(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068615
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】電子ペン
(51)【国際特許分類】
G06F 3/03 20060101AFI20240513BHJP
【FI】
G06F3/03 400A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090665
(22)【出願日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】P 2022178918
(32)【優先日】2022-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】100091546
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 正美
(74)【代理人】
【識別番号】100206379
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 正
(72)【発明者】
【氏名】金田 剛典
(72)【発明者】
【氏名】田中 航平
(57)【要約】
【課題】 電子ペンとしての機能を低下させることなく、簡単な構成で防水機能と防塵機能とを備えた電子ペンを実現する。
【解決手段】 芯体4は、先端部が筐体2のフロントキャップ22の開口より突出するように、その後端部が筐体2内の芯体保持部材5に対して取り付けられて保持される。筐体2内には、芯体保持部2の後段に電子ペン機能を実現する電子部品が設けられ、筐体2内のペン先側に芯体4が貫通する筒状の内部構成部品である第2電極13が設けられる。第2電極13の側面の全周とフロントキャップ22の内壁面の全周とに密着するように、第1のリング状弾性部材16が設けられる。更に、芯体保持部材5の側面の全周と第2電極13の内壁面の全周とに密着するように、第2のリング状弾性部材17が設けられる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペン先側が開口となった筒状の筐体と、
棒状の芯体と、
前記筐体内に設けられ、前記芯体の先端部が前記筐体の前記開口より突出するように前記芯体の後端部分を保持する芯体保持部と、
前記筐体内の前記芯体保持部の後段に設けられ、電子ペン機能を実現する電子部品と、
前記筐体内のペン先側において、前記芯体が貫通する筒状の内部構成部品と、
前記内部構成部品の側面の全周と前記筐体の内壁面の全周とに密着する第1のリング状弾性部材と、
前記芯体保持部の側面の全周と前記内部構成部品の内壁面の全周とに密着する第2のリング状弾性部材と
を備えることを特徴とする電子ペン。
【請求項2】
請求項1に記載の電子ペンであって、
前記第1のリング状弾性部材は、中心を通る軸心方向に沿う方向に切断した場合に、前記筐体の内壁面に密着する側の側面が円弧状になっており、
前記第2のリング状弾性部材は、ペン先側の開口が小さく、後端側の開口が大きいことにより、側面が傾斜し、前記ペン先側の開口の内縁が前記芯体保持部の側面の全周と密着し、前記後端側の開口の外縁が前記内部構成部品の内壁面の全周と密着する
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項3】
請求項1に記載の電子ペンであって、
前記芯体保持部の後段には筆圧検出部が設けられており、
前記芯体及び前記芯体を保持する前記芯体保持部は、前記芯体にかけられる筆圧に応じて軸心方向に摺動移動し、前記筆圧検出部を押圧するようにされており、
前記第2のリング状弾性部材は、ペン先側の開口が小さく、後端側の開口が大きいことにより、側面が傾斜し、前記ペン先側の開口の内縁が前記芯体保持部の側面の全周と密着し、前記後端側の開口の外縁が前記内部構成部品の内壁面の全周と密着し、
前記第2のリング状弾性部材は、前記芯体及び前記芯体保持部の軸心方向へ摺動移動した場合に、前記芯体保持部との密着と、前記内部構成部品の内壁面との密着を維持して変形する
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項4】
請求項1に記載の電子ペンであって、
前記芯体は、少なくとも位置指示信号を送出するための中心電極を含み、
前記内部構成部品は、少なくとも電子ペンの傾き検出用信号を送出するための周辺電極であり、
前記電子部品は、前記位置指示信号を生成して第1の信号線路を通じて前記中心電極に供給する第1の送信回路と、前記傾き検出用信号を生成して第2の信号線路を通じて前記周辺電極に供給する第2の送信回路とを含む
前記第2のリング状弾性部材は、非導電性材料により形成されている
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項5】
請求項1に記載の電子ペンであって、
前記芯体は、少なくとも位置指示信号を送出するための中心電極と、前記中心電極のペン先側の端部から後端方向に所定の長さ分だけ前記中心電極を覆う保護部材とからなり、
前記芯体保持部は、導電材料により形成され、前記中心電極の後端部分を保持するものであり、
前記内部構成部品は、少なくとも電子ペンの傾き検出用信号を送出するための周辺電極であり、
前記電子部品は、前記位置指示信号を生成し、前記芯体保持部を通じて前記中心電極に供給する第1の送信回路と、前記傾き検出用信号を生成して前記周辺電極に供給する第2の送信回路とを含み、
前記芯体が前記芯体保持部に保持された場合にいて、前記保護部材の少なくとも前記筐体内に位置する部分は非導電性材料により形成されており、
前記第2のリング状弾性部材は非導電性材料により形成されており、
前記芯体の前記保護部材の後端部分と前記第2のリング状弾性部材とに密着し、前記芯体の前記中心電極と前記芯体保持部とからなる部分を絶縁する筒状の絶縁部材を備える
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項6】
請求項1に記載の電子ペンであって、
前記芯体保持部の後段には筆圧検出部が設けられており、
前記芯体保持部は、前記芯体を保持する保持部と、前記筆圧検出部を押圧する押圧部とからなる
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項7】
請求項1に記載の電子ペンであって、
前記芯体保持部の後段には筆圧検出部が設けられており、
前記芯体保持部材は、前記芯体を保持する保持部と、前記保持部の後段から延伸された延伸部と、前記筆圧検出部を押圧する押圧部とからなる
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項8】
請求項1に記載の電子ペンであって、
前記第1のリング状弾性部材と前記第2のリング状弾性部材との一方あるいは両方は、エラストマー素材により形成されている
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項9】
ペン先側が開口となった筒状の筐体と、
芯棒と、前記芯棒のペン先側の端部から後端方向に所定の長さ分だけ前記芯棒を覆う保護部材とからなる棒状の芯体と、
前記筐体内に設けられ、前記芯体の先端部が前記筐体の前記開口より突出するように前記芯体の後端部分を保持する芯体保持部と、
前記筐体内の前記芯体保持部の後段に設けられ、電子ペン機能を実現する電子部品と、
前記筐体内のペン先側において、前記芯体が貫通する筒状の内部構成部品と、
前記内部構成部品の側面の全周と前記筐体の内壁面の全周とに密着する外側リング状弾性部材と、
前記芯体の前記保護部材の後端部分の全周と前記内部構成部品の内壁面の全周とに密着する内側リング状弾性部材と
を備えることを特徴とする電子ペン。
【請求項10】
請求項9に記載の電子ペンであって、
前記芯棒は、少なくとも位置指示信号を送出するための中心電極であり、
前記内部構成部品は、少なくとも電子ペンの傾き検出用信号を送出するための周辺電極であり、
前記電子部品は、前記位置指示信号を生成して前記中心電極に供給する第1の送信回路と、前記傾き検出用信号を生成して前記周辺電極に供給する第2の送信回路とを含み、
前記内側リング状弾性部材は、非導電性材料により形成されている
ことを特徴とする電子ペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、タブレットPC(Personal Computer)などの電子機器に搭載された位置検出装置に対する位置指示器としての機能を実現する電子ペンに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、タブレットPCなどの電子機器には、位置検出装置が搭載されている。位置検出装置は、位置検出センサと位置検出回路とからなり、位置検出センサが電子ペンからの位置指示信号を受信し、これに応じた位置検出センサからの出力信号に基づいて、位置検出回路が位置検出センサ上の電子ペンによる指示位置を検出する。電子ペンには種々の電子部品等が搭載されている。電子ペンには、例えば、位置指示信号を発信させる発信回路の他、ペン先に加わる圧力(筆圧)を検出する圧力検出部(筆圧検出部)が搭載されている場合もある。また、電子ペンの傾きの検出を可能にするための傾き検出用信号を発生される回路や傾き検出用信号を送信する電極が搭載される場合もある。この他にも制御ICや電源回路など、種々の電子部品が搭載される。
【0003】
タブレットPCなどの電子機器は、持ち運びが容易であるために、屋内の種々の場所、例えば台所などでも利用されるし、屋外に持ち出して利用されることも多い。このため、タブレットPCなどの電子機器については、防水機能や防塵機能を有するようにされたものも提供されている。このため、タブレットPCなどの電子機器と共に使用される電子ペンについても、防水機能や防塵機器を有するようにすることが考えられている。後に記す特許文献1には、防水及び防塵を実現した電子ペン(位置指示器)に関する発明が開示されている。具体的に特許文献1には、ケースの内面を周方向の全周にわたって覆い、かつ、芯体の後端の近傍でケースの開口部を塞ぐように弾性部を配置する電子ペン(位置指示器)に関する発明が開示されている。ケースの開口部を塞ぐように弾性部を配置することで、開口部から水分や塵がケース内に侵入することを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に開示された発明は、基本的にケースの開口部を塞ぐように弾性部を配置するといった簡単な構成で、電子ペンの防水、防塵の効果が得られるので有効な技術である。特許文献1に開示された発明は、構成が簡単であるため、例えば、スマートフォンで利用される極めて細型の電子ペンに適用して好適なものである。しかし、タブレットPCなどで用いられる電子ペンであって、一般的なボールペンなどと同程度の大きさの電子ペンに対して特許文献1に開示された発明を適用した場合には、開口部を塞ぐように配置する弾性部も筐体や開口部に応じて大きなものとなる。この場合、当該弾性部は直接に芯体に作用するものであるため、芯体に印加される筆圧が筆圧検出部に伝わり難くなる可能性がある。
【0006】
以上のことに鑑み、この発明は、電子ペンとしての機能を低下させることなく、簡単な構成で防水機能と防塵機能とを備えた電子ペンを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、
ペン先側が開口となった筒状の筐体と、
棒状の芯体と、
前記筐体内に設けられ、前記芯体の先端部が前記筐体の前記開口より突出するように前記芯体の後端部分を保持する芯体保持部と、
前記筐体内の前記芯体保持部の後段に設けられ、電子ペン機能を実現する電子部品と、
前記筐体内のペン先側において、前記芯体が貫通する筒状の内部構成部品と、
前記内部構成部品の側面の全周と前記筐体の内壁面の全周とに密着する第1のリング状弾性部材と、
前記芯体保持部の側面の全周と前記内部構成部品の内壁面の全周とに密着する第2のリング状弾性部材と
を備えることを特徴とする電子ペンを提供する。
【0008】
この発明の電子ペンによれば、芯体は、先端部が筐体の開口より突出するように、後端部が筐体内に設けられた芯体保持部に対して取り付けられて保持される。筐体内には、芯体保持部の後段に電子ペン機能を実現する電子部品が設けられている。また、筐体内には、ペン先側に芯体が貫通する筒状の内部構成部品が設けられている。当該内部構成部品の側面の全周と筐体の内壁面の全周とに密着するように、第1のリング状弾性部材が設けられる。更に、芯体保持部の側面の全周と内部構成部品の内壁面の全周とに密着するように、第2のリング状弾性部材が設けられる。これら第1のリング状弾性部材と第2のリング状弾性部材とによって、筐体の開口部分より侵入する水分や塵が、芯体保持部の後段の電子部品にまで到達しないようにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態の電子ペンの構成例を説明するための図である。
【
図2】第1の実施の形態の電子ペンのペン先側の要部を説明するための図である。
【
図3】第1の実施の形態の電子ペンの第2のリング状弾性部材の設置個所の拡大断面図である。
【
図4】第1の実施の形態の電子ペンの等価回路を説明するための図である。
【
図5】第1の実施の形態の電子ペンの他の例のペン先側の要部を説明するための図である。
【
図6】第2の実施の形態の電子ペンのペン先側の要部を説明するための図である。
【
図7】第2の実施の形態の電子ペンの他の例のペン先側の要部を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図を参照しながら、この発明による電子ペンの実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態においては、搭載された発信回路により形成された位置指示信号を、芯体を通じて位置検出センサに向けて送信することにより、位置検出センサ上の位置を指示するアクティブ静電容量方式の電子ペンに適用した場合を例にして説明する。なお、以下に説明する実施の形態では、位置指示信号を形成する回路を「発信回路」としている。これは、発振器により発生させた信号をそのまま位置指示信号と用いる場合だけでなく、発振器により発生させた信号を種々の変調等を施して所望の位置指示信号を形成し、これを送信する場合もあるためである。このため、広く情報を送り出すことを意味する「発信」との文言を使用している。
【0011】
[第1の実施の形態]
<電子ペン1の構成例>
図1は、第1の実施形態の電子ペン1の構成例を説明するための図であり、電子ペン1のケース(筐体)2の一部を切断して、その内部を示したものである。
図2は、電子ペン1のペン先側の要部を説明するための図(拡大断面図)である。また、
図3は、第1の実施の形態の電子ペン1の詳しくは後述する第2のリング状弾性部材17の設置個所の拡大断面図である。
【0012】
図1に示すように、電子ペン1は、軸心方向(軸心に沿う方向)に細長であって、軸心方向の一方がペン先側とされて、開口を有するようにされると共に、軸心方向の他方が閉じられた円筒状の形状とされているケース(筐体)2を備える。ケース2は、内部に中空部を有する円筒形状のケース本体21と、このケース本体21と結合されるフロントキャップ22及びリアキャップ23により構成されている。フロントキャップ22及びリアキャップ23が、ケース本体21に嵌合されることで、ケース2が形成される。
【0013】
ケース2の中空部内には、
図1に示すように、プリント基板8などの搭載部品を保持するための基板ホルダー3や電池9が収納されると共に、ペン先側には、電子ペンとしての機能を実現するための部品が収納される。ケース本体21とリアキャップ23とは、導電性材料で形成されている。この実施の形態において、ケース本体21とリアキャップ23とは、例えば、アルマイト加工されたアルミニウムにより形成されている。また、フロントキャップ22は、非導電性材料で形成されている。この実施の形態において、フロントキャップ22は、例えば、プラスチックにより形成されている。
【0014】
図1に示すように、基板ホルダー3のペン先側とは反対側の端部には、端子導体91が設けられている。この端子導体91は、電池9のプラス側端子9aと電気的に衝合すると共に、プリント基板8の電源ラインの銅箔パターンと電気的に接続されている。リアキャップ23のケース本体21との嵌合部には、電池9のマイナス側端子9bと電気的に接続する、導電性金属からなるコイルバネ端子92が設けられている。電池9は、
図1に示すように、プラス側端子9aを端子導体91に接続するようにケース2内に挿入される。その後、リアキャップ23が、コイルバネ端子92により電池9のマイナス側端子9bを押圧するようにして、ケース本体21に嵌合される。
【0015】
この実施形態では、導電性材料からなるケース本体21は、電気的にプリント基板8のアース導体と接続されている。リアキャップ23及びケース本体21が導電性材料で構成されているので、電池9のマイナス側端子9bは、これらリアキャップ23及びケース本体21を介して、プリント基板8のアース導体と電気的に接続される。一方、電池9のプラス側端子9aは、端子導体91を通じてプリント基板8の電源ラインの銅箔パターンに接続される。これにより、電池9の電圧が、プリント基板8に形成されている回路の電源電圧として供給される。
【0016】
プリント基板8上には、
図1には図示しないが、発信回路(信号発生回路)8s、検出回路8d、復調回路8r、スイッチ回路SW、
図1に示す制御IC(Integrate Circuit)10、その他の周辺回路部品からなる回路部が設けられている。発信回路8sは、電子ペン1の電子ペン用芯体(以下、芯体と記載する)。4から送出する信号や後述する送受信用電極13から送出する信号を発生させる。発信回路8sは、芯体4と送受信用電極13とのそれぞれに異なる周波数の信号を供給することができるものである。検出回路8dは、筆圧検出のために後述する圧力検出部6の静電容量を検出するためのものである。復調回路8rは、送受信用電極13を通じて受信した信号を復調し、これにより得た情報を制御IC10に供給するためのものである。
【0017】
スイッチ回路SWは、後述もするが、制御IC10からの制御により、発信回路8sからの信号を送受信用電極13に供給するのか、送受信用電極13を通じて受信した信号を復調回路8rに供給するのかを切り替える。また、制御IC10は、発信回路8s、スイッチ回路SWなどの各回路部を制御する制御回路を構成する。周辺回路部には、
図1に示したように、ケース本体21の側面に設けられる操作部11a、11bを通じて押下操作されるプッシュスイッチ(サイドスイッチ)11、12が含まれる。
【0018】
また、
図1には図示しないが、プリント基板8には、芯体4と発信回路8sを接続する導電線、送受信用電極13とスイッチ回路SWを接続する導電線が接続される。送受信用電極13は、当該スイッチ回路SWを介して、発信回路8s及び復調回路8rと接続される。また、
図1には図示しないが、プリント基板8には、詳しくは後述する可変容量コンデンサの構成とされた圧力検出部(筆圧検出部)の第1電極と第2電極とのそれぞれと静電容量の検出回路8dと接続する導電線が接続される。
【0019】
フロントキャップ22は、
図2に示すように、軸心方向に芯体4を貫通させる貫通孔を有する筒状体の構成とされると共に、電子ペン1のペン先側の部分の外観形状が、ペン先に近くなるほど外径が小さくなるテーパー形状のものである。フロントキャップ22のペン先側の端部は、芯体4を貫通させる貫通孔の開口になっている。フロントキャップ22側に、上述もしたように、電子ペン機能を実現するための主要部が搭載されている。
【0020】
図2に示すように、ケース2のフロントキャップ22側には、芯体4と伝達部材5と圧力検出部6とが、その中心軸を同じくして軸心方向に直列に並べられて設けられる。芯体4は、
図2に示すように、導電性材料で形成された芯棒41と、非導電性材料で形成された保護部材42とからなるものであり、芯棒41と保護部材42との間には、空間(空気層)43が設けられた構造を有する。この場合、芯棒41の卵型のペン先部の幅広部分より先端側の部分から放射される信号(電界)は、保護部材42のみを介して、比較的に効率よく放射される。
【0021】
しかし、芯棒41の卵型のペン先部より後端側の細くなった部分から放射される信号(電界)は、空間43と保護部材42とが作用して抑止される。すなわち、空間43と保護部材42とは誘電率が異なっており、この部分が2重のコンデンサのように機能するようになるためである。これにより、電子ペン1を傾けたとしても、芯棒41より必要以上にブロードになることの無い良好な位置指示信号が送出できる。
【0022】
伝達部材5は、ペン先側に位置する芯体保持部材51と、芯体保持部材51の後段に位置する押圧部材52との2つの別体の部材からなる。第1の実施の形態において、芯体保持部材51と押圧部材52とは、非導電性材料である例えば硬質樹脂により形成されたものである。芯体保持部材51は、凹部を備えたカップ状の保持部51aと、保持部51aの後端側に嵌合するように装着されペン先とは反対方向に延伸された延伸部51bとを備える。保持部51aの凹部の内側側面には、例えば導電ゴムなどの導電性を有するリング状の弾性部材51cが固定されている。弾性部材51cは、保持部51aの凹部の内側側面からやや突出する(張り出す)ようになっている。
【0023】
これにより、
図2に示すように、芯体4の後端部が、芯体保持部材51の保持部51aの凹部に差し込まれると、弾性部材51cが芯体4の後端部の周囲を締め付けて、芯体4を芯体保持部材51に装着できる。また、芯体保持部材51に装着した芯体のペン先部分を例えば爪に引っ掛けるようにして摘まんで引き抜くようにすると、芯体4を芯体保持部材51から取り外すことができる。このように、芯体保持部材51の保持部51aの凹部の内側側面にリング状の弾性部材51cを備えることにより、芯体4の芯体保持部材51への装着と芯体4の芯体保持部材51からの取り外しを可能にしている。
【0024】
芯体保持部材51の主に延伸部51bの周囲には、
図2に示すように、芯体用コイルバネ41Cが設けられている。換言すれば、芯体保持部材51の主に延伸部51bは、芯体用コイルバネ41Cの中心軸部分を貫通するようになっている。この場合に、芯体用コイルバネ41Cの保持部51a側の1ターン(1巻き)は、芯体保持部材51の保持部51aの側面に設けられた凹部に嵌合し、芯体用コイルバネ41Cが、芯体保持部材51を保持する。しかし、芯体保持部材51は、芯体用コイルバネ41Cによって付勢されることがないようにされている。すなわち、芯体保持部材51は、芯体用コイルバネ41Cにぶら下がった状態で、ケース2内に保持されている。
【0025】
更に、芯体用コイルバネ41Cのペン先側の端部は、芯体保持部材51の保持部51aに設けられている導電性の弾性部材51cに接続され、他方の端部はプリント基板8のh8sに接続される。芯体用コイルバネ41Cの他方の端部は、
図2において、芯体用コイルバネ41Cから延伸された芯体用コイルバネの延伸線(導体線)41Lの端部が構成している。これにより、プリント基板8の発信回路8sからの位置指示信号が、芯体用コイルバネ41C及び弾性部材51cを通じて芯体4の芯棒41に供給され、芯体4の芯棒41から位置検出センサに向けて送信される。
【0026】
芯体保持部材51の後段には、押圧部材52が位置する。押圧部材52は、圧力検出部6側に位置し直径が幅広の押圧頭部52aと、押圧頭部52aのペン先側端面からペン先側に延伸され、直径が押圧頭部52aより短い茎状部52bとからなるキノコ形状のものである。押圧頭部52aのペン先側とは反対の面(後端面)は、その中心が頂点の曲面となっている。
図2に示したように、芯体4に筆圧が掛かっていない状態では、芯体4と、芯体保持部材51と、押圧部材52とは、軸心を同じくして軸心方向に直列に位置する。芯体4に筆圧が掛けられて、電子ペン1の後端側に押し込まれると、芯体保持部材51及び押圧部材52が電子ペン1の後端側に押し込まれて、押圧部材52が圧力検出部6を押圧する。
【0027】
なお、
図2に示したように、押圧部材52の茎状部52bのペン先側の端面は、その中心が頂点の凸曲面となっている。逆に、茎状部52bのペン先側の端面と対向する芯体保持部材51の延伸部51bの後端側の端面は、その中心が頂点の凹曲面となっている。これにより、筆記時において芯体4のペン先に軸心方向と交差する方向に筆圧が掛けられ、芯体4及び芯体保持部材51が僅かに傾いても、芯体4に印加される筆圧を減衰させることなく、押圧部材52を介して圧力検出部6に適切に伝達することができる。
【0028】
圧力検出部6は、円形平板の第1電極61が、リング状スペーサ62を介して円形平板の誘電体63の一方の面に対向し、当該誘電体63の他方の面には平板の第2電極64が貼付されて形成された可変容量コンデンサである。第1電極61は、例えば導電ゴムなどの導電性弾性材料により形成されたものである。このため、芯体保持部材51に装着された芯体4に筆圧が加えられた場合に、芯体保持部材51によって押し込まれる押圧部材52によって、圧力検出部6の第1電極61が押圧されて、誘電体63に近づく。また、第1電極61は、芯体4に対して掛けられた筆圧が解除されると、第1電極61は、伝達部材5及び芯体4を押し返し、伝達部材5及び芯体4を元の位置に復帰させるように作用する。
【0029】
このように、第1電極61が誘電体63に近づいたり、離れたりすることによって変化する第1電極61と第2電極64との間の静電容量に応じて、芯体4に掛けられている圧力(筆圧)をリアルタイムに検出できる。圧力検出部6の第1電極61には、金属などの導電材料により形成された圧力検出部用コイルバネ65が接するようにされている。この場合、圧力検出部用コイルバネ65からの延伸線(導電線)65Lと、第2電極からの延伸線(導電線)64Lとが、プリント基板8の静電容量の検出回路8dに接続される。これにより、圧力検出部6の第1電極61と第2電極64との間の静電容量に基づいて芯体4に印加された圧力(筆圧)が検出できる。
【0030】
また、フロントキャップ22側に設けられる電子ペン機能を実現するための主要部は、送受信用電極13と、パイプ状保持部材7a、7bと、カップ状の圧力検出部保持部材66とが連結されて形成される内側空間内に収納される。すなわち、
図2に示すように、伝達部材5と、圧力検出部6と、芯体用コイルバネ41Cと、圧力検出部用コイルバネ65とは、送受信用電極13と、パイプ状保持部材7a、7bと、カップ状の圧力検出部保持部材66とが形成する内側空間内に収納される。
【0031】
送受信用電極13は、例えば金属などの導電性材料によりパイプ状に形成されたものであり、ペン先側が先細りテーパー形状)となったものである。送受信用電極13のペン先側の先端面は、
図2に示すように、フロントキャップ22の内側先端面と突合し、また、送受信用電極13のペン先側から後端側に向かって一定の範囲の外側側面は、フロントキャップ22の内壁面に接触するようにされる。これにより、送受信用電極13は、軸心方向と交差する方向にはがたつくことがない。また、送受信用電極13のペン先側の芯体4と対向する部分の内径は短く肉厚になっており、送受信用電極13の後端側の伝達部材5の保持部51aと対向する部分の内径は長く肉薄になっている。
【0032】
送受信用電極13の後段には、例えば硬質樹脂により形成されたパイプ状保持部材7a、7bが設けられる。ペン先側に位置するパイプ状保持部材7aの先端面は、
図2に示すように、送受信用電極13の後端面部分に突合する。また、ペン先側に位置するパイプ状保持部材7aの後端部分は、
図2に示すように後端側に位置するパイプ状保持部材7bの先端部分に嵌合して連結される。更に、
図2に示すように、後端側に位置するパイプ状保持部材7bの後端側の部分は、圧力検出部保持部材66の内側に嵌合し、押圧部材52を保持するようになっている。
【0033】
なお、押圧部材52の押圧頭部52aは、パイプ状保持部材7bの後端開口から突出している。押圧部材52の押圧頭部52aの直径は、パイプ状保持部材7bの後端開口の直径よりも長くなっており、押圧頭部52aが、パイプ状保持部材7bの内部に位置することはない。また、
図2に示すように、パイプ状保持部材7bと、圧力検出部6の第1電極61とに挟まれる形で、導電性材料により形成された、上述の圧力検出部用コイルバネ65が設けられている。圧力検出部用コイルバネ65の延伸線(導電線)65Lが、上述したように第1電極からの延伸線としてプリント基板8の静電容量の検出回路8dに接続される。また、圧力検出部6の第2電極からの延伸線64Lもまた、プリント基板8の静電容量の検出回路8dに接続される。
【0034】
更に、
図2に示すように、例えば硬質樹脂によりカップ状に形成された圧力検出部保持部材66が、圧力検出部6側より被せられるようにされ、上述もしたように、パイプ状保持部材7bの後端側の細くなった部分が嵌合する。すなわち、パイプ状保持部材7bの後端側の細くなった部分の外径は、圧力検出部保持部材66の凹部の内径よりもやや短くなっており、パイプ状保持部材7bの後端側がカップ状の圧力検出部保持部材66に嵌合するようになっている。なお、圧力検出部保持部材66をパイプ状保持部材7bの後端側に嵌合させ押し込むと、圧力検出部保持部材66の先端面は、パイプ状保持部材7bの太くなった部分の後端面に突合する。
【0035】
この状態のときに、圧力検出部6は、圧力検出部保持部材66の後端側の内側底面部分に固定される。同時に、パイプ状保持部材7bと圧力検出部6とによって挟まれた圧力検出部用コイルバネ65が、適度に第1電極を、リング状スペーサ62を介して誘電体63側に押し当てるようにして、第1電極61を適切な位置に保持するようにしている。この状態の時には、第1電極61に対して押圧部材52の押圧頭部52aの頂点部分がやや接触した状態になっている。従って、芯体4に加わる圧力に応じて、押圧部材52が即座に圧力検出部6の第1電極61を押圧し、圧力(筆圧)の検出が可能になっている。なお、圧力検出部保持部材66は、後端側より基板ホルダー3が押し当てられるようにされ、動くことがないように固定される。
【0036】
更に、
図2に示すように、パイプ状保持部材7aの側面には、送受信用電極用のコイルバネ13Cが設けられる。コイルバネ13Cの一方の端部は、送受信用電極13に接続される。コイルバネ13Cの他方の端部は、
図2において、コイルバネ13Cから延伸された延伸線(導体線)13Lの端部が構成し、プリント基板8に設けられた発信回路8sに接続される。このように、芯体4、伝達部材5、圧力検出部6、芯体用コイルバネ41C、送受信用電極13、送受信用電極用のコイルバネ13Cなどからなる構成部分が、基板ホルダー3のペン先側保持部分3a、3bによって筐体2内に保持される。なお、第1の実施の形態の電子ペン1では、上述した電子ペン機能を構成する部分が内側筐体2in内に収納されて、筐体2内への装着を容易にしている。
【0037】
このように、フロントキャップ22の内側先端面と基板ホルダー3とによって挟まれる形で、フロントキャップ22側に、送受信用電極13と、パイプ状保持部材7と、圧力検出部保持部材66とが連結した状態で固定して設けられる。この送受信用電極13と、パイプ状保持部材7と、圧力検出部保持部材66とが連結して形成される内部の空間に、
図2を用いて上述したように、伝達部材5と圧力検出部6とが設けられ、芯体保持部材51に対して芯体4が着脱可能にされる。
【0038】
この場合に、芯体4が装着される芯体保持部材51の周囲には、
図2に示すように、比較的に余裕を持った広い空間(クリアランス)が設けられる。このため、芯体4への圧力(筆圧)の印加や解除に応じて、芯体保持部材51はストレスを受けることなく軸心方向に押し込まれたり、押し戻されたりする摺動移動が可能になる。しかしながら、芯体4は、掛けられる筆圧に応じて、軸心方向に摺動移動するため、フロントキャップ22の開口部と芯体4の側面との間には僅かな隙間が生じる。
【0039】
この隙間を通じて水分が入り込み、芯体4が装着される芯体保持部材51の周囲の空間から芯体用コイルバネ41C、圧力検出部6、更にはプリント基板8にまで水分が到達する可能性がある。また、フロントキャップ22の開口部と芯体4の側面との間の隙間から入り込んだ水分が、送受信用電極13とフロントキャップ22の内壁面との間を通じて、後段のコイルバネ13C、圧力検出部6、更にはプリント基板8にまで到達する可能性もある。
【0040】
信号を伝送するコイルバネ41C、13Cや圧力検出部6やプリント基板8が水分により濡れた場合、電気的な特性が変化してしまったり、電子回路が部分でショートを起こして電子ペンとして機能しなくなったりするなどの問題を生じさせる。そこで、第1の実施の形態の電子ペン1においては、
図2に示すように、送受信用電極13の後端側面に第1のリング状弾性部材16を装着する。第1のリング状弾性部材16は、その内壁面が送受信電極の13の後端側の側面の全周に渡って密着すると共に、その外壁面がフロントキャップ22の内壁面の全周に渡って密着するものである。
【0041】
第1のリング状弾性部材16は、
図2に示すように、第1のリング状弾性部材16の開口部分の中心を通り軸心方向に2つに切断した場合の断面は、フロントキャップ22の内壁面に密着する側の側面(外壁面)が円弧状になっている。当該形状により、第1のリング状弾性部材16が装着された送受信用電極13のフロントキャップ22内への装着が容易で、かつ、第1のリング状弾性部材16の内壁面とフロントキャップ22の内壁面との密着性を高めることができる。このように、第1のリング状弾性部材16は、送受信用電極13の側面とフロントキャップ22の内壁面との間に生じる隙間を塞ぐ機能を実現する。これにより、フロントキャップ22の開口部から侵入した水分が、送受信用電極13とフロントキャップ22の内壁面との間を通じて圧力検出部6やプリント基板8側に侵入することを防止する。
【0042】
更に、
図2に示すように、伝達部材5の芯体保持部材51の保持部51aのやや後端側の側面の全周と、送受信用電極13の後端側の内壁面の全周とに密着する第2のリング状弾性部材17が設けられる。第2のリング状弾性部材17は、
図2に示すように、ペン先側の開口が小さく、後端側の開口が大きいことにより、側面が傾斜したものである。すなわち、第2のリング状弾性部材17は、底(底面)が抜けたお皿のような形状のものである。この場合、ペン先側の開口の内縁側が芯体保持部材51の保持部51aの側面の全周と密着し、後端側の開口の外縁側が送受信用電極13の後端側の内壁面の全周と密着する。これにより、フロントキャップ22の開口部から侵入した水分が、芯体4及び伝達部材5と送受信用電極13との間の空間を通じて圧力検出部6やプリント基板8側に侵入することを防止する。
【0043】
図3は、第1の実施の形態の電子ペン1の第2のリング状弾性部材17の設置個所の拡大断面図である。
図3に示すように、第2のリング状弾性部材17のペン先側の開口の内縁が芯体保持部材51の保持部51aの側面に設けられた凹部に嵌合して、保持部51aの側面の全周と密着する。一方、第2のリング状弾性部材17の後端側の開口の外縁が送受信用電極13の後端側の凹部に嵌合し、後端側よりパイプ状保持部材7aの先端面によって抑え込まれるようにされることによって、送受信用電極13の後端側の内壁面の全周と密着する。
【0044】
また、第2のリング状弾性部材17のペン先側の開口の内縁部分は球形となるように加工され、同様に、第2のリング状弾性部材17の後端側の開口の外縁部分もまた球形となるように加工されている。このように、第2のリング状弾性部材17は、第1のリング状弾性部材16とは形状が異なっている。第2のリング状弾性部材17は、芯体4が保持される伝達部材5の芯体保持部材51の保持部51a部分に密着している。このため、第2のリング状弾性部材17は、芯体4に加わる筆圧に応じた芯体4及び伝達部材5の軸心方向への摺動移動に伴い変形する必要があるため、変形しやすいように側面が傾斜した形状を有している。
【0045】
また、第2のリング状弾性部材17のペン先側の開口の内縁部分及び後端側の開口の外縁部分が球形に加工されているのは、芯体4及び伝達部材5の軸心方向への移動に伴う第2のリング状弾性部材17の変形を阻害しないようにするためである。
図3に示すように、芯体4に筆圧がかかることにより、芯棒41が矢印PSの示す方向に押し込まれるようにされると、第2のリング状弾性部材17はペン先側の開口の内縁部分が後端側に押し込まれるようにされて変形する。
【0046】
この場合に、第2のリング状弾性部材17はペン先側の開口の内縁部分は、
図3において矢印aが示すようにやや回転するようになる。また、第2のリング状弾性部材17は後端側の開口の外縁部分は、
図3において矢印bが示すようにやや回転するようになる。これにより、芯体4及び伝達部材5の軸心方向への移動に伴う第2のリング状弾性部材17の変形を阻害しないようにできる。すなわち、第2のリング状弾性部材17は、掛けられる筆圧に応じて、芯体4及び伝達部材5が軸心方向に適切に摺動移動できるように、その形状が工夫されたものとなっている。
【0047】
図4は、
図1~
図3を用いて説明した第1の実施の形態の電子ペン1の等価回路を示す図である。
図4に示すように、芯体4の芯棒41は、芯体用コイルバネ41Cを通じて発信回路8sに接続され、例えば周波数がf0の位置指示信号を送出できるようになっている。また、送受信用電極13は、コイルバネ13Cを通じてスイッチ回路SWに接続され、このスイッチ回路SWを通じて、発信回路8sと復調回路8rとに接続されている。スイッチ回路SWは、制御IC10によって切り替え制御がされる。
【0048】
従って、スイッチ回路SWが発信回路8s側に切り替えられた時には、送受信用電極13は、発信回路8sからの例えば周波数がf1の傾き検出信号を送出できる。また、スイッチ回路SWが復調回路8r側に切り替えられた時には、送受信用電極13を通じて受信した位置検出装置からの信号を復調回路8rに供給できる。これにより、送受信用電極13を通じて位置検出回路側から識別情報の送信要求を受信し、これを復調回路8rで復調し、制御IC10に復調結果を通知できる。この場合、制御IC10は、発信回路8sを制御し、自機の識別IDを含めた位置指示信号を位置検出装置に送信できる。このように、送受信用電極13は、傾き検出用信号の送信と位置検出回路側からの識別信号の受信とを可能にするものである。
【0049】
また、芯体4にかかる筆圧に応じて、伝達部材5により押圧するようにされる圧力検出部6の第1電極61は圧力検出部用コイルバネ65を通じて、また、圧力検出部6の第2電極64は第2電極の延伸線64Lを通じて、静電容量の検出回路8dに接続される。これにより、検出回路8dにおいて、静電容量の変化に応じて、芯体4に掛けられる圧力(筆圧)を検出することができる。
【0050】
検出回路8dで検出された芯体4にかかる圧力(筆圧)は、発信回路8sにおいて位置指示信号に含めて、芯体4から位置検出センサに対して送信できるようにされる。また、発信回路8sの制御は、制御IC10により行われ、各回路部へ駆動電源の供給は、電源回路15によって行われる。なお、この実施の形態の電子ペン1において、芯体用コイルバネ41C、コイルバネ13C、圧力検出部用コイルバネ65のそれぞれは、インダクタ素子として機能するものではない。
【0051】
すなわち、芯体用コイルバネ41Cは、付勢することなく自由度高く移動可能な状態で芯体保持部材51を筐体2内に保持する機能と、芯体4の芯棒41に対して、発信回路8sからの位置指示信号を供給する機能とを実現する。また、コイルバネ13Cは、発信回路8sからの傾き検出信号を、周辺に対して影響を及ぼすことがないように、また無理なく送受信用電極13に対して供給する機能を実現する。
【0052】
また、コイルバネ13Cは、送受信用電極13を通じて受信した信号を、周辺に対して影響を及ぼすことがないように、また無理なく復調回路8rに対して供給する機能を実現する。圧力検出部用コイルバネ65は、適切な力で圧力検出部6の第1電極61を誘電体63側に付勢して適切な位置に位置付けることができるようにすると共に、第1電極61を静電容量の検出回路8dに接続する機能を実現する。
【0053】
<第1の実施の形態の電子ペン1の効果>
上述のように、
図1~
図4を用いて説明した第1の実施の形態の電子ペン1は、第1のリング状弾性部材16と第2のリング状弾性部材17との機能によって、フロントキャップ22の開口部より侵入する水分の後段への侵入を防止している。従って、第1、第2のリング状弾性部材16、17よりも後段にある電子部品にまで、フロントキャップ22の開口部より侵入した水分が到達することはなく、水分の侵入による電気的特性の変化や故障を引き起こすことが無い。もちろん、フロントキャップ22の開口部より侵入した細かな塵などが、電子部品に到達することもなく、細かな塵等が付着することに起因する性能劣化や故障などを生じさせることもない。
【0054】
<第1の実施の形態の電子ペン1の他の例>
第1の実施の形態の電子ペン1の場合には、
図2に示したように、第1、第2のリング状弾性部材16、17よりも前段には、フロントキャップ22の開口部より侵入した水分が滞留する可能性がある。
図2に示した構成の電子ペン1において、フロントキャップ22の開口部より侵入した水分が、第2のリング状弾性部材17の前段の芯体4及び伝達部材5と送受信用電極13との間の空間に滞留してしまったとする。この場合、芯体4の導電性を有する芯棒41は、保持部51aに設けられ、側面が保持部51aの側面から露呈する弾性部材51cに保持されている。このため、芯棒41及び弾性部材51cと送受信用電極13とが侵入した水分を介して導通してしまい、電子ペン1が電子ペンとして機能しなくなる。
【0055】
すなわち、位置指示信号を芯体4の芯棒41を通じて適切に送出できなくなるし、傾き検出用信号を送受信用電極13から適切に送出できなくなり、電子ペンとして機能しなくなる。もちろん、第1、第2のリング状弾性部材16、17よりも後段に位置する電子部品には水分の影響はない。このため、芯棒41及び弾性部材51cと送受信用電極13との間の空間に滞留している水分が蒸発するなどして抜ければ、電子ペン1の電子ペンとしての機能は復活する。しかし、水分が滞留し、芯棒41及び弾性部材51cと送受信用電極13とが導通している間は電子ペンとして機能しなくなる。
【0056】
そこで、第1の実施の形態の電子ペン1の他の例である電子ペン1Aでは、よりペン先側の位置に第2のリング状弾性部材17Aを設ける。これにより、フロントキャップ22の開口部より侵入した水分が、芯棒41及び弾性部材51cと送受信用電極13との間の空間にまで侵入し、滞留してしまうことを防止している。以下、第1の実施の形態の電子ペン1の他の例である電子ペン1Aについて具体的に説明する。
【0057】
図5は、第1の実施の形態の電子ペン1の他の例である電子ペン1Aのペン先側の要部を説明するための図である。
図5に示す電子ペン1Aにおいて、
図2に示した電子ペン1と同様に構成される部分には同じ参照符号を付し、当該部分についての詳細な説明は重複するので省略する。
図5に示す電子ペン1Aでは、第2のリング状弾性部材17Aが、
図2に示した電子ペン1の第2のリング状弾性部材17に比べて、よりペン先側に設けられている。
【0058】
この例の電子ペン1Aにおいても、第2のリング状弾性部材17Aは、上述した第1の実施の形態の電子ペン1の第2のリング状弾性部材17と同様に形成されたものである。すなわち、第2のリング状弾性部材17Aは、ペン先側の開口が小さく、後端側の開口が大きいことにより、側面が傾斜したものであり、底(底面)が抜けたお皿のような形状のものである。電子ペン1Aにおいては、第2のリング状弾性部材17Aのペン先側の開口の内縁側が、芯体4の保護部材42の後端と芯棒41の側面との両方に全周に渡って密着する。また、第2のリング状弾性部材17Aの後端側の開口の外縁側が、送受信用電極13Aの軸心方向の中央部分の内壁面に全周に渡って密着する。
【0059】
このため、送受信用電極13Aは、軸心方向の中央部分に第2のリング状弾性部材17Aの後端側の開口の外縁側が係合する段差が設けられている。更に、送受信用電極13Aの後段に位置するパイプ状保持部材7aAは、
図2のパイプ状保持部7aに比べると、送受信用電極13Aに対して後端側から嵌合するようにペン先側に延伸されたものとなっている。これにより、リング状弾性部材17Aの後端側の開口の外縁側を、送受信用電極13Aの内壁面とパイプ状保持部材7aAの先端面とで囲み、軸心方向に移動することが無いように保持している。
【0060】
これにより、フロントキャップ22の開口部から侵入した水分は、第2のリング状弾性部材17Aによってより後端側に入り込むことがないようにされる。従って、芯棒41及び弾性部材51cと送受信用電極13Aとが対向する空間に、フロントキャップ22の開口部より侵入する水分が入り込んでくることを防止できる。これにより、芯体4の芯棒41及び弾性部材51cと送受信用電極13Aとが侵入した水分を媒介として導通することが防止でき、水分の侵入により電子ペン1A自体が電子ペンとして機能しなくなることが無いようにできる。もちろん、電子ペン1Aの場合にも、第1、第2のリング状弾性部材16、17Aにより、後段の電子部品(回路部品を含む)が搭載エリアに水分や塵等が入り込むことを防止できるので、電気的な特性の変化や交渉を引き起こすこともない。
【0061】
[第2の実施の形態]
図5を用いて説明した電子ペン1Aの場合、フロントキャップ22の開口部より侵入する水分が後段の種々の電子部品の搭載箇所にまで到達することはない。更に、芯棒41及び弾性部材51cと送受信用電極13Aとが侵入した水分を媒介として導通することもない。しかし、
図5に示した電子ペン1Aの第2のリング状弾性部材17Aは、
図2に示した電子ペン1の第2のリング状弾性部材17よりもペン先側に位置するものとなるため、筆圧として検出可能になる芯体4にかかる荷重であるいわゆるオン荷重が重くなる。
【0062】
従って、
図5に示した電子ペン1Aを使用する場合、
図2に示した電子ペン1を使用する場合に比べて強い筆圧を掛けないと筆記ができないため、オン荷重を軽くしたいとの要求がでてくるものと考えられる。また、
図5に示した電子ペン1Aの場合、芯体4を外した状態では、フロントキャップ22の開口部より侵入する水分が後段の種々の電子部品の搭載箇所にまで到達してしまう。また、この場合、侵入した水分が滞留している状態で芯体4を装着すると、芯棒41及び弾性部材51cと送受信用電極13Aとを導通させてしまう。以下に説明する第2の実施の形態の電子ペン1Bは、これらの不都合を生じさせることが無いようにしたものである。
【0063】
図6は、第2の実施の形態の電子ペン1Bのペン先側の要部を説明するための図である。
図6に示す電子ペン1Bの基本的な構成は、
図1~
図4を用いて説明した第1の実施の形態の電子ペン1と同様に構成される。しかし、第2の実施の形態の電子ペン1Bと第1の実施の形態の電子ペン1とでは、例えば構成を簡略化したり、防水機能などを強化したりしたために若干異なっている部分がある。このため、
図6に示す第2の実施の形態の電子ペン1Bにおいて、
図2に示した第1の実施の形態の電子ペン1と同様に構成される部分には同じ参照符号を付して、当該部分についての詳細な説明は重複するので省略し、構成が異なる部分を中心に説明する。
【0064】
<グランド電極14、パイプ状保持部材7>
第2の実施の形態の電子ペン1Bは、フロントキャップ22の後端側に、グランド電極(グランドリング)14を備えている。導電性材料からなるケース本体21は、当該グランド電極14を介して、電気的にプリント基板8のアース導体と接続される構成になっている。これにより、簡単かつ確実にケース本体21をプリント基板8のアース導体と接続できる。また、第1の実施の形態の電子ペン1では、パイプ状保持部材7a、7bによって、主に伝達部材5を保持して、その軸心方向への移動領域を確保するようにしていた。これに対して、第2の実施の形態の電子ペン1Bでは、パイプ状保持部材7a、7bを一体に形成したパイプ状保持部材7を用いるようにし、構成を簡単にしている。
【0065】
<伝達部材5A>
第2の実施の形態の電子ペン1Bが備える伝達部材5Aは、
図6に示すように、ペン先側に位置する芯体保持部材51Aと、芯体保持部材51Aの後段に位置する押圧部材52との2つに分離された別体の部材からなる。押圧部材52は、第1の実施の形態の電子ペン1の押圧部材52と同様のものであり、非導電性材料である例えば硬質樹脂により形成されたものである。これに対して、芯体保持部材51Aは、凹部を備えたカップ状の保持部51xと、保持部51xの後端側が嵌合する嵌合凹部を備え、ペン先とは反対方向に延伸された延伸部51yとを備える。
【0066】
第2の実施の形態の電子ペン1Bにおいて、芯体保持部材51Aの少なくとも保持部51xは、導電性材料、例えば導電性樹脂や金属により形成されたものであり、延伸部51yは、非導電性材料である例えば硬質樹脂により形成されたものである。延伸部51yについても導電性材料により形成してもよい。なお、第1の実施の形態の電子ペン1では、伝達部材5の保持部51aの内壁面には、例えば導電ゴムなどの導電性を有するリング状の弾性部材51cが固定さていた。これにより、芯体4の芯棒41は、弾性部材51cによって保持部51aに固定され、弾性部材51cを介して芯体用コイルバネ41Cに接続されて、位置指示信号の供給を受けるようになっていた。
【0067】
しかし、第2の実施の形態の電子ペン1Bでは、伝達部材5Aの保持部51x自体が導電性材料により形成されたものであるで、芯体4の芯棒41は、直接に保持部51xの凹部に嵌合されて保持される。芯体用コイルバネ41Cは、保持部51xに接続されており、発信回路8sからの位置指示信号は、芯体用コイルバネ41Cから保持部51xを介して芯棒41に供給される。芯体4、圧力検出部6、芯体用コイルバネ41C、送受信用電極13、送受信用電極用のコイルバネ13Cなどからなる構成部分は上述した第1の実施の形態の電子ペン1と同様に構成された部分である。
【0068】
このように、第2の実施の形態の電子ペン1Bは、芯体4、伝達部材5A、圧力検出部6、パイプ状保持部材7、芯体用コイルバネ41C、送受信用電極13、送受信用電極用のコイルバネ13C、圧力検出部用コイルバネ65などをペン先側に備える。これらのペン先側の構成部分が、基板ホルダー3のペン先側保持部分3a、3bによって筐体2内に保持されるようになっている。
【0069】
なお、第1の実施の形態の電子ペン1では、電子ペン機能を構成する部分が内側筐体2in内に収納されて、筐体2内へ装着するようにされていた。しかし、この第2の実施の形態の電子ペン1Bの場合には、内側筐体2inは存在せず、グランド電極14を備える構成となっている。また、
図2に示した電子ペン1や
図5に示した電子ペン1Bの伝達部材5の芯体保持部51を、
図6に示した電子ペン1Bの芯体保持部51Aと同様に構成することももちろん可能である。
【0070】
更に、
図6に示すように、第2の実施の形態の電子ペン1Bは、
図2に示した第1の実施の形態の電子ペン1の場合と同様に、第1、第2のリング状弾性部材16、17を備える。
図6に示すように、第1のリング状弾性部材16は、その内壁面が送受信電極の13の後端側の側面の全周に渡って密着すると共に、その外壁面がフロントキャップ22の内壁面の全周に渡って密着するものである。第1のリング状弾性部材16は、
図6に示すように、第1のリング状弾性部材16の開口部分の中心を通り軸心方向に2つに切断した場合の断面は、フロントキャップ22の内壁面に密着する側の側面(外壁面)が円弧状になっている。
【0071】
当該形状により、第1のリング状弾性部材16が装着された送受信用電極13のフロントキャップ22内への装着が容易で、かつ、第1のリング状弾性部材16の内壁面とフロントキャップ22の内壁面との密着性を高めることができる。このように、第1のリング状弾性部材16は、送受信用電極13の側面とフロントキャップ22の内壁面との間に生じる隙間を塞ぐ機能を実現する。これにより、フロントキャップ22の開口部から侵入した水分が、送受信用電極13とフロントキャップ22の内壁面との間を通じて圧力検出部6やプリント基板8側に侵入することを防止する。
【0072】
更に、
図6に示すように、伝達部材5Aの芯体保持部材51Aの保持部51xの軸心方向の中央部分の側面の全周と、送受信用電極13の後端側の内壁面の全周とに密着する第2のリング状弾性部材17が設けられる。第2のリング状弾性部材17は、
図6に示すように、ペン先側の開口が小さく、後端側の開口が大きいことにより、側面が傾斜したものである。すなわち、第2のリング状弾性部材17は、底(底面)が抜けたお皿のような形状のものである。この場合、ペン先側の開口の内縁側が芯体保持部材51Aの保持部51xの側面の全周と密着し、後端側の開口の外縁側が送受信用電極13の後端側の内壁面の全周と密着する。これにより、フロントキャップ22の開口部から侵入した水分が、芯体4及び伝達部材5Aと送受信用電極13との間の空間を通じて圧力検出部6やプリント基板8側に侵入することを防止する。
【0073】
また、第2の実施の形態の電子ペン1Bの第2のリング状弾性部材17は、
図3を用いて説明した第1の実施の形態の電子ペン1の第2のリング状弾性部材17と同様に構成されたものである。このため、第2のリング状弾性部材17は、掛けられる筆圧に応じて、芯体4及び伝達部材5が軸心方向に適切に摺動移動できるように、その形状が工夫されたものとなっている。これにより、芯体4及び伝達部材5の軸心方向への移動に伴う第2のリング状弾性部材17の変形を阻害しないようにできる。すなわち、オン荷重を増大させることなく、軽い荷重で芯体4を軸心方向に押し込むことができるようにされている。
【0074】
このように、第2の実施の形態の電子ペン1Bは、第1の実施の形態の電子ペン1と同様に、第1、第2のリング状弾性部材16、17の機能により、フロントキャップ22の開口部から侵入した水分が、圧力検出部6やプリント基板8側に侵入することはない。しかし、伝達部材5Aの少なくとも保持部51xは、導電性材料により形成されたものである。このため、フロントキャップ22の開口から侵入した水分が芯体4及び伝達部材5Aと送受信用電極13との間に滞留している場合には、芯棒41及び保持部51xと送受信用電極13とが水分を介して導通してしまい電子ペンとして機能しなくなってしまう。
【0075】
そこで、この第2の実施の形態の電子ペン1Bにおいては、
図6に示すように、筒状の絶縁部材18を設けている。絶縁部材18は、後端側においては後端面が第2のリング状弾性部材17の内縁部分に密着し、ペン先側においては先端部分に芯体4の保護部材42の後端部分が嵌合して密着し、保持部51xの側面が露呈しないように覆うものである。第2の実施の形態において、絶縁部材18は、例えばエラストマー(いわゆる合成ゴム)などの非導電性材料により形成され弾性部材であり、上述のように、第2のリング状弾性部材17の内縁部分、芯体4の保護部材の後端部分、保持部51xの側面部分に密着する。
【0076】
このような筒状の絶縁部材18が設けられることによって、第2の実施の形態の電子ペン1Bでは、フロントキャップ22の開口部から侵入した水分が、芯体4の芯棒41及び伝達部材5Aの保持部51xには接触することが無いようにしている。また、芯体4を筐体2内に装着していない状態で、フロントキャップ22の開口部より水分が侵入した場合、侵入した水分は侵入経路から排出可能である。また、芯体4を筐体2内に装着していない状態で、フロントキャップ22の開口部より水分が侵入したとする。この場合でも、芯体を装着すれば、芯体4の芯棒41及び伝達部材5Aの保持部51xと送受信用電極13との間は確実に絶縁されるので、芯棒41及び伝達部材5Aの保持部51xと送受信用電極13との間が導通状態になることはない。
【0077】
<第2の実施の形態の電子ペン1Bの効果>
以上説明したように、第2の実施の形態の電子ペン1Bは、フロントキャップ22の開口部より侵入した水分が後段の種々の電子部品の搭載箇所にまで到達することが無く、かつ、
図2に示した電子ペン1の場合と同程度の軽いオン荷重を実現できる。更に、電子ペン1Bは、フロントキャップ22の開口部より侵入した水分を媒介として、芯棒41及び弾性部材51cと送受信用電極13とが導通することが無い。また、芯体4を外した状態でも、フロントキャップ22の開口部より侵入する水分が後段の種々の電子部品の搭載箇所にまで到達することがない。また、この場合、侵入した水分が滞留している状態で芯体4を装着しても、芯棒41及び弾性部材51cと送受信用電極13Aとを導通することもない。もちろん、電子ペン1Bの場合にも、第1、第2のリング状弾性部材16、17により、後段の電子部品が搭載エリアに水分や塵等が入り込むことを防止できるので、電気的な特性の変化や交渉を引き起こすこともない。
【0078】
<第2の実施の形態の電子ペン1Bの他の例>
図7は、第2の実施の形態の電子ペン1Bの他の例である電子ペン1Cのペン先側の要部を説明するための図である。
図7に示す電子ペン1Cにおいて、
図6に示した電子ペン1Bと同様に構成される部分には同じ参照符号を付し、当該部分についての詳細な説明は重複するので省略する。
図7に示す電子ペン1Cにおいて、伝達部材5Bは、芯体保持部51Bと押圧部材52とからなるが、芯体保持部材51Bの構成が、
図6に示した電子ペン1Bの芯体保持部材51Aとは異なっている。
【0079】
図6に示した電子ペン1Bの芯体保持部材51Aは、保持部51xと延伸部51yの2つの部材から構成されている。これに対して、
図7に示す電子ペン1Cの芯体保持部材51Bは、全体が導電性材料により一体に形成されたものである。すなわち、電子ペン1Cの芯体保持部材51Bは、
図7に示すように、芯体4を保持すると共に、芯体用コイルバネ41Cを通じて芯体4と後段の発信回路8sとを電気的に接続する保持部としての機能を実現する。また、電子ペン1Cの芯体保持部材51Bは、芯体4に加わる筆圧を押圧部材52に伝達する押圧部としての機能としての機能を実現する。
【0080】
このように、電子ペン1Cの芯体保持部材51Bは、2つの機能を合わせ持つ一体物である。これにより、芯体4から圧力検出部6に至るまでの部品点数を少なくし、電子ペンとしての機能を実現できる。また、
図2に示した電子ペン1や
図5に示した電子ペン1Bの伝達部材5の芯体保持部51を、
図7に示した電子ペン1Cの芯体保持部51Bと同様に構成することももちろん可能である。
【0081】
このように、芯体保持部材51Bは、全体が導電性材料により一体に形成されたものである。しかし、第1、第2のリング状弾性部材16、17と、絶縁部材18とによって、芯体保持部材51B自体が、侵入した水分に触れることが無いようできる。従って、この例の電子ペン1Cの場合にも、芯棒41及び芯体保持部材51Bと送受信用電極13が水分を介して導通しないようにできる。従って、この例の電子ペン1Cの場合にも、
図6に示した電子ペン1Bの場合と同様に、フロントキャップ22の開口部から水分が侵入しても、電子ペンとしての機能が失われることはない。これにより、信頼性の高い電子ペンが実現できる。
【0082】
[変形例]
上述した第1、第2の実施の形態の電子ペン1、1A、1B、1Cは、いずれも静電容量方式の電子ペンであり、傾きの検出や位置検出装置側からの情報(信号)の受信可能にするため、導電性の芯棒41と送受信用電極13、13Aを備えている。芯体4の芯棒41は、電子ペン1、1A、1B、1Cに装着された場合には、軸心上に位置するものとなるため中心導体と呼ばれる場合もある。また、送受信用電極13、13Aは、芯体4が貫通するようになるものであり、芯棒41の周囲を囲むように位置するものであり、周辺電極とも呼ばれる。なお、送受信用電極13、13Aは、位置検出装置側からの情報(信号)の受信を行わない電子ペンの場合には、傾き検出用信号の送信専用の電極となる。
【0083】
このように、上述した第1、第2の実施の形態の電子ペン1、1A、1B、1Cは、芯棒41(中心電極)と、送受信用電極13、13A(周辺電極)とを備えたものである。しかし、これに限るものではない。電子ペンの傾きを検出したり、位置検出装置からの情報(信号)を受信したりする必要のない電子ペンの場合には、送受信用電極13、13Aを設ける必要はない。この場合は、非導電性材料で形成された筒状の内部構成部品を形成し、これを送受信用電極13、13Aに替えて用いるようにすればよい。
【0084】
また、送受信用電極13、13Aや筒状の内部構成部品を用いない場合には、芯体保持部51、51A、51Bの側面の全周と前記筐体の内壁面の全周とに密着する1つのリング状弾性部材を設けるようにすることも可能である。この場合、当該リング状弾性部材は、ペン先側の開口が小さく、後端側の開口が大きいことにより、側面が傾斜し、ペン先側の開口の内縁が芯体保持部の側面の全周と密着し、後端側の開口の外縁が筐体の内壁面の全周と密着するようにすればよい。すなわち、当該リング状弾性部材は、サイズは異なるが、
図2、
図3を用いて説明した第2のリング状弾性部材17と同様の形状のものとなる。これにより、オン荷重をできるだけ大きくならないようにすることができる。
【0085】
なお、この発明は、静電容量方式の電子ペンだけでなく、例えば、電磁誘導方式の電子ペンにも適用できる。この場合には、送受信用電極13、13Aに替えて、非導電性材料で形成された筒状の内部構成部品を用いればよい。また、電磁誘導方式の電子ペンの場合には、筒状のフェライトコアを貫通するように例えば樹脂で形成された芯棒が設けられ、当該フェライトコアの周囲にコイルが巻回され、このコイルにコンデンサが接続されて共振回路が形成される。この場合、フェライトコアに巻回されたコイルを水分から遮断するように筒状の絶縁部材を設けるようにすればよい。当該絶縁部材が、フェライトコアとペン筐体の内側との間に配置されることで、フェライトコアに巻き回されているコイルに水分が浸透しないことになる。当該絶縁部材は、上述した第2の実施の形態の電子ペン1B、1Cの絶縁部材18に相当するものである。
【0086】
また、上述した第1、第2のリング状弾性部材16,17、17Aは、例えば、エラストマー素材を用いて形成することができる。もちろん、エラストマー素材に限るものではなく、第1、第2のリング状弾性部材16,17、17Aは、天然ゴム、撥水性を備えたポロン(登録商標)など種々の弾性材料により形成できる。また、絶縁部材18も、エラストマーや天然ゴムなど、耐水性を備えた種々の絶縁材料により構成することができる。
【0087】
また、別な例として、第2のリング状弾性部材17と絶縁部材18は、一体であっても良い。一体にすることで、部品点数の削減と、第2のリング状弾性部材17と絶縁部材18の隙間からの水分侵入を防ぐことが可能である。一体で成形する方法としては、ダブルモールド(2色成形)による成形がある。第2のリング状弾性部材17と絶縁部材18の柔らかさを比較すると、第2のリング状弾性部材17の方が柔らかい。
【0088】
[その他]
上述の実施の形態の説明からも分かるように、請求項の筐体は、実施の形態のケース本体21とフロントキャップ22とリアキャップ23とからなる部分が対応しており、主にはフロントキャップ22部分が対応する。また、請求項の芯体保持部は、実施の形態の主に芯体保持部材51、51A、51Bが対応する。また、請求項の電子部品は、圧力検出部6、プリント基板8などの電子ペンの機能を実現するために搭載された種々の電子部品が対応する。また、請求項の筒状の内部構成部品は、主には送受信用電極13、13Aが対応し、導電性を備えない筒状の内部構成備品の場合もある。
【0089】
請求項の第1のリング状弾性部材は、実施の形態の第1のリング状弾性部材16が対応し、請求項の第2のリング状弾性部材は、実施の形態の第2のリング状弾性部材17が対応する。また、請求項の筆圧検出部は、実施の形態の圧力検出部6が対応する。請求項の第1、第2の送信回路は、実施の形態の発信回路8sが対応する。また、請求項の絶縁部材は、実施の形態の絶縁部材18が対応する。また、請求項の外側リング状弾性部材は、実施の形態の第1のリング状弾性部材16が対応し、請求項の内側リング状弾性部材は、実施の形態の第2のリング状弾性部材17Aが対応する。
【符号の説明】
【0090】
1、1A、1B、1C…電子ペン、2…ケース、2in…内部筐体、21…ケース本体、22…フロントキャップ、23…リアキャップ、3、3a、3b…基板ホルダー、4…芯体、41…芯棒、41C…芯体用コイルバネ、41L…芯体用コイルバネの延伸線、42…保護部材、43…空間、5、5A、5B…伝達部材、51、51A、51B…芯体保持部材、51a、51x…保持部、51b、51y…延伸部、51c…弾性部材、52…押圧部材、52a…押圧頭部、52b…茎状部、6…圧力検出部、61…第1電極、62…リング状スペーサ、63…誘電体、64…第2電極、64L…第2電極の延伸線、65…圧力検出部用コイルバネ、65L…圧力検出部用コイルバネの延伸線、66…圧力検出部保持部材、7、7a、7b…パイプ状保持部材、8…プリント基板、8s…発信回路、8d…静電容量の検出部回路、9…電池、91…端子導体、9a…プラス側端子、9b…マイナス側端子、92…コイルバネ端子、10…制御IC、11、12…サイドスイッチ、11a、12a…操作部、13…送受信用電極、13C…送受信用電極用のコイルバネ、13L…送受信用電極用のコイルバネの延伸線、14…グランド電極、15…電源回路、16…第1のリング状弾性部材、17…第2のリング状弾性部材、18…絶縁部材