵安定性の観点から、0.5μm~50μmであることが好ましく、1μm~30μmであることがより好ましい。
【0133】
[硬化剤、硬化促進剤]
本開示の樹脂組成物は、エポキシ樹脂(B)と反応する硬化剤を含有していてもよい。当該硬化剤として例えば、アミン系硬化剤、ポリアミドアミン系硬化剤、カルボン酸系硬化剤、塩基性活性水素系硬化剤、ポリメルカプタン系硬化剤、ノボラック樹脂系硬化剤、ユリア樹脂系硬化剤、メラミン樹脂系硬化剤などが挙げられる。硬化剤は、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0134】
本開示の樹脂組成物は、エポキシ樹脂(B)の反応を促進させる硬化促進剤を含有していてもよい。当該硬化促進剤として例えば、第三級アミン系硬化促進剤、第三級アミン塩系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤などが挙げられる。硬化促進剤は、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0135】
本開示の樹脂組成物が硬化促進剤を含有する場合、硬化促進剤の含有量は、エポキシ樹脂(B)100質量部に対して、1質量部~30質量部であることが好ましく、2質量部~20質量部であることがより好ましい。本開示の樹脂組成物の貯蔵安定性の観点からは、硬化促進剤の含有量は少ないほど好ましい。
【0136】
[難燃剤]
本開示の樹脂組成物は、難燃剤を含有していてもよい。難燃剤として例えば、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、ケイ素系難燃剤、金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩などが挙げられる。難燃剤は、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0137】
[有機溶剤]
本開示の樹脂組成物の実施形態の一例として、液状樹脂組成物が挙げられる。液状樹脂組成物の溶媒又は分散媒として、有機溶剤が挙げられる。有機溶剤として例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール、イソブチルアルコール、n-ブチルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジアセトンアルコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類;トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン等の芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテ-ト、3-メトキシブチルアセテート等のエステル類;ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;などが挙げられる。有機溶剤は、1種を用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0138】
本開示の樹脂組成物が液状樹脂組成物である場合、液状樹脂組成物の固形分濃度は、1質量%~90質量%であることが好ましく、5質量%~70質量%であることがより好ましく、10質量%~50質量%であることが更に好ましい。
【0139】
[その他の成分]
本開示の樹脂組成物は、各種の添加剤を含有していてもよい。添加剤として例えば、カップリング剤、熱老化防止剤、レベリング剤、消泡剤、粘着付与剤、着色剤などが挙げられる。
【0140】
本開示の樹脂組成物は、ポリウレタン樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)と必要に応じて選択したその他の成分とを混合することにより製造することができる。
【0141】
<接着剤組成物>
本開示の樹脂組成物の用途の一例が、本開示の接着剤組成物である。
本開示の接着剤組成物は、本開示の樹脂組成物を含有する。すなわち本開示の接着剤組成物は、少なくとも、分子内にヒドロキシ基を少なくとも2個有するポリフェニレンエーテル及びポリイソシアネートを重合成分に含むポリウレタン樹脂(A)と、エポキシ樹脂(B)とを含有する。
【0142】
本開示の接着剤組成物の成分、組成及び特性は、具体的形態及び好ましい形態において、本開示の樹脂組成物の成分、組成及び特性と同様である。
【0143】
本開示の接着剤組成物の実施形態の一例として、導電性フィラー(C)を含有する導電性接着剤組成物が挙げられる。導電性接着剤組成物は、例えば、ボンディングシート、電磁波シールド材の製造に好適である。
【0144】
本開示の接着剤組成物の実施形態の一例として、液状接着剤組成物が挙げられる。液状接着剤組成物の固形分濃度は、5質量%~90質量%であることが好ましく、10質量%~70質量%であることがより好ましく、15質量%~50質量%であることが更に好ましい。
【0145】
本開示の接着剤組成物の被着体として例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、液晶ポリマー等の高分子材料からなる物体;銅、アルミニウム、ステンレス等の金属材料からなる物体;高分子材料と金属材料が複合化した物体;などが挙げられる。被着体の形状に制限はない。
【0146】
本開示の接着剤組成物によれば、接着剤層を有する製品(例えば、カバーレイフィルム、ボンディングシート)を製造することができる。
本開示において、本開示の接着剤組成物を用いて形成された接着性を有する層を「接着剤層」という。
【0147】
本開示の接着剤組成物によれば、接着剤組成物が硬化した硬化層を被着体上に形成し、被着体と硬化層とが一体化した複合体を製造することができる。
【0148】
本開示の接着剤組成物によれば、複数個の被着体を接着させ、複数個の被着体が一体化した複合体を製造することができる。
【0149】
<接着剤層付き積層体>
本開示の接着剤組成物を用いて、本開示の接着剤層付き積層体が提供される。
本開示の接着剤層付き積層体は、基材と、基材上に配置された接着剤層とを備える。接着剤層は、本開示の接着剤組成物に基づく接着剤層である。当該接着剤層は、接着剤組成物からなる未硬化状態の接着剤層でもよく、接着剤組成物が一部硬化したBステージ状の接着剤層でもよい。
【0150】
本開示において「Bステージ状の接着剤層」とは、接着剤組成物の一部が硬化した半硬化状態の接着剤層であって、加熱などの処理により接着剤組成物の硬化がさらに進行しうる状態の接着剤層を意味する。
【0151】
接着剤層は、液状接着剤組成物を用いて基材上に形成する場合、液状接着剤組成物から溶媒又は分散媒の少なくとも一部を除去してなる層であることが好ましい。
【0152】
接着剤層の厚さは、接着剤層付き積層体の用途に応じて選択可能である。接着剤層の厚さは、実施形態の一例において、1μm~100μmであることが好ましく、3μm~80μmであることがより好ましく、5μm~50μmであることが更に好ましい。
【0153】
基材は、接着剤層付き積層体が接着剤層を介して被着体に接着した後、被着体に留め置かれる基材であってもよく、被着体から除去される基材(いわゆる離型基材)であってもよい。
【0154】
基材は、フィルム状基材であることが好ましく、樹脂フィルムであることがより好ましい。樹脂フィルムは添加剤を含有していてもよい。樹脂フィルムの片面又両面に表面処理が施されていてもよい。
【0155】
樹脂フィルムとして例えば、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、液晶ポリマーフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリフェニレンエーテルフィルム、ポリエステルフィルム、ポリ乳酸フィルム、ナイロンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム等が挙げられる。
樹脂フィルムとして、耐熱性及び絶縁性の観点からは、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルムが好ましく、ポリイミドフィルムが特に好ましい。
【0156】
離型基材である樹脂フィルムとして例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、シリコーン樹脂コート紙、ポリオレフィン樹脂コート紙、ポリメチルペンテンフィルム、フッ素系樹脂フィルム等が挙げられる。
【0157】
フィルム状基材の厚さは、接着剤層付き積層体の用途に応じて選択可能である。フィルム状基材の厚さは、実施形態の一例において、3μm~125μmであることが好ましい。
【0158】
接着剤層の厚さT1と、フィルム状基材の厚さT2との比T1/T2は、接着剤層付き積層体の用途に応じて選択可能である。比T1/T2は、実施形態の一例において、1以上10以下であることが好ましく、1以上5以下であることがより好ましい。
【0159】
本開示の接着剤層付き積層体は、接着剤層の一方の面に、被着体に留め置かれる基材(例えばポリイミドフィルム)を備え、接着剤層の他方の面に離型基材を備えた積層体でもよい。すなわち、本開示の接着剤層付き積層体は、基材(例えばポリイミドフィルム)/接着剤層/離型基材の3層を有する積層体であってもよい。
【0160】
本開示の接着剤層付き積層体は、接着剤層の両面に離型基材を備えた積層体でもよい。すなわち、本開示の接着剤層付き積層体は、離型基材/接着剤層/離型基材の3層を有する積層体であってもよい。
【0161】
本開示の接着剤層付き積層体の製造方法の一例を挙げる。
液状接着剤組成物をフィルム状基材の片面に塗布して接着剤組成物層を形成する。次いで、接着剤組成物層を乾燥させて、Bステージ状の接着剤層を形成する。乾燥温度は40℃~250℃であることが好ましく、70℃~170℃であることがより好ましい。乾燥は例えば、熱風乾燥、遠赤外線加熱、加熱炉の通過により実施可能である。
【0162】
<カバーレイフィルム>
本開示の接着剤組成物を用いて、本開示のカバーレイフィルムが提供される。
本開示のカバーレイフィルムは、絶縁フィルムと、絶縁フィルム上に配置された接着剤層とを備える。接着剤層は、本開示の接着剤組成物に基づく接着剤層である。当該接着剤層は、接着剤組成物からなる未硬化状態の接着剤層でもよく、接着剤組成物が一部硬化したBステージ状の接着剤層でもよい。
【0163】
本開示のカバーレイフィルムは、本開示の接着剤層付き積層体の実施形態の一例である。
【0164】
本開示のカバーレイフィルムにおいて接着剤層の厚さは、1μm~80μmであることが好ましく、5μm~50μmであることがより好ましい。
【0165】
絶縁フィルムとして例えば、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、液晶ポリマーフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリフェニレンエーテルフィルム、ポリエステルフィルム、ポリ乳酸フィルム、ナイロンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム等が挙げられる。絶縁フィルムとしてポリイミドフィルムが好ましい。
【0166】
絶縁フィルムの厚さは、5μm~50μmであることが好ましい。
【0167】
本開示のカバーレイフィルムは、接着剤層の一方の面に絶縁フィルムを備え、接着剤層の他方の面に離型フィルムを備えた積層体でもよい。すなわち、本開示のカバーレイフィルムは、絶縁フィルム/接着剤層/離型フィルムの3層を有する積層体であってもよい。離型フィルムとして例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、シリコーン樹脂コート紙、ポリオレフィン樹脂コート紙、ポリメチルペンテンフィルム、フッ素系樹脂フィルム等が挙げられる。
【0168】
本開示のカバーレイフィルムの製造方法の一例を挙げる。
液状接着剤組成物をポリイミドフィルムの片面に塗布して接着剤組成物層を形成する。次いで、接着剤組成物層を乾燥させて、Bステージ状の接着剤層を形成する。
【0169】
<ボンディングシート>
本開示の接着剤組成物を用いて、本開示のボンディングシートが提供される。
本開示のボンディングシートは、離型フィルムと、離型フィルム上に配置された接着剤層とを備える。接着剤層は、本開示の接着剤組成物に基づく接着剤層である。当該接着剤層は、接着剤組成物からなる未硬化状態の接着剤層でもよく、接着剤組成物が一部硬化したBステージ状の接着剤層でもよい。
【0170】
本開示のボンディングシートは、本開示の接着剤層付き積層体の実施形態の一例である。
【0171】
本開示のボンディングシートにおいて接着剤層の厚さは、5μm~100μmであることが好ましく、10μm~80μmであることがより好ましい。
【0172】
離型フィルムとして例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、シリコーン樹脂コート紙、ポリオレフィン樹脂コート紙、ポリメチルペンテンフィルム、フッ素系樹脂フィルム等が挙げられる。
【0173】
離型フィルムの厚さは、20μm~100μmであることが好ましい。
【0174】
本開示のボンディングシートは、接着剤層の両面に離型フィルムを備えた積層体でもよい。すなわち、本開示のボンディングシートは、離型フィルム/接着剤層/離型フィルムの3層を有する積層体であってもよい。2つの離型フィルムは、材質及び/又は厚さにおいて、同じでもよく異なっていてもよい。
【0175】
本開示のボンディングシートの製造方法の一例を挙げる。
液状接着剤組成物を離型フィルムの片面に塗布して接着剤組成物層を形成する。次いで、接着剤組成物層を乾燥させて、Bステージ状の接着剤層を形成する。
【0176】
<電磁波シールド材>
本開示の接着剤組成物を用いて、本開示の電磁波シールド材が提供される。
本開示の電磁波シールド材は、本開示の接着剤組成物に基づく接着剤層又は硬化層を備える。当該接着剤層は、接着剤組成物からなる未硬化状態の接着剤層でもよく、接着剤組成物が一部硬化したBステージ状の接着剤層でもよい。当該硬化層は、接着剤組成物が硬化した層である。
【0177】
本開示の電磁波シールド材において接着剤層は、被着体への接着を担う層である。本開示の電磁波シールド材は、接着剤層を介して被着体に接着する。本開示の電磁波シールド材が被着体に接着した後又は接着する間に、加熱などの処理によって接着剤層が硬化して硬化層となる。本開示の電磁波シールド材において硬化層は、被着体における電磁波シールド層として機能しうる。電磁波シールド層は、硬化層のみの単層構造でもよく、硬化層上に金属箔層をさらに積層した積層構造であってもよい。硬化層は導電性を有することが好ましい。硬化層は等方導電性であっても異方導電性であってもよく、電磁波シールド層が単層構造の場合には硬化層は等方導電性であることが好ましく、電磁波シールド層が積層構造の場合には硬化層は異方導電性であることが好ましい。シールド対象である電磁波の性質(周波数、強度など)及びシールド原理に合わせて、接着剤層及び硬化層を形成するための接着剤組成物の成分及び組成を選択すればよい。
【0178】
本開示の電磁波シールド材の実施形態の一例として、ケーブルの被覆に用いる材料が挙げられる。ケーブルとして例えば、電子機器内のケーブル、通信ケーブルが挙げられる。
【0179】
本開示の電磁波シールド材の実施形態の一例として、電子機器において、外部からの電磁波を遮断する目的及び/又は内部で発生する電磁波を遮断する目的で使用する、電子機器部品の被覆用材料が挙げられる。本実施形態の電磁波シールド材の一例として、シート状の電磁波シールド材、すなわち電磁波シールドシートが挙げられる。
【0180】
電磁波シールドシートにおいて接着剤層の厚さは、硬化後の導電性及びグランド回路との接続性の観点から、3μm~30μmであることが好ましい。
【0181】
電磁波シールドシートは、さらに離型フィルムを備えていてもよい。離型フィルムとして例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、シリコーン樹脂コート紙、ポリオレフィン樹脂コート紙、ポリメチルペンテンフィルム、フッ素系樹脂フィルム等が挙げられる。
【0182】
電磁波シールドシートは、さらに保護層を備えていてもよい。保護層は絶縁層であることが好ましい。保護層は1層でもよく2層でもよい。
【0183】
電磁波シールドシートは、離型フィルム/接着剤層/保護層の3層を有する積層体であってもよい。
電磁波シールドシートは、離型フィルム/接着剤層/保護層/補強用離型フィルムの4層を有する積層体であってもよい。
【0184】
電磁波シールドシートの製造方法の一例を挙げる。
補強用離型フィルムの片面に公知の保護層形成用組成物を塗布し乾燥して保護層を形成する。次いで、保護層上に液状接着剤組成物を塗布して接着剤組成物層を形成し、接着剤組成物層の上に離型フィルムを置く。次いで、接着剤組成物層を乾燥させて、Bステージ状の接着剤層を形成する。
【0185】
電磁波シールドシートの使用方法の一例を、先述の3層又は4層を有する積層体を例にして挙げる。
電磁波シールドシートの離型フィルムを剥がし接着剤層を露出させる。プリント配線板上に、接着剤層がプリント配線板に接触するように、電磁波シールドシートを置く。保護層又は補強用離型フィルムの上から熱プレスし、接着剤層をプリント配線板に接着させる。接着剤層は加熱により軟かくなり、加圧によりプリント配線板のグランド部に流れ込む。さらにアフターキュアを行い、接着剤層を硬化させ硬化層を形成する。
【0186】
<複合体>
本開示の接着剤組成物を用いて、本開示の複合体が提供される。
本開示の複合体は、被着体と、被着体に接する硬化層とを備える。硬化層は、本開示の接着剤組成物に基づく硬化層であり、すなわち本開示の接着剤組成物が硬化した層である。
【0187】
硬化層は、被着体上において保護層、導電層、絶縁層、電磁波シールド層などの機能を果たすために被着体上に設けられた層である。硬化層の機能は、本開示の接着剤組成物の成分及び組成によって担保される。硬化層に付与する機能に応じて、硬化層を形成するための接着剤組成物の成分及び組成を選択すればよい。
【0188】
硬化層の厚さは、被着体の材質又は形状及び複合体の用途に応じて選択可能である。硬化層の厚さは、実施形態の一例において、1μm~100μmであることが好ましく、3μm~80μmであることがより好ましく、5μm~50μmであることが更に好ましい。
【0189】
被着体としては、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、液晶ポリマー等の高分子材料からなる物体;銅、アルミニウム、ステンレス等の金属材料からなる物体;高分子材料と金属材料が複合化した物体;などが挙げられる。被着体の形状に制限はない。
【0190】
本開示の複合体の製造方法の一例を挙げる。
液状接着剤組成物をフィルム状基材の片面に塗布して接着剤組成物層を形成する。次いで、接着剤組成物層を乾燥させ、接着剤層を形成する。接着剤層と被着体とを面接触させ、熱ラミネートを行い、さらに加熱圧着し、さらにアフターキュアを行い、接着剤層を硬化させる。熱ラミネートは例えば、温度80℃~150℃で行う。加熱圧着は例えば、温度150℃~200℃且つ圧力1MPa~3MPaの加熱圧着を1分間~60分間行う。アフターキュアは例えば、温度100℃~200℃且つ30分間~4時間である。
【0191】
上記の製造方法においてフィルム状基材は、被着体に留め置かれ複合体の一部となる基材であってもよく、被着体から除去される基材(いわゆる離型基材)であってもよい。フィルム状基材の具体的形態及び好ましい形態は、接着剤層付き積層体におけるフィルム状基材と同様である。
【0192】
本開示の複合体の実施形態の一例として、フレキシブル銅張積層板が挙げられる。フレキシブル銅張積層板は例えば、銅箔と、本開示の接着剤組成物が硬化した硬化層と、絶縁フィルム(例えば、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム)とを備える。フレキシブル銅張積層板として例えば、銅箔/硬化層/絶縁フィルム/硬化層/銅箔の5層積層板、銅箔/硬化層/絶縁フィルムの3層積層板などが挙げられる。
【0193】
フレキシブル銅張積層板の銅箔として例えば、電解銅箔、圧延銅箔、金又は銀によりめっきされた銅箔などが挙げられる。
フレキシブル銅張積層板において硬化層の厚さは、5μm~50μmであることが好ましい。
フレキシブル銅張積層板において絶縁フィルムの厚さは、5μm~50μmであることが好ましい。
【実施例0194】
以下に実施例を挙げて、本開示の樹脂組成物をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理手順などは、本開示の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本開示の樹脂組成物の範囲は、以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきではない。
【0195】
<ポリウレタン樹脂の合成>
[合成例1:ポリフェニレンエーテルポリウレタン樹脂(a1)]
攪拌機、還流脱水装置及び蒸留管を備えたフラスコに、ポリフェニレンエーテルジオール(SABIC製、Noryl SA90)を100質量部、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールを8質量部、トルエンを230質量部仕込んだ。温度を120℃に昇温して水を含む溶媒を100質量部留出させた後に、温度を105℃に下げ、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸0.8質量部を仕込み溶解させた。その後、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを22質量部添加し、30分後にジラウリン酸ジブチル錫を0.1部加えた。12時間反応を継続した後、トルエン30質量部、メチルエチルケトン30質量部及び2-プロパノール15質量部で希釈し、ポリフェニレンエーテルポリウレタン樹脂(a1)の溶液を得た。当該溶液に含まれるポリマーの重量平均分子量は77,000、数平均分子量は13,000であり、酸価は2.6mgKOH/gであった。
【0196】
[合成例2:ポリフェニレンエーテルポリウレタン樹脂(a2)]
攪拌機、還流脱水装置及び蒸留管を備えたフラスコに、ポリフェニレンエーテルジオール(SABIC製、Noryl SA90)を90質量部、ポリカーボネートジオール(UBE製、エタナコールUH-100)を10質量部、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールを8質量部、トルエンを230質量部仕込んだ。温度を120℃に昇温して水を含む溶媒を100質量部留出させた後に、温度を105℃に下げ、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸0.8質量部を仕込み溶解させた。その後、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを22質量部添加し、30分後にジラウリン酸ジブチル錫を0.1部加えた。12時間反応を継続した後、トルエン30質量部、メチルエチルケトン30質量部及び2-プロパノール15質量部で希釈し、ポリフェニレンエーテルポリウレタン樹脂(a2)の溶液を得た。当該溶液に含まれるポリマーの重量平均分子量は83,000、数平均分子量は11,000であり、酸価は2.6mgKOH/gであった。
【0197】
[合成例3:ポリフェニレンエーテルポリウレタン樹脂(a3)]
攪拌機、還流脱水装置及び蒸留管を備えたフラスコに、ポリフェニレンエーテルジオール(SABIC製、Noryl SA90)を70質量部、ポリカーボネートジオール(UBE製、エタナコールUH-100)を30質量部、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールを8質量部、トルエンを230質量部仕込んだ。温度を120℃に昇温して水を含む溶媒を100質量部留出させた後に、温度を105℃に下げ、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸0.8質量部を仕込み溶解させた。その後、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを22質量部添加し、30分後にジラウリン酸ジブチル錫を0.1部加えた。12時間反応を継続した後、トルエン30質量部、メチルエチルケトン30質量部及び2-プロパノール15質量部で希釈し、ポリフェニレンエーテルポリウレタン樹脂(a3)の溶液を得た。当該溶液に含まれるポリマーの重量平均分子量は88,000、数平均分子量は11,000であり、酸価は2.7mgKOH/gであった。
【0198】
[合成例4:ポリフェニレンエーテルポリウレタン樹脂(a4)]
攪拌機、還流脱水装置及び蒸留管を備えたフラスコに、ポリフェニレンエーテルジオール(SABIC製、Noryl SA90)を50質量部、ポリカーボネートジオール(UBE製、エタナコールUH-100)を50質量部、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールを8質量部、トルエンを230質量部仕込んだ。温度を120℃に昇温して水を含む溶媒を100質量部留出させた後に、温度を105℃に下げ、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸0.8質量部を仕込み溶解させた。その後、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを22質量部添加し、30分後にジラウリン酸ジブチル錫を0.1部加えた。12時間反応を継続した後、トルエン30質量部、メチルエチルケトン30質量部及び2-プロパノール15質量部で希釈し、ポリフェニレンエーテルポリウレタン樹脂(a4)の溶液を得た。当該溶液に含まれるポリマーの重量平均分子量は78,000、数平均分子量は17,000であり、酸価は2.7mgKOH/gであった。
【0199】
[合成例5:ポリフェニレンエーテルポリウレタン樹脂(a5)]
攪拌機、還流脱水装置及び蒸留管を備えたフラスコに、ポリフェニレンエーテルジオール(SABIC製、Noryl SA90)を70質量部、ポリカーボネートジオール(UBE製、エタナコールUH-100)を30質量部、トルエンを230質量部仕込んだ。温度を120℃に昇温して水を含む溶媒を100質量部留出させた後に、温度を105℃に下げ、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸0.8質量部を仕込み溶解させた。その後、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを15質量部添加し、30分後にジラウリン酸ジブチル錫を0.1部加えた。12時間反応を継続した後、トルエン30質量部、メチルエチルケトン30質量部及び2-プロパノール15質量部で希釈し、ポリフェニレンエーテルポリウレタン樹脂(a5)の溶液を得た。当該溶液に含まれるポリマーの重量平均分子量は90,000、数平均分子量は11,000であり、酸価は2.6mgKOH/gであった。
【0200】
[合成例6:ポリフェニレンエーテルポリウレタン樹脂(a6)]
攪拌機、還流脱水装置及び蒸留管を備えたフラスコに、ポリフェニレンエーテルジオール(SABIC製、Noryl SA90)を70質量部、ポリカーボネートジオール(UBE製、エタナコールUH-100)を30質量部、トルエンを230質量部仕込んだ。温度を120℃に昇温して水を含む溶媒を100質量部留出させた。その後、温度を105℃に下げ、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを14質量部添加し、30分後にジラウリン酸ジブチル錫を0.1部加えた。12時間反応を継続した後、トルエン30質量部、メチルエチルケトン30質量部及び2-プロパノール15質量部で希釈し、ポリフェニレンエーテルポリウレタン樹脂(a6)の溶液を得た。当該溶液に含まれるポリマーの重量平均分子量は82,000、数平均分子量は11,000であった。
【0201】
[合成例7:ポリフェニレンエーテルポリウレタン樹脂(a7)]
攪拌機、還流脱水装置及び蒸留管を備えたフラスコに、ポリフェニレンエーテルジオール(SABIC製、Noryl SA90)を70質量部、ポリカーボネートジオール(UBE製、エタナコールUH-100)を30質量部、トルエンを230質量部仕込んだ。温度を120℃に昇温して水を含む溶媒を100質量部留出させた後に、温度を105℃に下げ、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸2.3質量部を仕込み溶解させた。その後、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを17質量部添加し、30分後にジラウリン酸ジブチル錫を0.1部加えた。12時間反応を継続した後、トルエン30質量部、メチルエチルケトン30質量部及び2-プロパノール15質量部で希釈し、ポリフェニレンエーテルポリウレタン樹脂(a7)の溶液を得た。当該溶液に含まれるポリマーの重量平均分子量は72,000、数平均分子量は9,000であり、酸価は7.8mgKOH/gであった。
【0202】
[合成例8:ポリフェニレンエーテルポリウレタン樹脂(a8)]
攪拌機、還流脱水装置及び蒸留管を備えたフラスコに、ポリフェニレンエーテルジオール(SABIC製、Noryl SA90)を70質量部、ポリカーボネートジオール(UBE製、エタナコールUH-100)を30質量部、トルエンを230質量部仕込んだ。温度を120℃に昇温して水を含む溶媒を100質量部留出させた後に、温度を105℃に下げ、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸0.8質量部を仕込み溶解させた。その後、ヘキサメチレンジイソシアネートを13質量部添加し、30分後にジラウリン酸ジブチル錫を0.1部加えた。7時間反応を継続した後、トルエン30質量部、メチルエチルケトン30質量部及び2-プロパノール15質量部で希釈し、ポリフェニレンエーテルポリウレタン樹脂(a8)の溶液を得た。当該溶液に含まれるポリマーの重量平均分子量は96,000、数平均分子量は12,000であり、酸価は2.6mgKOH/gであった。
【0203】
[合成例9:ポリフェニレンエーテルポリウレタン樹脂(a9)]
攪拌機、還流脱水装置及び蒸留管を備えたフラスコに、ポリフェニレンエーテルジオール(SABIC製、Noryl SA90)を70質量部、ポリカーボネートジオール(UBE製、エタナコールUH-100)を30質量部、トルエンを230質量部仕込んだ。温度を120℃に昇温して水を含む溶媒を100質量部留出させた後に、温度を110℃に下げ、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸0.8質量部を仕込み溶解させた。その後、ヘキサメチレンジイソシアネートを13質量部添加し、30分後にジラウリン酸ジブチル錫を0.1部加えた。9時間反応を継続した後、トルエン30質量部、メチルエチルケトン30質量部及び2-プロパノール15質量部で希釈し、ポリフェニレンエーテルポリウレタン樹脂(a9)の溶液を得た。当該溶液に含まれるポリマーの重量平均分子量は125,000、数平均分子量は16,000であり、酸価は2.7mgKOH/gであった。
【0204】
[合成例10:ポリフェニレンエーテルポリウレタン樹脂(a10)]
攪拌機、還流脱水装置及び蒸留管を備えたフラスコに、ポリフェニレンエーテルジオール(SABIC製、Noryl SA90)を70質量部、ポリカーボネートジオール(UBE製、エタナコールUH-100)を30質量部、トルエンを230質量部仕込んだ。温度を120℃に昇温して水を含む溶媒を100質量部留出させた後に、温度を105℃に下げ、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸0.8質量部を仕込み溶解させた。その後、ヘキサメチレンジイソシアネートを13質量部添加し、30分後にジラウリン酸ジブチル錫を0.1部加えた。4時間反応を継続した後、トルエン30質量部、メチルエチルケトン30質量部及び2-プロパノール15質量部で希釈し、ポリフェニレンエーテルポリウレタン樹脂(a10)の溶液を得た。当該溶液に含まれるポリマーの重量平均分子量は38,000、数平均分子量は8,000であり、酸価は2.6mgKOH/gであった。
【0205】
[合成例11:ポリフェニレンエーテルポリウレタン樹脂(a11)]
攪拌機、還流脱水装置及び蒸留管を備えたフラスコに、ポリフェニレンエーテルジオール(SABIC製、Noryl SA90)を70質量部、水素化ポリブタジエンジオール(日本曹達製、GI-1000)を30質量部、トルエンを230質量部仕込んだ。温度を120℃に昇温して水を含む溶媒を100質量部留出させた後に、温度を105℃に下げ、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸0.8質量部を仕込み溶解させた。その後、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを12質量部添加し、30分後にジラウリン酸ジブチル錫を0.1部加えた。12時間反応を継続した後、トルエン30質量部、メチルエチルケトン30質量部及び2-プロパノール15質量部で希釈し、ポリフェニレンエーテルポリウレタン樹脂(a11)の溶液を得た。当該溶液に含まれるポリマーの重量平均分子量は90,000、数平均分子量は11,000であり、酸価は2.6mgKOH/gであった。
【0206】
[合成例12:ポリフェニレンエーテルポリウレタン樹脂(a12)]
攪拌機、還流脱水装置及び蒸留管を備えたフラスコに、ポリフェニレンエーテルジオール(SABIC製、Noryl SA90)を80質量部、ポリエステルポリオール溶液(東亞合成製、アロンメルトPES-360HVXM30、固形分比率30.1%)を67質量部、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールを9質量部、トルエンを180質量部仕込んだ。温度を120℃に昇温して水を含む溶媒を100質量部留出させた後に、温度を105℃に下げ、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸0.8質量部を仕込み溶解させた。その後、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを20質量部添加し、30分後にジラウリン酸ジブチル錫を0.1部加えた。12時間反応を継続した後、トルエン30質量部、メチルエチルケトン30質量部及び2-プロパノール15質量部で希釈し、ポリフェニレンエーテルポリウレタン樹脂(a12)の溶液を得た。当該溶液に含まれるポリマーの重量平均分子量は132,000、数平均分子量は34,000であり、酸価は2.8mgKOH/gであった。
【0207】
[合成例13:ポリフェニレンエーテルポリウレタン樹脂(a13)]
攪拌機、還流脱水装置及び蒸留管を備えたフラスコに、ポリフェニレンエーテルジオール(SABIC製、Noryl SA90)を70質量部、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(三菱ケミカル製:PTMG1000)を30質量部、トルエンを230質量部仕込んだ。温度を120℃に昇温して水を含む溶媒を100質量部留出させた後に、温度を105℃に下げ、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸0.8質量部を仕込み溶解させた。その後、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを15質量部添加し、30分後にジラウリン酸ジブチル錫を0.1部加えた。12時間反応を継続した後、トルエン30質量部、メチルエチルケトン30質量部及び2-プロパノール15質量部で希釈し、ポリフェニレンエーテルポリウレタン樹脂(a13)の溶液を得た。当該溶液に含まれるポリマーの重量平均分子量は85,000、数平均分子量は11,000であり、酸価は2.7mgKOH/gであった。
【0208】
[合成例14:ポリエステルポリウレタン樹脂(d1)]
攪拌機、還流脱水装置及び蒸留管を備えたフラスコに、ポリエステルポリオール溶液(東亞合成製、アロンメルトPES-360HVXM30、固形分比率30.1%)を333質量部、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールを8質量部、トルエンを160質量部仕込んだ。温度を120℃に昇温して水を含む溶媒を100質量部留出させた後に、温度を105℃に下げ、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸0.5質量部を仕込み溶解させた。その後、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを12質量部添加し、30分後にジラウリン酸ジブチル錫を0.1部加えた。6時間反応を継続した後、トルエン30質量部、メチルエチルケトン30質量部及び2-プロパノール15質量部で希釈し、ポリエステルポリウレタン樹脂(d1)の溶液を得た。当該溶液に含まれるポリマーの重量平均分子量は126,000、数平均分子量は39,000であり、酸価は2.5mgKOH/gであった。
【0209】
[合成例15:ポリカーボネートポリウレタン樹脂(d2)]
攪拌機、還流脱水装置及び蒸留管を備えたフラスコに、ポリカーボネートジオール(UBE製、エタナコールUH-100)を100質量部、トルエンを230質量部仕込んだ。温度を120℃に昇温して水を含む溶媒を100質量部留出させた後に、温度を105℃に下げ、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸0.8質量部を仕込み溶解させた。その後、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを15質量部添加し、30分後にジラウリン酸ジブチル錫を0.1部加えた。6時間反応を継続した後、トルエン30質量部、メチルエチルケトン30質量部及び2-プロパノール15質量部で希釈し、ポリカーボネートポリウレタン樹脂(d2)の溶液を得た。当該溶液に含まれるポリマーの重量平均分子量は91,000、数平均分子量は40,000であり、酸価は2.6mgKOH/gであった。
【0210】
上記の合成例に使用したポリオールの数平均分子量(Mn)(いずれもカタログ値)を下記に示す。
・SABIC製、Noryl SA90:Mn1600
・UBE製、エタナコールUH-1000:Mn1000
・日本曹達製、GI-1000:Mn1500
・東亞合成製、アロンメルトPES-360HVXM30:Mn20000
・三菱ケミカル製、PTMG1000:Mn1000
【0211】
<ポリウレタン樹脂の物性の測定方法及び性能の評価方法>
[酸価]
ポリウレタン1gをトルエン30mlに溶解し、試料を作製した。自動滴定装置(京都電子工業社製、AT-510)にビュレット(京都電子工業社製、APB-510-20B)を接続した装置を使用し、試料を滴定した。滴定試薬として0.01mol/L ベンジルアルコール性KOH溶液を用い、電位差滴定を行い、ポリウレタン1gあたりのKOHのmg数を算出した。
【0212】
[ガラス転移温度]
厚さ38μmの離型ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)を用意し、片面にポリウレタンの有機溶剤溶液をロール塗布した。塗膜付きPETフィルムをオーブン内に静置して、100℃で3分間乾燥させ、厚さ40μm~60μmの被膜を形成した。被膜付きPETフィルムからPETフィルムを剥がして、被膜を試験片として得た。動的粘弾性測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー製、EXSTARDMS6100)を用い、昇温速度2℃/min、周波数1Hzの条件にて、引張モードで試験片の動的粘弾性を測定した。得られた曲線の損失正接の最大値をガラス転移温度(Tg)とした。
【0213】
[分子量]
下記の条件でGPCを行い、ポリウレタンの重量平均分子量及び数平均分子量を求めた。重量平均分子量及び数平均分子量は、リテンションタイムの測定値を標準ポリスチレンのリテンションタイムを基準にして換算し求めた。
・装置:アライアンス2695(Waters社製)
・カラム:TSKgelSuperMultiporeHZ-H 2本、TSKgelSuperHZ2500 2本(東ソー社製)
・カラム温度:40℃
・溶離液:テトラヒドロフラン0.35ml/分
・検出器:RI
【0214】
[吸水率]
厚さ38μmの離型ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)を用意し、片面にポリウレタンの有機溶剤溶液をロール塗布した。塗膜付きPETフィルムをオーブン内に静置して、100℃で3分間乾燥させ、厚さ40μm~60μmの被膜を形成した。被膜付きPETフィルムからPETフィルムを剥がして、被膜を試験片として得た。試験片を温度85℃/相対湿度85%の恒温恒湿器内に24時間置いた。恒温恒湿器内に置く前後において試験片の質量をはかり、以下の式によって吸水率を算出した。
吸水率(%)=[(M1-M0)/M0]×100
ここに、M0は、恒温恒湿器内に置く前の試験片の質量であり、M1は、恒温恒湿器内に置いた後の試験片の質量である。
【0215】
[重量平均分子量保持率]
厚さ38μmの離型ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)を用意し、片面にポリウレタンの有機溶剤溶液をロール塗布した。塗膜付きPETフィルムをオーブン内に静置して、100℃で3分間乾燥させ、厚さ40μm~60μmの被膜を形成した。被膜付きPETフィルムからPETフィルムを剥がして、被膜を試験片として得た。試験片を温度85℃/相対湿度85%の恒温恒湿器内に2000時間置いた。恒温恒湿器内から試験片を取り出し、試験片を溶剤(テトラヒドロフラン)に溶解し、先述のとおりGPCによって分子量を測定した。そして、以下の式によって重量平均分子量保持率を算出した。
重量平均分子量保持率(%)=(Mw1/Mw0)×100
ここに、Mw0は、合成によって得た各ポリウレタン溶液に含まれるポリマーの重量平均分子量であり、Mw1は、恒温恒湿器内に置いた後の試験片から調製した溶液に含まれるポリマーの重量平均分子量である。
【0216】
算出した重量平均分子量保持率を下記のとおり分類した。
A:80%以上
B:60%以上80%未満
C:30%以上60%未満
D:30%未満
【0217】
合成例1~15の各物性及び評価結果を表1に示す。
【0218】
【表1】
【0219】
合成例1~13のポリウレタン樹脂は、合成例14~15のポリウレタン樹脂に比べて、重量平均分子量保持率が高かった。すなわち、合成例1~13のポリウレタン樹脂は、合成例14~15のポリウレタン樹脂に比べて、高温高湿下において分解されにくい。
【0220】
<樹脂組成物の作製>
[実施例1~21及び比較例1~4]
攪拌装置付きフラスコに、表2に示す組成で材料を入れ、60℃加温下で6時間攪拌して、溶剤に樹脂及び硬化促進剤を溶解させ、導電性フィラー及び難燃剤を分散させた。こうして、液状樹脂組成物を得た。
【0221】
樹脂組成物の作製に使用した材料は下記のとおりである。重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)はいずれもカタログ値である。
・ポリオレフィン樹脂(d3):東洋紡製、トーヨータックPMA-L、Mw75000
・ポリフェニレンエーテル樹脂(d4):SABIC製、Noryl SA90、Mn1600
・エポキシ樹脂(b1):トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、三菱ケミカル製、jER1032H60
・エポキシ樹脂(b2):ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、DIC製、EPICLON N-865
・導電性フィラー(C):銅粉、福田金属箔粉工業製、FCC-115A
・難燃剤:ホスフィン酸金属塩、クラリアント社製、Exolit OP935
・硬化促進剤:イミダゾール系硬化促進剤、四国化成工業製、キュアゾールC11-Z
・溶剤:トルエン、メチルエチルケトン及び2-プロパノールの混合溶剤、質量比100:15:5
【0222】
<試験片の作製>
実施例1~21及び比較例1~4の樹脂組成物を接着剤組成物として用い、下記のとおりカバーレイフィルム、ボンディングシート、試験片A及び試験片Bを作製した。
【0223】
(1)カバーレイフィルム
厚さ25μmのポリイミドフィルムの片面に、接着剤組成物を、乾燥後の厚さが15μmとなるようロール塗布し、温度120℃で2分間乾燥させて、接着剤層を有するカバーレイフィルムを得た。
【0224】
(2)試験片A
厚さ35μmの圧延処理銅箔(福田金属箔粉工業製)を用意した。銅箔と上記カバーレイフィルムとを、銅箔の鏡面がカバーレイフィルムの接着剤層に接触するように重ね合わせ、温度150℃、圧力0.3MPa、速度1m/分の条件でラミネートを行った。得られた積層体(ポリイミドフィルム/接着剤層/銅箔)を、温度150℃、圧力3MPaの条件で5分間加熱して圧着した。次いで、オーブンにて温度160℃で2時間のアフターキュアを行い、試験片A(ポリイミドフィルム/接着剤層/銅箔)を得た。
【0225】
(3)ボンディングシート
接着剤組成物と銅粉(福田金属箔粉工業製、FCC-115A)とを、銅粉が樹脂固形分量の15質量%になるように混合し、混合物を得た。厚さ35μmの離型PETフィルムの片面に、混合物を乾燥後の厚さが25μmとなるようロール塗布し、温度140℃で2分間乾燥させて、銅粉入りの接着剤層を有するボンディングシートを得た。
【0226】
(4)試験片B
厚さ300μmの、ニッケルめっきされたSUS304板を用意した。
厚さ25μmのポリイミドフィルムの片面に銅の回路パターンが形成されており、回路パターン上に、直径1mmのスルーホールを有する厚さ37.5μmのカバーレイフィルムが積層された、フレキシブルプリント配線板を用意した。
SUS304板と上記ボンディングシートとを、SUS304板のニッケルめっき面がボンディングシートの接着剤層に接触するように重ね合わせ、温度150℃、圧力0.3MPa、速度1m/分の条件でラミネートを行い、積層体(SUS板/銅粉入りの接着剤層/離型PETフィルム)を得た。積層体から離型PETフィルムを剥がして、露出した接着剤層の表面にフレキシブルプリント配線板を重ね、温度150℃、圧力3MPaの条件で5分間加熱圧着した。次いで、オーブンにて温度160℃で2時間のアフターキュアを行い、試験片B(SUS板/銅粉入りの接着剤層/フレキシブルプリント配線板)を得た。
【0227】
<試験>
[耐湿熱試験]
試験片を温度85℃/相対湿度85%の恒温恒湿器内に2000時間置いた。
【0228】
[耐熱試験]
試験片を温度125℃の乾燥器内に2000時間置いた。
【0229】
[硬化物の吸水率]
4枚のボンディングシートから離型PETフィルムを剥がしながら、接着剤層を4層重ね、積層体を得た(積層体の両面には離型PETフィルムを残した)。積層体を、温度150℃、圧力3MPaの条件で5分間加熱圧着し、積層体の両面から離型PETフィルムを剥がし、温度160℃で2時間加熱し硬化させ、厚さ100μmの硬化物を得た。硬化物を温度85℃/相対湿度85%の恒温恒湿器内に24時間置いた。恒温恒湿器内に置く前後において硬化物の質量をはかり、以下の式によって吸水率を算出した。
吸水率(%)=[(M1-M0)/M0]×100
ここに、M0は、恒温恒湿器内に置く前の硬化物の質量であり、M1は、恒温恒湿器内に置いた後の硬化物の質量である。
【0230】
[剥離接着強さ]
JIS C6481:1996「プリント配線板用銅張積層板試験方法」に準拠し、温度23℃及び引張速度50mm/分の条件で、試験片Aの銅箔をポリイミドフィルムから剥がすときの180°剥離接着強さ(N/cm)を測定した。
【0231】
[剥離接着強さ保持率]
耐熱試験前及び耐湿熱試験前の剥離接着強さをN0、耐熱試験後及び耐湿熱試験後の剥離接着強さをN1とし、剥離接着強さ保持率を以下の式から算出した。
剥離接着強さ保持率(%)=(N1/N0)×100
【0232】
算出した剥離接着強さ保持率を下記のとおり分類した。
A:80%以上
B:60%以上80%未満
C:30%以上60%未満
D:30%未満
【0233】
[導電性:接続抵抗値]
耐熱試験及び耐湿熱試験の前後において、試験片BにおけるSUS板とフレキシブルプリント配線板の銅箔回路との間の接続抵抗値を抵抗値測定器で測定した。測定した接続抵抗値を下記のとおり分類した。
A:0.1Ω未満
B:0.1Ω以上0.3Ω未満
C:0.3Ω以上1.0Ω未満
D:1.0Ω以上
【0234】
[硬化物の破断強度保持率]
4枚のボンディングシートから離型PETフィルムを剥がしながら、接着剤層を4層重ね、積層体を得た(積層体の両面には離型PETフィルムを残した)。積層体を、温度150℃、圧力3MPaの条件で5分間加熱圧着し、積層体の両面から離型PETフィルムを剥がし、温度160℃で2時間加熱し硬化させ、厚さ100μm、幅10mmの試験片を得た。試験片に耐熱試験及び耐湿熱試験を行う前後において、試験片の破断強度(試験片の破断時における引張応力、MPa)を、JIS K7127:1999「プラスチック-引張特性の試験方法」に準拠して、オートグラフを使用した測定法によって室温(25℃)で測定した。破断強度保持率を以下の式から算出した。
破断強度保持率(%)=(F1/F0)×100
ここに、F0は、耐熱試験前及び耐湿熱試験前の破断強度であり、F1は、耐熱試験後及び耐湿熱試験後の破断強度である。
【0235】
算出した破断強度保持率を下記のとおり分類した。
A:80%以上
B:60%以上80%未満
C:30%以上60%未満
D:30%未満
【0236】
[難燃性]
カバーレイフィルムを温度160℃で2時間加熱し硬化させ、UL-94に準拠して難燃性の評価を行った。
A:合格(VTM-0クラス)
F:不合格
【0237】
[貯蔵安定性]
接着剤組成物をガラス瓶に入れ密封し、温度5℃で所定時間保管した。保管後、接着剤組成物のゲル化の有無を目視で確認した。
A:1週間以上ゲル化が確認されなかった。
F:1週間未満でゲル化が生じた。
【0238】
実施例1~21及び比較例1~4の各樹脂組成物(接着剤組成物)の試験結果を表2に示す。
【0239】
【表2】
【0240】
高温高湿下に長期保管後であっても、高温下に長期保管後であっても、実施例1~21の樹脂組成物(接着剤組成物)の硬化物は、比較例1~4の樹脂組成物(接着剤組成物)の硬化物に比べて、破断強度保持率が高かった。すなわち、実施例1~21の樹脂組成物(接着剤組成物)の硬化物は、比較例1~4の樹脂組成物(接着剤組成物)の硬化物に比べて、高温高湿下に長期保管しても、高温下に長期保管しても、引張強さを維持した。