(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068584
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】L形端子およびL形同軸端子
(51)【国際特許分類】
H01R 24/40 20110101AFI20240513BHJP
H01R 13/6591 20110101ALI20240513BHJP
【FI】
H01R24/40
H01R13/6591
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179146
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】390005049
【氏名又は名称】ヒロセ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(72)【発明者】
【氏名】星 雄生
(72)【発明者】
【氏名】山口 正彦
【テーマコード(参考)】
5E021
5E223
【Fターム(参考)】
5E021FA08
5E021FA16
5E021FB11
5E021FC19
5E021LA09
5E021LA21
5E223AB65
5E223BA05
5E223BA15
5E223BB17
5E223CA13
5E223CB31
5E223CC09
5E223GA14
5E223GA52
5E223GA57
5E223GA63
(57)【要約】
【課題】L形の内部端子がプレス加工により製造される場合でも、当該L形の内部端子を備えたL形の同軸端子における高周波信号の伝送の効率を高めることができるようにする。
【解決手段】L形の内部端子5は、同軸ケーブルの内部導体の端側部分をかしめ固定する接続部6と、被接続体に接触する接触部9と、接続部6と接触部9とを連結する連結部11とを備え、連結部11はX方向およびZ方向に拡がる板状に形成され、連結部11には、当該連結部11のX1側の端部からY1方向に伸長し、Y方向およびZ方向に拡がる板状に形成された壁部12が設けられ、内部端子5をZ2側から見たとき、壁部12は接触部9のX1側の部分と少なくとも部分的に重なり合っている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸ケーブルの内部導体の端側部分をかしめ固定する接続部と、被接続体に接触する接触部と、前記接続部と前記接触部とを連結する連結部とを備え、前記接続部の伸長方向と前記接触部の伸長方向とが互いに直交するL形端子であって、
前記接続部の伸長方向をX方向とし、前記接触部の伸長方向をZ方向とし、X方向およびZ方向に直交する方向をY方向とすると、
前記連結部は、X方向およびZ方向に拡がる板状に形成され、
前記接続部は、前記連結部のX方向他側端部からX方向他側に伸長し、
前記接触部は、前記連結部のZ方向一側端部からZ方向一側に伸長し、かつ前記連結部よりもY方向一側に突出し、
前記連結部には、当該連結部のX方向一側端部からY方向一側に伸長し、Y方向およびZ方向に拡がる板状に形成された壁部が設けられ、
当該L形端子をZ方向他側から見たとき、前記壁部は前記接触部のX方向一側部分と少なくとも部分的に重なり合っていることを特徴とするL形端子。
【請求項2】
前記接触部はZ方向に伸長した筒状に形成され、前記接触部のZ方向他側端部のY方向他側部分が前記連結部のZ方向一側端部に結合していることを特徴とする請求項1に記載のL形端子。
【請求項3】
当該L形端子をZ方向他側から見たとき、前記壁部のX方向一側の面は、前記接触部の内面においてX方向の最も一側の部分よりもX方向一側に位置し、かつ前記接触部の外面においてX方向の最も一側の部分よりもX方向他側に位置していることを特徴とする請求項2に記載のL形端子。
【請求項4】
当該L形端子をZ方向他側から見たとき、前記壁部のX方向一側の面は、前記接触部の外面においてX方向の最も一側の部分と同じ位置に位置していることを特徴とする請求項2に記載のL形端子。
【請求項5】
当該L形端子をZ方向他側から見たとき、前記壁部のY方向一側端部は、前記接触部の内面においてY方向の最も一側の部分よりもY方向一側に位置し、かつ前記接触部の外面においてY方向の最も一側の部分よりもY方向他側に位置していることを特徴とする請求項2に記載のL形端子。
【請求項6】
当該L形端子をZ方向他側から見たとき、前記壁部のY方向一側端部は、前記接触部の外面においてY方向の最も一側の部分と同じ位置に位置していることを特徴とする請求項2に記載のL形端子。
【請求項7】
当該L形端子をX方向一側から見たとき、前記壁部は、前記接続部にかしめ固定された前記内部導体の端側部分の端面の中心と重なり合っていることを特徴とする請求項1に記載のL形端子。
【請求項8】
当該L形端子をX方向一側から見たとき、前記壁部のZ方向他側端部は、前記内部導体の端側部分がかしめ固定された前記接続部の外面においてZ方向の最も他側の部分よりもZ方向他側に位置していることを特徴とする請求項1に記載のL形端子。
【請求項9】
前記壁部は、前記連結部のX方向一側端部からY方向一側に伸長した後に曲がり、その後、X方向他側に伸長していることを特徴とする請求項1に記載のL形端子。
【請求項10】
前記連結部のZ方向他側端部からY方向一側にまたは前記壁部のZ方向他側端部からX方向他側に伸長し、X方向およびY方向に拡がる板状に形成された他の壁部を有していることを特徴とする請求項1に記載のL形端子。
【請求項11】
同軸ケーブルの内部導体が接続されるL形の内部端子と、前記内部端子の外周側に絶縁部材を介して設けられ、前記同軸ケーブルの外部導体が接続されるL形の外部端子とを備えたL形同軸端子であって、
前記内部端子は請求項1ないし10のいずれかに記載のL形端子であることを特徴とするL形同軸端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、L形同軸端子の内部端子として用いられるL形端子、および当該L形端子を内部端子として備えたL形同軸端子に関する。
【背景技術】
【0002】
同軸ケーブルは、中心に第1の導体があり、第1の導体の周囲に第1の導体と絶縁された第2の導体があり、第1の導体と第2の導体とが同軸に配置されているといった構造(以下、これを「同軸構造」という。)を有している。すなわち、同軸ケーブルは、第1の導体としての内部導体、および内部導体の外周側に絶縁体を介して設けられた第2の導体としての外部導体を備えている。さらに、同軸ケーブルは、外部導体の外周側を覆うシースを備えている。
【0003】
同軸コネクタは、同軸ケーブル同士、または同軸ケーブルと電気・電子機器との間等を接続するコネクタとして用いられる。同軸コネクタは、同軸端子、および同軸端子を収容するハウジングを備えている。また、同軸端子は、内部端子、および内部端子の外周側に絶縁部材を介して設けられた外部端子を備えている。内部端子の基端側には同軸ケーブルの内部導体がかしめ等の手段により接続される。また、内部端子の先端側には、例えば相手コネクタの内部端子と接触する接触部が設けられている。また、外部端子の基端側には同軸ケーブルの外部導体がかしめ等の手段により接続される。また、外部端子の先端側には、例えば相手コネクタの外部端子と接触する接触部が設けられている。
【0004】
同軸端子は、巨視的には、中心に内部端子があり、内部端子の周囲に内部端子と絶縁された外部端子があり、内部端子と外部端子とが同軸に配置されている。すなわち、同軸端子は巨視的には同軸構造を有している。ところが、従来の同軸端子を子細に観察すると、内部端子または外部端子の加工上の制約等から、同軸構造が部分的に崩れている同軸端子が存在する。しかしながら、同軸端子における高周波信号の伝送の効率を高めるためには、同軸端子の基端部から先端部に亘る各所の特性インピーダンスを同軸ケーブルの特性インピーダンスに一致させ、または近づけることが望ましく、そのためには、同軸端子の基端部から先端部に亘って均一性のある同軸構造が連続的に形成されるように、内部端子および外部端子をそれぞれ形成することが望ましい。
【0005】
ところで、同軸コネクタには、ストレート形の同軸コネクタと、L形の同軸コネクタがある。ストレート形の同軸コネクタは、同軸コネクタの基端部から先端部にかけて直線状に伸長している。ストレート形の同軸コネクタはストレート形の同軸端子を備えており、ストレート形の同軸端子はストレート形の内部端子およびストレート形の外部端子を有している。ストレート形の同軸端子、内部端子および外部端子はそれぞれ、基端部から先端部にかけて直線状に伸長している。一方、L形の同軸コネクタは、同軸コネクタの長手方向の途中の部分で屈曲し、同軸コネクタの基端側部分の伸長方向と先端側部分の伸長方向とが互いに直交している。L形の同軸コネクタはL形の同軸端子を備えており、L形の同軸端子はL形の内部端子およびL形の外部端子を有している。L形の同軸端子、内部端子および外部端子はそれぞれ、長手方向の途中の部分で屈曲し、基端側部分の伸長方向と先端側部分の伸長方向とが互いに直交している。特開2019-185858号公報(特許文献1)にはL形の同軸コネクタの一例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
同軸端子の内部端子を製造する方法として、金属板材にプレス加工を施す方法と、金属材料に切削加工を施す方法がある。内部端子を低コストで量産する場合には、金属板材にプレス加工を施す方法を採用することが望ましい。
【0008】
しかしながら、L形の内部端子をプレス加工により製造する場合、ストレート形の内部端子をプレス加工により製造する場合と比較して、同軸端子の基端部から先端部に亘って均一性のある同軸構造を連続的に形成することができる内部端子を形成することが難しい。それゆえ、同軸端子の基端部から先端部に亘る各所の特性インピーダンスを同軸ケーブルの特性インピーダンスに一致させ、または近づけることが難しい。そのため、プレス加工により製造されたL形の内部端子を備えたL形の同軸端子においては、プレス加工により製造されたストレート形の内部端子を備えたストレート形の同軸端子と比較して、高周波信号の伝送の効率を高めることが難しいという問題がある。
【0009】
以下、この問題について具体的に説明する。
図20は、従来のL形の同軸端子201、およびL形の同軸端子201が接続された同軸ケーブル301を示す断面図である。
図20に示すように、L形の同軸端子201は、L形の内部端子202、L形の絶縁部材206、およびL形の外部端子207を備えている。内部端子202、絶縁部材206および外部端子207はそれぞれ、長手方向の途中の部分で屈曲し、基端側部分の伸長方向と先端側部分の伸長方向とが互いに直交している。また、内部端子202および外部端子207はそれぞれ金属板材にプレス加工を施すことにより製造される。
【0010】
また、内部端子202の基端側部分の外周側には、絶縁部材206の基端側部分を介して外部端子207の基端側部分が配置されている。また、内部端子202の先端側部分の外周側には、絶縁部材206の先端側部分を介して外部端子207の先端側部分が配置されている。
【0011】
同軸ケーブル301は、内部導体302、絶縁体303、外部導体304、およびシース305を備えている。内部端子202の基端側部分には接続部203が設けられ、接続部203には内部導体302の端側部分がかしめ固定されている。また、外部端子207の基端側部分には接続部208が設けられ、接続部208には外部導体304の端側部分がかしめ固定されている。また、内部端子202の先端側部分には、相手コネクタの内部端子と接触する接触部204が設けられている。また、外部端子207の先端側部分には、相手コネクタの外部端子と接触する接触部209が設けられている。
【0012】
図21は、内部端子202、および内部端子202の接続部203にかしめ固定された内部導体302の端側部分を示す斜視図である。
図22は、
図21中の内部端子202および内部導体302の端側部分を側方から見た状態を示している。また、
図22には、外部端子207の断面の輪郭が破線で示され、絶縁部材206の断面の輪郭が点線で示されている。
【0013】
図21に示すように、内部端子202において、接続部203と接触部204との間には両者を互いに連結する連結部205が設けられている。接続部203、接触部204および連結部205は、金属板材にプレス加工を施すことにより一体形成されている。
【0014】
内部導体302の端側部分がかしめ固定された接続部203の形状は概ね筒状であり、接触部204の形状も筒状である。すなわち、接続部203の形状と接触部204の形状は概ね互いに同じである。また、接続部203の外径と接触部204の外径は概ね等しい。これに対し、連結部205の形状は薄肉の平板状である。連結部205の形状は、接続部203の形状とも、接触部204の形状とも大きく異なる。
【0015】
また、
図22に示すように、互いに対向する内部端子202の接続部203の外面と外部端子207の内面との間の距離Kと、互いに対向する内部端子202の接触部204の外面と外部端子207の内面との間の距離Lは互いに略等しい。これに対し、内部端子202の接続部203にかしめ固定された内部導体302の端面と、当該端面と対向する外部端子207の内面との間の距離Mは、距離Kおよび距離Lと大きく異なっており、距離Mは距離Kおよび距離Lのいずれよりも大幅に大きい。
【0016】
このように、内部端子202の接続部203、接触部204および連結部205のそれぞれの形状、並びに内部端子202の接続部203、接触部204および連結部205のそれぞれと外部端子207との距離を観察すると、L形の同軸端子201において、内部端子202の接続部203が位置する部分と、内部端子202の接触部204が位置する部分との間には、同軸構造の均一性が認められるのに対し、L形の同軸端子201において、内部端子202の接続部203が位置する部分と、内部端子202の連結部205が位置する部分との間、または内部端子202の連結部205が位置する部分と、内部端子202の接触部204が位置する部分との間には、同軸構造の均一性が認められない。すなわち、L形の同軸端子201において、内部端子202の連結部205が位置する部分で、同軸端子201の同軸構造が不連続になっている。
【0017】
仮に、L形の内部端子202において、連結部205を、直角に曲がった筒状に形成することができれば、接続部203、連結部205および接触部204のそれぞれの形状を均一化することができ、その結果、L形の同軸端子201において、その基端部から先端部に亘って均一性のある同軸構造を連続的に形成することができる。しかしながら、直角に曲がった筒状の形状をプレス加工により形成することは困難である。それゆえ、プレス加工で製造されるL形の内部端子202においては、連結部205を直角に曲がった筒状に形成することは困難である。内部端子202が小型である場合にはこの困難性が増す。そのため、L形の同軸端子201の基端部から先端部に亘って均一性のある同軸構造を連続的に形成することは容易でない。
【0018】
同軸ケーブルの特性インピーダンスは、内部導体の外径と外部導体の内径との比、および絶縁体の比誘電率により定まる。通常、内部導体の外径および外部導体の内径はそれぞれ、同軸ケーブルの一方の端部から他方の端部に亘って均一である。すなわち、同軸ケーブルにおいては、その一方の端部から他方の端部に亘って均一性のある同軸構造が連続的に形成されている。また、同軸ケーブルの絶縁体の比誘電率も、通常、同軸ケーブルの一方の端部から他方の端部に亘って一定である。したがって、同軸ケーブルの特性インピーダンスは、同軸ケーブルの一方の端部から他方の端部に亘って一定である。
【0019】
仮に、同軸ケーブルにおいて、内部導体の一部の内径が内部導体の他の部分の内径と異なる場合、その部分において、同軸ケーブルの同軸構造が不連続となり、同軸ケーブルのその部分の特性インピーダンスが、同軸ケーブルの他の部分の特性インピーダンスと異なることとなる。この考え方は、L形の同軸端子201にもあてはまる。L形の同軸端子201においては、内部端子202の連結部205が位置する部分で、同軸端子201の同軸構造が不連続になっているので、同軸端子201において内部端子202の連結部205が位置する部分で、同軸端子201の特性インピーダンスが、同軸端子201の他の部分の特性インピーダンスと異なることとなる。例えば、同軸端子201において、内部端子202の接続部203が位置する部分の特性インピーダンスと、内部端子202の接触部204が位置する部分の特性インピーダンスが、同軸ケーブル301の特性インピーダンスと一致している場合、同軸端子201において、内部端子202の連結部205が位置する部分の特性インピーダンスは、同軸ケーブル301の特性インピーダンスよりも大きくなる。
【0020】
このように同軸端子201において内部端子202の連結部205が位置する部分で、同軸端子201の特性インピーダンスが、同軸端子201の他の部分の特性インピーダンスと異なる場合、同軸端子201により高周波信号を伝送するに当たり、同軸端子201において内部端子202の連結部205が位置する部分で信号の反射が生じ、同軸端子201による高周波信号の伝達効率が悪化する。この高周波信号の伝達効率の悪化は、高周波信号の周波数が高くなるに連れて顕著になる。
【0021】
また、
図22において、内部端子202の接続部203にかしめ固定された内部導体302の端面と、当該端面と対向する外部端子207の内面との間の距離Mは、内部導体302の先端部が接続部203から大きく突出するように内部導体302を接続部203にかしめ固定することによって、小さくすることができる。この方法により、距離Mを、互いに対向する内部端子202の接触部204の外面と外部端子207の内面との間の距離Lに近づけることができる。このようにすれば、同軸端子201において、内部端子202の連結部205が位置する部分での同軸構造の不連続をある程度解消することができる。しかしながら、内部導体302が撚り線である場合には、内部導体302の先端部を接続部203から大きく突出させると、
図23に示すように、接続部203から突出した内部導体302の先端部において、撚り線を構成する複数の素線が散けて拡がるおそれがある。このように内部導体302の先端部で素線が散けて拡がった場合には、同軸端子201の組立時に、散けた内部導体302の素線が邪魔になって、内部端子202を絶縁部材206に組み込むことが困難になり、同軸端子201の組立作業性が低下してしまう。
【0022】
本発明は例えば上述したような問題に鑑みなされたものであり、本発明の課題は、プレス加工により製造される場合でも、L形同軸端子における高周波信号の伝送の効率を高めることができるL形端子、および当該L形端子を内部端子として備えたL形同軸端子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記課題を解決するために、本発明の第1のL形端子は、同軸ケーブルの内部導体の端側部分をかしめ固定する接続部と、被接続体に接触する接触部と、前記接続部と前記接触部とを連結する連結部とを備え、前記接続部の伸長方向と前記接触部の伸長方向とが互いに直交するL形端子であって、前記接続部の伸長方向をX方向とし、前記接触部の伸長方向をZ方向とし、X方向およびZ方向に直交する方向をY方向とすると、前記連結部は、X方向およびZ方向に拡がる板状に形成され、前記接続部は、前記連結部のX方向他側端部からX方向他側に伸長し、前記接触部は、前記連結部のZ方向一側端部からZ方向一側に伸長し、かつ前記連結部よりもY方向一側に突出し、前記連結部には、当該連結部のX方向一側端部からY方向一側に伸長し、Y方向およびZ方向に拡がる板状に形成された壁部が設けられ、当該L形端子をZ方向他側から見たとき、前記壁部は前記接触部のX方向一側部分と少なくとも部分的に重なり合っていることを特徴とする。
【0024】
また、本発明の第2のL形端子は、上記本発明の第1のL形端子において、前記接触部はZ方向に伸長した筒状に形成され、前記接触部のZ方向他側端部のY方向他側部分が前記連結部のZ方向一側端部に結合していることを特徴とする。
【0025】
また、上記本発明の第2のL形端子において、当該L形端子をZ方向他側から見たとき、前記壁部のX方向一側の面は、前記接触部の内面においてX方向の最も一側の部分よりもX方向一側に位置し、かつ前記接触部の外面においてX方向の最も一側の部分よりもX方向他側に位置していることとしてもよい。また、上記本発明の第2のL形端子において、当該L形端子をZ方向他側から見たとき、前記壁部のX方向一側の面は、前記接触部の外面においてX方向の最も一側の部分と同じ位置に位置していることとしてもよい。また、上記本発明の第2のL形端子において、当該L形端子をZ方向他側から見たとき、前記壁部のY方向一側端部は、前記接触部の内面においてY方向の最も一側の部分よりもY方向一側に位置し、かつ前記接触部の外面においてY方向の最も一側の部分よりもY方向他側に位置していることとしてもよい。また、上記本発明の第2のL形端子において、当該L形端子をZ方向他側から見たとき、前記壁部のY方向一側端部は、前記接触部の外面においてY方向の最も一側の部分と同じ位置に位置していることとしてもよい。
【0026】
また、上記本発明の第1のL形端子において、当該L形端子をX方向一側から見たとき、前記壁部は、前記接続部にかしめ固定された前記内部導体の端側部分の端面の中心と重なり合っていることとしてもよい。また、上記本発明の第1のL形端子において、 当該L形端子をX方向一側から見たとき、前記壁部のZ方向他側端部は、前記内部導体の端側部分がかしめ固定された前記接続部の外面においてZ方向の最も他側の部分よりもZ方向他側に位置していることとしてもよい。
【0027】
また、上記本発明の第1のL形端子において、前記壁部は、前記連結部のX方向一側端部からY方向一側に伸長した後に曲がり、その後、X方向他側に伸長していることとしてもよい。また、上記本発明の第1のL形端子において、前記連結部のZ方向他側端部からY方向一側にまたは前記壁部のZ方向他側端部からX方向他側に伸長し、X方向およびY方向に拡がる板状に形成された他の壁部を有していることとしてもよい。
【0028】
上記課題を解決するために、本発明のL形同軸端子は、同軸ケーブルの内部導体が接続されるL形の内部端子と、前記内部端子の外周側に絶縁部材を介して設けられ、前記同軸ケーブルの外部導体が接続されるL形の外部端子とを備えたL形同軸端子であって、前記内部端子は上記本発明の第1または第2のL形端子であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、L形端子がプレス加工により製造される場合でも、当該L形端子を内部端子として備えたL形同軸端子における高周波信号の伝送効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明のL形端子の実施形態である内部端子を有する同軸端子を備えた同軸コネクタを示す外観図である。
【
図3】本発明のL形同軸端子の実施形態を示す断面図である。
【
図5】本発明の実施形態の内部端子(同軸ケーブルの内部導体がかしめ固定される前の状態)を示す斜視図である。
【
図6】
図5中の内部端子をX1側から見た状態を示す説明図である。
【
図7】
図5中の内部端子をY1側から見た状態を示す説明図である。
【
図8】
図5中の内部端子の先端側部分をZ2側から見た状態を示す説明図である。
【
図9】本発明の実施形態の内部端子(同軸ケーブルの内部導体がかしめ固定された状態)を示す斜視図である。
【
図10】
図9中の内部端子をX1側から見た状態を示す説明図である。
【
図11】
図9中の内部端子をY1側から見た状態を示す説明図である。
【
図12】本発明の実施形態の内部端子を含む連鎖端子を示す説明図である。
【
図13】本発明の実施形態の内部端子を備えたL形同軸端子および従来の内部端子を備えたL形同軸端子の電圧定在波比をそれぞれ示すグラフである。
【
図14】本発明の実施形態の内部端子の第1の変形例を示す説明図である。
【
図15】本発明の実施形態の内部端子の第2の変形例を示す斜視図である。
【
図16】本発明の実施形態の内部端子の第3の変形例を示す斜視図である。
【
図17】本発明の実施形態の内部端子の第4の変形例を示す斜視図である。
【
図18】本発明の実施形態の内部端子の第5の変形例を示す斜視図である。
【
図19】本発明の実施形態の内部端子の第6~9の変形例を示す斜視図である。
【
図21】従来のL形の内部端子を示す斜視図である。
【
図22】
図21中の内部端子を側方から見た状態を示す説明図である。
【
図23】従来のL形の内部端子において、かしめ固定された内部導体の先端部が散けて拡がった状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態につき、図面を参照しながら説明する。なお、実施形態においては、説明の便宜上、同軸コネクタ、同軸端子および内部端子等に関して方向を述べる際には、
図1~12および14~19の右下に示した矢印X1、X2、Y1、Y2、Z1、Z2に従う。また、矢印X1、X2、Y1、Y2、Z1、Z2が示す方向を、「X1方向」、「X2方向」、「Y1方向」などという。また、X1方向はY1方向と直交し、Z1方向はX1方向およびY1方向と直交している。X2方向はX1方向の反対方向であり、Y2方向はY1方向の反対方向であり、Z2方向はZ1方向の反対方向である。また、実施形態において、「X方向」はX1方向またはX2方向を意味し、「Y方向」はY1方向またはY2方向を意味し、「Z方向」はZ1方向またはZ2方向を意味するものとする。
【0032】
(同軸コネクタ)
図1は、本発明のL形端子の実施形態である内部端子5をそれぞれ有する同軸端子1~4を備えた同軸コネクタ31を示している。
図2は同軸コネクタ31を分解した状態を示している。
【0033】
図1および2に示すように、同軸コネクタ31には4本の同軸ケーブル51が接続される。また、同軸コネクタ31は、被接続体としての相手コネクタ(図示せず)に着脱可能に接続される。また、同軸コネクタ31はL形の同軸コネクタであり、同軸コネクタ31の長手方向の途中の部分で屈曲し、同軸コネクタ31の基端側部分の伸長方向と先端側部分の伸長方向とが互いに直交している。具体的には、同軸コネクタ31の基端側部分はX方向に伸長し、先端側部分はZ方向に伸長している。同軸コネクタ31の相手コネクタに対する着脱方向はZ方向である。また、各同軸ケーブル51は同軸コネクタ31からX方向に引き出される。
【0034】
同軸コネクタ31は、4つの同軸端子1~4、および4つの同軸端子1~4を収容するハウジング32を備えている。ハウジング32は、ハウジング本体33、スペーサ34、およびカバー35を有している。同軸端子1~4はそれぞれ本発明のL形同軸端子の実施形態である。同軸端子1~4には同軸ケーブル51がそれぞれ接続される。4つの同軸端子1~4のうち、2つの同軸端子1、2はハウジング本体33内のZ1側(下段)に配置され、残りの2つの同軸端子3、4はハウジング本体33内のZ2側(上段)に配置される。スペーサ34は、ハウジング本体33内において、Z1側に配置された2つの同軸端子1、2と、Z2側に配置された2つの同軸端子3、4との間に配置される。カバー35は、ハウジング本体33においてZ2方向に開いた部分を閉塞するように、ハウジング本体33に取り付けられる。また、図示を省略しているが、ハウジング本体33のX1側部分においてZ1方向を向いた壁部には、4つの貫通穴が設けられ、これら4つの貫通穴には、4つの同軸端子1~4の先端部がそれぞれ臨んでいる。また、ハウジング32のX2側部分には、4つの同軸端子1~4にそれぞれ接続された4本の同軸ケーブル51を引き出すための挿通口が設けられている。
【0035】
(同軸端子)
図3は、同軸コネクタ31のハウジング32内のZ1側かつY2側に配置された同軸端子1、および同軸端子1に接続された同軸ケーブル51の端側部分を示している。また、
図3は、同軸端子1の基端側部分の軸線および同軸ケーブル51の端側部分の軸線を含みつつX方向およびZ方向に拡がる平面で切断した同軸端子1および同軸ケーブル51の端側部分の断面を示している。
図4は、同軸端子1を分解した状態を示している。
【0036】
図3に示すように、同軸端子1は、内部端子5、絶縁部材21、および外部端子25を備えている。同軸端子1はL形の同軸端子であり、内部端子5、絶縁部材21および外部端子25もそれぞれL形である。すなわち、同軸端子1、内部端子5、絶縁部材21および外部端子25のそれぞれは、長手方向の途中の部分で屈曲し、基端側部分の伸長方向と先端側部分の伸長方向とが互いに直交している。具体的には、同軸端子1、内部端子5、絶縁部材21および外部端子25のそれぞれにおいて、基端側部分はX方向に伸長し、先端側部分はZ方向に伸長している。
【0037】
内部端子5および外部端子25はそれぞれ、例えば黄銅もしくはリン青銅等の銅合金、または他の金属等の導電材料により形成されている。また、内部端子5および外部端子25はそれぞれ、このような導電材料からなる板材にプレス加工を施すことにより形成されている。
【0038】
同軸ケーブル51は、内部導体52、絶縁体53、外部導体54、およびシース55を備えている。
図3では図示を省略しているが、内部導体52は複数の素線を撚ることにより形成された撚り線である(
図9を参照)。内部端子5は、同軸ケーブル51の内部導体52の端側部分をかしめ固定する接続部6、および相手コネクタに設けられた相手同軸端子の内部端子と接触する接触部9を有している。接続部6は内部端子5の基端側部分に設けられ、接触部9は内部端子5の先端側部分に設けられている。
【0039】
外部端子25は、同軸ケーブル51の外部導体54の端側部分をかしめ固定する外部導体接続部26、同軸ケーブル51のシース55の端側部分をかしめ固定するシース接続部27、および相手コネクタに設けられた相手同軸端子の外部端子と接触する接触部28を有している。外部導体接続部26は外部端子25の基端側部分においてX方向中間部に設けられている。シース接続部27は外部端子25の基端側部分において外部導体接続部26よりもX2側に設けられている。接触部28は、筒状に形成され、外部端子25の先端側部分に設けられている。
【0040】
絶縁部材21は樹脂等の絶縁材料により形成されている。絶縁部材21の基端側部分22および先端側部分23はいずれも筒状に形成されている。
【0041】
また、内部端子5の基端側部分の外周側には、絶縁部材21の基端側部分22が配置されている。また、絶縁部材21の基端側部分22の外周側には、外部端子25の基端側部分において外部導体接続部26よりもX1側の部分が配置されている。また、内部端子5の先端側部分(接触部9)の外周側には、絶縁部材21の先端側部分23が配置されている。また、絶縁部材21の先端側部分23の外周側には外部端子25の先端側部分(接触部28)が配置されている。内部端子5と外部端子25とは絶縁部材21により互いに絶縁されている。
【0042】
なお、
図4に示すように、同軸端子1の組立前の状態では、外部端子25の基端側部分は外部端子25の先端側部分と同一の方向に伸長している。同軸端子1の組立時に、外部端子25は、
図4中のA1の位置で折り曲げられることによってL形に形成される。また、同軸端子1の組立前の状態では、絶縁部材21の基端側部分22の一部を形成する壁板24が、絶縁部材21の先端側部分と同一の方向に伸長している。同軸端子1の組立時に、絶縁部材21の壁板24は、
図4中のA2の位置でX2側に折り曲げられる。
【0043】
以上、同軸コネクタ31のハウジング32内のZ1側かつY2側に配置された同軸端子1について説明したが、ハウジング32内のZ1側かつY1側に配置された同軸端子2は同軸端子1と同一である。また、ハウジング32内のZ2側に配置された2つの同軸端子3、4のそれぞれは、内部端子5の接触部9のZ方向における長さ、外部端子25の接触部28のZ方向における長さ、絶縁部材21の先端側部分23のZ方向における長さ、および外部端子25の外部導体接続部26のX方向における長さ等について同軸端子1と異なるが、これらの点を除き、同軸端子1と同一である。
【0044】
(内部端子)
図5は、同軸ケーブル51の内部導体52が接続部6にかしめ固定される前の状態の内部端子5を示している。
図6は
図5中の内部端子5をX1側から見た状態を示し、
図7は
図5中の内部端子5をY1側から見た状態を示している。
図8は
図5中の内部端子5の先端側部分をZ2側から見た状態を示している。
図9は、同軸ケーブル51の内部導体52が接続部6にかしめ固定された状態の内部端子5を示している。
図10は
図9中の内部端子5をX1側から見た状態を示し、
図11は
図9中の内部端子5をY1側から見た状態を示している。また、
図11においては、
図3中の外部端子25の断面の輪郭が破線で示され、
図3中の絶縁部材21の断面の輪郭が点線で示されている。
【0045】
内部端子5において、接続部6は、
図5に示すように、全体的に見て、湾曲した板状に形成されている。詳細には、接続部6は、接続基部7および2つの接続片8を有している。接続基部7はX方向に伸長している。また、
図6に示すように、内部端子5をX1側から見たとき、接続基部7は、Z方向両端部がZ方向中間部よりもY1側になるように、円弧状に湾曲している。また、一方の接続片8は、接続基部7のZ1側の端部からY1側に傾斜しつつZ1方向に突出している。また、他方の接続片8は、接続基部7のZ2側の端部からY1側に傾斜しつつZ2方向に突出している。同軸ケーブル51の内部導体52の端側部分を接続部6にかしめ固定するときには、
図10に示すように、各接続片8が、内部導体52の端側部分を抱え込むように折り曲げられる。
【0046】
また、内部端子5の接触部9は、
図5に示すように、Z方向に伸長した円筒状に形成されている。また、接触部9の先端側(Z1側)のY1側部分およびY2側部分には、
図7に示すように、接触部9の先端からZ2方向に伸長したスリット10がそれぞれ形成されている。また、接触部9の先端側部分は、接触部9の基端側部分と比較して縮径している。同軸コネクタ31が相手コネクタに接続されたとき、接触部9内には、相手コネクタに設けられた相手同軸端子が有するピン状の内部端子がZ1側から挿入される。接触部9の先端側部分にはスリット10が形成されているので、相手同軸端子の内部端子が接触部9内に挿入されたとき、接触部9の先端側部分は弾性変形して拡径する。このとき、接触部9の先端側部分の外径は、接触部9の基端側部分の外径と略等しくなる。
【0047】
また、内部端子5は、接続部6と接触部9とを連結する連結部11を有している。連結部11は、X方向およびZ方向に拡がる板状に形成されている。
図5に示すように、接続基部7のX1側の端部は連結部11のX2側の端部に結合している。また、接触部9のZ2側の端部のY2側の部分は連結部11のZ1側の端部に結合している。
図7に示すように、内部端子5をY1側から見たとき、連結部11のX1側の端部は接触部9の軸線GよりもX1側に位置している。また、
図10に示すように、内部端子5をX1側から見たとき、連結部11のZ2側の端部11Aは、内部導体52の端側部分がかしめ固定された状態の接続部6のZ2側の端部よりもZ2側に位置している。また、接触部9は、連結部11のZ1側端部からZ1方向に伸長し、かつ連結部11よりもY1方向に突出している。
【0048】
また、
図5に示すように、連結部11には、当該連結部11のX1側の端部からY1方向に伸長した壁部12が設けられている。壁部12は、Y方向およびZ方向に拡がる平板状に形成されている。
【0049】
図8に示すように、内部端子5をZ2側から見たとき、壁部12は接触部9のX1側の部分と部分的に重なり合っている。
図8中のNは、接触部9の内面において最もX1側の部分のX方向における位置を示し、
図8中のQは、接触部9の外面において最もX1側の部分のX方向における位置を示している。内部端子5をZ2側から見たとき、壁部12のX1側の面12Aは、接触部9の内面において最もX1側の部分よりもX1側に位置し、かつ接触部9の外面において最もX1側の部分よりもX2側に位置している。また、
図8中のRは、接触部9の内面において最もY1側の部分のY方向における位置を示し、
図8中のSは、接触部9の外面において最もY1側の部分のY方向における位置を示している。内部端子5をZ2側から見たとき、壁部12のY1側の端部12Bは、接触部9の内面において最もY1側の部分よりもY1側に位置し、かつ接触部9の外面において最もY1側の部分よりもY2側に位置している。
【0050】
また、
図10に示すように、内部端子5をX1側から見たとき、壁部12は、接続部6にかしめ固定された内部導体52の端側部分の端面の中心Cと重なり合っている。また、
図10中のTは、壁部12のZ2側の端部のZ方向における位置を示し、
図10中のUは、内部導体52の端側部分がかしめ固定された接続部6の外面において最もZ2側の部分のZ方向における位置を示している。内部端子5をX1側から見たとき、壁部12のZ2側の端部12Cは、内部導体52の端側部分がかしめ固定された接続部6の外面において最もZ2側の部分よりもZ2側に位置している。
【0051】
また、
図11に示すように、同軸端子1において、互いに対向する内部端子5の接続部6の外面と外部端子25の内面との間の距離Eと、互いに対向する内部端子5の接触部9の外面と外部端子25の内面との間の距離Fとは互いに略等しい。また、壁部12のX1側の面12Aと、当該面12Aと対向する外部端子25の内面との距離Dは、距離Eおよび距離Fのそれぞれと略等しい。
【0052】
図12(A)は、複数の内部端子5を含む連鎖端子15をY1側から見た状態を示し、
図12(B)は連鎖端子15をX1側から見た状態を示している。
図12(C)は内部端子5を展開した状態を示している。
図12(A)に示すように、連鎖端子15においては、複数の内部端子5がキャリア16に繋がれている。キャリア16において、複数の内部端子5は等間隔に配置されている。すなわち、キャリア16に繋がれた複数の内部端子5において、互いに隣り合った2つの内部端子5の間隔Bはそれぞれ等しい。また、連鎖端子15は、導電材料からなる板材にプレス加工を施すことにより製造される。このとき、キャリア16に繋がれた各内部端子5の接続部6、接触部9、および壁部12は、プレス加工により、
図12(B)に示すように、上記板材を、その板面Jを基準として同じ側の方向、すなわち、板面JよりもY1側の方向に曲げることにより形成される。
【0053】
以上説明した通り、本発明の実施形態のL形の内部端子5は壁部12を有している。壁部12は、連結部11のX1側の端部からY1方向に伸長し、Y方向およびZ方向に拡がる板状に形成されている。また、内部端子5をZ2側から見たとき、壁部12は接触部9のX1側の部分と部分的に重なり合っている。以上の構成を有するL形の内部端子5をL形の同軸端子1に設けることにより、L形の同軸端子1の基端部から先端部に亘って均一性のある同軸構造を連続的に形成することができる。
【0054】
この点について具体的に説明する。説明の便宜のために、
図3に示す同軸端子1において、同軸端子1内に同軸ケーブル51の端側部分が入り込んでいる部分、すなわち、同軸端子1の基端側部分において外部端子25の外部導体接続部26およびシース接続部27によって同軸ケーブルの端側部分がかしめ固定されている部分を「部分P1」とする。また、同軸端子1の基端側部分において、外部導体接続部26よりもX1側の部分を「部分P2」とする。また、同軸端子1において基端側部分と先端側部分との間の屈曲している部分、すなわち、同軸端子1において内部端子5の連結部11が位置する部分を「部分P3」とする。また、同軸端子1の先端側部分を「部分P4」とする。
【0055】
さて、同軸構造とは、中心に第1の導体があり、第1の導体の周囲に第1の導体と絶縁された第2の導体があり、第1の導体と第2の導体とが同軸に配置されているといった構造である。同軸端子1の部分P1には、同軸ケーブル51の端側部分によって同軸構造が形成されている。また、同軸端子1の部分P2には、内部端子5の接続部6と、外部端子25の基端側部分において外部導体接続部26よりもX1側の部分とによって同軸構造が形成されている。また、同軸端子1の部分P4には、内部端子5の接触部9と、外部端子25の接触部28とによって同軸構造が形成されている。
【0056】
部分P1の同軸構造は、中心に内部導体52があり、内部導体52の周囲に全周に亘って外部導体54があり、内部導体52と外部導体54とが同軸に配置されているといった構造である。部分P2の同軸構造は、中心に内部端子5の接続部6があり、内部端子5の接続部6の周囲に全周に亘って、外部端子25の基端側部分において外部導体接続部26よりもX1側の部分があり、内部端子5の接続部6と、外部端子25の基端側部分において外部導体接続部26よりもX1側の部分とが同軸に配置されているといった構造である。部分P4の同軸構造は、中心に内部端子5の接触部9があり、内部端子5の接触部9の周囲に全周に亘って外部端子25の接触部28があり、内部端子5の接触部9と外部端子25の接触部28とが同軸に配置されているといった構造である。また、部分P1における内部導体52の外径と外部導体54の内径との比、部分P2における内部端子5の接続部6の外径と、外部端子25の基端側部分において外部導体接続部26よりもX1側の部分の内径との比、および部分P4における内部端子5の接触部9の外径と外部端子25の接触部28の内径との比はそれぞれ互いに略等しい。このように、部分P1に形成された同軸構造と、部分P2に形成された同軸構造と、部分P4に形成された同軸構造とのそれぞれの間には均一性が認められる。
【0057】
また、同軸端子1の部分P3には、内部端子5の連結部11と、連結部11に設けられた壁部12と、内部端子5の接続部6からX1方向に突出した内部導体52の先端部と、外部端子25の屈曲部分(外部端子25において基端側部分と先端側部分との間の屈曲している部分)とによって同軸構造が形成されている。
【0058】
また、内部端子5において、連結部11は、
図9に示すように、X方向およびZ方向に拡がる板状に形成されている。また、壁部12は、連結部11のX1側の端部からY1方向に伸長し、Y方向およびZ方向に拡がる板状に形成されている。また、内部端子5の接続部6からX1方向に突出した内部導体52の先端部の端面は壁部12に接近しており、壁部12と内部導体52の先端部との間の空き空間が小さくなっている。このように、同軸端子1の部分P3において、内部端子5の接続部6と接触部9との間の屈曲部分には、連結部11、壁部12および内部導体52の先端部によって導体が三次元的に広範囲に亘って配置された構造が形成されている。さらに、壁部12は、
図8に示すように、同軸端子1をZ2側から見たとき、接触部9のX1側の部分と部分的に重なり合っており、その結果、
図11に示すように、壁部12のX1側の面12Aと、当該面12Aと対向する外部端子25の内面との距離Dは、互いに対向する内部端子5の接続部6の外面と外部端子25の内面との間の距離Eと、互いに対向する内部端子5の接触部9の外面と外部端子25の内面との間の距離Fとそれぞれ略等しくなっている。このように、距離D、EおよびFがそれぞれ略等しいことから、内部端子5の接続部6と接触部9との間の屈曲部分において、連結部11、壁部12および内部導体52の先端部によって導体が三次元的に配置された構造の外径は、内部端子5の接続部6または接触部9の外径と略等しいと考えることができる。内部端子5の接続部6と接触部9との間の屈曲部分に形成されたこのような構造を、高周波信号が流れる経路として電気的に見た場合、この構造は、接続部6または接触部9の外径と略等しい外径を有し、かつ直角に屈曲した筒状または柱状の導体により接続部6と接触部9との間が接続された構造と概ね同視することができる。以下、内部端子5の接続部6と接触部9との間の屈曲部分に形成されたこの構造を「擬似的な屈曲等径導電構造」という。
【0059】
このように、内部端子5の接続部6と接触部9との間の屈曲部分に擬似的な屈曲等径導電構造が形成されているので、同軸端子1の部分P3には、その中心に内部端子5における擬似的な屈曲等径導電構造があり、当該擬似的な屈曲等径導電構造の周囲に全周に亘って、外部端子25の屈曲部分があり、擬似的な屈曲等径導電構造と、外部端子25の屈曲部分とが同軸に配置されているといった同軸構造が形成されている。また、上述したように、内部端子5の擬似的な屈曲等径導電構造の外径は、内部端子5の接続部6または接触部9の外径と略等しいと考えることができる。さらに、外部端子25の屈曲部分の内径は、外部端子25の基端側部分において外部導体接続部26よりもX1側の部分の内径、または外部端子25の接触部28の内径と略等しい。したがって、内部端子5の擬似的な屈曲等径導電構造の外径と外部端子25の屈曲部分の内径との比は、部分P2における内部端子5の接続部6の外径と、外部端子25の基端側部分において外部導体接続部26よりもX1側の部分の内径との比、または部分P4における内部端子5の接触部9の外径と外部端子25の接触部28の内径との比と略等しい。よって、部分P3に形成された同軸構造と、部分P2に形成された同軸構造、または部分P4に形成された同軸構造との間には均一性が認められる。
【0060】
以上より、同軸端子1の部分P1、部分P2、部分P3および部分P4にはそれぞれ互いに均一性のある同軸構造が形成されている。すなわち、同軸端子1には、その基端部から先端部に亘って均一性のある同軸構造が連続的に形成されている。このように、連結部11に壁部12が設けられた内部端子5によれば、同軸端子1の基端部から先端部に亘って均一性のある同軸構造を連続的に形成することができる。これにより、同軸端子1の基端部から先端部に亘る各所の特性インピーダンスを同軸ケーブルの特性インピーダンスに一致させ、または近づけることができ、同軸端子1における高周波信号の伝送の効率を高めることができる。
【0061】
また、本実施形態の内部端子5においては、
図8に示すように、内部端子5をZ2側から見たとき、壁部12のX1側の面12Aが、接触部9の内面において最もX1側の部分よりもX1側に位置し、かつ接触部9の外面において最もX1側の部分よりもX2側に位置している。この構成により、壁部12のX1側の面12Aと、当該面12Aと対向する外部端子25の内面との距離Dを、互いに対向する内部端子5の接触部9の外面と外部端子25の内面との間の距離Fと略等しくすることができる。これにより、内部端子5において連結部11が設けられている部分に、上述した擬似的な屈曲等径導電構造を形成し易くすることができる。その結果、同軸端子1の部分P3に、部分P4に形成された同軸構造と均一性のある同軸構造を形成し易くすることができる。
【0062】
また、本実施形態の内部端子5においては、
図8に示すように、内部端子5をZ2側から見たとき、壁部12のY1側の端部12Bが、接触部9の内面において最もY1側の部分よりもY1側に位置し、かつ接触部9の外面において最もY1側の部分よりもY2側に位置している。この構成により、
図10に示すように、壁部12のY方向における幅寸法を、接触部9の外径に近づけることができる。これにより、内部端子5において連結部11が設けられている部分に、上述した擬似的な屈曲等径導電構造を形成し易くすることができる。
【0063】
また、本実施形態の内部端子5においては、
図10に示すように、内部端子5をX1側から見たとき、壁部12が、接続部6にかしめ固定された内部導体52の端側部分の端面の中心Cと重なり合っている。この構成により、接続部6にかしめ固定された内部導体52の先端部の端面と、当該端面と対向する外部端子25の内面との間に広範囲に亘って壁部12を介在させることができる。したがって、接続部6にかしめ固定された内部導体52の先端部の端面と、当該端面と対向する外部端子25の内面との間の空き空間を小さくすることができる。これにより、内部端子5において連結部11が設けられている部分に、上述した擬似的な屈曲等径導電構造を形成し易くすることができる。
【0064】
ここで、
図13中のグラフにおいて、実線の特性線αは、本実施形態の内部端子5を備えた同軸端子1の電圧定在波比(VSWR)の測定結果を示し、破線の特性線βは、
図21に示す従来の内部端子202を備えた同軸端子201の電圧定在波比の測定結果を示している。また、
図13中のグラフの横軸は周波数であり、縦軸は電圧定在波比である。特性線αとβとを比較するとわかる通り、およそ2.2GHzからおよそ5GHzまでにかけての周波数において、本実施形態の内部端子5を備えた同軸端子1の電圧定在波比の方が、従来の内部端子202を備えた同軸端子201の電圧定在波比よりも1に近い。
図13のグラフから、およそ2.2GHz~およそ5GHzの周波数を有する高周波信号を伝送するに当たり、本実施形態の内部端子5を備えた同軸端子1の方が従来の内部端子202を備えた同軸端子201よりも、信号の反射を抑える効果が高く、高周波信号の伝送の効率が良いことがわかる。
【0065】
また、内部端子5の壁部12は、内部端子5の接続部6および接触部9と共に、プレス加工により、導電材料からなる板材をその板面Jを基準として同じ側の方向(Y1側の方向)に曲げることにより形成することができる(
図12(B)を参照)。したがって、本実施形態によれば、同軸端子の高周波信号の伝送の効率を高めることができるL形の内部端子5をプレス加工により容易にかつ安価に製造することができる。また、
図12(C)を見るとわかる通り、内部端子5に壁部12を形成した場合と、内部端子5に壁部12を形成しない場合とで、展開した内部端子5の全体のZ方向の寸法Wは変わらない。したがって、
図21に示す従来の内部端子202に壁部12を追加して本実施形態の内部端子5を製造することとした場合、連鎖端子15に配列された複数の内部端子5の間隔Bを大きくすることなく、内部端子5を製造することができる。よって、内部端子5を製造するに当たり、材料費の上昇を抑えることができる。
【0066】
また、本実施形態の内部端子5において、壁部12は、連結部11のX1側の端部からY1方向に伸長し、Y方向およびZ方向に拡がる板状に形成されている。この構成により、内部端子5の接続部6に内部導体52の端側部分をかしめ固定するときに、内部導体52の先端部の接続部6からの突出量が大きくなり過ぎることを防止することができる。また、接続部6にかしめ固定された内部導体52の先端部を壁部12で覆うことができる。これにより、撚り線である内部導体52が接続部6にかしめ固定された後に、その内部導体52の先端部が何らかの物体に触れるなどして、内部導体52の先端部において素線が散けて拡がることを抑制することができる。したがって、同軸端子1の組立時に、内部導体52の先端部で素線が散け、散けた内部導体52の素線が邪魔になって、内部端子5を絶縁部材21に組み込むことが困難になることを抑制することができる。よって、同軸端子1の組立作業性の低下を抑制することができる。
【0067】
また、本実施形態の内部端子5においては、
図10に示すように、内部端子をX1側から見たとき、壁部12のZ2側の端部12Cが、内部導体52の端側部分がかしめ固定された接続部6の外面において最もZ2側の部分よりもZ2側に位置している。これにより、接続部6にかしめ固定された内部導体52の先端部をZ方向に広範囲に覆うことができる。したがって、接続部6にかしめ固定された内部導体52の先端部が散けて拡がることを壁部12によって抑制する効果を高めることができる。
【0068】
なお、上記実施形態の内部端子5においては、
図8に示すように、内部端子5をZ2側から見たとき、壁部12のX1側の面12Aは、接触部9の内面において最もX1側の部分よりもX1側に位置し、かつ接触部9の外面において最もX1側の部分よりもX2側に位置している。しかしながら、
図14に示す内部端子61のように、内部端子61の連結部11のX1側の端部からY1方向に伸長し、Y方向およびZ方向に拡がる板状に形成された壁部62を設け、内部端子61をZ2側から見たとき、壁部62のX1側の面62Aが、接触部9の外面において最もX1側の部分と同じ位置に位置するようにしてもよい。また、上記実施形態の内部端子5においては、内部端子5をZ2側から見たとき、壁部12のY1側の端部12Bは、接触部9の内面において最もY1側の部分よりもY1側に位置し、かつ接触部9の外面において最もY1側の部分よりもY2側に位置している。しかしながら、
図14に示す内部端子61のように、内部端子61をZ2側から見たとき、壁部62のY1側の端部62Bが、接触部9の外面において最もY1側の部分と同じ位置に位置するようにしてもよい。
【0069】
また、上記実施形態の内部端子5においては、壁部12がY方向およびZ方向に拡がる平板状に形成されているが、
図15に示す内部端子121のように、壁部122を、Y方向およびZ方向に拡がる湾曲した板状に形成してもよい。内部端子121をZ2側から見たとき、壁部122のX1側の面は、接触部9の外面に沿うように湾曲している。この構成によっても、上述した擬似的な屈曲等径導電構造を形成し易くすることができる。
【0070】
また、
図16に示す内部端子71ように、壁部72の形状を、連結部11のX1側の端部からY1方向に伸長した後に曲がり、その後、X2方向に伸長する形状としてもよい。この構成によっても、上述した擬似的な屈曲等径導電構造を形成し易くすることができる。また、
図17に示す内部端子81のように、内部端子81の連結部11に、壁部12に加え、連結部11のZ2側の端部からY1方向に伸長し、かつX方向およびY方向に拡がる板状に形成された他の壁部82を設けてもよい。この構成によっても、上述した擬似的な屈曲等径導電構造を形成し易くすることができる。また、
図18に示す内部端子91のように、壁部12のZ2側の端部からX2方向に伸長し、かつX方向およびY方向に拡がる板状に形成された他の壁部92を設けてもよい。この構成によっても、上述した擬似的な屈曲等径導電構造を形成し易くすることができる。
【0071】
また、上記実施形態の内部端子5の接触部9はZ方向に伸長した円筒状に形成されているが、本発明における内部端子の接触部の形状はこれに限らない。例えば、
図19(A)に示すように、内部端子131に、Z2側から見たときの形状がC字状またはU字状の接触部132を設けてもよい。また、
図19(B)に示すように、内部端子141に、Z2側から見たときの形状がコ字状の接触部142を設けてもよい。また、
図19(C)に示す内部端子151の接触部152のように、コ字状の接触部の向きを変えてもよい。また、
図19(D)に示す内部端子161のように、Z2側から見たときの形状がL字状の接触部162を設けてもよい。接触部132、142、152、162はそれぞれ、連結部11のZ1側端部からZ1方向に伸長し、かつ連結部11よりもY1方向に突出している。
【0072】
また、上記実施形態では、内部端子5の接続部6の一方の接続片8が接続基部7のZ1側の端部からY1側に傾斜しつつZ1方向に突出し、他方の接続片8が接続基部7のZ2側の端部からY1側に傾斜しつつZ2方向に突出している場合を例にあげたが、一方の接続片8が接続基部7のZ1側の端部からZ1方向に突出し、他方の接続片8が接続基部7のZ2側の端部からZ2方向に突出するようにしてもよいし、一方の接続片8が接続基部7のZ1側の端部からY1方向に突出し、他方の接続片8が接続基部7のZ2側の端部からY1方向に突出するようにしてもよい。
【0073】
また、本発明のL形同軸端子は、
図1に示すような、複数のL形同軸端子を備えた、いわゆる多芯型のL形同軸コネクタに限らず、種々のL形同軸コネクタに適用することができる。
【0074】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うL形端子およびL形同軸端子もまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0075】
1~4 同軸端子(L形同軸端子)
5、61、71、81、91、121、131、141、151、161 内部端子(L形端子)
6 接続部
7 接続基部
8 接続片
9、132、142、152、162 接触部
11 連結部
12、62、72、82、92、122 壁部
21 絶縁部材
25 外部端子
31 同軸コネクタ
51 同軸ケーブル
52 内部導体
54 外部導体