IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本ドライケミカル株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-消火設備 図1
  • 特開-消火設備 図2
  • 特開-消火設備 図3
  • 特開-消火設備 図4
  • 特開-消火設備 図5
  • 特開-消火設備 図6
  • 特開-消火設備 図7
  • 特開-消火設備 図8
  • 特開-消火設備 図9
  • 特開-消火設備 図10
  • 特開-消火設備 図11
  • 特開-消火設備 図12
  • 特開-消火設備 図13
  • 特開-消火設備 図14
  • 特開-消火設備 図15
  • 特開-消火設備 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068607
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】消火設備
(51)【国際特許分類】
   A62C 35/62 20060101AFI20240513BHJP
【FI】
A62C35/62
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013814
(22)【出願日】2023-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2022178805
(32)【優先日】2022-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000229405
【氏名又は名称】日本ドライケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】大原 明
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189CA09
2E189CC01
2E189CE07
(57)【要約】
【課題】スプリンクラー設備のようにコストをかけることなく、スプリンクラー設備の設置義務に当たらない物流倉庫等の建屋にも低コストで設置できる消火設備を提供する。
【解決手段】建屋3内に設置される噴霧ノズル5と、送水口11が設けられている送水口形成体7と、送水口形成体7の送水口11で供給された水を噴霧ノズル5まで流す配管9とを有し、噴霧ノズル5は、開放型ヘッドのノズルであり、噴霧ノズル5は、送水口形成体7の送水口11よりも上側に配置されている消火設備1である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建屋内に設置される噴霧ノズルと、
送水口が設けられている送水口形成体と、
を有し、前記噴霧ノズルは、開放型ヘッドのノズルであり、前記噴霧ノズルは、前記送水口形成体の送水口よりも上側に配置されている消火設備。
【請求項2】
前記建屋は地盤面の上に建てられており、
前記送水口形成体の上側の部位は、前記地盤面から上側に突出しており、前記送水口形成体の送水口は、前記送水口形成体の上側の部位に設けられている請求項1に記載の消火設備。
【請求項3】
前記噴霧ノズルは、複数設けられており、
前記配管の途中には、前記配管の流路を開閉する複数の切り換え弁が設けられており、
前記複数の切り換え弁のうちの選択した切り換え弁を開くことで、前記複数の噴霧ノズルのうちの水を噴出する噴霧ノズルを選択できるように構成されている請求項1に記載の消火設備。
【請求項4】
前記建屋内は複数の区画に分かれており、
前記送水口形成体から延びている前記配管は、前記送水口形成体から離れたところで枝分かれしており、この枝分かれしている配管のそれぞれが、前記複数の区画のそれぞれまで延びており、
前記複数の区画のそれぞれまで延びている配管に、前記噴霧ノズルが設けられており、
前記枝分かれしている配管それぞれの途中であって、前記枝分かれしている配管の、前記噴霧ノズルよりも前記送水口形成体側の部位には、前記枝分かれしている配管の流路を開閉する切り換え弁が設けられている請求項1に記載の消火設備。
【請求項5】
前記切り換え弁は、遠隔操作によって、前記枝分かれしている配管の流路を開閉するように構成されている請求項4に記載の消火設備。
【請求項6】
前記切り換え弁を遠隔操作するための遠隔操作部は、前記建屋の外に設けられており、
前記切り換え弁は、前記建屋内に設置されている請求項4に記載の消火設備。
【請求項7】
前記建屋は、消防法施行令第12条に規定するスプリンクラー設備の設置義務が無い物流倉庫である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の消火設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火設備に係り、特に建屋内に水を噴霧するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スプリンクラーヘッドを用いた消火設備(スプリンクラー設備)が知られている(特許文献1参照)。スプリンクラーヘッドを用いた消火設備は、消火水槽、加圧送水装置、圧力タンク、流水検知装置、送水口、閉鎖型スプリンクラーヘッド、配管、ケーブル等を構成要素とする。もしくは、スプリンクラーヘッドを用いた消火設備は、消火水槽、加圧送水装置、圧力タンク、流水検知装置、一斉開放弁、送水口、開放型スプリンクラーヘッド、配管、ケーブル等を構成要素とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-146840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、スプリンクラー設備では、加圧送水装置など構成する機器が多く、さらに電気設備が必要である。また、スプリンクラー設備では、水の吐出圧力を0.1MPaとし、1mあたり10L/minの水を噴霧するので設置費用が高価になる。
【0005】
そこで、消防法施行令第12条基準(スプリンクラー設備に関する基準)のうち令別表第一(14)項に該当する倉庫であってスプリンクラー設備の設置義務に当たらない物流倉庫には、スプリンクラー設備が設置されない場合が通常である。
【0006】
近年、スプリンクラー設備の設置義務に当たらない物流倉庫で火災が発生し、鎮火まで長時間にわたる火災事例が発生している。
【0007】
本発明は、スプリンクラー設備のようにコストをかけることなく、スプリンクラー設備の設置義務に当たらない物流倉庫等の建屋にも低コストで設置できる消火設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様に係る消火設備は、建屋内に設置される噴霧ノズルと、送水口が設けられている送水口形成体と、前記送水口形成体の送水口で供給された水を前記噴霧ノズルまで流す配管とを有し、前記噴霧ノズルは、開放型ヘッドのノズルであり、前記噴霧ノズルは、前記送水口形成体の送水口よりも上側に配置されている消火設備である。
【0009】
また、本発明の態様に係る消火設備では、前記建屋が地盤面の上に建てられており、前記送水口形成体の上側の部位が、前記地盤面から上側に突出しており、前記送水口形成体の送水口が、前記送水口形成体の上側の部位に設けられている。
【0010】
また、本発明の態様に係る消火設備では、前記噴霧ノズルが、複数設けられており、前記配管の途中には、前記配管の流路を開閉する複数の切り換え弁が設けられており、前記複数の切り換え弁のうちの選択した切り換え弁を開くことで、前記複数のノズルのうちの水を噴出する噴霧ノズルを選択できるように構成されている。
【0011】
また、本発明の態様に係る消火設備では、前記建屋内が複数の区画に分かれており、前記送水口形成体から延びている前記配管が、前記送水口形成体から離れたところで枝分かれしており、この枝分かれしている配管のそれぞれが、前記複数の区画のそれぞれまで延びており、前記複数の区画のそれぞれまで延びている配管に、前記噴霧ノズルが設けられており、前記枝分かれしている配管それぞれの途中であって、前記枝分かれしている配管の、前記噴霧ノズルよりも前記送水口形成体側の部位に、前記枝分かれしている配管の流路を開閉する切り換え弁が設けられている。
【0012】
また、本発明の態様に係る消火設備では、前記切り換え弁が、遠隔操作によって、前記枝分かれしている配管の流路を開閉するように構成されている。
【0013】
また、本発明の態様に係る消火設備では、前記切り換え弁を遠隔操作するための遠隔操作部が、前記建屋の外に設けられており、前記切り換え弁が、前記建屋内に設置されている。
【0014】
また、本発明の態様に係る消火設備では、前記建屋が、消防法施行令第12条に規定するスプリンクラー設備の設置義務が無い物流倉庫なのである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、スプリンクラー設備のようにコストをかけることなく、スプリンクラー設備の設置義務に当たらない物流倉庫等の建屋にも十分な消火性能を有する設備を低コストで設置できる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る消火設備と建屋の概要を示す正面図である。
図2】本発明の実施形態に係る消火設備と建屋の概要を示す平面図である。
図3】1つ目の変形例に係る消火設備と建屋の概要を示す正面図である。
図4】2つ目の変形例に係る消火設備と建屋の概要を示す正面図である。
図5】本発明の実施形態に係る消火設備で使用される噴霧ノズルを示す図であり、(b)は(a)におけるVB矢視図である。
図6】本発明の実施形態に係る消火設備で使用される噴霧ノズルでの水の噴出量(放出量)等を示す図である。
図7】本発明の実施形態に係る消火設備で使用される噴霧ノズルのスプレーパターンを示す図である。
図8】本発明の実施形態に係る消火設備(図1図2で示す消火設備)で使用される送水口形成体を示す図であり、(b)は(a)におけるVIIIB矢視図である。
図9】本発明の実施形態に係る消火設備の動作を示す図である。
図10】本発明の実施形態に係る消火設備での必要放水量等を示す図である。
図11】本発明の実施形態に係る消火設備で使用される標識を示す図である。
図12図3図4で示す消火設備で使用される送水口形成体を示す図であり、(b)は(a)におけるXIIB矢視図である。
図13】本発明の実施形態に係る消火設備における水噴霧警戒区域の一覧図である。
図14】本発明の実施形態に係る消火設備と建屋との関係を示す平面図である。
図15】本発明の実施形態に係る消火設備で使用される建屋指示体を示す図である。
図16】本発明の実施形態に係る消火設備で使用される消火水槽等を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態に係る消火設備1は、建屋3内の火災の消火のために設置され、図1図2で示すように、噴霧ノズル(開放型ヘッド)5と送水口形成体(たとえばスタンド型送水口)7と配管9とを備えて構成される。
【0018】
送水口形成体7は、建屋3の近くで建屋3の外に設置される。建屋3として、消防法施行令第12条に規定するスプリンクラー設備の設置義務が無い物流倉庫を掲げる。送水口形成体7には、送水口(水の供給口)11が設けられている。配管9は、送水口形成体7の送水口11で供給された水を噴霧ノズル5まで流す。
【0019】
噴霧ノズル5は、複数設けられている。配管9の途中には、配管9の流路を開閉する複数の切り換え弁(選択弁;開放弁)13が設けられる。送水口形成体7の送水口11に水を供給しており複数の切り換え弁(手動起動弁)13の総てが閉じている状態から、複数の切り換え弁13のうちの選択した切り換え弁13を操作して開く。これにより、複数の噴霧ノズル5のうちの水を噴出する噴霧ノズル5を選択できる構成になる。なお、噴霧ノズル5での水の吐出圧力は0.1MPa(ゲージ圧)以上1.0MPa以下になっている。また、1つの噴霧ノズル5からは、1mあたり10L/min以上20L/min以下の水を噴霧する。
【0020】
図2で示すように、建屋3内は複数の区画15(15A、15B、15C、15D、15E)に分かれている。送水口形成体7から延びている配管9は、送水口形成体7から離れたところで枝分かれしている(分岐している)。この枝分かれしている配管9(9A、9B、9C、9D、9E)のそれぞれは、複数の区画15(15A、15B、15C、15D、15E)のそれぞれまで延びている。
【0021】
複数の区画15A、15B、15C、15D、15Eのそれぞれで延びている配管9A、9B、9C、9D、9Eには、噴霧ノズル5が設けられる。枝分かれしている配管9A、9B、9C、9D、9Eそれぞれの所定の部位には、枝分かれしている配管9A、9B、9C、9D、9Eそれぞれの流路を開閉する切り換え弁13が設けられる。上記所定に部位とは、枝分かれしている配管9A、9B、9C、9D、9Eそれぞれの途中であって、噴霧ノズル5よりも送水口形成体7側の部位である。
【0022】
切り換え弁13(13A、13B、13C、13D、13E)は、配管9の、枝分かれが始まっている箇所と、枝分かれが始まっている箇所の最も近くにある噴霧ノズル5との間に設置される。切り換え弁13が枝分かれしている配管9のそれぞれに設置されるので、切り換え弁13が、枝分かれしている配管の数と同じ数だけ設置される。
【0023】
切り換え弁13の近くには、建屋3内の区画15と切り換え弁13との対応関係を示す対応関係表示体17が設けられる。さらに説明すると、対応関係表示体17には、複数の区画15と複数の切り換え弁13とが互いに対応付けられて表示される。そして、対応関係表示体17を見ることによって、水の噴霧をしたい区画15で水の噴霧をするには、複数の切り換え弁13のうちのいずれの切り換え弁13を操作すればよいのかが簡単にわかる。
【0024】
図1から図3で示す消火設備1についてさらに詳しく説明する。切り換え弁13は、この切り換え弁13に設けられている操作レバー(図示せず)が手動で操作されることで配管9の流路を開閉する。送水口形成体7から延びている配管9は、地中を通って建屋3の外壁のところまで延びる。なお、送水口形成体7から延びている配管9が地中にもぐることなく地表に沿って建屋3の外壁のところまで延びてもよい。
【0025】
地中を通って建屋3の外壁のところまで延びた配管9は、一旦地上に出てすぐに建屋3の外壁の下側の箇所で枝分かれする。この枝分かれしている配管9(9A、9B、9C、9D、9E)のそれぞれに、切り換え弁13(13A、13B、13C、13D、13E)が設けられる。切り換え弁13は、建屋3の外側で人の手が届く高さに設置される。
【0026】
切り換え弁13から延びている配管(枝分かれした配管)9は、建屋3の外壁の下側の部位で建屋3の外壁を貫通し建屋の3内部に入る。建屋3の内部に入った配管(枝分かれした配管)9は、建屋3の外壁の近くで建屋3の外壁に沿って建屋3の天井の付近まで上に向かって延伸する。
【0027】
建屋3の天井の付近まで延伸した配管(枝分かれした配管)9は、建屋3の天井に沿って水平方向に延伸する。噴霧ノズル5は、配管(枝分かれした配管)9の、建屋3の天井に沿って水平方向に延伸している部位に設置される。
【0028】
なお、上記説明では、配管9が建屋3の近傍で枝分かれしているが、配管9が送水口形成体7の近くで枝分かれしていてもよい。さらに説明すると、送水口形成体7から延びている配管9が、送水口形成体7の近くで枝分かれしてもよい。この枝分かれしている配管9のそれぞれに、切り換え弁13が設けられる。切り換え弁13も送水口形成体7の近くに配置される。また、切り換え弁13は、地上で手が届く高さに設置される。
【0029】
切り換え弁13から延びている配管(枝分かれした配管)9は、地中を通って建屋3の外壁のところまで延びる。地中を通って建屋3の外壁のところまで延びた配管(枝分かれした配管)9は、建屋3の外壁の下側の部位で建屋3の外壁を貫通し建屋3の内部に入る。なお、切り換え弁13から延びている配管(枝分かれした配管)9が地中にもぐることなく地表に沿って建屋3の外壁のところまで延びてよい。
【0030】
建屋3の内部に入った配管(枝分かれした配管)9は、建屋3の外壁の近くで建屋3の外壁に沿って建屋3の天井の付近まで上に向かって延伸している。建屋3の天井の付近まで延伸した配管(枝分かれした配管)9は、建屋3の天井に沿って水平方向に延伸している。噴霧ノズル5は、配管(枝分かれした配管)9の、建屋3の天井に沿って水平方向に延伸している部位に設置される。
【0031】
図1図16で示すように、送水口形成体7の送水口11には、消防自動車21で消火水槽45から吸い上げた水が送水される。なお、消防自動車21と送水口11とは、配管9とは別の消防用ホース19によって接続される。また、消防自動車21からは、配管9、消防用ホース19とは別の消防用吸管49が消火水槽45内まで延びる。図1図3図4図16に参照符号47で示すものは、地盤面(地面)である。消防自動車21から送水口形成体7に供給される水の圧力は、0.1MPa以上1.6MPa以下である。
【0032】
また、送水口形成体7から延びている配管9の部位(送水口形成体7と枝分かれしている部位との間の部位)には、排水弁23と逆止弁25とが設けられる。なお、消火水槽45に代えて、河川や池、海などの無限水利を利用してもよい。
【0033】
送水口形成体7として、たとえば、図8で示すような起立型ものが採用される。図8で示す送水口形成体7には、たとえば、2つの送水口11が設けられる。送水口11は通常はカバー27で覆われる。また、送水口形成体7には、「消防隊専用送水口」との表示と、送水圧(送水口11の供給可能な水の圧力値の範囲)が示される。
【0034】
また、図8で示す起立型の送水口形成体7の代わりに、図12図3図4で示すような埋没型の送水口形成体7を採用してもよい。図12で示すような埋没型の送水口形成体7の近傍には、図11で示すような、「消防隊専用送水口」と、送水圧(送水口11の供給可能な水の圧力値の範囲)が表示されているプレート29が設けられている。
【0035】
プレート29では、赤色地に白色の文字が描かれる。プレート29の縦方向(上下方向)の寸法は、100mmから300mm程度であり、プレート29の横方向(幅方向)の寸法は、300mmから600mm程度である。なお、図8で示す起立型の送水口形成体7の近傍に、図11で示すようなプレート29が設置されてもよい。
【0036】
また、図2では、配管9に複数の(たとえば2つの)送水口形成体7が接続されているが、配管9に1つの送水口形成体7が接続されている構成であってもよい。
【0037】
消火設備1には、建屋指示体31が設けられている(図14図15参照)。建屋指示体31は、送水口形成体7もしくは送水口形成体7の近傍に設けられており、建屋3を指し示す。送水口形成体7は、たとえば、建屋3の外で建屋3から所定の距離(たとえば50m以内の距離)だけ離れたところに設置される。また、送水口形成体7は、建屋3の全体が概ね見渡せるところに設置されることが理想であるが、送水口形成体7が、建屋3の一部が見えるところに設置されてもよい。さらに、送水口形成体7が建屋3の外壁に設置されてもよい。送水口形成体7は地盤面47からの高さが0.5m以上1.0m以下の位置に設置される。
【0038】
建屋指示体31は、たとえば、図15で示すような矢印形状の板状体で形成される。建屋指示体31も、建屋3の全体が概ね見渡せるところに設置されることが理想であるが、建屋指示体31が、建屋3の一部が見えるところに設置されてもよい。
【0039】
噴霧ノズル5として、たとえば、特開2022-29146号公報の図3等で示される「可燃物消火用ノズル」が採用される。噴霧ノズル5には、図5で示すように、螺旋状に形成される消火剤放出部33が設けられる。噴霧ノズル5は、配管9に設けられ、配管9内を流れてきた水8を、消火剤放出部33から消火対象物(図示せず)に向けて放出する。
【0040】
噴霧ノズル5は、配管9に接続される筒状の基端側部位(ノズル本体部)35と、基端側部位35から突出している螺旋状の先端側部位(放出部構成部)37とを備えて構成される。基端側部位35の外周の一部には、管用のオスネジが形成される。
【0041】
次に噴霧ノズル5における水39の放出態様(噴霧態様)について図6図7を参照しつつ説明する。
【0042】
図6(a)は、噴霧ノズル5における水39の吐出量(噴量)と噴霧ノズル5における水39の吐出圧(圧力)との関係を示している。図6(a)の横軸は、噴霧ノズル5における水39の吐出量を示しており、図6(a)の縦軸は、噴霧ノズル5における水39の吐出圧を示す。線図L1によって、噴霧ノズル5における水39の吐出量と噴霧ノズル5における水39の吐出圧との関係が示されている。図6(a)から圧力0.1MPaであれば500L/minの噴量が得られることがわかる。
【0043】
図6(b)は、噴霧ノズル5における水39の噴角と噴霧ノズル5における水39の吐出圧(圧力)との関係を示す。図6(b)の横軸は、噴霧ノズル5における水39の噴角を示しており、図6(b)の縦軸は、噴霧ノズル5における水39の吐出圧を示す。噴霧ノズル5の基端側部位35を上側にして先端側部位37を下側に配置した状態で、噴霧ノズル5から水39を放出したときに、噴角が180°よりも大きいことで、水39に一部が斜め上側に放出される。
【0044】
図L2によって、噴霧ノズル5における水39の噴角と噴霧ノズル5における水39の吐出圧との関係が示される。図6(b)から圧力0.1MPaのときに噴角が220°となることがわかる。
【0045】
図7は、噴霧ノズル5からの水39の放出方向を示している。図7の横軸は、噴霧ノズル5からの水平方向の距離を示しており、図7の縦軸は、噴霧ノズル5からの垂直方向(下方向)方向の距離を示す。図7の点P1に噴霧ノズル5が設置される。
【0046】
図L3によって、点P1に設置されている噴霧ノズル5における水39の放出領域が示されており、線図L3よりも下側に水39が放出される。なお、図7の左上の隅には、噴霧ノズル5が示される。
【0047】
図7を参照すると、噴霧ノズル5の下方1mの箇所で水平半径5.5mのところを線図L3が通る。また、噴霧ノズル5から水平方向に2m~3m離れたところで、噴霧ノズル5よりも0.6m上方に水流が存在する。
【0048】
消火設備1では、設計基準に基づき建屋3内での必要放水量を算出し、噴霧ノズル5の型式および数量を決定する。これにより、図10で示すように、倉庫の区画1から区画5に対応して、噴射ヘッド(噴霧ノズル)の型式等が決められる。たとえば、倉庫区画1では、床面積が200mになっており、放射率10L/m・minになっており、必要放水量が2000L/minになっており、噴射ヘッドの形式が○○〇-△△△になっている。また、倉庫区画1では、噴射ヘッドの設置数が4つになっており、実際の放水量が
2000L/minになっている。
【0049】
また、消火設備1において、図13で示すような水噴霧警戒区域一覧図を設けてもよい。図13では、丸付き数字のところが火災区域表示になっており、たとえば、噴霧ノズル5は、丸付き数字のところに設置される。ひし形付き数字のところが区画になっており、ひし形付き数字1とひし形付き数字7とで示す区画が、丸付き数字1のところに設置されている噴霧ノズル5による消火対象区画になる。
【0050】
また、図13の一覧図を対応関係表示体17として使用してもよい。この場合、丸付き数字に応じた数字が、複数の切り換え弁13のそれぞれに表示される。さらに、図13の一覧図に応じた表示器を設け、ひし形付き数字の区画毎に火点検出センサーを設けてもよい。そして、火点検出センサーが火点を検出したときに、この検知をした火点検出センサーに応じたひし形付き数字の箇所を点灯や点滅させてもよい。
【0051】
ここで、消火設備1の動作について図9を参照しつつ説明する。建屋3で火災が発生する(S1)と、目視によって火災の発生を確認し(S3)、消防ポンプ自動車(消防自動車)21と送水口11とを消防用ホース19で接続する(S5)。
【0052】
続いて、消防ポンプ自動車21の消防ポンプを稼働して(消防ポンプの運転を開始して)、消火用の水を送水口形成体7に送る(S7)。また、区画(消火が必要な区画エリア)15を選択し、地区選択弁(切り換え弁)13を、開状態にする(S9)。これにより、消火対象区画での水の噴霧がされ(S11)、消火がされ(S13)、その後、復旧がされる(S15)。復旧とは、地区選択弁(切り換え弁)13を閉状態にし、消防自動車21からの送水を停止することである。
【0053】
消火設備1は、建屋3内に設置される噴霧ノズル5と、送水口11が設けられている送水口形成体7と、送水口形成体7の送水口11で供給された水を噴霧ノズル5まで流す配管9とを備えて構成される。これにより、スプリンクラー設備のような電気設備等を必要とせず、消火設備1にコストをかけることなく、スプリンクラー設備の設置義務に当たらない物流倉庫等の建屋3にも十分な消火性能を有する設備を低コストで設置できる。
【0054】
スプリンクラー設備のようにコストがかからなくなることで、任意でも消火設備1の設置が促されて、甚大な火災事例が減る。また、送水口形成体7が建屋3の近くで建屋3の外に設置されているので、火災の際に消防隊が建屋3内に進入することなく、消防隊委員の安全を確保しつつ、有効な消火ができる。
【0055】
また、消火設備1では、噴霧ノズル5が複数設けられ、配管9の途中には配管9の流路を開閉する複数の切り換え弁13が設けられる。また、消火設備1では、複数の切り換え弁13のうちの選択した切り換え弁開くことで、複数の噴霧ノズル5のうちで水の噴出する噴霧ノズル5を選択できる。これにより、火点を狙って水を噴霧することができ、水の使用量を抑えて的確な消火ができる。
【0056】
また、消火設備1では、送水口形成体7から延びている配管9が、送水口形成体7でから離れたところで枝分かれしており、この枝分かれしている配管9のそれぞれが、複数の区画15のそれぞれまで延びる。また、消火設備1では、複数の区画15のそれぞれで延びている配管(枝分かれした配管)9に噴霧ノズル5が設けられる。さらに、消火設備1では、枝分かれしている配管9のそれぞれに、枝分かれしている配管9の流路を開閉する切り換え弁13が設けられる。これにより、建屋3内の区画15毎に水を噴霧することができ、水の使用量を抑えて的確な消火ができる。
【0057】
また、消火設備1では、送水口形成体7もしくは送水口形成体7の近傍に建屋3を指し示す建屋指示体31が設けられている。これにより、送水口形成体7に水を供給する消防隊員が、消火対象の建屋3を確実に見極めることができる。
【0058】
ところで、消火設備1において、図4で示すように、切り換え弁13が、遠隔操作によって、枝分かれしている配管9の流路を開閉するように構成されていてもよい。
【0059】
切り換え弁13が遠隔操作によって配管9の流路を開閉する構成についてさらに説明する。図4で示す構成では、切り換え弁13(主切り換え弁)を遠隔操作するための遠隔操作部(遠隔操作用切り換え弁)41が、たとえば、建屋3の外で送水口形成体7の近くに設けられている。切り換え弁13と遠隔操作部41とによって、パイロット弁が形成されている。
【0060】
さらに説明すると、送水口形成体7から延びている配管9は、建屋3の外壁のところまで延びる。建屋3の外壁のところまで延びた配管9は、建屋3の外壁の下側の箇所で枝分かれし、この枝分かれしている配管9のそれぞれに、切り換え弁(主切り換え弁)13が設けられる。
【0061】
切り換え弁(主切り換え弁)13は、建屋3の外側で建屋の外壁のところに設置される。切り換え弁(主切り換え弁)13から延びている配管(枝分かれした配管)9は、建屋3の外壁の下側の部位で建屋3の外壁を貫通し建屋3の内部に入る。
【0062】
建屋3の外壁を貫通し建屋3の内部に入っている配管(枝分かれした配管)9は、建屋3内であって建屋3の外壁に沿って建屋の3天井の付近まで上に向かって延伸する。建屋3の天井の付近まで延伸した配管(枝分かれした配管)9は、建屋3の天井に沿って水平方向に延伸する。噴霧ノズル5は、配管(枝分かれした配管)9の、建屋3の天井に沿って水平方向に延伸している部位に設置される。
【0063】
また、配管9の、送水口形成体7の近くの部位から切り換え弁(主切り換え弁)13まで遠隔操作用の配管43が延びる。遠隔操作用切り換え弁41は、送水口形成体7に近くで、遠隔操作用の配管43の途中に設けられる。遠隔操作用切り換え弁41は、この遠隔操作用切り換え弁41の操作部(たとえば操作レバー;図示せず)が操作されることで、遠隔操作用の配管43の流路を開閉する。
【0064】
そして、送水口形成体7に所定の圧力の水が供給されている状態で、遠隔操作用切り換え弁41が遠隔操作用の配管43の流路を開くと、切り換え弁(主切り換え弁)13が開く。一方、遠隔操作用切り換え弁41が遠隔操作用の配管43の流路を閉じると、切り換え弁(主切り換え弁)13が閉じる。
【0065】
ところで、図4で示す構成において、遠隔操作用切り換え弁41が、送水口形成体7から離れ、建屋の外側で建屋3の外壁のところに設けられていてもよい。
【0066】
このように遠隔操作用切り換え弁41を備えて構成されている消火設備1では、切り換え弁13が、遠隔操作によって、枝分かれしている配管9の流路を開閉するように構成されている。これにより、消火すべき建屋3の区画15の選択を、火点から離れた安全なところですることができる。
【0067】
また、遠隔操作用切り換え弁41を備えて構成されている消火設備1において、遠隔操作用切り換え弁41を、送水口形成体7の近くに設ける。これにより、送水口形成体7に水を供給する消防隊員も、消火すべき建屋3の区画15の選択を容易にすることができる。
【0068】
また、遠隔操作用切り換え弁41を備えて構成されている消火設備1において、切り換え弁13を建屋3内に設置することで、切り換え弁13を建屋3内で保護できるとともに、建屋3の外観をすっきりした見栄えのよいものにすることができる。
【0069】
消火設備1では、噴霧ノズル5として開放型ヘッドのノズルが採用される。噴霧ノズル5は、送水口形成体7の送水口11よりも上側に配置される。さらに詳しくは、噴霧ノズル5における水の吐出口(消火剤放出部)33の全体が送水口形成体7の送水口11よりも上側に配置される。
【0070】
また、建屋3は、たとえば、地盤面47の上に建てられる。すなわち、建屋3の、噴霧ノズル5から吐出される水による消火範囲は、地盤面47よりも上になる。送水口形成体7の上側の部位は、地盤面47から上側に突出し、送水口形成体7の送水口11は、送水口形成体7の上側の部位に設けられる。
【0071】
なお、配管9が上方より垂下し送水口形成体7が配管9の下部にある形態の場合には、送水口形成体7の送水口11は、送水口形成体7の下側の部位に設けられるが、送水口11は地盤面47の上部にある。たとえば図12の埋没型の連結送水管の場合、送水口形成体7より上部に配管9が立ち上がっている。
【0072】
配管9、43は、上下方向では、送水口形成体7よりも僅かに下側の位置と、噴霧ノズル5よりも僅かに上側の位置との間で延伸する。すなわち、配管9、43の下端は、上下方向で、送水口形成体7の下端よりも僅かに下側に位置するが、上下方向における配管9、43の下端と送水口形成体7の下端との高度差(標高差)は、2m以内(より好ましくは1m以内)になる。また、配管9、43の上端は、上下方向で、噴霧ノズル5の上端よりも僅かに上側に位置するが、上下方向における配管9、43の上端と噴霧ノズ5ルの上端との高度差は、2m以内(より好ましくは1m以内)になる。なお、配管9、43が、上下方向で、送水口形成体の下端と噴霧ノズルの上端との間で延伸してもよい。また、配管9、43が、上下方向で、送水口形成体7の上部で延伸してもよい。
【0073】
また、建屋3の天井の高さ(地盤面47からの高さ)は、たとえば、3m~10m程度になる。噴霧ノズル5は、建屋3の天井よりも僅かに下側に位置する。また、送水口形成体7の送水口11の地盤面47からの高さは、0.3m~1.5m(たとえば1m程度)になる。
【0074】
さらに説明すると、噴霧ノズル5は、送水口形成体7の送水口11よりも上側に配置される。上下方向における噴霧ノズル5の高さ位置と、送水口形成体7の送水口11の高さ位置との差異は、たとえば、10m以内になっており、より好ましくは8m以内になっており、さらに好ましくは6m以内になっている。
【0075】
また、複数階の倉庫の2階以上では、上下方向における噴霧ノズル5の高さ位置と、送水口形成体7の送水口11の高さ位置との差異は、最大100mでも可能である。たとえば、6階建て建屋高さ50mの倉庫の最上階においても、噴霧ノズル5からの水の吐出圧と吐出量を十分確保できる。
【0076】
消火設備1では、上述したように、送水口形成体7の送水口11に供給される水の圧力が、0.1MPa以上1.6MPa以下になっており、噴霧ノズル5からの水の吐出圧力が、0.1MPa以上1.0MPa以下になっている。すなわち、送水口形成体7の送水口11から噴霧ノズル5まで水が流れた場合の圧力損失の値は最大で0.6MPaになっている(0.6MPa以下になっている)。なお、送水口形成体7の送水口11に供給される水の圧力が、0.11MPa以上1.6MPa以下、もしくは、0.15MPa以上1.6MPa以下、0.2MPa以上1.6MPa以下であってもよい。さらに、送水口形成体7の送水口11に供給される水の圧力が、0.21MPa以上1.6MPa以下、もしくは、0.25MPa以上1.6MPa以下であってもよい。
【0077】
地盤面47は、概ね水平方向に展開する。なお、建屋3の噴霧ノズル5が設置されている部屋は1階になっているが、建屋3の噴霧ノズル5が設置されている部屋が2階や3階等の地上階であってもよい。
【0078】
消火設備1では、噴霧ノズル5が、流路抵抗の値が小さい開放型ヘッドのノズルで構成される。これにより、噴霧ノズル5が、送水口形成体7の送水口11よりも上側に配置されるにもかかわらず、地盤面47から1m程度の高さ位置にある送水口形成体7の送水口11から配管9、43に給水しても、噴霧ノズル5からの水の吐出圧と吐出量を十分確保できる。
【0079】
また、消火設備1では、建屋3が地盤面47の上に建てられており、送水口形成体7の上側の部位が、地盤面47から上側に突出しており、送水口形成体7の送水口11が、送水口形成体7の上側の部位に設けられる。
【0080】
これにより、噴霧ノズル5が、送水口形成体7の送水口11よりも上側に配置されるにもかかわらず、噴霧ノズル5と送水口形成体7の送水口11との高低差を極力小さくすることができる。また、噴霧ノズル5からの水の吐出圧と吐出量を十分確保することができる。さらに、地盤面47から1m程度の高さ位置にある送水口形成体7の送水口11への消防用ホース19の接続がしやすくなる。
【0081】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 消火設備
3 建屋
5 噴霧ノズル
7 送水口形成体
9 配管
11 送水口
13 切り換え弁
15 区画
19 消防用ホース
41 遠隔操作部
49 消防用吸管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16