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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068690
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】培養システム
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20240514BHJP
   C12N 1/12 20060101ALN20240514BHJP
【FI】
C12M1/00 E
C12N1/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179217
(22)【出願日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】木下 翔平
(72)【発明者】
【氏名】塩原 のぞみ
(72)【発明者】
【氏名】町田 賢司
(72)【発明者】
【氏名】高橋 研介
(72)【発明者】
【氏名】後藤 稔
(72)【発明者】
【氏名】土肥 瑞穂
(72)【発明者】
【氏名】塩崎 諭
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029BB04
4B065AA83X
(57)【要約】      (修正有)
【課題】培養槽内の培養液が吸引装置で吸引されるとき、培養槽の破れを防止できるとともに、回収時に培養液及び微細藻類が培養槽内に残ることを極力少なくすることができる培養システムを提供する。
【解決手段】培養システム(10)を構成する培養槽(20)は、可撓性を有する材料から形成される。培養槽から培養液(L)を回収するとき、培養槽には回収管(50)が収容される。回収管は、内部空間(68)を有する筒状体である。回収管は、培養槽の底部(30)に沿って延在する第1回収部(62)を有する。第1回収部の端部には、第1リブ(76)が設けられる。第1リブは、第1突出部及び第2突出部を有する。第1突出部及び第2突出部は、第1回収部の外周面の互いに反対側から、培養槽の深さ方向(X)と平行に突出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細藻類を培養するための培養槽を含む培養装置と、前記培養槽から前記微細藻類を回収する回収装置とを備える培養システムであって、
前記培養槽は、可撓性を有する材料から形成され、且つ該培養槽の深さ方向において該培養槽の最低位置に位置する底部と、前記底部よりも高位置に位置する開口部と、を有し、
前記回収装置は、前記開口部を介して前記培養槽内に挿抜可能に収容される回収管と、吸引装置と、を有し、
前記回収管は、内部空間を有する筒状体であり、
前記回収管は、前記培養槽内の培養液に浸漬されたときに前記培養槽の前記底部に沿って延在する第1回収部と、前記第1回収部の外周面に形成されて前記内部空間に連なる複数個の吸引孔と、前記第1回収部の端部に設けられた第1リブと、を有し、
前記第1リブは、前記第1回収部の外周面において、前記深さ方向と平行に突出する、培養システム。
【請求項2】
請求項1記載の培養システムにおいて、前記第1リブは、前記第1回収部の外周面の互いに反対側から前記深さ方向と平行に突出した第1突出部及び第2突出部を有する、培養システム。
【請求項3】
請求項2記載の培養システムにおいて、前記回収管は、前記第1突出部と前記第2突出部との間に形成され且つ前記培養槽の側部に向かい合う1個以上の第1側孔を有する、培養システム。
【請求項4】
請求項2記載の培養システムにおいて、前記回収管は、前記第1突出部と前記第2突出部との間に形成され且つ前記培養槽の側部に向かい合う複数個の第1側孔を有し、前記複数個の第1側孔は、前記回収管の周方向に沿って並べられる、培養システム。
【請求項5】
請求項1又は2記載の培養システムにおいて、前記回収管は、前記第1回収部の末端部において開口した末端孔を有する、培養システム。
【請求項6】
請求項5記載の培養システムにおいて、前記吸引孔の開口寸法と、前記末端孔の開口寸法とが略等しい、培養システム。
【請求項7】
請求項1又は2記載の培養システムにおいて、前記回収管は、前記培養槽の側部において前記深さ方向に延在する第2回収部を有し、
前記回収装置は、可撓性を有する材料からなり且つ前記第2回収部と前記吸引装置とを接続する可撓管を有し、
前記第2回収部は、前記可撓管と前記第1回収部との間に介在する基端管部と、前記基端管部における前記可撓管近傍の端部に設けられた第2リブと、を有し、
前記第2リブは、前記基端管部の外周面において、前記第1回収部の延在方向に平行に突出する、培養システム。
【請求項8】
請求項7記載の培養システムにおいて、前記第2リブは、前記基端管部の外周面の互いに反対側から前記第1回収部の延在方向に平行に突出した第3突出部及び第4突出部を有する、培養システム。
【請求項9】
請求項8記載の培養システムにおいて、前記回収管は、前記第3突出部と前記第4突出部との間に形成され且つ前記培養槽の側部に向かい合う1個以上の第2側孔を有する、培養システム。
【請求項10】
請求項8記載の培養システムにおいて、前記回収管は、前記第3突出部と前記第4突出部との間に形成され且つ前記培養槽の側部に向かい合う複数個の第2側孔を有し、前記複数個の第2側孔は、前記回収管の周方向に沿って並べられる、培養システム。
【請求項11】
請求項8記載の培養システムにおいて、前記回収管は、前記第1回収部と前記第2回収部との間に介在して所定角度で折り曲がった屈曲部と、前記屈曲部に設けられて前記深さ方向に沿った下方で前記回収管を支持する支持リブと、を有する、培養システム。
【請求項12】
請求項1又は2記載の培養システムにおいて、前記吸引孔は、重力方向下方以外の方向を向く、培養システム。
【請求項13】
請求項1又は2記載の培養システムにおいて、前記回収管を介して前記培養槽内に前記培養液を供給可能である、培養システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細藻類を培養し且つ培養された微細藻類を回収する培養システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、気候変動の緩和又は影響軽減を目的とした取り組みが継続され、この実現に向けて二酸化炭素の排出量低減に関する研究開発が行われている。この観点から、微細藻類が着目されている。微細藻類は、光合成によって二酸化炭素を消費するからである。従って、微細藻類を培養する培養システムは、気候変動の緩和又は影響軽減に寄与するシステムとして期待されている。
【0003】
培養装置の一例として、特許文献1に開示された培養装置が挙げられる。この培養装置は、可撓性を有する材料からなる収容部と、培養液供給口と、回収口とを有する。ここで、可撓性を有する材料は、例えば、特許文献2に記載されるビニル袋である。収容部に収容される微細藻類及び培養液は、培養液供給口から供給される。培養後、微細藻類及び培養液は、回収口から回収される。
【0004】
培養液供給口及び回収口はいずれも、実質的に管部材である。回収管には、吸引装置が接続される。吸引装置が回収管を介して収容部の内部を吸引することで、微細藻類及び培養液が収容部から吸い出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-132852号公報
【特許文献2】実用新案登録第3213454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
培養槽が可撓性を有する材料から形成されている場合、培養槽から微細藻類及び培養液を吸引することに伴い、吸引の最終段階では培養槽が回収管の端部に接触する。このとき、培養槽が回収管の端部によって破れる懸念がある。また、培養槽の回収管の端部への密着が弱いと、培養槽内に培養液及び微細藻類が残りやすくなる。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、微細藻類を培養するための培養槽を含む培養装置と、前記培養槽から前記微細藻類を回収する回収装置とを備える培養システムであって、前記培養槽は、可撓性を有する材料から形成され、且つ該培養槽の深さ方向において該培養槽の最低位置に位置する底部と、前記底部よりも高位置に位置する開口部と、を有し、前記回収装置は、前記開口部を介して前記培養槽内に挿抜可能に収容される回収管と、吸引装置と、を有し、前記回収管は、内部空間を有する筒状体であり、前記回収管は、前記培養槽内の培養液に浸漬されたときに前記培養槽の前記底部に沿って延在する第1回収部と、前記第1回収部の外周面に形成されて前記内部空間に連なる複数個の吸引孔と、前記第1回収部の端部に設けられた第1リブと、を有し、前記第1リブは、前記第1回収部の外周面において、前記深さ方向と平行に突出する、培養システムが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、第1回収管の端部に第1リブが設けられているため、培養槽内の培養液が吸引装置に吸引されるとき、第1回収管の側部の外周面に培養槽が密着する。これにより、第1回収管の端部において培養槽の破れを防止できるとともに、回収時に培養液及び微細藻類が培養槽内に残ることを極力少なくすることができる。
【0010】
以上のように、本発明によれば、培養槽が破れることを回避しつつ、培養液及び微細藻類の略全量を効率よく回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第1実施形態に係る培養システムの概略システム図である。
図2図2は、培養装置を構成する培養槽の概略縦断面図である。
図3図3は、回収装置を構成する回収管の概略正面図である。
図4図4は、回収管の概略平面図である。
図5図5は、回収管の末端部近傍の拡大断面図である。
図6図6Aは、吸引孔が重力方向下方に形成された回収管の拡大断面図である。図6Bは、培養槽の底部が吸引孔に引き込まれた状態を示す拡大断面図である。
図7図7は、培養液が回収されて培養槽が収縮した状態を示す要部拡大断面図である。
図8図8は、第2実施形態に係る培養システムにおける培養槽の概略縦断面図である。
図9図9は、回収管の末端部近傍の拡大断面図である。
図10図10Aは、吸引孔が重力方向下方に形成された回収管の拡大断面図である。図10Bは、培養槽の底部が吸引孔に引き込まれた状態を示す拡大断面図である。
図11図11は、培養液が回収されて培養槽が収縮した状態を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、第1実施形態に係る培養システム10の概略システム図である。培養システム10は、培養装置12と、回収装置14とを備える。
【0013】
先ず、図2を参照して培養装置12につき説明する。培養装置12は、培養槽20と、貯水槽22とを有する。培養槽20及び貯水槽22は、可撓性を有する材料からなる。可撓性を有する材料の典型例としては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が挙げられる。培養槽20及び貯水槽22は、例えば、袋形状物である。培養槽20及び貯水槽22は、所定の設置箇所において、保持フレーム24に保持される。
【0014】
袋形状の培養槽20は、底部30と、4個の側部32a~32dとを有する。底部30は、培養槽20の全部位中で、重力方向Gにおける最低位置(最下部)に位置する。4個の側部32a~32dは、底部30に対して略垂直に折れ曲がり、鉛直方向上方に向かって延びる。培養槽20の最上部は、開口部34である。このように、開口部34は、底部30よりも高位置に位置する。以下、4個の側部32a~32dにおける高低に沿った延在方向を、培養槽20の深さ方向Xと定義する。第1実施形態では、培養槽20の深さ方向Xは重力方向Gに略一致する。従って、第1実施形態では、重力方向Gに対する培養槽20の深さ方向Xの傾斜角度は略ゼロである。すなわち、培養槽20は直立姿勢である。
【0015】
側部32a、32cは、培養槽20の幅方向Yに沿って延在する。なお、幅方向Yは、水平方向に沿った方向である。側部32b、32dは、培養槽20の幅方向Yにおける端部に位置する。
【0016】
培養槽20の内部は、微細藻類及び培養液Lを収容するスペースである。微細藻類の具体例としては、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許生物寄託センターに寄託した「HondaDREAMO株」が挙げられる。製品評価技術基盤機構特許生物寄託センターの所在地は、千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室である。HondaDREAMO株の受託日は2016年4月22日であり、受託番号はFERM BP-22306である。この場合、培養液Lは、典型的には水である。
【0017】
培養装置12は、ガス供給装置38を有する。図1に示す態様では、ガス供給装置38は、ガス供給部40と、4個のガス供給管42a~42dと、4個のガイド部44a~44dとを有する。
【0018】
ガス供給管42a~42d及びガイド部44a~44dは、培養槽20の内部に挿抜可能に挿入される。なお、ガス供給管42a~42d及びガイド部44a~44dが培養槽20に対して挿抜されるとき、ガス供給管42a~42d及びガイド部44a~44dは、開口部34に通される。
【0019】
ガイド部44aは、培養槽20の側部32bに近接する。ガイド部44bは、44aに対し、幅方向Yに沿って所定の間隔を置いて配置されている。ガイド部44cは、ガイド部44bに対し、幅方向Yに沿って所定の間隔を置いて配置されている。ガイド部44dは、ガイド部44cに対し、幅方向Yに沿って所定の間隔を置いて配置されている。ガイド部44aとガイド部44bとの離間間隔、ガイド部44bとガイド部44cとの離間間隔、ガイド部44cとガイド部44dとの離間間隔は、互いに略等しい。なお、この態様では4個のガイド部44a~44dを設けているが、ガイド部の個数は4個に限定されず、培養槽20の容積に応じて適切に決定される。
【0020】
ガイド部44a~44dの各々は、図示しないフック部を有する。フック部が保持フレーム24に保持されることにより、ガイド部44a~44dが培養槽20内の所定箇所に位置決めされる。
【0021】
培養槽20の側部32aからガイド部44a~44dを見たとき、ガイド部44a~44dは、略逆L字形状の中空体である。ガイド部44a~44dの各々の下端と、培養槽20の側部32dを向く側部とは、開口している。この開口により、ガイド部44a~44dの各々に取込口46が形成されている。すなわち、ガイド部44a~44dの取込口46は全て、同一方向を向いている。
【0022】
ガイド部44a~44dには、ガス供給管42a~42dがそれぞれ支持される。ガス供給管42a~42dの一端は、図1に示されるガス供給部40にそれぞれ接続されている。ガス供給管42a~42dの他端は、ガイド部44a~44dの取込口46の下開口に回り込んでいる。従って、ガス供給部40から供給されてガス供給管42a~42dから排出されたガスは、ガイド部44a~44dの取込口46の下開口を介してガイド部44a~44d内に流入する。
【0023】
貯水槽22の内部は、貯留水Wを貯留するスペースである。貯留水Wは、培養槽20内の培養液Lを冷却する。
【0024】
回収装置14は、回収管50と、吸引装置と、可撓管84とを有する。本態様において、吸引装置は双方向ポンプ52である。双方向ポンプ52は、第1送液管54及び第2送液管56を介して回収タンク58に接続される。双方向ポンプ52は、給排管60を介して回収管50に接続される。
【0025】
双方向ポンプ52は、培養槽20内の培養液Lを、回収管50、可撓管84、給排管60及び第1送液管54を介して回収タンク58に送り出す。また、双方向ポンプ52は、回収タンク58内の培養液Lを、第2送液管56、給排管60、可撓管84及び回収管50を介して培養槽20に戻す。このことから理解されるように、双方向ポンプ52は、培養槽20内の培養液Lを吸い込む吸引装置と、培養液Lを培養槽20に送る供給装置とを兼ねる。また、回収管50は、培養液Lを培養槽20から回収するための管であり、且つ培養液Lを培養槽20に供給するための管である。
【0026】
回収管50につき説明する。図1及び図3に示すように、回収管50は、第1回収部62と、第2回収部64と、屈曲部66とを有する。第1回収部62、第2回収部64及び屈曲部66は、内部空間68を有する中空体である。従って、回収管50は、全体にわたって内部空間68が連なる円筒形状体(筒状体)である。
【0027】
図1に示すように、第1回収部62は、培養槽20の底部30の近傍において、培養槽20の幅方向Yに沿って延在する。第2回収部64は、培養槽20の側部32aの近傍において、培養槽20の深さ方向X(重力方向G)に沿って延在する。屈曲部66は、第1回収部62と第2回収部64との間に介在する部位である。回収管50は、屈曲部66に基づいて略90°折れ曲がった略L字形状をなす。
【0028】
第1回収部62は、培養槽20の底部30の近傍で、側部32dの近傍から側部32bに向かって直線状に延びる。第1回収部62において、側部32bを向く端部(末端部70)は、好ましくはガイド部44aとガイド部44bとの間に位置する。
【0029】
図4は、培養槽20の開口部34から回収管50を見たときの回収管50の概略平面図である。図4に示すように、円筒形状をなす第1回収部62において、鉛直方向上方を向く箇所には、複数個の吸引孔72が形成されている。吸引孔72は、第1回収部62の内周面から外周面にわたって延在する。すなわち、吸引孔72は貫通孔である。吸引孔72を介して、第1回収部62の内部空間68と、培養槽20の内部とが連通する。
【0030】
第1回収部62において、培養槽20の側部32bを向く端部を末端部70と呼ぶ。図3に示すように、末端部70は開口端である。すなわち、回収管50を構成する第1回収部62の末端部70には、末端孔74が形成される。末端孔74を介して、第1回収部62の内部空間68と、培養槽20の内部とが連通する。
【0031】
図5は、培養槽20の側部32bから側部32dを見たときの末端部70近傍の拡大断面図である。図3及び図5には、第1回収部62の内径(末端孔74の直径)D1を示している。図4には、吸引孔72の直径D2を示している。本態様において、末端孔74の開口寸法である直径D1と、吸引孔72の開口寸法である直径D2とは互いに略等しい。ただし、末端孔74の直径D1と吸引孔72の直径D2とは、互いに相違してもよい。
【0032】
第1回収部62の末端部70には、第1リブ76が設けられる。第1リブ76は、第1突出部78a及び第2突出部78bを有する。第1突出部78aは、培養槽20の深さ方向Xの一方向である鉛直方向下方に向かって突出する。第2突出部78bは、培養槽20の深さ方向Xの別の一方向である鉛直方向上方に向かって突出する。第1突出部78a及び第2突出部78bは、第1回収部62の中心C1を通り且つ深さ方向Xと平行な直線L1上に配置される。直線L1は、第1回収部62の延在方向に延びる中心線である。このように、第1突出部78a及び第2突出部78bは、第1回収部62の外周面において、互いに反対側から、培養槽20の深さ方向Xと平行に突出している。第1突出部78aにおける下端面は、培養槽20の側部32bの近傍において、該培養槽20の底部30の内面に当接している。第1リブ76(第1突出部78a及び第2突出部78b)の一面は側部32aの内面を向き、第1リブ76の残る一面は側部32cの内面を向く。
【0033】
第1突出部78a及び第2突出部78bの双方を設けることは必須ではない。すなわち、第1突出部78a又は第2突出部78bのいずれか一方を設けなくても差し支えない。例えば、第1回収部62が培養槽20の底部30に当接する態様においては、第2突出部78bのみを設ければ十分である。
【0034】
末端部70の外周面において、第1突出部78aと第2突出部78bとの間には、1個以上の第1側孔80が形成されている。図示例では、回収管50は、培養槽20の側部32aの内面に対面する2個の第1側孔80と、培養槽20の側部32cの内面に対面する2個の第1側孔80とを有している。しかしながら、第1側孔80の個数は4個に特に限定されない。
【0035】
第1側孔80は、第1回収部62の末端部70において、第1回収部62の周方向に沿って並べられる(図3参照)。第1側孔80は、第1回収部62の末端部70の内周面から外周面にわたって延在する。すなわち、第1側孔80は貫通孔である(図5参照)。第1側孔80を介して、第1回収部62の内部空間68と、培養槽20の内部とが連通する。
【0036】
図3に示すように、屈曲部66には支持リブ82が設けられる。支持リブ82は、第1リブ76を構成する第1突出部78aと同様に、培養槽20の深さ方向Xの一方向である鉛直方向下方に突出する。すなわち、支持リブ82の突出方向は、深さ方向Xと平行方向である。支持リブ82における下端面は、培養槽20の側部32dの近傍において、底部30の内面に当接している。第1突出部78aにおける下端面と、支持リブ82における下端面とが培養槽20の底部30の内面に当接することで、回収管50の姿勢が安定する。また、培養槽20の底部30に張力が付与される。なお、第1突出部78aを設けない場合、支持リブ82を設ける必要は特にない。
【0037】
支持リブ82の厚みは、第1リブ76の厚みに略等しい。支持リブ82の一面は側部32aの内面に対面し、支持リブ82の残る一面は側部32cの内面に対面する。
【0038】
第2回収部64は、基端管部86を有する。基端管部86は、第2回収部64において、可撓管84に近接する端部である。従って、基端管部86は、可撓管84と第1回収部62との間に介在する。
【0039】
基端管部86は、培養槽20の幅方向Yと平行に突出した第2リブ90を有する。具体的に、第2リブ90は、基端管部86の外周面から側部32dに向かって突出した第3突出部92aと、基端管部86の外周面から側部32bに向かって突出した第4突出部92bとを有する。幅方向Yが第1回収部62の延在方向であるので、第3突出部92a及び第4突出部92bの突出方向は、第1回収部62の延在方向に平行な方向である。図4に示すように、第3突出部92a及び第4突出部92bは、基端管部86の中心C2を通り且つ第1回収部62の延在方向と平行な直線L2上に配置される。直線L2は、基端管部86の延在方向に延びる中心線である。このように、第3突出部92a及び第4突出部92bは、基端管部86の外周面において、互いに反対側から第1回収部62の延在方向に平行に突出している。
【0040】
図3に示すように、幅方向Yが深さ方向X(重力方向G)に対して直交する方向であるので、第3突出部92a及び第4突出部92bの突出方向は、培養槽20の深さ方向Xに対して直交する方向である。なお、第2リブ90の厚みは、第1リブ76の厚み及び支持リブ82の厚みに略等しい。
【0041】
第2リブ90(第3突出部92a及び第4突出部92b)の一面は側部32aの内面に対面し、第1リブ76の残る一面は側部32cの内面に対面する。従って、第2リブ90が対面する培養槽20の内面は、第1リブ76(第1突出部78a及び第2突出部78b)が対面する培養槽20の内面と同じであり、且つ支持リブ82が対面する培養槽20の内面と同じである。
【0042】
基端管部86の外周面において、第3突出部92aと第4突出部92bとの間には、1個以上の第2側孔94が形成されている。図示例では、回収管50は、培養槽20の側部32aの内面に向かい合う2個の第2側孔94と、培養槽20の側部32cの内面に向かい合う2個の第2側孔94とを有している。ただし、図3に示す方向からは、培養槽20の側部32cの内面に向かい合う2個の第2側孔94は視認されない。また、第2側孔94の個数は4個に特に限定されない。第2側孔94は、第1側孔80よりも高位置に位置する。
【0043】
第2側孔94は、基端管部86において、該基端管部86の周方向に沿って並べられる。第2側孔94は、基端管部86の内周面から外周面にわたって延在する。すなわち、第2側孔94は貫通孔である。第2側孔94を介して、基端管部86の内部空間68と、培養槽20の内部とが連通する。
【0044】
基端管部86に接続される可撓管84(図1参照)は、培養槽20及び貯水槽22と同様に、LLDPE等の可撓性を有する材料からなる。可撓管84には、給排管60を介して双方向ポンプ52(吸引装置)が接続される。
【0045】
回収管50及び可撓管84は、培養槽20の内部に挿抜可能に挿入される。回収管50及び可撓管84が培養槽20に対して挿抜されるとき、回収管50及び可撓管84は開口部34に通される。
【0046】
なお、培養槽20内で微細藻類を培養する最中、回収管50及び可撓管84を培養液L中に浸漬する必要は特にない。例えば、回収管50及び可撓管84を培養槽20から抜き出した状態で、微細藻類を培養槽20内で培養してもよい。ただし、図1に示すように、回収管50及び可撓管84を培養液Lに浸漬した状態で微細藻類を培養することも可能である。
【0047】
第1実施形態に係る培養システム10は、基本的には以上のように構成される。次に、培養システム10の作用効果について説明する。
【0048】
微細藻類の培養を行う場合、培養槽20の内部に、ガイド部44a~44d、ガス供給管42a~42d、培養液L及び微細藻類を収容する。上記したように、この時点では、培養槽20内に回収管50を収容する必要は特にない。
【0049】
なお、培養槽20内に回収管50を収容した場合、回収タンク58内に貯留された培養液Lを、回収管50を介して培養槽20に供給することが可能である。この場合、双方向ポンプ52が起動される。これにより、回収タンク58内の培養液Lが、第2送液管56、給排管60、可撓管84、及び回収管50の内部空間68を流通する。上記したように、回収管50には、吸引孔72、末端孔74、第1側孔80及び第2側孔94が形成されている。従って、回収管50の内部空間68に到達した培養液Lは、吸引孔72、末端孔74、第1側孔80及び第2側孔94を介して、培養槽20内に排出される。このようにして回収タンク58から培養槽20に培養液Lを移した後、培養槽20から回収管50及び可撓管84を抜き出してもよい。
【0050】
次に、ガス供給部40(図1参照)から、二酸化炭素を含むガスが供給される。ガスはガス供給管42a~42dを流通し、ガイド部44a~44dの各々における取込口46の下開口に向けて排出される。図1に模式的に示すように、ガス供給管42a~42dから導出されたガスは、気泡100となる。ここで、取込口46は、ガイド部44a~44dにおいて、培養槽20の側部32dを向く箇所でも開口している。このため、気泡100がガイド部44a~44dに案内されながら培養液L中を上昇するとき、図1に矢印Sで示すように、気泡100の周囲の培養液Lが、取込口46の側方開口から取り込まれる。すなわち、気泡100の周囲の培養液Lが気泡100に巻き込まれる。
【0051】
気泡100に巻き込まれた培養液Lは、ガイド部44a~44dに沿って上昇する。その後、培養液L及び気泡100の進行方向は、ガイド部44a~44dの各々の天井部に接触することで変更される。すなわち、ガイド部44a~44cに沿って上昇した培養液L及び気泡100は、ガイド部44b~44dに向かってそれぞれ流れる。ガイド部44dに沿って上昇した培養液L及び気泡100は、培養槽20の側部32dに向かって流れる。
【0052】
ガイド部44b~44dに接触した培養液L及び気泡100は、ガイド部44b~44dに沿って下降する。培養槽20の側部32dに接触した培養液L及び気泡100は、側部32dに沿って下降する。以上の現象に基づき、図1に矢印Aで示すように、ガイド部44aとガイド部44bとの間で小対流が発生する。同様に、ガイド部44bとガイド部44cとの間、ガイド部44cとガイド部44dとの間にも、矢印Aで示すように、小対流がそれぞれ発生する。ガイド部44dと培養槽20の側部32dとの間にも、矢印Aで示すように、小対流が発生する。
【0053】
4個の小対流が複合することにより、培養槽20内の培養液Lにおいて、矢印Bで示すように大対流が発生する。小対流及び大対流により、気泡100が拡散する。すなわち、ガスに含まれる二酸化炭素が培養液Lの全体に拡散し、且つ培養液Lに十分に溶解する。また、小対流及び大対流により、微細藻類が撹拌される。このため、微細藻類が沈殿又は凝集することが防止される。
【0054】
培養槽20内の培養液Lは、貯水槽22に貯留された貯留水Wによって冷却される。このため、培養液Lの温度が過度に上昇することが回避される。
【0055】
以上のような理由から、微細藻類が培養槽20の全体において良好に培養される。微細藻類は、培養の最中、培養槽20に照射される光を浴びる。これに伴い微細藻類が光合成を活発に営むことに基づいて、二酸化炭素が十分に消費される。なお、光は、太陽光又は人工光である。
【0056】
微細藻類の培養が終了した後、ガイド部44a~44d及びガス供給管42a~42dを培養槽20から抜き出す。次に、培養槽20の開口部34を閉塞した後、双方向ポンプ52を起動する。これに伴い、培養槽20内の培養液L及び微細藻類が、回収管50の内部空間68に吸い込まれる。具体的に、培養液L及び微細藻類は、回収管50に形成された吸引孔72、末端孔74、第1側孔80及び第2側孔94から回収管50の内部空間68に流入する。培養液L及び微細藻類は、さらに、可撓管84、給排管60及び第1送液管54を介して回収タンク58に送り出される。
【0057】
培養槽20から培養液L及び微細藻類が抜き出されることに伴い、培養槽20内が負圧となる。培養槽20の材料が可撓性を有するので、内部が負圧となった培養槽20は、外気圧によって収縮する。
【0058】
ここで、図6Aに、第1回収部62における鉛直下方を向く箇所に吸引孔72を形成した態様を示す。この場合、吸引孔72と底部30とが互いに向かい合い、しかも、吸引孔72と底部30との離間距離が短い。従って、培養液Lが吸引孔72から吸引されると、培養槽20の底部30が吸引孔72に向かって撓み易い。その結果、図6Bに示すように、培養液Lの全量が回収される前に、培養槽20の底部30が吸引孔72を閉塞することが起こり得る。このような事態が発生すると、回収管50を介して培養液Lを吸引(回収)することが困難となる。
【0059】
これに対し、第1実施形態では、図1に示すように、吸引孔72が鉛直方向下方以外の方向を向いている。具体的に、この態様では、吸引孔72は鉛直方向上方を向いている。また、支持リブ82及び第1突出部78aが培養槽20の底部30の内面に当接しているので、底部30に対して張力が付与されている。以上のような理由から、培養槽20の底部30が吸引孔72に向かって撓むことが抑制される。換言すれば、培養槽20の底部30が吸引孔72に引き込まれることが回避される。従って、培養液L及び微細藻類を、吸引孔72を介して円滑に回収することができる。
【0060】
支持リブ82及び第1突出部78aの双方から底部30に張力が付与されているので、例えば、底部30における側部32bの近傍の部位の撓み量が、底部30における側部32dの近傍の部位の撓み量よりも大きくなることが回避される。従って、底部30近傍の培養液L及び微細藻類が万遍なく回収管50に吸引される。
【0061】
培養液L及び微細藻類は、末端孔74、第1側孔80及び第2側孔94からも吸引される。ここで、末端孔74の直径D1は、吸引孔72の直径D2に等しい。従って、末端孔74からの吸引量と、1個の吸引孔72からの吸引量とが略等しくなる。これにより、培養液L及び微細藻類の吸引量が偏ることが回避される。その結果、培養槽20内の全体にわたって培養液L及び微細藻類を略均等に回収することができる。
【0062】
末端孔74を介して培養液L及び微細藻類が吸引されることに伴い、培養槽20の側部32bが末端孔74に向かって引き寄せられる。第1側孔80及び第2側孔94を介して培養液L及び微細藻類が吸引されることに伴い、培養槽20の側部32a、32cが第1側孔80及び第2側孔94に向かって引き寄せられる。上記したような理由から、培養槽20内の培養液L及び微細藻類は、略均等に回収される。これにより、培養槽20に皺が形成されることを抑制しながら、培養液L及び微細藻類の略全量を培養槽20から抜き出すことが可能である。培養液L及び微細藻類の抜き出しに伴って収縮した培養槽20は、回収管50の外周面に密着する。
【0063】
回収管50の第1回収部62の末端部70において、培養槽20の側部32a、32cの内面は、図7に示すように、第1リブ76(第1突出部78a及び第2突出部78b)に密着する。従って、末端部70の縁部近傍において、培養槽20の側部32a、32cは、緩やかに折れ曲がる。すなわち、培養槽20において、末端部70の縁部に接触した部分が急峻に折れ曲がることが回避される。これにより、培養槽20が、末端部70の縁部によって破れることが回避される。
【0064】
培養液L及び微細藻類の吸引が進行すると、可撓管84が収縮する。このとき、回収管50の第2回収部64の基端管部86においても同様に、培養槽20の側部32a、32cの内面は、第2リブ90(第3突出部92a及び第4突出部92b)に密着する。従って、基端管部86の縁部近傍において、培養槽20の側部32a、32cは、緩やかに折れ曲がる。すなわち、可撓管84が収縮するにも拘わらず、培養槽20において、基端管部86の縁部に接触した部分が急峻に折れ曲がることが回避される。これにより、培養槽20が、基端管部86の縁部によって破れることが回避される。
【0065】
以上のように、第1実施形態においては、培養液L及び微細藻類を、吸引孔72、末端孔74、第1側孔80及び第2側孔94を介して回収するようにしている。回収管50に多くの回収箇所が設けられているので、培養液L及び微細藻類を効率よく回収することができる。
【0066】
また、上記したように、第1リブ76及び第2リブ90を設けたことにより、培養槽20が破れることを回避しつつ、培養槽20内の培養液L及び微細藻類の略全量を回収することができる。このため、培養槽20内における培養液L及び微細藻類の残量は極少量である。
【0067】
ここで、培養液L及び微細藻類の回収途中で培養槽20内の吸引が困難となった場合、吸引装置が空気を巻き込んで空転することがあり得る。従来技術では、これを回避するため、例えば、給排管60に電磁弁が設けられる。電磁弁が閉止されることに伴い、吸引装置による培養槽20内の吸引が停止する。
【0068】
これに対し、第1実施形態によれば、上記したように培養液L及び微細藻類の略全量を回収することが可能である。換言すれば、培養液L及び微細藻類の回収途中で培養槽20内の吸引が困難となることが回避される。従って、吸引装置である双方向ポンプ52が空気を巻き込んで空転することが回避される。このような理由から、電磁弁を設けることが不要となる。また、電磁弁を開閉するための付帯設備も不要である。従って、培養システム10の構成が簡素化する。また、設備投資が高騰することが回避される。
【0069】
回収タンク58に回収された微細藻類は、培養液L中で沈殿する。沈殿した微細藻類は、回収タンク58の底部から抜き出される。これにより、微細藻類が培養液Lから分離される。回収タンク58に残った培養液Lは、その後、回収タンク58の底部から抜き出され、第2送液管56、給排管60、可撓管84及び回収管50を介して、培養槽20に戻される。以降は、上記と同様にして、微細藻類の培養が行われる。
【0070】
このように、回収管50を介して培養槽20内に培養液Lを供給可能としたことにより、回収管50とは別の供給管を培養システム10に設けることが不要となる。従って、培養システム10の構成が簡素化する。また、同一の培養液Lを繰り返して培養に用いることができるので、省資源化を図ることができる。
【0071】
第1実施形態では、培養槽20の深さ方向Xが重力方向Gに略一致している態様を示している。これに対し、図8に示すように、培養槽110の深さ方向Xが重力方向Gに対して傾斜してもよい。この態様を、第2実施形態として説明する。なお、第2実施形態において、第1実施形態における構成要素と同一の構成要素には同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略することがある。
【0072】
第2実施形態に係る培養システム10において、培養装置112は、図8に示す培養槽110を有する。この場合、培養槽110の4個の側部32a~32dは、重力方向G及び水平方向に対して傾斜している。水平方向に対する深さ方向Xの傾斜角度θは90°未満であり、好ましくは40°~70°である。すなわち、第2実施形態では、培養槽110は傾斜姿勢で保持フレーム114に保持される。培養槽110を屋外に設置する場合、この傾斜姿勢に基づいて、太陽光の受光面積が大きくなる。
【0073】
回収管116は、第1回収部118及び第2回収部120を有する。第1回収部118は、培養槽110の底部30の近傍で、培養槽110の幅方向Y(図1参照)に沿って延在する。第1回収部118の上部において、深さ方向Xに平行な方向を向く箇所には、図4と同様に吸引孔72が形成されている。第1回収部118の末端部70には、末端孔74が形成されている。第2回収部120は、培養槽110の深さ方向Xに沿って延在する。すなわち、第2回収部120は、重力方向Gに対して角度θで傾斜している。
【0074】
図9に詳細を示すように、第1リブ76(第1突出部78a及び第2突出部78b)は、第1回収部118の外側面から深さ方向Xに平行に突出し、且つ深さ方向Xに沿って延在している。すなわち、第1リブ76の延在方向は、培養槽110の深さ方向Xに対して平行である。また、第1側孔80は、第1回収部118の末端部70の外周面において、深さ方向Xに対して直交する方向を向く部位に形成されている。
【0075】
図8に示すように、第2リブ90(第3突出部92a及び第4突出部92b)は、第2回収部120の基端管部86から幅方向Yに平行に突出し、深さ方向Xに平行に延在する。
【0076】
図10Aに、第1回収部118における鉛直下方を向く箇所に吸引孔72を形成した態様を示す。この場合、吸引孔72と底部30とが互いに向かい合い、しかも、吸引孔72と底部30との離間距離が短い。従って、培養液Lが吸引孔72から吸引されると、培養槽20の底部30が吸引孔72に向かって撓み易い。その結果、図10Bに示すように、培養液Lの全量が回収される前に、培養槽20の底部30が吸引孔72を閉塞することが起こり得る。このような事態が発生すると、回収管50を介して培養液Lを吸引(回収)することが困難となる。
【0077】
これに対し、第2実施形態では、吸引孔72が、鉛直方向下方以外の方向を向いている。具体的に、この態様では、吸引孔72は、培養槽110の深さ方向Xに平行な方向の上側を向いている。従って、双方向ポンプ52(図1参照)による吸引が開始されると、図11に示すように、培養槽110が収縮して該培養槽110の側部32a、32cが第1リブ76に密着する。培養槽20の側部32a、32cは、第2リブ90にも密着する。すなわち、第2実施形態においても、第1実施形態と同様にして、回収管50における末端部70の縁部又は基端管部86の縁部で培養槽110が破れることが回避される。これにより、培養槽110が破れることを回避しつつ、培養液L及び微細藻類の略全量を効率よく回収することができる。
【0078】
すなわち、培養槽110の深さ方向Xが重力方向Gに対して傾斜する第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0079】
以上説明したように、本実施形態は、微細藻類を培養するための培養槽(20、110)を含む培養装置(12、112)と、前記培養槽から前記微細藻類を回収する回収装置(14)とを備える培養システム(10)であって、前記培養槽は、可撓性を有する材料から形成され、且つ該培養槽の深さ方向(X)において該培養槽の最低位置に位置する底部(30)と、前記底部よりも高位置に位置する開口部(34)と、を有し、前記回収装置は、前記開口部を介して前記培養槽内に挿抜可能に収容される回収管(50、116)と、吸引装置(52)と、を有し、前記回収管は、内部空間(68)を有する筒状体であり、前記回収管は、前記培養槽内の培養液(L)に浸漬されたときに前記培養槽の前記底部に沿って延在する第1回収部(62、118)と、前記第1回収部の外周面に形成されて前記内部空間に連なる複数個の吸引孔(72)と、前記第1回収部の端部に設けられた第1リブ(76)と、を有し、前記第1リブは、前記第1回収部の外周面において、前記深さ方向と平行に突出する、培養システムを開示する。
【0080】
このように構成される培養槽から培養液及び微細藻類を回収するとき、培養槽内の培養液が吸引装置に吸引されるので、培養槽の内部が負圧になる。これに伴い、培養槽が収縮する。ここで、本実施形態では、回収管に第1リブを設けている。収縮した培養槽は、第1リブに密着する。これにより、培養槽が回収管の端部で破れることが回避される。
【0081】
従って、培養槽が破れることを回避しながら、培養槽内の培養液及び微細藻類を、吸引孔を介して効率よく吸引することができる。すなわち、上記の構成に基づいて、培養槽が破れることを回避し得、且つ培養液及び微細藻類の略全量を効率よく回収することができる。
【0082】
本実施形態は、前記第1リブは、前記第1回収部の外周面の互いに反対側から前記深さ方向と平行に突出した第1突出部(78a)及び第2突出部(78b)を有する、培養システムを開示する。
【0083】
この場合、収縮した培養槽は、第1突出部及び第2突出部に密着する。従って、培養槽が回収管の端部で破れることが一層回避される。
【0084】
本実施形態は、前記回収管は、前記第1突出部と前記第2突出部との間に形成され且つ前記培養槽の側部(32a、32c)に向かい合う1個以上の第1側孔(80)を有する、培養システムを開示する。
【0085】
この場合、培養液及び微細藻類は、第1側孔からも吸引される。従って、吸引孔のみが形成されている場合と比べて、培養液及び微細藻類を効率よく回収することが可能である。
【0086】
本実施形態は、前記回収管は、前記第1突出部と前記第2突出部との間に形成され且つ前記培養槽の側部に向かい合う複数個の第1側孔(80)を有し、前記複数個の第1側孔は、前記回収管の周方向に沿って並べられる、培養システムを開示する。
【0087】
この構成では、第1側孔が複数個形成される。従って、第1側孔が1個のみ形成されている場合と比べて、培養液及び微細藻類を一層効率よく回収することが可能である。
【0088】
本実施形態は、前記回収管は、前記第1回収部の末端部(70)において開口した末端孔(74)を有する、培養システムを開示する。
【0089】
この場合、培養液及び微細藻類は、末端孔からも吸引される。従って、吸引孔のみが形成されている場合と比べて、培養液及び微細藻類を効率よく回収することが可能である。
【0090】
本実施形態は、前記吸引孔の開口寸法(D2)と、前記末端孔の開口寸法(D1)とが略等しい、培養システムを開示する。
【0091】
これにより、吸引孔と末端孔との間で、培養槽内の培養液及び微細藻類の吸引量に大きな差違が生じることが回避される。従って、培養槽内の全体にわたって培養液及び微細藻類を略均等に回収することができる。このため、培養液及び微細藻類の略全量を培養槽から抜き出すことが可能である。
【0092】
本実施形態は、前記回収管は、前記培養槽の側部(32d)において前記深さ方向に延在する第2回収部(64、120)を有し、前記回収装置は、可撓性を有する材料からなり且つ前記第2回収部と前記吸引装置とを接続する可撓管(84)を有し、前記第2回収部は、前記可撓管と前記第1回収部との間に介在する基端管部(86)と、前記基端管部における前記可撓管近傍の端部に設けられた第2リブ(90)と、を有し、前記第2リブは、前記基端管部の外周面において、前記第1回収部の延在方向に平行に突出する、培養システムを開示する。
【0093】
この場合、撓んだ(収縮した)培養槽は、第2リブにも密着する。これにより、吸引の進行に伴って可撓管が収縮するにも拘わらず、基端管部の縁部によって培養槽が破れることが回避される。
【0094】
本実施形態は、前記第2リブは、前記基端管部の外周面の互いに反対側から前記第1回収部の延在方向に平行に突出した第3突出部(92a)及び第4突出部(92b)を有する、培養システムを開示する。
【0095】
この構成では、収縮した培養槽が第3突出部及び第4突出部に密着する。これにより、基端管部の縁部によって培養槽が破れることが一層回避される。
【0096】
本実施形態は、前記回収管は、前記第3突出部と前記第4突出部との間に形成され且つ前記培養槽の側部に向かい合う1個以上の第2側孔(94)を有する、培養システムを開示する。
【0097】
この場合、培養液及び微細藻類は、第2側孔からも吸引される。従って、吸引孔のみが形成されている場合と比べて、培養液及び微細藻類を効率よく回収することが可能である。
【0098】
本実施形態は、前記回収管は、前記第3突出部と前記第4突出部との間に形成され且つ前記培養槽の側部に向かい合う複数個の第2側孔(94)を有し、前記複数個の第2側孔は、前記回収管の周方向に沿って並べられる、培養システムを開示する。
【0099】
この構成では、第2側孔が複数個形成される。従って、第2側孔が1個のみ形成されている場合と比べて、培養液及び微細藻類を一層効率よく回収することが可能である。
【0100】
本実施形態は、前記回収管は、前記第1回収部と前記第2回収部との間に介在して所定角度で折り曲がった屈曲部(66)と、前記屈曲部に設けられて前記深さ方向に沿った下方で前記回収管を支持する支持リブ(82)と、を有する、培養システムを開示する。
【0101】
支持リブ及び第1リブにより、回収管の姿勢が安定する。また、支持リブ及び第1リブが培養槽の底部に張力を付与するので、底部近傍の培養液及び微細藻類が略均等に回収管に吸引される。従って、底部の収縮の度合いが偏ることが回避され、且つ底部の培養液及び微細藻類が培養槽内に残ることが回避される。
【0102】
本実施形態は、前記吸引孔は、重力方向下方以外の方向を向く、培養システムを開示する。
【0103】
これにより、培養槽の底部が吸引孔に引き込まれることが回避される。従って、吸引孔が培養槽で閉塞されることが回避されるので、吸引孔を介して培養槽内の培養液及び微細藻類を回収することが容易である。
【0104】
本実施形態は、前記回収管を介して前記培養槽内に前記培養液を供給可能である、培養システムを開示する。
【0105】
この場合、回収管と別の部材である供給管を培養システムに設ける必要がない。従って、培養システムが簡素化する。また、場合によっては、同一の培養液を繰り返して培養に用いることが可能である。このため、省資源化を図ることができる。
【0106】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0107】
10…培養システム 12、112…培養装置
14…回収装置 20、110…培養槽
22…貯水槽 30…底部
32a~32d…側部 34…開口部
38…ガス供給装置 40…ガス供給部
42a~42d…ガス供給管 44a~44d…ガイド部
46…取込口 50、116…回収管
52…双方向ポンプ 58…回収タンク
62、118…第1回収部 64、120…第2回収部
66…屈曲部 68…内部空間
70…末端部 72…吸引孔
74…末端孔 76…第1リブ
78a…第1突出部 78b…第2突出部
80…第1側孔 82…支持リブ
84…可撓管 86…基端管部
90…第2リブ 92a…第3突出部
92b…第4突出部 94…第2側孔
100…気泡 L…培養液
W…貯留水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11