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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068677
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】軌道走行玩具
(51)【国際特許分類】
   A63H 18/16 20060101AFI20240514BHJP
   A63H 18/02 20060101ALI20240514BHJP
   A63H 19/28 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
A63H18/16 A
A63H18/02 D
A63H19/28 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179191
(22)【出願日】2022-11-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003584
【氏名又は名称】株式会社タカラトミー
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 智
【テーマコード(参考)】
2C150
【Fターム(参考)】
2C150AA12
2C150CA08
2C150CA22
2C150DA06
2C150EA03
2C150EB01
2C150EB36
2C150FA04
(57)【要約】
【課題】開口を利用して走行玩具を停車させる軌道走行玩具であって、走行時姿勢で走行玩具を停止させることが可能な軌道走行玩具を提供すること。
【手段】 駆動輪を空転させるための開口が形成され、開口には、駆動輪が転動可能な可動レールが配置され、開口の脇には、停車の際に走行玩具のシャーシの下側に当接する保持部が形成され、保持部は、可動レールが上昇位置にあるとき、走行玩具の走行を許容し、可動レールが下降位置にあるとき、走行玩具のシャーシの下側に当接し、走行玩具を走行時と略同じ高さ位置に保持するとともに、可動レールと駆動輪とを離間させ、前記走行玩具を停車させる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の車輪で軌道を走行する自走式の走行玩具を停車させる軌道走行玩具であって、
前記左右の車輪が転動する固定のレールの途中に、前記左右の車輪の中の少なくとも駆動輪を受け入れて前記駆動輪を空転させるための開口が形成され、
前記開口に対応する部分には、前記車輪が転動可能な可動レールが配置され、
前記可動レールは、操作子に対する遊戯者の所定の所作によって、前記開口を塞ぐ上昇位置と、前記開口の奥に没する下降位置とを選択的に取り得るように構成され、
前記軌道には、前記開口の脇に、停車の際に前記走行玩具のシャーシの下側に当接する保持部が形成され、
前記保持部は、
前記可動レールが上昇位置にあるとき、前記可動レールが前記駆動輪と接触することで、前記走行玩具のシャーシの下側と当接せず、前記走行玩具の走行を許容し、
前記可動レールが下降位置にあるとき、前記走行玩具のシャーシの下側に当接し、前記走行玩具を走行時と略同じ高さ位置に保持するとともに、前記可動レールと前記駆動輪とを離間させ、前記走行玩具を停車させる、
ことを特徴とする軌道走行玩具。
【請求項2】
前記可動レールは、常態で下降位置を取り、前記操作子の操作によって上昇位置を取る、ことを特徴とする請求項1に記載の軌道走行玩具。
【請求項3】
軌道本体の内部には、前記軌道本体の幅方向の一側に前記操作子としてボタンが付設され、他側に前記可動レールが付設され、前記操作子と前記可動レールとの間で軸支された回動板が設けられ、
前記可動レールは、常態で下降位置を取り、前記ボタンを押下することにより上昇位置を取る、
ことを特徴とする請求項1に記載の軌道走行玩具。
【請求項4】
前記走行玩具は、前後に左右の車輪が設けられ且つ後側の車輪が駆動輪とされた1台の車両から構成され、
前記開口には、停車時に全ての車輪が受け入れられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の軌道走行玩具。
【請求項5】
前記走行玩具は、1台の牽引車両を含む列車であり、前記牽引車両は、前後に左右の車輪が設けられ且つ後側の車輪が駆動輪とされ、
前記開口には、停車時に前記牽引車両の全ての車輪が受け入れられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の軌道走行玩具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道走行玩具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軌道を走行する自走式の車輪付き走行玩具を停止させる軌道走行玩具として、走行玩具の左右の車輪に個別に対応した開口が路面の形成されたものが知られている(特許文献1参照)。
この軌道走行玩具によれば、左右の車輪を開口に落として空転させることにより、走行玩具を停車させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-57496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記軌道走行玩具にあっては、一旦、停車させた走行玩具を再び発車させるためには、遊戯者が走行玩具を直接に掴んで停車場所以外の場所に移動させるか、或いは、後続の走行玩具を追突させるなどして、停車している走行玩具を再び発車させるようにしている。
しかしながら、前者の場合、自走式の走行玩具であるにもかかわらず走行に直接的な人手を必要とするため、自走式の走行玩具としての興趣性を損なうという問題がある。
一方、後者の場合、走行を継続させるためには、軌道上に常に2台以上の走行玩具を走行させておかなければならず、しかも、走行玩具同士が近付かないと再発車できない、という問題がある。また、車輪を空転させるためには、シャーシの下側を路面に接触させなければならず、走行玩具の車輪が穴に嵌まって停車した形となるので、実物の停車姿勢とはかけ離れ、不自然なものとなるとともに、開口を深くする必要があることから、停車時に開口の進行方向側に衝突又は開口への落下の衝撃が走行玩具に発生する。
本発明は、かかる事情に鑑み、開口を利用して走行玩具を停車させる軌道走行玩具であって、走行時姿勢で走行玩具を停止させることが可能な軌道走行玩具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の手段は、
左右の車輪で軌道を走行する自走式の走行玩具を停車させる軌道走行玩具であって、
前記左右の車輪が転動する固定のレールの途中に、前記左右の車輪の中の少なくとも駆動輪を受け入れて前記駆動輪を空転させるための開口が形成され、
前記開口に対応する部分には、前記車輪が転動可能な可動レールが配置され、
前記可動レールは、操作子に対する遊戯者の所定の所作によって、前記開口を塞ぐ上昇位置と、前記開口の奥に没する下降位置とを選択的に取り得るように構成され、
前記軌道には、前記開口の脇に、停車の際に前記走行玩具のシャーシの下側に当接する当接部が形成され、
前記当接部は、
前記可動レールが上昇位置にあるとき、前記可動レールが前記駆動輪と接触することで、前記走行玩具のシャーシの下側と当接せず、前記走行玩具の走行を許容し、
前記可動レールが下降位置にあるとき、前記走行玩具のシャーシの下側に当接し、前記走行玩具を走行時と略同じ高さ位置に保持するとともに、前記可動レールと前記駆動輪とを離間させ、前記走行玩具を停車させる、ことを特徴とする。
【0006】
第2の手段は、第1の手段であって、
前記可動レールは、常態で下降位置を取り、前記操作子の操作によって上昇位置を取る、ことを特徴とする。
【0007】
第3の手段は、第1の手段であって、
軌道本体の内部には、前記軌道本体の幅方向の一側に前記操作子としてボタンが付設され、他側に前記可動レールが付設され、前記操作子と前記可動レールとの間で軸支された回動板が設けられ、前記可動レールは、常態で下降位置を取り、前記ボタンを押下することにより上昇位置を取る、
ことを特徴とする。
【0008】
第4の手段は、第1の手段であって、前記走行玩具は、1台の車両から構成され、全ての車輪が前記開口に受容されるように構成されている、ことを特徴とする。
【0009】
第5の手段は、第1の手段であって、前記走行玩具は、1台の牽引車両を含む列車であり、前記牽引車両の全ての車輪が前記開口に受容されるように構成されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
第1の手段によれば、可動レールが下降位置にあるとき、走行玩具のシャーシの下側に接触し、走行玩具を所定位置に保持して路面と駆動輪とを離間させ、走行玩具を停止させ、可動レールが上昇位置にあるとき、路面と駆動輪とが接触することで、走行玩具のシャーシの下側と非接触となり、走行玩具の通過を許容するので、停止姿勢が走行時の姿勢で走行玩具を停止させることができる。また、1台の走行玩具を走行させる場合にも当該走行玩具を摘むことなく継続走行させることができる。
また、保持部(当接部)と開口の絶妙なバランスで、停車時の外観もそこまで不自然ではないだけではなく、停車及び発車時に走行玩具への衝撃を比較的小さくすることができる。
【0011】
第2の手段によれば、可動レールが自重によって常態で下降位置を取り、発射させるときだけ操作子を操作すれば足りるので、操作子の操作が容易となる。
【0012】
第3の手段によれば、可動レールがボタンの押下によって梃子動作によって上昇するので、簡素な構成で済むことになる。
【0013】
第4の手段によれば、走行玩具の全部の車輪が開口に受容されるので、適度なブレーキが作用し、円滑に走行玩具を停止させることができる。
【0014】
第5の手段によれば、牽引車両の全部の車輪が開口に受容されるので、適度なブレーキが作用し、円滑に走行玩具を停止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】軌道走行玩具の全体を示した斜視図である。
図2】走行玩具の斜視図である。
図3】牽引車両を下方から見た斜視図である。
図4】貨物車両の分解斜視図である。
図5】停車軌道の斜視図である。
図6】停車軌道の分解斜視図である。
図7】停車軌道の動作を説明するための図である。
図8】排出軌道の斜視図である。
図9】排出軌道の分解斜視図である。
図10】摺接ブロックの斜視図である。
図11】貨物車両の荷台が傾倒した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0017】
図1は、軌道走行玩具100の全体を示した斜視図である。
この軌道走行玩具100は、ループ状の軌道1と、軌道1の上を走行する走行玩具5とを備える。ループ状の軌道1は、形が異なる短い軌道を適宜に連結することにより構成されている。また、軌道1の下には、軌道1の各部を所定高さに保持するための台座1aが設けられている。
この軌道1は、荷の積載場所P1に設置される停車軌道10と、荷降し場所P2に設置される排出軌道30とを含んでいる。
そして、この軌道走行玩具100では、荷の積載場所P1で、例えば、バケツ2を使って蕎麦の麺などを走行玩具5の荷台57に積載し、走行玩具5で荷降し場所P2まで運んで、麺をボウル3に排出させるようになっている。
以下、この軌道走行玩具100の細部を説明する。
【0018】
《走行玩具5》
図2は走行玩具5の斜視図、図3は牽引車両51を下方から見た斜視図である。なお、走行玩具5の説明において、「前後」、「左右」は走行玩具5の中から見た前後、左右を言うものとする。
走行玩具5は自走式の列車玩具となっている。この走行玩具5の先頭車両は、電池とモータ(図示せず)が搭載された牽引車両51となっており、2両目及び3両目の車両は、牽引車両51に牽引される貨物車両52、53となっている。牽引車両51と貨物車両52との間、貨物車両52と貨物車両53との間は連結器54によって連結されている。
そして、走行玩具5は、牽引車両51のシャーシ51aの下の車輪51bのうち後側の左右の車輪(駆動輪)51bがモータ動力によって駆動され、走行するように構成されている。
なお、牽引車両51には、電池及びモータに代えて、ゼンマイばね等の動力源が搭載されていてもよい。
【0019】
図4は、貨物車両52、53の分解斜視図である。
ここで、貨物車両52、53は次のように構成されている。なお、貨物車両52、53は、同じ構成であるので、同一構成要素については同一符号を用いて一緒に説明することとする。
貨物車両52、53のシャーシ55は平板状に構成され、このシャーシ55の下には車輪56が付設されている。一方、シャーシ55の上には、バケット型の荷台57が設けられている。
【0020】
荷台57は、前後方向に長尺で上方に開口している。荷台57の外形は、後面視で、逆台形状となっており、下縁が水平で、右縁が下縁の右端から直立し、上縁が水平で下縁よりも左方に突出し、左縁が下縁の左端から上縁の左端に向けて傾斜している。
また、荷台57の外形は、平面視及び側面視で、長方形となっている。
そして、荷台57は、後面視で、下縁と左縁とで構成される角部の近くで、荷台57の前後に延在する軸57aを介して、シャーシ55に立設された舌片状の支持板59F、59Bによって支持されている。
一方、荷台57の内側には、上方が長方形に開口された荷の収容空間が形成されている。収容空間を形成する左内壁60Lと右内壁60Rとは、互いの水平距離が下方に行くに従狭まり、下端が互いに会合するように傾斜している。この会合部分は、後面視で、荷台57の外形における下縁と右縁とで構成される角部の近くにある。左内壁60Lと右内壁60Rには傾斜に沿って延びる凸条が前後方向に複数並設されている。凸条は、荷の積載や荷下ろしの際に、荷を滑り易くするためのものである。
【0021】
また、荷台57の右外壁の下端には、右外方に張り出す摺接片58が形成されている。この摺接片58は荷台57の一部を構成する。摺接片58は、荷台57の前後方向全域に亘って形成されている。この摺接片58は、貨物車両52、53の走行に伴って、後述の第1傾斜摺接面32b又は第2傾斜摺接面32cに摺接して軸57aを中心に荷台57を回動させる働きをする。なお、摺接片58は、全体が第1傾斜摺接面32b又は第2傾斜摺接面32cに摺接するものではなく、第1傾斜摺接面32bとは前端部が、第2傾斜摺接面32cとは後端部が摺接する。
【0022】
さらに、シャーシ55の左端部には、左下方に向けて傾斜する傾斜部55aが設けられている。この傾斜部55aの上面には、倒れた荷台57の左外壁が当接する。
なお、荷台57は、荷が空の場合、起立位置及び倒れた(傾倒)位置で自重によって安定して保持される。
或いは、荷台57は、荷が空の場合、起立位置のみで自重又はばね付勢によって安定して保持され、傾倒させたとき重力又はばねの付勢力によりそれ自身で起立位置に戻るものであってもよい。
【0023】
《停車軌道10》
図5は停車軌道10の斜視図、図6は停車軌道10の分解斜視図、図7(A)、(B)は停車軌道10の動作を説明するための図である。なお、軌道1の説明において、「左右」は、軌道1を走行する走行玩具5から見た場合の左右を言うものとする。
停車軌道10は、走行玩具5を停車させるための軌道である。この停車軌道10は、荷の積載場所P1で、進入してきた走行玩具5を停車させ、荷を積載した後に、ボタン11を押下することにより走行玩具5を再び発車させる働きをする。
【0024】
停車軌道10には、牽引車両51の左右の車輪51bの全てが乗る左右の可動レール12L、12Rが敷設されている。左右の可動レール12L、12Rは、軌道本体10aの固定のレールの途中に形成した左右の開口10bL、10bR内に設けられている。また、左右の可動レール12L、12Rは、軌道脇に設けられたボタン11に連結され、常態では左右の開口10bL、10bRの奥に沈み込み、ボタン11を押下することによって浮び上がり左右の開口10bL、10bRを塞ぐように構成されている。以下、左右の可動レール12L、12Rが路面から沈み込む位置を下降位置、左右の開口10bL、10bRを塞ぐ位置を上昇位置と言う。
【0025】
すなわち、停車軌道10の内部には、左右の可動レール12L、12Rが設けられた回動板13が設置されている。回動板13の一端には、軌道脇に配置されるボタン11が付設されている。ボタン11は軌道本体10aの孔10cから突出している。回動板13は、ボタン11と左右の可動レール12L、12Rとの間で軸15を介して軌道本体10aに支持されている。そして、回動板13は、常態では、自重によって一方向に回動して左右の可動レール12L、12Rを下降位置とし、ボタン11を押下したとき、他方向に回動し、左右の可動レール12L、12Rを上昇位置とする。
【0026】
また、軌道本体10aの上面には、左右の開口10bL、10bRの直ぐ内側となる部分に、牽引車両51のシャーシ51aの下側が当接可能な左右の保持部14L、14Rが形成されている。左右の保持部14L、14Rの上面は、シャーシ51aの下側が当接したときに、走行玩具5を走行状態と略同じ高さに保持できるように設定されている。保持部14L、14Rの上面には凹凸が形成され、停車の際に、この凹凸がシャーシ51aの下側と摺接し、牽引車両51に効果的にブレーキをかける。
【0027】
≪停車軌道10の作用及び効果≫
この停車軌道10によれば、停車軌道10に進入してきた走行玩具5は、左右の可動レール12L、12Rが下降位置にあるとき、牽引車両51の車輪51bが左右の開口10bL、10bRの所に至ると、車輪51bが左右の開口10bL、10bRに僅かに落ち、牽引車両51のシャーシ51aの下側が左右の保持部14L、14Rに当接される。このとき、牽引車両51の後側の車輪51bが左右の可動レール12L、12Rに接しないため、牽引車両51が左右の保持部14L、14Rによりブレーキをかけられて停車する(図7(A))。
一方、ボタン11の押下によって左右の可動レール12L、12Rが上昇位置にあるときには、停車軌道10に進入してきた走行玩具5は、車輪51bが左右の可動レール12L、12Rに接するので、シャーシ51a、55の下側が左右の保持部14L、14Rに擦れることなく通過する(図7(B))。
また、停車した走行玩具5は、ボタン11の押下によって、左右の可動レール12L、12Rが上昇位置となったとき、牽引車両51の車輪51bに当接されるとともに牽引車両51が少し持ち上げられて、走行を再開する(図7(B))。
その結果、今までにない斬新な構造の停車軌道10が実現できる。
【0028】
≪停車軌道10の変形例≫
上記では、回動板13の梃子動作(回動)によって左右の可動レール12L、12Rを昇降させたが、1枚の昇降板の上に左右の可動レール12L、12Rを付設しておき、この1枚の昇降板を、例えば、レバー操作によって直接又はカムやリンクを介して上下動させるようにしてもよい。
【0029】
また、上記では、左右の可動レール12L、12Rが回動板13の自重により下降位置を取るようにしたが、ばね付勢により左右の可動レール12L、12Rが下降位置を取るようにしてもよい。
【0030】
さらに、上記では、左右の可動レール12L、12Rが常態で下降位置を取るようにしたが、逆に、ばね付勢等により左右の可動レール12L、12Rが常態で上昇位置を取り、操作子の操作によって下降位置を取るようにしてもよい。
【0031】
≪排出軌道30≫
図8は排出軌道30の斜視図、図9は排出軌道30の分解図、図10は摺接ブロック32の斜視図である。
排出軌道30の軌道本体30aの右には厚手の平板中空状の壁31が立設されている。壁31の上面は、走行する貨物車両52、53の摺接片58が当たらない程度の高さに設定されている。したがって、後述の摺接ブロック32が無い場合には、壁31の箇所を貨物車両52、53がそのまま通過し、荷台57が傾動されない。
【0032】
壁31の上面は、走行玩具5の入口側の上面31aが低く、出口側の上面31bが僅かに高くなっている。出口側の上面31bを僅かに高くしたのは、後述の摺接ブロック32の第1傾斜摺接面32bが摺接片58に摺接した際に、摺接ブロック32を取れにくくするためである。
この壁31の入口側の上面31aには、走行玩具5の移動方向に長尺な長方形の差込み穴33が形成されている。そして、この差込み穴33には、後述の摺接ブロック32の突起32aが差込み可能となっており、当該突起32aの差込みによって摺接ブロック32が取り付けられる。
【0033】
摺接ブロック32は、側面視で略2等辺三角形状の厚手で中空の平板となっている。摺接ブロック32の底面には、上記差込み穴33と相補的形状の突起32aが形成されている。この摺接ブロック32は、壁31に対して着脱可能に構成されている。そして、摺接ブロック32は、装着によって定位置に留め置かれる留置き状態と、離脱によって定位置から退く退去状態とを選択的に取り得る。
摺接ブロック32において、2等辺三角形の一方の等辺に対応する入口側の傾斜面が第1傾斜摺接面32b、他方の等辺に対応する出口側の傾斜面が第2傾斜摺接面32cを構成している。
第1傾斜摺接面32bは、進入してくる貨物車両52、53の摺接片58に摺接し、荷台57を左方に傾倒させる。また、第2傾斜摺接面32cは、退出する貨物車両52、53の摺接片58に摺接し、荷台57の起立状態へ移行させる。
また、摺接ブロック32のうち、第1傾斜摺接面32bの上端と第2傾斜摺接面32cの上端との間には段部32dが形成されている。段部32dは、上端が第1傾斜摺接面32bの上端に連なる鉛直面と、鉛直面の下端と第2傾斜摺接面32cの上端に連なる水平面とから構成されている。この段部32dは、取付けの間違いをなくす働きをするとともに、バッファゾーンを構成している。
【0034】
図11は、貨物車両52(又は53)の荷台57が傾倒した状態を示す図である。
すなわち、走行玩具5の走行に伴って、第1傾斜摺接面32bに摺接片58が摺接すると、荷台57が左に傾動し始め、やがては、荷の重みもあって、第1傾斜摺接面32bから摺接片58が離れて、荷台57が左に傾倒する。その後、荷台57を起立させるため、荷台57を後述の第3傾斜摺接面34cに摺接させるが、この際、バッファゾーンがないと、空となり軽くなった荷台57が勢いよく跳ね上がるため、摺接片58が第2傾斜摺接面32cに当たった際にバウンドしてしまい、摺接片58が第2傾斜摺接面32cに上手く倣わない。これに対して、バッファゾーンがあると、段部32dの面(当接面)で上手く摺接片58の勢いが弱まり、その後に、摺接片58が確実に第2傾斜摺接面32cに倣って起立することになる。
【0035】
排出軌道30の走行方向の左隣には、荷をボウル3(図1)に導く入口側投入面34aと出口側投入面34bが形成されている。入口側投入面34aは出口側に向けて下り勾配を有するように傾斜し、出口側投入面34bは入口側に向けて下り勾配を有するように傾斜している。入口側投入面34aは軌道の上縁から軌道の下縁に亘って延びている。出口側投入面34bは軌道の上方から軌道の下縁に亘って延びている。そして、出口側投入面34bの上部は、倒れた荷台57の前壁と左側壁との角部が摺接する第3傾斜摺接面(摺接部)34cを構成している。この第3傾斜摺接面34cに荷台57の前壁と左側壁との角部が摺接することにより、荷台57は跳ね上げられる。
【0036】
《排出軌道30の作用及び効果》
摺接ブロック32が装着されているときは、走行玩具5は、第1傾斜摺接面32bが摺接片58に摺接し、ある程度左に荷台57が傾いたときに、モーメントバランスによって荷台57が傾倒して荷を排出させる。一方、摺接ブロック32が取り外されているときは、荷台57が傾倒しないので、荷を排出させることなく、走行玩具5がそのまま通過する。
その結果、摺接ブロック32の装着、離脱によって、荷降ろしをしたいときだけ、荷台57を倒すことができる。
【0037】
《排出軌道30の変形例》
上記では、摺接ブロック32の出口側の傾斜面が第2傾斜摺接面32cを構成することとしたが、荷台57の摺接片57が第3傾斜摺接面34cに摺接することによって勢いよく跳ね上がった荷台57の摺接片57が摺接ブロック32の段部32d及び第2傾斜摺接面32cに当接しない構成とすることができる。
このような構成は、荷台57の摺接片57が第3傾斜摺接面34cに摺接するタイミングを変えるように、第3傾斜摺接面34cの位置を変更することにより実現することができる。
この場合、跳ね上がった荷台57がシャーシ55に直ちに当接してもよいが、当該荷台57がシャーシ55に直ちに当接しないように、荷台57がシャーシ55に当接する直前に、摺接片57を壁31の上面31bに一旦当接させることが好ましい。そのためには、壁31の上面31bの高さを、荷台57の摺接片57がシャーシ55に当接する直前に、壁31の上面31bに当接する高さとしておく必要がある。
このような構成とすることで、荷台57がシャーシ55に直ちに当接することに基づく衝撃が緩和され、貨物車両52,53が暴れるのが防止される。
なお、このような構成とした場合、摺接ブロック32を取り外した状態でも、摺接片57が壁31の上面31bに摺接し、荷台57がシャーシ55から少し浮くことになるが、壁31の上面31bの高さを、荷台57がシャーシ55から僅かにしか浮かない高さに設定しておけば、荷台57を通常走行の場合と同様な状態に保ったまま通過させることができる。このとき、摺接片57が壁31の上面31aにも摺接してもよいが、壁31の上面31bだけに摺接するようにすることが好ましい。
また、この場合の壁31の上面31bに代わるものを摺接ブロック32に形成しておくこともできる。
【0038】
また、上記では、摺接ブロック32を着脱可能に構成したが、摺接ブロック32が装着状態を保ったまま定位置に対して進退可能となっていてもよい。例えば、壁31に対して出没可能に構成され、使用時にだけ突出させる構成となっていてもよい。
また、摺接ブロック32が鉛直軸を中心に回動可能に構成され、回動によって定位置に対して進退するように構成してもよい。
これらによって、摺接ブロック32の留置き状態と退去状態を実現できる。
【0039】
また、上記では、摺接ブロック32に第1傾斜摺接面32b及び第2傾斜摺接面32cを形成し、第1傾斜摺接面32b及び第2傾斜摺接面32cを摺接片58と摺接させるようにしたが、摺接ブロック32に溝を形成し、この溝の壁に貨物列車52、53側に形成した突起を摺接させるようにしてもよい。
【0040】
さらに、上記では、荷台57の本体に摺接片58を設けたが、摺接片58を設けずに、荷台57の本体を第1傾斜摺接面32b及び第2傾斜摺接面32cに摺接させてもよい。
【0041】
また、上記では、装着した摺接ブロック32の第1傾斜摺接面32bへの摺接片58の摺接によって荷台57を荷排出状態としたが、摺接ブロックを荷投入口に装着し、摺接ブロックと荷台57が摺接させることで、荷台57を荷積み状態に維持し、摺接ブロックを離脱させることで、重力又はばね力等の付勢力によって、荷台57を荷排出状態としてもよい。なお、この場合には、軌道1に固定の摺接部を設けておき、走行玩具5の荷台57を摺接させることで、荷台57を荷積み状態に保持しておくことが好ましい。
【0042】
《その他の変形例》
以上、本発明の実施形態と、停車軌道10及び排出軌道30の変形例について説明したが、本発明は、かかる実施形態や変形例に限定されず、その要旨を変更しない範囲で、種々の変形が可能である。
【0043】
例えば、上記実施形態では、走行玩具5として自走式の列車玩具の例を説明したが、走行玩具5としてダンプカー玩具等の荷台がある自走式の走行玩具一般に適用できる。
【0044】
また、上記実施形態では、荷として蕎麦の麺を例に説明したが、ビーズやビー玉のようなものであってもよい。要は、荷台57に積載でき、荷台57を倒すことによって排出できることである。
【0045】
また、上記実施形態では、排出軌道30を全体の軌道1内に1つ設けた場合について説明したが、全体の軌道1内に複数設け、所望の場所で荷を排出させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 軌道
1a 台座
2 バケツ
3 ボウル
5 走行玩具
10 停車軌道
10a 軌道本体
10bL、10bR 穴
10c 孔
12 排出軌道
12L、12R 可動レール
13 回動板
14L、14R 保持部
15 軸
30 排出軌道
31 壁
32 摺接ブロック
32a 突起
32b 第1傾斜摺接面
32c 第2傾斜摺接面
32d 段部
33 差込み穴
34a 入口側投入面
34b 出口側投入面
34c 第3傾斜摺接面
51 牽引車両
52、53 貨物車両
57 荷台
58 摺接片
100 軌道走行玩具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2023-11-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
第1の手段は、
左右の車輪で軌道を走行する自走式の走行玩具を停車させる軌道走行玩具であって、
前記左右の車輪が転動する固定のレールの途中に、前記左右の車輪の中の少なくとも駆動輪を受け入れて前記駆動輪を空転させるための開口が形成され、
前記開口に対応する部分には、前記車輪が転動可能な可動レールが配置され、
前記可動レールは、操作子に対する遊戯者の所定の所作によって、前記開口を塞ぐ上昇位置と、前記開口の奥に没する下降位置とを選択的に取り得るように構成され、
前記軌道には、前記開口の内側に、停車の際に前記走行玩具のシャーシの下側に当接する当接部が形成され、
前記当接部は、
前記可動レールが上昇位置にあるとき、前記可動レールが前記駆動輪と接触することで、前記走行玩具のシャーシの下側と当接せず、前記走行玩具の走行を許容し、
前記可動レールが下降位置にあるとき、前記走行玩具のシャーシの下側に当接し、前記走行玩具を走行時と略同じ高さ位置に保持するとともに、前記可動レールと前記駆動輪とを離間させ、前記走行玩具を停車させる、ことを特徴とする。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の車輪で軌道を走行する自走式の走行玩具を停車させる軌道走行玩具であって、
前記左右の車輪が転動する固定のレールの途中に、前記左右の車輪の中の少なくとも駆動輪を受け入れて前記駆動輪を空転させるための開口が形成され、
前記開口に対応する部分には、前記車輪が転動可能な可動レールが配置され、
前記可動レールは、操作子に対する遊戯者の所定の所作によって、前記開口を塞ぐ上昇位置と、前記開口の奥に没する下降位置とを選択的に取り得るように構成され、
前記軌道には、前記開口の内側に、停車の際に前記走行玩具のシャーシの下側に当接する保持部が形成され、
前記保持部は、
前記可動レールが上昇位置にあるとき、前記可動レールが前記駆動輪と接触することで、前記走行玩具のシャーシの下側と当接せず、前記走行玩具の走行を許容し、
前記可動レールが下降位置にあるとき、前記走行玩具のシャーシの下側に当接し、前記走行玩具を走行時と略同じ高さ位置に保持するとともに、前記可動レールと前記駆動輪とを離間させ、前記走行玩具を停車させる、
ことを特徴とする軌道走行玩具。
【請求項2】
前記可動レールは、常態で下降位置を取り、前記操作子の操作によって上昇位置を取る、ことを特徴とする請求項1に記載の軌道走行玩具。
【請求項3】
軌道本体の内部には、前記軌道本体の幅方向の一側に前記操作子としてボタンが付設され、他側に前記可動レールが付設され、前記操作子と前記可動レールとの間で軸支された回動板が設けられ、
前記可動レールは、常態で下降位置を取り、前記ボタンを押下することにより上昇位置を取る、
ことを特徴とする請求項1に記載の軌道走行玩具。
【請求項4】
前記走行玩具は、前後に左右の車輪が設けられ且つ後側の車輪が駆動輪とされた1台の車両から構成され、
前記開口には、停車時に全ての車輪が受け入れられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の軌道走行玩具。
【請求項5】
前記走行玩具は、1台の牽引車両を含む列車であり、前記牽引車両は、前後に左右の車輪が設けられ且つ後側の車輪が駆動輪とされ、
前記開口には、停車時に前記牽引車両の全ての車輪が受け入れられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の軌道走行玩具。