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特開2024-68617プランジャロッド、射出装置、射出方法、同芯度計測用具、及び同芯度計測方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068617
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】プランジャロッド、射出装置、射出方法、同芯度計測用具、及び同芯度計測方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/20 20060101AFI20240513BHJP
【FI】
B22D17/20 G
B22D17/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129194
(22)【出願日】2023-08-08
(31)【優先権主張番号】P 2022179029
(32)【優先日】2022-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 祐樹
(57)【要約】
【課題】射出関連部品の交換頻度を低減することができるプランジャロッド、射出装置、射出方法、同芯度計測用具、及び同芯度計測方法を提供する。
【解決手段】円筒状のスリーブ20を備えた射出装置10に用いられ、先端に前記スリーブ内を摺動するプランジャチップ34が取付けられて前記スリーブ内を前後進するプランジャロッド30において、前記プランジャロッドの外周であって、前記プランジャチップから離間し且つ前記プランジャロッドの前進移動により前記スリーブに対して摺動可能であり、前記プランジャロッドを前記スリーブ内で支持する半円環状、C型環状又は円環状のサポート部材36を備えたことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のスリーブを備えた射出装置に用いられ、先端に前記スリーブ内を摺動するプランジャチップが取付けられて前記スリーブ内を前後進するプランジャロッドにおいて、
前記プランジャロッドの外周であって、前記プランジャチップから離間し且つ前記プランジャロッドの前進移動により前記スリーブに対して摺動可能であり、前記プランジャロッドを前記スリーブ内で支持する半円環状、C型環状又は円環状のサポート部材を備えたことを特徴とするプランジャロッド。
【請求項2】
前記プランジャロッドの後端部に取付けられ、前記プランジャロッドに動力を付与する射出シリンダのピストンロッドの先端部と当該プランジャロッドとを囲む筒状に形成されたカップリング体を備え、
前記カップリング体は、前記ピストンロッドの先端部にリジッドに固定され、前記プランジャロッドの後端部に対して非固定状態で組付けられることを特徴とする請求項1に記載のプランジャロッド。
【請求項3】
円筒状のスリーブと、
先端に前記スリーブ内を摺動するプランジャチップが取付けられ、前記スリーブ内を前後進可能なプランジャロッドと、
を備えたダイカスト鋳造用の射出装置において、
前記プランジャロッドの外周であって、前記プランジャチップから離間し且つ前記プランジャロッドの前進移動により前記スリーブ内を摺動可能な位置に取付けられ、前記スリーブ内に位置した状態で、前記プランジャロッドを前記スリーブ内で支持する半円環状、C型環状又は円環状のサポート部材を備えたことを特徴とする射出装置。
【請求項4】
前記プランジャロッドに動力を付与する射出シリンダのピストンロッドの先端部と、前記プランジャロッドの後端部とを囲む筒状に形成されたカップリング体を備え、
前記ピストンロッドの先端部は、前記カップリング体にリジッドに固定され、
前記プランジャロッドの後端部は、前記カップリング体に対して非固定状態で組付けられることを特徴とする請求項3に記載の射出装置。
【請求項5】
前記カップリング体の前記プランジャロッド側の端部に固定され、前記サポート部材が前記スリーブの外部に位置した状態で、前記スリーブと前記プランジャロッドの軸心を一致させるように、前記プランジャロッドを支持する略環状の支持プレートを備えたことを特徴とする請求項4に記載の射出装置。
【請求項6】
円筒状のスリーブと、
先端に前記スリーブ内を摺動するプランジャチップが取付けられ、前記スリーブ内を前後進可能なプランジャロッドと、
を備えたダイカスト鋳造用の射出装置の射出方法であって、
前記プランジャロッドの外周であって、前記プランジャロッドの前進移動により前記スリーブ内を摺動可能な位置に取付けられた半円環状、C型環状又は円環状のサポート部材により、前記プランジャロッドが前後進動作する際に、前記プランジャロッドを前記スリーブ内で支持する工程を含むことを特徴とする射出方法。
【請求項7】
射出装置にて、円筒状のスリーブと、該スリーブ内でプランジャロッドを前後進させるピストンロッドとの同芯度を計測する同芯度計測用具において、
前記スリーブ内に挿入され、該スリーブ内にて前後進可能な形態を有するロッド本体と、
前記ロッド本体の挿入側先端に取付けられる円柱状又は円筒状の先端コマ部材と、
前記ロッド本体に該ロッド本体の軸方向に移動可能に取付けられる可動コマ部材と、を備え、
前記先端コマ部材及び前記可動コマ部材は、前記ロッド本体の軸心と共通した軸心を有していることを特徴とする同芯度計測用具。
【請求項8】
前記可動コマ部材は、先端径が前記スリーブの内径よりも小さく、後端径が前記スリーブの内径よりも大きく形成されたテーパー状又は段差形状であることを特徴とする請求項7に記載の同芯度計測用具。
【請求項9】
前記ロッド本体の後端部に取付けられ、該ロッド本体よりも大径に形成された円柱状又は円筒状の後端コマ部材を備えたことを特徴とする請求項7又は8に記載の同芯度計測用具。
【請求項10】
請求項7に記載の同芯度計測用具を用いて、前記スリーブと前記ピストンロッドとの同芯度を計測する同芯度計測方法において、
前記先端コマ部材が取付けられた前記ロッド本体を前記スリーブに挿入し、前記可動コマ部材の少なくとも一部を前記スリーブに挿入して、前記同芯度計測用具を前記スリーブに設置する設置工程と、
前記ロッド本体の後端部と前記ピストンロッドの先端部を接近させて、計測器により前記ロッド本体と前記ピストンロッドの軸心のズレを計測することにより、前記スリーブと前記ピストンロッドとの同芯度を計測する計測工程と、
を含むことを特徴とする同芯度計測方法。
【請求項11】
前記同芯度計測用具は、前記ロッド本体の後端部に取付けられ、該ロッド本体よりも大径に形成された円柱状又は円筒状の後端コマ部材を備え、
前記後端コマ部材の外周面と前記ピストンロッドの外周面との面差から前記スリーブと前記ピストンロッドとの同芯度を計測することを特徴とする請求項10に記載の同芯度計測方法。
【請求項12】
前記計測器は、前記ロッド本体の後端部、又は、前記ピストンロッドのいずれか一方に取付けられ、他方の外周位置を計測することを特徴とする請求項10に記載の同芯度計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プランジャロッド、射出装置、射出方法、同芯度計測用具、及び同芯度計測方法に関し、特に、射出装置に用いられるプランジャロッド、プランジャロッドを備えた射出装置、射出装置による射出方法、射出装置に用いられる同芯度計測用具、及び同芯度計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイカスト鋳造用の射出装置では、特許文献1に記載されているように、一般に、溶湯(例えば溶けたアルミニウム合金)を筒状のスリーブ内に供給する。その後、先端にスリーブ内を摺動するプランジャチップが取付けられたプランジャロッドを金型側に前進させることによって、溶湯を金型のキャビティ内に射出する。
【0003】
この射出装置において、プランジャロッドの後端部は、カップリング体を介して射出シリンダのピストンロッドに接続されている。プランジャロッドは、ピストンロッドから駆動力を受けてスリーブ内を前後進移動する。カップリング体は、プランジャロッドの後端部及びピストンロッドの先端部の外周を囲む筒状に形成されており、ピストンロッドは、ネジ等を用いてカップリング体にリジッドに固定されている。プランジャロッドは、軸心がスリーブの軸心及びピストンロッドの軸心と同芯となるように、位置合せされた状態で、カップリング体を用いてピストンロッドに連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-021902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の射出装置では、プランジャチップ及びプランジャロッドが、スリーブに対して高速移動することによって射出時に衝撃を受けることにより損耗が生じ、カップリング体に対するプランジャロッドの固定保持状態が破綻してがたつきが生じることがある。がたつきが生じると、水平に伸びるスリーブ内を前後進移動するプランジャロッドの後端部が、自身の重量やカップリング体の重量によって下方へ傾いてしまい、スリーブの軸心とプランジャチップ及びプランジャロッドの軸心とがずれてしまう。その場合には、プランジャチップがスリーブ内を摺動する際に摺動不良を起こすことになる。又、プランジャチップとスリーブの膨張収縮の関係は複雑な為、それぞれの軸心のずれはカジリや溶着を容易に引き起こし、交換の原因となる。
【0006】
摺動不良を解消するためには、スリーブ、プランジャチップ、プランジャロッド、カップリング体及び射出シリンダからなる射出関連部品を定期的に交換する必要があるが、交換頻度が高く、費用や手間が掛かるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、射出関連部品の交換頻度を低減することができるプランジャロッド、射出装置、射出方法、同芯度計測用具、及び同芯度計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態は、
円筒状のスリーブを備えたダイカスト鋳造用の射出装置に用いられ、先端に前記スリーブ内を摺動するプランジャチップが取付けられて前記スリーブ内を前後進するプランジャロッドにおいて、
前記プランジャロッドの外周であって、前記プランジャチップから離間し且つ前記プランジャロッドの前進移動により前記スリーブに対して摺動可能であり、前記プランジャロッドを前記スリーブ内で支持する半円環状、C型環状又は円環状のサポート部材を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一実施形態は、
円筒状のスリーブと、
先端に前記スリーブ内を摺動するプランジャチップが取付けられ、前記スリーブ内を前後進可能なプランジャロッドと、
を備えたダイカスト鋳造用の射出装置において、
前記プランジャロッドの外周であって、前記プランジャチップから離間し且つ前記プランジャロッドの前進移動により前記スリーブ内を摺動可能な位置に取付けられ、前記スリーブ内に位置した状態で、前記プランジャロッドを前記スリーブ内で支持する半円環状、C型環状又は円環状のサポート部材を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一実施形態は、
円筒状のスリーブと、
先端に前記スリーブ内を摺動するプランジャチップが取付けられ、前記スリーブ内を前後進可能なプランジャロッドと、
を備えたダイカスト鋳造用の射出装置の射出方法であって、
前記プランジャロッドの外周であって、前記プランジャロッドの前進移動により前記スリーブ内を摺動可能な位置に取付けられた半円環状、C型環状又は円環状のサポート部材により、前記プランジャロッドが前後進動作する際に、前記プランジャロッドを前記スリーブ内で支持する工程を含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一実施形態は、
射出装置にて、円筒状のスリーブと、該スリーブ内でプランジャロッドを前後進させるピストンロッドとの同芯度を計測する同芯度計測用具において、
前記スリーブ内に挿入され、該スリーブ内にて前進可能な形態を有するロッド本体と、
前記ロッド本体の挿入側先端に取付けられる円柱状又は円筒状の先端コマ部材と、
前記ロッド本体に該ロッド本体の軸方向に移動可能に取付けられる可動コマ部材と、を備え、
前記先端コマ部材及び前記可動コマ部材は、前記ロッド本体の軸心と共通した軸心を有していることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の一実施形態は、
前記同芯度計測用具を用いて、前記スリーブと前記ピストンロッドとの同芯度を計測する同芯度計測方法において、
前記先端コマ部材が取付けられた前記ロッド本体を前記スリーブに挿入し、前記可動コマ部材の少なくとも一部を前記スリーブに挿入して、前記同芯度計測用具を前記スリーブに設置する設置工程と、
前記ロッド本体の後端部と前記ピストンロッドの先端部を接近させて、計測器により前記ロッド本体と前記ピストンロッドの軸心のズレを計測することにより、前記スリーブと前記ピストンロッドとの同芯度を計測する計測工程と、
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のプランジャロッド、射出装置、射出方法、同芯度計測用具、及び同芯度計測方法によれば、射出関連部品の交換頻度を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態である射出装置の要部を示す一部断面図である。
図2図1に示す射出装置においてプランジャロッドを前進させた状態を示す一部断面図である。
図3】射出関連部品の斜視図である。
図4】カップリング体の内部の状態を説明する斜視図である。
図5】プランジャロッドの斜視図である。
図6】サポート部材の斜視図である。
図7】支持プレートの斜視図である。
図8】同芯度計測用具の斜視図である。
図9A】同芯度計測用具の使用例を示す一部断面図である。
図9B】計測器を用いて同芯度を計測する方法を説明する一部断面斜視図である。
図10】同芯度計測用具の使用例を示す一部断面図である。
図11】射出装置においてスリーブとプランジャロッドの軸心がずれた状態を示す一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1及び図2は、本発明の一実施形態であるダイカスト鋳造に用いられる射出装置10の要部を示す一部断面図である。射出装置10は、金型12と、円筒状のスリーブ20と、ラドル26と、プランジャロッド30と、射出シリンダ40と、油圧制御回路46と、カップリング体50と、支持プレート54と、を備える。射出シリンダ40は、プランジャロッド30に動力を付与する駆動源であり、軸方向に前後進移動するピストンロッド42を備えている。プランジャロッド30には、ジョイントを介してプランジャチップ34が取付けられ、更にサポート部材36が取付けられている。
【0016】
金型12は、固定盤13に固定された固定型12Aと、固定型12に対して接近・離間可能な可動型12Bとを備える。金型12は、固定型12Aに対して可動型12Bを接近させた型閉じ状態で、金型12内に鋳造空間としてのキャビティ14が形成されるように構成されている。
【0017】
図3は、金型12内に溶湯28を射出するための射出関連部品である、スリーブ20、プランジャロッド30、プランジャチップ34、サポート部材36、射出シリンダ40、カップリング体50、及び、支持プレート54の斜視図である。
【0018】
スリーブ20は、円筒状に形成されており、一方の端部が固定型12Aに固定され、X方向に延びている。本実施形態では、X方向が水平方向に一致しており、図1及び図2に示すY方向は、X方向に直交する方向であって鉛直方向に一致している。スリーブ20の他方の端部側の周面には、上方に開口する給湯口22が形成されている。射出装置10による鋳造では、給湯手段であるラドル26から、給湯口22を通してスリーブ20内に所定量の溶湯28(例えば溶けたアルミニウム合金などの溶融した金属)が供給される。スリーブ20内に供給された溶湯28は、スリーブ20内を移動するプランジャロッド30によって金型12のキャビティ14内に射出される。
【0019】
プランジャロッド30は直線状に延びる棒状に形成されている。図3及び図4に示すように、プランジャロッド30の後端部は、カップリング体50を用いて、射出シリンダ40のピストンロッド42の先端部に連結されている。図1に示すように、射出シリンダ40は、これに接続された油圧制御回路46によって、射出シリンダ40に供給される作動油の油量および油圧が制御される。プランジャロッド30は、射出シリンダ40から動力を受けて、スリーブ20内を前後進移動可能に構成されている。
【0020】
プランジャロッド30の先端には、スリーブ20内を摺動する円柱状のプランジャチップ34が取付けられて固定されている。図5は、プランジャロッド30の斜視図である。プランジャロッド30の後端部(すなわち射出シリンダ40側の端部)には、プランジャロッド30の本体部から径方向に広がる大径のフランジ部32が形成されている。
【0021】
図3及び図4に示すように、プランジャロッド30の外周であって、プランジャチップ34から離間した位置には、円環状のサポート部材36が取付けられている。図2に示すように、サポート部材36は、プランジャロッド30が金型12側に前進した際に、スリーブ20内を摺動可能な位置に固定状態で取付けられる。サポート部材36の外径は、プランジャチップ34の外径と略同一の径に形成されている。サポート部材36は、プランジャロッド30の前進に伴ってスリーブ20内に位置した状態で、スリーブ20とプランジャロッド30の軸心を一致させるように、プランジャロッド30の外周を囲む円環状に形成されている。
【0022】
図6は、サポート部材36の斜視図である。本実施形態のサポート部材36は、対を成す半円環状の第1のサポート部品36A及び第2のサポート部品36Bで構成されている。図5に示すように、プランジャロッド30の本体部の外周に環状の溝35が形成されており、この溝35にサポート部材36が嵌め込み設置されている。プランジャロッド30の溝35及びサポート部材36の各部品36A,36Bにはネジ穴が形成されており、これらのネジ穴にネジを通して、プランジャロッド30にサポート部材36がネジ止めされている。
【0023】
なお、本実施形態のようにスリーブ20が水平方向に延びている場合、サポート部材36は、半円環状に形成され、スリーブ20内で少なくともプランジャロッド30の下面側を支持するように、プランジャロッド30の外周の下面側に設けられる構成であってもよい。また、サポート部材36は、C型環状、すなわち円弧の長さが180度よりも大きく360度未満となる一部が欠損した環状であってもよい。これらの場合にも、スリーブ20とプランジャロッド30の軸心が一致するように、サポート部材36によってプランジャロッド30を支持することができる。これにより、スリーブ20内をプランジャロッド30が摺動移動する際に、プランジャチップ34とサポート部材36によりプランジャロッド30が2点支持されることで、スリーブ20とピストンロッド42との軸心の水平性を維持し易くなる。
【0024】
カップリング体50は、ピストンロッド42の先端部と、プランジャロッド30の後端部とを囲む筒状に形成されている。図3及び図4に示すように、カップリング体50は、対を成す半円筒状の第1のカップリング部品50A及び第2のカップリング部品50Bで構成されている。ピストンロッド42の先端部には、カップリング体50と係合するピストンフランジ44が形成されており、カップリング体50内に、ピストンロッド42のピストンフランジ44と、プランジャロッド30のフランジ部32とが収容された状態で、第1及び第2のカップリング部品50A,50Bがネジ等によって固定される。
【0025】
図1及び図4に示すように、カップリング体50の内部において、ピストンフランジ44とプランジャロッド30のフランジ部32との間には、円柱状の弾性体52が保持されている。弾性体52は、カップリング体50、プランジャロッド30のフランジ部32及びピストンフランジ44に対して非固定状態となっている。プランジャロッド30のフランジ部32は、カップリング体50の挿入部との間に隙間が設けられ非固定状態となっている。
【0026】
ピストンロッド42は、図4に示すように、円柱状の本体部42aと、本体部42aの先端部に形成された円柱状の小径部43及びピストンフランジ44を有する。ピストンフランジ44は、本体部42aよりも小径に形成されており、ピストンロッド42の先端面を形成している。小径部43は、本体部42aとピストンフランジ44との間に位置しており、ピストンフランジ44よりも小径に形成されている。カップリング体50は、ピストンロッド42の先端部の小径部43にリジッドに固定されている。本実施形態では、カップリング体50の周面及びピストンロッド42の小径部43の周面にネジ穴が形成されており、このネジ穴にネジを通してネジ止めすることにより、カップリング体50がピストンロッド42の小径部43にリジッドに固定されている。このように、カップリング体50は、ピストンロッド42の小径部43及び/又はピストンフランジ44に固定される。本実施形態では、小径部43及びピストンフランジ44のうち、小径部43にのみカップリング体50が固定された構造となっている。
【0027】
支持プレート54は、カップリング体50のプランジャロッド30側の端部に固定される。支持プレート54は、プランジャロッド30にて、フランジ部32よりも小径のロッド本体部の外周を囲むように略環状に形成されている。図1に示すように、支持プレート54は、サポート部材36がスリーブ20の外部に位置した状態で、スリーブ20とプランジャロッド30の水平性を保持させるように、プランジャロッド30を支持する。また、支持プレート54は、サポート部材36がスリーブ20の内部に位置した状態で、スリーブ20とプランジャロッド30の軸心を保持させるように、プランジャロッド30を支持する。本実施形態では、支持プレート54によって、水平方向に延びるプランジャロッド30の下面側のみを支持している。支持プレート54の内径は、プランジャロッド30のフランジ部32の外径よりも小さく設定されており、プランジャロッド30の後進時には、支持プレート54のカップリング体50側の表面がフランジ部32を後方へ押圧して、プランジャロッド30を射出シリンダ40側へ後進移動させる。
【0028】
図7は、支持プレート54の斜視図である。本実施形態において、支持プレート54は、略半円環状の第1の支持部品54A及び第2の支持部品54Bで構成されており、これらを組み合わせて全体が略環状に形成されている。第1の支持部品54Aは、設置状態で、円環を上下に二分割した上方側の半円環を形成しており、第2の支持部品54Bは、下方側の半円環を形成している。第2の支持部品54Bの内周面の中央部には、平面部56が形成されている。各支持部品54A,54Bには、板厚方向に貫通するネジ孔57,58が形成されており、各支持部品54A,54Bは、このネジ孔57,58にネジを通してカップリング体50とリジッドに固定されている。下方側に配置される第2の支持部品54Bのネジ孔58は、設置状態で上下方向に長い長孔となっており、カップリング体50において下方側に位置するカップリング部品50Bに固定する際に、カップリング部品50Bに対して上下方向に位置調整が可能となっている。
【0029】
支持プレート54の第2の支持部品54Bは、図1に示すようにプランジャロッド30が後進してサポート部材36がスリーブ20の外部に位置した状態で、プランジャロッド30が第2の支持部品54Bによって下方側から支持され、水平状態が維持されるように設置される。具体的には、プランジャロッド30の後進状態で、支持プレート54の第2の支持部材54Bの平面部56に、水平方向に延びるプランジャロッド30の下面が当接し、プランジャロッド30は、スリーブ20内のプランジャチップ34と、第2の支持部材54Bとによって2点支持された状態となる。この状態で、プランジャロッド30の水平状態が維持されるように、第2の支持部品54Bの位置を調整して、第2の支持部品54をカップリング部品50Bに固定する。なお、プランジャロッド30は、第2の支持部品54Bの位置において、左右方向に対しては僅かに移動可能な状態となっており、プランジャロッド30が前進してサポート部材36がスリーブ20へ挿入された際に、スリーブ20に対するプランジャロッド30の同芯性が妨げられることのない構造となっている。本実施形態の射出装置10において、プランジャロッド30は、カップリング体50と支持プレート54とのそれぞれに対して、非固定状態となっている。
【0030】
次に、上述した射出装置10の動作を説明する。射出装置10は、プランジャチップ34が給湯口22よりも後進側(射出シリンダ40側)へ位置するように、ピストンロッド30を後進させた状態で、給湯口22に溶湯28を供給する。この際、プランジャロッド30は、スリーブ20内に位置するプランジャチップ34と、カップリング体50にリジッドに固定された支持プレート54とによって支持されて、スリーブ20に対する同芯性、すなわちスリーブ20及びプランジャロッド34の水平性が保持される。
【0031】
その後、図2に示すように、射出シリンダ40の駆動力によってプランジャロッド30を金型12側へ前進移動させ、スリーブ20内の溶湯28をキャビティ14内に射出する。この際、プランジャロッド30は、スリーブ20内に位置するプランジャチップ34とサポート部材36とによって支持され、スリーブ20に対する同芯性が保持される。本実施形態の射出装置10では、プランジャチップ34を前進させる移動速度が、最初は低速であって、途中から高速(所定値以上の速度)に切り替わるように、油圧制御回路46によって制御される。サポート部材36は、プランジャチップ34の移動速度が所定値以上の高速になった状態で、スリーブ20内に位置しているように、位置決めされることが好ましい。
【0032】
図11は、従来の射出装置におけるスリーブ120、プランジャロッド130、プランジャチップ134、ピストンロッド142及びカップリング体150の射出時の状態を示す図である。従来の射出装置では、スリーブ120に対してプランジャチップ134を高速で前進移動させた場合に、プランジャチップ134が射出時の衝撃を受けることによって、スリーブ120の軸心P1に対して、プランジャロッド130の軸心P3が、カップリング体150側が下方へ傾くように力が作用する。このような衝撃が繰り返されることにより、カップリング体150に対するプランジャロッド130の固定状態が破綻する。また、経年劣化によりカップリング体150とピストンロッド142のリジッドな保持状態が破綻すると、カップリング体150の重量がプランジャロッド130の後端に対する偏荷重となり軸心P3が傾いて摺動不良を誘発する。これらにより、プランジャロッド30のみならず、カップリング体150の軸心P4も水平方向に対して傾斜してしまい、プランジャチップ134の摺動不良が生じてしまう。
【0033】
本実施形態の射出装置10では、上述したように、プランジャロッド30が前進移動した際に、スリーブ20内でプランジャチップ34とサポート部材36によってスリーブ20とプランジャロッド30との同芯性が保たれるため、摺動不良が防止される。これにより、摺動不良によって生じる部品交換の頻度を低減することができる。また、本実施形態の射出装置10では、プランジャロッド30がカップリング体50に対して非固定状態となっている。そのため、プランジャロッド30がスリーブ20内を高速移動して射出時に衝撃を受けた際に、従来の射出装置ように、プランジャロッド130とカップリング体150とピストンロッド142との固定状態が破綻して、部品が摩耗することを防止することができる。
【0034】
射出装置10において、射出関連部品の交換の頻度を低減するには、射出関連部品の組付け時に、スリーブ20と、ピストンロッド42との同芯性を保持することが求められる。本実施形態では、図8に示す、スリーブ20とピストンロッド42との同芯度、すなわちスリープ20の軸心P1とピストンロッド42の軸心P2のズレの度合い、を計測する際に同芯度計測用具60を用いることで、スリーブ20の軸心P1とピストンロッド42のP2との現状の同芯度を把握することができる。ここで、同芯度とは、2つの部品の軸心のズレの度合いであり、同芯とは、2つ部品の軸心が一致することをいう。また、この同芯度の計測結果を用いて、これらの軸心P1,P2の同芯性が保持されるように射出関連部品を組付けることができる。以下、図8図10を用いて同芯度計測用具60について詳説する。
【0035】
図8は、同芯度計測用具60の斜視図である。同芯度計測用具60は、スリーブ20内に挿入されるロッド本体62と、先端コマ部材64と、可動コマ部材66と、後端コマ部材68と、を備える。ロッド本体62は、直線状に延びる棒状の部材である。
【0036】
先端コマ部材64は、ロッド本体62の一方の端部である先端部に、固定状態で取付けられている。先端コマ部材64は、ロッド本体62よりも大径であって、ロッド本体62の全周を囲む円柱状又は円筒状に形成されている。先端コマ部材64はロッド本体62と共通する軸心を有している。先端コマ部材64の直径は、スリーブ20内を摺動可能な大きさ、すなわちプランジャチップ34と同等の大きさもしくは少し大きくなるように形成されている。なお、先端コマ部材64としてプランジャチップ34を使うことも可能である。
【0037】
後端コマ部材68は、円柱状又は円筒状に形成されており、ロッド本体62の他方の端部である後端部に、固定状態で取付けられている。後端コマ部材68はロッド本体62と共通する軸心を有している。後端コマ部材68の直径は、ロッド本体62よりも大径に形成されており、本実施形態では、後端コマ部材68の後端面が、ピストンロッド42の先端面(すなわちピストンフランジ44の先端面)と同一形状に形成されている。さらに、本実施形態では、後端部コマ部材68の後端面とピストンロッド42の先端面とが、それぞれ面積が略同一の円形に形成されている。なお、後端コマ部材68外径は、ピストンフランジ44の外径と異なる大きさであってもよい。
【0038】
可動コマ部材66は、先端コマ部材64と後端コマ部材68との間に位置するように、ロッド本体62の外周に取付けられ、少なくとも一部がスリーブ20内に挿入された状態で、スリーブ20とロッド本体62の軸心を一致させるように、先端コマ部材64とともにロッド本体62を支持する筒状の部材である。可動コマ部材66は、ロッド本体62と共通する軸心を有しており、ロッド本体52の軸方向に沿って移動可能に取付けられている。可動コマ部材66は、先端径(先端コマ部材64側の外径)がスリーブ20の内径よりも小さく、後端径(後端コマ部材68側の外径)がスリーブ20の内径よりも大きくなるように、テーパー状又は段差形状に形成されることが好ましい。可動コマ部材66は、同芯度計測用具60の使用時に、スリープ20のピストンロッド42側の端部で制止される。一例として、可動コマ部材66が、スリーブ20の端部の外径部に例えばプラスチックハンマ等を用いて挿入固定することができる。本実施形態の可動コマ部材66は、略円錐台状に形成されている。なお、可動コマ部材66の外形は、サポート部材36と同様に、スリーブ20内を摺動可能な形状であってもよい。可動コマ部材66がスリーブ20内を摺動可能な場合、可動コマ部材66の形状は、円環状もしくは円弧の長さが160度以上の扇形状とすることができる。可動コマ部材66が扇形状である場合、可動コマ部材66がスリーブ20内でロッド本体62を下方側から支持するように用いられる。
【0039】
本実施形態において、同芯度計測用具60の全長は、プランジャチップ34を含むプランジャロッド30の全長とほぼ等しい長さに設定されている。次に、同芯度計測用具60を用いたスリーブ20とピストンロッド42との同芯度計測方法について説明する。
【0040】
まず、射出装置10から、プランジャチップ34が取付けられたプランジャロッド30、支持プレート54、弾性体52及びカップリング体50を取り外す。そして、図9Aに示すように、同芯度計測用具60にて先端コマ部材64が取付けられたロッド本体62をスリーブ20に挿入し、可動コマ部材66の一部をスリーブ20に挿入して、同芯度計測用具60をスリーブに設置する(設置工程)。本実施形態では、同芯度を計測する際の事前確認として、同芯度計測用具60を先端コマ部材64側からスリーブ20内に挿入し、先端コマ部材64を可能な限りスリーブ22の先端側へ押し込んだ状態で、可動コマ部材20をスリーブ20内へ押し込む。この状態で、計測器を用いてスリーブ20とロッド本体62との同芯度の確認を行う。同芯度の確認は、図9Bに示すように、計測器70を用いて、スリーブ20の外周とロッド本体62との距離を少なくとも周方向で複数箇所、好ましくは略90度間隔で4箇所、測定することにより行うことができる。計測器70は、例えば全周の面差を計測可能な全周差異計測器とすることができる。計測器70は、計測部70Aと、計測部70Aを支持する支持部70Bとを備えている。本実施形態では、計測部70Aの一例としてダイヤルゲージを用いている。計測器70は、支持部70Bをスリーブ20に取付けて、計測部70Aの測定子をロッド本体62の外周に接触させて計測を行う。同芯度計測用具60は、先端コマ部材64、ロッド本体62及び可動コマ部材66が共通する軸心を有していることから、スリーブ20とロッド本体62の軸心が一致するようにスリーブ20に対して設置されることとなる。同芯度の確認がとれた状態で、図9Aに示すように、同芯度計測用具60のロッド本体62が任意の長さだけ、スリーブ20内に挿入された状態とする。可動コマ部材66の後端部は、スリーブ20の開口端部に突き当たって制止された状態となっている。この状態では、ロッド本体62が、スリーブ20内で、先端コマ部材64と可動コマ部材66とによって2点支持されることにより、ロッド本体62の軸心とスリーブ20の軸心P1とが同芯に保たれた状態となる。
【0041】
この状態で、図9Bに示すように、射出シリンダ40のピストンロッド42のピストンフランジ44と同芯度計測用具60の後端コマ部材68とを接近させる。なお、図9Bでは、ピストンフランジ44の先端面と後端コマ部材68を突き当てているが、これらの間に隙間があってもよい。そして、計測器72によりロッド本体62とピストンロッド42の軸心のズレを計測することにより、スリーブ20とピストンロッド42との同芯度を計測する(計測工程)。具体的には、後端コマ部材68又はロッド本体62の外周面と、ピストンロッド42の外周面との径方向の面差を例えば全周差異計測器等の計測器72を用いて、複数方向の計測することで、ピストンロッド42とスリーブ20の同芯度を計測することができる。面差を計測する方向は、例えば4方向以上、すなわち周方向において略90度の間隔で4箇所以上とすることが好ましい。計測器72は、ダイヤルゲージ等の計測部72Aと、計測部72Aを支持する支持部72Bとを有している。図9Bでは、一例として、ピストンロッド42に計測器72の支持部72Bを取付け、ロッド本体62の後端部である後端コマ部材68の外周面に計測部72Aの測定子を接触させて、後端コマ部材68の外周位置を計測している。これにより、ピストンロッド42とロッド本体62の同芯度を計測することができる。なお、計測器72は、支持部72Bをロッド本体62又は後端コマ部材68に取付け、測定子をピストンロッド42の外周面に接触させるようにしてもよい。このように、同芯度計測用具60と、ピストンロッド42との同芯度を計測することで、スリーブ20とピストンロッド42との同芯度を計測することができる。特に、本実施形態では、後端コマ部材68とピストンロッド42のピストンフランジ44との対向面が、それぞれ円形に形成されているため、ピストンフランジ44に後端コマ部材68を突き当てて、円のズレ(面差)を見ることで、軸心のずれを計測することができる。本実施形態では、突き当て面が、同一面積を有する同一形状の円形に形成されているため、外周面の面差を見ることで、軸心のずれを簡易に計測することが可能である。後端コマ部材68を有する同芯度計測用具60を用いた同芯度計測方法では、例えば、同一径を有するピストンフランジ44と後端コマ部材68を突き当てて面差を見ることで同芯度の一次判断を行い、一次判断によって、円のズレからピストンフランジ44と同芯度計測用具60の軸心にズレがあると判断された場合に、計測器72を用いて、同芯度を計測するようにしてもよい。このように、同芯度計測方法は、計測器72を使用せずに後端コマ部材68によって判断する一次判断の後に、計測器72を用いた二次判断を行うものであってもよい。なお、計測器70,72は、支持部70B,72Bが、射出関連部品や同芯度計測用具60以外の部品、例えば、射出装置10に対して位置が固定された台座等に取付けられる構成であってもよい。
【0042】
図10では、ピストンロッド42を前進させた状態で、同芯度計測用具60を用いてスリーブ20とピストンロッド42との同芯度を計測する方法を説明する図である。この場合、同芯度計測用具60は、可動コマ部材66をスリーブ20に押し入れた状態で、ロッド本体62と後端コマ部材68を先端コマ64がスリーブ20から脱落しない所まで押し込むことで、ロッド本体62がスリーブ20内に挿入される長さを大きくする。この状態で、全周差異計測器等の図9Bに示す計測器72を用いて、同芯度計測用具60とピストンロッド42との同芯度を計測する。このように、本実施形態の同芯度計測用具60では、可動コマ部材66に対してロッド本体62を軸方向に相対的に移動させて、ロッド本体62を任意の長さ、スリーブ20内に挿入させた状態とすることで、スリーブ20に対するピストンロッド42の先端部の位置を変えた状態で、各位置での同芯度を計測することできる。これにより、ピストンロッド42とスリーブ20の同芯度を高い精度で計測することが可能である。
【0043】
ダイカスト鋳造用の射出装置10において、スリーブ20と、プランジャロッド30と、ピストンロッド42との軸心を一致させるためには、スリーブ20とピストンロッド42との同芯性が保たれた状態で、プランジャロッド30をピストンロッド42に連結する必要がある。上述したように、本実施形態の同芯度計測用具60では、先端コマ部材64が取付けられたロッド本体62をスリーブ30内に挿入し、可動コマ部材65の一部をスリーブ内に挿入した状態でスリーブ20の端部に制止させることで、スリーブ20に同芯度計測用具60を設置することができる。設置状態では、スリーブ20の端部からロッド本体62の後端側を突出させた状態となり、同芯度計測用具60は、先端コマ部材64、ロッド本体62及び可動コマ部材65が共通する軸心を有していることから、スリーブ20とロッド本体62の軸心が一致するように設置される。なお、同芯度計測方法において、計測器70を用いてスリーブ20とロッド本体62の同芯度の確認を行うことで、同芯度の計測精度をより高めることができる。また、同芯度計測用具60をスリーブ20に設置した状態で、ロッド本体62がスリーブ20から突出する長さを変えることによって、ロッド本体62の後端部、すなわち後端コマ部材68をピストンロッド42の先端部に突き合わせることができ、この状態で、計測器72を用いて同芯度計測用具60とピストンロッド62の軸心のズレを計測することで、スリーブ20とピストンロッド42の同芯性を計測することができる。このように、本実施形態の同芯度計測用具60では、スリーブ20と射出シリンダ40のピストンロッド42との同芯度を容易に計測することができ、計測結果に基づいて、スリーブ20とピストンロッド42とが同芯となるように位置合せすることも可能である。例えば、同芯度計測用具60のロッド本体62の軸心とピストンロッド42との軸心P2がずれている場合には、スリーブ20に対して射出シリンダ40の位置を移動させて、軸心が一致するように調整するための目安となる。スリーブ20とピストンロッド42の同芯性が保たれた状態でプランジャロッド30を、カップリング本体50を介して、ピストンロッド42に同芯状態で保持させることで、スリーブ20、プランジャロッド30及びピストンロッド42の軸心を一致させることができる。これにより、スリーブ20に対するプランジャロッド30の摺動不良を抑えて、摺動不良によって生じる射出関連部品の交換頻度を低減することができる。
【0044】
なお、同芯度計測用具60において、後端コマ部材68は必須の構成ではなく、例えば後端コマ部材68を有していない同芯度計測用具60において、ロッド本体62の後端面をピストンロッド42の先端面に突き当てて、同芯度を計測することも可能である。その場合、ロッド本体62に計測器72を取付け、ピストンロッド42の本体部42a或いはピストンフランジ44の円周を計測し、その振れ量によって同芯度を計測することができる。上述した後端コマ部材68を有する同芯度計測用具60では、後端コマ部材68にピストンロッド42の先端面を突き合せた状態で、突合せ面が一致するか否かによって、スリーブ20とピストンロッド42との同芯度を容易に計測することができる。また、突合せ面が一致するようにスリーブ20に対するピストンロッド42の位置を調整することで、スリーブ20とピストンロッド42とを同芯させることができる。
【0045】
なお、上述した例では、同芯度計測用具60をプランジャロッド30にサポート部材36が取付けられた射出装置10に使用して、同芯度を計測する方法を説明したが、同芯度計測用具60を使用可能な射出装置はこれに限られない。本実施形態の同芯度計測用具60は、円筒状のスリーブと、これと同芯に配置されるピストンロッドとを備えたダイカスト鋳造用の射出装置全般に用いることが可能である。
【0046】
なお、本発明は上述した実施の形態や変形例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0047】
10 射出装置
12 金型
20 スリーブ
30 プランジャロッド
32 フランジ部
34 プランジャチップ
36 サポート部材
40 射出シリンダ
42 ピストンロッド
44 ピストンフランジ
50 カップリング体
52 弾性体
54 支持プレート
60 同芯度計測用具
62 ロッド本体
64 先端コマ部材
66 可動コマ部材
68 後端コマ部材
P1 スリーブの軸心
P2 ピストンロッドの軸心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11