(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068585
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】運動検出装置
(51)【国際特許分類】
G01F 1/06 20060101AFI20240513BHJP
【FI】
G01F1/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179147
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】390005049
【氏名又は名称】ヒロセ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(72)【発明者】
【氏名】江川 広祐
【テーマコード(参考)】
2F030
【Fターム(参考)】
2F030CA01
2F030CE07
2F030CE09
2F030CG02
2F030CG09
(57)【要約】
【課題】被検体の運動に関する情報を、磁気センサからのパルスを用いて無電源で無線により伝達できるようにする。
【解決手段】被検体の回転を検出する回転検出装置1は、大バルクハウゼン効果を用いた磁気センサを備えた装置本体と、無線送信機21と、無線送信機21の稼働電力を磁気センサからのパルスを用いて生成する電力供給回路22とを備え、電力供給回路22は、整流された上記パルスの電荷を蓄積する蓄電器24と、蓄電器24に蓄積された電荷を用いて稼働電力を生成する定電圧回路25とを有し、定電圧回路25は、1パケットを送信するに当たり無線送信機21および定電圧回路25が消費する電力に相当する電荷量の電荷が蓄電器24に蓄積されるごとに稼働電力を生成し、無線送信機21は、定電圧回路25により稼働電力が生成されたときに当該稼働電力を用いて1パケットを送信し、その後、次に稼働電力が生成されるまで送信を行わない。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の運動を検出する運動検出装置であって、
大バルクハウゼン効果を奏する磁性線材にコイルを設けることにより形成された磁気センサ、磁石、および前記被検体の運動に連動して前記磁気センサと前記磁石の各磁極との互いの位置関係が相対的に変化するように前記磁気センサおよび前記磁石を支持する支持機構を有する装置本体と、
所定の情報を無線送信する無線送信機と、
前記無線送信機を稼働させるために前記無線送信機に供給する稼働電力を、前記被検体の運動に連動した前記磁気センサと前記磁石の各磁極との互いの位置関係の相対的な変化により前記磁気センサから出力されたパルスを用いて生成する電力供給回路とを備え、
前記電力供給回路は、
前記磁気センサから出力された正負のパルスを整流する整流回路と、
前記整流回路により整流された前記パルスの電荷を蓄積する蓄電器と、
前記蓄電器に蓄積された電荷を用いて前記稼働電力を生成する電力生成回路とを有し、
前記電力生成回路は、前記無線送信機が1単位の前記情報を無線送信するに当たり前記無線送信機および前記電力生成回路が消費する単位情報送信電力に相当する単位情報送信電荷量の電荷が前記蓄電器に蓄積されるごとに前記稼働電力を生成し、
前記無線送信機は、前記電力生成回路により前記稼働電力が生成されたときに当該稼働電力を用いて1単位の前記情報を無線送信し、その後、次に前記電力生成回路により前記稼働電力が生成されるまで前記情報の無線送信を行わないことを特徴とする運動検出装置。
【請求項2】
前記磁気センサから出力された前記パルスをカウントし、前記パルスのカウント値を記憶するカウンタを備え、
前記無線送信機は、前記カウンタに記憶された前記カウント値が含まれた前記情報を無線送信することを特徴とする請求項1に記載の運動検出装置。
【請求項3】
前記無線送信機は、当該運動検出装置に接続された外部装置から出力された外部データが含まれた前記情報を無線送信することを特徴とする請求項1に記載の運動検出装置。
【請求項4】
前記無線送信機から送信された前記情報を受信する無線受信機を備え、
前記無線受信機は、前記無線送信機から受信した1単位の前記情報の受信回数に基づいて前記磁気センサから出力されたパルスの個数を算出し、算出した前記パルスの個数を当該無線受信機が有する記憶部に記憶することを特徴とする請求項1に記載の運動検出装置。
【請求項5】
前記無線送信機から送信された前記情報を受信する無線受信機を備え、
前記無線受信機は、前記無線送信機から受信した1単位の前記情報の受信間隔に基づいて前記磁気センサから出力されたパルスの間隔を算出し、算出した前記パルスの間隔を当該無線受信機が有する記憶部に記憶することを特徴とする請求項1に記載の運動検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大バルクハウゼン効果を用いた磁気センサにより、被検体の運動を検出する運動検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大バルクハウゼン効果を用いた磁気センサにより被検体の回転等の運動を検出する運動検出装置の原理は次の通りである。
【0003】
例えば、回転する被検体に磁石を取り付け、被検体の回転に伴ってN極とS極が回転する回転磁界を形成する。そして、その回転磁界の中に、大バルクハウゼン効果を奏する磁性線材にコイルを設けることにより形成された磁気センサを置き、被検体の回転に伴って磁気センサに作用する磁界の方向が変化するようにする。磁性線材は、それに作用する磁界の方向が変化し、変化した磁界の強度が、ある閾値に達したときに、磁化方向が瞬時に反転する性質を有している。したがって、被検体の回転に伴って磁気センサに作用する磁界の方向が変化する度に、磁性線材の磁化方向が反転し、コイルに電流が流れる。そして、磁界の方向が変化したとき、その変化の速さに拘わらず、磁性線材の磁化方向は瞬時に反転するので、そのときにコイルに流れる電流は鋭いパルス状になる。このパルスに基づいて被検体の回転を検出する。
【0004】
実開平2-115124号公報(特許文献1)には、大バルクハウゼン効果を用いた磁気センサを利用して流体の流量を計測する流量計が記載されている。また、特開2009-162730号公報(特許文献2)には、大バルクハウゼン効果を用いた磁気センサを利用して操舵角を検出する回転角検出装置が記載されている。また、国際公開2016/002437号公報(特許文献3)には、大バルクハウゼン効果を用いた磁気センサを利用して、例えばサーボモータの回転軸の回転等の運動を検出する運動検出装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平2-115124号公報
【特許文献2】特開2009-162730号公報
【特許文献3】国際公開2016/002437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、大バルクハウゼン効果を用いた磁気センサにおいては、回転磁界の中に磁気センサを置くことにより、磁気センサのコイルに鋭いパルス状の電流が生じる。したがって、大バルクハウゼン効果を用いた磁気センサによれば、被検体の運動の検出の基礎となるパルスを得るのに、商用電源または電池等の電源は不要であり、被検体の運動検出を無電源で行うことができる。
【0007】
さらに、特開2009-162730号公報に記載された回転角検出装置、および国際公開2016/002437号公報に記載された運動検出装置は、パルスを得ることだけでなく、被検体の回転等に関する情報を記憶することをも無電源で行う構成を有している。すなわち、これらの装置は、磁気センサから出力されたパルスの電力を用いてメモリを動作させ、そのメモリに、被検体の回転等に関する情報を記憶している。
【0008】
ところで、運動検出装置によって被検体の運動を検出することにより得られた被検体の運動に関する情報を、被検体から離れた場所へ無線で伝達することができれば、運動検出装置の利便性が高まる。さらに、このような情報の無線による伝達を無電源で行うことができれば、運動検出装置の利便性が一層高まる。
【0009】
上記情報の無線による伝達を無電源で行う方法として、運動検出装置に無線送信機を設け、その無線送信機を、磁気センサから出力されたパルスの電力を用いて稼働させ、その無線送信機により上記情報を無線送信するといった方法が考えられる。
【0010】
しかしながら、一般的に考えて、情報の無線送信は、情報のメモリへの記憶と比較して電力の消費量が多い。それゆえ、磁気センサから出力されたパルスの電力を用いて無線送信機を稼働させ、この無線送信により上記情報を無線送信することは実際上容易でない。
【0011】
本発明は例えば上述したような問題に鑑みなされたものであり、本発明の課題は、被検体の運動に関する情報の被検体から離れた場所への無線による伝達を、磁気センサから出力されたパルスの電力を用いて無電源で行うことを実現し得る運動検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、被検体の運動を検出する運動検出装置であって、大バルクハウゼン効果を奏する磁性線材にコイルを設けることにより形成された磁気センサ、磁石、および前記被検体の運動に連動して前記磁気センサと前記磁石の各磁極との互いの位置関係が相対的に変化するように前記磁気センサおよび前記磁石を支持する支持機構を有する装置本体と、所定の情報を無線送信する無線送信機と、前記無線送信機を稼働させるために前記無線送信機に供給する稼働電力を、前記被検体の運動に連動した前記磁気センサと前記磁石の各磁極との互いの位置関係の相対的な変化により前記磁気センサから出力されたパルスを用いて生成する電力供給回路とを備え、前記電力供給回路は、前記磁気センサから出力された正負のパルスを整流する整流回路と、前記整流回路により整流された前記パルスの電荷を蓄積する蓄電器と、前記蓄電器に蓄積された電荷を用いて前記稼働電力を生成する電力生成回路とを有し、前記電力生成回路は、前記無線送信機が1単位の前記情報を無線送信するに当たり前記無線送信機および前記電力生成回路が消費する単位情報送信電力に相当する単位情報送信電荷量の電荷が前記蓄電器に蓄積されるごとに前記稼働電力を生成し、前記無線送信機は、前記電力生成回路により前記稼働電力が生成されたときに当該稼働電力を用いて1単位の前記情報を無線送信し、その後、次に前記電力生成回路により前記稼働電力が生成されるまで前記情報の無線送信を行わないことを特徴とする。
【0013】
上記本発明の運動検出装置において、前記磁気センサから出力された前記パルスをカウントし、前記パルスのカウント値を記憶するカウンタを備え、前記無線送信機は、前記カウンタに記憶された前記カウント値が含まれた前記情報を無線送信することとしてもよい。また、上記本発明の運動検出装置において、前記無線送信機は、当該運動検出装置に接続された外部装置から出力された外部データが含まれた前記情報を無線送信することとしてもよい。
【0014】
また、上記本発明の運動検出装置において、前記無線送信機から送信された前記情報を受信する無線受信機を備え、前記無線受信機は、前記無線送信機から受信した1単位の前記情報の受信回数に基づいて前記磁気センサから出力されたパルスの個数を算出し、算出した前記パルスの個数を当該無線受信機が有する記憶部に記憶することとしてもよい。また、上記本発明の運動検出装置において、前記無線送信機から送信された前記情報を受信する無線受信機を備え、前記無線受信機は、前記無線送信機から受信した1単位の前記情報の受信間隔に基づいて前記磁気センサから出力されたパルスの間隔を算出し、算出した前記パルスの間隔を当該無線受信機が有する記憶部に記憶することとしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、被検体の運動に関する情報を、磁気センサから出力されたパルスの電力を用いて無電源で、被検体から離れた場所へ無線により伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の運動検出装置の第1の実施形態である回転検出装置を、流体の流量および流速の測定に適用した例を示す説明図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態の回転検出装置における回転検出装置本体、無線送信機および電力供給回路を示す斜視図である。
【
図3】
図2中の回転検出装置本体の細部を示す説明図であり、(A)は磁石、磁石支持板および連結シャフトを示し、(B)は
図2中の切断線A-Aに沿って切断した回転検出装置本体の断面を示している。
【
図4】本発明の第1の実施形態の回転検出装置において、2つの磁石が連結シャフトの軸心を中心に時計回り方向に1回転する間に3つの磁気センサからそれぞれ出力されるパルスを示す説明図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態の回転検出装置における無線送信機および電力供給回路等を示す回路図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態の回転検出装置において、各磁気センサから出力されたパルスの波形、これらのパルスを整流回路により全波整流したものの波形、蓄電器の電荷量、および無線送信機の送信信号の波形を示す説明図である。
【
図7】本発明の第1の実施形態の回転検出装置において、無線送信機により無線送信されるパケットを示す説明図である。
【
図8】本発明の第1の実施形態の回転検出装置における無線受信機の構成を示すブロック図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態の回転検出装置における無線送信機、電力供給回路およびカウンタ等を示す回路図である。
【
図10】本発明の第2の実施形態の回転検出装置において、無線送信機により無線送信されるパケットを示す説明図である。
【
図11】本発明の第2の実施形態の変形例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施形態]
(回転検出装置の構成)
図1は、本発明の運動検出装置の第1の実施形態である回転検出装置1を、流体の流量および流速の測定に適用した例を示している。回転検出装置1は、大バルクハウゼン効果を用いた磁気センサにより被検体の回転を検出する装置である。
図1に示す例において、回転検出装置1の被検体は、流体が流れる管51内に設けられた羽根車53の回転シャフト54である。回転検出装置1は回転シャフト54の回転を検出する。流体が管51内を
図1中の矢印F方向に流れたとき、羽根車53が
図1において時計回り方向に回転する。羽根車53の回転数(回転量)は流体の流量に対応し、羽根車53の回転速度は流体の流速に対応する。
【0018】
回転検出装置1は、回転検出装置本体2、無線送信機21、電力供給回路22、および無線受信機41を備えている。なお、回転検出装置本体2は「装置本体」の具体例である。
【0019】
回転検出装置本体2は管51に取り付けられている。具体的には、管51には、羽根車53を収容した羽根車収容部52が設けられており、羽根車収容部52の上面には、ケース3が取り付けられている。ケース3は羽根車収容部52の上面に固定されている。回転検出装置本体2はこのケース3内に設けられている。
【0020】
羽根車53の下端側部分と回転シャフト54とは互いに固定されている。回転シャフト54は羽根車53と一体に回転する。回転シャフト54の上端側部分は、羽根車収容部52の上面の中央に形成された穴等を介してケース3内に進入している。なお、管51内を流れる流体がケース3内に流入しないように、羽根車収容部52の上面に形成された穴と回転シャフト54の外周面との間等はシールされている。
【0021】
無線送信機21および電力供給回路22は、回転検出装置本体2の上部に取り付けられた基板20上に設けられている。無線受信機41は、被検体から離れた場所、具体的には、回転検出装置本体2が取り付けられた羽根車収容部52から離れた場所に設けられている。無線受信機41は、羽根車収容部52から、無線送信機21と無線受信機41との間の通信が可能な距離、離すことができる。
【0022】
(回転検出装置本体)
図2は、回転検出装置本体2、並びに回転検出装置本体2の上部に取り付けられた基板20上に設けられた無線送信機21および電力供給回路22を示している。回転検出装置本体2は、
図2に示すように、2つの磁石4A、4B、上下2枚の磁石支持板5、連結シャフト6、3つの磁気センサ7A、7B、7C、および上下2枚のセンサ支持板8を備えている。なお、磁石支持板5、連結シャフト6およびセンサ支持板8は「支持機構」の具体例である。
【0023】
図3(A)は、2つの磁石4A、4B、上下2つの磁石支持板5および連結シャフト6等を
図2から抜き出して示している。各磁石4A、4Bは棒状の磁石である。各磁石4A、4Bの一端側部分がN極であり、他端側部分がS極である。2つの磁石4A、4Bは、
図3(A)に示すように、それぞれ上下方向に伸長し、かつ水平方向に並ぶように配置されている。2つの磁石4A、4Bはそれぞれの磁極が互いに逆向きになるように配置されている。具体的には、一方の磁石4AはN極が上を向き、S極が下を向くように配置され、他方の磁石4BはS極が上を向き、N極が下を向くように配置されている。一方の磁石4Aは上下2枚の磁石支持板5の水平方向一側の端部に支持され、他方の磁石4Bは上下2枚の磁石支持板5の水平方向他側の端部に支持されている。
【0024】
また、上下2つの磁石支持板5の水平方向中央部には連結シャフト6の上部が固定されている。連結シャフト6の下部は回転シャフト54に連結されている。連結シャフト6は、回転シャフト54と同軸に配置されている。2つの磁石4A、4B、上下2枚の磁石支持板5および連結シャフト6は、回転シャフト54と一体に回転する。
【0025】
各磁気センサ7A、7B、7Cは、
図2に示すように、磁性線材11、ボビン12、およびコイル13を有している。磁性線材11は、大バルクハウゼン効果を奏する磁性線材である。磁性線材11は、例えば、鉄およびコバルトを含む半硬質磁性材料により形成された線材である。磁性線材11は、例えば、上記半硬質磁性材料を線引きし、方向を変えながら複数回捻ることにより形成されている。磁性線材11は、磁化が容易な方向が当該磁性線材11の軸線方向である一軸異方性を有している。また、磁性線材11において、その外周側部分よりも中心側部分の方が保磁力が大きい。磁性線材11は外部磁界の方向の変化に応じて磁性線材11(その外周側部分)の磁化方向が瞬時に反転する性質を有している。
【0026】
磁性線材11は、その軸線方向が上下方向となるように配置されている。また、磁性線材11はボビン12の内部に収容されている。ボビン12は、例えば樹脂等により概ね円柱状に形成されている。また、磁性線材11の外周側にはコイル13が設けられている。コイル13は、例えばエナメル線等の電線をボビン12の外周側に巻回することにより形成されている。また、図示を省略しているが、コイル13の両端部は電力供給回路22に接続されている。
【0027】
3つの磁気センサ7A、7B、7Cは、上下2枚のセンサ支持板8に支持されている。上下2枚のセンサ支持板8は例えばケース3(
図1を参照)にブラケット等を介して固定されている。下側のセンサ支持板8の中央には、回転シャフト54の直径よりも大きい直径を有する貫通穴9が形成されている。回転シャフト54の上端側部分は、貫通穴9の中央を通って上下2枚のセンサ支持板8間に進入している。また、連結シャフト6の上端部は、上側のセンサ支持板8の中央に例えば軸受を介して、上側のセンサ支持板8に対して回転可能に支持されている。これらの構造により、回転シャフト54が回転したとき、2つの磁石4A、4B、上下2枚の磁石支持板5および連結シャフト6は、3つの磁気センサ7A、7B、7Cおよび上下2枚のセンサ支持板8に対して回転する。これにより、3つの磁気センサ7A、7B、7Cと、2つの磁石4A、4Bの各磁極との互いの位置関係が相対的に変化する。
【0028】
図3(B)は、
図2中の切断線A-Aに沿って切断した回転検出装置本体2の断面を上から見た状態を示している。また、
図2中の切断線A-Aの上下方向の位置は、
図3(A)中の切断線B-Bの上下方向の位置と一致している。すなわち、
図3(B)においては、
図3(A)中の切断線B-Bに沿って切断された2つの磁石4A、4Bおよび連結シャフト6の断面を上から見た状態が示されている。また、
図3(A)中の切断線B-Bの位置は各磁石4A、4Bの上端側部分に位置している。磁石4Aの上端側部分はN極であり、磁石4Aの上端側部分はS極であるので、
図3(B)中の磁石4Aの切断面の磁極はN極であり、磁石4Bの切断面の磁極はS極である。
【0029】
図3(B)に示すように、3つの磁気センサ7A、7B、7Cは、磁石4A、4Bの外周側に配置されている。また、3つの磁気センサ7A、7B、7Cは、回転シャフト54(連結シャフト6)の軸心を中心に120度の間隔を置いて配置されている。また、羽根車53が
図1中の時計回り方向に回転したとき、それに伴う回転シャフト54の回転に連動して、磁石4A、4Bは、3つの磁気センサ7A、7B、7Cに囲まれた内側の領域内を、連結シャフト6(回転シャフト54)の軸心を中心に時計回り方向に回転する。
【0030】
(回転検出装置本体の動作)
図4は、磁石4A、4Bが連結シャフト6の軸心を中心に時計回り方向に1回転する間に、磁気センサ7A、7B、7Cからそれぞれ出力されるパルスP1~P6を示している。なお、
図4において、磁石4Aに付された「N」は磁石4Aの上端側部分の磁極であるN極を示し、磁石4Bに付された「S」は磁石4Bの上端側部分の磁極であるS極を示している。
【0031】
回転シャフト54の回転に伴って磁石4A、4Bが連結シャフト6の軸心を中心に回転することにより回転磁界が形成される。そして、磁気センサ7A、7B、7Cはその回転磁界の中に置かれた状態となり、磁石4A、4Bの回転に伴って磁気センサ7A、7B、7Cのそれぞれに作用する磁界の方向が変化するようになる。
【0032】
図4において、磁石4Aが磁気センサ7Aに最も接近したときの連結シャフト6(回転シャフト54)の回転角度を0度とする。磁石4Aはその上端側部分がN極であり、下端側部分がS極であるので、磁石4Aが形成する磁界の方向は下方向である。磁石4Aが磁気センサ7Aに最も接近したとき、その直前の磁気センサ7Aの磁性線材11の磁化方向が上方向であった場合には、磁気センサ7Aの磁性線材11の磁化方向が瞬時に反転して下方向になる。この磁気センサ7Aの磁性線材11の磁化方向の反転により、コイル13に瞬時に大きな電流が一方向に流れ、コイル13から例えば正方向のパルスP1が出力される。
【0033】
連結シャフト6の回転角度が60度になったとき、磁石4Bが磁気センサ7Bに最も接近する。磁石4Bはその上端側部分がS極であり、下端側部分がN極であるので、磁石4Bが形成する磁界の方向は上方向である。磁石4Bが磁気センサ7Bに最も接近したとき、その直前の磁気センサ7Bの磁性線材11の磁化方向が下方向であった場合には、磁気センサ7Bの磁性線材11の磁化方向が瞬時に反転して上方向になる。この磁気センサ7Bの磁性線材11の磁化方向の反転により、コイル13に瞬時に大きな電流が他方向に流れ、コイル13から例えば負方向のパルスP2が出力される。
【0034】
連結シャフト6の回転角度が120度になったときには、磁石4Aが磁気センサ7Cに最も接近する。このとき、その直前の磁気センサ7Cの磁性線材11の磁化方向が上方向であった場合には、磁気センサ7Cの磁性線材11の磁化方向が瞬時に反転して下方向になる。これにより、コイル13に瞬時に大きな電流が一方向に流れ、コイル13から正方向のパルスP3が出力される。
【0035】
連結シャフト6の回転角度が180度になったときには、磁石4Bが磁気センサ7Aに最も接近し、磁気センサ7Aの磁性線材11の磁化方向が瞬時に反転して上方向になり、コイル13から負方向のパルスP4が出力される。
【0036】
連結シャフト6の回転角度が240度になったときには、磁石4Aが磁気センサ7Bに最も接近し、磁気センサ7Bの磁性線材11の磁化方向が瞬時に反転して下方向になり、コイル13から正方向のパルスP5が出力される。
【0037】
連結シャフト6の回転角度が300度になったときには、磁石4Bが磁気センサ7Cに最も接近し、磁気センサ7Cの磁性線材11の磁化方向が瞬時に反転して上方向になり、コイル13から負方向のパルスP6が出力される。
【0038】
連結シャフト6(回転シャフト54)が時計回り方向に回転している間においては、磁気センサ7A、7B、7Cのそれぞれのコイルから、6つのパルスP1~P6が
図4に示す順番で出力される。また、パルスP1~P6はそれぞれ異なるタイミングで出力され、2つ以上のパルスが同時に出力されることはない。また、連結シャフト6の回転速度が速くなると、パルスP1~P6の間隔が小さくなり、連結シャフト6の回転速度が遅くなると、パルスP1~P6の間隔が大きくなる。また、磁性線材11は、それに作用する磁界の方向が変化し、変化した磁界の強さが、ある閾値に達したときに磁化方向が瞬時に反転するので、パルスP1~P6はいずれも鋭いパルスとなる。また、磁気センサ7A、7B、7Cのそれぞれにおいて、磁性線材11の材料、直径および長さは互いに等しく、コイルの電線の巻回量等も互いに等しい。それゆえ、パルスP1~P6はいずれも同等のエネルギーを有するパルスとなる。また、磁性線材11は、それに作用する磁界の方向が変化したとき、その変化の速さに拘わらず、磁化方向が瞬時に反転する。それゆえ、連結シャフト6の回転速度が速いときでも遅いときでも、各パルスP1~P6は同等のエネルギーを有するパルスとなる。
【0039】
(無線送信機)
無線送信機21は、例えばブルートゥース・ロー・エナジー(ブルートゥースは登録商標)等の低消費電力の近距離無線通信を行う装置である。無線送信機21は、稼働電力PWが供給されたときに稼働する。無線送信機21は例えばカスタムIC(集積回路)であり、稼働電力PWが供給されたときに1パケットを無線送信し、その後、次に稼働電力PWが供給されるまでパケットの無線送信を行わないように設計されている。無線送信機21は、1パケットを無線送信した後、次に稼働電力PWが供給されるまでの間、電力を消費しない。無線送信機21は、回転検出装置本体2の一部、例えば、回転検出装置本体2の上側のセンサ支持板8の上面に取り付けられた基板20上に設けられている。
【0040】
(電力供給回路の構成)
図5は、入力側に磁気センサ7A、7B、7C(厳密にはそれらのコイル13の両端)が接続され、出力側に無線送信機21が接続された電力供給回路22を示している。電力供給回路22は、無線送信機21を稼働させるために無線送信機21に供給する稼働電力P
Wを、磁気センサ7A、7B、7Cのそれぞれのコイル13から出力されたパルスP1~P6が有するエネルギーを用いて生成する回路である。電力供給回路22は、回転検出装置本体2の一部、例えば、回転検出装置本体2の上側のセンサ支持板8の上面に取り付けられた基板20上に設けられている。電力供給回路22は、整流回路23、蓄電器24、および定電圧回路25を有している。
【0041】
整流回路23は、磁気センサ7A、7B、7Cのそれぞれのコイル13から出力された正方向および負方向のパルスP1~P6を全波整流する回路である。整流回路23は、4つのダイオードを
図5に示すように接続することにより形成されている。
【0042】
蓄電器24は、整流回路23により整流されたパルスの電荷を蓄積する。蓄電器24として電解コンデンサが用いられている。なお、蓄電器24として電気二重層コンデンサを用いてもよい。蓄電器24の両端は、
図5に示すように、整流回路23の2つの出力端にそれぞれ接続されている。
【0043】
定電圧回路25は、蓄電器24に蓄積された電荷を用いて稼働電力P
Wを生成する回路である。定電圧回路25は蓄電器24の後段に配置されている。定電圧回路25は、例えば、ツェナーダイオード26、NPN型のトランジスタ27、および電流制限抵抗28を
図5に示すように接続することにより形成されている。
【0044】
ここで、無線送信機21が1パケットを無線送信するに当たり無線送信機21および定電圧回路25が消費する電力を「1パケット送信電力」という。また、1パケット送信電力に相当する電荷量を「1パケット送信電荷量」という。定電圧回路25は、1パケット送信電荷量の電荷が蓄電器24に蓄積されるごとに稼働電力PWを生成し、それを無線送信機21へ出力する。なお、定電圧回路25は「電力生成回路」の具体例である。1パケット送信電力は「単位情報送信電力」の具体例である。1パケット送信電荷量は「単位情報送信電荷量」の具体例である。
【0045】
また、蓄電器24として、1パケット送信電荷量以上の電荷を蓄積することができる容量を有する蓄電器を選択する。この蓄電器の容量は例えば次のように算出することができる。
【0046】
図5に示す回路において、無線送信機21を稼働させるために無線送信機21に加える稼働電圧をV
Wとし、ツェナーダイオードの降伏電圧をV
Zとし、トランジスタ27のベース-エミッタ間の電圧をV
BEとしたとき、次の数式が成立する。
V
Z=V
W+V
BE (1)
また、電流制限抵抗28の両端の電圧をV
Rとしたとき、蓄電器24の両端電圧をV
CAにつき、次の数式が成立する。
V
CA=V
Z+V
R (2)
また、1パケット送信電荷量をQ
Aとし、蓄電器24の容量をC
Aとしたとき、次の数式が成立する。
Q
A=C
A・V
CA (3)
また、1パケット送信電力をP
Aとすると、1パケット送信電荷量Q
Aは1パケット送信電力P
Aに相当する電荷量であるから、
Q
A=P
A (4)
である。
【0047】
さて、まず、上記数式(1)を満たすツェナー電圧を有するツェナーダイオードを定電圧回路25に用いるツェナーダイオード26として選択する。次に、無線送信機21の稼働電圧VWに基づき、定電圧回路25から出力される電力が、1パケットを無線送信するに当たり無線送信機21が消費する電力以上となるように、トランジスタ27のコレクタ電流(≒定電圧回路25から出力される電流)を決める。次に、そのコレクタ電流およびトランジスタ27の電流増幅率に基づいてトランジスタ27のベース電流を定め、また、選択したツェナーダイオード26の仕様等に基づいてツェナー電流を定める。次に、ベース電流およびツェナー電流に基づいて電流制限抵抗28の抵抗値を定める。VRは、ベース電流とツェナー電流の合計に電流制限抵抗28の抵抗値を乗じた値となる。次に、蓄電器24の容量CAを次の数式により算出する。
CA =PA/(VZ+VR) (5)
このようにして算出された容量CAは、蓄電器24に蓄積することができる最大の電荷量が1パケット送信電荷量QA以上となる容量となる。
【0048】
(電力供給回路および無線送信機の動作)
図6(A)は、磁気センサ7A、7B、7Cから出力されたパルスP1~P6からなる正負のパルス列の波形を示している。
図6(B)は、これら正負のパルス列を整流回路23により全波整流したものの波形を示している。
図6(C)は、整流回路23により全波整流されたパルス列の電荷が蓄積され、また、無線送信機21の1パケットの無線送信により放電される蓄電器24の電荷量を示している。
図6(D)は、無線送信機21により行われる1パケットの無線送信時において当該1パケットに含まれる情報により変調されたキャリアの波形を簡略化して示している。
【0049】
図6(C)および6(D)において、蓄電器24は、整流回路23により全波整流されたパルスの電荷を蓄積する。これにより、蓄電器24の電荷量が漸次増加する。そして、蓄電器24に蓄積された電荷量が1パケット送信電荷量Q
Aに達したとき、定電圧回路25から無線送信機21に稼働電力P
Wが出力される。稼働電力P
Wが定電圧回路25から出力されたとき、無線送信機21は1パケットの無線送信を実行する。無線送信機21が1パケットを無線送信することにより、1パケット送信電力が消費され、その結果、蓄電器24に蓄積された電荷が略すべて放電される。
【0050】
図7は、無線送信機21により無線送信される1パケット31の内容を示している。無線送信機21により無線送信される各パケット31には、ヘッダ32および識別情報33が含まれている。識別情報33は、パケット31が無線送信機21から送信されたものであることを無線受信機41に認識させるための情報であり、例えば、無線送信機21に設定された固有のアドレスである。また、無線送信機21により無線送信される各パケット31には、磁気センサ7A、7B、7Cから出力されたパルスのカウント値(これは回転シャフト54の回転数に相当する)等、回転シャフト54の回転に関するデータは含まれていない。すなわち、無線送信機21により無線送信される各パケット31は、実質的なデータが含まれていない空パケットである。
【0051】
(無線受信機)
図8は無線受信機41の構成を示している。無線受信機41は、無線送信機21から送信されたパケットを受信する装置である。無線受信機41は、パケットの無線による受信を行うため無線受信回路に加え、
図8に示すように、パルス数算出部42、パルス間隔算出部43、および記憶部44を備えている。パルス数算出部42およびパルス間隔算出部43は、例えば、無線受信機41が有しているCPUに、記憶部44に記憶されたプログラムを読み込ませて実行させることにより実現される。記憶部44は例えば不揮発メモリである。なお、無線受信機41は、無線受信機41を稼働させるための電力を得るために、例えば商用電源に接続され、または電池を有している。すなわち、無線受信機41は無電源ではない。
【0052】
パルス数算出部42は、無線送信機21から受信したパケットの受信回数に基づいて磁気センサ7A、7B、7Cから出力されたパルスP1~P6の総数を算出する。
【0053】
これについて具体的に説明する。電力供給回路22において、蓄電器24に蓄積される電荷の量は、磁気センサ7A、7B、7Cのそれぞれのコイル13から出力され、整流回路23により全波整流されたパルスの電荷が蓄積されることによって漸次増加していき、1パケット送信電荷量に達する。磁性線材11の性質上、磁気センサ7A、7B、7Cのそれぞれのコイル13から出力される個々のパルスが有するエネルギーは同等であるので、蓄電器24に蓄積された電荷の量が零の状態から1パケット送信電荷量に達するまでの間に、磁気センサ7A、7B、7Cのそれぞれのコイル13から出力されるパルスの総数は一定になる。すなわち、蓄電器24の電荷量が零から1パケット送信電荷量に達するように蓄電器24を充電するのに必要なパルス数(以下、これを「必要充電パルス数」という。)は一定である。例えば、
図6において、蓄電器24に蓄積された電荷の量が零である時点t1から、蓄電器24に蓄積された電荷の量が1パケット送信電荷量Q
Aに達した時点t2までの間に、磁気センサ7A、7B、7Cのそれぞれのコイル13から出力されたパルスの総数は30である。すなわち、
図6に示す例において、必要充電パルス数は30である。また、定電圧回路25は、1パケット送信電荷量の電荷が蓄電器24に蓄積されるごとに、稼働電力P
Wを無線送信機21へ出力する。また、無線送信機21は、稼働電力P
Wが供給されたときに1パケットを無線送信し、その後、次に稼働電力P
Wが供給されるまでパケットの無線送信を行わない。すなわち、無線送信機21は、電力供給回路22から稼働電力P
Wが供給されるごとに1パケットの無線送信を行う。以上のことから、無線送信機21は、磁気センサ7A、7B、7Cのそれぞれのコイル13から出力されるパルスの総数が必要充電パルス数となるごとに、1パケットの無線送信を行う。したがって、無線受信機41は、磁気センサ7A、7B、7Cのそれぞれのコイル13から出力されるパルスの総数が必要充電パルス数となるごとに、無線送信機21から1パケットを受信する。よって、無線受信機41が無線送信機21から所定の期間内に受信したパケットの受信回数に、必要充電パルス数を乗じることにより、上記所定の期間内に磁気センサ7A、7B、7Cのそれぞれのコイル13から出力されたパルスP1~P6の総数を算出することができる。
【0054】
例えば無線受信機41の記憶部44には必要充電パルス数が予め記憶されている。パルス数算出部42は、記憶部44から必要充電パルス数を読み取り、無線送信機21から所定の期間内に受信したパケットの受信回数に、記憶部44から読み取った必要充電パルス数を乗じることにより、上記所定の期間内に磁気センサ7A、7B、7Cのそれぞれのコイル13から出力されたパルスP1~P6の総数を算出する。また、パルス数算出部42はこの算出結果を記憶部44に記憶する。所定の期間内に磁気センサ7A、7B、7Cのそれぞれのコイル13から出力されたパルスP1~P6の総数に基づいて、上記所定の期間における羽根車53の回転数(回転量)を知ることができ、また、上記所定の期間における羽根車53の回転数に基づいて、上記所定の期間に管51内を流れた流体の流量を知ることができる。また、所定の期間内に磁気センサ7A、7B、7Cのそれぞれのコイル13から出力されたパルスP1~P6の総数が零であることに基づいて、管51内の流体の流れが停止していることを知ることができる。
【0055】
パルス間隔算出部43は、無線送信機21から受信したパケットの受信間隔に基づいて磁気センサ7A、7B、7Cから出力されたパルスP1~P6の間隔を算出する。
【0056】
これについて具体的に説明する。磁気センサ7A、7B、7Cのそれぞれのコイル13から出力されるパルスP1~P6の間隔は、連結シャフト6(回転シャフト54)の回転速度に応じて変化する。また、磁気センサ7A、7B、7Cのそれぞれのコイル13から出力されるパルスP1~P6の間隔に応じて、蓄電器24に蓄積された電荷の量が零の状態から1パケット送信電荷量に達するまでの時間が変化する。さらに、これに応じて、定電圧回路25が稼働電力PWを無線送信機21へ出力する間隔が変化し、これに応じて、無線送信機21が1パケットの無線送信を行う間隔が変化する。そして、これに応じて、無線受信機41が無線送信機21から1パケットを受信する間隔が変化する。無線送信機21は、磁気センサ7A、7B、7Cのそれぞれのコイル13から出力されるパルスの総数が必要充電パルス数となるごとに、1パケットの無線送信を行うのであるから、例えば、無線受信機41が1パケットを受信してから、無線受信機41が次の1パケットを受信するまでの間の時間を、必要充電パルス数で除することにより、無線受信機41が1パケットを受信してから、無線受信機41が次の1パケットを受信するまでの間に、磁気センサ7A、7B、7Cのそれぞれのコイル13から出力されたパルスの間隔の平均値を算出することができる。
【0057】
パルス間隔算出部43は、例えば、無線送信機21から所定の期間内に受信したパケットの受信間隔の平均値を必要充電パルス数で除することにより、上記所定の期間内に磁気センサ7A、7B、7Cのそれぞれのコイル13から出力されたパルスP1~P6の間隔の平均値を算出する。また、パルス間隔算出部43はこの算出結果を記憶部44に記憶する。所定の期間内に磁気センサ7A、7B、7Cのそれぞれのコイル13から出力されたパルスP1~P6の間隔の平均値に基づいて、上記所定の期間における羽根車53の平均回転速度を知ることができ、また、上記所定の期間における羽根車53の平均回転速度に基づいて、上記所定の期間内に管51内を流れた流体の平均流速を知ることができる。
【0058】
以上説明した通り、本実施形態の回転検出装置1は、大バルクハウゼン効果を奏する磁性線材11にコイル13を設けることにより形成された磁気センサ7A、7B、7C、および磁石4A、4B等を備えた回転検出装置本体2に加え、無線送信機21を備え、さらに、無線送信機21を稼働させる稼働電力Pwを生成する電力供給回路22を備えている。また、電力供給回路22は、磁気センサ7A、7B、7Cから出力され、整流されたパルスの電荷を蓄積する蓄電器24と、蓄電器24に蓄積された電荷を用いて稼働電力PWを生成する定電圧回路25を有している。また、定電圧回路25は、無線送信機21が1パケットを無線送信するに当たり無線送信機21および定電圧回路25が消費する電力(1パケット送信電力)に相当する電荷量(1パケット送信電荷量)の電荷が蓄電器24に蓄積されるごとに、稼働電力PWを生成する。そして、無線送信機21は、稼働電力PWが定電圧回路25により生成されたときに、当該稼働電力PWを用いて1パケットを無線送信し、その後、次に稼働電力PWが定電圧回路25により生成されるまでパケットの無線送信を行わない。以上の構成により、無線送信機21がパケットの無線送信を行う期間と、無線送信機21がパケットの無線送信を行わない期間を設けることができ、無線送信機21がパケットの無線送信を行わない期間中に、磁気センサ7A、7B、7Cから出力されるパルスの電力を蓄電器24に蓄積することによって、無線送信機21を稼働させるのに必要な電力を準備することができ、無線送信機21がパケットの無線送信を行う期間には、準備した電力を無線送信機21に供給して、無線送信機21を稼働させることができる。これにより、磁気センサ7A、7B、7Cから出力されるパルスの電力を用いて無電源で(商用電源または電池からの電力を利用せずに)、被検体の運動に関する情報を被検体から離れた場所へ無線により伝達することができる。
【0059】
また、無線送信機21は、パケットの無線送信を行う期間に、無線送信の最小単位である1パケットの無線送信のみを行い、パケットの無線送信を行わない期間には、1パケットの無線送信に必要な最小限の電力を、磁気センサ7A、7B、7Cから出力されるパルスの電力を用いて蓄積する。これにより、無線送信機21がパケットの無線送信を行う間隔を短くすることができ、被検体の運動に関する情報を伝達する頻度を高めることができる。
【0060】
さらに、本実施形態の回転検出装置1によれば、所定の期間内に無線送信機21から送信されたパケットの送信回数に必要充電パルス数を乗じることにより、上記所定の期間内に磁気センサ7A、7B、7Cから出力されたパルスの総数を算出することができる。また、所定期間内に無線送信機21から送信されたパケットの送信間隔の平均値を必要充電パルス数で除することにより、上記所定の期間内に磁気センサ7A、7B、7Cから出力されたパルスの間隔の平均値を算出することができる。したがって、磁気センサ7A、7B、7Cから出力されたパルスのカウント値等を無線送信機21から無線送信することなく、例えば空パケットを無線送信機21から無線送信するだけで、羽根車53の回転数もしくは流体の流量の算出の元となる情報(パルス数)、または羽根車53の回転速度もしくは流体の流速の算出の元となる情報(パルス間隔)といった被検体の運動に関する情報を被検体から離れた場所へ伝達することができる。これにより、無線送信する1パケットのサイズを小さくすることができ、その結果、1パケットの無線送信に消費する電力(1パケット送信電力)を小さくすることができ、よって、1パケットの無線送信を行う間隔を短くすることができる。
【0061】
また、本実施形態の回転検出装置1における無線受信機41は、無線送信機21から受信したパケットの受信回数に基づいて磁気センサ7A、7B、7Cから出力されたパルス数を算出し、算出したパルス数を記憶部44に記憶する。また、無線受信機41は、無線送信機21から受信したパケットの受信間隔に基づいて磁気センサ7A、7B、7Cから出力されたパルスの間隔を算出し、算出したパルス間隔を記憶部44に記憶する。これらの構成によれば、磁気センサ7A、7B、7Cから出力されたパルスのカウント値等を無線送信機21から無線送信しない場合でも、羽根車53の回転数もしくは流体の流量の算出の元となる情報(パルス数)、または羽根車53の回転速度もしくは流体の流速の算出の元となる情報(パルス間隔)といった被検体の運動に関する情報を無線受信機41に保存することができる。
【0062】
[第2の実施形態]
図9は本発明の第2の実施形態の回転検出装置における電力供給回路22、無線送信機61、およびカウンタ62等を示している。
図10は、無線送信機61から送信されるパケットの内容を示している。なお、
図9および10において、本発明の第2の実施形態の構成要素のうち、本発明の第1の実施形態の構成要素と同一のものには、第1の実施形態の構成要素に付した符号と同一の符号を付し、それらの説明を省略する。
【0063】
本発明の第2の実施形態の回転検出装置は、回転検出装置本体2、無線送信機61、電力供給回路22、カウンタ62、および無線受信機41を備えている。第2の実施形態の回転検出装置の回転検出装置本体2、電力供給回路22および無線受信機41は、第1の実施形態の回転検出装置1におけるものと同じである。
【0064】
カウンタ62は、磁気センサ7A、7B、7Cのそれぞれのコイル13から出力されたパルスP1~P6をカウントし、パルスP1~P6のカウント値を記憶する装置である。
図9に示すように、カウンタ62には、磁気センサ7A、7B、7Cのそれぞれのコイル13が接続されている。また、カウンタ62と無線送信機61とは互いに接続されている。カウンタ62は、例えば、磁気センサ7A、7B、7Cのそれぞれのコイル13から出力されたパルスP1~P6の総数をカウントし、パルスP1~P6の総数を、カウンタ62に設けられた記憶部63(不揮発メモリ)に記憶する。また、カウンタ62は、磁気センサ7A、7B、7Cのそれぞれのコイル13から出力されたパルスを整流し、平滑化することによって直流の電力を生成する回路を有している。カウンタ62は、この回路により生成された電力により稼働する。すなわち、カウンタ62は無電源で稼働する。
【0065】
無線送信機61は、上記第1の実施形態における無線送信機21に、次の機能を追加したものである。すなわち、無線送信機61は、カウンタ62の記憶部63に記憶されたカウント値が含まれたパケットを送信する。具体的に説明すると、無線送信機61は、1パケットを無線送信するとき、カウント値をカウンタ62から無線送信機61に送る旨の指令をカウンタ62に送る。この指令に応じ、カウンタ62は、記憶部63に記憶されたカウント値を無線送信機61に送る。無線送信機61は、カウンタ62から送られたカウント値を、これから送信する1パケットに追加し、
図10に示すような、カウント値66が含まれたパケット65を生成する。そして、無線送信機61は1つのパケット65を無線送信する。
【0066】
このような構成を有する本発明の第2の実施形態の回転検出装置によれば、カウンタ62により生成されたカウント値を、磁気センサ7A、7B、7Cから出力されたパルスの電力を用いて無電源で無線送信することができる。これにより、被検体から離れた場所へ伝達する被検体の運動に関する情報を増やすことができ、被検体の運動の監視または管理等(例えば流体の流量の監視または管理等)の質を高めることができる。例えば、カウンタ62に生成されたカウント値が含まれたパケットを無線送信機21から無線受信機41に送信することにより、無線受信機41は、無線送信機21から所定の期間内に受信したパケットの受信回数に、必要充電パルス数を乗じることにより、上記所定の期間内に磁気センサ7A、7B、7Cのそれぞれのコイル13から出力されたパルスP1~P6の総数を算出することができ、これに加え、無線送信機21から受信したパケットに含まれているカウント値を取得することができる。したがって、無線受信機41は、パケットの受信回数に必要充電パルス数を乗じることによって算出されたパルス数と、カウンタ62により生成されたカウント値とを比較することにより、エラー等によるパルス数またはカウント値の誤りを訂正することができ、パルス数またはカウント値の検出精度、ひいては被検体の運動の検出精度を高めることができる。
【0067】
なお、
図11に示すように、本発明の第2の実施形態における無線送信機61に、外部装置としての外部センサ71を接続し、無線送信機61が無線送信するパケットに、外部データとして、外部センサ71により検出された検出値等を含ませて、当該パケットを無線送信するようにしてもよい。外部センサ71は、例えば温度センサ、または湿度センサ等である。外部センサ71が例えば温度センサ、または湿度センサである場合、外部センサ71により検出される検出値は、温度、または湿度となる。また、外部センサ71を、例えば太陽光や照明光等を利用して自己が稼働するための電力を生成する機能を有するエナジーハーベストセンサとすることで、無線送信機61、カウンタ62、および外部センサ71をすべて無電源で稼働させることができる。
【0068】
また、無線送信機21(61)により無線送信するパケットには種々のデータを含ませることができる。例えば、無線送信機21(61)の信号強度を示す情報、無線送信機21(61)の故障や異常を示す情報等をパケットに含ませてもよい。
【0069】
また、上記各実施形態においては、電力生成回路として、
図5、9および11に示す定電圧回路25を例にあげたが、電力生成回路はこれに限定されない。また、全波整流を行う整流回路23を例にあげたが、整流回路として半波整流を行う回路を用いることもできる。
【0070】
また、回転検出装置本体2において、磁石の個数もしくは配置、磁気センサの個数もしくは配置、または電力供給回路22および無線送信機21の取付位置もしくは取付方法は限定されない。
【0071】
また、本発明は種々の被検体の運動の検出に適用することができる。また、被検体の運動は、回転に限らず、旋回運動、または往復動でもよい。
【0072】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う運動検出装置もまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0073】
1 回転検出装置(運動検出装置)
2 回転検出装置本体(装置本体)
4A、4B 磁石
5 磁石支持板(支持機構)
6 連結シャフト(支持機構)
7A、7B、7C 磁気センサ
8 センサ支持板(支持機構)
11 磁性線材
13 コイル
21、61 無線送信機
22 電力供給回路
23 整流回路
24 蓄電器
25 定電圧回路(電力生成回路)
31、65 パケット
41 無線受信機
42 パルス数算出部
43 パルス間隔算出部
44 記憶部
54 回転シャフト(被検体)
62 カウンタ
66 カウント値
71 外部センサ(外部装置)