(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068678
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】作業機械及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
E02F 3/43 20060101AFI20240514BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20240514BHJP
E02F 9/20 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
E02F3/43 A
E02F9/26 B
E02F9/20 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179194
(22)【出願日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 啓介
(72)【発明者】
【氏名】階戸 文乃
(72)【発明者】
【氏名】柴田 誉
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB04
2D003BA02
2D003BA05
2D003BA06
2D003CA02
2D003DA04
2D015HA03
(57)【要約】
【課題】作業機械を好適に動作制御する。
【解決手段】ショベル100は、アタッチメントAT等の作業要素を有する車体BDと、作業効率とエネルギ消費効率と金属疲労ダメージとの間の優先度合いに基づいて、車体BDの動作を制御するコントローラ30と、を備えている。これにより、作業効率とエネルギ消費効率に加え、金属疲労ダメージを考慮して、ショベル100を動作制御することができる。したがって、ショベル100を好適に動作制御することができる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業要素を有する機械本体と、
作業効率とエネルギ消費効率と金属疲労ダメージとの間の優先度合いに基づいて、前記機械本体の動作を制御する制御部と、
を備える作業機械。
【請求項2】
前記制御部は、ユーザ操作に基づいて、前記作業効率と前記エネルギ消費効率と前記金属疲労ダメージとの間の優先度合いを設定する、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記制御部は、前記金属疲労ダメージとして、前記機械本体の動作に対応する部位の値を算出する、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項4】
前記制御部は、前記機械本体の動作を制御する場合に、現在の動作状態における前記作業効率と前記エネルギ消費効率と前記金属疲労ダメージとの間の優先度合いを、表示手段に表示させる、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項5】
前記機械本体は、前記作業要素と走行体とを含み、
前記機械本体の動作は、作業動作、走行動作及び衝撃動作を含む、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項6】
前記作業要素は、ブーム、アーム及びバケットを含むアタッチメントである、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項7】
請求項1に記載の作業機械と通信可能な情報処理装置であって、
ユーザ操作に基づいて、前記作業効率と前記エネルギ消費効率と前記金属疲労ダメージとの間の優先度合いを設定する、
情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械及び情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ショベル等の作業機械において、マシンコントロール機能により自動で掘削動作を行わせる場合に、作業効率とエネルギ消費効率との間の優先度合いを考慮して、バケットの目標軌道を設定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業機械の動作制御において、金属疲労ダメージを考慮できると、より有用である。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、作業機械を好適に動作制御することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る作業機械は、
作業要素を有する機械本体と、
作業効率とエネルギ消費効率と金属疲労ダメージとの間の優先度合いに基づいて、前記機械本体の動作を制御する制御部と、
を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、作業機械を好適に動作制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】本実施形態に係るショベルの概略の制御構成を示すブロック図である。
【
図4】本実施形態に係る動作制御処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】本実施形態に係る動作制御処理における表示装置の表示例を示す図である。
【
図6】本実施形態に係る動作制御処理における表示装置の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0009】
[ショベルの構成]
図1及び
図2は、本実施形態に係るショベル100の側面図及び平面図である。
これらの図に示すように、本実施形態に係るショベル100は、本発明に係る作業機械の一例であり、下部走行体1と、旋回機構2を介して旋回自在に下部走行体1に搭載される上部旋回体3と、各種作業を行うためのアタッチメントATと、キャビン10とを備える。
以下、ショベル100(上部旋回体3)の前方は、ショベル100を上部旋回体3の旋回軸に沿って真上から平面視(上面視)で見たときに、上部旋回体3に対するアタッチメントが延び出す方向に対応する。また、ショベル100(上部旋回体3)の左方及び右方は、それぞれ、キャビン10内の操縦席に着座するオペレータから見た左方及び右方に対応する。
また以下では、下部走行体1、旋回機構2、上部旋回体3及びアタッチメントATを、ショベル100の車体BD(機械本体の一例)と呼ぶ場合がある。
【0010】
下部走行体1は、例えば、左右一対のクローラ1Cを含む。下部走行体1は、各クローラ1Cが走行油圧モータで油圧駆動されることにより、ショベル100を走行させる。
上部旋回体3は、旋回機構2が旋回油圧モータで油圧駆動されることにより、下部走行体1に対して旋回する。
【0011】
アタッチメントAT(作業要素の一例)は、ブーム4、アーム5、及びバケット6を含む。
【0012】
ブーム4は、上部旋回体3の前部中央に俯仰可能に取り付けられ、ブーム4の先端には、アーム5が上下回動可能に取り付けられ、アーム5の先端には、バケット6が上下回動可能に取り付けられる。
ブーム4、アーム5及びバケット6は、それぞれ、油圧アクチュエータとしてのブームシリンダ7、アームシリンダ8及びバケットシリンダ9により油圧駆動される。
【0013】
バケット6は、エンドアタッチメントの一例である。バケット6は、例えば掘削作業等に用いられる。また、アーム5の先端には、作業内容等に応じて、バケット6の代わりに他のエンドアタッチメントが取り付けられてもよい。他のエンドアタッチメントは、例えば、大型バケット、法面用バケット、浚渫用バケット等の他の種類のバケットであってよい。また、他のエンドアタッチメントは、攪拌機、ブレーカ、グラップル等のバケット以外の種類のエンドアタッチメントであってもよい。
【0014】
キャビン10は、オペレータが搭乗する操縦室であり、例えば上部旋回体3の前部左側に搭載される。ショベル100は、キャビン10に搭乗するオペレータの操作に応じて、アクチュエータを動作させ、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5及びバケット6等の被駆動要素を駆動する。
【0015】
なお、ショベル100は、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5及びバケット6等の被駆動要素の少なくとも一部が電気駆動される構成であってもよい。すなわち、ショベル100は、被駆動要素の一部が電動アクチュエータで駆動される、ハイブリッドショベルや電動ショベル等であってもよい。
【0016】
また、ショベル100は、キャビン10のオペレータにより操作可能に構成されるのに代えて(又はこれに加えて)、ショベル100の外部(例えば後述の管理装置200又は端末装置300)から遠隔操作(リモート操作)が可能に構成されてもよい。ショベル100が遠隔操作される場合、キャビン10の内部は、無人状態であってもよい。
以下、オペレータの操作には、キャビン10のオペレータによる操作装置45に対する操作、及び外部のオペレータによる遠隔操作の少なくとも一方が含まれるものとする。
【0017】
また、ショベル100は、オペレータの操作の内容に依らず、自動でアクチュエータを動作させてもよい。これにより、ショベル100は、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5及びバケット6等の被駆動要素の少なくとも一部を自動で動作させる機能、即ち、いわゆる「自動運転機能」或いは「マシンコントロール機能」を実現する。
【0018】
自動運転機能には、オペレータの操作装置45に対する操作や遠隔操作に応じて、操作対象の被駆動要素(アクチュエータ)以外の被駆動要素を自動で動作させる機能、即ち、いわゆる「半自動運転機能」或いは「操作支援型のマシンコントロール機能」が含まれてよい。また、自動運転機能には、オペレータの操作装置45に対する操作や遠隔操作がない前提で、複数の被駆動要素の少なくとも一部を自動で動作させる機能、即ち、いわゆる「完全自動運転機能」或いは「完全自動型のマシンコントロール機能」が含まれてもよい。ショベル100において、完全自動運転機能が有効な場合、キャビン10の内部は無人状態であってよい。また、半自動運転機能や完全自動運転機能等には、自動運転の対象の被駆動要素の動作内容が予め規定されるルールに従って自動的に決定される態様が含まれてよい。また、半自動運転機能や完全自動運転機能等には、ショベル100が自律的に各種の判断を行い、その判断結果に沿って、自律的に自動運転の対象の被駆動要素(油圧アクチュエータ)の動作内容が決定される態様(いわゆる「自律運転機能」)が含まれてもよい。
【0019】
図3は、ショベル100の概略の制御構成を示すブロック図である。
この図に示すように、ショベル100は、上記構成のほか、撮像装置40、距離センサ41、動作・姿勢状態センサ42、位置センサ43、方位センサ44、操作装置45、表示装置50、音声出力装置60、通信機器80及びコントローラ30を備える。
【0020】
撮像装置40は、ショベル100の周辺を撮影してその画像をコントローラ30に出力する。撮像装置40は、例えば、ショベル100の後方を撮影する後方カメラ、左方を撮影する左方カメラ、右方を撮影する右方カメラを含む。各撮像装置40は、光軸が斜め下方に向くように設置され、ショベル100近傍の地面からショベル100の遠方までを含む上下方向の撮像範囲(画角)を有する。
【0021】
距離センサ41は、ショベル100の周辺の物体までの距離を測定してその情報(二次元又は三次元の距離情報)を取得する測距手段であり、取得した情報をコントローラ30に出力する。距離センサ41は、例えば、撮像装置40に対応してショベル100の後方、左方、右方の3方の計測が可能なように設けられている。
【0022】
動作・姿勢状態センサ42は、ショベル100の動作状態や姿勢状態を検出するセンサであり、検出結果をコントローラ30に出力する。動作・姿勢状態センサ42は、ブーム角度センサと、アーム角度センサと、バケット角度センサと、三軸慣性センサ(IMU:Inertial Measurement Unit)と、旋回角度センサと、加速度センサとを含む。
これらのセンサは、ブーム等のシリンダのストロークセンサ、ロータリーエンコーダ等の回転情報を取得するセンサで構成されてもよく、IMUで取得される加速度(速度、位置も含んでもよい)により代替されてもよい。
アーム角度センサは、ブーム4を基準とするアーム5の回動角度(以下、「アーム角度」と称する)を検出する。
バケット角度センサは、アーム5を基準とするバケット6の回動角度(以下、「バケット角度」と称する)を検出する。
IMUは、ブーム4及びアーム5の各々に取り付けられ、所定の三軸に沿ったブーム4及びアーム5の加速度、及び、所定の三軸廻りのブーム4及びアーム5の角加速度を検出する。
旋回角度センサは、上部旋回体3の所定の角度方向を基準とする旋回角度を検出する。ただし、これに限られず、上部旋回体3に設けられたGPSやIMUセンサに基づいて旋回角度が検出されてもよい。
加速度センサは、上部旋回体3の旋回軸から離れた位置に取り付けられ、上部旋回体3の当該位置における加速度を検出する。これにより、加速度センサの検出結果に基づき、上部旋回体3が旋回しているのか、或いは、下部走行体1が走行しているのか等が判別されうる。
【0023】
位置センサ43は、ショベル100の位置(現在位置)の情報を取得するセンサであり、本実施形態ではGPS(Global Positioning System)受信機である。位置センサ43は、ショベル100の位置の情報を含むGPS信号をGPS衛星から受信し、取得したショベル100の位置情報をコントローラ30に出力する。なお、位置センサ43は、ショベル100の位置の情報を取得できるものであればGPS受信機でなくともよく、例えばGPS以外の衛星測位システムを利用するものであってもよい。
【0024】
方位センサ44は、ショベル100が向いている方位(方向)の情報を取得するセンサであり、例えば地磁気センサである。方位センサ44は、ショベル100の方位の情報を取得して、コントローラ30に出力する。なお、方位センサ44は、ショベル100の方位の情報を取得できればよく、そのセンサ種別等は特に限定されない。例えばGPS受信機を2つ設け、その位置情報の差異から方位情報を取得してもよい。
【0025】
操作装置45は、キャビン10の操縦席付近に設けられ、オペレータが各被駆動要素(下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5及びバケット6等)の操作を行う操作手段である。換言すれば、操作装置45は、各被駆動要素を駆動するそれぞれの油圧アクチュエータの操作を行う操作手段である。操作装置45は、例えばレバーやペダル、各種ボタン等を含み、これらの操作内容に応じた操作信号をコントローラ30に出力する。
また、操作装置45は、撮像装置40、距離センサ41、動作・姿勢状態センサ42、位置センサ43、方位センサ44、表示装置50、音声出力装置60、通信機器80等の操作を行う操作手段でもあり、これら各部に対する操作指令をコントローラ30に出力する。
【0026】
表示装置50は、キャビン10内の操縦席の周辺に設けられ、コントローラ30による制御の下、オペレータに通知する各種画像情報を表示する。表示装置50は、例えば液晶ディスプレイや有機EL(Electroluminescence)ディスプレイであり、操作装置45の少なくとも一部を兼ねるタッチパネル式であってもよい。
【0027】
音声出力装置60は、キャビン10内の操縦席の周辺に設けられ、コントローラ30による制御の下、オペレータに通知する各種音声情報を出力する。音声出力装置60は、例えば、スピーカやブザー等である。
【0028】
通信機器80は、所定の無線通信規格に基づき、所定の通信ネットワークNWを通じて遠隔の外部機器や他のショベル100等と各種情報を送受信する通信デバイスである。通信ネットワークNWには、例えば、基地局を末端とする移動体通信網、上空の通信衛星を利用する衛星通信網、WiFiやブルートゥース(登録商標)等のプロトコルに準拠する近距離通信網、インターネット通信網等を含んでもよい。
【0029】
コントローラ30は、ショベル100各部の動作を制御してショベル100の駆動制御を行う制御装置である。コントローラ30は、キャビン10内に搭載される。コントローラ30は、その機能が任意のハードウェア、ソフトウェア、或いはその組み合わせにより実現されてよく、例えば、CPU,RAM,ROM,I/O等を含むマイクロコンピュータを中心に構成される。コントローラ30は、これらの他にも、例えばFPGAやASICなどを含んで構成されてもよい。
【0030】
また、コントローラ30は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の内部メモリに規定される記憶領域としての記憶部35を含む。
記憶部35は、ショベル100の各部を動作させるための各種プログラムや各種データ等を格納するほか、コントローラ30の作業領域としても機能する。本実施形態の記憶部35は、後述の動作制御処理を実行するプログラムを予め記憶している。
【0031】
また、ショベル100は、所定の通信ネットワークNWを通じて、管理装置200及び端末装置300と相互に通信を行うことができる。
【0032】
管理装置200は、ショベル100及び端末装置300を所持するユーザ等と地理的に離れた位置に配置される。管理装置200は、例えば、ショベル100が作業する作業現場外に設けられる管理センタ等に設置され、一又は複数のサーバコンピュータ等を中心に構成されるサーバ装置である。この場合、サーバ装置は、システムを運用する事業者或いは当該事業者に関連する関連事業者が運営する自社サーバであってもよいし、レンタルサーバであってもよい。また、このサーバ装置は、いわゆるクラウドサーバであってもよい。また、管理装置200は、ショベル100の作業現場内の管理事務所等に配置されるサーバ装置(いわゆるエッジサーバ)であってもよいし、定置型或いは携帯型の汎用のコンピュータ端末であってもよい。
管理装置200は、上述の如く、通信ネットワークNWを通じて、ショベル100及び端末装置300のそれぞれと相互に通信を行うことができる。これにより、管理装置200は、ショベル100からアップロードされる各種情報を受信し、記憶(蓄積)しておくことができる。また、管理装置200は、端末装置300からの要求に応じて、端末装置300に各種情報を送信することができる。また、管理装置200は、複数のショベル100に関する情報をショベル100ごとに識別可能なように、各ショベル100のID情報に対応付けるなどして管理(記憶)している。なお、管理装置200は、ショベル100を遠隔操作できてもよい。
【0033】
端末装置300(情報処理装置の一例)は、ユーザが利用するユーザ端末である。ユーザには、例えば、作業現場の監督者、管理者、ショベル100のオペレータ、ショベル100の管理者、ショベル100のサービスマン、ショベル100の開発者等が含まれてよい。端末装置300は、ショベル100を遠隔操作できてもよい。端末装置300は、例えば、ユーザが所持するラップトップ型のコンピュータ端末、タブレット端末、スマートフォン等の汎用の携帯端末である。また、端末装置300は、デスクトップ型のコンピュータ等の定置型の汎用端末であってもよい。また、端末装置300は、情報の提供を受けるための専用の端末(携帯端末或いは定置端末)であってもよい。
端末装置300は、通信ネットワークNWを通じて、管理装置200と相互に通信を行うことができる。これにより、端末装置300は、管理装置200から送信される情報を受信し、自身に搭載される表示装置を通じて、ユーザに情報を提供することができる。また、端末装置300は、通信ネットワークNWを通じて、ショベル100と相互に通信可能に構成されてもよい。
【0034】
[動作制御処理]
続いて、ショベル100の動作を制御する動作制御処理について説明する。
図4は、動作制御処理の流れを示すフローチャートである。
図5及び
図6は、動作制御処理における表示装置50の表示例を示す図である。
【0035】
動作制御処理は、オペレータが設定した条件に基づいてショベル100の動作を制御する処理である。動作制御処理は、例えばオペレータの操作に基づいて、コントローラ30が記憶部35に格納された所定のプログラムを展開することにより実行される。
ここでは、ショベル100が行う動作として、完全自動型のマシンコントロール機能による所定の動作(例えば掘削動作)が自律的に実行されるものとする。
【0036】
マシンコントロール機能は、従来より公知の技術であるため(例えば、特開2022-154722号公報等参照)、詳細な説明は省略し、以下に簡単に説明する。
コントローラ30は、例えば、オペレータが手動で地面の掘削操作や均し操作等を行っている場合に、目標施工面と、アタッチメントATの先端部、具体的には、バケット6の作業部位に設定される、制御基準となる位置(以下、単に「制御基準」)とが一致するように、ブーム4、アーム5及びバケット6の少なくとも一つを自動的に動作させる。制御基準は、例えば、バケット6の作業部位としての爪先を構成する平面或いは曲面、当該平面或いは曲面上に規定される線分、当該平面或いは曲面上に規定される点等を含みうる。また、制御基準には、例えば、バケット6の作業部位としての背面を構成する平面或いは曲面、当該平面或いは曲面上に規定される線分、当該平面或いは曲面上に規定される点等を含みうる。
具体的には、オペレータが所定のアーム操作を行うと、コントローラ30は、オペレータによるアーム5の操作に応じて、目標施工面とバケット6の制御基準とが一致するように、ブーム4、アーム5及びバケット6を自動的に動作させる。これにより、オペレータは、簡便な操作で、目標施工面に沿った掘削作業や均し作業等をショベル100に実行させることができる。
【0037】
バケット6の作業部位は、例えば、オペレータ等による設定入力に応じて設定されてもよいし、ショベル100の作業内容に応じて自動的に設定されてもよい。具体的には、バケット6の作業部位は、ショベル100の作業内容が掘削作業等である場合、バケット6の爪先に設定され、ショベル100の作業内容が均し作業や転圧作業等である場合、バケット6の背面に設定されてよい。この場合、ショベル100の作業内容は、撮像装置40の撮像画像等に基づき自動的に判定されてもよいし、オペレータ等が選択或いは入力することにより設定されてもよい。
【0038】
図4に示すように、動作制御処理が実行されると、まずコントローラ30は、オペレータの操作に基づいて、作業効率とエネルギ消費効率(本実施形態では燃費)と金属疲労ダメージとの間の優先度(優先度合い)を設定する(ステップS1)。
作業効率は、例えば、ショベル100が所定の単位作業を完了させるのに要する作業時間に相当する。エネルギ消費効率は、例えば、エンジン11の燃料消費率(燃費)に相当する。金属疲労ダメージ(以下、単に「疲労ダメージ」という。)は、ショベル100の構成要素が力学的応力を継続的に(又は繰り返し)受けた場合に蓄積する、強度の低下程度である。なお、金属だけでなく、樹脂やセラミクス等の疲労ダメージを含めてもよい。
具体的に、コントローラ30は、例えば
図5に示すように、3つのパラメータ(作業効率、エネルギ消費効率(燃費)、疲労ダメージ)の間の優先度を設定する設定画面51を表示装置50に表示させる。そして、コントローラ30は、設定画面51に対するオペレータの設定操作に基づいて、3つのパラメータの間の優先度を設定する。
図5の例では、設定画面51に、オペレータの操作を受け付ける3つのスライダー52が表示される。3つのスライダー52は、疲労ダメージと燃費との間の優先度を設定する第1スライダー52a、作業効率と燃費との間の優先度を設定する第2スライダー52b、疲労ダメージと作業効率との間の優先度を設定する第3スライダー52cである。
ただし、3つのパラメータは互いに独立ではなく、このうち1つ又は2つを設定すると残りが決定される。例えば、作業効率と燃費の間ではトレードオフの関係が成立する。また、構造物の疲労強度は、変動荷重が小さいほど疲労ダメージが溜まりにくい特性を持っている。例えば、10tの土砂を10回で掘削するよりも20回で掘削した方が、合計の疲労ダメージは小さくできる。しかし、作業効率や燃費は低下すると考えられる。なお、3つのパラメータ間の各優先度は、限界値(上限又は下限)を設定できるようにしてもよい。
【0039】
次に、コントローラ30は、ステップS1で設定された優先度に基づいて、車体BDの動作を制御する(ステップS2)。
ここで、車体BDの動作とは、掘削動作、走行動作、衝撃動作(G動作)を含む。このうち「掘削動作」とは、「掘削、持ち上げ、旋回、排土」の一連の動作をいう。「衝撃動作」とは、少し高いところから落ちる等、車体BDに衝撃が作用する動作(掘削動作及び走行動作を除く)をいう。
このステップでは、コントローラ30は、3つのパラメータの間の優先度に応じて、ショベル100の動作内容を決定する。そして、コントローラ30は、その動作内容を実現するように、マシンコントロール機能によってショベル100の動作を制御する。例えば、コントローラ30は、ショベル100の掘削時において、3つのパラメータの間の相対的な優先度に応じて、バケット6の作業部位の目標軌道及びバケット6の基準面(例えば、地面)に対する姿勢角度等を設定する。そして、コントローラ30は、設定したバケット6の目標軌道及びバケット6の地面に対する姿勢角度等に沿って、アタッチメントATの動作等を制御する。
【0040】
このとき、疲労ダメージは、動作によって蓄積する疲労部位が異なる。例えば、掘削動作の場合の主な疲労部位はアタッチメントATであり、走行動作及び衝撃動作の場合の主な疲労部位は下部走行体1である。コントローラ30は、動作に対応付けられた、最も疲労が蓄積する疲労部位について、当該動作による疲労ダメージを計算して求める。ただし、最も疲労が蓄積する疲労部位以外の部位の疲労ダメージを加味してもよい。具体的な疲労ダメージの計算手法は、従来より公知の手法を用いることができる。
【0041】
ステップS2における動作制御の実行時には、コントローラ30は、3つのパラメータ(作業効率、燃費、疲労ダメージ)に関する現在の作業状態をリアルタイム表示する(ステップS3)。
具体的に、コントローラ30は、例えば
図6に示すように、3つのパラメータに関するショベル100の動作点56(上述の優先度に対応する点)を表示するリアルタイム表示画面55を、表示装置50に表示させる。
図6の例では、燃費と作業効率は良好だが疲労ダメージが大きい状態で作業が行われている。オペレータは、リアルタイム表示画面55を確認し、必要に応じて3つのパラメータの間の優先度を調整する。
【0042】
次に、コントローラ30は、動作制御処理を終了させるか否かを判定し(ステップS4)、終了させないと判定した場合には(ステップS4;No)、当該ステップS4を繰り返す。
そして、例えば掘削作業の完了等により、動作制御処理を終了させると判定した場合には(ステップS4;Yes)、コントローラ30は、動作制御処理を終了させる。
【0043】
[本実施形態の技術的効果]
以上のように、本実施形態によれば、作業効率とエネルギ消費効率と金属疲労ダメージとの間の優先度合いに基づいて、アタッチメントATを有する車体BDの動作が制御される。
これにより、作業効率とエネルギ消費効率に加え、金属疲労ダメージを考慮して、ショベル100を動作制御することができる。したがって、ショベル100を好適に動作制御することができる。
【0044】
また、本実施形態によれば、車体BDの動作が制御される場合に、現在の動作状態における作業効率と燃費と疲労ダメージとの間の優先度合い(動作点56)が、表示装置50に表示される。
これにより、オペレータは、3つのパラメータ(作業効率、燃費、疲労ダメージ)に関する現在の作業状態を把握でき、必要に応じてこれを調整することができる。
【0045】
[その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態やその変形例に限られない。
例えば、上記実施形態では、3つのパラメータ間の優先度に基づいて、マシンコントロール機能による所定の動作が制御されることとした。しかし、制御対象となるショベル100の動作は、マシンコントロール機能等による完全自動運転機能に限定されず、いわゆる半自動運転機能や、オペレータによる手動運転を(設定された優先度を実現するように)補助する動作制御を含む。
【0046】
また、上記実施形態では、3つのパラメータ間の優先度が、オペレータの操作(優先度の値に影響する操作)に基づいて設定されることとした。しかし、当該優先度は、例えばショベル100の状態等に基づいて、コントローラ30が自動的に設定することとしてもよい。
あるいは、ショベル100に搭乗したオペレータでなく、端末装置300を操作するユーザが、3つのパラメータの間の優先度を設定することとしてもよい。
【0047】
また、本発明に係る作業機械は、ショベルに限定されず、作業要素を有する作業機械全般に好適に適用可能である。
その他、実施の形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0048】
100 ショベル(作業機械)
1 下部走行体
2 旋回機構
3 上部旋回体
4 ブーム
5 アーム
6 バケット
30 コントローラ(制御部)
35 記憶部
50 表示装置(表示手段)
51 設定画面
52 スライダー
52a 第1スライダー
52b 第2スライダー
52c 第3スライダー
55 リアルタイム表示画面
56 動作点
200 管理装置
300 端末装置(情報処理装置)
AT アタッチメント(作業要素)
BD 車体(機械本体)