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特開2024-68665新規な酢酸亜鉛二水和物及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068665
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】新規な酢酸亜鉛二水和物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/30 20060101AFI20240513BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240513BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240513BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240513BHJP
   A61K 9/30 20060101ALI20240513BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240513BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240513BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240513BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240513BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240513BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20240513BHJP
【FI】
A61K33/30
A61P3/00
A61P1/16
A61K9/20
A61K9/30
A61K47/26
A61K47/32
A61K47/38
A61K47/12
A61K47/02
A61K47/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023191020
(22)【出願日】2023-11-08
(31)【優先権主張番号】P 2022179097
(32)【優先日】2022-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390011877
【氏名又は名称】富士化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】世良 佳彦
(72)【発明者】
【氏名】寶田 光仁
(72)【発明者】
【氏名】高城 利宇
(72)【発明者】
【氏名】篠原 龍馬
(72)【発明者】
【氏名】杉坂 健太
(72)【発明者】
【氏名】平島 梨夏
(72)【発明者】
【氏名】長井 淑郎
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA44
4C076BB01
4C076CC16
4C076CC21
4C076DD28H
4C076DD29H
4C076DD41
4C076DD46H
4C076DD67
4C076EE16
4C076EE31
4C076EE32
4C076EE32H
4C076FF21
4C076FF68
4C076GG12
4C076GG14
4C076GG16
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA04
4C086HA03
4C086HA20
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA35
4C086MA52
4C086NA10
4C086NA20
4C086ZA75
4C086ZC21
(57)【要約】
【課題】酢酸亜鉛無水物等の不純物を極力含まず、かつ粉砕による粒子径の調製工程を必要としない、製剤化に適した粒子特性を有する酢酸亜鉛二水和物を製造する方法を提供する。
【解決手段】下記の工程i及びii:
i)酢酸亜鉛酢酸水溶液を調製する工程、
ii)前記酢酸亜鉛酢酸水溶液に水溶性有機溶媒又はそれと水との混液を接触させて酢酸亜鉛二水和物を析出させる工程、
を含む酢酸亜鉛二水和物の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程i及びii:
i)酢酸亜鉛酢酸水溶液を調製する工程、
ii)前記酢酸亜鉛酢酸水溶液に水溶性有機溶媒又はそれと水との混液を接触させて酢酸亜鉛二水和物を析出させる工程、
を含む酢酸亜鉛二水和物の製造方法。
【請求項2】
工程iの酢酸亜鉛酢酸水溶液の調製が亜鉛源を水に溶解又は懸濁させた後、酢酸を加える、請求項1記載の方法。
【請求項3】
酢酸が亜鉛源に対して2~10当量使用され、且つ水1質量部に対して1~10質量部使用される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
工程iiの酢酸亜鉛酢酸水溶液と水溶性有機溶媒又はそれと水との混液の接触が水溶性有機溶媒中に酢酸亜鉛酢酸水溶液を添加することにより行われる、請求項1記載の方法。
【請求項5】
工程iiにおいて、酢酸亜鉛酢酸水溶液と水溶性有機溶媒又はそれと水との混液の接触が0~50℃で行われる、請求項1記載の方法。
【請求項6】
工程iiにおける水溶性有機溶媒がアセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトニトリル及びテトラヒドロフランから選ばれる1種以上である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
工程iiにおける水溶性有機溶媒又はそれと水との混液がアセトン又はアセトン-水混液である、請求項1又は5記載の方法。
【請求項8】
工程iiにおいて、水溶性有機溶媒又はそれと水との混液が酢酸を0.05~10質量
%含有する、請求項1又は6記載の方法。
【請求項9】
析出された酢酸亜鉛二水和物が平均粒子径10~200μm、アスペクト比2~30及び厚さ1~30μmの酢酸亜鉛二水和物である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
析出された酢酸亜鉛二水和物における酢酸亜鉛無水物及びXRDで2θ=6°付近にピークを有する化合物を含む不純物の含量が0.5%以下である、請求項1又は9記載の方法。
【請求項11】
請求項1~10記載の方法により析出される酢酸亜鉛二水和物であって、平均粒子径10~200μm、アスペクト比2~30及び厚さ1~30μmである、酢酸亜鉛二水和物。
【請求項12】
平均粒子径20~150μm、アスペクト比2~10及び厚さ2~25μmである、請求項11記載の酢酸亜鉛二水和物。
【請求項13】
酢酸亜鉛無水物及びXRDで2θ=6°付近にピークを有する化合物を含む不純物の含量が0.5%以下である、請求項11又は12記載の酢酸亜鉛二水和物。
【請求項14】
請求項11又は12記載の酢酸亜鉛二水和物を含有する造粒物。
【請求項15】
請求項記11又は12記載の酢酸亜鉛二水和物又は請求項14記載の造粒物を含有する固形製剤。
【請求項16】
錠剤である、請求項15記載の固形製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不純物含量が低く、製剤化に適した酢酸亜鉛二水和物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酢酸亜鉛二水和物(C464Zn・2H2O)は、銅との競合阻害によって銅の吸収を抑制することによるウィルソン病(肝レンズ核変性症)の治療剤として、また低亜鉛血症のための亜鉛製剤としてカプセル剤及び錠剤の形態で販売されている(非特許文献1)。
【0003】
酢酸亜鉛二水和物の特性として、温度や吸湿性物質の存在下で無水物を形成しやすく、約40℃を超えると該水和物中の結晶水が消失して無水物に転移し、ウィルソン病等の治療薬の有効成分としては承認されていない無水物となることが報告されている(特許文献1)。そのため、酢酸亜鉛二水和物やそれを配合した医薬品の製造過程では、品温を約40℃以下に制御する必要がある。
【0004】
酢酸亜鉛二水和物の製造方法としては、希酢酸に酸化亜鉛を溶解し結晶を得る方法が知られている(非特許文献2)。しかし、この方法では数mmの粒子径の酢酸亜鉛二水和物が得られ、このような大きな粒子径の酢酸亜鉛二水和物を用いた場合、製剤が大きくなり服用しづらい、あるいは錠剤にした場合の強度が低いなどの問題があり、このままでは製剤化に適さない。そのため、製剤化する場合には、製剤化に適した粒子径に酢酸亜鉛二水和物の固体を粉砕等により調整する必要があるが、この場合、粉砕工程によって生じる圧や熱により無水物が生成する可能性を考慮する必要がある。
【0005】
また、酢酸亜鉛水和物を含有する錠剤の製造においては、湿式造粒法や乾式造粒法により造粒物を得、さらにこの造粒物と医薬品添加物を混合し圧縮成型する方法が考えられるが、前記特許文献1には乾式造粒法では剤径が小さい酢酸亜鉛水和物錠を得ることができず、造粒物の製造工程における乾燥を品温40℃未満の温度で行うこと(湿式造粒等)で、製造工程における酢酸亜鉛水和物中の結晶水の消失が抑制され、小型化製剤が得られたことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2016/088816号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「ノベルジン(登録商標)錠25mg,ノベルジン(登録商標)錠50mg,ノベルジン(登録商標)顆粒5%」医薬品インタビューフォーム,2021年2月改訂(改訂第2版)
【非特許文献2】化学大辞典P811-812
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、酢酸亜鉛無水物等の不純物を極力含まず、かつ粉砕による粒子径の調製工程を必要としない、製剤化に適した粒子特性を有する酢酸亜鉛二水和物を製造する方法を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題解決のため鋭意検討を行った結果、酢酸亜鉛の酢酸水溶液を調製し、当該溶液に水溶性有機溶媒又はそれと水との混液を接触させて、系中に酢酸亜鉛二水和物を析出させることにより、不純物の含有率が低く平均粒子径10~200μm、アスペクト比2~30及び厚さ1~30μmの小型化製剤に適する酢酸亜鉛二水和物が得られることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は以下の[1]~[16]に係るものである。
[1]下記の工程i及びii:
i)酢酸亜鉛酢酸水溶液を調製する工程、
ii)前記酢酸亜鉛酢酸水溶液に水溶性有機溶媒又はそれと水との混液を接触させて酢酸亜鉛二水和物を析出させる工程、
を含む酢酸亜鉛二水和物の製造方法。
[2]工程iの酢酸亜鉛酢酸水溶液の調製が亜鉛源を水に溶解又は懸濁させた後、酢酸を加える、[1]の方法。
[3]酢酸が亜鉛源に対して2~10当量使用され、且つ水1質量部に対して1~10質量部使用される、[2]の方法。
[4]工程iiの酢酸亜鉛酢酸水溶液と水溶性有機溶媒又はそれと水との混液の接触が水溶性有機溶媒中に酢酸亜鉛酢酸水溶液を添加することにより行われる、[1]の方法。
[5]工程iiにおいて、酢酸亜鉛酢酸水溶液と水溶性有機溶媒又はそれと水との混液の接触が0~50℃で行われる、[1]の方法。
[6]工程iiにおける水溶性有機溶媒がアセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトニトリル及びテトラヒドロフランから選ばれる1種以上である、[1]の方法。
[7]工程iiにおける水溶性有機溶媒又はそれと水との混液がアセトン又はアセトン-水混液である、[1]又は[5]の方法。
[8]工程iiにおいて、水溶性有機溶媒又はそれと水との混液が酢酸を0.05~1
0質量%含有する、[1]又は[6]の方法。
[9]析出された酢酸亜鉛二水和物が平均粒子径10~200μm、アスペクト比2~30及び厚さ1~30μmの酢酸亜鉛二水和物である、[1]の方法。
[10]析出された酢酸亜鉛二水和物における酢酸亜鉛無水物及びXRDで2θ=6°付近にピークを有する化合物を含む不純物の含量が0.5%以下である、[1]又は[9]の方法。
[11][1]~[10]の方法により析出される酢酸亜鉛二水和物であって、平均粒子径10~200μm、アスペクト比2~30及び厚さ1~30μmである、酢酸亜鉛二水和物。
[12]平均粒子径20~150μm、アスペクト比2~10及び厚さ2~25μmである、[11]の酢酸亜鉛二水和物。
[13]酢酸亜鉛無水物及びXRDで2θ=6°付近にピークを有する化合物を含む不純物の含量が0.5%以下である、[11]又は[12]の酢酸亜鉛二水和物。
[14][11]又は[12]の酢酸亜鉛二水和物を含有する造粒物。
[15][11]又は[12]の酢酸亜鉛二水和物又は[14]の造粒物を含有する固形製剤。
[16]錠剤である、[15]の固形製剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明の方法によれば、酢酸亜鉛無水物等の不純物の含有率が抑制された、平均粒子径10~200μm、アスペクト比2~30及び厚さ1~30μmである酢酸亜鉛二水和物を製造することができる。当該酢酸亜鉛二水和物を用いることにより乾式造粒法が適用でき、結晶水の消失を抑制しつつ、小型化製剤の製造が可能となる。また、当該小型化製剤は、適切な薬物の溶出性及び安定性を保有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1の酢酸亜鉛二水和物のSEM写真。
図2】実施例2の酢酸亜鉛二水和物のSEM写真。
図3】比較例1の酢酸亜鉛二水和物のSEM写真。
図4】実施例1の酢酸亜鉛二水和物、比較例1の酢酸亜鉛二水和物、参考例1の酢酸亜鉛無水物のXRDチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<酢酸亜鉛二水和物の製造方法>
本発明の、酢酸亜鉛二水和物の製造方法は、下記の工程i及びiiを含む。
i)酢酸亜鉛酢酸水溶液を調製する工程
ii)前記酢酸亜鉛酢酸水溶液に水溶性有機溶媒又はそれと水との混液を接触させて酢酸亜鉛二水和物を析出させる工程
【0014】
前記工程iの酢酸亜鉛の酢酸水溶液の調製は、亜鉛源を水に溶解又は懸濁させた後、酢酸を加えることにより行うことができる。また、市販の酢酸亜鉛二水和物を酢酸水溶液に溶解させることでもよい。
【0015】
亜鉛源としては、亜鉛粉末の他、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、炭酸亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛等の亜鉛化合物を用いることができるが、好ましくは亜鉛化合物であり、より好ましくは酸化亜鉛、水酸化亜鉛又は炭酸亜鉛であり、さらに好ましくは酸化亜鉛である。
【0016】
亜鉛源に対して使用される水の量は、生成する酢酸亜鉛二水和物を溶解する量であれば特には限定されないが、質量比で2.5~20倍量、好ましくは3~15倍量、より好ましくは4~10倍量である。
【0017】
斯かる亜鉛源の水溶液又は懸濁液に対して酢酸が添加される。
ここで、酢酸としては、氷酢酸又は90重量%以上の酢酸水溶液が使用できる。酢酸水溶液としては、水含有量の少ないものを使用するのが好ましい。酢酸は氷酢酸を用いるのが好ましい。
用いられる酢酸の量は、亜鉛源に対して2~10当量、好ましくは2.1~8当量、より好ましくは2.1~5当量が挙げられる。
また、酢酸は、水1質量部に対して、1~10質量部用いるのが好ましく、より好ましくは1~8質量部、より好ましくは2~8質量部、さらに好ましくは2~6質量部である。
【0018】
工程iiにおける、前記工程iで調製された酢酸亜鉛酢酸水溶液と水溶性有機溶媒又はそれと水との混液の接触は、水溶性有機溶媒又はそれと水との混液へ酢酸亜鉛酢酸水溶液を添加すること、水溶性有機溶媒又はそれと水との混液を酢酸亜鉛酢酸水溶液へ添加すること、水溶性有機溶媒又はそれと水との混液及び酢酸亜鉛酢酸水溶液の同時に添加・混合することのいずれでもよいが、酢酸亜鉛二水和物の粒径制御や製造上ハンドリングが容易である点で、水溶性有機溶媒又はそれと水との混液中に酢酸亜鉛酢酸水溶液を添加するのが好ましい。
酢酸亜鉛酢酸水溶液又はそれと水との混液と水溶性有機溶媒の混合は、一方の溶液を他方の溶液に時間を掛けて徐々に添加するのが好ましく、例えば水溶性有機溶媒又はそれと水との混液中に酢酸亜鉛酢酸水溶液を添加する場合は、酢酸亜鉛酢酸水溶液を5分~1時間かけて水溶性有機溶媒又はそれと水との混液中に加えるのが好ましい。
【0019】
工程iiにおいて用いられる水溶性有機溶媒としては、例えば、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトニトリル及びテトラヒドロフラン等から選ばれる1種以上が挙げられるが、好ましくはアセトン、メタノール及びエタノールから選ばれる1種以上が挙げられ、より好ましくはアセトンである。
水溶性有機溶媒又はそれと水との混液としては、より好ましくはアセトン、又はアセトン-水混液が挙げられる。
水溶性有機溶媒と水の混液は、水溶性有機溶媒に対し、水の含有量は0.1~10質量%であるのが好ましく、より粒径を制御するため、より好ましくは0.5~8質量%、より好ましくは1.0~6質量%、さらに好ましくは1.5~4質量%である。
【0020】
斯かる水溶性有機溶媒又はそれと水との混液には適宜酢酸を加えることができる。酢酸の添加により、後述するXRDで2θ=6°付近にピークを有する不純物の生成を効果的に抑制することができる。
ここで、添加される酢酸の量は、水溶性有機溶媒又はそれと水との混液中、好ましくは0.05~10質量%、より好ましくは0.05~8質量%、より好ましくは0.05~5質量%、より好ましくは0.1~3質量%、より好ましくは0.1~2質量%、より好ましくは0.2~1質量%、さらに好ましくは0.3~0.7質量%が挙げられる。
【0021】
酢酸亜鉛酢酸水溶液と水溶性有機溶媒又はそれと水との混液を接触する際の混合溶液の温度は、0~50℃の範囲で適宜選択できる。
温度が高いほど生成される酢酸亜鉛二水和物の平均粒子径が大きくなり、温度が低いほど酢酸亜鉛二水和物の平均粒子径が小さくなる。したがって、製造する酢酸亜鉛二水和物の粒子サイズに応じて、温度を選択することができる。例えば、約20~30℃で平均粒子径約50~100μm、約5~15℃で平均粒子径約10~30μmの酢酸亜鉛二水和物の結晶を調製することができる。
【0022】
析出した酢酸亜鉛二水和物は、ろ過や遠心分離などの分離方法により単離し、その後水及び水溶性有機溶媒が除去でき、かつ酢酸亜鉛二水和物が脱水和しない条件で乾燥が行われる。
乾燥方法としては、減圧乾燥、真空乾燥、40℃以下での通風乾燥など一般公知の方法が挙げられる。乾燥を減圧下で行う場合は、減圧度及び乾燥温度は酢酸亜鉛二水和物が脱水和しない範囲で設定することができる。
【0023】
乾燥後、粒子径を揃えるため解砕、あるいは所望の粒度を得るために粉砕してもよい。これらの条件は常法に従って行うことができる。
【0024】
<酢酸亜鉛二水和物>
斯くして得られた酢酸亜鉛二水和物は、結晶であることが好ましく、その形状は主に長方板状を示すが、類似の形状である短冊状、棒状を含み、以下の特徴を有する。
・板面の長辺に対する短辺のアスペクト比は2~30であり、好ましくは2~20、より好ましくは2~10、より好ましくは2~8、さらに好ましくは2~6である。
・厚みは、板面の大きさにあまり影響を受けずほぼ一定の厚みを示し、1~30μm、好ましくは2~25μm、より好ましくは2~20μmである。
・平均粒子径は、10~200μmであり、好ましくは平均粒子径10~150μm、より好ましくは15~120μm、さらに好ましくは20~120μmである。ここで平均粒子径はメディアン径であり、レーザー回折散乱式粒度分布測定することができる。
・酢酸亜鉛無水物及び2θ=6°付近にピークを有する化合物を含む不純物の含量が0.5%以下であり、好ましくは0.3%以下、より好ましくは0.2%以下、より好ましくは0.1%以下、最も好ましくは実質的に酢酸亜鉛無水和物及び2θ=6°付近にピークを有する化合物を含有しない。
ここで「実質的に」とは、XRDを測定したとき、2θ=11.7°付近のピークを有する酢酸亜鉛無水和物及び2θ=6°付近のピークを有する化合物がXRDチャート上で観測されないことを意味する。
酢酸亜鉛二水和物と無水物のXRDチャートを図4に示す。酢酸亜鉛二水和物の主ピークは2θ=12.5°付近、酢酸亜鉛無水和物の主ピークは2θ=11.7°付近にあり、これらのピークの有無により酢酸亜鉛無水和物の存在や、酢酸亜鉛二水和物から酢酸亜鉛無水和物への転移を確認することができる。なお、付近とは±1°を意味する。
【0025】
<酢酸亜鉛二水和物含有製剤>
本発明の上記酢酸亜鉛二水和物を含有する製剤としては、錠剤、顆粒製剤又はカプセル製剤等の固形製剤を挙げることができる。
製剤化にあたり、本発明の酢酸亜鉛二水和物を公知の方法、例えば直接打錠により錠剤化するか、公知の方法により造粒物として錠剤、顆粒、カプセル剤とすることができる。
造粒物とする場合、造粒方法としては、乾式造粒及び湿式造粒が挙げられるが、好ましくは乾式造粒が挙げられる。
【0026】
乾式造粒とは、造粒時に液体成分を用いずに、原料の凝集力を高めて造粒する造粒方法であり、例えば、スラッグ法、ローラーコンパクター法などが挙げられる。ローラーコンパクターの条件:ロール圧力、ロール回転数、粉体供給スクリュー回転速度などは装置によって異なる。例えば、フロイント産業社製TF-mini等を用いる場合はロール圧力は2~15MPa、ロール回転数は2~15rpm、粉体供給スクリュー回転速度は、5~30rpmが好ましい。
乾式造粒による場合には、本発明の酢酸亜鉛二水和物と滑沢剤、所望により結合剤、乳糖、乳糖水和物、マンニトール等の賦形剤、崩壊剤及びその他の医薬品添加物を適宜選択して混合し、一般公知の方法により造粒物を製造することができる。
【0027】
湿式造粒とは、造粒成分の混合物に水、エタノール、メタノール等の有機溶媒及びこれらの混合溶媒等の水性媒体を適当量添加して、混合操作等の機械的圧力を付加して水等の付着力を利用して造粒する方法であり、造粒化操作としては、圧縮造粒法、溶融造粒法、ローラーコンパクター法、転動造粒法、流動層造粒法、攪拌造粒法、押出造粒法等が挙げられる。
湿式造粒による場合には、前記特許文献1あるいは国際特許公開第2016/083941号の記載に基づき、造粒物を製造することができる。
【0028】
本発明の酢酸亜鉛二水和物を含有する製剤が錠剤の場合、本発明の酢酸亜鉛二水和物あるいは前記造粒物と崩壊剤、所望により結合剤、滑沢剤及びその他の医薬品添加物を適宜選択して混合した後、圧縮成型することにより製造することができる。
圧縮成型は、医薬品で通常用いられるロータリー打錠機等を用いることができ、打錠時における成形圧は、錠剤の大きさにより異なるが、例えば、φ8.5mmの錠剤では2~20kNであり、好ましくは5~15kNであり、φ6.5mmの錠剤では2~15kN、好ましくは4~12kNである。この時、設定錠剤硬度は20~100N、好ましくは30~100N、より好ましくは40~90Nである。
【0029】
前記固形製剤がカプセル剤の場合は、本発明の酢酸亜鉛二水和物の造粒物を賦形剤、滑沢剤、帯電防止剤、安定化剤などの医薬品添加物の1種以上を配合してカプセルに充填すればよい。それぞれの配合割合は、その他の医薬品添加物の1種以上の成分をカプセル全量に対し、0.01~30重量%配合することができる。
【0030】
前記固形製剤が顆粒剤の場合は、本発明の酢酸亜鉛二水和物の造粒物と賦形剤、滑沢剤、帯電防止剤、安定化剤などの医薬品添加物の1種以上を配合すればよい。それぞれの配合割合は、その他の医薬品添加物の1種以上の成分を顆粒剤全量に対し、0.01~30重量%配合することができる。
【0031】
前記滑沢剤としては、特には制限されないが、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、ショ糖脂肪酸エステル、フマル酸ステアリルナトリウム等が挙げられ、好ましくはステアリン酸マグネシウムが挙げられる。
造粒物中へ配合する場合は、錠剤の全質量に対して、0.1~5質量%、好ましくは0.1~3質量%、さらに好ましくは0.1~2質量%である。
錠剤の後末中へ配合する場合、配合量は、錠剤の全質量に対して、0.01~5質量%、好ましくは0.05~3質量%、さらに好ましくは0.1~2質量%である。
なお、後末中への配合には外部滑沢法によって滑沢剤が素錠表面に局在することを含む。
【0032】
前記結合剤としては、特には制限されないが、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロースフタル酸エステル、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、結晶セルロース、粉末セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースナトリウム、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒプロメロース等のセルロース系結合剤、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、部分アルファー化デンプン、アルファー化デンプン等のデンプン系結合剤、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、軽質無水ケイ酸、ケイ酸カルシウム等のケイ酸系結合剤、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、デキストリン、ゼラチン、プルラン、ポビドン、カルボキシビニルポリマー等が挙げられ、好ましくはセルロース系結合剤が挙げられ、特に好ましくはヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。
結合剤の配合量は、錠剤の全質量に対して、1~15質量%、好ましくは1~10質量%、さらに好ましくは1.5~7質量%である。
【0033】
前記賦形剤としては、例えば、乳糖、乳糖水和物、マンニトール、トレハロース、マルトース、エリスリトール、キシリトール等が挙げられ、好ましくは、乳糖水和物、マンニトールが挙げられ、より好ましくは乳糖水和物が挙げられる。
賦形剤の配合量は、錠剤の全質量に対して、1~30質量%、好ましくは2~20質量%である。
【0034】
前記崩壊剤としては、特には制限されないが、例えばカルメロースカルシウム、カルメロース、クロスカルメロース、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系崩壊剤、デンプングリコール酸ナトリウム、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、部分アルファー化デンプン、アルファー化デンプン、カルボキシメチルスターチナトリウム等のデンプン系崩壊剤、クロスポビドン等を用いることができ、好ましくは、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドンが挙げられ、さらに好ましくはクロスポビドンが挙げられる。
後末中への配合量は、錠剤の全質量に対して、0.5~20質量%、好ましくは0.5~15質量%、さらに好ましくは1~10質量%である。造粒物中に配合する場合、造粒物中への配合量は、錠剤の全質量に対して、1~25質量%、好ましくは2~20質量%、さらに好ましくは3~15質量%である。
【0035】
本発明の製剤においては、その他必要に応じ、賦形剤、着色剤、甘味剤及び香料等を適宜用いることができる。
【0036】
本発明の酢酸亜鉛二水和物は、独特の苦味・えぐみを有するため、服用感の点から、本発明の錠剤は、フィルムコートされたフィルムコーティング錠とすることができる。フィルムコートは、通常の医薬品でも用いられるフィルムコート剤、可塑剤、流動化剤、色素及びこれらを溶解/懸濁するための溶媒などを用い、一般公知の方法により製造することができる。
【0037】
本発明の酢酸亜鉛二水物は、既存の酢酸亜鉛二水物よりも圧縮成型性を有するため、製剤中に酢酸亜鉛二水和物を高含量配合することができ、錠剤の小型化を図ることができる。
配合する酢酸亜鉛二水和物の含量により錠剤サイズは異なるが、例えば、酢酸亜鉛二水和物25mg錠、50mg錠の場合には、直径5~12mm、厚さ1~6mmの錠剤サイズとなる。
【0038】
本発明の酢酸亜鉛二水和物を含有する製剤は優れた溶出性を示し、溶出試験において開始15分後で85%以上の溶出性を示す。溶出性は日本薬局方の溶出試験法のパドル法50回転で試験液を水として行った値である。
【実施例0039】
以下、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明の範囲は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0040】
(実施例1)酢酸亜鉛二水和物の製造
水74.1kgに酸化亜鉛(堺化学工業(株)製 日局方)11.4kgを懸濁させ、氷酢酸(昭和電工(株)製 99%純良酢酸)17.7kgと精製水の混合溶液を添加した後、25℃とし酢酸亜鉛酢酸水溶液を調製した。アセトン141.6kgと水3kgの混合溶液を25℃とし、その酢酸亜鉛酢酸水溶液を添加した後、10℃として60分間保持し、濾別して湿末を得た。この湿末を35℃の設定で減圧乾燥して、平均粒子径66μm、嵩密度0.49g/mLの酢酸亜鉛二水和物の白色粉末25.6kgを得た。SEM写真を図1にXRDチャートを図4に示す。長辺20~80μm、短辺5~30μm、厚さ2~10μmの板状粒子形状であった。12.5°付近に酢酸亜鉛二水和物のピークが見られるが、酢酸亜鉛無水物によるピーク及び6°付近にピークは見られなかった。
【0041】
(実施例2)酢酸亜鉛二水和物の製造
水74.1kgに酸化亜鉛11.4kgを懸濁させ、氷酢酸17.7kgと精製水3.0kgの混合溶液を添加した後、10℃とし酢酸亜鉛酢酸水溶液を調製した。アセトン141.6kgと水3kgの混合溶液を10℃とし、その酢酸亜鉛酢酸水溶液を添加した後、10℃として60分間保持し、濾別して湿末を得た。この湿末を35℃の設定で減圧乾燥して、平均粒子径29μm、嵩密度0.33g/mLの酢酸亜鉛二水和物の白色粉末25.2kgを得た。SEM写真を図2に示す。長辺40~140μm、短辺20~30μm、厚さ5~20μmの板状粒子形状であった。XRDの測定結果、酢酸亜鉛無水物のピークは確認されなかった。また、2θ=6°付近にピークを確認したが、含量は0.5%以下であった。
【0042】
(実施例3)酢酸亜鉛二水和物の製造
水110gに酸化亜鉛16.3gを懸濁させ、氷酢酸30gを添加し酢酸亜鉛酢酸水溶液を調製した。アセトン205gと水21.4gの混合溶液に、その酢酸亜鉛酢酸水溶液を添加した後、10℃に冷却して60分間保持し濾別して湿末を得た。この湿末を減圧乾燥して、平均粒子径128μmの酢酸亜鉛二水和物の白色粉末29.9gを得た。SEMを測定したところ、長辺50~230μm、短辺30~120μm、厚さ5~25μm、アスペクト比16.5の板状粒子形状であった。XRDの測定結果、酢酸亜鉛無水物及び2θ=6°付近のピークは確認されなかった。
【0043】
(実施例4)酢酸亜鉛二水和物の製造
水110gに酸化亜鉛16.3gを懸濁させ、氷酢酸25gを添加し酢酸亜鉛酢酸水溶液を調製した。アセトン205gと水42.8gの混合溶液に、その酢酸亜鉛酢酸水溶液を添加した後、10℃に冷却して60分間保持し濾別して湿末を得た。この湿末を減圧乾燥し平均粒子径148μmの酢酸亜鉛二水和物の白色粉末26.5gを得た。SEMを測定したところ、長辺60~280μm、短辺50~160μm、厚さ5~25μm、アスペクト比12.4の板状粒子形状であった。XRDの測定結果、酢酸亜鉛無水物のピークは確認されなかった。また、2θ=6°付近にピークを確認したが、含量は0.2%以下であった。
【0044】
(実施例5)酢酸亜鉛二水和物の製造
水110gに酸化亜鉛16.3gを懸濁させ、氷酢酸25gを添加し酢酸亜鉛酢酸水溶液を調製した。アセトン205g、酢酸1.5gの混合溶液に、その酢酸亜鉛酢酸水溶液を添加した後、10℃に冷却して60分間保持し濾別して湿末を得た。この湿末を減圧乾燥し平均粒子径43.0μmの酢酸亜鉛二水和物の白色粉末37.5gを得た。SEMを測定したところ、長辺5~140μm、短辺10~40μm、厚さ1~10μm、アスペクト比25.1の板状粒子形状であった。XRDの測定結果、酢酸亜鉛無水物及び2θ=6°付近のピークは確認されなかった。
【0045】
(実施例6)酢酸亜鉛二水和物の製造
水811.9gに酸化亜鉛97.7gと氷酢酸158.5gを添加し酢酸亜鉛酢酸水溶液を調製した。この酢酸亜鉛酢酸水溶液をアセトン1500g添加して酢酸亜鉛二水和物の懸濁液を得、濾別・洗浄して酢酸亜鉛二水和物の湿末を得た。この湿末を乾燥して、平均粒子径70μm、嵩密度0.49g/mLの酢酸亜鉛二水和物の白色粉末を得た。形状は長辺30~150μm、短辺30~90μm、厚さ2~10μmの板状粒子形状であった。XRDチャートより12.5°付近に酢酸亜鉛二水和物のピークが見られるが、酢酸亜鉛無水和物及び2θ=6°付近のピークは確認されなかった。
【0046】
(参考例1)市販の酢酸亜鉛二水和物
酢酸亜鉛水和物(富士フイルム和光純薬社製)のSEM写真を図3にXRDチャートを図4に示す。直径400~700μm、厚さ200~300μmのドラム状の粒子形状であった。12.5°付近に酢酸亜鉛二水和物のピークが見られるが、酢酸亜鉛無水物によるピーク及び2θ=6°付近にピークは見られなかった。
【0047】
(比較例1)市販の酢酸亜鉛二水和物の粉砕品
酢酸亜鉛水和物二水和物(富士フイルム和光純薬社製)を乳鉢粉砕し、目開き150μmの篩に通し、平均粒子径90μmの酢酸亜鉛二水和物の粒子を得た。
【0048】
(参考例2)酢酸亜鉛無水和物の製造
実施例1で得た酢酸亜鉛二水和物を55℃で一晩乾燥し、酢酸亜鉛無水和物の白色粉末を得た。XRDチャートを図4に示す。12.5°付近に酢酸亜鉛二水和物のピークが見られず、11.7°付近にピークが見られ酢酸亜鉛無水和物の生成が確認された。
【0049】
[サンプルの評価]
(1)粒度分布
平均粒子径はマイクロトラック・ベル(株)製のレーザー解析・散乱式粒度分布測定装置MT3300EXIIを用いて測定し、マイクロトラック・ベル(株)製のDMS2Ver11.1.0-257F2を用いて解析した。測定条件は、粒子透過性を透過、粒子屈折率を1.50、粒子形状を非球形、溶媒を窒素、溶媒屈折率を1.00とした。
(2)XRD
日本薬局方の粉末X線回折測定法の操作により測定した。
(株)リガク社製のMiniFlex300/600を用いて測定し、放射線源として銅(CuKα線(λ=1.5406Å))を用いた。
(3)錠剤硬度
錠剤5錠をサンプリングして硬度を測定し各測定値の平均値を算出した。硬度の測定には錠剤硬度計(岡田精機製PC-30型)を使用した。
(4)崩壊試験
日本薬局方の崩壊試験に従い測定した。
(5)アスペクト比
粒子10個を採寸し平均した値。
【0050】
(実施例7)酢酸亜鉛二水和物フィルムコーティング錠の製造
実施例6で得た酢酸亜鉛二水和物167.8質量部、乳糖水和物16.2質量部、クロスポビドン20.0質量部、ヒドロキシプロピルセルロース5.0質量部及びステアリン酸マグネシウム2.0質量部の割合で混合し、ローラーコンパクターで圧密化し、オシレーター(20Mesh)で解砕し造粒顆粒を得た。この造粒顆粒211.0質量部、結晶セルロース27.0質量部、クロスポビドン6.0質量部、ヒドロキシプロピルセルロース5.0重量及びステアリン酸マグネシウム1.0質量部の割合で混合し、ロータリー式打錠機を用い、回転数40rpmとし、錠剤径8.5mm・R13.4×1.3mmの杵で設定硬度70Nになるように打錠し、1錠250mgの素錠を得た。
この素錠に、コーティング装置において、ヒプロメロース5.5%、トリアセチン(医薬品添加物規格)0.9%、二酸化チタン2.7%及びタルク0.9%を含むコーティング液を給気温度45℃、排気温度34~36℃で素錠に噴霧し、1錠260mgのフィルムコーティング錠を得た。なお、使用した添加剤等は特に記載のない限り日本薬局方記載のものを使用した。錠剤硬度は69N、崩壊時間は50秒であった。
【0051】
(実施例8)酢酸亜鉛二水和物錠剤の製造
実施例6で得た酢酸亜鉛二水和物167.8質量部、乳糖水和物39.7質量部、結晶セルロース20.0質量部、クロスポビドン15.0質量部、ヒドロキシプロピルセルロース5.0質量部及びステアリン酸マグネシウム2.5質量部の割合で混合し、ロータリー式打錠機を用い、回転数40rpmとし、錠剤径8.5mm・R13.4×1.3mmの杵で成形圧11kNにて打錠し、1錠250mgの素錠を得た。錠剤硬度は55Nであった。
【0052】
(比較例2)酢酸亜鉛二水和物錠剤の製造
比較例1の酢酸亜鉛二水和物を用い、実施例6と同様の方法で素錠を得た。錠剤硬度は36Nであったが、錠剤硬度測定後の破断面の観察により、キャッピングまたはラミネーションが確認された。
【0053】
本発明の長方板状の酢酸亜鉛二水和物を用い安定性に優れた酢酸亜鉛二水和物錠剤を得ることができた。
【0054】
(実施例9)酢酸亜鉛二水和物の製造
水110gに酸化亜鉛16.3gを懸濁させ、氷酢酸25gを添加し酢酸亜鉛酢酸水溶液を調製した。0℃に冷却したアセトン205g、水4.3g、酢酸1.0gの混合溶液に、その酢酸亜鉛酢酸水溶液を添加した後、60分間保持し濾別して湿末を得た。この湿末を減圧乾燥し平均粒子径13.7μmの酢酸亜鉛二水和物の白色粉末を収率86.4%で得た。XRDの測定結果、酢酸亜鉛無水物及び2θ=6°付近のピークは確認されなかった。
図1
図2
図3
図4