(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068648
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】カチオン性脂質及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07C 233/49 20060101AFI20240513BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240513BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240513BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20240513BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240513BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240513BHJP
A61K 31/711 20060101ALI20240513BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20240513BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20240513BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20240513BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240513BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240513BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240513BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240513BHJP
C12N 15/88 20060101ALI20240513BHJP
C07C 229/08 20060101ALI20240513BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20240513BHJP
【FI】
C07C233/49 CSP
A61K45/00 ZNA
A61K9/14
A61K47/14
A61K47/18
A61K31/7088
A61K31/711
A61K31/7105
A61K31/713
A61K47/24
A61K47/34
A61P35/00
A61P37/06
A61P31/00
C12N15/88 Z
C07C229/08
C12N15/113 Z
【審査請求】有
【請求項の数】31
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023189004
(22)【出願日】2023-11-06
(31)【優先権主張番号】63/423506
(32)【優先日】2022-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】508324396
【氏名又は名称】美洛生物科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】チェング, シャン・チュー
(72)【発明者】
【氏名】チェン, イー・アン
(72)【発明者】
【氏名】リン, シー・ラング
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4H006
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076CC07
4C076CC27
4C076CC31
4C076DD51
4C076DD52
4C076DD63
4C076DD70
4C076EE23
4C084AA17
4C084MA41
4C084NA13
4C084ZB081
4C084ZB082
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB311
4C084ZB312
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA05
4C086NA13
4C086ZB08
4C086ZB26
4C086ZB31
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB20
4H006AC46
4H006AC48
4H006AC52
4H006AC53
4H006AC80
4H006BN10
4H006BT12
4H006BU32
4H006BV22
(57)【要約】 (修正有)
【課題】細胞内に薬学的有効成分(API)(例えば、核酸)をカプセル化して効果的に送達するための新規で安全なカチオン性脂を提供する。
【解決手段】カチオン性脂質は、式(I)の構造を有し、
X及びYの少なくとも一方は-(C=O)CH
2NH
2であり、他方のX、Y及びZは-(C=O)CH
2NH
2、-[(C=O)CH
2NH](C=O)R
1、-(C=O)R
1及びHからなる群から独立して選択され、R
1はC
9-25アルキル又はC
13-21アルケニルである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
のカチオン性脂質であって、
X及びYの少なくとも一方は、-(C=O)CH
2NH
2であり、他方のX、Y及びZは、-(C=O)CH
2NH
2、-[(C=O)CH
2NH](C=O)R
1、-(C=O)R
1及びHからなる群から独立して選択され、R
1はC
9-25アルキル又はC
13-21アルケニルである、カチオン性脂質。
【請求項2】
X及びZは独立して-(C=O)CH2NH2であり、Yは-[(C=O)CH2NH](C=O)R1であり、R1はC13-21アルケニルである、請求項1に記載のカチオン性脂質。
【請求項3】
Xは-(C=O)CH2NH2であり、Y及びZは独立して-[(C=O)CH2NH](C=O)R1であり、R1はC13-21アルケニルである、請求項1に記載のカチオン性脂質。
【請求項4】
Yは-(C=O)CH2NH2であり、X及びZは独立して-(C=O)R1であり、R1はC13-21アルケニルである、請求項1に記載のカチオン性脂質。
【請求項5】
X及びZは独立して-(C=O)CH2NH2であり、Yは-(C=O)R1であり、R1はC13-21アルケニルである、請求項1に記載のカチオン性脂質。
【請求項6】
Xは-(C=O)CH2NH2であり、YはHであり、Zは-(C=O)R1であり、R1はC13-21アルケニルである、請求項1に記載のカチオン性脂質。
【請求項7】
式(I)の前記カチオン性脂質は、
【化2】
からなる群から選択される、請求項1に記載のカチオン性脂質。
【請求項8】
請求項1に記載のカチオン性脂質、非カチオン性脂質及び薬学的有効成分(API)を含む脂質ナノ粒子(LNP)。
【請求項9】
前記APIは、核酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、炭水化物、プロテオグリカン、糖タンパク質又はそれらの組合せである、請求項8に記載のLNP。
【請求項10】
前記核酸は、ミトコンドリアDNA(mtDNA)、葉緑体DNA(cpDNA)、プラスミド、メッセンジャーRNA(mRNA)、短鎖干渉RNA(siRNA)、リボソームRNA(rRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、マイクロRNA(miRNA)又はアプタマーである、請求項9に記載のLNP。
【請求項11】
前記miRNAは、前駆体miRNA又は成熟miRNAである、請求項10に記載のLNP。
【請求項12】
前記カチオン性脂質は、
【化3】
からなる群から選択され、前記APIは、配列番号1の配列を備える前記miRNAである、請求項8に記載のLNP。
【請求項13】
前記miRNAは、配列番号2、3、4又は5の配列を有する、請求項12に記載のLNP。
【請求項14】
前記カチオン性脂質は、
【化4】
であり、前記APIは、配列番号6又は7の配列を有する前記siRNAである、請求項8に記載のLNP。
【請求項15】
前記非カチオン性脂質の各々は、ヘルパー脂質、リン脂質、PEG化脂質、PEG化リン脂質及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項8に記載のLNP。
【請求項16】
前記ヘルパー脂質は、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)又はジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)である、請求項15に記載のLNP。
【請求項17】
前記ヘルパー脂質はDSPCである、請求項16に記載のLNP。
【請求項18】
前記カチオン性脂質及び前記非カチオン性脂質は、それぞれ1:5~5:1のモル比で前記LNP中に存在する、請求項8に記載のLNP。
【請求項19】
コレステロール、ラノステロール、エルゴステロール、フィトステロール、スチグマステロール及びブラジカステロールからなる群から選択されるステロイドをさらに含む請求項8に記載のLNP。
【請求項20】
前記ステロイドはコレステロールである、請求項19に記載のLNP。
【請求項21】
それを必要とする被検体における疾患を処置するための、請求項8に記載のLNPを含む薬学的組成物。
【請求項22】
前記疾患は、癌、感染性疾患又は自己免疫疾患である、請求項21に記載の薬学的組成物。
【請求項23】
前記癌は、膀胱癌、骨癌、骨髄癌、脳癌、乳癌、胆管癌、結腸癌、食道癌、消化器癌、歯肉癌、頭頸部癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、上咽頭癌、白血病、リンパ腫、卵巣癌、前立腺癌、皮膚癌、胃癌、精巣癌、舌癌及び子宮癌からなる群から選択される、請求項22に記載の薬学的組成物。
【請求項24】
前記癌は前記肺癌であり、前記カチオン性脂質は、
【化5】
からなる群から選択され、前記APIは配列番号1の配列を備えるmiRNAである、請求項23に記載の薬学的組成物。
【請求項25】
前記miRNAは、配列番号2、3、4又は5の配列を有する、請求項24に記載の薬学的組成物。
【請求項26】
前記癌は前記肺癌であり、前記カチオン性脂質は、
【化6】
であり、前記APIは、配列番号6又は7の配列を有するsiRNAである、請求項23に記載の薬学的組成物。
【請求項27】
前記被検体はヒトである、請求項21に記載の薬学的組成物。
【請求項28】
培養細胞内にAPIを送達する方法であって、前記培養細胞を有効量の請求項8に記載のLNPと接触させるステップを備え、前記APIは、核酸、ポリペプチド、タンパク質、炭水化物、プロテオグリカン、糖タンパク質又はそれらの組合せである、方法。
【請求項29】
前記核酸は、ミトコンドリアDNA(mtDNA)、葉緑体DNA(cpDNA)、プラスミド、メッセンジャーRNA(mRNA)、短鎖干渉RNA(siRNA)、リボソームRNA(rRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、マイクロRNA(miRNA)又はアプタマーである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記miRNAは、前駆体miRNA又は成熟miRNAである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記培養細胞は、幹細胞、免疫細胞又はそれらの組合せである、請求項28に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2022年11月8日に出願された米国仮特許出願第63/423,506号の優先権及び利益を主張し、その内容が参照によりここに取り込まれる。
【0002】
本開示は、治療薬の送達を増強するための新規カチオン性脂質及びそれらの使用に関する。より具体的には、本開示は、細胞内に核酸をカプセル化して送達するためのカチオン性脂質及びそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
遺伝子療法は、宿主細胞内に外来のゲノム物質を導入して治療効果を引き出す処理である。DNA、プラスミド型干渉核酸、RNA干渉(RNAi)における使用のための短鎖干渉核酸、アンチセンス分子及びアプタマーを含む様々なタイプの核酸が、現在、遺伝子療法における治療薬として開発されている。一方、2つの主要な送達システムであるウイルス性及び非ウイルス性システムも、前述の治療薬を安定的かつ長い半減期の形態でカプセル化して送達するために開発されている。
【0004】
数十年来、多数のウイルス性及び非ウイルス性遺伝子送達システムが利用可能であるが、それらの各々は何らかの形で制限されている。例えば、ウイルス性送達システムは、それらの高いトランスフェクション効率では有利であるが、それらにはいくつかの生物学的安全性の懸念がある。非ウイルス性送達システム(例えば、ポリマー、脂質、リポソーム、ミセル、デンドリマー及びナノ材料)は、レシピエントの免疫システムに影響することなく、様々なサイズの核酸をカプセル化するそれらの能力において非常に汎用性が高く、一方で、それらのトランスフェクション効率は未だ改善されていない。
【0005】
リポプレックスは、核酸及びカチオン性脂質の間の複合体として定義され、現在までに最も研究されている非ウイルス性送達システムのうちの一つとなっている。リポフェクタミンは、慣例的に利用可能なカチオン性脂質であるが、その成分のうちの一つであるDOSPA(2,3-ジオレオイルオキシ-N-[2(スペルミンカルボキサミド)エチル]-N,N-ジメチル-1-プロパニミニウムトリフルオロアセテート)(2,3-dioleoyloxy-N-[2(sperminecarboxamido)ethyl]-N,N-dimethyl-1-propaniminium trifluoroacetate)は、遺伝子トランスフェクションの間に高い細胞毒性を有することが報告されている。
【0006】
前述に鑑み、関連技術において、細胞内に治療薬を効果的に送達するための新規で安全なカチオン性脂質のニーズが存在する。
【発明の概要】
【0007】
以下に、基本的な理解を読者に与えるために本開示の簡略化した概要を提示する。この概要は、開示の網羅的な概観ではなく、本発明の鍵となる/重要な要素を特定するものでも本発明の範囲を記するものでもない。その専らの目的は、ここに開示される幾つかの概念を、後述のさらに詳細な説明の序章としての簡略な形態で提示することである。
【0008】
本開示は、細胞内に核酸をカプセル化して送達するための新規のカチオン性脂質及びそれらの組成物を提供する。本カチオン性脂質及び/又は組成物の使用を介した疾患の処置もここに開示される。
【0009】
一態様では、本開示は、以下に示す式(I)のカチオン性脂質に向けられる。
【化1】
【0010】
本式では、X及びYの少なくとも一方は、-(C=O)CH2NH2であり、他方のX、Y及びZは、-(C=O)CH2NH2、-[(C=O)CH2NH](C=O)R1、-(C=O)R1及びHからなる群から独立して選択され、R1はC9-25アルキル又はC13-21アルケニルである。
【0011】
本開示のいくつかの実施形態によると、式(I)では、X及びZは独立して-(C=O)CH2NH2であり、Yは-[(C=O)CH2NH](C=O)R1であり、R1はC13-21アルケニルである。
【0012】
本開示の他の実施形態によると、式(I)では、Xは-(C=O)CH2NH2であり、Y及びZは独立して-[(C=O)CH2NH](C=O)R1であり、R1はC13-21アルケニルである。
【0013】
本開示のさらなる実施形態によると、式(I)では、Yは-(C=O)CH2NH2であり、X及びZは独立して-(C=O)R1であり、R1はC13-21アルケニルである。
【0014】
本開示のさらに他の実施形態によると、式(I)では、X及びZは独立して-(C=O)CH2NH2であり、Yは-(C=O)R1であり、R1はC13-21アルケニルである。
【0015】
本開示のさらなる実施形態によると、式(I)では、Xは-(C=O)CH2NH2であり、YはHであり、Zは-(C=O)R1であり、R1はC13-21アルケニルである。
【0016】
好ましくは、式(I)のカチオン性脂質のサブセットは、
【化2】
からなる群から選択される。
【0017】
本開示の他の態様は、本カチオン性脂質、非カチオン性脂質及び薬学的有効成分(API)を含む脂質ナノ粒子(LNP)に向けられる。
【0018】
本開示のいくつかの実施形態によると、本LNPに配置されるAPIは、核酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、炭水化物、プロテオグリカン、糖タンパク質又はそれらの組合せであり得る。
【0019】
本LNPでの使用に適した核酸の例は、ミトコンドリアDNA(mtDNA)、葉緑体DNA(cpDNA)、プラスミド、メッセンジャーRNA(mRNA)、短鎖干渉RNA(siRNA)、リボソームRNA(rRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、マイクロRNA(miRNA)及びアプタマーを含むが、これらに限定されない。好ましくは、miRNAは、前駆体miRNA又は成熟miRNAである。
【0020】
本開示のいくつかの好適な実施形態では、本LNPにおいて、カチオン性脂質は、
【化3】
からなる群から選択されてもよく、APIは、配列番号1の配列を備えるmiRNAである。効果的な実施形態では、本miRNAは、配列番号2、3、4又は5の配列を有する。
【0021】
本開示の他の好適な実施形態では、本LNPにおいて、カチオン性脂質は、
【化4】
であり、APIは、配列番号6又は7の配列を有するsiRNAである。
【0022】
本開示のいくつかの実施形態によると、本LNPに含まれる非カチオン性脂質は、ヘルパー脂質、リン脂質、PEG化脂質、PEG化リン脂質又はそれらの組合せであり得る。本開示での使用に適したヘルパー脂質の例は、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(dioleoylphosphatidylethanolamine)(DOPE)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(dipalmitoylphosphatidylcholine)(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(distearoylphosphatidylethanolamine)(DSPE)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(dimyristoylphosphatidylethanolamine)(DMPE)及びジステアロイルホスファチジルコリン(distearoylphosphatidylcholine)(又は1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(1,2-distearoyl-sn-glycero-3-phosphocholine)、DSPC)を含むが、これらに限定されない。本開示の実施形態によると、本LNPに含まれる非カチオン性脂質は、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)のヘルパー脂質である。
【0023】
本開示のいくつかの実施形態によると、カチオン性脂質及び非カチオン性脂質は、それぞれ1:5~5:1のモル比でLNP中に存在する。
【0024】
代替的又は任意選択的な実施形態では、本LNPは、ステロイドをさらに含む。本LNPでの使用に適したステロイドの例は、コレステロール、ラノステロール、エルゴステロール、フィトステロール、スチグマステロール及びブラジカステロールを含むが、これらに限定されない。効果的な一実施例では、本LNPは、コレステロールをさらに含む。
【0025】
本開示の他の態様は、有効量の上述したLNPを被検体に投与するステップを備える、それを必要とする被検体における疾患を処置する方法に向けられる。
【0026】
本開示の実施形態によると、疾患は、癌、感染性疾患又は自己免疫疾患であり得る。
【0027】
本方法によって処置可能な癌の例は、膀胱癌、骨癌、骨髄癌、脳癌、乳癌、胆管癌、結腸癌、食道癌、消化器癌、歯肉癌、頭頸部癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、上咽頭癌、白血病、リンパ腫、卵巣癌、前立腺癌、皮膚癌、胃癌、精巣癌、舌癌及び子宮癌を含むが、これらに限定されない。
【0028】
本開示のいくつかの好適な実施形態では、疾患が肺癌の場合、本LNPは、
【化5】
からなる群から選択されるカチオン性脂質を含み、APIは配列番号1の配列を備えるmiRNAである。好ましくは、miRNAは、配列番号2、3、4又は5の配列を有する。
【0029】
他の好適な実施形態では、疾患が肺癌の場合、本LNPは、
【化6】
のカチオン性脂質を含み、APIは、配列番号6又は7の配列を有するsiRNAである。
【0030】
本開示のいくつかの実施形態によると、被検体はヒトである。
【0031】
本開示のさらに他の態様は、培養細胞内にAPIを送達する方法であって、培養細胞を有効量の上述したLNPと接触させるステップを備え、APIは、核酸、ポリペプチド、タンパク質、炭水化物、プロテオグリカン、糖タンパク質又はそれらの組合せである、方法に向けられる。
【0032】
本方法での使用に適した核酸の例は、ミトコンドリアDNA(mtDNA)、葉緑体DNA(cpDNA)、プラスミド、メッセンジャーRNA(mRNA)、短鎖干渉RNA(siRNA)、リボソームRNA(rRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、マイクロRNA(miRNA)及びアプタマーを含むが、これらに限定されない。好ましくは、miRNAは、前駆体miRNA又は成熟miRNAである。
【0033】
本方法での使用に適した培養細胞の例は、多能性幹細胞及び免疫細胞を含むが、これらに限定されない。
【0034】
本開示の付随する特徴及び有利な効果の多くは、添付図面との関連で検討される以下の詳細な説明を参照してより深く理解されることになる。
【0035】
本説明は、添付図面に照らして読まれる以下の詳細な説明からより深く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態による、本カチオン性脂質によって構成されたリポソームから抽出されたDNA断片のレベルを明らかにするアガロースゲル電気泳動の写真である。
【
図2A】
図2Aは、本開示の一実施形態による、様々な濃度のsiRNAを含む本脂質ナノ粒子(LNP)と共培養した後のA549細胞から放出される蛍光強度を示すフローサイトメトリーヒストグラムである。
【
図2B】
図2Bは、本開示の一実施形態による、様々な濃度のsiRNAを含む本脂質ナノ粒子(LNP)と共培養した後のNCI-H460細胞から放出される蛍光強度を示すフローサイトメトリーヒストグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
添付図面との関連で以下に与えられる詳細な説明は、本実施例の説明としてのものであり、本実施例が構成又は利用され得る唯一の形態を示すものではない。その説明は、実施例の機能及び実施例を構成して動作させるためのステップの配列を説明する。ただし、同一又は同等の機能及び配列が、異なる実施例によっても実現され得る。
【0038】
1.定義
便宜上、明細書、実施例及び添付の特許請求の範囲で採用される特定の用語をここにまとめる。特に断りのない限り、ここに用いられるすべての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同様の意味を有する。
【0039】
単数形「a」、「an」及び「the」は、そうでないことを文脈が明示しない限り、複数の参照を含むものとしてここでは用いられる。
【0040】
ここで用いられる用語「アルキル」は、9~25個の炭素原子を含む、直鎖又は分岐炭化水素基をいう。本発明での使用に適したC9-25アルキルの例は、ノニル、デシル、ウンデシル(同様にヘンデシル)、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、イコシル、ヘンエイコシル(同様にヘンイコシル)、ドコシル、トリコシル、テトラコシル及びペンタコシルを含む。
【0041】
用いられる用語「アルケニル」は、13~21個の炭素原子及び1以上の二重結合を含む、長い直鎖炭化水素基をいう。本発明での使用に適したC13-21アルケニルの例は、トリデセニル、テトラデセニル、ペンタデセニル、ヘキサデセニル、ヘプタデセニル、オクタデセニル、ノナデセニル、イコセニル及びヘンエイコセニル(同様にヘンイコセニル)を含む。一般に、アルケンにおける炭素原子(C)及び二重結合(D)の総数は、14:1、16:1、18:1、18:2、18:3、20:4又は20:5などの「C:D」の数字記号によってそれぞれ表される。
【0042】
本文書で用いられる用語「薬学的有効成分(active pharmaceutical ingredient)(API)」は、それによって被検体における疾患及び/又は状態が遅延、改善、阻害又は予防され得る、医薬、薬剤、組成物、ワクチン及び/又は薬学的生成物の形態として又はその形態の一部として生物学的に活性である成分をいう。本開示での使用に適したAPIの例は、核酸、ポリペプチド、タンパク質、炭水化物、プロテオグリカン、糖タンパク質及びそれらの組合せを含むが、これらに限定されない。
【0043】
ここで用いられるように、用語「カチオン性脂質」は、1以上の脂肪酸又は脂肪アルキル鎖を有し、極性頭部基中に存在する1以上のアミンを通じて正電荷を獲得する脂質のものをいう。カチオン性脂質は、通常、そのpKa未満のpHでプロトン化(すなわち、正に帯電)する。
【0044】
ここで用いられるように、用語「非カチオン性脂質」は、中性脂質又はアニオン性脂質などの正電荷を所有しない脂質をいう。本開示の実施形態によると、用語「非カチオン性脂質」は、LNPの構造を安定化し、それによりLNPによって担持されるAPIの送達を増強することが知られている「ヘルパー脂質」を包含することも意図する。ヘルパー脂質はまた、API(例えば、核酸)のカプセル化を最適化し、それらを分解から保護し、それらの標的細胞内への輸送を容易にするのに役立つ。本開示での使用に適したヘルパー脂質の例は、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)及びジステアロイルホスファチジルコリン(又は1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、DSPC)を含むが、これらに限定されない。
【0045】
ここで用いられるように、用語「ステロイド」は、二重結合を有さない四環式炭化水素であるゴナン又はシクロペンタノペルヒドロフェナントレンのコア構造(すなわち、ステロイド核)に由来する化学物質のクラスをいう。本LNPの形成での役割を果たすステロイドの例は、コレステロール、ラノステロール、エルゴステロール、フィトステロール、スチグマステロール及びブラジカステロールを含むが、これらに限定されない。
【0046】
ここで用いられる用語「マイクロRNA」又は「miRNA」は、遺伝子発現を調節する役割を果たす非コードRNAのクラスをいう。大部分のmiRNAは、DNA配列から一次miRNA(pri-miRNA)に転写され、前駆体miRNA(pre-miRNA)及び最終的に成熟miRNAにプロセシングされる。したがって、ここで用いられる用語「miRNA」は、miRNAのプロセシング及び成熟に関与するすべての非コードRNAをいい、好ましくは前駆体miRNA及び成熟miRNAを含む。
【0047】
ここで用いられる用語「感染性疾患」は、通常、発熱、炎症、上気道症状、下痢等などの急性症状を引き起こす細菌、ウイルス、真菌又は寄生虫などの病原体によって引き起こされる障害をいう。
【0048】
用語「被検体」又は「患者」は、ここでは互換可能に用いられ、本カチオン性脂質内のAPIによって処置可能なヒト種を含む哺乳類を意味するように意図される。用語「哺乳類」は、ヒト、霊長類(例えば、サル及びチンパンジー)、ウサギ、ブタ、ヤギ、ヒツジ及びウシなどの飼育動物及び家畜、その他動物園、競技用又はペット用動物(例えば、ウマ、イヌ、ネコなど)並びにマウス、ラット、モルモット及びハムスターなどの齧歯類を含む哺乳動物網のすべてのメンバーをいう。効果的な実施例では、被検体はヒトである。さらに、用語「被検体」又は「患者」は、一方の性別が具体的に示されていない限り、雄及び雌の双方の性別をいうことを意図している。
【0049】
2.好適な実施形態の詳細な説明
本開示は、いくつかの新規のカチオン性脂質が細胞内へのポリヌクレオチドの送達のためのビヒクルとして作用し得るという発見に、少なくともある程度基づく。したがって、本開示は、治療薬の送達のためのビヒクルとして作用する新規のカチオン性脂質及びその組成物を提供する。本カチオン性脂質及び/又は組成物の使用による疾患の処置も、ここに開示される。
【0050】
2.1 本開示のカチオン性脂質
本開示は、治療薬を送達するための新規のカチオン性脂質及びそれを含む組成物を提供することを目的とする。一態様では、本発明は、式(I)のカチオン性脂質に関し、
【化7】
X及びYの少なくとも一方は、-(C=O)CH
2NH
2であり、他方のX、Y及びZは、-(C=O)CH
2NH
2、-[(C=O)CH
2NH](C=O)R
1、-(C=O)R
1及びHからなる群から独立して選択され、R
1はC
9-25アルキル又はC
13-21アルケニルである。
【0051】
いくつかの実施形態では、R1はC9-25アルキルであり、好適な実施形態では、R1はC11-23アルキルであり、他の好適な実施形態では、R1はC13-21アルキルであり、さらに他の好適な実施形態では、R1はC15-19アルキルである。いくつかの効果的な実施例では、R1はC15アルキルである。
【0052】
他の実施形態では、R1はC13-21アルケニルであり、好適な実施形態では、R1はC15-19アルケニルである。いくつかの効果的な実施例では、R1はC15アルケニルであり、他の効果的な実施例では、R1はC17アルケニルである。
【0053】
式(I)の例示的な化合物は、
【化8】
(化合物6,TGG-リノ-ル酸(TGG-linoleic acid))、
【化9】
(化合物9、TGG-ジ(リノール酸)(TGG-di(linoleic acid)))、
【化10】
(化合物11、DGG-リノール酸(DGG-linoleic acid))、
【化11】
(化合物14、MGG-ジ(リノール酸)(MGG-di(linoleic acid)))、
【化12】
(化合物18、MGG-リノール酸(MGG-linoleic acid))、
【化13】
(化合物22、TGG-ジ(パルミトレイン酸)(TGG-di(palmitoleic acid)))又は
【化14】
(化合物24、TGG-パルミトレイン酸(TGG-palmitoleic acid))である。
【0054】
本開示のカチオン性脂質は、効果的な実施例に記載された手順により調製され得る。簡潔には、まずグリシンのアミノ基(NH2)をフェナシル(PAc)基又はtert-ブチルオキシカルボニル(tert-butyloxycarbonyl)(Boc)基などの保護基によって保護する。そして、グリセロールの少なくとも1つの水酸基とグリシンのカルボキシル基との間に生じる縮合反応(すなわち脱水)を介して、PAc-又はBoc保護されたグリシンの少なくとも1つがグリセロールと連結する。最後に、1つ又は2つの脂肪酸を、グリセロールの残りの水酸基と連結して、本カチオン性脂質を形成する。代替的な実施形態によると、脂肪酸のカルボキシル基とグリシンのアミノ基との間に生じる縮合反応は、それらの間にアミノ結合を生じさせ、それにより、後続のグリセロールの水酸基との反応のための遊離カルボキシル基を有する中間化合物を生成し、したがって、本発明の最終的なカチオン性脂質生成物を生成する。本カチオン性脂質化合物を生成するための詳細な反応条件及び化学薬剤は、本開示の趣旨から逸脱することなく当業者によって変更され得る。
【0055】
式(I)の本化合物の生成での使用に適した脂肪酸の例は、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノール酸、リノエライジン酸、α-リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸及びドコサヘキサエン酸を含むが、これらに限定されない。効果的な実施例では、式(I)の本化合物の生成で用いられる脂肪酸は、パルミトレイン酸又はリノール酸である。
【0056】
エナンチオマー及びジアステレオマー形態を含む式(I)の化合物の各X、Y及びZ置換基における不斉炭素により存在し得るものなどの本化合物のすべての立体異性体は、本発明の範囲内であると考えられる。
【0057】
2.2 脂質ナノ粒子
患者の細胞内への、生物学的に活性な治療用分子の細胞内送達を容易とする、新規の脂質ナノ粒子(LNP)もここに開示される。
【0058】
本開示の実施形態によると、脂質ナノ粒子(LNP)は、上記の式(I)のカチオン性脂質、非カチオン性脂質及び薬学的有効成分(API)を含む。本LNPを構成するのに適した非カチオン性脂質の例は、ヘルパー脂質、リン脂質、PEG化脂質、PEG化リン脂質及びそれらの組合せを含むが、これらに限定されない。本開示での使用に適したヘルパー脂質の例は、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)及びジステアロイルホスファチジルコリン(又は1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、DSPC)を含むが、これらに限定されない。本開示の実施形態によると、本LNPに含まれる非カチオン性脂質は、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)のヘルパー脂質である。本開示での使用に適したPEG化脂質の例は、ジエチレングリコールに結合されたPEG(DEG-PEG)(例えば、1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000(1,2-dimyristoyl-rac-glycero-3-methoxypolyethylene glycol-2000)(DEG-PEG2000))、ジアルキルオキシプロピルに結合されたPEG(PEG-DAA)(例えば、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE))、ジアシルグリセロールに結合されたPEG(PEG-DAG)(例えば、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000](1,2-dioleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine-N-[methoxy(polyethylene glycol)-2000])(DOPE-PEG2000))、ホスファチジルエタノールアミンに結合されたPEG(PEG-PE)(例えば、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000](1,2-distearoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine-N-[methoxy(Polyethylene Glycol)-2000])、DSPE-PEG2000)及びそれらの組合せを含むが、これらに限定されない。効果的な一実施例では、PEG化脂質は、DEG-PEG2000である。
【0059】
本開示の実施形態によると、本カチオン性脂質及び非カチオン性脂質は、1:5、1:4.5、1:4、1:3.5、1:3、1:2.5、1:2、1:1.5、1:1、1.5:1、2:1、2.5:1、3:1、3.5:1、4:1、4.5:1又は5:1などの1:5~5:1のモル比でLNP中に存在する。いくつかの効果的な実施例では、本カチオン性脂質及び非カチオン性脂質は、1:1のモル比でLNP中に存在する。代替的な効果的な実施例では、本カチオン性脂質及び非カチオン性脂質は、約4.3:1のモル比でLNP中に存在する。
【0060】
代替的に又は追加的に、本LNPは、LNPの構造を安定化するのに役立つステロイドをさらに含み得る。本LNPを構成するのに適したステロイドの例は、コレステロール、ラノステロール、エルゴステロール、フィトステロール、スチグマステロール及びブラジカステロールを含むが、これらに限定されない。好ましくは、本LNPは、コレステロールをさらに含む。
【0061】
本開示のいくつかの実施形態によると、各LNPは、カチオン性(例えば、式(I)の少なくとも1つの化合物)及び非カチオン性脂質の双方からなる脂質2重層によって封入された親水性のコア並びに任意選択的に脂質2重層内に埋め込まれたステロイド及び/又はヘルパー脂質を有し、したがって、本来は疎水性であるAPIは、脂質2重層の間の疎水性領域の間に挿入されるが、本来は親水性であるAPIは、親水性コア内に配置され得る。他の実施形態では、上記に示すように脂質2重層によって封入された親水性コアを有するかわりに、各LNPは、その中により小さい複数の逆ミセルが封入されたミセルの構造となる。ミセルは、脂質の親水性頭部基は外向きであるが、脂質の疎水性尾部が中心に向かって延びている脂質(例えば、本開示のカチオン性及び非カチオン性脂質)の単層によって封入された疎水性コアを有する。さらに、ミセルよりもサイズが小さい複数の逆ミセルが、ミセルの疎水性コア内に封入されてもよく、なお、用語「逆ミセル」は、脂質の疎水性尾部は外へ延びるが脂質の頭部基は中心にあるミセルをいう。したがって、親水性API(例えば、核酸)は、逆ミセルの親水性コアの内側に配置され得る。
【0062】
本LNPは、薄層水和、エタノール注入、マイクロ流体装置などを含む、当技術分野で周知の手順及び/又はツールを介して生成されてもよく、カチオン性脂質(すなわち、式(I)の化合物)、非カチオン性脂質及び任意選択的にステロイドは、自己組織化して脂質2重層を形成し、APIは、LNP内に直接カプセル化されることもあれば、LNP内にカプセル化される前にカチオン性脂質に結合されることもあり、それにより、ナノ粒子、リポソーム又はミセルの形態の複合体を生成し得る。液体又は固体のいずれかの形態で本LNPによって送達されるAPIは、核酸、ポリペプチド、タンパク質、抗体、炭水化物、プロテオグリカン、糖タンパク質、小分子又はそれらの組合せであり得る。
【0063】
本開示のいくつかの実施形態では、APIは、ミトコンドリアDNA(mtDNA)、葉緑体DNA(cpDNA)、プラスミド、メッセンジャーRNA(mRNA)、短鎖干渉RNA(siRNA)、リボソームRNA(rRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、マイクロRNA(miRNA)又はアプタマーを含むがこれらに限定されない核酸である。好適な実施形態では、APIは、miRNA又はsiRNAである。miRNAの例は、前駆体miRNA又は成熟miRNAを含むが、これらに限定されない。いくつかの効果的な実施例では、本カチオン性脂質を介してカプセル化されて送達されるmiRNAは配列番号1の配列を備え、より好ましくは、miRNAは配列番号2、3、4又は5の配列を有する。他の効果的な実施例では、本カチオン性脂質を介して送達されるのに用いられるsiRNAは、配列番号6又は7の配列を有する。いくつかの代替的な実施形態では、APIは、プラスミドである。
【0064】
2.3 本カチオン性脂質の使用を介した処置
式(I)のカチオン性脂質及びその脂質ナノ粒子は、生物学的な活性薬剤の送達に有用であり、したがって、それらは疾患の処置に用いられ得る。したがって、本開示は、それを必要とする被検体における疾患を処置する方法を包含する。方法は主に、有効量の組成物(すなわち、式(I)の化合物から構成された脂質ナノ粒子(LNP))を被検体に投与するステップを含む。
【0065】
式(I)のカチオン性脂質を含む本脂質ナノ粒子は、粉末、顆粒、溶液若しくは懸濁液、坐剤又は貼付剤に処方されてもよく、そのような製剤を投与又は非経口投与して、適切な又は所望の作用部位及び病変部位に有効成分を効果的に輸送し得る。本開示によると、本脂質ナノ粒子は、被検体の病変(例えば、腫瘍)に非経口投与され得る。例示的な適切な非経口経路は、経皮(transdermal)、経皮(percutaneous)、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、硬腔内、脳室内、真皮内、皮下、直腸、膣内及び腹腔内経路を含むが、これらに限定されない。適切な経路は、当業者によって認識されるように、処置される特定の状態、状態の重篤度、年齢、体調、体格、性別及び体重を含む個々の患者パラメータ、処置の期間、(ある場合には)併用療法の性質、有効成分の投与量及び性質、遺伝的要因並びに医療従事者の知識及び専門技能の範囲内の同様の要因に応じて変化する。これらの要因は、当業者には周知であり、定型的な実験だけで対応され得る。一般に、最も適切な投与経路は、循環システムの環境における薬剤の安定性及び/又は被検体の状態(例えば、被検体の肺がんの重篤度又は被検体が慣例的な処置に耐え得る否か)を含む様々な要因に依存する。本開示のいくつかの実施形態によると、本脂質ナノ粒子は、非経口投与のための注射製剤に処方される。本開示の他の実施形態によると、本脂質ナノ粒子は、経皮投与のための貼付剤に処方される。
【0066】
本脂質ナノ粒子は、被検体における疾患、状態又は特質を効果的に予防、阻害、抑制又は処置する頻度で投与され得る。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、1日に4回から3か月毎に1回の頻度、例えば、1日に4回、1日に3回、1日に2回、1日に1回、隔日毎に1回、3日毎に1回、1週間毎に1回、隔週毎に1回、1か月に1回、1か月に2回、1か月に3回、隔月毎に1回又は3か月毎に1回の頻度で投与され得る。好ましくは、脂質ナノ粒子は、1週間に2回(3日又は4日毎に1回)の頻度で被検体に投与される。任意選択的に、脂質ナノ粒子は、1週間に1回の頻度で被検体に投与される。さらに任意選択的に、脂質ナノ粒子は、隔週毎に1回の頻度で被検体に投与される。
【0067】
本開示の実施形態によると、本方法によって処置可能な疾患は、癌、(炎症性疾患を含む)感染性疾患、移植及び/又は組織拒絶、自己免疫疾患などであり得る。
【0068】
本方法によって処置可能な癌の例は、膀胱癌、骨癌、骨髄癌、脳癌、乳癌、胆管癌、結腸癌、食道癌、消化器癌、歯肉癌、頭頸部癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、上咽頭癌、白血病、リンパ腫、卵巣癌、前立腺癌、皮膚癌、胃癌、精巣癌、舌癌及び子宮癌を含むが、これらに限定されない。
【0069】
好適な一実施形態では、肺癌被検体は、
【化15】
のカチオン性脂質及び配列番号6又は7の配列を有するsiRNAを含む、有効量の本脂質ナノ粒子を被検体に投与するステップを介して処置される。
【0070】
他の好適な実施形態では、肺癌被検体は、カチオン性脂質が
【化16】
からなる群から選択され、miRNAが配列番号2、3、4及び5からなる群から選択される配列を有する、有効量の本脂質ナノ粒子を被検体に投与して処置される。
【0071】
2.4 本カチオン性脂質の使用を介したAPI送達プラットフォーム
本脂質ナノ粒子(LNP)は、培養細胞内へのAPIの送達に有用であり、したがって、それらは、細胞療法の調製における治療用材料の送達のためのプラットフォームとして使用され得る。したがって、本開示は、培養細胞内にAPIを送達する方法を包含する。方法は主に、培養細胞を有効量の本LNPと接触させるステップを含み、APIは、核酸、ポリペプチド、タンパク質、炭水化物、プロテオグリカン、糖タンパク質又はそれらの組合せである。
【0072】
本実施形態において提供される培養細胞は、被検体から単離され、又は被検体に由来し、細胞移植体が、再生医療、免疫システム障害及び癌を含む選定分野に適応する細胞療法に有用となり、かつ有益となるように、本LNPを介して送達される遺伝子又は遺伝子産物を受けることによって治療効果を有する細胞移植体に分化又は発達する効力を有し得る。一般に、培養細胞は、幹細胞及び免疫細胞を含む。本方法での使用に適した幹細胞の例は、多能性幹細胞(pluripotent stem cell)(PSC、例えば、胚性幹細胞(embryonic stem cell)(ESC)、胚盤葉上層幹細胞(epiblast stem cell)(EpiSC)、胚性生殖細胞(embryonic germ cell)(EGC)及び人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell)(iPSC))、成体幹細胞(adult stem cell)(ASC、例えば、造血幹細胞(hematopoietic stem cell)(HSC)、皮膚幹細胞(skin stem cell)(SSC)、神経幹細胞(neural stem cell)(NSC)及び間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell)(MSC))並びに癌幹細胞(cancer stem cell)(CSC)を含むが、これらに限定されない。本方法での使用に適した免疫細胞の例は、T細胞、樹状細胞(DC)、ナチュラルキラー(NK)細胞及びマクロファージを含むが、これらに限定されない。免疫細胞は、一般に、活性化、刺激性及び共刺激性キメラ抗原受容体(CAR、chimeric antigen receptor)及びそれらの組合せを含むCARなどの、遺伝子操作されたT細胞受容体(TCR)及び機能的な非TCR抗原受容体を含む、遺伝子操作された抗原受容体を発現する。
【0073】
上記の特徴により、本開示は、そこに充填されたポリヌクレオチドをカプセル化して細胞に送達可能とする新規のカチオン性脂質を提供し、それによって、癌を含む疾患を効果的かつ効率的に処置可能とする。
【実施例0074】
材料及び方法
細胞培養
NCI-H460細胞(大細胞肺癌細胞株)を、熱不活性化した10%のウシ胎児血清(FBS)及び1%のペニシリン-ストレプトマイシン(PS)溶液を補足したRoswell Park Memorial Institute(RPMI)1640培地で培養した。(ヒト肺がん組織から樹立した)A549細胞を、熱不活性化した10%のFBS及び1%のPS溶液を補足したHam’s F-12K(Kaighn’s)培地で培養した。すべての細胞を、5%のCO2を含む雰囲気下で、37℃で培養した。
【0075】
本カチオン性脂質を介したプラスミド安定化
本カチオン性脂質(すなわち、化合物6、9、11、14、18、22又は24)、レシチン及びコレステロールを、2:2:1のモル比で十分に混合して、エタノールに完全に溶解し、溶液をDPBS緩衝液によって30~50μLに希釈した。そして、希釈溶液を1.5μgのEGFP-プラスミド(pUC19、4564bp、Addgene社)を含む50μLのスクロース水溶液(5%w/v)と室温で1時間共培養して、カチオン性脂質-DNA複合体を生成した。得られた溶液を2つのバイアルに分け、その一方に1μLのDNase及び10μLの10×DNase緩衝液を添加し、37℃でさらに15分間インキュベーションした。その後、100μLのフェノール/クロロホルム(5/1)を添加し、13000×gで5分間の遠心によって混合してDNAを抽出した。すべてのサンプルをゲル電気泳動(1%アガロースゲル、110V)にかけた。
【0076】
カチオン性脂質-RNA複合体の調製
本組成物を生成するために、本カチオン性脂質(化合物6又は22)、コレステロール、DEG-PEG 2000及びジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)を50:38.5:1.5:10のモル比でエタノールにおいて十分に混合し、全体積を500μLとし、それにより脂質ナノ粒子(LNP)の液体製剤を生成した。コントロール群として、LNP調製に慣例的に用いられるイオン化可能なアミノ脂質であるD-lin-MC3-DMA(MC30)を、コレステロール、DEG-PEG 2000及びDSPCと、本LNPと同じモル比で混合した。0.268mM、265μLのmiRNA又はsiRNA(例えば、配列番号2~7のポリヌクレオチド)を695μLの(100mMクエン酸緩衝液(pH4.0)及びヌクレアーゼフリー水から構成される)酸性緩衝液に添加してRNA作業溶液を生成し、全体積を960μLとした。RNA作業溶液及びLNP(モル比は1:6である)を、流速比(FRR)を3に設定し、かつ総流量(TFR)を12mL/minに設定したマイクロ流体装置(NanoAssemblrプラットフォーム)の2つの注入口にそれぞれ送液し、流路内で混合し、マイクロ流体装置の排出口に到達した合流液を全体積1.2mLで採取した。そして、採取された混合物をろ過し、遠心フィルタ(10kDaのカットオフ分子量のメンブレンフィルタ)による2,000gでの20分間で3回遠心分離し、miRNA又はsiRNAをその中にカプセル化した脂質ナノ粒子(すなわち、カチオン性脂質-RNA複合体)を含むろ液を、使用まで4℃で保存した。
【0077】
カチオン性脂質-RNA複合体の特徴付け
カチオン性脂質-RNA複合体の粒子サイズ及びゼータ電位を、粒子サイズ及びゼータ電位分析装置(DelsaNano C、Beckman Coulter社)を用いてそれぞれ決定した。
【0078】
miRNA又はsiRNAをカプセル化するためにリポソームのカプセル化の比率を、蛍光色素(RiboGreen)を含むRNA定量キットを活用して、蛍光リーダー(Infinite F200 Pro)によって決定した。標準曲線の構成のために、既知濃度(すなわち、100μg/mL)のmiRNA又はsiRNAの吸収スペクトルをまず取得した。そして(通常、各サンプルウェルについて50μLの全体積を有する)カチオン性脂質-RNA複合体を、各ウェルにおいてRNA定量キットによる試薬と混合した。任意選択的に、カチオン性脂質-RNA複合体を溶解緩衝液にさらし、それによりRNAを懸濁液に戻した。miRNA又はsiRNAの量を535nmでのそれらの吸収強度を標準曲線のものに内挿することによって定量し、WtはLNP溶解懸濁液中に放出されたmiRNA又はsiRNAの全量であり、Wiは調製の間に最初に添加したmiRNA又はsiRNAの全分量であるとして、カプセル化効率(EE)を以下の式、
カプセル化効率(EE%)=(Wt/Wi)×100%
によって算出した。
【0079】
フローサイトメトリー分析
細胞選別は、フルオロクロムを結合させたmiRNA又はsiRNAによるフローサイトメトリーを介して実施され、具体的には、miRNAに遠赤色蛍光標識Cy5色素を結合した。選別前の最終洗浄後、細胞塊の除去のために35μmのナイロンセルストレーナーを通じて細胞をろ過し、そしてフローサイトメーター(BD LSRFortessa X-20)及び解析ソフトウェア(FlowJo、BD Biosciences社)を用いて選別にかけた。
【0080】
実施例1 本カチオン性脂質の化学合成
本カチオン性脂質を、スキームI~IVに記載したステップによりそれぞれ合成した。一般に、グリシンのアミノ(NH2)基を、まずフェナシル(PAc)基又はtert-ブチルオキシカルボニル(Boc)基で保護した。グリセロールとグリシンの間及び/又はグリセロールと脂肪酸の間の縮合反応(すなわち、脱水)の後、保護基を除去し、NH2基に還元した。
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
例示的な化合物を調製する方法並びに結果として調製された化合物に関する分析データを以下に記載する。
【0086】
1.1 TGG-リノール酸(TGG-linoleic acid)(化合物6)
【化21】
【0087】
tert-ブチル2-((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエナミド)アセテート(tert-butyl 2-((9Z,12Z)-octadeca-9,12-dienamido)acetate)(1)の調製
N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(N,N’-Dicyclohexylcarbodiimide)(DCC、0.40g、1.96mmol)を10mLのジクロロメタン(dichloromethane)(DCM)に溶解した溶液に、リノール酸(0.5g、1.78mmol)、t-ブチル2-アミノアセテート(0.27mL、1.96mmol)及びDMAP(0.13、1.07mmol)を添加した。溶液を、室温で一晩撹拌した。十分に混合した後、1,3-ジシクロヘキシル尿素(1,3-Dicyclohexyl urea)(DCU)をろ過除去し、溶液をロータリーエバポレーターによって除去した。残留溶液を酢酸エチル(ヘキサン:EA、3:1)で溶出されるカラムクロマトグラフィによって精製して480mgの固体(化合物1)を得た(収率69%)。1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ 5.93 (s, 1H), 5.44 - 5.26 (m, 4H), 3.95 (d, J = 4.9 Hz, 2H), 2.78 (t, J = 6.9 Hz, 2H), 2.29 - 2.17 (m, 2H), 2.10 - 2.02 (m, 4H), 1.66 (dd, J = 15.7, 8.8 Hz, 3H), 1.49 (s, 9H), 1.39 - 1.28 (m, 14H), 0.91 (t, J = 7.0 Hz, 3H).
【0088】
2-((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエナミド)酢酸(2-((9Z,12Z)-octadeca-9,12-dienamido)acetic acid)(2)の調製
トリフルオロ酢酸(Trifluoroacetic acid)(TFA、2.80mL、36.59mmol)を化合物1の溶液(8mLのDCMに溶解した480mg、1.22mmol)にゆっくり添加した。溶液を撹拌し、TLCでモニタリングした。完全に反応させた後、DCMを減圧下で除去した。残留物をヘキサン及びEAによって数回洗浄した。残った溶媒をロータリーエバポレーターによって除去してさらなる使用のための化合物2を得た。
【0089】
2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)酢酸(2-((tert-butoxycarbonyl)amino)acetic acid)(3)の調製
2NのNaOH(8.66mL、17.32mmol)の溶液を有するボトルに、グリシン(1g、13.32mmol)を添加し、混合物をすべてのグリシンが溶解するまで撹拌し、そしてTHF(20mL)に溶解したBoc2O(3.34g、15.32mmol)の溶液をボトルに添加し、室温で一晩撹拌した。THFを蒸発によって除去した。塩基性溶液を作るために、2NのNaOH溶液を残留物に添加し、EAによって洗浄した。pH値を、2MのHClを添加することによって3~4に調整した。水相をEAで抽出した。有機相をMgSO4において乾燥させ、ろ過し、溶媒をロータリーエバポレーターによって除去して1.38gの白色固体生成物を得た(化合物3、収率59%)。
1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ 5.03 (s, 1H), 3.97 (t, J = 20.4 Hz, 2H), 1.48 (s, 9H).
【0090】
2-ヒドロキシプロパン-1,3-ジイルビス(2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)アセテート)(2-hydroxypropane-1,3-diyl bis(2-((tert-butoxycarbonyl)amino)acetate))(4)の調製
DCMに溶解したDCC(0.99g、4.78mmol)の溶液に、グリセロール(0.2g、2.17mmol)、化合物3(0.80g、4.56mmol)及びDMAP(0.27g、2.17mmol)を添加し、室温で一晩撹拌した。混合物をろ過にかけてDCUを除去し、そして蒸発させて粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィ(ヘキサン:EA、50:50→30:70)によって精製して130mgの粘着性の透明な液体生成物を得た(化合物4、収率15%)。LC-MS (ESI); m/z: [M+H]+ Calcd. for C17H30N2O9,406.20. Found 407.41.
【0091】
2-(2-((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエナミド)アセトキシ)プロパン-1,3-ジイルビス(2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)アセテート)(2-(2-((9Z,12Z)-octadeca-9,12-dienamido)acetoxy)propane-1,3-diyl bis(2-((tert-butoxycarbonyl)amino)acetate))(5)の調製
DCMに溶解したDCC(0.073g、0.35mmol)の溶液に、化合物4(0.13g、0.32mmol)、化合物2(0.12g、0.35mmol)及びDMAP(0.039g、0.32mmol)を添加した。溶液を室温で一晩撹拌した。完全に混合した後、溶液をろ過してDCUを除去し、そして減圧下で蒸発させてDCMを除去した。残留溶液をカラムクロマトグラフィ(ヘキサン:EA、2:3)によって精製して200mgの白色固体生成物を得た(化合物5、収率86%)。1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ 5.36 (ddd, J = 27.2, 14.1, 6.3 Hz, 4H), 5.21 (s, 1H), 4.40 (dt, J = 18.0, 9.0 Hz, 2H), 4.34 - 4.23 (m, 2H), 4.13 - 3.97 (m, 2H), 3.97 - 3.82 (m, 4H), 2.79 (t, J = 6.8 Hz, 1H), 2.27 (dd, J = 14.3, 6.9 Hz, 2H), 2.11 (d, J = 5.8 Hz, 1H), 2.06 (dd, J = 13.8, 6.8 Hz, 3H), 1.95 (s, 2H), 1.86 (dd, J = 9.8, 4.7 Hz, 2H), 1.78 (d, J = 13.3 Hz, 2H), 1.70 - 1.61 (m, 3H), 1.47 (s, 18H), 1.41 - 1.26 (m, 16H), 0.91 (t, J = 6.6 Hz, 3H). LC-MS (ESI); m/z: [M+H]+ Calcd. for C37H63N3O11, 725.45. Found 726.7.
【0092】
2-(2-((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエナミド)アセトキシ)プロパン-1,3-ジイルビス(2-アミノアセテート)(2-(2-((9Z,12Z)-octadeca-9,12-dienamido)acetoxy)propane-1,3-diyl bis(2-aminoacetate))(6)の調製
6mLのDCMに溶解した化合物5(0.2g、0.28mmol)の溶液に、TFA(0.42mL、5.51mmol)をゆっくり添加した。反応物質が消費されるまで溶液を撹拌した。そして、結果として得られた溶液を減圧下で蒸発させて溶媒を除去し、エーテル及びDCMで洗浄した。残留溶媒を蒸発によって除去して48mgの粘着性の透明な生成物を提供した(化合物6、収率33%)。1H NMR (600 MHz, MeOD) δ 5.53 - 5.44 (m, 1H), 5.41 - 5.28 (m, 4H), 4.60 - 4.37 (m, 4H), 3.94 - 3.84 (m, 6H), 2.79 (t, J = 6.7 Hz, 2H), 2.28 (dd, J = 9.8, 5.0 Hz, 2H), 2.07 (dd, J = 12.2, 6.2 Hz, 4H), 1.67 - 1.55 (m, 2H), 1.41 - 1.27 (m, 15H), 0.92 (t, J = 6.8 Hz, 3H). LC-MS (ESI); m/z: [M+H]+ Calcd. for C27H47N3O7, 525.34. Found 527.38.
【0093】
1.2 TGG-ジ(リノール酸)(TGG-di(linoleic acid))化合物9
【0094】
【0095】
2,3-ジヒドロキシプロピル2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)アセテート(2,3-dihydroxypropyl2-((tert-butoxycarbonyl)amino)acetate)(7)の調製
グリセロール(0.42g、4.57mmol)、化合物3(0.2g、1.14mmol)、EDCI(0.35g、2.28mmol)及びDMAP(0.14g、1.14mmol)を混合し、DCMに溶解した。溶液を室温で一晩撹拌した。結果として得られた溶液を蒸発させてDCMを除去して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィ(EA、100%)によって精製して120mgの粘着性の液体生成物を得た(化合物7、収率42%)。1H NMR (600 MHz, MeOD) δ 4.59 (s, 1H), 4.22 (dd, J = 11.3, 4.3 Hz, 1H), 4.16 - 4.10 (m, 1H), 3.88 - 3.81 (m, 2H), 3.57 (dd, J = 5.6, 2.1 Hz, 2H), 1.46 (s, 9H).
【0096】
3-(2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)アセトキシ)プロパン-1,2-ジイルビス(2-((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエナミド)アセテート)(3-(2-((tert-butoxycarbonyl)amino)acetoxy)propane-1,2-diyl bis(2-((9Z,12Z)-octadeca-9,12-dienamido)acetate))(8)の調製
化合物7(0.1g、0.40mmol)、化合物2(0.30g、0.88mmol)、EDCI(0.16g、1.00mmol)及びDMAP(0.059g、0.48mmol)を混合し、DCMに溶解した。室温で一晩撹拌した後、混合物を蒸発させてDCMを除去した。残留溶液をEA/H2Oで抽出した。有機相を採取し、MgSO4において乾燥させてろ過した。結果として得られたろ液を蒸発させてEAを除去した。粗生成物をカラムクロマトグラフィ(ヘキサン:EA、3:7)によって精製して190mgの粘着性の褐色液体生成物を得た(化合物9、収率53%)。1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ 5.46 - 5.31 (m, 8H), 4.46 (dd, J = 12.0, 3.5 Hz, 1H), 4.41 - 4.33 (m, 2H), 4.28 (ddd, J = 17.9, 12.1, 6.2 Hz, 1H), 4.14 (q, J = 7.1 Hz, 1H), 4.07 (ddd, J = 19.8, 9.8, 5.1 Hz, 3H), 4.00 (d, J = 3.6 Hz, 2H), 3.96 - 3.83 (m, 2H), 2.79 (t, J = 6.8 Hz, 3H), 2.27 (ddd, J = 9.9, 7.8, 5.2 Hz, 4H), 2.13 - 2.00 (m, 8H), 1.76 - 1.61 (m, 8H), 1.47 (s, 9H), 1.40 - 1.26 (m, 28H), 0.91 (t, J = 7.0 Hz, 6H).
【0097】
【0098】
3-(2-(トリチルアミノ)アセトキシ)プロパン-1,2-ジイルビス(2-((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエナミド)アセテート)(3-(2-(tritylamino)acetoxy)propane-1,2-diyl bis(2-((9Z,12Z)-octadeca-9,12-dienamido)acetate))(25)の調製
グリセロール(0.29g、3.15mmol)、trt-グリシン(0.2g、0.63mmol)を混合し、DCM/ジオキサンの溶媒に溶解して混合物を提供した。混合物にDCC(0.17g、0.82mmol)及びDMAP(0.038g、0.32mmol)を徐々に添加し、室温で一晩撹拌した。溶液をろ過してDCUを除去し、減圧下で蒸発させて溶媒を除去した。粗生成物をカラムクロマトグラフィ(Hex:EA=1:3)によって精製して195mgの白色固体生成物を得た(化合物25、収率79%)。1H NMR (600 MHz, MeOD) δ 7.62 - 7.38 (m, 6H), 7.30 (dd, J = 10.6, 5.0 Hz, 6H), 7.24 - 7.16 (m, 3H), 4.11 (dd, J = 11.3, 4.2 Hz, 1H), 4.02 (dd, J = 11.3, 6.4 Hz, 1H), 3.76 (td, J = 9.9, 5.7 Hz, 1H), 3.50 (d, J = 5.7 Hz, 2H), 3.13 (s, 2H).
【0099】
3-(2-(トリチルアミノ)アセトキシ)プロパン-1,2-ジイルビス(2-((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエナミド)アセテート)(3-(2-(tritylamino)acetoxy)propane-1,2-diyl bis(2-((9Z,12Z)-octadeca-9,12-dienamido)acetate))(26)の調製
化合物25(0.2g、0.51mmol)、化合物2(0.40g、1.18mmol)、EDCI(0.18g、1.18mmol)及びDMAP(0.062g、0.51mmol)を混合し、DCMに溶解した。溶液を室温で一晩撹拌し、そして減圧下で蒸発させて乾燥させてDCMを除去した。粗生成物をカラムクロマトグラフィ(ヘキサン:EA、3:2)によって精製して266mgの粘着性の白色生成物を得た(化合物26、収率51%)。1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ 7.49 (d, J = 7.7 Hz, 6H), 7.36 (d, J = 6.4 Hz, 5H), 7.31 (dd, J = 6.7, 2.3 Hz, 2H), 5.46 - 5.29 (m, 6H), 5.27 (d, J = 6.0 Hz, 1H), 4.26 (ddd, J = 19.0, 11.9, 5.4 Hz, 3H), 4.14 (dd, J = 11.8, 5.8 Hz, 1H), 4.09 - 3.91 (m, 4H), 2.79 (t, J = 6.8 Hz, 3H), 2.27 (dd, J = 14.0, 6.6 Hz, 4H), 2.07 (dd, J = 12.3, 5.3 Hz, 6H), 1.62 (dd, J = 27.0, 19.6 Hz, 11H), 1.52 - 1.20 (m, 28H), 0.97 - 0.81 (m, 6H).
【0100】
3-(2-アミノアセトキシ)プロパン-1,2-ジイルビス(2-((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエナミド)アセテート)(3-(2-aminoacetoxy)propane-1,2-diyl bis(2-((9Z,12Z)-octadeca-9,12-dienamido)acetate))(9)の調製
DCMに溶解した化合物26(0.27g、0.26mmol)の溶液に、TFA(0.3mL、3.93mmol)をゆっくり添加し、すべての反応物質が消費されるまで撹拌した。溶液を蒸発させ、エーテルで数回洗浄して溶媒を除去した。粗生成物をカラムクロマトグラフィ(Hex:EA=1:1→DCM:MeOH,95:5)によって精製して131mgの糊状の褐色生成物を得た(化合物9、収率64%)。1H NMR (600 MHz, MeOD) δ 5.48 - 5.25 (m, 8H), 4.53 - 4.44 (m, 2H), 4.37 (ddd, J = 18.1, 12.1, 5.0 Hz, 2H), 4.06 - 3.81 (m, 6H), 2.79 (t, J = 6.8 Hz, 3H), 2.27 (td, J = 7.5, 4.1 Hz, 4H), 2.08 (dt, J = 10.9, 5.1 Hz, 7H), 1.72 - 1.56 (m, 4H), 1.50 - 1.14 (m, 28H), 0.92 (t, J = 7.0 Hz, 6H). LC-MS (ESI); m/z: [M+H]+ Calcd. for C45H77N3O8,787.57. Found 789.48.
【0101】
1.3 DGG-リノール酸(DGG-linoleic acid)(化合物11)
【化24】
【0102】
2-((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエノイルオキシ)プロパン-1,3-ジイルビス(2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)アセテート)(2-((9Z,12Z)-octadeca-9,12-dienoyloxy)propane-1,3-diyl bis(2-((tert-butoxycarbonyl)amino)acetate))(10)の調製
8mLのDCMに溶解したDCC(76mg、0.37mmol)の溶液に、化合物4(0.15g、0.37mmol)、リノール酸(93mg、0.33mmol)及びDMAP(32mg、0.26mmol)を混合して添加した。混合物を室温で一晩撹拌し、そしてろ過してDCUを除去した。そして、溶液を蒸発させて粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィ(ヘキサン:EA、7:3)によって精製して140mgの透明な液体生成物を得た(化合物10、収率63%)。1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ 5.33 (ddt, J = 14.9, 10.0, 7.8 Hz, 2H), 5.14 - 5.01 (m, 1H), 4.47 - 4.34 (m, 2H), 4.25 (dd, J = 11.9, 5.7 Hz, 1H), 4.22 - 4.11 (m, 1H), 4.11 - 4.00 (m, 1H), 3.93 (s,4H), 2.79 (t, J = 6.8 Hz, 1H), 2.41 - 2.28 (m, 2H), 2.16 - 2.01 (m, 2H), 1.92 - 1.83 (m, 1H), 1.69 - 1.51 (m, 9H), 1.47 (s, 18H), 1.42 - 1.20 (m, 14H), 0.91 (dd, J = 8.6, 5.3 Hz, 3H).
【0103】
2-((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエノイルオキシ)プロパン-1,3-ジイルビス(2-アミノアセテート)(2-((9Z,12Z)-octadeca-9,12-dienoyloxy)propane-1,3-diyl bis(2-aminoacetate))(11)の調製
6mLのDCMに溶解した化合物10(0.14g、0.21mmol)を含む溶液に、TFA(0.40mL、5.23mmol)をゆっくり添加した。反応物質が消費されるまで溶液を撹拌し、そして蒸発させて溶媒を除去し、エーテル及びDCMで洗浄した。結果として得られたものを蒸発させて化合物11を得た(60mgの糊状の透明な生成物、収率61%)。1H NMR (600 MHz, MeOD) δ 5.51 (s, 1H), 5.45 (dd, J = 9.3, 4.9 Hz, 1H), 5.42 - 5.29 (m, 4H), 4.57 (dt, J = 12.0, 4.1 Hz, 1H), 4.50 - 4.43 (m, 1H), 4.39 (dd, J = 12.0, 6.4 Hz, 1H), 3.96 - 3.82 (m, 3H), 2.79 (t, J = 6.7 Hz, 2), 2.38 (td, J = 7.5, 4.9 Hz, 2H), 2.16 - 1.99 (m, 3H), 1.64 (d, J = 5.9 Hz, 2H), 1.44 - 1.26 (m, 13H), 0.92 (dd, J = 9.4, 4.5 Hz, 3H). LC-MS (ESI); m/z: [M+H]+ Calcd. for C25H44N2O6,468.32. Found 470.22.
【0104】
1.4 MGG-ジ(リノール酸)(MGG-di(linoleic acid))(化合物14)
【化25】
【0105】
(9Z,9’Z,12Z,12’Z)-2-ヒドロキシプロパン-1,3-ジイルビス(オクタデカ-9,12-ジエノエート)((9Z,9’Z,12Z,12’Z)-2-hydroxypropane-1,3-diyl bis(octadeca-9,12-dienoate))(12)の調製
丸底ボトルにおいて、グリセロール(0.2g、2.17mmol)、リノール酸(1.28g、4.56mmol)、EDCI(0.78g、5.00mmol)及びDMAP(0.27g、2.17mmol)を12mLのDCMに溶解して混合した。溶液を室温で一晩撹拌し、そして蒸発させてDCMを除去した。粗生成物をカラムクロマトグラフィ(ヘキサン:EA、3:2)によって精製して310mgの生成物を得た(化合物12、収率23%)。1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ 5.51 - 5.24 (m, 7H), 4.33 - 3.94 (m, 5H), 2.79 (t, J = 6.8 Hz, 4H), 2.37 (t, J = 7.6 Hz, 4H), 2.07 (q, J = 6.9 Hz, 8H), 1.64 (dd, J = 14.5, 7.2 Hz, 4H), 1.48 - 1.19 (m, 28H), 0.91 (t, J = 7.0 Hz, 6H).
【0106】
(9Z,9’Z,12Z,12’Z)-2-(2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)アセトキシ)プロパン-1,3-ジイルビス(オクタデカ-9,12-ジエノエート)((9Z,9’Z,12Z,12’Z)-2-(2-((tert-butoxycarbonyl)amino)acetoxy)propane-1,3-diyl bis(octadeca-9,12-dienoate))(13)の調製
10mLのDCMに溶解したDCC(0.12g、0.60mmol)の溶液に、化合物12(0.31g、0.50mmol)、化合物3(0.11g、0.60mmol)及びDMAP(4.3mg、0.35mmol)を添加した。溶液を室温で一晩撹拌し、そしてろ過してDCUを除去した。溶液を蒸発させて溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィ(ヘキサン:EA、7:3)によって精製して270mgの生成物を得た(化合物13、収率70%)。1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ 5.46 - 5.21 (m, 8H), 4.99 (s,1H), 4.35 (dd, J = 12.1, 4.1 Hz, 2H), 4.17 (dd, J = 12.1, 5.9 Hz, 2H), 3.95 (d, J = 5.2 Hz, 2H), 2.79 (t, J = 6.8 Hz, 4H), 2.33 (t, J = 7.6 Hz, 4H), 2.07 (q, J = 7.0 Hz, 7H), 1.62 (dd, J = 15.9, 8.6 Hz, 5H), 1.47 (s, 9H), 1.43 - 1.17 (m, 28H), 0.91 (t, J = 6.9 Hz, 6H).
【0107】
(9Z,9’Z,12Z,12’Z)-2-(2-アミノアセトキシ)プロパン-1,3-ジイルビス(オクタデカ-9,12-ジエノエート)((9Z,9’Z,12Z,12’Z)-2-(2-aminoacetoxy)propane-1,3-diyl bis(octadeca-9,12-dienoate))(14)の調製
5mLのDCMに溶解した化合物13(0.27g、0.35mmol)の溶液に、TFA(0.53mL、6.98mmol)をゆっくり添加し、反応物質が消費されるまで撹拌した。溶液を蒸発させて溶媒を除去した。残留物をエーテル及びヘキサンで洗浄し、残留溶媒を減圧下での蒸発によって除去し、それにより、約200mgの糊状の橙色生成物を得た(化合物14、収率85%)。1H NMR (600 MHz, MeOD) δ 5.43 - 5.28 (m, 8H), 4.43 (dd, J = 12.2, 4.2 Hz, 2H), 4.26 (dd, J = 12.2, 5.7 Hz, 2H), 3.88 (s, 2H), 2.79 (t, J = 6.6 Hz, 4H), 2.37 (t, J = 7.4 Hz, 4H), 2.15 - 2.03 (m, 8H), 1.68 - 1.58 (m, 4H), 1.44 - 1.25 (m, 28H), 0.92 (t, J = 7.0 Hz, 6H). LC-MS (ESI); m/z: [M+H]+ Calcd. for C41H71NO6, 673.53. Found 675.91.
【0108】
1.5 MGG-リノール酸(MGG-linoleic acid)(化合物18)
【化26】
【0109】
(9Z,12Z)-3-(2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)アセトキシ)-2-ヒドロキシプロピルオクタデカ-9,12-ジエノエート((9Z,12Z)-3-(2-((tert-butoxycarbonyl)amino)acetoxy)-2-hydroxypropyl octadeca-9,12-dienoate)(17)の調製
丸底ボトルにおいて、化合物7(0.19g、0.75mmol)、リノール酸(0.1g、0.36mmol)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(1-Ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide)(EDCI、0.11g、0.73mmol)及びDMAP(44mg、0.36mmol)を混合し、10mLのDCMに溶解した。溶液を室温で一晩撹拌し、そして蒸発させてDCMを除去した。粗生成物をカラムクロマトグラフィ(Hex:EA、2:3)によって精製して75mgの粘着性の液体生成物を得た(化合物17、収率41%)。1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ 5.47 - 5.30 (m, 2H), 4.50 - 4.01 (m, 5H), 3.96 (d, J = 5.4 Hz, 2H), 2.79 (t, J = 6.9 Hz, 1H), 2.37 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 2.07 (dd, J = 13.4, 7.2 Hz, 2H), 1.63 (dd, J = 23.5, 18.2 Hz, 8H), 1.53 - 1.38 (m, 9H), 1.45 - 1.19 (m, 14H), 0.99 - 0.85 (m, 3H).
【0110】
(9Z,12Z)-3-(2-アミノアセトキシ)-2-ヒドロキシプロピルオクタデカ-9,12-ジエノエート((9Z,12Z)-3-(2-aminoacetoxy)-2-hydroxypropyl octadeca-9,12-dienoate)(18)の調製
4mLのDCMに溶解した化合物17(75mg、0.15mmol)の溶液に、TFA(0.22mL、2.93mmol)をゆっくり添加し、反応物質が消費されるまで撹拌し、そして溶液を蒸発させてDCMを除去した。残留物をエーテル及びDCMで洗浄した。そして、残った溶媒を減圧下で再度蒸発させ、それにより約75mgの糊状の淡褐色生成物を得た(化合物18、収率100%)。1H NMR (600 MHz, MeOD) δ 5.43 - 5.29 (m, 4H), 4.33 (dd, J = 11.4, 4.3 Hz, 1H), 4.28 (dd, J = 11.4, 5.8 Hz, 1H), 4.15 (dd, J = 5.4, 3.8 Hz, 1H), 4.11 - 4.03 (m, 1H), 3.89 (s, 2H), 2.79 (t, J = 6.6 Hz, 2H), 2.38 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 2.11 - 2.05 (m, 4H), 1.68 - 1.59 (m, 2H), 1.41 - 1.28 (m, 14H), 0.92 (t, J = 7.0 Hz, 3H). LC-MS (ESI); m/z: [M+H]+ Calcd. for C23H41NO5,411.30. Found 412.98.
【0111】
1.6 TGG-ジ(パルミトレイン酸)(TGG-di(palmitoleic acid))(化合物22)
【0112】
【0113】
(Z)-2-(2-(ヘキサデック-9-エナミド)アセトキシ)プロパン-1,3-ジイルビス(2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)アセテート)((Z)-2-(2-(hexadec-9-enamido)acetoxy)propane-1,3-diyl bis(2-((tert-butoxycarbonyl)amino)acetate))(19)の調製
丸底ボトルにおいて、12mLのDCMに溶解したDCC(0.97g、4.72mmol)の溶液に、パルミトレイン酸(1g、3.93mmol)、t-ブチル2-アミノアセテート(0.62g、4.72mmol)及びDMAP(0.34g、2.75mmol)を添加した。溶液を室温で一晩撹拌し、そしてろ過してDCUを除去し、蒸発させて溶媒を除去した。粗生成物をカラムクロマトグラフィ(ヘキサン:EA、3:1)によって精製して約1.04gの粘着性の透明な液体生成物を得た(化合物19、収率72%)。1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ 5.92 (s, 1H), 5.36 (ddd, J = 7.5, 3.9, 1.9 Hz, 2H), 3.96 (d, J = 4.9 Hz, 2H), 2.24 (dd, J = 10.1, 5.3 Hz, 2H), 2.03 (q, J = 6.5 Hz, 3H), 1.66 (dd, J = 14.5, 7.7 Hz, 2H), 1.49 (s, 9H), 1.31 (ddd, J = 21.0, 13.6, 7.1 Hz, 16H), 0.90 (dd, J = 9.7, 4.4 Hz, 3H).
【0114】
(Z)-2-(ヘキサデック-9-エナミド)酢酸((Z)-2-(hexadec-9-enamido)acetic acid)(20)の調製
DCMに溶解した化合物19(1.04g、2.83mmol)の溶液に、TFA(4.33mL、56.59mmol)をゆっくり添加し、反応物質が消費されるまで撹拌した。溶液を蒸発させてDCMを除去した。残留物をエーテル及びヘキサンで洗浄し、残った溶媒を減圧下での蒸発によって再度除去し、それにより、さらなる使用のための白色粉末生成物(約870mg、化合物20)(収率99%)を提供した。1H NMR (600 MHz, MeOD) δ 5.36 (t, J = 4.7 Hz, 2H), 3.90 (s, 2H), 2.26 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 2.04 (dd, J = 11.9, 6.2 Hz, 4H), 1.73 - 1.60 (m, 2H), 1.33 (dd, J = 14.6, 8.6 Hz, 16H), 0.92 (t, J = 7.0 Hz, 3H).
【0115】
(Z)-3-(2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)アセトキシ)プロパン-1,2-ジイルビス(2-((Z)-ヘキサデック-9-エナミド)アセテート)((Z)-3-(2-((tert-butoxycarbonyl)amino)acetoxy)propane-1,2-diyl bis(2-((Z)-hexadec-9-enamido)acetate))(21)の調製
丸底ボトルにおいて、化合物7(50mg、0.20mmol)、化合物20(0.14g、0.44mmol)、EDCI(70mg、0.44mmol)及びDMAP(25mg、0.20mmol)を混合し、10mlのDCMに添加した。溶液を室温で一晩撹拌し、そして減圧下で蒸発させてDCMを除去した。粗生成物をカラムクロマトグラフィ(Hex:EA、1:4)によって精製して140mgの粘着性の橙色液体生成物を得た(化合物21、収率84%)。1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ 5.43 - 5.33 (m, 2H), 4.41 - 4.32 (m, 2H), 4.11 - 4.03 (m, 4H), 3.95 - 3.86 (m, 2H), 2.28 (tt, J = 13.8, 6.9 Hz, 4H), 2.07 - 1.99 (m, 4H), 1.92 (tdd, J = 20.5, 12.6, 7.8 Hz, 2H), 1.86 - 1.76 (m, 2H), 1.75 - 1.51 (m, 12H), 1.48 (s, 9H), 1.44 - 1.21 (m, 32H), 0.91 (q, J = 6.9 Hz, 6H).
【0116】
(Z)-3-(2-アミノアセトキシ)プロパン-1,2-ジイルビス(2-((Z)-ヘキサデック-9-エナミド)アセテート)((Z)-3-(2-aminoacetoxy)propane-1,2-diyl bis(2-((Z)-hexadec-9-enamido)acetate))(22)の調製
4mLのDCMに溶解した化合物21(0.14g、0.17mmol)の溶液に、TFA(0.26mL、3.35mmol)をゆっくり添加し、反応物質が完全に消費されるまで撹拌した。そして溶液を蒸発させてDCMを除去し、残留物をヘキサン及びDCMで洗浄した。残った溶媒を減圧下での蒸発によってさらに除去した。結果として、約80mgの糊状の橙色生成物を得た(化合物22、収率64%)。1H NMR (600 MHz, MeOD) δ 5.37 (dd, J = 19.9, 15.0 Hz, 5H), 4.61 - 4.24 (m, 4H), 4.04 - 3.79 (m, 6H), 2.27 (td, J = 7.5, 4.0 Hz, 4H), 2.17 - 1.92 (m, 8H), 1.70 - 1.55 (m, 4H), 1.49 - 1.23 (m, 32H), 0.92 (t, J = 7.0 Hz, 6H). LC-MS (ESI); m/z: [M+H]+ Calcd. for C41H73N3O8, 735.54. Found 737.33.
【0117】
【0118】
(Z)-2-(2-(ヘキサデック-9-エナミド)アセトキシ)プロパン-1,3-ジイルビス(2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)アセテート)((Z)-2-(2-(hexadec-9-enamido)acetoxy)propane-1,3-diyl bis(2-((tert-butoxycarbonyl)amino)acetate))(19)の調製
丸底ボトルにおいて、10mlのDCMに溶解したDCC(1.16g、5.66mmol)の溶液に、パルミトレイン酸(1.2g、4.72mmol)、t-ブチル2-アミノアセテート(0.74g、5.66mmol)及びDMAP(0.4g、3.3mmol)を徐々に添加し、室温で一晩撹拌した。混合物をろ過してDCUを除去し、蒸発させて溶媒を除去した。粗生成物をカラムクロマトグラフィ(ヘキサン:EA、4:1)によって精製して約1.37gの粘着性の透明な液体生成物を得た(化合物19、収率72%)。
【0119】
(Z)-2-(ヘキサデック-9-エナミド)酢酸((Z)-2-(hexadec-9-enamido)acetic acid)(20)の調製
DCMに溶解した化合物19(1.37g、3.73mmol)の溶液に、TFA(4.28mL、55.91mmol)をゆっくり添加し、反応物質が消費されるまで撹拌した。溶液を蒸発させてDCMを除去した。残留物をエーテル及びヘキサンで洗浄し、残った溶媒を減圧下での蒸発によって再度除去し、それにより、さらなる使用のための白色粉末生成物(約1150mg、化合物20)(収率99%)を提供した。
【0120】
3-(2-(トリチルアミノ)アセトキシ)プロパン-1,2-ジイルビス(2-((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエナミド)アセテート)(3-(2-(tritylamino)acetoxy)propane-1,2-diyl bis(2-((9Z,12Z)-octadeca-9,12-dienamido)acetate))(25)の調製
グリセロール(0.29g、3.15mmol)、trt-グリシン(0.2g、0.63mmol)を丸底ボトルに注入し、DCM/ジオキサンの混合物を溶媒として添加した。DCC(0.17g、0.82mmol)及びDMAP(38mg、0.32mmol)を丸底ボトル中に徐々に添加した。溶液を室温で一晩撹拌した後、DCUを除去した。溶媒を減圧下で除去した。粗生成物をカラムクロマトグラフィ(Hex:EA=1:3)によって精製して195mgの白色固体生成物を得た(収率79%)。
【0121】
(Z)-3-(2-(トリチルアミノ)アセトキシ)プロパン-1,2-ジイルビス(2-((Z)-ヘキサデック-9-エナミド)アセテート)((Z)-3-(2-(tritylamino)acetoxy)propane-1,2-diyl bis(2-((Z)-hexadec-9-enamido)acetate))(27)の調製
化合物25(0.2g、0.51mmol)、化合物20(0.37g、1.18mmol)、EDCI(0.18g、1.18mmol)及びDMAP(60mg、0.51mmol)を混合し、10mlのDCMに溶解し、混合物を室温で一晩撹拌した。そして、混合物を蒸発させてDCMを除去して粗生成物を得た。そして、粗生成物をカラムクロマトグラフィ(Hex:EA、3:2)によって精製して280mgの粘性の白色生成物を得た(化合物27、収率56%)。1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ 7.49 (d, J = 7.6 Hz, 6H), 7.36 (s, 5H), 5.37 (dd, J = 9.6, 4.3 Hz, 2H), 5.32 - 5.20 (m, 1H), 4.31 - 4.20 (m, 3H), 4.15 (s, 1H), 4.09 - 4.02 (m, 4H), 3.96 (dd, J = 18.1, 5.3 Hz, 1H), 2.27 (td, J = 7.7, 3.9 Hz, 4H), 2.08 - 1.97 (m, 4H), 1.97 - 1.87 (m, 2H), 1.86 - 1.75 (m, 2H), 1.63 (dd, J = 23.3, 15.7 Hz, 14H), 1.49 - 1.20 (m, 30H), 0.91 (q, J = 6.9 Hz, 6H).
【0122】
(Z)-3-(2-アミノアセトキシ)プロパン-1,2-ジイルビス(2-((Z)-ヘキサデック-9-エナミド)アセテート)((Z)-3-(2-aminoacetoxy)propane-1,2-diyl bis(2-((Z)-hexadec-9-enamido)acetate))(22)の調製
8mLのDCMに溶解した化合物27(0.28g、0.29mmol)の溶液に、TFA(0.33mL、4.29mmol)をゆっくり添加し、反応物質が完全に消費されるまで撹拌した。溶液を蒸発させて溶媒を除去し、残留物をカラムクロマトグラフィ(DCM:MeOH、95:5~90:10)によって精製して約200mgの粘性の白色から淡黄色の固体生成物を得た(化合物22、収率94%)。1H NMR (600 MHz, MeOD) δ 5.40 (tt, J = 6.3, 4.1 Hz, 1H), 5.37 - 5.29 (m, 3H), 4.51 - 4.43 (m, 2H), 4.37 (tt, J = 18.1, 6.2 Hz, 2H), 4.05 - 3.76 (m, 6H), 2.26 (td, J = 7.5, 4.1 Hz, 4H), 2.02 (dd, J = 20.5, 13.2 Hz, 7H), 1.71 - 1.55 (m, 5H), 1.46 - 1.17 (m, 32H), 0.90 (t, J = 7.0 Hz, 6H). LC-MS (ESI); m/z: [M+H]+ Calcd. for C41H73N3O8, 735.54. Found 737.18.
【0123】
1.7 TGG-パルミトレイン酸(TGG-palmitoleic acid)(化合物24)
【化29】
【0124】
(Z)-2-(2-(ヘキサデック-9-エナミド)アセトキシ)プロパン-1,3-ジイルビス(2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)アセテート)((Z)-2-(2-(hexadec-9-enamido)acetoxy)propane-1,3-diyl bis(2-((tert-butoxycarbonyl)amino)acetate))(23)の調製
丸底ボトルにおいて、化合物4(0.22g、0.54mmol)、化合物20(0.20g、0.65mmol)、EDCI(0.10g、0.65mmol)及びDMAP(0.07g、0.54mmol)を混合し、10mlのDCMに溶解した。混合物を室温で一晩撹拌し、そして蒸発させてDCMを除去した。残留物をEA/H2Oで抽出し、有機相を採取し、MgSO4において乾燥させ、ろ過した。ろ液を減圧下で蒸発させて溶媒を除去した。粗生成物をカラムクロマトグラフィ(ヘキサン:EA、2:3)によって精製して290mgの粘着性の透明な液体生成物を得た(化合物23、収率77%)。1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ 5.43 - 5.31 (m, 2H), 5.21 (s, 1H), 4.50 - 4.35 (m, 2H), 4.30 (dd, J = 15.4, 8.4 Hz, 2H), 4.14 - 3.96 (m, 3H), 3.98 - 3.81 (m, 3H), 2.27 (ddd, J = 15.2, 7.3, 3.2 Hz, 2H), 2.03 (dd, J = 13.1, 6.7 Hz, 2H), 1.92 (ddd, J = 19.1, 9.5, 4.8 Hz, 1H), 1.87 - 1.75 (m, 1H), 1.75 - 1.51 (m, 8H), 1.47 (s, 15H), 1.44 - 1.23 (m, 16H), 0.91 (q, J = 6.9 Hz, 3H).
【0125】
(Z)-2-(2-(ヘキサデック-9-エナミド)アセトキシ)プロパン-1,3-ジイルビス(2-アミノアセテート)((Z)-2-(2-(hexadec-9-enamido)acetoxy)propane-1,3-diyl bis(2-aminoacetate))(24)の調製
5mLのDCMに溶解した化合物23(0.29g、0.41mmol)の溶液に、TFA(0.95mL、12.43mmol)をゆっくり添加し、すべての反応物質が消費されるまで撹拌した。溶液中のDCMをロータリーエバポレーターによって除去した後、残留物をヘキサン及びエーテルによって洗浄した。残った溶媒を減圧下での蒸発によって除去し、それにより約170mgの粘着性の透明な生成物を得た(化合物24、収率83%)。1H NMR (600 MHz, MeOD) δ 5.51 - 5.45 (m, 1H), 5.36 (dd, J = 7.5, 3.4 Hz, 2H), 4.57 - 4.44 (m, 3H), 3.94 - 3.88 (m, 5H), 2.33 - 2.22 (m, 2H), 2.05 (dt, J = 12.1, 4.2 Hz, 4H), 1.63 (dd, J = 14.4, 7.2 Hz, 2H), 1.45 - 1.22 (m, 16H), 0.91 (t, J = 7.0 Hz, 3H). LC-MS (ESI); m/z: [M+H]+ Calcd. for C25H45N3O7 499.33. Found 501.12.
【0126】
実施例2 本カチオン性脂質の核酸のカプセル化及び送達支援
2.1 核酸のカプセル化
この実施例では、核酸を保護するための本カチオン性脂質についての能力を調査した。この目的のために、実施例1のカチオン性脂質(すなわち、化合物6、9、11、14、18、22又は24)を独立してプラスミドと共培養し、そして「材料及び方法」の節に記載された手順に従ってDNA消化及び抽出にかけた。サンプルを、アガロースゲル電気泳動を介して分析し、結果を
図1に提供する。
【0127】
消化後、すべての検出可能なヌクレオチドが抽出され、リポソーム(すなわち、カチオン性脂質-DNA複合体)に由来することがゲル電気泳動から明らかとなり、本カチオン性脂質がプラスミドをカプセル化可能であり、プラスミドをヌクレアーゼの作用から保護可能であることが示された(
図1のレーン25~28及び31~34)。
【0128】
さらに、短鎖RNAをカプセル化するための本カチオン性脂質のカプセル化の比率を調査した。この目的のために、市販のカチオン性脂質及び本カチオン性脂質(すなわち、化合物6(TGG-リノール酸)及び22(TGG-ジ(パルミトレイン酸)))を、「材料及び方法」の節に記載された調製手順に従って、それぞれフルオロクロム結合短鎖RNA(すなわち、Cy5-mir302a-siRNA、配列番号6及び7)と混合し、それにより、その中に短鎖RNAを含む脂質ナノ粒子(LNP)を生成した。各LNPのサイズ、ゼータ電位及びカプセル化効率(EE)を「材料と方法」の節に記載された手順により分析した。結果を表1にまとめる。
【表1】
【0129】
表1のデータは、化合物6及び22の双方が順調にリポソームを形成し、それらの中にsiRNAをカプセル化したことを明らかにした。具体的には、市販のカチオン性脂質MC30で作製されたLNPと比較して、本化合物22から構成された本LNPでは、サイズがより小さく、カプセル化効率がより高かった。
【0130】
2.2 核酸の送達
この実施例では、本カチオン性脂質が細胞内への核酸の送達を促進し得るか否かを調査した。この目的のために、A549及びNCI-H460肺癌細胞株を、それぞれ、様々な濃度のsiRNA(0.25、1.25又は2.5ng/μL)をその中に有する本LNP又はコントロールLNPと24時間共培養し、フローサイトメトリーによってトランスフェクション効率を検証した。結果を
図2A~2Bに示す。
【0131】
化合物6又は22から構成された本LNPと共培養した後、肺癌細胞から放出される蛍光強度は徐々に増加することが、
図2A及び2Bのフローサイトメトリーヒストグラムから明らかとなり、外部からの核酸が癌細胞内に順調にトランスフェクションされたことを示す。さらに、ピークは、本化合物22(TGG-ジ(パルミトレイン酸))から構成されたLNPの最右端のヒストグラムにシフトしており、それが化合物6から構成されたLNPのものよりも良好な送達有効性を有することが示された。
【0132】
上述のデータは、本新規のカチオン性脂質はその中に機能性核酸をカプセル化可能であることを全体として示し、したがって、本カチオン性脂質によって組み立てられた脂質ナノ粒子は細胞内への治療薬の送達のための担体として作用可能であり、それにより、効果的な遺伝子編集、細胞工学及び疾患処置が達成される。
【0133】
実施形態の上記説明は例示としてのみ与えられること及び種々の変形が当業者によってなされ得ることが理解されるはずである。上記仕様、実施例及びデータは、発明の例示的実施形態の構造及び使用の完全な説明を与える。発明の種々の実施形態がある程度の特殊性で又は1以上の個別の実施形態を参照して上述されたが、当業者であれば、本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく開示の実施形態に対して多数の変更を行うことができるはずである。