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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068650
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】成形用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 69/40 20060101AFI20240513BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20240513BHJP
   C08L 79/00 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
C08G69/40
C09K3/00 103P
C08L79/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023189139
(22)【出願日】2023-11-06
(31)【優先権主張番号】P 2022178574
(32)【優先日】2022-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】谷垣 里穂
(72)【発明者】
【氏名】田中 友平
【テーマコード(参考)】
4J001
4J002
【Fターム(参考)】
4J001DA02
4J001DB05
4J001DC05
4J001EA06
4J001EA08
4J001EA12
4J001EA15
4J001EA16
4J001EA17
4J001EB02
4J001EB34
4J001EB37
4J001EC03
4J001EC13
4J001EC44
4J001EC46
4J001EC54
4J001ED34
4J001ED46
4J001FA03
4J001FB03
4J001GA01
4J001GA12
4J001JA01
4J001JA02
4J001JA05
4J001JA07
4J001JB01
4J001JB16
4J002CL052
4J002CL072
4J002CL092
4J002CN001
4J002CN011
4J002CN021
4J002CN031
4J002CN041
4J002DA086
4J002DC006
4J002DE146
4J002DL006
4J002FA046
4J002FA086
4J002FD016
4J002FD202
4J002GM00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】 本発明の目的は、流動性に優れた成形用樹脂組成物を提供することにある。
【解決手段】 ポリアミド(am)及び/又は前記ポリアミド(am)のブロックとポリエーテル(b)のブロックとを構成単位として有するブロックポリマー(A)を含有してなるポリフェニレンサルフェート樹脂用流動性向上剤(X);ポリフェニレンサルフェート樹脂用流動性向上剤(X)と、ポリフェニレンサルフェート樹脂(D)とを含有してなる成形用樹脂組成物(Y)。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド(am)及び/又は
前記ポリアミド(am)のブロックとポリエーテル(b)のブロックとを構成単位として有するブロックポリマー(A)
を含有してなるポリフェニレンサルフェート樹脂用流動性向上剤(X)。
【請求項2】
前記ポリアミド(am)の数平均分子量(Mn)が、500~6,000である請求項1記載のポリフェニレンサルフェート樹脂用流動性向上剤(X)。
【請求項3】
請求項1記載のポリフェニレンサルフェート樹脂用流動性向上剤(X)と、ポリフェニレンサルフェート樹脂(D)とを含有してなる成形用樹脂組成物(Y)。
【請求項4】
前記(X)と(D)との重量比[(X)/(D)]が、0.5/99.5~20/80である請求項3記載の成形用樹脂組成物(Y)。
【請求項5】
さらに、無機フィラー(E)を含有してなる請求項3記載の成形用樹脂組成物(Y)。
【請求項6】
前記(E)の重量と、前記(X)と(D)との合計の重量との重量比[(E)/{(X)+(D)}]が20/80~95/5である請求項5記載の成形用樹脂組成物(Y)。
【請求項7】
請求項3~6のいずれか記載の成形品樹脂組成物(Y)を成形した成形品(Z)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
成形用樹脂組成物として、例えば、ポリフェニレンサルフェート樹脂と液晶樹脂と充填材とを含む樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-195874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術であっても、成形時の流動性については、十分に満足できるものとは言えず、流動性に優れた成形用樹脂組成物が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、本発明に到達した。すなわち本発明は、ポリアミド(am)及び/又は前記ポリアミド(am)のブロックとポリエーテル(b)のブロックとを構成単位として有するブロックポリマー(A)を含有してなるポリフェニレンサルフェート樹脂用流動性向上剤(X)である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のポリフェニレンサルフェート樹脂用流動性向上剤(X)は、以下の効果を奏する。
(1)成形用樹脂組成物(Y)に優れた流動性を付与する。
(2)成形用樹脂組成物(Y)の成形品に優れた靭性を付与する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<ポリアミド(am)>
本発明におけるポリアミド(am)としては、数平均分子量[以下、Mnと略記。測定はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法による。]は、好ましくは500~6,000であり、さらに好ましくは800~5,000であり、とくに好ましくは1,000~3,500である。
【0008】
本発明における数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定することができる。
装置(一例) :「HLC-8120」[東ソー(株)製]
カラム(一例):「TSKgelGMHXL」[東ソー(株)製](2本)
「TSKgelMultiporeHXL-M」[東ソー(株)製]
(1本)
試料溶液 :0.3重量%のオルトジクロロベンゼン溶液
溶液注入量 :100μl
流量 :1ml/分
測定温度 :135℃
検出装置 :屈折率検出器
基準物質 :標準ポリスチレン(TSKstandardPOLYSTYRENE)12点(分子量:500、1,050、2,800、5,970、9,100、18,100、37,900、96,400、190,000、355,000、1,090,000、2,890,000)[東ソー(株)製]
【0009】
ポリアミド(am)としては、アミド形成性モノマーを開環重合又は重縮合したものが挙げられる。
アミド形成性モノマーとしては、ラクタム(am1)、アミノカルボン酸(am2)、およびジアミン(am3)とジカルボン酸(am4)との混合物が挙げられる。
ラクタム(am1)としては、炭素数[以下、Cと略記することがある]4~20のラクタム(カプロラクタム、エナントラクタム、ラウロラクタム及びウンデカノラクタム等)等が挙げられる。
(am1)の開環重合体としては、例えばナイロン4、ナイロン5、ナイロン6、ナイロン8およびナイロン12が挙げられる。
【0010】
アミノカルボン酸(am2)としては、C6~12のアミノカルボン酸、例えばω-アミノカプロン酸、ω-アミノエナント酸、ω-アミノカプリル酸、ω-アミノペラルゴン酸、ω-アミノカプリン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸及びこれらの混合物が挙げられる。
【0011】
ジアミン(am3)としては、C2~40のジアミン、例えば脂肪族、脂環式および芳香(脂肪)族ジアミン、並びにこれらの混合物が挙げられる。
脂肪族ジアミンとしてはC2~40の脂肪族ジアミン、例えばエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、1,18-オクタデカンジアミンおよび1,20-エイコサンジアミンが挙げられる。
脂環式ジアミンとしては、C5~40の脂環式ジアミン、例えば1,3-又は1,4-シクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、4,4’-ジアミノシクロヘキシルメタンおよび2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパンが挙げられる。
芳香脂肪族ジアミンとしては、C7~20の芳香脂肪族ジアミン、例えばキシリレンジアミン、ビス(アミノエチル)ベンゼン、ビス(アミノプロピル)ベンゼンおよびビス(アミノブチル)ベンゼンが挙げられる。
芳香族ジアミンとしては、C6~40の芳香族ジアミン、例えばp-フェニレンジアミン、2,4-又は2,6-トルイレンジアミン又は2,2-ビス(4,4’-ジアミノフェニル)プロパンが挙げられる。
【0012】
ジカルボン酸(am4)としては、C2~40のジカルボン酸、例えば脂肪族ジカルボン酸、芳香環含有ジカルボン酸、及び脂環式ジカルボン酸、並びにこれらの混合物が挙げられる。前記ジカルボン酸の誘導体〔例えば酸無水物、低級(C1~4)アルキルエステルおよびジカルボン酸塩[アルカリ金属(例えばリチウム、ナトリウムおよびカリウム)]〕およびこれらの2種以上の混合物を用いてもよい。
【0013】
脂肪族ジカルボン酸としては、C2~40の脂肪族ジカルボン酸(好ましくは4~20、さらに好ましくは6~12)、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、マレイン酸、フマル酸およびイタコン酸が挙げられる。
芳香環含有ジカルボン酸としてはC8~40の芳香環含有ジカルボン酸(好ましくは8~16、さらに好ましくは8~14)、例えばオルト-、イソ-又はテレフタル酸、2,6-又は2,7-ナフタレンジカルボン酸、ジフェニル-4,4’-ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、トリレンジカルボン酸、キシリレンジカルボン酸および5-スルホイソフタル酸アルカリ金属(上記に同じ)塩が挙げられる。
脂環式ジカルボン酸としては、C5~40の脂環式ジカルボン酸(好ましくは6~18、さらに好ましくは8~14)、例えばシクロプロパンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキセンジカルボン酸、ジシクロヘキシル-4,4’-ジカルボン酸およびショウノウ酸が挙げられる。
【0014】
上記アミド形成性モノマーのうち、好ましいのはカプロラクタム、12-アミノドデカン酸およびアジピン酸/ヘキサメチレンジアミン、さらに好ましいのはカプロラクタムである。
【0015】
ポリアミド(am)の製造法としては、上記ジカルボン酸(am4)(C2~40のジカルボン酸、好ましくはC4~20のジカルボン酸)または上記ジアミン(am3)(C2~40のジアミン、好ましくはC4~20のジアミン)または水の1種またはそれ以上を分子量調整剤として使用し、その存在下に上記アミド形成性モノマーを開環重合あるいは重縮合させる方法が挙げられる。
【0016】
<ポリエーテル(b)>
本発明におけるポリエーテル(b)としては、ポリエーテル(b1)、ポリエーテル含有親水性ポリマー(b2)等が挙げられる。流動性及び靭性の観点から望ましいのはポリエーテル(b1)である。
なお、親水性ポリマーとは、吸水率(24時間)が、0.1重量%以上のポリマーを意味する。
【0017】
ポリエーテル(b1)としては、ポリエーテルジオール(b1-1)、ポリエーテルジアミン(b1-2)及びこれらの変性物(b1-3)が挙げられる。
ポリエーテルジオール(b1-1)としては、ジオール(b0)にアルキレンオキサイド(以下AOと略記する。)を付加反応させることにより得られるものが挙げられ、具体的には一般式(1)で表されるものが挙げられる。
H-(OR-O-E-O-(RO)-H (1)
【0018】
一般式(1)におけるEは、ジオール(b0)からすべての水酸基を除いた残基である。
一般式(1)におけるR及びRは、それぞれ独立に炭素数2~4のアルキレン基、炭素数5~12のアルキレン基、スチレン基及びクロロメチル基である。炭素数2~4のアルキレン基としては、エチレン基、1,2-又は1,3-プロピレン基及び1,2-、1,3-、1,4-又は2,3-ブチレン基等が挙げられる。
一般式(1)におけるa及びbは、(OR)及び(RO)の平均付加モル数であり、それぞれ独立に1~300であり、好ましくは2~250、更に好ましくは10~100である。
一般式(1)におけるa、bがそれぞれ2以上の場合のR、Rは、同一でも異なっていてもよく、(OR、(RO)部分はランダム結合でもブロック結合でもよい。
【0019】
ジオール(b0)としては、炭素数2~12の脂肪族2価アルコール、炭素数5~12の脂環式2価アルコール、炭素数6~18の芳香族2価アルコール、及び、3級アミノ基含有ジオール等が挙げられる。
【0020】
炭素数2~12の脂肪族2価アルコールとしては、エチレングリコール(以下EGと略記する。)、1,2-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール及び1,12-ドデカンジオールが挙げられる。
炭素数5~12の脂環式2価アルコールとしては、1,4-ジ(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン及び1,5-ジ(ヒドロキシメチル)シクロヘプタン等が挙げられる。
炭素数6~18の芳香族2価アルコールとしては、単環芳香族2価アルコール(キシリレンジオール、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン及びウルシオール等)及び多環芳香族2価アルコール(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4’-ジヒドロキシジフェニル-2,2-ブタン、ジヒドロキシビフェニル、ジヒドロキシナフタレン及びビナフトール等)等が挙げられる。
【0021】
3級アミノ基含有ジオールとしては、炭素数1~12の脂肪族又は脂環式1級アミン(メチルアミン、エチルアミン、シクロプロピルアミン、1-プロピルアミン、2-プロピルアミン、ペンチルアミン、イソペンチルアミン、シクロペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ヘプチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン及びドデシルアミン等)のビスヒドロキシアルキル化物及び炭素数6~12の芳香族1級アミン(アニリン及びベンジルアミン等)のビスヒドロキシアルキル化物が挙げられる。
これらのうち、AOとの反応性の観点からジオール(b0)として好ましいのは、炭素数2~12の脂肪族2価アルコール及び炭素数6~18の芳香族2価アルコールであり、更に好ましいのはEG及びビスフェノールAである。
【0022】
ポリエーテルジオール(b1-1)は、ジオール(b0)にAOを付加反応させることにより製造することができる。
AOとしては、炭素数2~4のAO[エチレンオキサイド(以下EOと略記する。)、1,2-又は1,3-プロピレンオキサイド、1,2-、1,3-、1,4-又は2,3-ブチレンオキサイド、及びこれらの2種以上の併用系]が用いられるが、必要により他のAO[炭素数5~12のα-オレフィンオキサイド、スチレンオキサイド及びエピハロヒドリン(エピクロルヒドリン等)等]を少しの割合(AOの全重量に基づいて30重量%以下)で併用することもできる。
2種以上のAOを併用するときの結合形式は、ランダム結合、ブロック結合のいずれでもよい。AOとして好ましいのは、EO単独及びEOとEO以外のAOとの併用である。
【0023】
AOの付加反応は、公知の方法、例えばアルカリ触媒の存在下、100~200℃の温度で行うことができる。
一般式(1)で表されるポリエーテルジオール(b1-1)の重量に基づく、(OR及び(RO)の含有率は、好ましくは5~99.8重量%であり、更に好ましくは8~99.6重量%、特に好ましくは10~98重量%である。
一般式(1)における(OR)a及び(RO)の重量に基づくオキシエチレン基の含有率は、好ましくは5~100重量%であり、更に好ましくは10~100重量%、特に好ましくは50~100重量%、最も好ましくは60~100重量%である。
ポリエーテルジオール(b1-1)としては、ビスフェノールAのEO付加物、及び、ポリエチレングリコールが好ましい。
【0024】
ポリエーテルジアミン(b1-2)としては、一般式(2)で表されるものが挙げられる。
N-R-(OR-O-E-O-(RO)-R-NH (2)
【0025】
一般式(2)におけるEは、ジオール(b0)からすべての水酸基を除いた残基である。
ジオール(b0)としては、上記ポリエーテルジオール(b1-1)について例示したものと同様のものが挙げられ、好ましい範囲も同様である。
一般式(2)におけるR、R、R及びRは、それぞれ独立に炭素数2~4のアルキレン基、炭素数5~12のアルキレン基、スチレン基及びクロロメチル基である。炭素数2~4のアルキレン基としては、一般式(1)におけるR及びRとして例示したものと同様のものが挙げられる。
一般式(2)におけるc及びdは、(OR)及び(RO)の平均付加モル数であり、それぞれ独立に1~300であり、好ましくは2~250、更に好ましくは10~100である。
一般式(2)におけるc、dがそれぞれ2以上の場合のR、Rは、同一でも異なっていてもよく、(OR、(RO)部分はランダム結合でもブロック結合でもよい。
【0026】
ポリエーテルジアミン(b1-2)は、ポリエーテルジオール(b1-1)が有するすべての水酸基を、アルキルアミノ基に変換することにより得ることができる。例えばポリエーテルジオール(b1-1)とアクリロニトリルとを反応させ、得られたシアノエチル化物を水素添加することにより製造することができる。
ポリエーテルジアミン(b1-2)としては、α,ω-ジアミノポリエチレングリコール及びα,ω-ジアミノプロピレングリコール等が挙げられる。
【0027】
変性物(b1-3)としては、ポリエーテルジオール(b1-1)又はポリエーテルジアミン(b1-2)のアミノカルボン酸変性物(末端アミノ基)、イソシアネート変性物(末端イソシアネート基)及びエポキシ変性物(末端エポキシ基)等が挙げられる。
アミノカルボン酸変性物は、ポリエーテルジオール(b1-1)又はポリエーテルジアミン(b1-2)と、アミノカルボン酸又はラクタムとを反応させることにより得ることができる。
イソシアネート変性物は、ポリエーテルジオール(b1-1)又はポリエーテルジアミン(b1-2)と、ポリイソシアネートとを反応させるか、ポリエーテルジアミン(b1-2)とホスゲンとを反応させることにより得ることができる。
エポキシ変性物は、ポリエーテルジオール(b1-1)又はポリエーテルジアミン(b1-2)と、ジエポキシド(ジグリシジルエーテル、ジグリシジルエステル及び脂環式ジエポキシド等のエポキシ樹脂:エポキシ当量85~600)とを反応させるか、ポリエーテルジオール(b1-1)とエピハロヒドリン(エピクロロヒドリン等)とを反応させることにより得ることができる。
【0028】
ポリエーテル含有親水性ポリマー(b2)としては、例えば、ポリエーテルジオール(b1-1)のセグメントを有するポリエーテルエステルアミド(b2-1)、(b1-1)のセグメントを有するポリエーテルアミドイミド(b2-2)、(b1-1)のセグメントを有するポリエーテルエステル(b2-3)、ポリエーテルジアミン(b1-2)のセグメントを有するポリエーテルアミド(b2-4)及び(b1-1)又は(b1-2)のセグメントを有するポリエーテルウレタン(b2-5)が挙げられる。
【0029】
ポリエーテル(b)のMnは、耐熱性及びポリアミド(am)との反応性の観点から、好ましくは150~20,000であり、更に好ましくは300~18,000、特に好ましくは1,000~15,000、最も好ましくは1,200~8,000である。
【0030】
<ブロックポリマー(A)>
本発明におけるブロックポリマー(A)は、上記ポリアミド(am)のブロックとポリエーテル(b)のブロックとを構成単位として有する。ブロックポリマー(A)を構成するポリアミド(am)及びポリエーテル(b)は、それぞれ1種又は2種以上であってもよい。
【0031】
ブロックポリマー(A)を構成するポリアミド(am)のブロックと、ポリエーテル(b)のブロックの重量比[(am)/(b)]は、靭性の観点から、好ましくは10/90~80/20であり、更に好ましくは20/80~75/25である。
【0032】
ブロックポリマー(A)を構成するポリアミド(am)のブロックと、ポリエーテル(b)のブロックとが結合した構造には、(am)-(b)型、(am)-(b)-(am)型、(b)-(am)-(b)型及び[(am)-(b)]型(nは平均繰り返し数を表す。)が含まれる。
ブロックポリマー(A)の構造としては、流動性の観点から、ポリアミド(am)とポリエーテル(b)とが繰り返し交互に結合した[(am)-(b)]型のものが好ましい。
[(am)-(b)]型の構造におけるnは、流動性及び靭性の観点から、好ましくは2~50であり、更に好ましくは2.3~30、特に好ましくは2.7~20、最も好ましくは3~10である。nは、ブロックポリマー(A)のMn及びH-NMR分析により求めることができる。
【0033】
ブロックポリマー(A)のMnは、後述する流動性及び靭性の観点から、好ましくは2,000~100,000、さらに好ましくは5,000~60,000、特に好ましくは10,000~40,000である。
【0034】
ブロックポリマー(A)が、ポリアミド(am)のブロックとポリエーテル(b)のブロックとが、エステル結合、アミド結合、エーテル結合又はイミド結合を介して結合した構造を有するものである場合、下記の方法で製造することができる。
上記結合のうち、工業的な観点から、好ましいのは、エステル結合、アミド結合である。
【0035】
ポリアミド(am)とポリエーテル(b)を反応容器に投入し、撹拌下、反応温度100~250℃、圧力0.003~0.1MPaで、アミド化反応、エステル化反応又はイミド化反応で生成する水(以下生成水と略記する。)を反応系外に除去しながら、1~50時間反応させる方法が挙げられる。反応に用いるポリアミド(am)とポリエーテル(b)の重量比[ポリアミド(am)/ポリエーテル(b)]は、靭性の観点から、10/90~80/20であり、更に好ましくは20/80~75/25である。
エステル化反応の場合、反応を促進させるために、ポリアミド(am)及びポリエーテル(b)の合計重量に基づいて、0.05~0.5重量%の触媒を使用することが好ましい。
触媒としては、無機酸(硫酸及び塩酸等)、有機スルホン酸(メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸及びナフタレンスルホン酸等)、アンチモン触媒(三酸化アンチモン等)、錫触媒(モノブチル錫オキサイド及びジブチル錫オキサイド等)、チタン触媒(テトラブチルチタネート、ビストリエタノールアミンチタネート及びシュウ酸チタン酸カリウム等)、ジルコニウム触媒(テトラブチルジルコネート、オキシ酢酸ジルコニウム等)及び亜鉛触媒(酢酸亜鉛等)等が挙げられる。触媒を使用した場合は、エステル化反応終了後必要により触媒を中和し、吸着剤で処理して触媒を除去・精製することができる。
【0036】
生成水を反応系外に除去する方法としては、以下の方法が挙げられる。
(1)水と相溶しない有機溶媒(例えばトルエン、キシレン及びシクロヘキサン等)を使用して、還流下、有機溶媒と生成水とを共沸させて、生成水のみを反応系外に除去する方法。
(2)反応系内にキャリアガス(例えば空気、窒素、ヘリウム、アルゴン及び二酸化炭素等)を吹き込み、キャリアガスと共に生成水を反応系外に除去する方法。
(3)反応系内を減圧にして生成水を反応系外に除去する方法。
【0037】
<ポリフェニレンサルフェート樹脂用流動性向上剤(X)>
本発明のポリフェニレンサルフェート樹脂用流動性向上剤(X)は、前記ポリアミド(am)及び/又は前記ポリアミドのブロックとポリエーテル(b)のブロックとを構成単位として有するブロックポリマー(A)を含有してなる。
上記ポリフェニレンサルフェート樹脂用流動性向上剤(X)は、後述のポリフェニレンサルフェート樹脂(D)用流動性向上剤として、とりわけ成形時の流動性及び成形品の靭性を向上する用途に好適に使用できる。
ポリフェニレンサルフェート樹脂用流動性向上剤(X)における、前記ポリアミド(am)及び/又は前記ポリアミドのブロックとポリエーテル(b)のブロックとを構成単位として有する前記ブロックポリマー(A)の合計の含有量は、ポリフェニレンサルフェート樹脂用流動性向上剤(X)の重量に基づいて、好ましくは80~100重量%、さらに好ましくは90~99.7重量%である。
【0038】
ポリフェニレンサルフェート樹脂用流動性向上剤(X)は、流動性および靭性の観点から、ポリアミド(am)又はポリアミド(am)のブロックとポリエーテル(b)のブロックとを構成単位として有するブロックポリマー(A)を含有してなることが好ましく、ポリアミド(am)のブロックとポリエーテル(b)のブロックとを構成単位として有するブロックポリマー(A)を含有してなることがさらに好ましい。
【0039】
ポリフェニレンサルフェート樹脂用流動性向上剤(X)には、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要により、公知の樹脂用添加剤(G)を含有してもよい。
樹脂用添加剤(G)としては、相溶化剤(カルボン酸変性ポリプロピレン等)、難燃剤(グアナミン等)、顔料(酸化チタン等)、染料(アゾ系染料等)、核剤(安息香酸ナトリウム等)、滑剤(カルバナロウワックス等)、可塑剤(ジオクチルフタレート等)、酸化防止剤(トリフェニルホスファイト等)、紫外線吸収剤[2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等]が挙げられる。
ポリフェニレンサルフェート樹脂用流動性向上(X)における、前記樹脂用添加剤(G)の合計の含有量は、用途によって異なるが、ポリフェニレンサルフェート樹脂用流動性向上剤(X)の重量に基づいて、例えば45重量%以下、添加効果の観点から、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは0.3~10重量%である。
【0040】
<ポリフェニレンサルフェート樹脂(D)>
本発明におけるポリフェニレンサルフェート樹脂(D)は、ポリハロゲン化芳香族化合物(c1)とアルカリ金属硫化物(c2)を重縮合させた後にスルホン化剤(d)でスルホン化することにより製造できる。また、スルホン化することにより、ポリフェニレンサルフェート樹脂(D)にスルホ基を導入してもよい。
【0041】
ポリハロゲン化芳香族化合物(c1)としては、p-ジクロロベンゼン、m-ジクロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、p-ジブロモベンゼン、p-ジヨードベンゼン、1-クロロ-4-ブロモベンゼン、1,3,5-トリクロロベンゼン、1,2,4,5-テトラクロロベンゼン、ヘキサクロロベンゼン及び2,5-ジクロロトルエン等が挙げられる。
【0042】
アルカリ金属硫化物(c2)としては、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム及び硫化セシウム等が挙げられる。スルホン化剤(d)としては濃硫酸、発煙硫酸及びクロロスルホン酸等が挙げられる 。
【0043】
上記ポリフェニレンサルフェート樹脂(D)としては、例えば、直鎖型ポリフェニレンサルフェート樹脂、架橋型ポリフェニレンサルフェート樹脂が挙げられ、好ましいのは直鎖型ポリフェニレンサルフェート樹脂である。
【0044】
<成形用樹脂組成物(Y)>
本発明の成形用樹脂組成物(Y)は、上記ポリフェニレンサルフェート樹脂用流動性向上剤(X)と、ポリフェニレンサルフェート樹脂(D)とを含有してなる。
ポリフェニレンサルフェート樹脂用流動性向上剤(X)とポリフェニレンサルフェート樹脂(D)との重量比[(X)/(D)]は、流動性及び靭性の観点から、好ましくは0.5/99.5~20/80、さらに好ましくは1/99~10/90である。
【0045】
本発明の成形用樹脂組成物(Y)には、物性向上のため、さらに後述の無機フィラー(E)を含有してもよい。
無機フィラー(E)の重量と、ポリフェニレンサルフェート樹脂用流動性向上剤(X)とポリフェニレンサルフェート樹脂(D)との合計の重量との重量比[(E)/{(X)+(D)}]は、流動性及び靭性の観点から、好ましくは20/80~95/5、さらに好ましくは30/70~90/10である。
【0046】
本発明の成形用樹脂組成物(Y)は、種々の成形品用、とりわけ、自動車部品用途、電子・電気機器用途にきわめて有用である。
【0047】
本発明の成形用樹脂組成物(Y)には、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要により、上記ポリフェニレンサルフェート樹脂用流動性向上剤(X)、ポリフェニレンサルフェート樹脂(D)、無機フィラー(E)以外に、公知の樹脂用添加剤(G)を含有してもよい。
樹脂用添加剤(G)としては、相溶化剤(カルボン酸変性ポリプロピレン等)、難燃剤(グアナミン等)、顔料(酸化チタン等)、染料(アゾ系染料等)、核剤(安息香酸ナトリウム等)、滑剤(カルバナロウワックス等)、可塑剤(ジオクチルフタレート等)、酸化防止剤(トリフェニルホスファイト等)、紫外線吸収剤[2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等]が挙げられる。
樹脂用添加剤(G)の合計の含有量は、用途によって異なるが、ポリフェニレンサルフェート樹脂用流動性向上剤(X)とポリフェニレンサルフェート樹脂(D)と、無機フィラー(E)との合計重量に基づいて、例えば45重量%以下、添加効果の観点から、好ましくは0.01~30重量%、さらに好ましくは0.1~10重量%である。
【0048】
本発明の成形用樹脂組成物(Y)は、上記ポリフェニレンサルフェート樹脂用流動性向上剤(X)、ポリフェニレンサルフェート樹脂(D)、必要により無機フィラー(E)及び必要により樹脂用添加剤(G)を溶融混合することにより得られる。
溶融混合する方法としては、一般的にはペレット状又は粉体状の成分を適切な混合機、例えばヘンシェルミキサー等で混合した後、押出機で溶融混合してペレット化する方法が適用できる。
溶融混合時の各成分の添加順序には特に限定はないが、例えば、(1)ポリフェニレンサルフェート樹脂用流動性向上剤(X)、ポリフェニレンサルフェート樹脂(D)、必要により無機フィラー(E)及び必要により樹脂用添加剤(G)を一括して溶融混合する方法、
(2)ポリフェニレンサルフェート樹脂用流動性向上剤(X)、ポリフェニレンサルフェート樹脂(D)の一部を予め溶融混合してポリフェニレンサルフェート樹脂用流動性向上剤(X)の高濃度樹脂組成物(マスターバッチ樹脂組成物)を作製し、その後、残りのポリフェニレンサルフェート樹脂(D)、必要により無機フィラー(E)並びに必要により樹脂用添加剤(G)を溶融混合する方法、が挙げられる。
【0049】
<無機フィラー(E)>
本発明における無機フィラー(E)としては、金属酸化物(例えばアルミナ、酸化チタン、酸化スズ);金属水酸化物(例えば水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム);金属炭酸塩(例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム);金属硫化物(例えば二硫化モリブデン);金属(例えばステンレス鋼、アルミニウム、銅);ケイ酸塩(例えばタルク、マイカ);シリカ(例えばガラス繊維)、炭素類(例えば炭素繊維)等が挙げられる。
上記無機フィラー(E)のうち、流動性および靭性の観点から、好ましいのは金属酸化物、金属、ガラス、さらに好ましいのは金属である。
【0050】
無機フィラー(E)の粒子径(繊維形状の場合は、繊維径)についてはとくに限定されないが、無機フィラー(E)の体積平均粒子径(繊維の場合は、繊維径)は成形品の機械的強度及び成形性の観点から、好ましくは0.1~1,000μm、さらに好ましくは0.5~500μm、とくに好ましくは1~100μmである。
【0051】
<成形品(Z)>
本発明の成形品は、上記成形用樹脂組成物(Y)を成形して得られる。該成形方法としては、射出成形、圧縮成形、カレンダ成形、スラッシュ成形、回転成形、押出成形、ブロー成形、発泡成形、フィルム成形(キャスト法、テンター法、インフレーション法等)等が挙げられ、目的に応じて任意の方法で成形できる。
【0052】
本発明のポリフェニレンサルフェート樹脂用流動性向上剤(X)は、成形用樹脂組成物(Y)に、優れた流動性、優れた靭性を与える。このため、樹脂組成物(Y)、その成形品は、各種樹脂成形品、とりわけ、自動車部品用途、電子・電気機器用途にきわめて有用である。
【実施例0053】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下において部は重量部を示す。
【0054】
<実施例1>
撹拌機、温度計、加熱冷却装置、窒素導入管及び減圧装置を備えたステンレス製耐圧反応容器に、ε-カプロラクタム85.5部、テレフタル酸11.5部、酸化防止剤[「イルガノックス1010」、チバスペシャリティーケミカルズ(株)製]0.3部及び水6部を投入し、窒素置換後、密閉下、撹拌しながら220℃まで昇温し、同温度(圧力:0.2~0.3MPa)で4時間撹拌し、ポリアミド(am-1)を含有してなるポリフェニレンサルフェート樹脂用流動性向上剤(X-1)を得た。
なお、(am-1)の酸価は80、Mnは1,400であった。
【0055】
<実施例2>
撹拌機、温度計、加熱冷却装置、窒素導入管及び減圧装置を備えたステンレス製耐圧反応容器に、ε-カプロラクタム197.0部、テレフタル酸11.5部、酸化防止剤[「イルガノックス1010」、チバスペシャリティーケミカルズ(株)製]0.3部及び水6部を投入し、窒素置換後、密閉下、撹拌しながら220℃まで昇温し、同温度(圧力:0.2~0.3MPa)で4時間撹拌し、ポリアミド(am-2)を含有してなるポリフェニレンサルフェート樹脂用流動性向上剤(X-2)を得た。
なお、(am-2)の酸価は37、Mnは3,000であった。
【0056】
<実施例3>
撹拌機、温度計、加熱冷却装置、窒素導入管及び減圧装置を備えたステンレス製耐圧反応容器に、ポリアミド(am-1)20.3部、ビスフェノールAのEO付加物(Mn4,000)(b1-1)79.7部、酸化防止剤[「イルガノックス1010」チバスペシャリティーケミカルズ(株)製]0.3部および酢酸ジルコニル0.5部を仕込み、230℃、0.13kPa以下の減圧下の条件で4時間重合させ粘稠なポリマーを得た。このポリマーをベルト上にストランド状で取り出し、ペレット化することによりブロックポリマー(A-1)(Mn30,000)を含有してなるポリフェニレンサルフェート樹脂用流動性向上剤(X-3)を得た。
【0057】
<実施例4>
撹拌機、温度計、加熱冷却装置、窒素導入管及び減圧装置を備えたステンレス製耐圧反応容器に、ポリアミド(am-2)46.3部、ビスフェノールAのEO付加物(Mn4,000)(b1-1)53.7部、酸化防止剤[「イルガノックス1010」チバスペシャリティーケミカルズ(株)製]0.3部および酢酸ジルコニル0.5部を仕込み、230℃、0.13kPa以下の減圧下の条件で4時間重合させ粘稠なポリマーを得た。このポリマーをベルト上にストランド状で取り出し、ペレット化することによりブロックポリマー(A-2)(Mn35,000)を含有してなるポリフェニレンサルフェート樹脂用流動性向上剤(X-4)を得た。
【0058】
<実施例5>
撹拌機、温度計、加熱冷却装置、窒素導入管及び減圧装置を備えたステンレス製耐圧反応容器に、12-アミノドデカン酸53.2部、テレフタル酸11.5部、酸化防止剤[「イルガノックス1010」、チバスペシャリティーケミカルズ(株)製]0.3部を投入し、窒素置換後、密閉下、撹拌しながら220℃まで昇温し、同温度(圧力:0.2~0.3MPa)で4時間撹拌し、ポリアミド(am-3)を含有してなるポリフェニレンサルフェート樹脂用流動性向上剤(X-5)を得た。
なお、(am-3)の酸価は120、Mnは1,000であった。
【0059】
<実施例6>
撹拌機、温度計、加熱冷却装置、窒素導入管及び減圧装置を備えたステンレス製耐圧反応容器に、ポリアミド(am-3)45.3部、ビスフェノールAのEO付加物(Mn4,000)(b1-1)54.7部、酸化防止剤[「イルガノックス1010」チバスペシャリティーケミカルズ(株)製]0.3部および酢酸ジルコニル0.5部を仕込み、230℃、0.13kPa以下の減圧下の条件で4時間重合させ粘稠なポリマーを得た。このポリマーをベルト上にストランド状で取り出し、ペレット化することによりブロックポリマー(A-3)(Mn40,000)を含有してなるポリフェニレンサルフェート樹脂用流動性向上剤(X-6)を得た。
【0060】
<実施例7>
撹拌機、温度計、加熱冷却装置、窒素導入管及び減圧装置を備えたステンレス製耐圧反応容器に、ヘキサメチレンジアミン17.3部、アジピン酸26.5部、酸化防止剤[「イルガノックス1010」チバスペシャリティーケミカルズ(株)製]0.3部を投入し、窒素置換後、密閉下、撹拌しながら220℃まで昇温し、同温度(圧力:0.2~0.3MPa)で4時間撹拌した。次に、α、ω-ジアミノポリエチレングリコール(Mn3,400)(b1-2)56.2部、酢酸ジルコニル0.5部を仕込み、230℃、0.13kPa以下の減圧下の条件で4時間重合させ粘稠なポリマーを得た。このポリマーをベルト上にストランド状で取り出し、ペレット化することによりブロックポリマー(A-4)(Mn40,000)を含有してなるポリフェニレンサルフェート樹脂用流動性向上剤(X-7)を得た。
【0061】
<比較例1>
比較のためのポリフェニレンサルフェート樹脂用流動性向上剤(比X-1)として、ビスフェノールAのEO付加物(Mn4,000)(b-1)を使用した。
【0062】
<実施例11~45、比較例11>
表1及び表2に示す配合組成(部)に従って、各ポリフェニレンサルフェート樹脂用流動性向上剤(X)、ポリフェニレンサルフェート樹脂(D)、無機フィラー(E)をヘンシェルミキサーにて3分間ブレンドした後、ベント付き2軸押出機にて、320℃、100rpm、滞留時間5分の条件で溶融混練し、各樹脂組成物を得た。得られた各樹脂組成物(Y)について、後述の<評価方法>で評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0063】
(D-1):直鎖型ポリフェニレンサルフェート樹脂(融点280℃)
(E-1):ガラス繊維[商品名「ガラスチョップドストランドECS03-631K」、セントラルグラスファイバー株式会社](繊維径13μm、カット長3mm)
(E-2):球状アルミナ[商品名「DAM-20」、デンカ株式会社](体積平均粒子径24.6μm)
(E-3):ステンレス鋼粉末(SUS303-L)[富士フィルム和光純薬株式会社](~140メッシュ)
【0064】
<評価方法>
(1)流動性(成形時の流動性)
各樹脂組成物について、アルキメデス螺旋が形成された金型を取り付けた射出成形機を用い、シリンダー温度320℃、金型温度140℃、射出圧力900kgf/cm、射出速度200mm/s、保圧900kgf/cm、冷却時間15秒の成形条件で流動性(mm)を測定した。
流動性向上剤(X)がない場合の流動性(mm)を(R0)とし、流動性向上剤(X)を加えた場合の流動性(mm)を(R1)とした時、下記式(1)により求められた流動性(%)を評価した。
流動性(%)=(R1)×100/(R0) (1)
【0065】
(2)アイゾット衝撃強度(%)
実施例の組成物(Y)を、射出成形機を用い、シリンダー温度320℃、金型温度140℃、射出圧力900kgf/cm、射出速度200mm/s、保圧900kgf/cm、冷却時間15秒の成形条件で成形した。
実施例の組成物(Y)の成形物のアイゾット耐衝撃強度を、JIS K7110に準拠してアイゾット耐衝撃強度(kJ/m)を測定した。
流動性向上剤(X)がない場合のアイゾット耐衝撃強度(kJ/m)を(A0)とし、流動性向上剤(X)を加えた場合のアイゾット耐衝撃強度(kJ/m)を(A1)とした時、下記式(2)により求められたアイゾット耐衝撃強度(%)を評価した。
アイゾット耐衝撃強度(%)=(A1)×100/(A0) (2)
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
表1及び表2の結果から、本発明のポリフェニレンサルフェート樹脂用流動性向上剤(X)は、比較のものと比べて、成形用樹脂組成物(Y)に、優れた流動性、優れた靭性を与えることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のポリフェニレンサルフェート樹脂用流動性向上剤(X)は、成形用樹脂組成物(Y)に、優れた流動性、優れた靭性を与える。このため、樹脂組成物(Y)、その成形品は、各種樹脂成形品、とりわけ、自動車部品用途、電子・電気機器用途にきわめて有用である。