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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068672
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】薬剤識別システム
(51)【国際特許分類】
   A61J 3/00 20060101AFI20240514BHJP
   G16H 20/10 20180101ALI20240514BHJP
   G16Y 10/60 20200101ALI20240514BHJP
   G16Y 20/20 20200101ALI20240514BHJP
   G16Y 40/20 20200101ALI20240514BHJP
【FI】
A61J3/00 310K
G16H20/10
G16Y10/60
G16Y20/20
G16Y40/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179180
(22)【出願日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】592007601
【氏名又は名称】株式会社コンテック
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高平 賢治
(72)【発明者】
【氏名】垣谷 輝男
【テーマコード(参考)】
4C047
5L099
【Fターム(参考)】
4C047GG24
4C047JJ01
4C047JJ26
4C047JJ31
4C047JJ34
4C047KK25
4C047KK30
4C047KK31
4C047KK32
5L099AA25
(57)【要約】
【課題】薬剤の重量値を計測する重量計が通信を行わなくとも、重量値に基づく薬剤の数量算出が可能な薬剤識別システムを提供する。
【解決手段】薬剤識別システムは筐体と、重量計と、内部表示器と、撮影器と、薬剤識別部とを備える。筐体は、重量計と内部表示器を取り囲む。重量計は、薬剤の重量値を計測する。内部表示器は、重量計に接続されており、重量計の計測した重量値を表示する。撮影器は、重量計によって重量値を計測されている薬剤と、内部表示器によって表示されている重量値とが共に写っている計量撮影画像を撮影可能である。薬剤識別部は、計量撮影画像の画像認識を行うことにより、計量撮影画像に写っている薬剤の識別を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤が撮影されることで取得された撮影画像の画像認識を行うことにより、撮影された前記薬剤の識別を行う薬剤識別システムにおいて、
筐体と、重量計と、内部表示器と、撮影器と、薬剤識別部とを備え、
前記筐体は、前記重量計および前記内部表示器を取り囲み、
前記重量計は、前記薬剤の重量値を計測し、
前記内部表示器は、前記重量計に接続されており、前記重量計の計測した前記重量値を表示し、
前記撮影器は、前記重量計によって前記重量値を計測されている前記薬剤と、前記内部表示器によって表示されている前記重量値とが共に写っている計量撮影画像を撮影可能であり、
前記薬剤識別部は、前記計量撮影画像の画像認識を行うことにより、前記計量撮影画像に写っている前記薬剤の識別と、前記内部表示器の示す重量値の取得とを行い、前記薬剤の識別結果と、取得した前記重量値とを基に、前記計量撮影画像に写っている前記薬剤の数量を算出する数量算出処理を行う、薬剤識別システム。
【請求項2】
前記重量計は、前記重量計に異常が発生しているか否かを検出する自己診断機能を有しており、
前記内部表示器は、前記自己診断機能によって検出された前記重量計の異常の種類に対応するエラーコードを表示可能であり、
前記薬剤識別部は、前記計量撮影画像の画像認識を行うことにより、前記エラーコードに対応する異常の種類を判定する、請求項1に記載の薬剤識別システム。
【請求項3】
前記撮影器は、前記筐体の内部に配置された前記薬剤と、前記内部表示器によって表示されている前記重量値とを、前記筐体の外部から撮影して、前記計量撮影画像を撮影可能である、請求項1に記載の薬剤識別システム。
【請求項4】
前記筐体の外部に設けられた外部表示器をさらに備え、
前記外部表示器は、前記計量撮影画像を表示可能である、請求項1に記載の薬剤識別システム。
【請求項5】
前記筐体の外部に設けられ、前記筐体に取り付け可能な端末装置をさらに備え、
前記端末装置は、前記撮影器と、前記薬剤識別部と、前記外部表示器とを含む、請求項4に記載の薬剤識別システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤識別システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
薬局などの、薬剤を取り扱う施設において、薬剤の機械的な識別が求められることがある。例えば、処方箋に基づいて取り揃えられた薬剤が実際に処方箋の処方内容と合致しているか否かを、作業者(薬剤師など)とは別の主体によって判定するために、薬剤の機械的な識別を行う装置が用いられることがある。こうした装置を用いることにより、患者に対する薬剤の交付における作業ミスを防止することができる。
【0003】
特許文献1に記載されている調剤監査装置においては、監査対象薬剤が撮像装置によって撮像され、その撮像装置の撮像情報に基づいて中央制御装置が監査対象薬剤の名称を判別する。さらに、秤量装置によって監査対象薬剤の重量が秤量され、その秤量装置の秤量データを利用して、中央制御装置が調剤内容(監査対象薬剤の数量など)の適否を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5725363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されている調剤監査装置では、中央制御装置を備える調剤監査装置の内部に秤量装置および撮像装置が組み込まれているため、調剤監査装置が大型化してしまう。大型の調剤監査装置は移動させることが困難であるため、調剤監査装置が設置される位置は固定されたものとなる。したがって特許文献1に記載の調剤監査装置は、ユーザが薬剤を調剤監査装置の位置まで持ち運ばなければ利用することができず、利便性に問題がある。
【0006】
また、秤量装置が調剤監査装置に組み込まれずに、調剤監査装置と別体の機器として実装されたとしても、秤量装置の秤量データを中央制御装置が利用するためには、中央制御装置を含む調剤監査装置と秤量装置とが通信を行う必要がある。そのため、秤量装置と調剤監査装置とが、通信ケーブルで有線接続されたり、あるいは無線通信装置を介して無線でデータを送受信できるように構成されたりする必要がある。すなわち、秤量装置は何らかの通信機能を備えた高価なものである必要があり、通信機能を持たない安価な秤量装置は調剤監査装置と共に用いることができない。
【0007】
そして秤量装置と調剤監査装置とが通信ケーブルで有線接続される場合には、秤量装置と調剤監査装置との距離が通信ケーブルの長さに制限され、各機器の取り回しが不便である。また無線通信装置を介して無線でデータを送受信するためには、秤量装置と調剤監査装置だけでなく無線通信装置にも電力が供給される必要があり、電源の確保および電力供給ケーブルの取り回しが不便である。さらに、有線接続、無線通信のどちらの場合でも、秤量装置と調剤監査装置との間でデータの送受信を行うためには、通信プロトコル等の設定が必要であり、そのような通信設定の作業を行うのはユーザにとって負担となる。
【0008】
以上の問題に鑑み、本発明は、薬剤の重量値を計測する秤量装置(重量計)が通信を行わなくとも、重量値に基づく薬剤の数量算出が可能な薬剤識別システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の態様の1つに係る薬剤識別システムは、薬剤が撮影されることで取得された撮影画像の画像認識を行うことにより、撮影された前記薬剤の識別を行う薬剤識別システムにおいて、筐体と、重量計と、内部表示器と、撮影器と、薬剤識別部とを備え、前記筐体は、前記重量計と前記内部表示器を取り囲み、前記重量計は、前記薬剤の重量値を計測し、前記内部表示器は、前記重量計に接続されており、前記重量計の計測した前記重量値を表示し、前記撮影器は、前記重量計によって前記重量値を計測されている前記薬剤と、前記内部表示器によって表示されている前記重量値とが共に写っている計量撮影画像を撮影可能であり、前記薬剤識別部は、前記計量撮影画像の画像認識を行うことにより、前記計量撮影画像に写っている前記薬剤の識別と、前記内部表示器の示す重量値の取得とを行い、前記薬剤の識別結果と、取得した前記重量値とを基に、前記計量撮影画像に写っている前記薬剤の数量を算出する数量算出処理を行う。
【0010】
また好ましくは、前記重量計は、前記重量計に異常が発生しているか否かを検出する自己診断機能を有しており、前記内部表示器は、前記自己診断機能によって検出された前記重量計の異常の種類に対応するエラーコードを表示可能であり、前記薬剤識別部は、前記計量撮影画像の画像認識を行うことにより、前記エラーコードに対応する異常の種類を判定するとよい。
【0011】
また好ましくは、前記撮影器は、前記筐体の内部に配置された前記薬剤と、前記内部表示器によって表示されている前記重量値とを、前記筐体の外部から撮影して、前記計量撮影画像を撮影可能であるとよい。
【0012】
また好ましくは、薬剤識別システムは、前記筐体の外部に設けられた外部表示器をさらに備え、前記外部表示器は、前記計量撮影画像を表示可能であるとよい。
【0013】
また好ましくは、薬剤識別システムは、前記筐体の外部に設けられ、前記筐体に取り付け可能な端末装置をさらに備え、前記端末装置は、前記撮影器と、前記薬剤識別部と、前記外部表示器とを含むとよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の態様の1つに係る薬剤識別システムによれば、計量撮影画像を撮影器が撮影して、その計量撮影画像の画像認識に基づいて薬剤の識別および数量算出処理が行われる。したがって薬剤の数量を算出するために薬剤識別部が重量計との通信を行う必要がない。そのため、ユーザは薬剤識別部と重量計との間の通信設定を行う必要がなく、ユーザの作業負担が軽減される。また、通信設定を行う必要がないため、筐体20と端末装置30のいずれかが故障した場合には、故障した方を交換するだけで薬剤識別を再開することができて、通信設定のやり直しなどの手間がかからない。したがって、この薬剤識別システムはメンテナンス性に優れている。
【0015】
また、重量計の自己診断機能によって検出された異常の種類に対応するエラーコードが内部表示器に表示され、薬剤識別部が画像認識によってエラーコードに対応する異常の種類を判定する場合には、ユーザはエラーコードを解読しなくとも重量計の異常の種類を知ることが可能となり、ユーザの作業負担が軽減される。
【0016】
また、撮影器が、筐体の内部に配置された薬剤と、内部表示器によって表示されている重量値とを、筐体の外部から撮影して、計量撮影画像を撮影可能な場合には、薬剤、重量計、内部表示器を取り囲む筐体を開放することなく計量撮影画像を撮影可能であるので、薬剤の識別および薬剤の数量算出に対する外乱(風、光、静電気など)の影響が抑えられる。
【0017】
また、筐体の外部に設けられた外部表示器が計量撮影画像を表示可能である場合には、ユーザは画像認識に用いられる計量撮影画像を視認しながら作業を行うことができる。したがってユーザは計量撮影画像を撮影するにあたり、重量計を含む薬剤識別システム10の状態が、画像認識に適した計量撮影画像を撮影可能な状態であることを確認しながら撮影を行うことができる。
【0018】
また、撮影器と、薬剤識別部と、外部表示器を備えた端末装置が筐体に取り付け可能である場合には、薬剤識別システムが、筐体と、端末装置とに分離可能となる。この場合には、端末装置として既存のタブレット機器などを利用できて、薬剤識別システムの構築コストが低減される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る薬剤識別システムの実施形態の一例を示すシステム構成図。
図2】筐体および端末装置の外形を示す正面斜視図。
図3】内部表示器の配置を示す正面斜視図。
図4】計量撮影画像が外部表示器に表示された状態を示す図。
図5】識別結果画面が外部表示器に表示された状態を示す図。
図6】本発明の薬剤識別システムにおける処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(システム構成)
図1のシステム構成図には、本発明に係る薬剤識別システム10の実施形態の一例が示されている。本実施形態の薬剤識別システム10は、筐体20と、端末装置30を備えている。筐体20は、壁体で囲まれた箱型の部材である。筐体20の壁体は、筐体20の外部で生じている風、光、静電気などによる外乱を、筐体20の内部に対して遮断する。例えば鋼鉄製のプレートが筐体20の壁体として用いられる。筐体20は、薬剤12の識別作業が行われる施設(例えば調剤薬局)において、床面や作業台の上など、安定した土台に配設される。端末装置30は、ユーザ(作業者)が携行可能な機器である。例えばタブレット機器またはスマートフォンなどが端末装置30として用いられる。
【0021】
筐体20は、容器22と、取付部26と、重量計40と、内部表示器42とを備えている。容器22は筐体20の内部に配置されており、識別対象となる薬剤12を収容可能である。例えば金属(アルミニウムなど)で構成されたのトレイが容器22として用いられる。取付部26は筐体20の表面に配置されており、端末装置30を取り付け可能である。
【0022】
重量計40は筐体20の内部に配置されており、容器22に収容された薬剤12の重量値を計測可能である。重量計40は例えば調剤薬局に配備されている調剤用電子天秤である。なお薬剤12は容器22に収容されているので、重量計40は、容器22の重量値と実際の計測値とを基に、薬剤12のみによる重量値(例えば、実際の計測値から容器22の重量値を減算した値)を算出することが好ましい。
【0023】
内部表示器42は、重量計40とは別体の機器であり、筐体20の内部に配置されている。内部表示器42は重量計40に接続されており、重量計40の計測した重量値を表示する。例えば液晶表示器が内部表示器42として用いられる。図1の薬剤識別システム10においては、内部表示器42の動作を制御する制御基板46が筐体20の内部に設けられており、内部表示器42は制御基板46上に配置されている。また図1の内部表示器42は、内部通信線41によって重量計40と接続されている。内部通信線41は、重量計40が出力する通信データを伝送可能な導線である。
【0024】
市販の調剤用電子天秤には、既存の通信規格に従った信号を入出力可能なものがある。重量計40が例えばRS-232(Recommended Standard 232)規格に従ったシリアル通信ポートを有する調剤用電子天秤である場合には、重量計40のシリアル通信ポートに接続されたシリアル通信ケーブルが内部通信線41として用いられる。制御基板46は、重量計40から出力された通信データに基づいて、内部表示器42の表示を制御する信号を生成して内部表示器42へ入力する。すると内部表示器42は、重量計40から出力された通信データに基づく表示を行う。例えば、重量計40の計測した、薬剤12の重量値が内部表示器42に表示される。
【0025】
端末装置30は、制御部31と、撮影器32と、薬剤識別部33と、AIモデル34と、薬剤情報リスト35と、通信部36と、外部表示器37とを有する。制御部31は端末装置30の動作を制御する。例えばタブレット機器またはスマートフォンなどの動作を制御するCPU(Central Processing Unit、中央制御装置)などのマイコンが制御部31として用いられる。
【0026】
撮影器32は、容器22に収容された薬剤12を写した撮影画像を撮影可能である。例えばタブレット機器またはスマートフォンなどが備えるカメラが撮影器32として用いられる。薬剤識別部33は、撮影器32によって撮影された撮影画像に写っている薬剤12を画像認識によって識別する。例えば画像処理プログラムを記憶する記憶装置が薬剤識別部33として用いられる。薬剤識別部33に記憶されている画像処理プログラムが制御部31で実行されることにより、撮影画像の画像認識が行われる。あるいは、制御部31とは別の、画像処理を行うマイコンが薬剤識別部33として用いられてもよい。
【0027】
AIモデル34は、撮影画像を入力データとして、それに対応する特徴値を出力データとして返す入出力関係を記述したモデルである。薬剤情報リスト35は、識別対象となるい薬剤12に関する情報が列挙されたリストである。薬剤情報リスト35には、AIモデル34が出力し得る特徴値と、その特徴値に対応する薬剤12の識別情報(薬剤12の名称などの、薬剤12の種類を特定する情報)が列挙されている。実体としては、AIモデル34および薬剤情報リスト35のデータを記憶する記憶装置が端末装置30に設けられている。
【0028】
通信部36は、端末装置30と、端末装置30以外の機器との間でデータの送受信を行う。例えばタブレット機器またはスマートフォンなどが備える無線通信装置が通信部36として用いられる。外部表示器37は、端末装置30のユーザに対して様々な情報を表示する。例えばタブレット機器またはスマートフォンなどが備えるタッチパネルディスプレイが外部表示器37として用いられる。
【0029】
(筐体20および端末装置30の外形)
図2の正面斜視図には、本実施形態の薬剤識別システム10の、筐体20および端末装置30の外形が示されている。図2には、薬剤12を収容した容器22が筐体20の内部に配置された状態が示されている。筐体20は前方壁23、傾斜壁24、上壁25、右方壁28、左方壁29(および図示されていない背壁と底壁)で囲まれた内部空間を有する。
【0030】
筐体20の前方壁23の下方には、扉部21が配置されている。扉部21は、筐体20の前方壁23の一部を開放または閉鎖することができる。扉部21は図2では開放された状態になっており、筐体20の内部空間を筐体20の外部に対して開放している。なお、扉部21を通じて容器22を筐体20の内部と外部との間で案内するスライド機構などが筐体20に設けられていてもよい。
【0031】
そして、筐体20内部の下方には、重量計40が配置されている。容器22が筐体20の内部に配置されているとき、重量計40は、容器22を下方から支持して、容器22に収容されている薬剤12の重量値を計測する。なお、図2の重量計40は、計測された重量値を表示する重量表示部45を備えているが、図2に示されているように、重量計40が容器22を支持しているとき、重量表示部45の上方は容器22で覆われ、重量表示部45の表示は、上方から視認できなくなる。
【0032】
重量計40には内部通信線41(例えばシリアル通信ケーブル)が接続されており、内部通信線41は制御基板46および内部表示器42に接続されている。図2において制御基板46および内部表示器42は、筐体20内部で、前方壁23によって覆われた位置に配置されている。
【0033】
筐体20の上方部には、水平な上壁25と、上壁25に対して傾斜した傾斜壁24とが設けられている。そして、傾斜壁24には、取付部26と、撮影窓27とが設けられている。取付部26は、端末装置30が取り付けられる箇所である。端末装置30は、外部表示器37を上向き(ユーザから見える向き)にして取付部26に取り付けられる。例えば取付部26には磁石が設けられているとよい。また、端末装置30の裏面(外部表示器37と反対側の面)には、取付部26の磁石と引き合う極性の磁石が設けられているとよい。端末装置30がタブレット機器またはスマートフォンである場合には、タブレット機器またはスマートフォンを覆うカバーに磁石が設けられているとよい。取付部26と端末装置30の裏面に磁石が設けられていると、取付部26に取り付けられた端末装置30は、取付部26に対して磁力によって引き付けられ、重力によって傾斜壁24から滑り落ちる(自然落下する)ことがなくなる。
【0034】
傾斜壁24の撮影窓27は、筐体20の外壁に開けられた開口部である。この撮影窓27を通じて、筐体20の外部から、筐体20の内部を撮影器32によって撮影することができる。撮影器32は、撮影窓27を通じて、容器22に収容された薬剤12(重量計40によって重量値を計測されている薬剤12)と、内部表示器42によって表示されている重量値とが共に写っている計量撮影画像を撮影可能である。
【0035】
なお、取付部26に端末装置30が取り付けられる際には、端末装置30の撮影器32(カメラ)が、撮影窓27に臨むように位置決めされることが好ましい。例えば取付部26が傾斜壁24から盛り上がるようにして設けられた突出部であり、端末装置30の裏面には取付部26の形状とはまり合う窪みが設けられているとよい。例えば、タブレット機器またはスマートフォンを覆うカバーに窪みが設けられているとよい。そして、端末装置30の裏面の窪みと取付部26の形状が、端末装置30が特定の撮影姿勢の時にのみ嵌り合うように設けられていると、取付部26に端末装置30が取り付けられたとき、端末装置30は特定の撮影姿勢となる。端末装置30の撮影姿勢は、撮影器32が撮影窓27に臨む(対向する)姿勢であるとよい。
【0036】
(内部表示器42の配置)
図3の正面斜視図には、筐体20の内部において内部表示器42がどのように配置されているかが示されている。なお構造の説明のため、図3においては、筐体20の前方壁23が取り除かれた状態が示されている。また、図3においては、取付部26から端末装置30が取り外されている。そして図3においては、内部表示器42より下方の図示は省略されている。
【0037】
図3に示されているように、筐体20には梁部49が設けられている。梁部49は、右方壁28と左方壁29との間に張り渡された板状の部材である。そして、梁部49の下方に、基板支持部48が設けられている。基板支持部48は、溶接あるいはネジ留めなどの方法で梁部49と機械的に接続されている。基板支持部48は、上向きに傾斜した傾斜面を有する。基板支持部48の傾斜面に、制御基板46が配置される。そして、制御基板46の上に内部表示器42が配置される。重量計40と内部表示器42とを接続する内部通信線41は、梁部49の裏側を通って、基板支持部48まで導かれている。
【0038】
内部表示器42は、撮影器32が筐体20の外部から撮影窓27を通じて内部表示器42の表示を撮影できるように配置される。具体的には、基板支持部48の傾斜面の角度が、撮影窓27からユーザが肉眼で筐体20の内部を観察した際に、ユーザが内部表示器42の表示を視認できる角度になっているとよい。
【0039】
(計量撮影画像の撮影)
図2に示されているように、取付部26に取り付けられた端末装置30の撮影器32は、撮影窓27を通じて、筐体20内部を対象として撮影を行うことができる。なお、タブレット機器またはスマートフォンにおいては、撮影が行われる際、外部表示器37が、撮影結果として得られる予定の撮影画像を表示することができる。薬剤12を収容した容器22が筐体20の内部に表示されている場合、撮影器32は、薬剤12と、内部表示器42によって表示されている重量値とが共に写っている画像を撮影可能である。
【0040】
図4には、端末装置30の外部表示器37に、撮影結果として得られる予定の計量撮影画像が表示された状態が示されている。図4において、薬剤12は重量計40によって重量値を計測されており、その重量値が内部表示器42に表示されている。以下、図4の外部表示器37に表示されているような、重量計40によって重量値を計測されている薬剤12と、内部表示器42によって表示されている重量値とが共に写っている画像を、計量撮影画像と呼ぶ。なお、図4の計量撮影画像には、重量計40自身が備える重量表示部45による重量値の表示が含まれない。図4に示されているように、容器22が重量計40によって支持されているとき、容器22が重量表示部45の上方を覆って、重量表示部45の表示が上方から視認できなくなるためである。
【0041】
(画像認識)
端末装置30の撮影器32によって取得(撮影)された、図4に示されているような計量撮影画像は、画像認識を行う薬剤識別部33に送信される。図1に示されているように、端末装置30はAIモデル34と、薬剤情報リスト35とを有する。薬剤識別部33は、AIモデル34と、薬剤情報リスト35とを用いて計量撮影画像の画像認識を行う。
【0042】
薬剤識別部33は、AIモデル34を用いて、撮影器32が撮影した計量撮影画像から、薬剤12の特徴値と、内部表示部42に表示されている、薬剤12の重量値を抽出する。なお本実施形態において、計量撮影画像から特徴値(および重量値)を抽出する、という処理は、薬剤識別部33がAIモデル34に撮影画像を入力して、計量撮影画像に対応する出力として返ってきた特徴値(および重量値)を取得することを意味する。なお、特徴値は計量撮影画像に含まれる図形毎に抽出されるものであり、図4のように撮影対象の図形(例えば薬剤12の形状と内部表示器42の表示)が複数存在するならば、それぞれの図形に対応する特徴値が別々に抽出される。図4の計量撮影画像では、薬剤12の特徴値と、内部表示器42に表示された重量値(3.0g)が抽出される。
【0043】
AIモデル34は予め、計量撮影画像から薬剤12の特徴値と内部表示器42に表示された重量値を抽出可能なモデルとして構築されている。すなわち、AIモデル34は、入力データとして計量撮影画像が入力されると、その計量撮影画像に写っている薬剤12の特徴値および内部表示器42に表示された重量値を出力データとして返す。なお、入力データの計量撮影画像に内部表示器42の表示が含まれる場合には、AIモデル34は、内部表示器42の示している重量値を出力データに含めて出力することができる。例えばAIモデル34は、計量撮影画像に複数の図形(例えば薬剤12と、内部表示器42の表示)が含まれているならば、それぞれの図形に対応する特徴値を別々に抽出するように構築されているとよい。さらにAIモデル34は、内部表示器42の表示に対応する特徴値が、表示されている重量値を示すデータとなるように構築されているとよい。
【0044】
(薬剤12の識別)
そして薬剤識別部33は、薬剤12の特徴値を基に、薬剤情報リスト35を参照して、薬剤12の識別を行う。すなわち、薬剤識別部33は、AIモデル34が出力した特徴値に対応する薬剤12の識別情報(薬剤12の名称などの、薬剤12の種類を特定する情報)を薬剤情報リスト35から探し出す。AIモデル34が出力した薬剤12の特徴値と一致する特徴値が薬剤情報リスト35に列挙されているならば、薬剤情報リスト35内でその特徴値に対応する薬剤が、計量撮影画像に含まれる薬剤12であると識別される。なお、薬剤情報リスト35と特徴値との比較に基づく薬剤識別においては、計量撮影画像から抽出された特徴値が、薬剤情報リスト35内に列挙された特徴値と完全には一致しなくとも、ある程度近い値(例えばリスト値の0.95-1.05倍程度の値)であれば、そのある程度近い値の薬剤が撮影画像に含まれる薬剤12であると識別されてもよい。
【0045】
(数量算出処理)
また薬剤12の識別の後、薬剤識別部33は、計量撮影画像に含まれる薬剤12の数量算出処理を行う。薬剤情報リスト35には薬剤12の種類ごとに、薬剤12の計数単位(1錠、1袋など、薬剤12の数量を数え上げるための基準となる単位)の単位重量が列挙されている。薬剤識別部33は、計量撮影画像から得られた重量値を、識別結果に対応する単位重量で除算する(内部表示器42の示す重量値/単位重量)ことで、薬剤12の数量を算出する。図4の場合、錠剤である薬剤12が計数単位(1錠)あたり0.3gであるならば、内部表示器42の示す3.0gを0.3gで割った結果の「10錠」が、薬剤12の数量として算出される。なおここで、複数の薬剤包装を束ねるための輪ゴム、服用法(一日1錠など)を記したタグなどの薬剤付属物が薬剤12に付属している場合には、その薬剤付属物の重量も考慮して数量算出が行われる。
【0046】
(識別結果画面の表示)
そして薬剤12の識別結果と数量の算出結果が外部表示器37に送信され、外部表示器37はユーザに対して、識別結果と数量の算出結果として、図5に示されているような識別結果画面50を表示する。図5は、識別結果画面50が外部表示器37に表示された状態を示す図である。例えば薬剤12の名称(製品名)が「錠剤A」であるならば、識別結果画面50の名称欄に「錠剤A」と表示される。また、識別結果と処方箋データとの照合が行われる場合には、処方箋に記されている薬剤12の名称および数量が、識別結果と一致しているかどうかも表示される。図5では、識別欄に「済」と表示されることで、薬剤12の識別結果が、処方箋に記されている名称と一致したことが示されている。また、数量欄に「済:10」と表示されることで、数量算出処理によって算出された薬剤12の数量(ここでは10錠)が、処方箋に記されている数量と一致したことが示されている。
【0047】
以上のように、本実施形態の薬剤識別システム10によれば、撮影器32が計量撮影画像を撮影して、その計量撮影画像の画像認識に基づいて薬剤12の識別および数量算出処理が行われる。
【0048】
すなわち、端末装置30の薬剤識別部33が重量計40に対して通信を行わなくとも、重量値に基づく薬剤12の数量算出が可能である。したがって、端末装置30を操作するユーザにとっては、複雑な通信設定や操作を行わずとも薬剤識別の作業が可能であり、ユーザの負担が軽減される。また重量計40として、無線通信機能を持たない安価な機器を用いることができ、薬剤識別システム10の構築コストが安価となる。
【0049】
(処理手順)
図6は、薬剤識別システム10における処理の流れを示すフローチャートである。図6には、計量撮影画像の取得(撮影)から、薬剤12の数量算出処理完了までの処理手順が示されている。まずステップS01において、撮影器32によって計量撮影画像が取得(撮影)される。
【0050】
ステップS02において、薬剤識別部33が計量撮影画像をAIモデル34に入力して、計量撮影画像に含まれる薬剤12の特徴値の抽出を行う。そしてステップS03において、薬剤識別部33は抽出された特徴値を薬剤情報リスト35と照らし合わせて、計量撮影画像に含まれる薬剤12の識別を行う。
【0051】
薬剤12の識別の後、薬剤識別部33は、ステップS04、ステップS05、ステップS06からなる数量算出処理SAを行う。ステップS04において、薬剤識別部33は、薬剤情報リスト35から、識別された薬剤12の単位重量を取得する。
【0052】
そしてステップS05において、計量撮影画像の内部表示器42に表示されている重量値の抽出が行われる。ステップS05においては、薬剤識別部33が計量撮影画像を再度AIモデル34に入力することで重量値の抽出を行うとよい。あるいは、ステップS02でAIモデル34が計量撮影画像から薬剤12の特徴値を抽出する際に、AIモデル34が内部表示器42に表示されている重量値の抽出も行い、その重量値を薬剤識別部33が記憶しておくとよい。この場合、ステップS05において薬剤識別部33は記憶しておいた重量値を呼び出せばよい。続くステップS06において、計量撮影画像から抽出された重量値と、薬剤12の単位重量から、薬剤12の数量が算出される。以上のようにして図6における数量算出処理SAが完了したら、図5に示されているように、識別結果画面50が外部表示器37に表示される。
【0053】
以上の実施形態においては、薬剤情報リスト35に薬剤12の単位重量が記録されているものとして説明している。この薬剤12の単位重量とは、薬剤12を薬剤包装から取り出した状態での重量だけではなく、薬剤12の包装重量も含めて記録されている。例えば、錠剤であれば1錠分として切り離されて取り扱われる際の錠剤1つ分の周りのPTPシートの重量も含む重量値が記録されている。
【0054】
また、実際に患者に薬剤12が提供される際には、薬剤12の「端数」が生じることがある。例えばPTPシートで包装されるカプセル剤、錠剤などは、PTPシート1枚単位ではなく、数錠分をPTPシートから切り離した「端数」の薬剤12が患者に提供されることがある。薬剤12の「端数」が生じている場合でも、画像認識により「端数」に含まれる薬剤12の数量を調べることは可能である。例えば1つ分の薬剤12に関する「単位画像」のデータが用意してあり、「端数」の画像がこの単位画像の何個分の繰り返しであるかを調べればよい。しかし、そうした「端数」の数量判別は難易度が高く、精度が十分でないことがある。本実施形態の薬剤識別システム10によれば、こうした「端数」の生じた場合でも、計量撮影画像に基づく数量算出によって、より精度の高い数量判別が可能である。
【0055】
また、上記実施形態においては、AIモデル34を用いた画像認識を行っているが、AIモデル34を用いずに画像認識が行われてもよい。例えば薬剤12の種類ごとに「サンプル画像」が用意されており、画像処理によって撮影された薬剤12と「サンプル画像」を照合して識別が行われてもよい。また内部表示器42に表示される重量値の抽出についても、数字「0123456789」のそれぞれについて「サンプル画像」が用意され、内部表示器42の画像と「サンプル画像」を照合して重量値が特定されてもよい。
【0056】
本実施形態においては、撮影器32が、筐体20の内部に配置された薬剤12と、内部表示器42によって表示されている重量値とを、筐体20に設けられた撮影窓27から撮影して、計量撮影画像を撮影する。したがって、薬剤12、重量計40、内部表示器42を取り囲む筐体20が閉鎖されたままでも、撮影器32は筐体20の外部から計量撮影画像を撮影可能である。したがって、本実施形態においては、筐体20の内部に配置された薬剤12、重量計40、内部表示器42に対する外乱(風、光、静電気など)の影響が、筐体20によって遮断され、薬剤12の識別、および薬剤12の数量算出に対する外乱の影響が抑えられる。
【0057】
また、撮影予定の計量撮影画像が、筐体20の外部に設けられた外部表示器37に表示可能であるので、ユーザは、画像認識に用いられる計量撮影画像を視認しながら作業を行うことができる。したがってユーザは、筐体20の外部から、筐体20の内部を確認しながら計量撮影画像の撮影を行うことができる。これにより、ユーザは、重量計40を含む薬剤識別システム10の状態が、画像認識に適した計量撮影画像を撮影可能な状態であることを確認しながら撮影を行うことができる。例えばユーザは、薬剤12が撮影範囲内に収まっていること、および、内部表示器42の表示する重量値が明瞭に計量撮影画像に写ることなどを、筐体20の外部から確認することができる。
【0058】
また、撮影器32と、薬剤識別部33と、外部表示器37を備えた端末装置30が筐体20に取り付け可能であるので、薬剤識別システム10は、筐体20と、端末装置30とに分離可能である。こうした端末装置30としては、既存のタブレット機器などを利用できるので、端末装置30として薬剤識別システム10専用の機器を製作する必要がなく、薬剤識別システム10の構築コストが低減される。
【0059】
また本実施形態においては、端末装置30は薬剤識別を行うにあたって薬剤12と内部表示器42を撮影するだけであり、重量計40を含む筐体20と端末装置30とは、ハードウェア的にもソフトフェア的にも接続されていない。すなわち、筐体20と端末装置30との間は物理的に連結されているわけでもなければ、データ上で対応付けが行われているわけでもないので、筐体20と端末装置30がそれぞれ複数設けられている場合には、筐体20と端末装置30を任意の組み合わせで薬剤識別に用いることができる。したがって、例えば筐体20と端末装置30のいずれかが故障した場合には、故障した方を交換するだけで、通信設定などを行わなくとも直ちに薬剤識別を再開することができる。すなわち、本実施形態の薬剤識別システム10は、筐体20または端末装置30の故障の際に通信設定のやり直しなどの手間がかからず、メンテナンス性に優れている。
【0060】
(エラーコードについて)
なお、重量計40は、重量計40自身に異常が発生しているか否かを検出する自己診断機能を有していることが好ましい。例えば重量計40の電力源である電池が消耗している(残存電力が少なくなっている)ことを、重量計40自身が検出できるとよい。そして、自己診断機能によって重量計40に異常が発生していることが検出された場合、重量計40は一般的に、異常の種類に対応するエラーコードをユーザに対して表示する。
【0061】
本実施形態においては、自己診断機能によって検出された重量計40の異常の種類に対応するエラーコードは、内部表示器42に表示されるとよい。そして、薬剤識別部33は、内部表示器42に表示されたエラーコードを含む計量撮影画像の画像認識を行うことによって、エラーコードに対応する異常の種類を判定するとよい。ここで、エラーコードに対応する異常に関する説明(例えば「電池が消耗しています」)、およびその異常の解消方法(例えば「電池を交換してください」)が、外部表示器37に表示されるとよい。
【0062】
エラーコードは一般的に、異常の種類に対応した数字または文字を示すものであり、どのような異常が発生しているかの詳しい説明を示すものではない。したがって、発生している異常の詳しい説明、および異常の解消方法をユーザが知るためには、ユーザは重量計40の説明書などに記されている、エラーコードの一覧表を確認してエラーコードを解読する必要がある。
【0063】
本実施形態において、エラーコードに対応する異常に関する説明、およびその異常の解消方法が外部表示器37に表示される場合は、ユーザはエラーコードを解読しなくとも重量計40の異常の種類およびその解消方法を知ることが可能となり、ユーザの作業負担が軽減される。
【符号の説明】
【0064】
10 薬剤識別システム
12 薬剤
20 筐体
21 扉部
24 傾斜壁
25 上壁
22 容器
23 前方壁
26 取付部
27 撮影窓
28 右方壁
29 左方壁
30 端末装置
31 制御部
32 撮影器
33 薬剤識別部
34 AIモデル
35 薬剤情報リスト
36 通信部
37 外部表示器
40 重量計
41 内部通信線
42 内部表示器
45 重量表示部
46 制御基板
48 基板支持部
49 梁部
50 識別結果画面
図1
図2
図3
図4
図5
図6