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特開2024-68639繊維機械の作業ステーションのための精紡手段、ならびに繊維機械、および多数の作業ステーションを有する繊維機械の運転方法
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  • 特開-繊維機械の作業ステーションのための精紡手段、ならびに繊維機械、および多数の作業ステーションを有する繊維機械の運転方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068639
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】繊維機械の作業ステーションのための精紡手段、ならびに繊維機械、および多数の作業ステーションを有する繊維機械の運転方法
(51)【国際特許分類】
   D01H 13/00 20060101AFI20240513BHJP
   D01H 13/14 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
D01H13/00 Z
D01H13/14
D01H13/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023182672
(22)【出願日】2023-10-24
(31)【優先権主張番号】503026
(32)【優先日】2022-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
(71)【出願人】
【識別番号】518264859
【氏名又は名称】ザウラー スピニング ソリューションズ ゲー・エム・ベー・ハー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Saurer Spinning Solutions GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Carlstr. 60, 52531 Uebach-Palenberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケウター、フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】ヤコビンスキー、アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ギアリグス、イェンス
(72)【発明者】
【氏名】ミューラー、ロニー
【テーマコード(参考)】
4L056
【Fターム(参考)】
4L056AA02
4L056AA15
4L056AA19
4L056BC36
4L056BD01
4L056BD12
4L056BD74
4L056EA28
4L056FB01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】偽造されるおそれがなく、摩耗に強い精紡手段識別表示を有する精紡手段を提供する。
【解決手段】多数の作業ステーションを有する繊維機械の作業ステーション、特にロータ精紡機、空気精紡機またはリング精紡機のための精紡手段1であって、作業ステーションの精紡手段を識別および/または認証するための第1の精紡手段識別表示4を備える精紡手段において、第1の精紡手段識別表示が、精紡手段材料の、および/または前記精紡手段材料に塗布されたコーティングの、少なくとも1つの特定のセンサー検出可能な材料特性によって形成されている精紡手段であり、不適切な精紡手段による運転を防止する繊維機械の運転方法を提供するため、精紡手段の材料特性によって形成された第1の精紡手段識別表示がセンサー装置によって監視され、検知された材料特性に応じて、それぞれの作業ステーションの運転が遮断または制限されるように設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の作業ステーションを有する繊維機械の作業ステーション、特にロータ精紡機、空
気精紡機またはリング精紡機のための精紡手段(1)であって、作業ステーションの前記
精紡手段(1)を識別および/または認証するための第1の精紡手段識別表示を備える精
紡手段(1)において、
前記第1の精紡手段識別表示が、精紡手段材料の、および/または前記精紡手段材料に
塗布されたコーティングの、少なくとも1つの特定のセンサー検出可能な材料特性によっ
て形成されていることを特徴とする、精紡手段(1)。
【請求項2】
前記精紡手段材料および/または前記コーティングは、その中に入れられた信号発生固
体粒子を有していることを特徴とする、請求項1に記載の精紡手段(1)。
【請求項3】
前記固体粒子は、前記精紡手段(1)を識別および/または認証するために、所定の濃
度を有していることを特徴とする、請求項2に記載の精紡手段(1)。
【請求項4】
前記固定粒子は、感光法、分光法および/または画像検査法によって識別可能および/
または定量可能であることを特徴とする、請求項2または3に記載の精紡手段(1)。
【請求項5】
前記精紡手段材料に塗布された前記コーティングは、固体粒子と工業用ダイヤモンドの
相関比を有していることを特徴とする、請求項2から4のいずれか一項または複数項に記
載の精紡手段(1)。
【請求項6】
複数の個々の層から形成されたコーティングを有し、前記個々の層は異なる濃度の固体
粒子を有していることを特徴とする、請求項2から5のいずれか一項または複数項に記載
の精紡手段(1)。
【請求項7】
第2の精紡手段識別表示(4、5)を特徴とする、請求項1から6のいずれか一項また
は複数項に記載の精紡手段(1)。
【請求項8】
前記第2の精紡手段識別表示(4、5)は、光電子的および/または電子的に読取り可
能であることを特徴とする、請求項7に記載の精紡手段(1)。
【請求項9】
前記第2の精紡手段識別表示は、QRコードおよび/またはトランスポンダ、特にRF
IDチップ(5)を有することを特徴とする、請求項7または8に記載の精紡手段(1)
【請求項10】
多数の作業ステーションを備える繊維機械であって、前記作業ステーションがそれぞれ
第1の精紡手段識別表示を持つ交換可能な精紡手段(1)を有している繊維機械において

前記第1の精紡手段識別表示が、精紡手段材料の、および/または前記精紡手段材料に
塗布されたコーティングの、少なくとも1つの特定のセンサー検出可能な材料特性によっ
て形成されていること、前記繊維機械が、前記精紡手段材料の、および/または前記精紡
手段材料に塗布された前記コーティングの前記材料特性によって形成された識別および/
または認証のための前記第1の精紡手段識別表示を検出するように構成されているセンサ
ー装置を有することを特徴とする、繊維機械。
【請求項11】
前記精紡手段材料および/または前記コーティングが、その中に入れられた信号発生固
体粒子を有し、前記センサー装置は、前記固体粒子を検知するように構成されていること
を特徴とする、請求項10に記載の繊維機械。
【請求項12】
前記固体粒子は所定の濃度を有していること、前記センサー装置は、前記精紡手段(1
)を識別および/または認証するために前記固定粒子の濃度を検知するように構成されて
いることを特徴とする、請求項11に記載の繊維機械。
【請求項13】
多数の作業ステーションを備える繊維機械の運転方法であって、前記作業ステーション
がそれぞれ第1の精紡手段識別表示を持つ交換可能な精紡手段(1)を有している、繊維
機械の運転方法において、
精紡手段材料の、および/または前記精紡手段材料に塗布されたコーティングの材料特
性によって形成された前記第1の精紡手段識別表示がセンサー装置によって検知され、前
記精紡手段材料の、および/または前記精紡手段材料に塗布された前記コーティングの前
記検知された材料特性に応じて、それぞれの前記作業ステーションの運転が遮断または制
限されることを特徴とする、繊維機械の運転方法。
【請求項14】
前記センサー装置は、前記精紡手段材料中および/または前記精紡手段(1)に塗布さ
れたコーティング中の信号発生固体粒子を検知し、前記検知された固体粒子に応じて、そ
れぞれの前記作業ステーションの運転が遮断または制限されることを特徴とする、請求項
13に記載の繊維機械の運転方法。
【請求項15】
前記センサー装置は、前記精紡手段材料中および/または前記精紡手段(1)に塗布さ
れたコーティング中の前記信号発生固体粒子の濃度を検知し、前記検知された濃度に応じ
て、それぞれの前記作業ステーションの運転が遮断または制限されることを特徴とする、
請求項14に記載の繊維機械の運転方法。
【請求項16】
前記精紡手段(1)は、第2の精紡手段識別表示(4、5)を有しており、前記第2の
精紡手段識別表示(4、5)は前記センサー装置によって検知され、前記第1の精紡手段
識別表示と前記第2の精紡手段識別表示(4、5)に基づいて、前記精紡手段(1)が安
全上問題なしと検知される場合にのみ、精紡プロセスが開始されることを特徴とする、請
求項13から15のいずれか一項に記載の繊維機械の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の作業ステーションを有する繊維機械の作業ステーションのための精紡
手段に関し、この精紡手段は、作業ステーションの精紡手段を識別および/または認証す
るための第1の精紡手段識別表示を備えている。さらに、本発明は、交換可能な精紡手段
を備える多数の作業ステーションを備える繊維機械、および多数の作業ステーションを有
する繊維機械の運転方法にも関し、作業ステーションは、それぞれ1つの第1の精紡手段
識別表示を備える交換可能な紡績手段を有している。
【0002】
冒頭に述べた種類の精紡手段は、糸製造または糸加工に用いる繊維機械の個々の作業ス
テーションで使用され、さまざまな形態のものが先行技術から公知である。精紡手段は、
例えば粗糸またはロービングを開繊して個々の繊維にするために用いるコーミングローラ
のコーミングリング(Garniturringe)、ロータ式オープンエンド精紡機で使用される精
紡ロータ、ロータ式精紡機から糸を引き出すネーブル、または空気精紡機の精紡ノズルで
ある。精紡手段は、リング精紡機の精紡リングまたはリングトラベラーとしても構成され
ていてよい。空気精紡機またはリング精紡機のドラフトシステムのローラカバーも精紡手
段となる。精紡手段は糸または繊維と接触しており、糸の特性に影響を与える。このとき
、精紡手段は、繊維機械の該当する作業ステーションで交換可能に配置されているので、
これらの精紡手段は、例えば製造する糸に応じて、ならびに摩耗が生じた場合に交換する
ことができる。
【0003】
精紡手段への高い要件と、その結果生じる精紡手段コストの高騰により、繊維機械メー
カーの品質要件を満たしておらず、運転中に繊維機械の故障や損傷を引き起こすおそれの
ある偽造された粗悪な精紡手段が数多く提供されるようになった。先行技術から、作業ス
テーションにおいて精紡手段の識別および/または認証を可能にする精紡手段識別表示、
例えばバーコードやトランスポンダなどを純正精紡手段に取り付けることがすでに公知で
ある。従って、作業ステーションの制御装置に接続されている適切なセンサー装置により
、精紡手段を検知することが可能になるため、例えば精紡プロセスは、精紡手段が精紡認
識表示によって生産技術的に許容され、かつ安全技術上問題なしと見なされてからのみ開
始される。
【0004】
しかし、例えばバーコードまたはトランスポンダなど、精紡手段に着設された公知の精
紡手段識別表示でも、粗悪な精紡手段の使用を防ぐのに十分効果があるとは示されていな
い。
【0005】
本発明は、この点から出発して、特に偽造されるおそれがなく、摩耗に強い精紡手段識
別表示を有する精紡手段を提供するという課題に基づいている。さらに、本発明は、不適
切な精紡手段による運転を防止する繊維機械の運転方法を提供するという課題にも基づい
ている。
【0006】
本発明は、請求項1の特徴を備える精紡手段によって、交換可能な精紡手段を備えた多
数の作業ステーションを有する請求項10に記載の繊維機械によって、ならびに多数の作
業ステーションを有する繊維機械の、請求項13の特徴を備えた運転方法によって課題を
解決する。精紡手段の有利な発展形態は、従属請求項2から9に示されている。本発明に
よる方法の発展形態は、従属請求項14および15に記載されている。
【0007】
本発明に基づく精紡手段は、第1の精紡手段識別表示が、精紡手段材料の、および/ま
たは精紡手段材料に塗布されたコーティングの、少なくとも1つの特定のセンサー検出可
能な材料特性によって形成されていることを特徴としている。
【0008】
精紡手段は、例えばコーミングローラ、ロータ式オープンエンド精紡機の精紡ロータま
たはネーブルとして、ならびに空気精紡機の精紡ノズルとして、またはリング精紡機の精
紡リングまたはリングトラベラーとして、またはドラフトシステムのローラカバーとして
構成されていてよい。
【0009】
本発明によれば、精紡手段が製造されている精紡手段材料の、センサー検出可能な選択
された材料特性、および/または精紡手段の精紡手段材料に塗布されているコーティング
の、センサー検出可能な選択された材料特性は、精紡手段を識別および/または認証する
ために用いられる。このとき、識別/認証は、作業ステーションの制御装置に接続されて
いる定置式センサー装置または移動式センサーユニットによって行うことができる。
【0010】
本発明に基づく精紡手段認識表示により、純正部品認識、タイプ認識および/または精
紡手段の摩耗状態検出が可能になる。
【0011】
精紡手段または精紡手段に塗布されているコーティングの、好ましくは極めて簡単かつ
正確に検知可能な特定の材料特性を選択および使用することにより、通常は精紡手段の外
側に着設される外部の精紡手段識別表示を省略することが可能になる。というのも、識別
および/または認証が精紡手段自体の内在的特性から得られるからである。精紡手段を識
別または認証するための精紡手段識別表示を精紡手段に着設することを省略して、偽造さ
れた精紡手段の識別表示にそれらを使用できないようにすること以外に、本発明に基づく
精紡手段は、さらに、識別および/または認証に使用される材料特性が第三者から見えず
、かつ破損および摩耗から保護されているという利点を有している。
【0012】
センサー検出可能な材料特性は、例えば、精紡手段の製造に使用された精紡手段材料の
測定可能な電気抵抗であってよく、または精紡手段の明確な識別を可能にするコーティン
グの被膜厚さであってよい。精紡手段に塗布されている摩耗コーティングが運転中に減少
する場合、このコーティングの電気抵抗が摩耗によって変化するのを検知することで、さ
らに、精紡手段の摩耗状態の検知も可能になるため、保守または補修作業のタイミングを
早期に検知し、決定することができる。
【0013】
安全技術および生産技術に関連する純正部品認識の他に、精紡手段材料の、または精紡
手段材料に塗布されているコーティングの検出可能な材料特性により、さらに作業ステー
ションでの精紡手段のタイプ認識が可能になるため、これに対応するプロセスパラメータ
を自動的に精紡手段のタイプに適合させることができる。さらに、検出可能な材料特性は
、光学的精紡手段識別表示に比べ、可読性を悪化させる汚れまたは摩耗に対し影響を受け
難いという利点を有している。
【0014】
本発明のさらなる形態によれば、精紡手段材料および/またはコーティングは、その中
に入れられた信号発生固体粒子を有しており、この固体粒子は、精紡手段材料および/ま
たは精紡手段材料に塗布されているコーティングの検出可能な材料特性を決定するために
用いられる。精紡手段および/またはコーティングの製造材料に規定された量が投入され
る検出可能な固体粒子の使用により、識別可能および/または定量化可能な固体粒子を考
慮して、精紡手段を明確に識別することが可能になる。コーティングまたは精紡手段材料
に入れられた固体粒子は、簡単かつ確実に検出可能な精紡手段の材料特性を形成する。
【0015】
純正部品の認識には、固体粒子が存在することで十分である。つまり、固体粒子の存在
を検出できれば、それは純正部品ということになる。しかし、精紡手段材料および/また
はコーティングが、精紡材料の識別および/または認証のために、所定の濃度の固体粒子
を有していることは特に有利である。この濃度により、さらなる情報のコーディングが可
能である。例えば、固体粒子の濃度は、特定のタイプの精紡手段を示すことができる。精
紡手段のタイプを知っていることは、安全性に関連する。例えば、直径の大きな精紡ロー
タは、直径の小さな精紡ロータと同じ回転数で作動させてはならない。
【0016】
このとき、本発明の特に好ましい形態によれば、固定粒子は、感光法、分光法および/
または画像検査法によって識別可能および/または定量可能であるので、これらの固定粒
子は、簡便な仕方で、繊維機械の作業ステーションの制御装置に接続されたセンサー装置
によって検知することができ、精紡手段の識別は、固体粒子の光学的、光電子的または電
子的反射から生じる。作業ステーションに配置されているセンサー装置による固体粒子の
認識の他に、携帯型読取りユニットによっても固体粒子を検知することができる。固体粒
子の濃度から、例えば個々の精紡手段のタイプ、そのサイズ、製造年などを決定すること
が可能である。
【0017】
精紡手段は、しばしば摩耗保護のために工業用ダイヤモンドからなるコーティングを有
している。従って、本発明のさらなる実施形態によれば、精紡手段材料に塗布されたコー
ティングは、固体粒子と工業用ダイヤモンドの相関比を有するように設けられている。固
体粒子と工業用ダイヤモンドの比率は規定されていることから、固体粒子を連続して検知
することにより、これと同じように変化する精紡手段材料中の工業用ダイヤモンドの割合
も、非破壊で決定することができ、延いては精紡手段の摩耗状態の動的検知も可能になる
【0018】
精紡手段材料に塗布されるコーティングを使用する場合、例えば、精紡手段を形成する
ための母材には信号発生固体粒子を入れ、母材に塗布される摩耗コーティングについては
固体粒子なしで仕上げることが可能である。母材を覆う摩耗コーティングが存在する場合
、センサー装置によって固体粒子は検出されない。摩耗コーティングが摩耗してようやく
、母材内の信号発生固体粒子が検出され、摩耗コーティングの摩耗が示される。代替の形
態では、コーティングだけが固体粒子を備え、これにより、固体粒子がなくなることで摩
耗コーティングの摩耗を知らせるようにすることもできる。
【0019】
コーティングは、単一の層から構成されてよい。しかし、本発明のさらなる形態によれ
ば、複数の個々の層から形成されたコーティングを有するように設けられており、それら
の個々の層は異なる濃度の固体粒子を有している。本発明のこの形態により、固体粒子の
定量可能性に基づいて、個々の層における周知の固定粒子濃度によって精紡手段の摩耗度
を検出することが可能になり、これにより、精紡手段の摩耗検知を非常に正確に行うこと
ができるようになる。
【0020】
本発明のさらなる形態によれば、精紡手段が第2の精紡手段識別表示を有するように設
けられている。第2の精紡手段識別表示の使用により、いわゆる二要素認証の範囲内で精
紡手段を識別し、認証することができる。両方の精紡手段識別表示とそれらの組み合わせ
がポジティブに検出された場合にのみ、作業ステーションでの精紡手段の認証が行われる
。これにより、特に信頼性の高い仕方で、例えば、機械製造業者によって指定された精紡
手段が実際に作業ステーションに配置されている場合にのみ、運転または基本的な運転開
始に関する繊維機械で使用可能な情報が許可されるか、または概ね割り当て可能であるこ
とが保証される。
【0021】
センサー検出可能な材料特性による精紡手段識別は、第1の精紡手段識別表示として、
上述したように、精紡手段の純正部品、タイプ、または摩耗状態を識別するための様々な
可能性を提供する。第2の精紡手段識別表示により、精紡手段を繊維機械の運転データに
リンクすることが可能になる。これらのデータは、故障原因の特定および摩耗予測に用い
ることができる。
【0022】
特に有利には、このとき、第2の精紡手段識別表示は、光電子的および/または電子的
に読取り可能であり、特にQRコードおよび/またはトランスポンダ、好適にはRFID
チップによって形成されている。第2の精紡手段識別表示のこの形態により、第2の精紡
手段識別表示を特に簡単に無接触で検知することが可能になる。QRコードにより、精紡
手段の個別の識別表示が可能になる。これにより、繊維機械に保存されている運転データ
または生産データを、一意的に特定の精紡手段に割り当てることができる。同様のことが
RFIDチップにも当てはまる。代替的または追加的に、RFIDチップを使用した第2
の精紡手段識別表示により、例えば精紡手段データなどのさまざまな生産固有のデータの
保存ならびに呼出しが、RFIDチップ上で可能になる。
【0023】
それぞれが第1の精紡手段識別表示を持つ交換可能な精紡手段を有する多数の作業ステ
ーションが装備された本発明に基づく繊維機械の特徴は、第1の精紡手段識別表示が、精
紡手段材料の、および/または精紡手段材料に塗布されたコーティングの、少なくとも1
つの特定のセンサー検出可能な材料特性によって形成されていること、繊維機械が、精紡
手段の材料特性によって形成された識別および/または認証のための第1の精紡手段識別
表示を検出するように構成されているセンサー装置を有することである。
【0024】
このセンサー装置は、作業ステーションに配置することも、または作業ステーションに
沿って移動可能なサービスユニットに配置することもできる。
【0025】
本発明に基づく繊維機械の好適な実施形態によれば、精紡手段材料および/またはコー
ティングが、その中に入れられた信号発生固体粒子を有し、センサー装置は、固体粒子を
検知するように構成されている。
【0026】
本発明に基づく繊維機械の特に好適な実施形態によれば、固体粒子は所定の濃度を有し
ており、センサー装置は、精紡手段を識別および/または認証するために固定粒子の濃度
を検知するように構成されている。
【0027】
この実施形態では、精紡手段識別表示が、センサー装置によって検知される固体粒子の
濃度によって行われる。センサー装置は、固体粒子の濃度を検知することにより、摩耗状
態も検知することができる。固体粒子をコーティングに入れる場合、濃度の低下からコー
ティング厚さの減少を推察することが可能である。固体粒子を精紡手段材料の中に入れる
場合、コーティング摩耗が進んでからようやく、固体粒子が検知される。
【0028】
多数の作業ステーションを有する繊維機械を運転するための本発明に基づく方法であっ
て、作業ステーションがそれぞれ第1の精紡手段識別表示を持つ交換可能な精紡手段を有
している方法の特徴は、精紡手段材料の、および/または精紡手段材料に塗布されたコー
ティングの特定の材料特性によって形成された第1の精紡手段識別表示がセンサー装置に
よって検知され、検知された材料特性に応じて、それぞれの作業ステーションの運転が遮
断または制限されることである。このとき、材料特性は、作業ステーションの制御装置に
接続されているセンサー装置によって連続的に監視することができ、材料特性が規定され
た値に達すると、精紡プロセスが中断される。ここで、精紡プロセスとは、繊維機械のそ
れぞれの作業ステーションで実行される、糸製造および糸加工における製造プロエスであ
ると理解される。代替的または追加的に、材料特性の検知は、作業ステーションでの精紡
プロセスの開始前に行うことができ、値が該当する場合には、作業ステーションでの精紡
プロセスのスタートを阻止することができる。運転を完全に阻止するのではなく、制限だ
けを行うことも可能である。例えば精紡ロータの場合、この制限は、回転数を制限するこ
とであってよい。精紡手段識別表示に基づいて確認されるロータ径が大きいほど、回転数
は小さくなければならないだろう。
【0029】
本発明に基づく方法によれば、精紡手段の選択した材料特性は、精紡手段の運転可能状
態のための指標となる。材料特性が、精紡手段の性能欠如の指標である事前に規定された
値に達すると、作業ステーションの精紡プロセスは遮断または制限される。
【0030】
特に有利には、このとき、センサー装置は、精紡手段材料中および/または精紡手段に
塗布されたコーティング中の信号発生固体粒子を検知するために構成されており、センサ
ー装置に接続された制御装置は、検知された固体粒子に応じて、それぞれの作業ステーシ
ョンの運転を遮断または制限する。本発明に基づく方法の特に好適な形態によれば、セン
サー装置は、精紡手段材料中および/または精紡手段に塗布されたコーティング中の信号
発生固体粒子の濃度を検知し、検知された濃度に応じて作業ステーションの運転を遮断ま
たは制限する。
【0031】
本発明のこの形態において、固体粒子の濃度は選択された材料特性を表し、これにより
、特に信頼性の高い繊維機械の運転が可能となり、センサーで検知可能な固体粒子の割合
によって、精紡手段の運転状態が確実に検出される。固体粒子を精紡手段の母材の中に入
れ、固体粒子を含まないコーティングを母材に塗布した場合、固体粒子の検出は、例えば
摩耗層として用いたコーティングの損失を表すので、固体粒子の検出によって精紡手段の
性能欠如が示される。代替として、摩耗コーティングに固体粒子を入れ、精紡手段の母材
は固体粒子を含まない場合、固体粒子がなくなることにより、精紡プロセスの中断をもた
らす精紡手段の運転状態が示される。
【0032】
本発明のさらなる形態によれば、精紡手段が第2の精紡手段識別表示を有しており、こ
の第2の精紡手段識別表示はセンサー装置によって検知され、第1の精紡手段識別表示と
第2の精紡手段識別表示に基づいて、精紡手段が安全上問題なしと検知される場合にのみ
、精紡プロセスが開始されるように設けられている。
【0033】
本発明に基づく方法のこの形態によれば、運転開始は、第1の精紡手段識別表示と第2
の精紡手段識別表示の組み合わせによって、精紡手段がポジティブに検知された後にのみ
行われる。
【0034】
次に、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】精紡ロータとして構成されている精紡手段の第1の実施形態の図であり、第2の精紡手段識別表示の第1の実施形態がロータカップに配置されている。
図2】精紡ロータの第2の実施形態の図であり、第2の精紡手段識別表示の第2の実施形態がロータカップに配置されている。
【0036】
図1には、繊維機械の作業ステーション(ここでは図示されていない)の交換可能な精
紡手段として、例示的に精紡ロータ1が示されている。精紡ロータ1は、ロータカップ3
の外側2に、バーコード4として構成されている第2の精紡手段識別表示を有しており、
これは、例えば外側にエッチングされているか、またはレーザーによって着設されたもの
である。ここでは図示されていないが、代替として、図示されているバーコード4の代わ
りに、第2の精紡手段識別表示を形成するためにQRコードも使用することができる。
【0037】
図2は、精紡ロータ1の第2の実施形態を示し、ロータカップ3の外側2にRFIDチ
ップ5の形のパッシブトランスポンダを有している。このとき、RFIDチップ5は識別
のためだけではなく、さらに精紡ロータ固有の情報も含むことができ、それらの情報は、
繊維機械の制御装置(ここには示されていない)で処理することができる。代替として、
パッシブトランスポンダの代わりに、ここには図示されていないアクティブトランスポン
ダを使用することもでき、すなわち、このアクティブトランスポンダは独自の電源装置を
有し、これにより、トランスポンダがデータを受信および送信できる範囲が拡大する。
【0038】
さらなる特に好適な、図示されていない実施形態によれば、コードまたはトランスポン
ダが、ロータ底面に、特に精紡ロータ1の軸の正面に配置されている。
【0039】
本発明のさらなる実施例によれば、ロータカップ3がコーティングを有している。この
コーティングは、ロータカップ3の内側領域にわたって延在している。つまり、コーティ
ングは、ロータ溝、繊維滑り面および底面にまで塗布されている。さらに、コーティング
は、ロータカップ3の外側2にまで延在している。このコーティングには、固体粒子が混
合されている。
【0040】
センサー装置は、コーティング内の固体粒子濃度を検知する。本例によれば、濃度は0
.9%である。繊維機械の制御装置には、例えば、タイプAの精紡ロータが0.1%から
0.5%の固定粒子濃度を有することが保存されている。タイプBの精紡ロータは、0.
51%から1.0%の固体粒子濃度を持っている。すなわち、本例では、0.9%の測定
濃度に基づいて、タイプBの精紡ロータを検知することができる。
【0041】
ロータカップ3の内側領域は、精紡運転中、常に繊維と接触しているため、摩耗が生じ
やすい。これに対して、外側2はほとんど摩耗しない。摩耗ゾーンと非摩耗ゾーンにおけ
る固体粒子の濃度比較により、摩耗評価を行うことができる。
【符号の説明】
【0042】
1 精紡手段
2 外側
3 ロータカップ
4 バーコード
5 RFIDチップ
図1
図2