(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068653
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】屋上設置の飛行体用の離着陸場
(51)【国際特許分類】
E01F 3/00 20060101AFI20240513BHJP
【FI】
E01F3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023189695
(22)【出願日】2023-11-06
(31)【優先権主張番号】P 2022179125
(32)【優先日】2022-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】510262150
【氏名又は名称】エアロファシリティー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147348
【弁理士】
【氏名又は名称】堀井 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】木下 幹巳
(72)【発明者】
【氏名】東條 豊
(72)【発明者】
【氏名】吉田 豊司
(72)【発明者】
【氏名】丸山 重明
(72)【発明者】
【氏名】山口 貴史
(57)【要約】
【課題】既存ビルの屋上に、工作物として設置され、飛行体の着陸時の衝撃荷重および衝撃応力に対応が可能な飛行体の離着陸場を提供することである。
【解決手段】建築物屋上設置の飛行体用の離着陸場であって、飛行体が離着陸する離着陸面を有する飛行体用離着陸部と前記飛行体用離着陸部を支持する衝撃荷重による応力対応機構とを有し、前記衝撃荷重による応力対応機構と建築物の屋上との間に実質的に空間がないように設置することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-飛行体が離着陸する離着陸面を有する飛行体用離着陸部と、
-前記飛行体用離着陸部を支持する衝撃荷重による応力対応機構と
を有し、前記衝撃荷重による応力対応機構と建築物の屋上との間に実質的に空間がないように設置することを特徴とする建築物屋上設置の飛行体用の離着陸場。
【請求項2】
前記衝撃荷重による応力対応機構が、前記飛行体用離着陸部を支持するトラス構造体であり、かつ、前記トラス構造体の下部の支点を前記建築物の柱の直上に設置することを特徴とする請求項1に記載の建築物屋上設置の飛行体用の離着陸場。
【請求項3】
前記衝撃荷重による応力対応機構が、前記飛行体用離着陸部を支持する衝撃吸収部材と発泡スチロール構造体とのいずれか1つまたは両方を有することを特徴とする請求項1に記載の建築物屋上設置の飛行体用の離着陸場。
【請求項4】
前記衝撃荷重による応力対応機構が、前記飛行体用離着陸部を支持するトラス構造体、及び、衝撃吸収部材と発泡スチロール構造体とのいずれか1つまたは両方を有することを特徴とする請求項1に記載の建築物屋上設置の飛行体用の離着陸場。
【請求項5】
既存ビル屋上に既に設置されている緊急離着陸場または緊急救助用スペースを含む飛行体用の離着陸用設備に対し、請求項1から請求項4までのいずれかによる改修を施すことを特徴とする建築物屋上設置の飛行体用の離着陸場
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直離着陸機などの飛行体の離着陸場及びその離着陸場を構成する構造材に関し、特に、硬着陸(ハードランディング)時の衝撃を吸収する構造を有する離着陸場及びその構造材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、VTOL(Vertical Take-Off and Landing aircraft)と呼ばれる飛行体の需要が拡大しつつある。垂直離着陸機は全く滑走しないで垂直方向に離着陸する航空機(飛行体)であり、有人機では、「空飛ぶクルマ」「空飛ぶタクシー」として実用化に近づいており、無人機ではドローンによる物品の配送などに広く使われ始めている。
【0003】
なお、本発明において、飛行体とは、垂直離着陸機のほかに、ヘリコプターなど、垂直ではない離着陸勾配を有するものも含まれるものとする。
【0004】
将来的な垂直離着陸機の普及に伴い、垂直離着陸機の離着陸場が多数必要となる。そのような状況の下で、既存のビルなどの建造物の屋上に離着陸場を設けることができれば、利用者にとって極めて便利であり、運航者にとっても利用の拡大が期待でき、垂直離着陸機の普及が急速に進むものと思われる。
【0005】
しかしながら多くの既存ビル屋上に設置されている緊急離着陸場あるいは緊急救助用スペースは常時利用の荷重に耐える構造になっていないこともあり、垂直離着陸機などの飛行体の離着陸には利用できない。
【0006】
すなわち、既存の建造物(ビル)は垂直離着陸機などの飛行体の離着陸を想定した構造で建築されておらず、屋上の床面耐荷重では垂直離着陸機の着陸時の衝撃荷重および集中荷重には耐えられないという問題点がある。
【0007】
なお、特許文献1には、既存の高層ビル屋上に設置されるヘリポートに関する技術思想が開示されている。これによると、屋上の所要高さに設置され、上部離着陸用床版と下部避難用床版からなり、上下床版間は立体トラス梁によって結合し、下部床版は柱などで支持されているヘリポートであって、下部床版を避難場所として活用するようになっている。
【0008】
しかしながら、避難場所として考えられる場所は、立体トラスが組まれている構造のため、トラスの隙間に人が避難しなければならないという非現実的な発明である。
【0009】
また、特許文献1に開示されたヘリポートは、屋上の所要高さに設置されることから、上下床版が屋根とみなされ、建築基準法では建築物となる可能性が高い。その場合、耐震性能の検証など建物全体の建築確認をやり直さなければならない。更に、建物の容積率も増加するなど、このようなヘリポートをビル屋上の所要高さに設置することには多くの問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで発明が解決しようとする課題は、既存ビルの屋上に、工作物として設置され、飛行体の着陸時の衝撃荷重および衝撃応力に対応が可能な飛行体の離着陸場を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様は、建築物屋上設置の飛行体用の離着陸場であって、
-飛行体が離着陸する離着陸面を有する飛行体用離着陸部と、
-前記飛行体用離着陸部を支持する衝撃荷重による応力対応機構と
を有し、前記衝撃荷重による応力対応機構と建築物の屋上との間に実質的に空間がないように設置することを特徴とする。
【0013】
ここで、建築物とは、既存、新築を問わず、高層、中層、低層のビルディング(建造物)であって、目的(オフィス、住宅、店舗、倉庫、鉄道駅、競技場など)を問わず、屋上を有するものであればどのような建築物あるいは建造物であってもよい。
【0014】
また、飛行体用離着陸部とは、上面に離着陸面を有するものであって、アルミデッキ製のものが軽量であり好適であるが、鋼板などの金属平板、コンクリート製、プラスチック製、木材や発泡スチロール板にポリウレア強化塗装を施した材料などの非金属製のものなど、どのような材質、形状のものであってもよい。
【0015】
また、衝撃荷重による応力対応機構とは、特に飛行体の着陸時の衝撃荷重及び衝撃応力に対応し、建築物に損傷を与えないようにする機構であって、衝撃荷重の分散や吸収ができるものであればどのようなものであってもよい。
【0016】
また、衝撃荷重による応力対応機構と建築物の屋上との間に実質的に空間がないように設置するとは、衝撃荷重による応力対応機構の下側と建築物とが直接結合され、あるいはジョイントや接合台座などの結合用部材を介して結合されるものであり、その間に利用できる空間を持たないことを言うが、建築物とみなされない範囲で保守用などの目的の空間を設けることはあってもよい。
【0017】
このようにすると、特許文献1に記載のヘリポートと異なり、屋根を有しないことから、本発明の飛行体の離着陸場は、建築基準法上の建築物に該当せず、工作物となり、上記問題点のいくつかを解消することができる。
【0018】
また、本発明は、特許文献1に記載の発明と異なり、衝撃荷重による応力対応機構により、衝撃荷重を屋上床および下部構造体に直接伝えないという特徴を有する。
【0019】
また、特許文献1に記載の発明は、緊急時に利用する避難用スペースを提供するものであるが、本発明は、常時、離着陸場として利用するものであり、その経済的効果は極めて大きい。
【0020】
次に、本発明の第2の態様は、第1の態様の建築物屋上設置の飛行体用の離着陸場であって、前記衝撃荷重による応力対応機構が、前記飛行体用離着陸部を支持するトラス構造体であり、かつ、前記トラス構造体の下部の支点を前記建築物の柱の直上に設置することを特徴としてもよい。
【0021】
トラス構造とは、部材を三角形に構成したものを基本単位としてその集合体で構成する構造形式であり、種々の形式があるが、適宜選択すればよい。
【0022】
トラス構造体の下部の支点と建築物との結合は、接合台座やジョイントなどの結合部材を用いることが好適であるが、直接結合することであってもよい。
【0023】
なお、本発明は、衝撃荷重による応力対応機構としてトラス構造体を有しており、衝撃応力をトラスによって軸力に変換することで対応している。
【0024】
なお、トラス構造体の下部の支点を前記建築物の柱の直上に設置するとしたが、真の直上でなくとも、建築物に悪影響を与えない範囲で、実質的に直上とみなすことができる、柱の直上の近傍部分や柱から水平方向に延伸する大梁に近接する部分を含むものとする。
【0025】
このようにすると、飛行体用離着陸部に、飛行体の着陸時の集中荷重が掛かった場合でも、トラス構造がそれを分散させて、複数の建築物との支点に、略均等に荷重を分散させることができる。それによって、既存ビルの耐荷重の範囲内で飛行体の運航を行わせることができる。
【0026】
また、このようにすると、トラス構造が、比較的短尺の部材を組み立てることで構成されることから、既存の建築物(ビル)のエレベーターでの運搬が可能となり、荷揚げ用の大型クレーンの使用にかかる費用を低減できるという利点もある。
【0027】
更に、トラス構造の組み立てでは、工事方法も溶接等の火花が散る、あるいは火を使う作業などを避けることができるので、建築物の火災などのリスクを抑えて改修を行うことができる。
【0028】
次に、本発明の第3の態様は、第1の態様の建築物屋上設置の飛行体用の離着陸場であって、前記衝撃荷重による応力対応機構が、前記飛行体用離着陸部を支持する衝撃吸収部材と発泡スチロール構造体とのいずれか1つまたは両方を有することを特徴としてもよい。
【0029】
ここで、衝撃吸収部材とは高所から自由落下する物体の床面衝突時の衝撃力を衝撃吸収材の変形エネルギーに変換することで衝撃を吸収するものであって、ゲル状のもの(タイカ社のαGEL(登録商標))や弾性ポリウレタン材のもの(getzner社のSylodamp(登録商標))などが広く用いられており、これらを使用すればよい。
【0030】
また、発泡スチロール構造体は,EPS工法(発泡スチロール土木工法)として既に幅広く土木工事で大型の発泡スチロールブロックを盛土材として使用して、道路の舗装や軟弱地盤の改良等に使用実績があり、これを応用するものである。
【0031】
発泡スチロール構造体は、軽量であること、耐圧縮性(緩衝能力)が高いこと、施工が容易であることなどの特徴があり、既存建築物の屋上設置の飛行体載置用の離着陸場に用いるのは好適である。
【0032】
ここで、飛行体用離着陸部の下方に衝撃吸収部材を1層設け、その下に発泡スチロール構造体を2層程度設けることが好適であるが、その順序、層数についてはそれに限定されない。
【0033】
また、衝撃吸収部材あるいは発泡スチロール構造体のいずれか一方であっても、それなりの効果を発揮することができる。
【0034】
なお、いずれの部材も、その単位の大きさを、適宜、指定できるから、既存の建築物(ビル)のエレベーターでの運搬が可能となり、荷揚げ用の大型クレーンの使用にかかる費用を低減できるという利点もある。
【0035】
更に、これらの組み立てでは、工事方法も溶接等の火花が散る、あるいは火を使う作業などを避けることができるので、建築物の火災などのリスクを抑えて改修を行うことができる。
【0036】
次に、本発明の第4の態様は、第1の態様の建築物屋上設置の飛行体用の離着陸場であって、前記衝撃荷重による応力対応機構が、前記飛行体用離着陸部を支持するトラス構造体、及び、衝撃吸収部材と発泡スチロール構造体とのいずれか1つまたは両方を有することを特徴としてもよい。
【0037】
これは、本発明の第2の態様と第3の態様を併せ持つ態様であり、衝撃荷重・衝撃応力の吸収・分散を重ねて行うことで、その効果を更に高めるものである。
【0038】
次に、本発明の第5の態様は、建築物屋上設置の飛行体用の離着陸場であって、既存ビル屋上に既に設置されている緊急離着陸場または緊急救助用スペースを含む飛行体用の離着陸用設備に対し、第1から第4の態様のいずれかの態様による改修を施すことを特徴としてもよい。
【0039】
ここで、既設の、緊急離着陸場を含む飛行体用の離着陸用設備は、
a)通常床強度しかない屋上コンクリート面を利用するもの。
b)屋上面から多少嵩上げし、グレーチング床やファインフロア(登録商標)を敷き詰めたもの。が一般的である。ここで、a)の場合は、そのまま利用しても、屋上コンクリートを剥がしても、どちらの方法でも改修が可能である。また、b)の場合は設置物を撤去して新たに設置することになる。
【0040】
いずれにせよ、既存屋上の緊急離着陸場または緊急救助用スペースを改修する場合は、既に、スペースは確保されており、床構造側の支点位置に制約を受けることはなく、比較的容易に設置することが可能である。
【0041】
なお、本発明では、衝撃荷重による応力対応につき説明したが、振動についても、建築物に悪影響を与える場合があり、実用化されている防振材や制振材を衝撃荷重による応力対応機構と併せて使用することで、低減が可能である。
【0042】
上記のように、本発明の屋上設置の飛行体用の離着陸場によれば、既存ビルの屋上に、工作物として設置され、飛行体の着陸時の衝撃荷重および衝撃応力に対応が可能な飛行体の離着陸場を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】本発明に係る屋上設置の飛行体用の離着陸場の実施形態の斜視図である
【
図2】本発明の第1の実施形態の離着陸場の一例の正面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態の離着陸場の一例の部分断面斜視図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態の離着陸場の一例の部分正面図及び側面図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態の離着陸場の一例の側面図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態の離着陸場の別の例の斜視図である。
【
図7】本発明の第1の実施形態の離着陸場の別の例の正面図である。
【
図8】本発明の第1の実施形態の離着陸場の別の例の側面図である。
【
図9】本発明の第1の実施形態の補足説明図である。
【
図10】本発明の第2の実施形態の離着陸場の一例の正面図である。
【
図11】本発明の第2の実施形態の離着陸場の一例の側面図である。
【
図12】本発明の第3の実施形態の離着陸場の一例の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、図面を参照し、本発明に係る屋上設置の飛行体用の離着陸場の実施形態について説明する。なお、以下では本発明の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本発明の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする
【0045】
図1は本発明に係る屋上設置の飛行体用の離着陸場の斜視図であり、
図1(a)が第1の実施形態の一例、
図1(b)が第2の実施形態の一例を示す。
【0046】
本発明の第1の実施形態においては、屋上設置の飛行体用の離着陸場1aは、離着陸面11aを有する飛行体用離着陸部10aと、衝撃荷重による応力対応機構であるトラス構造体20とを有している。
【0047】
ここで、トラス構造体20は、建築物30の上面に形成された屋上床40の上に載置される。全体として、屋上床40の各辺と離着陸面11aの各辺とが平行になるように設置されている。
【0048】
なお、
図1(b)については、第2の実施形態のところで説明する。
【0049】
図2は本発明に係る第1の実施形態の屋上設置の飛行体用の離着陸場の一例の正面図であり、更に、部分拡大図を含んでいる。
【0050】
ここで、トラス構造体20は、接合台座21を介して屋上床40と固定されるものとする。なお。トラス構造体20の下部の支点のうち、接合台座21を有する部分は、建築物30の柱31のほぼ直上に位置することが望ましい。
【0051】
図からわかるように、この方向では、建築物30の柱31の間隔に合わせてトラス構造体20の下部の支点のうち、1つおきに接合台座21が設けられている。
【0052】
図3は本発明に係る第1の実施形態の屋上設置の飛行体用の離着陸場の一例の部分断面斜視図であり、
図4は同じく本発明に係る第1の実施形態の一例の部分正面図(左図)及び側面図(右図)である。飛行体用離着陸部10aは、詳細には、アルミデッキなどからなる離着陸面11aとそれを支える梁部12aとから構成され、離着陸面11aと梁部12aとはボルト13などの締結具によって固定されている。
【0053】
更に、飛行体用離着陸部10aとトラス構造体20とは、飛行体用離着陸部10aの梁部12aとトラス構造体20の上弦材22とをボルト14などの締結具によって固定するものとする。
【0054】
なお、トラス構造体20を構成する部材間のジョイント24も含まれている。
【0055】
図5は本発明に係る第1の実施形態の屋上設置の飛行体用の離着陸場の一例の側面図であり、先に正面図で示した構造の側面図である。
【0056】
この方向では、トラス構造体20は、接合台座21を介して屋上床40と固定されるが、建築物30の柱31の間隔に合わせてトラス構造体20の下部の支点のうち、2つおきに接合台座21が設けられている。
【0057】
図6は本発明に係る第1の実施形態の屋上設置の飛行体用の離着陸場1aの別の例の斜視図であり、離着陸面11aと梁部12aとを有する飛行体用離着陸部10aと、衝撃荷重による応力対応機構であるトラス構造体20とを有しており、それらが建築物30の屋上床40の上に、建築物30の柱31のほぼ直上に接合台座21を介して設置されている状態が示されている。
【0058】
ここでは、
図1の例とは異なり、屋上床40の各辺と離着陸面11aの各辺とが平行ではなく角度をもって設置されている。
【0059】
このようにすると、建物の向きと飛行体の進入及び離脱方向が違う場合に、建物の向きに関わらず、飛行体の飛行経路に沿って自由に離着陸帯を設置することができる。
【0060】
図7は本発明に係る第1の実施形態の屋上設置の飛行体用の離着陸場の別の例の正面図であり、
図8は本発明に係る第1の実施形態の屋上設置の飛行体用の離着陸場の別の例の側面図である。
【0061】
いずれも長方形形状の屋上床40の辺に対して長方形形状の離着陸面11aの各辺が角度をもって設置されていることを示している。
【0062】
なお、詳細な構造は、先に
図2から
図5で説明した一例のものと同様であり、説明を省略する。
【0063】
図9は本発明に係る第1の実施形態の屋上設置の飛行体用の離着陸場のトラス構造体20の説明図であり、
図9(a)がトラスの上弦材22と下弦材23とが同一方向である例を示し、
図9(b)がトラスの上弦材22と下弦材23とが45度の角度を有している例を示しており、いずれも上段が平面図、下段が正面図であり、どちらの構造であってもよい。トラスの部材寸法を適切に選択することで、建築物の柱や梁間隔に柔軟に対応するでき、またポートの向きを建物の向きに対して自在に設定して設置することができる。
【0064】
次に、本発明の第2の実施形態に係る屋上設置の飛行体用の離着陸場について説明する。
図1(b)は本発明の第2の実施形態に係る屋上設置の飛行体用の離着陸場の一例であり、
図10は同じく離着陸場の一例の正面図、
図11は同じく離着陸場の一例の側面図である。
【0065】
屋上設置の飛行体用の離着陸場1bは、離着陸面11bを有する飛行体用離着陸部10bと、衝撃荷重による応力対応機構である、衝撃吸収材50及び発泡スチロールブロック60とを有している。
【0066】
なお、飛行体用離着陸部10bは、先に一例で説明したアルミデッキ構造が好適であるが、それ以外にも、平板をタイル状に敷きならべる構造とし、平板の材質が、鋼板などの金属製、コンクリート製、プラスチック製、木材や発泡スチロール板にポリウレア強化塗装を施した材料などの非金属製のものであってもよい。
【0067】
また、平板構造の場合、飛行体用離着陸部10bと衝撃吸収体50,衝撃吸収体50と発泡スチロール構造体60、発泡スチロール構造体60と屋上床40との固定方法は、例えばボンド(登録商標)などの接着剤による方法、あるいはボルトやネジなどによる方法など、公知の技術を用いればよい。
【0068】
ここで、衝撃吸収部材50は高所から自由落下する物体の床面衝突時の衝撃力を衝撃吸収材の変形エネルギーに変換することで衝撃を吸収するものであって、ゲル状のもの(タイカ社のαGEL(登録商標))や弾性ポリウレタン材のもの(getzner社のSylodamp(登録商標))などが広く用いられており、これらを使用すればよい。
【0069】
また、発泡スチロール構造体60は,EPS工法(発泡スチロール土木工法)として既に幅広く土木工事で大型の発泡スチロールブロックを盛土材として使用して、道路の舗装や軟弱地盤の改良等に使用実績があり、これを応用するものである。
【0070】
発泡スチロール構造体60による荷重分散のイメージとしては、
図10の左下に示すように、発泡スチロール構造体60の単体61集中荷重Gがあった場合に、下方に向けて分散された荷重gとなるイメージである。
【0071】
なお、発泡スチロール構造体60は、軽量であること、耐圧縮性(緩衝能力)が高いこと、施工が容易であることなどの特徴があり、既存建築物の屋上設置の飛行体用の離着陸場1bに用いるのは好適である。
【0072】
全体構造としては、図示したものは飛行体用離着陸部10bの下方に衝撃吸収部材50を1層設け、その下に発泡スチロール構造体60を2層程度設けているが、発泡スチロール構造体60の層の数は衝撃吸収部材50や飛行体用離着陸部10bなど、飛行体用の離着陸場1bを構成する部材全体の死荷重と離着陸面11b上に着陸する飛行体の活荷重によって発生する圧縮応力度が発泡スチロール構造体60の許容応力度以下となるように設計されなければならない。
【0073】
また、圧縮応力度が許容応力度以下となる場合、さらに発泡スチロール構造体60の層の数を増やすことで離着陸面11bの嵩上げ材として利用することができる。嵩上げをすることで、避雷針などの飛行体の飛行経路上に突出する障害物を避けて飛行経路を確保することができる。
【0074】
次に、本発明の第3の実施形態に係る屋上設置の飛行体用の離着陸場について説明する。
【0075】
第3の実施形態は、第1または第2の実施形態の屋上設置の飛行体用の離着陸場であって、屋上に既に設置された緊急離着陸場または緊急救助用スペース(以下緊急離着陸場等70)に第1または第2の実施形態の改修することで飛行体用の離着陸場を構成するものである。
【0076】
図12は本発明の第3の実施形態に係る屋上設置の飛行体用の離着陸場の一例の正面図であり、
図12(a)は第1の実施形態の、衝撃荷重による応力対応機構として、トラス構造体20を含む例であり、
図12(b)は、衝撃荷重による応力対応機構として、衝撃吸収材50及び発泡スチロールブロック60を含む例である。
【0077】
いずれも建築物30の屋上床40上に、緊急離着陸場等70が既に設置されており、その上に衝撃荷重による応力対応機構として、トラス構造体20、または、衝撃吸収材50及び発泡スチロールブロック60を備えるものである。
【0078】
これによって、緊急離着陸場等70では対応できない荷重を許容することができ、利用の範囲が拡がることが期待できる。
【0079】
なお、この際も、トラス構造体20を用いる場合は、トラス構造体20の下部の支点のうちの、接合台座21とする場所を緊急離着陸場等70の柱の直上に設置することが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の建築物屋上設置の飛行体用の離着陸場によれば、今後、産業上で需要の増大が予測される垂直離着陸機などの離着陸場として、幅広く使用されることが見込まれ、産業上の利用可能性は極めて大きい。
【符号の説明】
【0081】
1 屋上設置の飛行体用の離着陸場
10 飛行体用離着陸部
11 離着陸面
12 梁部
20 トラス構造体
21 接合台座
22 上弦材
23 下弦材
30 建築物
31 柱
40 屋上床
50 衝撃吸収材
60 発泡スチロールブロック
70 緊急離着陸場等