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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068671
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】薬剤識別システム
(51)【国際特許分類】
   A61J 3/00 20060101AFI20240514BHJP
   G16H 20/10 20180101ALI20240514BHJP
   G16Y 10/60 20200101ALI20240514BHJP
   G16Y 20/20 20200101ALI20240514BHJP
   G16Y 40/20 20200101ALI20240514BHJP
【FI】
A61J3/00 310K
G16H20/10
G16Y10/60
G16Y20/20
G16Y40/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179179
(22)【出願日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】592007601
【氏名又は名称】株式会社コンテック
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高平 賢治
(72)【発明者】
【氏名】垣谷 輝男
【テーマコード(参考)】
4C047
5L099
【Fターム(参考)】
4C047GG24
4C047JJ01
4C047JJ26
4C047JJ31
4C047JJ34
4C047KK12
4C047KK25
4C047KK30
4C047KK31
5L099AA25
(57)【要約】
【課題】ユーザおよび患者にとっての利便性の高い薬剤識別システムを提供する。
【解決手段】薬剤識別システム10は、筐体20と端末装置30とを備える。端末装置30は撮影部32と、薬剤識別部33と、表示部37とを有する。撮影部32は薬剤12を撮影することで撮影画像を取得し、薬剤識別部33は撮影画像に写っている薬剤12を識別し、表示部37は薬剤識別部33による薬剤12の識別結果に基づく表示を行うことが可能である。端末装置30は筐体20の取付部26に対して取り付けおよび取り外しが可能である。端末装置30が取付部26に取り付けられている場合、端末装置の撮影部32が、筐体20の壁体29の外側から、壁体29に取り囲まれた容器22に収容されている薬剤12を撮影可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤が撮影されることで取得された撮影画像の画像認識を行うことにより、撮影された前記薬剤の識別を行う薬剤識別システムにおいて、
筐体と、端末装置とを備え、
前記筐体は、前記薬剤を収容可能な容器と、前記容器を取り囲む壁体と、前記壁体の外面に配置された取付部を有し、
前記端末装置は、撮影部と、薬剤識別部と、表示部とを有し、かつ、前記取付部に対して取り付けおよび取り外しが可能であり、
前記撮影部は、前記薬剤を撮影することで前記撮影画像を取得し、
前記薬剤識別部は、前記撮影画像に写っている前記薬剤を識別し、
前記表示部は、前記薬剤識別部による前記薬剤の識別結果に基づく表示を行うことが可能であり、
前記端末装置が前記取付部に取り付けられている場合、前記端末装置の前記撮影部が、前記壁体の外側から、前記壁体に取り囲まれた前記容器に収容されている前記薬剤を撮影可能である、薬剤識別システム。
【請求項2】
前記端末装置が前記取付部に取り付けられている場合、前記端末装置の姿勢が、予め定められた撮影姿勢に固定される、請求項1に記載の薬剤識別システム。
【請求項3】
前記端末装置は、電力を蓄積可能な二次電池を有し、
前記取付部は、前記二次電池へ電力を供給可能な充電装置と接続されており、
前記端末装置が前記取付部に取り付けられている場合、前記充電装置から前記二次電池へ電力が供給される、請求項1に記載の薬剤識別システム。
【請求項4】
前記筐体は、前記筐体の内部で前記容器に対して光を照射する照明装置をさらに有し、
前記筐体の前記壁体は、外部からの光を前記容器に対して遮断し、
前記端末装置の前記撮影部が、前記容器に収容された前記薬剤を撮影する際に、前記照明装置は、予め定められた光学条件で、前記容器に対して光を照射する、請求項1に記載の薬剤識別システム。
【請求項5】
前記筐体は、通信装置をさらに有し、
前記通信装置は、前記端末装置および前記筐体の外部に設けられた上位装置と通信可能である、請求項1に記載の薬剤識別システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤識別システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
薬局などの、薬剤を取り扱う施設において、薬剤の機械的な識別が求められることがある。例えば、処方箋に基づいて取り揃えられた薬剤が実際に処方箋の処方内容と合致しているか否かを、作業者(薬剤師などの、施設の職員)とは別の主体によって判定するために、薬剤の機械的な識別を行う装置が用いられることがある。こうした装置を用いることにより、患者に対する薬剤の交付における作業ミスを防止することができる。
【0003】
特許文献1に記載されている調剤監査装置においては、監査対象薬剤が撮像装置によって撮像され、その撮像装置の撮像情報に基づいて中央制御装置が監査対象薬剤の名称を判別する。そして、判別結果が表示装置に表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5725363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている調剤監査装置では、中央制御装置を備える調剤監査装置の内部に撮像装置が組み込まれている。さらに、表示装置は調剤監査装置の外面の一部として配設されている。したがって、特許文献1の調剤監査装置は撮像装置および表示装置を含む大型の装置となる。大型の調剤監査装置は移動させることが困難であるため、調剤監査装置が設置される位置は固定されたものとなる。そのため特許文献1に記載の調剤監査装置は、作業者(薬剤師などの、施設の職員)が薬剤を調剤監査装置の位置まで持ち運ばなければ利用することができず、利便性に問題がある。また、表示装置に表示される判別結果を患者(薬剤の交付対象)が確認するためには、患者が調剤監査装置の位置まで移動しなければならず、患者にとっての利便性にも問題がある。
【0006】
以上の問題に鑑み、本発明は、ユーザおよび患者にとっての利便性の高い薬剤識別システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の態様の1つに係る薬剤識別システムは、薬剤が撮影されることで取得された撮影画像の画像認識を行うことにより、撮影された前記薬剤の識別を行う薬剤識別システムにおいて、筐体と、端末装置とを備え、前記筐体は、前記薬剤を収容可能な容器と、前記容器を取り囲む壁体と、前記壁体の外面に配置された取付部を有し、前記端末装置は、撮影部と、薬剤識別部と、表示部とを有し、かつ、前記取付部に対して取り付けおよび取り外しが可能であり、前記撮影部は、前記薬剤を撮影することで前記撮影画像を取得し、前記薬剤識別部は、前記撮影画像に写っている前記薬剤を識別し、前記表示部は、前記薬剤識別部による前記薬剤の識別結果に基づく表示を行うことが可能であり、前記端末装置が前記取付部に取り付けられている場合、前記端末装置の前記撮影部が、前記壁体の外側から、前記壁体に取り囲まれた前記容器に収容されている前記薬剤を撮影可能である。
【0008】
また好ましくは、前記端末装置が前記取付部に取り付けられている場合、前記容器に対する前記端末装置の姿勢が、予め定められた撮影姿勢に固定されるとよい。
【0009】
また好ましくは、前記端末装置は、電力を蓄積可能な二次電池を有し、前記取付部は、前記二次電池へ電力を供給可能な充電装置と接続されており、前記端末装置が前記取付部に取り付けられている場合、前記充電装置から前記二次電池へ電力が供給されるとよい。
【0010】
また好ましくは、前記筐体は、前記筐体の内部で前記容器に対して光を照射する照明装置をさらに有し、前記筐体の壁部は、外部からの光を前記容器に対して遮断し、前記端末装置の前記撮影部が、前記容器に収容された前記薬剤を撮影する際に、前記照明装置は、予め定められた光学条件で、前記容器に対して光を照射するとよい。
【0011】
また好ましくは、前記筐体は、通信装置をさらに有し、前記通信装置は、前記端末装置および前記筐体の外部に設けられた上位装置と通信可能であるとよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の態様の1つに係る薬剤識別システムによれば、端末装置の撮影部が薬剤を撮影することで撮影画像を取得し、端末装置の薬剤識別部が撮影画像に写っている薬剤を識別し、端末装置の表示部が識別結果に基づく表示を行う。そのため、ユーザは端末装置のみで薬剤の識別作業を行うことが可能であり、ユーザの作業負担が軽減される。一方、端末装置が、筐体の取付部に取り付けられている場合には、端末装置の撮影部が、筐体の外側から、筐体内の薬剤を撮影可能である。そのため、風、光、あるいは静電気などの外乱が生じやすい環境下においては、端末装置が、薬剤を収容する容器を取り囲む壁体を有する筐体に取り付けられた状態で、撮影画像の取得が行われることで、薬剤識別に対する外乱の影響が軽減される。
【0013】
また、取付部に取り付けられた端末装置の姿勢が、予め定められた撮影姿勢に固定される場合には、撮影画像が取得される際の端末装置の姿勢のばらつきに由来する、薬剤識別の精度のばらつきが抑制される。
【0014】
また、取付部に接続された充電装置から、取付部に取り付けられた端末装置の二次電池へ電力が供給される場合には、端末装置を操作するユーザは、薬剤識別の作業と、端末装置の充電作業を並行して実施することが可能となり、ユーザの作業負担が軽減される。
【0015】
また、筐体の照明装置が、予め定められた光学条件で、容器に対して光を照射する場合には、撮影画像が取得される際の光学条件のばらつきに由来する、薬剤識別の精度のばらつきが抑制される。
【0016】
また、筐体の通信装置が、上位装置と通信可能である場合には、端末装置は上位装置が管理する情報を受信することが可能であると共に、端末装置が取得した情報を上位装置へ送信することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る薬剤識別システムの実施形態の一例を示すシステム構成図。
図2】薬剤監査装置の外形を示す斜視図。
図3】端末装置と取付部との関係を示す部分斜視図。
図4】端末装置と筐体がそれぞれ複数設けられた状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(システム構成)
図1のシステム構成図には、本発明に係る薬剤識別システム10の実施形態の一例が示されている。本実施形態の薬剤識別システム10は、筐体20と、端末装置30を備えている。筐体20は、風、光、あるいは静電気などの外乱を遮蔽する壁体29で囲まれた箱型の部材である。筐体20は、薬剤12の識別作業が行われる施設(例えば調剤薬局)において、床面や作業台の上など、安定した土台に配設される。端末装置30は、ユーザ(作業者)が携行可能な機器である。例えばタブレット機器またはスマートフォンなどが端末装置30として用いられる。
【0019】
筐体20は、容器22と、照明装置23と、取付部26と、充電装置28と、壁体29と、通信装置40とを備えている。容器22は筐体20の内部に配置されており、識別対象となる薬剤12を収容可能である。例えばアルミニウム製のトレイが容器22として用いられる。照明装置23は筐体20の内部に配置されており、筐体20の内部で容器22に対して光を照射する。照明装置23は例えばLED(Light Emitting Diode)または蛍光灯などの発光体を含む。
【0020】
取付部26は筐体20の表面に配置されており、取付部26には端末装置30の取り付けおよび取り外しが可能である。取付部26に端末装置30が取り付けられた場合、端末装置30の姿勢は薬剤12の撮影に適した撮影姿勢に固定されるようになっている。充電装置28は取付部26に接続されており、取付部26に取り付けられた端末装置30へと電力を供給することができる。なお、充電装置28は図示されていない電力源(例えば商用電源)に接続される。
【0021】
壁体29は筐体20の外壁となる部材であり、筐体20の内部に対する風、光、あるいは静電気などの外乱を遮蔽する。例えば鋼鉄製のプレートが壁体29として用いられる。通信装置40は筐体20に取り付けられており、他の装置との通信機能を有する。例えば通信装置40は電磁波を用いた無線通信によって、端末装置30、および図面には示されていない上位装置(例えば薬局に設けられた医療事務コンピュータ)と通信可能である。
【0022】
端末装置30は、制御部31と、撮影部32と、薬剤識別部33と、AIモデル34と、薬剤情報リスト35と、通信部36と、表示部37と、二次電池39とを有する。制御部31は端末装置30の動作を制御する。例えばタブレット機器またはスマートフォンなどの動作を制御するCPU(Central Processing Unit、中央制御装置)などのマイコンが制御部31として用いられる。
【0023】
撮影部32は、容器22に収容された薬剤12を写した撮影画像を撮影可能である。例えばタブレット機器またはスマートフォンなどが備えるカメラが撮影部32として用いられる。薬剤識別部33は、撮影部32によって撮影された撮影画像に写っている薬剤12を画像認識によって識別する。例えば画像処理プログラムを記憶する記憶装置が薬剤識別部33として用いられる。薬剤識別部33に記憶されている画像処理プログラムが制御部31で実行されることにより、撮影画像の画像認識が行われる。あるいは、制御部31とは別の、画像処理を行うマイコンが薬剤識別部33として用いられてもよい。
【0024】
AIモデル34は、撮影画像を入力データとして、それに対応する特徴値を出力データとして返す入出力関係を記述したモデルである。薬剤情報リスト35は、識別対象となるい薬剤12に関する情報が列挙されたリストである。薬剤情報リスト35には、AIモデル34が出力し得る特徴値と、その特徴値に対応する薬剤12の識別情報(薬剤12の名称などの、薬剤12の種類を特定する情報)が列挙されている。実体としては、AIモデル34および薬剤情報リスト35のデータを記憶する記憶装置が端末装置30に設けられている。
【0025】
通信部36は、端末装置30と、端末装置30以外の機器との間でデータの送受信を行う。例えばタブレット機器またはスマートフォンなどが備える無線通信装置が通信部36として用いられる。表示部37は、端末装置30のユーザに対して様々な情報を表示する。例えばタブレット機器またはスマートフォンなどが備えるタッチパネルディスプレイが表示部37として用いられる。
【0026】
(撮影画像の撮影)
端末装置30の撮影部32は、薬剤12を含む領域を対象として撮影を行うことで、薬剤12を含む撮影画像を撮影可能である。なお、タブレット機器またはスマートフォンにおいては、撮影が行われる際、表示部37が、撮影結果として得られる予定の撮影画像を表示することができる。
【0027】
(薬剤識別)
撮影部32が撮影した撮影画像は、撮影画像の画像認識を行う薬剤識別部33に送信される。図1の薬剤識別部33は、AIモデル34を用いて、撮影部32が撮影した撮影画像から、薬剤12の特徴値を抽出する。そして薬剤識別部33は、抽出した特徴値を薬剤情報リスト35と照らし合わせて、その特徴値に対応する薬剤12の識別情報(薬剤12の名称などの、薬剤12の種類を特定する情報)を取得する。これにより薬剤識別部33は、撮影画像に含まれる薬剤12の識別を行う。
【0028】
なお、薬剤識別部33は、薬剤12の識別を行う際に、薬剤12の数量を算出することも可能である。薬剤12の数量は、薬剤12の重量に基づいて算出されてもよいし、撮影画像の画像認識によって算出されてもよい。例えば、筐体20内に薬剤12の重量値を測定する重量計(図示せず)が設けられているとよい。重量計が計測した重量値は薬剤識別部33に送信され、薬剤識別部33は送信された重量値と薬剤情報リストとを照らし合わせる。例えば薬剤12がPTPシート(Press-Through Packageシート)で覆われた状態で容器22に収容されている場合は、重量計は薬剤12の重量値として、PTPシートの重量値を含む値を計測する。薬剤情報リスト35に、PTPシート全体から1個分の薬剤12が切り離されたときの、1個分の薬剤12を覆うPTPシートの断片の重量値が含まれていれば、薬剤識別部33は、計測された薬剤12の重量値を、1個分の薬剤12と1個分のPTPシートの断片の重量値との合計で除算することにより、薬剤12の数量を算出することができる。
【0029】
また、重量計が設けられていない場合でも、薬剤識別部33はAIモデル34を用いて薬剤12の数量を算出することができる。例えばAIモデル34が、1個分の薬剤12を覆うPTPシートの断片(1個分の断片)の形状を撮影した画像を学習データとして教育されたモデルであった場合には、AIモデル34は、薬剤12の1個分の断片が入力データ内にいくつ含まれているか、の情報を出力データに含めることができる。すなわち、AIモデル34が、撮影画像内に薬剤12が何個写っているかの情報を出力できるものであれば、薬剤識別部33は、撮影された薬剤12の数量を算出することができる。
【0030】
(識別結果の表示)
薬剤12の識別が行われた後は、薬剤12の識別結果が、端末装置30の表示部37へ送信される。表示部37は、薬剤12の識別結果を、ユーザに対して表示する。例えば薬剤12の名称(製品名)が「錠剤A」であるならば、「名称:錠剤A」といった識別結果の情報がユーザに対して表示される。薬剤識別部33が薬剤12の数量の算出を行った場合には、「数量:10個」のように、算出された数量もユーザに対して表示される。また制御部31は、必要に応じて、薬剤12の識別結果を、通信部36を介して通信装置40に送信する。通信装置40は必要に応じて、通信部36から送信されたデータを、筐体20の外部に設けられた上位装置(例えば、薬局に設けられた医療事務コンピュータ、または患者に対して交付された薬剤12の情報を記録する医療システムなど)に送信する。
【0031】
(筐体20および端末装置30の外形)
図2の正面斜視図には、本実施形態の薬剤識別システム10の、筐体20および端末装置30の外形が示されている。図2には、薬剤12を収容した容器22が筐体20の内部に配置された状態が示されている。なお、図2には図示されていないが、容器22の下方に、薬剤12の重量値を測定する重量計(例えば調剤用電子天秤)が配置されていてもよい。筐体20の前面(表面の一部)には、扉部21が配置されている。扉部21は、壁体29と同等の材質(例えば鋼鉄)で構成されており、筐体20の表面の一部を開放または閉鎖することができる。扉部21は図2では開放された状態になっており、筐体20の内部空間を筐体20の外部に対して開放している。なお、扉部21を通じて容器22を筐体20の内部と外部との間で案内するスライド機構などが筐体20に設けられていてもよい。
【0032】
筐体20の内部には照明装置23および充電装置28が設けられている。照明装置23は筐体20の内部に配置された容器22よりも上方に設けられており、容器22に対して光を照射することが可能になっている。筐体20は風、光、あるいは静電気などの外乱を遮蔽する壁体29で囲まれているため、扉部21が閉鎖された状態では、筐体20の内部は暗闇となる。暗闇となった筐体20の内部で照明装置23が容器22に対して光を照射することにより、容器22(および容器22に収容された薬剤12)に対して入射する光の強度、角度などの光学条件が、照明装置23の配置および光学特性によって定まる特定の光学条件(予め定められた光学条件)となる。充電装置28は、筐体20の外部に設けられた商用電源などの電力源(図示せず)と電気的に接続されている。また充電装置28は、端末装置30が取り付けられる取付部26と電気的に接続されている。
【0033】
筐体20の上方部には、水平な上面25と、上面25に対して傾斜した傾斜面24とが設けられている。そして、傾斜面24には、取付部26と、レンズ受け部27とが設けられている。傾斜面24の取付部26は、端末装置30が取り付けられる箇所である。端末装置30は、表示部37を上向き(ユーザから見える向き)にして取付部26に取り付けられる。例えば取付部26には磁石が設けられているとよい。また、端末装置30の裏面(表示部37と反対側の面)には、取付部26の磁石と引き合う極性の磁石が設けられているとよい。端末装置30がタブレット機器またはスマートフォンである場合には、タブレット機器またはスマートフォンを覆うカバーに磁石が設けられているとよい。取付部26と端末装置30の裏面に磁石が設けられていると、取付部26に取り付けられた端末装置30は、取付部26に対して磁力によって引き付けられ、重力によって傾斜面24から滑り落ちる(自然落下する)ことがなくなる。傾斜面24のレンズ受け部27は、取付部26の近くに設けられている。例えば端末装置30がカメラ付きのタブレット機器またはスマートフォンである場合には、タブレット機器またはスマートフォンのカメラのレンズと向かい合う位置に、レンズ受け部27が設けられているとよい。
【0034】
また、筐体20の上方部には、通信装置40が配置されている。例えば筐体20の内部において、上面25の下方となる位置に、通信装置40を配置するための台座が設けられているとよい。図2においては、通信装置40は筐体20の内部に設けられた台座に配置され、その通信装置40の上方に、筐体20の上面25および傾斜面24を形成するプレート(例えば鋼鉄製プレート)が配置されている。また通信装置40は、他の装置との無線通信において電磁波を受信および送信するための通信アンテナ41を備えている。通信アンテナ41は通信装置40から上方へと延びており、通信相手となる他の装置の方向に向けられていることが好ましい。例えば通信装置40の上方に配置された上面25に、通信アンテナ41を通すための穴が設けられているとよい。
【0035】
図3の部分斜視図には、端末装置30と取付部26との関係が示されている。図3に示されているように、取付部26およびレンズ受け部27は傾斜面24の表面から盛り上がった箇所となっている。取付部26は例えば、傾斜面24の表面に取り付けられた金属製(例えば鋼鉄製)のプレートであるとよい。取付部26は充電装置28と接続されている。具体的には、図3の取付部26の表面に送電部28aが配置されている。送電部28aには給電ケーブル28bが接続されており、給電ケーブル28bは取付部26に形成されたケーブル穴28cを通じて、筐体20内部の充電装置28に接続されている。給電ケーブル28bは電流を伝える導線を含むケーブルである。ケーブル穴28cは取付部26および傾斜面24を貫いて形成された開口である。
【0036】
送電部28aは例えば、端末装置30の電力源(二次電池39)に対して非接触で給電を行う給電パッドである。端末装置30の裏面(表示部37とは反対側の面)には受電部38が設けられており、送電部28aと受電部38とが向かい合うことで、送電部28aから受電部38へ充電が行われる。端末装置30がタブレット機器またはスマートフォンである場合には、タブレット機器またはスマートフォンを覆うカバーに受電部38が設けられているとよい。受電部38は端末装置30の二次電池39(図3には図示せず)へと接続されている。送電部28aから受電部38へ非接触で給電が行われる場合、送電部28aは送電用のコイルを含む。一方、受電部38は受電用のコイルを含む。充電装置28が送電部28aのコイルに電流を流すと、電磁誘導により受電部38のコイルにも電流が流れて、受電部38に接続されている二次電池39へ電力が供給される。
【0037】
レンズ受け部27は、傾斜面24の表面から盛り上がった箇所である。レンズ受け部27は例えば、傾斜面24の表面に取り付けられた金属製(例えば鋼鉄製)のプレートであるとよい。また、レンズ受け部27には撮影窓27aが形成されている。撮影窓27aは、レンズ受け部27および傾斜面24を貫いて形成された開口である。端末装置30が取付部26に取り付けられている場合、端末装置30の撮影レンズ32aが撮影窓27aと向かい合う。撮影レンズ32aは、端末装置30の撮影部32(図3には図示せず)が有するレンズである。撮影部32がタブレット機器またはスマートフォンのカメラである場合には、そのカメラのレンズが撮影レンズ32aである。撮影部32は撮影窓27aを通じて、筐体20の外部から筐体20の内部を撮影することができる。
【0038】
なお、取付部26に端末装置30が取り付けられる際には、端末装置30の撮影レンズ32aが、撮影窓27aに臨む(対向する)ように位置決めされることが好ましい。例えば取付部26およびレンズ受け部27が傾斜面24から盛り上がるようにして設けられている場合には、端末装置30の裏面には取付部26およびレンズ受け部27の形状とはまり合う窪みが設けられているとよい。例えば、タブレット機器またはスマートフォンを覆うカバーに窪みが設けられているとよい。そして、端末装置30の裏面の窪みと、取付部26およびレンズ受け部27の形状が、端末装置30が特定の撮影姿勢の時にのみ嵌り合うように設けられていると、取付部26に端末装置30が取り付けられたとき、端末装置30は、特定の(予め定められた)撮影姿勢となる。端末装置30の撮影姿勢は、撮影レンズ32aが撮影窓27aに臨む(対向する)姿勢であるとよい。
【0039】
また、端末装置30が撮影姿勢に位置決めされている場合、端末装置30の姿勢が例えば重力による自由落下などで自然に撮影姿勢からずれてしまわないように、端末装置30の姿勢が撮影姿勢に固定されることが好ましい。例えば、取付部26と、端末装置30の裏面とに、互いに引き付け合う磁石が設けられている場合、その磁石が、端末装置30の姿勢を撮影姿勢に固定するように配置されているとよい。例えば、取付部26の磁石と、それと引き付け合う端末装置30の磁石との組み合わせを1つの磁石対として、複数の(例えば2つ)の磁石対が設けられているとよい。端末装置30の姿勢が予め定められた撮影姿勢の場合にのみ、複数の磁石対が全て互いに引き付け合うように配置されていれば、端末装置30が取付部26に取り付けられた場合に、確実に端末装置30の姿勢が撮影姿勢に固定される。例えば、取付部26に、上方にN極を向ける磁石と、上方にS極を向ける磁石とが配置されており、端末装置30の裏面に、下方にS極を向ける磁石と、下方にN極を向ける磁石とが配置されているとよい。この場合、端末装置30が取付部26に対して磁力によって引き付け合う姿勢は、N極とS極とが向かい合うことになる特定の撮影姿勢に限られる。なお、端末装置30を筐体20に対して位置決めおよび固定するための磁石は、取付部26に加えて、レンズ受け部27に設けられていてもよい。また、送電部28aおよび受電部38に、互いに引き付け合う磁石が設けられていてもよい。
【0040】
図1図2図3に示されている薬剤識別システム10においては、端末装置30の撮影部32が、薬剤12を撮影して撮影画像を取得する。そして、端末装置30の薬剤識別部33が撮影画像に写っている薬剤12を識別し、端末装置30の表示部37が識別結果に基づく表示を行う。このような、薬剤12の撮影から、識別結果の表示に至るまでの動作は、端末装置30が筐体20に取り付けられていなくとも、端末装置30が単体で実行することができる。そのため、ユーザは端末装置30のみで薬剤12の識別作業を行うことが可能であり、ユーザは必ずしも薬剤12を筐体20の位置まで持ち運ぶ必要がなく、ユーザの作業負担が軽減される。
【0041】
一方、端末装置30が、筐体20の取付部26に取り付けられている場合には、端末装置30の撮影部32が、筐体20の外側から、筐体20内の薬剤12を撮影可能である。ここで、風、光、あるいは静電気などの外乱が生じやすい環境下においては、外乱を遮断する筐体20の壁体29に取り囲まれた容器22に薬剤12が収容されることで、薬剤12に対する外乱が遮断される。そして、端末装置30が、筐体20の取付部26に取り付けられた状態で、筐体20内の薬剤12が撮影されて撮影画像の取得が行われることで、薬剤識別に対する外乱の影響が軽減される。単体で薬剤12の識別が可能な端末装置30と、外乱の影響を防止する筐体20とが組み合わされた薬剤識別システム10によれば、ユーザは、端末装置30単体による薬剤識別と、筐体20に端末装置30を取り付けた状態での薬剤識別とを使い分けることができる。すなわち、外乱の影響が少ないと考えられる環境下では、端末装置30単体で薬剤識別を行うことにより、作業負担が軽減される。一方、外乱の影響が大きいと考えられる環境下では、ユーザは筐体20に端末装置30を取り付けた状態で薬剤識別の作業を行うことにより、薬剤識別に対する外乱の影響が軽減される。
【0042】
特に、筐体20内に薬剤12の重量値を測定する重量計(図示せず)が設けられている場合には、重量計による重量値の測定、および重量値に基づく薬剤12の数量算出に対する外乱の影響が防止される。医薬品などの薬剤12は、単位重量値(錠剤であれば1錠分、散剤であれば1袋分など、計数の基準となる重量値)が一般的に小さいため、重量計としては、小さな重量値を測定可能な高精度の電子秤が用いられる。高精度の電子秤は、小さな重量値の変動を精度よく測定することが可能であるが、風などの外乱による影響を受けやすい。また、多数の薬剤12を同時に識別および数量算出するために、薬剤12は容器22(例えばアルミニウム製のトレイ)に収容された状態で重量値を測定される。こうした容器22は体積が大きいため、薬剤12単体よりもさらに風などの外乱による影響を受けやすい。しかし、識別および数量算出の対象となる薬剤12および容器22を取り囲む壁体29を有する筐体20内に重量計が設けられていれば、数量算出に対する風などの外乱による影響が最小限に抑えられる。さらに、筐体20の外面に配置された取付部26に取り付けられた端末装置30の撮影部32が、壁体29の外側から、壁体29に取り囲まれた容器22に収容されている薬剤12を撮影可能であれば、外乱による影響が最小限の状態のまま、画像認識による薬剤12の識別と、重量値測定による数量算出とを同時に行うことができる。
【0043】
また、端末装置30が取付部26に取り付けられる場合には、端末装置30の姿勢が予め定められた撮影姿勢に固定されるため、筐体20内の容器22および薬剤12に対する、撮影部32(特に撮影レンズ32a)の相対位置と角度が予め定められた撮影条件に固定される。したがって、端末装置30が取付部26に取り付けられた状態で、筐体20内の容器22に収容された薬剤12を写した撮影画像が取得される場合には、毎回同じ撮影条件で撮影が行われることになる。そのため、薬剤識別システム10において筐体20と端末装置30とが組み合わされて使用されることにより、端末装置30の姿勢のばらつきに由来する、薬剤識別の精度のばらつきが抑制される。
【0044】
薬剤識別の作業に不慣れなユーザは、端末装置30を単体で使用すると、適切な撮影条件で薬剤12の撮影画像を取得できないことがある。不慣れなユーザは例えば、撮影レンズ32aの焦点を正しく薬剤12の位置に合わせることができないことがある。しかし、端末装置30が筐体20に取り付けられると、端末装置30の姿勢が撮影画像の取得に適した撮影姿勢に固定されるので、不慣れなユーザでも、適切な撮影条件で薬剤12の撮影画像を取得することができる。
【0045】
また、端末装置30が単体で使用される場合には、薬剤識別の作業が長時間にわたって行われると、二次電池39に蓄積されている電力が尽きることを防止するために、薬剤識別の作業の途中で二次電池39への充電作業が行われる必要がある。これに対し、本実施形態の薬剤識別システム10では、取付部26に接続された充電装置28から、取付部26に取り付けられた端末装置30の二次電池39へ電力が供給されるようになっている。したがって、端末装置30が薬剤識別のために筐体20へ取り付けられている間、端末装置30の電力源である二次電池39に電力が供給される。このため、端末装置30を操作するユーザは、薬剤識別の作業と、端末装置30の充電作業を並行して実施することが可能となり、ユーザの作業負担が軽減される。すなわち、端末装置30が筐体20に取り付けられている状態では、長時間にわたって薬剤識別の作業が行われても二次電池39の電力が尽きることはなく、ユーザにとって利便性が高い。
【0046】
また、本実施形態の薬剤識別システム10では、筐体20内の照明装置23が、予め定められた光学条件で、容器22に対して光を照射する。したがって、取付部26に取り付けられた端末装置30の撮影部32によって、筐体20内の容器22に収容された薬剤12の撮影画像が取得される場合には、毎回同じ光学条件で撮影が行われることになる。そのため、薬剤識別システム10において筐体20と端末装置30とが組み合わされて使用されることにより、撮影画像が取得される際の光学条件のばらつきに由来する、薬剤識別の精度のばらつきが抑制される。
【0047】
なお、図1図2の実施形態においては照明装置23が筐体20の内部に設けられているが、照明装置23は筐体20の外部に設けられていてもよい。例えば、端末装置30が照明装置23を備えていてもよい。端末装置30がスマートフォンである場合には、スマートフォンに設けられたライトが照明装置23として利用可能である。照明装置23が筐体20の外部に設けられている場合でも、筐体20内の容器22に収容された薬剤12の撮影画像が取得される際に、予め定められた光学条件(光源の位置、照射角度、光量など)で容器22に対して光を照射されることが好ましい。例えば撮影部32としてスマートフォンのカメラが用いられ、照明装置23としてスマートフォンのライトが利用される場合、撮影窓27aを通じてライトからの光が筐体20内の容器22に照射されるようになっているとよい。一般的にスマートフォンのライトはカメラの近傍に設けられているので、端末装置30としてのスマートフォンが取付部26に取り付けられて、予め定められた撮影姿勢に固定された場合、ライトの位置および角度も予め定められた光学条件に固定される。このように、端末装置30の姿勢が予め定められた撮影姿勢に固定されることで、端末装置30の照明装置23の姿勢が、予め定められた光学条件で容器22に対して光を照射する姿勢になることが好ましい。
【0048】
また、筐体20が有する通信装置40が、上位装置(例えば、薬局に設けられた医療事務コンピュータ、または患者に対して交付された薬剤12の情報を記録する医療システムなど)と通信することにより、端末装置30は、上位装置が管理する情報を受信することが可能である。例えば医師が発行した処方箋のデータが上位装置で管理されている場合には、端末装置30は、通信装置40を介して上位装置と通信することにより、識別対象となっている薬剤12が、処方箋に記されている情報と整合するか否かを確認することができる。一方、上位装置は、端末装置30が取得した情報、例えば薬剤12の撮影画像のデータ、および薬剤識別の結果などを、通信装置40を介して端末装置30から受信することができる。これにより、上位装置は、薬剤識別システム10で取得された撮影画像のデータ、および薬剤識別の結果などを記録することができる。上位装置が、複数の端末装置30と通信可能であれば、それぞれの端末装置30によって行われた撮影画像のデータ、および薬剤識別の結果を蓄積することができる。様々な撮影画像のデータ、および薬剤識別の結果が蓄積されると、上位装置は、その蓄積されたデータを基に、AIモデル34の教育データを作成して、より精度の高いAIモデル34を構築することが可能となる。
【0049】
なお、以上の実施形態においては、説明のために筐体20と端末装置30とがそれぞれ1つずつ示されているが、図4に示されているように、筐体20と端末装置30がそれぞれ複数設けられていてもよい。この場合には、任意の端末装置30が、任意の筐体20と組み合わせて薬剤識別の作業に利用可能である。このように、任意の端末装置30が任意の筐体20と組み合わせ可能となっていると、薬局などの施設に備えられている複数のタブレット機器などの端末装置30が有効に活用される。なお、上位装置との通信を行う通信装置40は、複数の筐体20のそれぞれに設けられていてもよいし、施設内のいずれか1つの筐体20にのみ設けられていてもよい。複数の筐体20が設けられる施設(薬局など)の広さが、通信装置40によって無線通信が可能な範囲に収まる程度の広さであれば、通信装置40が1つのみであっても、施設内の全ての端末装置30と通信装置40とが通信可能である。
【符号の説明】
【0050】
10 薬剤識別システム
12 薬剤
20 筐体
21 扉部
22 容器
23 照明装置
24 傾斜面
25 上面
26 取付部
27 レンズ受け部
27a 撮影窓
28 充電装置
28a 送電部
28b 給電ケーブル
28c ケーブル穴
29 壁体
30 端末装置
31 制御部
32 撮影部
32a 撮影レンズ
33 薬剤識別部
34 AIモデル
35 薬剤情報リスト
36 通信部
37 表示部
38 受電部
39 二次電池
40 通信装置
41 通信アンテナ
図1
図2
図3
図4