IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 理研ビタミン株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068621
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】油性化粧料用界面活性剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/39 20060101AFI20240513BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20240513BHJP
   A61Q 1/14 20060101ALI20240513BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20240513BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20240513BHJP
   C09K 23/52 20220101ALI20240513BHJP
【FI】
A61K8/39
A61Q5/02
A61Q1/14
A61Q19/10
A61K8/86
C09K23/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023140907
(22)【出願日】2023-08-31
(31)【優先権主張番号】P 2022178675
(32)【優先日】2022-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390010674
【氏名又は名称】理研ビタミン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】宮田 侑典
(72)【発明者】
【氏名】大野 早由莉
【テーマコード(参考)】
4C083
4D077
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC122
4C083AC182
4C083AC352
4C083AC421
4C083AC422
4C083AD662
4C083BB04
4C083BB11
4C083CC22
4C083CC38
4C083DD30
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE09
4D077AA09
4D077AB11
4D077AC01
4D077BA03
4D077BA07
4D077CA03
4D077CA04
4D077CA13
4D077DC02X
4D077DC26X
4D077DC32X
4D077DD36X
4D077DE09X
(57)【要約】
【課題】保存安定性が高く、水洗い性が優れ、且つ眼刺激性が弱い油性化粧料を製造できる油性化粧料用界面活性剤を提供する。
【解決手段】ポリグリセリンと炭素数が18の不飽和脂肪酸及び/又は分岐飽和脂肪酸とのエステル化生成物であって、下記条件(A)、(B)及び(C)を満たすものである、油性化粧料用界面活性剤。
(A)ポリグリセリンの2量体の含有量が85質量%以上
(B)モノエステル体の含有量が80質量%以上
(C)未反応のポリグリセリンの含有量が7質量%未満
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリグリセリンと炭素数が18の不飽和脂肪酸及び/又は分岐飽和脂肪酸とのエステル化生成物であって、下記条件(A)、(B)及び(C)を満たすものである、油性化粧料用界面活性剤。
(A)ポリグリセリンの2量体の含有量が85質量%以上
(B)モノエステル体の含有量が80質量%以上
(C)未反応のポリグリセリンの含有量が7質量%未満
【請求項2】
請求項1に記載の油性化粧料用界面活性剤を含有する、油性化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存安定性が高く、水洗い性が優れ、且つ眼刺激性が弱い油性化粧料を製造できる油性化粧料用界面活性剤に関する。
【背景技術】
【0002】
油性化粧料は様々な製品の種類があり、例えば、油中水型の乳化化粧料、クリーム、マッサージオイル、クレンジングオイル、ヘアオイル、口紅のスティックタイプ及び固形タイプ等が挙げられ、剤型としては、液状、ゲル状、クリーム状、バーム状のものが挙げられる。
【0003】
スキンケアにおける油性化粧料は保湿力やエモリエント効果に優れ、洗浄料における油性化粧料は油性成分の溶解性に優れる特徴があるが、いずれの油性化粧料も水との馴染みが悪いため、水で洗い流す必要のある油性化粧料には水への分散を高めるために界面活性剤を高濃度で配合する必要がある。
【0004】
油性化粧料に配合する一般的な界面活性剤としては、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等が使用されているが、ポリオキシエチレン系界面活性剤を高濃度で配合した油性化粧料は、洗い流した後のキシミ感が強いといった問題や皮膚トラブルの原因ともなる可能性があるため、安全性の懸念があった。ポリオキシエチレン系界面活性剤を使用した油性化粧料の問題点を解決するために、ポリグリセリン脂肪酸エステルの活用が挙げられる。
【0005】
一般に、ポリグリセリン脂肪酸エステルが油性化粧料に用いられる場合、水洗い性を良くするために、エステル化率を下げてモノエステル含有量を上げることがあるが、未反応のポリグリセリンが多く含まれるために油性成分との相溶性が失われ、製品の保存安定性が悪くなりやすい。また、油性成分との相溶性を上げるために、エステル化率を上げてジエステル以上のエステル体の含有量を増やすことがあるが、水への分散性が悪くなり、水洗い性が損なわれる。したがって、このようなポリグリセリン脂肪酸エステルを主な界面活性剤として配合する油性化粧料には、油性成分との相溶性の問題から製品の保存安定性が悪くなるか、又は水への分散性が悪くて汚れを洗い流すことができず、油性成分が皮膚上に残り、べたつき感がひどくなるという課題があった。
【0006】
ポリグリセリン脂肪酸エステルを活用する従来技術として、特許文献1は環状のポリグリセリン含有量を減らす必要があるためにポリグリセリンの汎用性に欠ける。特許文献2は多価アルコールを多量に活用してラメラ液晶構造を形成する必要があり配合の自由度が制限される。特許文献3~5は中鎖脂肪酸を用いているために眼刺激が懸念され、また、水性クレンジング料であるために油性クレンジングオイル料に比べクレンジング力が劣りやすい。特許文献6は環状の脂肪酸の割合が10質量%以下に限定されるために脂肪酸の汎用性に欠けるといった問題がある。このため、油性化粧料に配合するうえで、更なる好ましいポリグリセリン脂肪酸エステルを主体とする界面活性剤が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004-256514号公報
【特許文献2】特開2007-23025号公報
【特許文献3】特開2014-210744号公報
【特許文献4】特開2015-231966号公報
【特許文献5】特許第6834063号公報
【特許文献6】特開2022-35124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、保存安定性が高く、水洗い性が優れ、且つ眼刺激性が弱い油性化粧料を製造できる油性化粧料用界面活性剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決する為に鋭意研究を重ねた結果、ポリグリセリンと炭素数が18の不飽和脂肪酸及び/又は分岐飽和脂肪酸とのエステル化生成物であって、特定の組成を有するものにより、上記課題を解決できることを見出した。そして、これらの知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、下記[1]及び[2]を含む。
[1]ポリグリセリンと炭素数が18の不飽和脂肪酸及び/又は分岐飽和脂肪酸とのエステル化生成物であって、下記条件(A)、(B)及び(C)を満たすものである、油性化粧料用界面活性剤。
(A)ポリグリセリンの2量体の含有量が85質量%以上
(B)モノエステル体の含有量が80質量%以上
(C)未反応のポリグリセリンの含有量が7質量%未満
[2]前記[1]に記載の油性化粧料用界面活性剤を含有する、油性化粧料。
【発明の効果】
【0011】
本発明の油性化粧料用界面活性剤は、保存安定性が高く、水洗い性が優れ、且つ眼刺激性が弱い油性化粧料を製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の油性化粧料用界面活性剤は、ポリグリセリンと炭素数が18の不飽和脂肪酸及び/又は分岐飽和脂肪酸とのエステル化生成物であって、下記条件(A)、(B)及び(C)を満たすもの(以下、「本発明のエステル化生成物」ともいう)である。
(A)ポリグリセリンの2量体の含有量が85質量%以上
(B)モノエステル体の含有量が80質量%以上
(C)未反応のポリグリセリンの含有量が7質量%未満
【0013】
本発明のエステル化生成物は、ポリグリセリンと炭素数が18の不飽和脂肪酸及び/又は分岐飽和脂肪酸とのエステル化生成物であるため、炭素数が18の不飽和脂肪酸及び/又は分岐飽和脂肪酸を構成脂肪酸とするポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する。炭素数が18の不飽和脂肪酸及び分岐飽和脂肪酸としては、例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、イソステアリン酸等が挙げられ、オレイン酸、イソステアリン酸が好ましい。不飽和脂肪酸及び分岐飽和脂肪酸の炭素数が18未満であると、眼刺激性が強くなる場合があり、好ましくない。また、不飽和脂肪酸及び分岐飽和脂肪酸の炭素数が18を超えると、ポリグリセリン脂肪酸エステルの親油性が高まり、水洗い性が損なわれるため、好ましくない。また、直鎖の飽和脂肪酸の場合、ポリグリセリン脂肪酸エステルの融点が高くなり、油性化粧料中で結晶化しやすく、製品の保存安定性が損なわれるため、好ましくない。なお、本発明において、水洗い性に優れるとは、好ましくは、後述の実施例で記載するように、例えば、本発明の界面活性剤を含む油性化粧料を塗布した皮膚などについて、常温又は40℃程度の水で洗った後に、油残り等の触感がないことである。
【0014】
[条件(A)]
本発明のエステル化生成物は、ポリグリセリンの2量体の含有量が85質量%以上、好ましくは90質量%以上である。ポリグリセリン中の2量体のポリグリセリンの含有量が85質量%未満であると、油性化粧料の水洗い性が悪くなる場合があるため、好ましくない。
【0015】
ここで、条件(A)のポリグリセリンの2量体の含有量は、本発明のエステル化生成物に含まれる全てのポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する全てのポリグリセリン100質量%中の2量体のポリグリセリンの含有量を指し、該エステル化生成物について、ポリグリセリンの組成(ポリオール組成)を分析することにより求めることができる。その方法を、下記工程(1)及び(2)に示す。
【0016】
(1)試料の調製
先ず、被検試料をけん化分解処理して脂肪酸とポリオールとに分解する。具体的には、被検試料2.0gをけん化用フラスコに量り取り、これに0.5mol/L水酸化カリウム-エタノール標準液30mLを加え、該フラスコに冷却器を付け、時々振り混ぜながら、還流するエタノールが冷却器の上端に達しないように約70~80℃の範囲内で温度を調節して穏やかに約1時間加熱した後、温水40~50mL、水40~50mL、ヘキサン100mLで順次フラスコを洗いながら分液漏斗に移す。この分液漏斗に10%塩酸約5mLを加えて分液漏斗を振り混ぜ、これにヘキサン50mLを加えてさらに振り混ぜ、その後静置する。分離した下層をビーカーに採り、0.5mol/L水酸化カリウム溶液でpHを調製して中和し、60℃の通風乾燥機内にビーカーを静置し、脱水する。完全に脱水したらメタノール5~10mLを2~3回に分け入れて内容物をかき混ぜ、自然濾過する。得られた濾液をフラスコに移し、エバポレータにてメタノールを除去する。
【0017】
(2)測定方法
得られた濃縮物(ポリグリセリン)を10mgとり、下記移動相1mLに溶解する。得られた溶解液を、HPLCを用いて、下記条件でポリオール組成分析を行う。なお、データ処理ソフトウェアによりクロマトグラム上に記録された被検試料の各成分に対応するピークについて、積分計を用いてピーク面積を測定し、測定されたピーク面積に基づいて、面積百分率として2量体のポリグリセリンの含有量を求める。HPLC分析条件を以下に示す。なお、2量体以外のポリグリセリンの含有量についても、同様の方法で求めることが出来る。
<HPLC分析条件>
装置:島津高速液体クロマトグラフ
ポンプ(型式:LC-20AD;島津製作所社製)
カラムオーブン(型式:CTO-20A;島津製作所社製)
データ処理装置(型式:LCsolution;島津製作所社製)
カラム:Shodex-AsahipackGS220HQ 2本連結
移動相:30%メタノール水溶液
流量:1.0mL/分
検出器:RI検出器(型式:RID-10A;島津製作所社製)
カラム温度:40℃
検液注入量:15μL(30%メタノール水溶液中)
【0018】
また、条件(A)のポリグリセリン中の2量体のポリグリセリンの含有量は、本発明のエステル化生成物の原料として用いられるポリグリセリンについて、前述の「(2)測定方法」を実施することによって求めることもできる。
【0019】
[条件(B)]
本発明のエステル化生成物に含まれるポリグリセリン脂肪酸エステルのモノエステル体の含有量は、80質量%以上であり、好ましくは85質量%以上である。モノエステル体の含有量が80質量%未満であると、油性化粧料の水洗い性が悪くなる場合があるため、好ましくない。
【0020】
[条件(C)]
本発明のエステル化生成物は、未反応のポリグリセリンの含有量が7質量%未満であり、好ましくは6質量%未満である。未反応のポリグリセリンの含有量が7質量%以上であると、油性成分との相溶性が悪くなり、油性化粧料の保存安定性が悪くなるため、好ましくない。
【0021】
ここで、上記モノエステル体の含有量及び未反応のポリグリセリンの含有量は、本発明のエステル化生成物について、HPLCを用いてエステル組成分析を行い、絶対検量線法により定量することにより実施できる。すなわち、データ処理装置によってクロマトグラム上に記録された被検試料のモノエステル体又は未反応のポリグリセリンに相当するピーク面積を測定し、順相系カラムクロマトグラフィーにより精製したジグリセリンモノイソステアリン酸エステル又は、ジグリセリンモノオレイン酸エステルを標準試料として作成した検量線から、被検試料のモノエステル体及び未反応のポリグリセリン含有量を求める。HPLC分析条件を以下に示す。
<HPLC分析条件>
装置:島津高速液体クロマトグラフ
ポンプ(型式:LC-20AD;島津製作所社製)
カラムオーブン(型式:CTO-20A;島津製作所社製)
データ処理装置(型式:LCsolution;島津製作所社製)
カラム:GPCカラム(型式:SHODEX KF-801;昭和電工社製)2本連結
移動相:THF
流量:1.0mL/分
検出器:RI検出器(型式:RID-10A;島津製作所社製)
カラム温度:40℃
検液注入量:15μL(THF溶媒中)
【0022】
本発明のエステル化生成物の原料として用いられるポリグリセリンは、上記した条件(A)を満たすものが用いられる。
【0023】
本発明のエステル化生成物の原料として用いられる脂肪酸は、炭素数が18の不飽和脂肪酸及び/又は分岐飽和脂肪酸、又はこれらの脂肪酸を50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上含有する脂肪酸の混合物が用いられる。
【0024】
本発明のエステル化生成物は、上記ポリグリセリンと脂肪酸のエステル化生成物から、未反応物及びジエステル体、トリエステル体、テトラエステル体、ペンタエステル体を可及的に除去し、モノエステル体の含有量を80質量%以上、未反応のポリグリセリンの含有量を7質量%未満に精製したものであり、自体公知の方法で製造され得る。より具体的な製造方法の概略は下記の通りである。
【0025】
例えば、攪拌機、加熱用のジャケット、邪魔板等を備えた通常の反応容器に、上記ポリグリセリンと炭素数18の不飽和脂肪酸及び/又は分岐飽和脂肪酸とを、例えば、1:0.2~2.0のモル比で仕込み、アルカリ触媒(例えば、苛性ソーダ等)を用い、窒素又は二酸化炭素等の任意の不活性ガス雰囲気下で、常法によりエステル化反応を行い、反応終了後、反応混合物中に残存する触媒を中和して反応液を得る。エステル化反応を行う際の加熱温度としては、例えば、200~260℃の範囲、好ましくは210~240℃の範囲である。また、反応圧力条件は、減圧下又は常圧下で、反応時間は、例えば、0.5~10時間、好ましくは1~5時間である。また、反応の終点は、反応液の酸価を測定し、その酸価が3.0以下であることを目安として決定するのが好ましい。なお、酸価は、「基準油脂分析試験法(I)」(公益社団法人 日本油化学会編)の[2.3.1-2013 酸価]に準じて測定される。得られた反応液は、通常、未反応の脂肪酸、未反応のポリグリセリン、ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル、ポリグリセリンジ脂肪酸エステル、及びポリグリセリントリ脂肪酸エステル等を含む混合物である。この反応液を減圧下で蒸留して未反応のポリグリセリンを留去し、続いて、必要により、例えば流下薄膜式分子蒸留装置又は遠心式分子蒸留装置等を用いて分子蒸留するか、又はカラムクロマトグラフィーもしくは液々抽出等自体公知の方法を用いて精製することにより、モノエステル体を80質量%以上、未反応のポリグリセリンの含有量が7質量%未満のエステル化生成物を得る。
【0026】
かくして得られるエステル化生成物である本発明の油性化粧料用界面活性剤は、眼刺激性が弱く、油性成分との相溶性に優れる効果を発揮する。また、水への分散性が優れることにより、水洗い性が優れる効果を発揮する。
【0027】
本発明の油性化粧料用界面活性剤を含有する油性化粧料も本発明の形態の1つである。本発明において油性化粧料は、連続相が油性成分である化粧料を意味し、種々の剤型、例えば、液状、ゲル状、クリーム状、バーム状とすることができるが、これらに限定されない。
【0028】
本発明の油性化粧料用界面活性剤の油性化粧料への配合量は、2~40質量%が好ましく、5~30質量%がより好ましいが、これらに限定されない。配合量がかかる範囲内であると、保存安定性が高く、水洗い性に優れ、且つ感触が良好な油性化粧料が得られる。
【0029】
本発明の油性化粧料には、本発明の油性化粧料用界面活性剤以外に、例えば、油性化粧料の成分として一般に使用されている、油性成分(油剤)、セラミド類、凝セラミド類、ヒアルロン酸類、ステロール類、植物エキス、保湿剤、抗酸化剤、一重項酸素消去剤、粉末成分、色剤、紫外線吸収剤、美白剤、アルコール類、キレート剤、pH調製剤、防腐剤、増粘剤、色素類、香料、皮膚栄養剤等を任意に組み合わせて配合することができるが、これらに限定されない。
【0030】
上記油性成分としては、通常、化粧品で利用できる液状又はペースト状の成分であれば特に制限はなく、例えば、炭化水素油、エステル油、天然動植物油脂、高級脂肪酸、高級アルコール、シリコーン油、動植物や合成の精油成分等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
上記炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、スクワラン、スクワレン、ワセリン等が挙げられ、流動パラフィンが好ましいが、これらに限定されない。
【0032】
上記エステル油としては、例えば、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、イソステアリン酸イソステアリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、2-エチルヘキサン酸セチル、ジ-2-エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、オクタン酸セチル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、オレイン酸デシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、コハク酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸ブチル、セバシン酸ジイソプロピル、乳酸セチル、乳酸テトラデシル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル、オレイン酸フィトステリル、リンゴ酸ジイソステアリル、パラメトキシケイ皮酸エステル、テトラロジン酸ペンタエリスリット、トリイソステアリン酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリテトラデカン酸グリセリル、ジパラメトキシケイ皮酸・モノイソオクチル酸グリセリル、ミリスチン酸イソプロピル等が挙げられ、2-エチルヘキサン酸セチル、オクタン酸セチル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、オレイン酸デシル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシルが好ましいが、これらに限定されない。
【0033】
上記天然動植物油脂としては、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリル、トリカプリル酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル、オリーブ油、ブドウ種子油、ヒマワリ種子油、ナタネ油、ヒマシ油、ツバキ油、アマニ油、綿実油、大豆油、マカダミアナッツ油、シア脂、馬油等が挙げられ、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリル、トリカプリル酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリルが好ましいが、これらに限定されない。
【0034】
上記高級脂肪酸としては、例えば、パルミチン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、ラウリン酸等が挙げられるが、これらに限定されない。上記高級アルコールとしては、例えば、セタノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、セテアリルアルコール、オクチルドデカノール等が挙げられるが、これらに限定されない。上記シリコーン油としては、例えば、ジメチコン、シクロペンタシロキサン、アモジメチコン、アミノプロピルジメチコン、シクロメチコン、ジメチコノール等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
本発明の油性化粧料は、溶解、粉体分散、混合等の通常の製法に従って半製品を製造した後、成型、充填等を行い得ることができる。具体的な例としては、例えば、クリーム、マッサージオイル、クレンジングオイル、ヘアオイル、口紅のスティックタイプ及び固形タイプ、リキッドタイプのアイカラー、ファンデーション、チークカラー、日焼け止め等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
以下に本発明を実施例、比較例等を用いて説明するが、これは本発明を単に説明するだけのものであって、本発明を限定するものではない。
【実施例0037】
[エステル化生成物の作製]
(1)原材料
1)ポリグリセリンA(商品名:ジグリセリンS;阪本薬品工業社製)
2)ポリグリセリンB(商品名:ポリグリセリン♯500;阪本薬品工業社製)
3)ポリグリセリンC(下記方法で作製したもの)
4)ポリグリセリンD(下記方法で作製したもの)
5)イソステアリン酸(商品名:PALMERA IS30;KLK OELO社製)
6)オレイン酸(商品名:ルナックO-V;花王社製)
7)ラウリン酸(商品名:ルナックL-98;花王社製)
【0038】
(2)ポリグリセリンCの作製方法
ビーカーにポリグリセリンA820gとグリセリン(商品名:食品添加物グリセリン;阪本薬品工業社製)351gを仕込み、80℃に昇温し30分間溶融混合し、ポリグリセリンCを1140g得た。
【0039】
(3)ポリグリセリンDの作製方法
ビーカーにポリグリセリンA1620gとグリセリン(商品名:食品添加物グリセリン;阪本薬品工業社製)184gを仕込み、80℃に昇温し30分間溶融混合し、ポリグリセリンDを1790g得た。
【0040】
ここで、ポリグリセリンA、B、C及びDの各ポリグリセリンの組成(重合度比率)を表1に示す。このうち、ポリグリセリンA及びDは、2量体のポリグリセリンの含有量が85質量%以上であり、本発明で用いられるポリグリセリンである。一方、ポリグリセリンB及びCは、2量体のポリグリセリンの含有量が85質量%未満であり、本発明で用いられるポリグリセリンとは異なるポリグリセリンである。なお、表1のポリグリセリンの組成は、前述の「(2)測定方法」を実施することによって求めた。
【0041】
【表1】
【0042】
(4)エステル化生成物の作製方法
<実施例品1>
攪拌機、温度計、ガス吹き込み管及び水分離器を取り付けた3Lの四つ口フラスコにポリグリセリンA775gとイソステアリン酸1625g及び苛性ソーダ12gを仕込み、窒素ガスを導入しつつ230℃に昇温し4時間反応を行い、酸価0.6の反応液2200gを得た。得られた反応液のうち2000gを減圧蒸留(210℃、5Pa)して未反応のポリグリセリンを除去した後、さらに減圧蒸留(230℃、1Pa)し、エステル化生成物である油性化粧料用界面活性剤(実施例品1)314gを得た。得られたエステル化生成物のモノエステル体含有量は93質量%、未反応のポリグリセリン含有量は2.3%であった。
【0043】
<実施例品2>
攪拌機、温度計、ガス吹き込み管及び水分離器を取り付けた3Lの四つ口フラスコにポリグリセリンA971gとオレイン酸1329g及び苛性ソーダ11.5gを仕込み、窒素ガスを導入しつつ230℃に昇温し4時間反応を行い、酸価0.7の反応液2120gを得た。得られた反応液のうち1900gを減圧蒸留(210℃、5Pa)して未反応のポリグリセリンを除去した後、さらに減圧蒸留(260℃、1Pa)し、エステル化生成物である油性化粧料用界面活性剤(実施例品2)298gを得た。得られたエステル化生成物のモノエステル体含有量は87質量%、未反応のポリグリセリン含有量は5.1%であった。
【0044】
<比較例品1>
攪拌機、温度計、ガス吹き込み管及び水分離器を取り付けた3Lの四つ口フラスコにポリグリセリンA710gとイソステアリン酸1490g及び苛性ソーダ1.1gを仕込み、窒素ガスを導入しつつ230℃に昇温し4時間反応を行い、酸価0.6の反応液2094gを得た。得られた反応液のうち1800gを減圧蒸留(230℃、1Pa)し、エステル化生成物である油性化粧料用界面活性剤(比較例品1)320gを得た。得られたエステル化生成物のモノエステル体含有量は89質量%、未反応のポリグリセリン含有量は8.7%であった。
【0045】
<比較例品2>
攪拌機、温度計、ガス吹き込み管及び水分離器を取り付けた1Lの四つ口フラスコにポリグリセリンA594gとイソステアリン酸406g及び苛性ソーダ0.5gを仕込み、窒素ガスを導入しつつ230℃に昇温し4時間反応を行い、酸価0.5の反応液926gを得た。得られた反応液のうち900gを減圧蒸留(210℃、5Pa)して未反応のポリグリセリンを除去し、エステル化生成物である油性化粧料用界面活性剤(比較例品2)460gを得た。得られたエステル化生成物のモノエステル体含有量は73質量%、未反応のポリグリセリン含有量は2.1%であった。
【0046】
<比較例品3>
攪拌機、温度計、ガス吹き込み管及び水分離器を取り付けた3Lの四つ口フラスコにポリグリセリンC667gとイソステアリン酸1633g及び苛性ソーダ12gを仕込み、窒素ガスを導入しつつ230℃に昇温し4時間反応を行い、酸価0.7の反応液2116gを得た。得られた反応液のうち1400gを減圧蒸留(210℃、5Pa)して未反応のグリセリンを除去した後、さらに減圧蒸留(220℃、0.1Pa)し、エステル化生成物である油性化粧料用界面活性剤(比較例品3)267gを得た。得られたエステル化生成物のモノエステル体含有量は92質量%、未反応のグリセリン含有量は3.2%であった。
【0047】
<比較例品4>
攪拌機、温度計、ガス吹き込み管及び水分離器を取り付けた3Lの四つ口フラスコにポリグリセリンA900gとラウリン酸1100g及び苛性ソーダ2gを仕込み、窒素ガスを導入しつつ230℃に昇温し4時間反応を行い、酸価0.6の反応1800gを得た。得られた反応液のうち1600gを減圧蒸留(210℃、5Pa)して未反応のポリグリセリンを除去した後、さらに減圧蒸留(210℃、1Pa)し、エステル化生成物である油性化粧料用界面活性剤(比較例品4)298gを得た。得られたエステル化生成物のモノエステル体含有量は88質量%、未反応のポリグリセリン含有量は3.5%であった。
【0048】
<比較例品5>
攪拌機、温度計、ガス吹き込み管及び水分離器を取り付けた1Lの四つ口フラスコにポリグリセリンB575gとイソステアリン酸425g及び苛性ソーダ0.5gを仕込み、窒素ガスを導入しつつ240℃に昇温し5時間反応を行い、酸価0.9のエステル化生成物である油性化粧料用界面活性剤(比較例品5)911gを得た。得られたエステル化生成物のモノエステル体含有量は38質量%、未反応のポリグリセリン含有量は15%であった。
【0049】
<実施例品3>
攪拌機、温度計、ガス吹き込み管及び水分離器を取り付けた3Lの四つ口フラスコにポリグリセリンD782gとイソステアリン酸1618g及び苛性ソーダ12gを仕込み、窒素ガスを導入しつつ230℃に昇温し4時間反応を行い、酸価0.5の反応液2205gを得た。得られた反応液のうち2000gを減圧蒸留(210℃、5Pa)して未反応のポリグリセリンを除去した後、さらに減圧蒸留(230℃、1Pa)し、エステル化生成物である油性化粧料用界面活性剤(実施例品3)298gを得た。得られたエステル化生成物のモノエステル体含有量は91質量%、未反応のポリグリセリン含有量は2.1%であった。
【0050】
<実施例品4>
攪拌機、温度計、ガス吹き込み管及び水分離器を取り付けた3Lの四つ口フラスコにポリグリセリンD838gとオレイン酸1162g及び苛性ソーダ11gを仕込み、窒素ガスを導入しつつ230℃に昇温し4時間反応を行い、酸価0.7の反応液1820gを得た。得られた反応液のうち1700gを減圧蒸留(210℃、5Pa)して未反応のポリグリセリンを除去した後、さらに減圧蒸留(260℃、1Pa)し、エステル化生成物である油性化粧料用界面活性剤(実施例品4)252gを得た。得られたエステル化生成物のモノエステル体含有量は88質量%、未反応のポリグリセリン含有量は4.5%であった。
【0051】
ここで、上記実施例品1~4及び比較例品1~5の油性化粧料用界面活性剤について、構成脂肪酸、ポリグリセリンの2量体の含有量、モノエステル体の含有量、未反応のポリグリセリンの含有量を表2に示す。
【0052】
【表2】
【0053】
[油性化粧料の作製及び評価]
(1)原材料
1)油剤
1-1)流動パラフィン(商品名:流動パラフィン;密度0.815~0.840g/mL(20℃);富士フイルム和光純薬社製)
1-2)2-エチルヘキサン酸セチル(商品名:NIKKOL CIO;日光ケミカルズ社製)
1-3)トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリル(商品名:アクターM1;理研ビタミン社製)
2)油性化粧料用界面活性剤
2-1)実施例品1~4
2-2)比較例品1~5
【0054】
(2)油性化粧料の作製方法
表3~5の配合組成に従って、各油剤に油性化粧料用界面活性剤(実施例品1~4及び比較例品1~5のうちいずれか)を80℃で混合し、室温で放冷して油性化粧料1~27を作製した。
【0055】
(3)保存安定性の評価
油性化粧料1~27を25℃の恒温機に1週間静置保管し、界面活性剤と3種類の油剤との相溶性を目視で確認し、下記基準に基づき保存安定性を評価した。結果を表3~5に示す。
<保存安定性の評価基準>
○:3種類の油剤の全てについて分離が見られず、均一透明である。
×:3種類の油剤のいずれかに少しながらのくすみや分離を生じている。
××:3種類の油剤のいずれかに明らかな濁りや分離を生じている。
【0056】
(4)水洗い性の評価
油性化粧料1~27を夫々0.4gを上腕部に塗布し、室温で30分間乾燥後、40℃の水道水で水洗いした時の油残り感を確認し、下記基準に基づき水洗い性を官能(皮膚への感触)で評価した。結果を表3~5に示す。
<水洗い性の評価基準>
◎:油残りを感じない。
○:わずかながらの油残り感がある。
×:油残り感が強い
××:油残り感が非常に強い。
【0057】
(5)眼刺激性の評価
油性化粧料1~27を夫々0.4g手のひらに取り、眼の周りに塗り広げた後、40℃の水道水で洗い流す際の眼への刺激性について下記基準に基づき官能で評価した。結果を表3~5に示す。
<眼刺激性の評価基準>
○:眼刺激を感じない。
×:眼刺激を感じる。
【0058】
【表3】
【0059】
【表4】
【0060】
【表5】
【0061】
表3~5の結果から明らかなように、実施例品1~4の界面活性剤を含有する本発明の油性化粧料1~12は、保存安定性、水洗い性及び眼刺激性の全てにおいて「〇」以上の評価を得た。一方、比較例品1~5の界面活性剤を含有する油性化粧料13~27は、保存安定性、水洗い性及び眼刺激性のいずれかにおいて「×」以下の結果であり、本発明の油性化粧料に比べて劣っていた。
【0062】
[その他油性化粧料の作製]
<油性化粧料aの作製>
表6の配合組成に従って、常法により各原材料を均一に混合し、実施例品1の界面活性剤を含有する油性化粧料a(クレンジングオイル)を作製した。
【0063】
【表6】
【0064】
<油性化粧料bの作製>
表7の配合組成に従って、常法により各原材料を均一に混合し、実施例品1の界面活性剤を含有する油性化粧料b(マッサージオイル)を作製した。
【0065】
【表7】
【0066】
以上の結果から、ポリグリセリンと炭素数が18の不飽和脂肪酸及び/又は分岐飽和脂肪酸とのエステル化生成物であり、かつ、下記条件(A)、(B)及び(C)を満たす本発明の界面活性剤は、保存安定性が高く、水洗い性に優れ、且つ眼刺激性が弱いものであった。本発明の界面活性剤は、油性化粧料への使用に好適であり、産業上利用可能性を有する。
(A)ポリグリセリンの2量体の含有量が85質量%以上
(B)モノエステル体の含有量が80質量%以上
(C)未反応のポリグリセリンの含有量が7質量%未満