(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068695
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】積層フィルム、それを用いた積層材料、袋状容器および積層フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 9/00 20060101AFI20240514BHJP
B32B 7/02 20190101ALI20240514BHJP
B65D 65/40 20060101ALN20240514BHJP
【FI】
B32B9/00 A
B32B7/02
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179226
(22)【出願日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】000222462
【氏名又は名称】東レフィルム加工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100186484
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 満
(72)【発明者】
【氏名】石原 毅
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AA01
3E086AB01
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4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】
十字折り目を作製した後も高いガスバリア性を有するとともに、高い密着性を有する積層フィルムを提供する。
【解決手段】
基材フィルムの少なくとも一方の側に、下地層、無機酸化物層、バリア性皮膜を基材フィルム側からこの順に有する積層フィルムであって、無機酸化物層内酸素原子濃度比率が7atomic%以上、340atomic%以下、所定の十字折り目が作製された積層フィルムの酸素透過率が1.5cc/m2・day・atm以下である積層フィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの少なくとも一方の側に、下地層、無機酸化物層、バリア性皮膜を基材フィルム側からこの順に有する積層フィルムであって、下記の方法で測定される積層フィルムの無機酸化物層内酸素原子濃度比率が7atomic%以上、340atomic%以下、所定の十字折り目が作製された積層フィルムの酸素透過率が1.5cc/m2・day・atm以下である積層フィルム。
<無機酸化物層内酸素原子濃度比率の測定、算出方法>
X線光電子分光法デプスプロファイル分析で測定される無機酸化物層内の最大酸素原子濃度をバリア性皮膜の直鎖状ポリシロキサンに対するビニルアルコール系樹脂の固形分比で割り返し、無機酸化物層内酸素濃度比率を算出する。
【請求項2】
所定の十字折り目が作成された積層フィルムの水蒸気透過率が、1.5g/m2・day以下である請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
請求項1記載の下地層と無機酸化物層の間に、金属層を有する積層フィルムである請求項1又は2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
積層フィルムの密着強度が1.0N/15mm以上である請求項1又は2に記載の積層フィルム。
【請求項5】
積層フィルムの密着強度が1.0N/15mm以上である請求項3に記載の積層フィルム。
【請求項6】
下地層が、少なくともMg、Al、Si、Ca、Ti、Cr、Fe、Ni、Cu、Znから選ばれた元素からなり、無機酸化物層に対する下地層の割合が、1.1×10-8体積%以上、6.5×10-2体積%以下である請求項1又は2に記載の積層フィルム。
【請求項7】
下地層が、少なくともMg、Al、Si、Ca、Ti、Cr、Fe、Ni、Cu、Znから選ばれた元素からなり、無機酸化物層に対する下地層の割合が、1.1×10-8体積%以上、6.5×10-2体積%以下である請求項3に記載の積層フィルム。
【請求項8】
下地層が、少なくともMg、Al、Si、Ca、Ti、Cr、Fe、Ni、Cu、Znから選ばれた元素からなり、無機酸化物層に対する下地層の割合が、1.1×10-8体積%以上、6.5×10-2体積%以下である請求項5に記載の積層フィルム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の積層フィルムの少なくとも一方の側にプラスチックフィルムと熱融着性樹脂層を設けた積層材料。
【請求項10】
請求項1~8のいずれかに記載の積層フィルムの少なくとも一方の側にプラスチックフィルム、もう一方の側に熱融着性樹脂層を設けた積層材料。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の積層材料を用いた袋状容器。
【請求項12】
請求項1~8のいずれか一項に記載の積層フィルムの製造方法であって、下記の方法で測定される無機酸化物層内酸素原子濃度比率が7atomic%以上、340atomic%以下である無機酸化物を用意する工程と、前記無機酸化物面側にコーティング剤を塗布して、少なくとも前記バリア性皮膜を形成する工程を有する、積層フィルムの製造方法。
<無機酸化物層内酸素原子濃度比率の測定、算出方法>
X線光電子分光法デプスプロファイル分析で測定される無機酸化物層内の最大酸素原子濃度をバリア性皮膜の直鎖状ポリシロキサンに対するビニルアルコール系樹脂の固形分比で割り返し、無機酸化物層内酸素濃度比率を算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、十字折り目を作製した後も高いガスバリア性を有するとともに、高い密着性を有する積層フィルムおよびその積層フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高い酸素バリア性、水蒸気バリア性を持つ透明な包装材料であって、使用後の焼却処理等環境に配慮された複合フィルムとしてプラスチックフィルムからなる基材の少なくとも片面に、ドライコーティング法によって、厚さ100~500nmのアルミニウム層を施し、該アルミニウム層上に酸化アルミニウム層を積層し、前記酸化アルミニウム層上に、ゾル・ゲル法によって、酸化珪素と水溶性高分子の混合物からなる酸化珪素塗膜を形成した高バリアポリマー複合フィルムおよび該高バリアポリマー複合フィルムを用いて、食品および医薬品等の透明で高バリア性を有する包装材料とする包装体が開示されている(特許文献1)。
【0003】
ガスバリア性が高く、屈曲後や経時保存後も高いガスバリア性を維持し、生産性が高く安価に製造可能なガスバリア性フィルムの製造方法において、該ガスバリア性フィルムを絶対湿度が0.001~3g/m3の環境下において、水と反応する材料を該ガスバリア層表面に接触させることを特徴とするガスバリア性フィルムの製造方法が開示されている(特許文献2)。
【0004】
断熱芯材を真空断熱材用積層体で被覆し、内部を脱気し真空状態とした真空断熱材に用いられる真空断熱材用積層体において、プラスチック基材の少なくとも片面に、金属又は無機酸化物或いはそれらの混合物である蒸着薄膜層を積層したバリアフィルム、アルミ蒸着フィルム、塩化ビニリデンフィルム、熱融着層の順に積層し、水蒸気透過度が0.1g/m2・day以下、屈曲後の水蒸気透過度が0.5g/m2・day以下である真空断熱材用積層体が開示されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-300875号公報
【特許文献2】特開2012-116960公報
【特許文献3】特開2016-223545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2の技術では、十字折り目を作製した後も高いガスバリア性を維持することができなかった。また。特許文献3の技術では、プラスチック基材の少なくとも片面に、金属又は無機酸化物或いはそれらの混合物である蒸着薄膜層を積層したバリアフィルム、アルミ蒸着フィルム、塩化ビニリデンフィルム、熱融着層の順に積層する必要があり、層形成の工程が多く、製造コストが高いという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、十字折り目を作製した後も高いガスバリア性を有するとともに、高い密着性を有する積層フィルムおよびその積層フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、基材フィルムの少なくとも一方の側に、下地層、無機酸化物層、バリア性皮膜を基材フィルム側からこの順に有する積層フィルムであって、下記の方法で測定される無機酸化物層内酸素原子濃度比率が7atomic%以上、340atomic%以下、下記の方法で十字折り目を作製した後の酸素透過率が1.5cc/m2・day・atm以下である積層フィルムであることを特徴とする。
【0009】
<無機酸化物層内酸素原子濃度比率の測定、算出方法>
X線光電子分光法デプスプロファイル分析で測定される無機酸化物層内の最大酸素原子濃度をバリア性皮膜の直鎖状ポリシロキサンに対するビニルアルコール系樹脂の固形分比で割り返し、無機酸化物層内酸素濃度比率を算出する。
【0010】
<十字折り目作製方法>
基材フィルム側が内側となるように折り、直角に4つ折りし、折り部中央箇所を一つの頂点として、一辺が60mmの正方形となるように、上下を2枚のアクリル板(一辺の長さ30mm、もう一辺の長さが90mm、厚さ2mm)で挟んだ後、荷重:1kgの重りを前記正方形の中央部に置き、10秒間保持し、十字折り目を作製する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、十字折り目を作製した後も高いガスバリア性を有するとともに、高い密着性を有する積層フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】十字折り目作製方法を示す概念図であって、フィルムを直角に4つ折りする方法を示す。
【
図2】十字折り目作製方法を示す概念図であって、4つ折りをしたフィルムを2枚のアクリル板で挟み、荷重をかけ保持し、十字折り目を作成する方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明の積層フィルムは、基材フィルムの少なくとも一方の側に、下地層、無機酸化物層、バリア性皮膜を基材フィルム側からこの順に有する積層フィルムであって、下記の方法で測定される無機酸化物層内酸素原子濃度比率が7atomic%以上、340atomic%以下であり、下記の方法で十字折り目を作製した後の酸素透過率が1.5cc/m2・day・atm以下である積層フィルムである。
【0015】
また無機酸化物層内酸素原子濃度比率を7atomic%以上、340atomic%以下とすることによって、水蒸気透過率が、1.5g/m2・day以下、積層フィルムの密着強度が1.0N/15mm以上である積層フィルムが得られる。
【0016】
<無機酸化物層内酸素原子濃度比率の測定、算出方法>
X線光電子分光法デプスプロファイル分析で測定される無機酸化物層内の最大酸素原子濃度をバリア性皮膜の直鎖状ポリシロキサンに対するビニルアルコール系樹脂の固形分比で割り返し、無機酸化物層内酸素濃度比率を算出する。
【0017】
<十字折り目作製方法>
図1、
図2に示すように、基材フィルム側が内側となるように折り、直角に4つ折りし、折り部中央箇所を一つの頂点として、一辺が60mmの正方形となるように、上下を2枚のアクリル板(一辺の長さ30mm、もう一辺の長さが90mm、厚さ2mm)で挟んだ後、荷重:1kgの重りを前記正方形の中央部に置き、10秒間保持し、十字折り目を作製する。
【0018】
本発明において、基材フィルムは、用途により機械強度、耐熱性、耐光性などの特性を考慮する限り特に限定されないが、代表的な例としてはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレン2,6-ナフタレートなどのポリエステル、ポリビニルアルコール、エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、6ナイロン、12ナイロンなどのポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリイミドなどの単独重合体または共重合体からなるフィルム、シートが挙げられる。中でも、リサイクルのしやすさという観点からはポリプロピレンフィルムが好ましく、またリサイクル性に加え無機層との密着力やハンドリングの観点からはポリエステルフィルムが好ましい。これらフィルムを構成する樹脂全体に対し3~55質量%のリサイクル材料を含むことが好ましい。尚、リサイクル材料は、メカニカルリサイクルにてリサイクルされたものであっても、ケミカルリサイクルにてリサイクルされたものであってもよく、特に限定されるものではない。さらに、前記基材フィルムを構成する樹脂にバイオマス由来(植物由来)の原料を含んで化学燃料由来の原料との混合樹脂であってもよく、例えばポリエステルの場合、その原料であるジオールもしくはジカルボン酸のいずれか一方または両方が、樹脂組成物全体に対し10~95質量%のバイオマス由来(植物由来)の原料を含むことが好ましい。
【0019】
基材フィルムは、未延伸フィルムであってもよいが、延伸(一軸または二軸)されているものが機械特性や厚さの均一性に優れ、二軸延伸フィルムがより好ましい。延伸法としては、ロール延伸、圧延延伸、ベルト延伸、テンター延伸、チューブ延伸や、これらを組み合わせた延伸などの慣用の延伸法が適用できる。
【0020】
基材フィルムの厚さは特に制限はないが、ポリエチレンテレフタレートフィルムであれば4~50μm程度、ポリプロピレンフィルムであれば10~60μm程度、ナイロンフィルムであれば10~50μm程度が実用的である。
【0021】
また、これらの基材フィルムの表面に、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、イオン処理、アンカーコート等の表面改質処理を施しても構わない。
【0022】
本発明において、下地層は、少なくともMg、Al、Si、Ca、Ti、Cr、Fe、Ni、Cu、Znから選ばれた元素からなり、無機酸化物層に対する下地層の割合は、1.1×10-8体積%以上、6.5×10-2体積%以下であることが好ましく、より好ましくは、3×10-8体積%以上、5.0×10-2体積%以下である。無機酸化物層に対する下地層の割合は、下地層の体積を無機酸化物層の体積で割り、100をかけたものをいう。例えば、元素がTiの場合、単位面積当たりの重量が1ng/m2のとき、これをTiの密度4.506g/cm3割り返すことにより、下地層の単位面積当たりの体積は、2.22×10-16m3/m2となる。単位面積当たりの元素の重量は、原子吸光分光分析により求めることができる。すなわち、所定面積のサンプルを1規定の硝酸に所定時間以上浸漬して、下地層を溶解し、原子吸光法で単位面積当たりの重量を定量する。無機酸化物層の体積は、無機酸化物層の厚さを求め、面積を乗ずることで、求めることができる。例えば、無機酸化物層の厚さが10nmのとき、面積1m2を乗ずることで、無機酸化物層の単位面積当たりの体積は、1.0×10-8m3/m2となる。無機酸化物層の厚さは、後述する方法で測定することができる。本発明の無機層の厚みは、5nm以上150nm以下が好ましく、より好ましくは10nm以上140nm以下である。5nm以下ではバリア性が不十分となる場合がある一方、150nm以上では無機層の凝集力が低下し、無機層内で凝集破壊し、無機層が割れたり、剥離したりする場合がある。
【0023】
以上より、無機酸化物層に対する下地層の割合は、2.22×10-16m3/m2を1.0×10-8m3/m2で割り、100を乗じた2.22×10-6体積%となる。
【0024】
下地層の形成方法としては、前記元素を含有する塗布液を基材フィルムに塗布する方法、サンドブラスト方式で基材フィルム表面に前記元素含有物を吹き付ける方法、イオンプレーティング法あるいはスパッタによって、前記元素を基材フィルム表面に下地層を形成する方法などが挙げられる。コスト面を考慮すると、上述の目的とする元素の材質の電極を用意し、酸素、窒素、アルゴン、ヘリウム、水蒸気から選ばれる少なくとも一つあるいはそれらの混合ガスを電極内に導入、プラズマ放電雰囲気中に基材フィルムを連続的に走行させながら、下地層を形成する方法が好ましい。
【0025】
本発明において、無機酸化物層は、少なくともアルミニウム、酸素、炭素元素を含有し、X線光電子分光法デプスプロファイル分析で測定されるアルミニウム、酸素、炭素原子濃度の合計を100atomic%とした場合、酸素原子濃度が10atomic%以上の層のことをいう。
【0026】
本発明において、バリア性皮膜は、ビニルアルコール系樹脂を含有し、該ビニルアルコール系樹脂が環状構造中にカルボニル基を有する環式化合物構造を含有し、さらに、直鎖状ポリシロキサンを含む混合物層である。ビニルアルコール系樹脂としては、例えばポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール等のビニルアルコール系樹脂であれば特に限定することはない。その中では特にポリビニルアルコールを本発明における塗液に用いた場合にガスバリア性が優れるのでより好ましい。ここでいうポリビニルアルコールは、一般にポリ酢酸ビニルをけん化して得られるものであり、酢酸基の一部をけん化して得られる部分けん化であっても、完全けん化であってもよいが、けん化度は高いほうが好ましい。けん化度は、好ましくは90%以上であり、より好ましくは95%以上である。けん化度が低く、立体障害の大きい酢酸基を多く含むと、層の自由体積が大きくなる場合がある。そのため、ポリビニルアルコールの重合度は、1,000以上3,000以下が好ましく、1,000以上2,000以下がより好ましい。重合度が低い場合、ポリマーが固定されにくく、十字折り目を作製した際の耐久性が低下する場合がある。前記環状構造としては、三員環以上(例えば、三~六員環)であれば特に限定されるものではなく、また、環状構造内に例えば炭素以外の窒素、酸素、硫黄、リンなどのヘテロ元素等を有する複素環のような環式化合物構造であってもよい。また、この環式化合物構造を有する部位は、ビニルアルコール系樹脂における主鎖や側鎖、または架橋鎖のうちいずれに存在してもよい。これら環状構造中にカルボニル基を有する環式化合物構造として、具体的には例えば環状エステルであるラクトン構造や環状アミドであるラクタム構造が挙げられ、これらは単独であっても、2種以上を含んであってよく、特に限定されるものではないが、好ましくはラクトン構造である。ラクトン構造であると、高温熱水処理や後述するアルコキシシランの加水分解に使用する酸触媒に対して安定でありガスバリア性が安定する。ラクトン構造を有するものとしては例えば、α-アセトラクトン、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン等が挙げられる。
【0027】
前記直鎖状ポリシロキサンは、Si(OR)4で表されるアルコキシシランから得ることができる。アルコキシシラン中のRは低級アルキル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基が挙げられる。アルコキシシランとしては具体的には、テトラメトキシシラン(TMOS、テトラメチルオルトシリケート、以下、メチルシリケートと称することがある)、テトラエトキシシラン(TEOS、テトラエチルオルトシリケート、以下、エチルシリケートと称することがある)、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランが挙げられ、これらは単独であっても、2種以上の混合物であってもよい。
【0028】
アルコキシシランは、直鎖状ポリシロキサンを得るために水、触媒、有機溶媒の存在下で加水分解される。加水分解に使用される水は、Si(OR)4のアルコキシ基に対して0.8当量以上5当量以下であることが好ましい。水の量が0.8当量より少ないと、十分に加水分解が進行せず、直鎖状ポリシロキサンを得ることができなかったりする場合がある。水の量が5当量より多いとアルコキシシランの反応がランダムに進行して、直鎖状ポリシロキサンを多量に形成し直鎖状ポリシロキサンを得ることができない場合がある。
【0029】
加水分解に使用する触媒は、酸触媒であることが好ましい。酸触媒の例としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、酒石酸等が挙げられ、特に限定されるものではない。通常、アルコキシシランの加水分解および重縮合反応は、酸触媒であっても塩基触媒であっても進めることができるが、酸触媒を用いた場合、系中のモノマ―は平均的に加水分解されやすく、直鎖状になりやすい。一方、塩基触媒を用いた場合は、同一分子に結合したアルコキシドの加水分解、重縮合反応が進みやすい反応機構であるため、反応がランダムに進行し反応生成物は空隙の多い状態になりやすい。触媒の使用量は、アルコキシシラン総モル量に対して、0.1モル%以上0.5モル%以下であることが好ましい。直鎖状ポリシロキサンとして、あらかじめSi(OR)4が複数結合した市販のシリケートオリゴマー原料を使用することもできる。なお、本発明において、バリア性皮膜は、ビニルアルコール系樹脂と直鎖状ポリシロキサンの他に、アルコキシシラン(アルコキシシランの加水分解物を含む)を別途含んでもよい。本発明において、バリア性皮膜を形成する方法としては、特に制限はなく、基材フィルムに応じた方法で形成することができる。例えばロールコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、ダイコーティング法、ナイフエッジコーティング法、グラビアコーティング法、キスコーティング法、スピンコーティング法等やこれらを組み合わせた方法を用いて、塗液をコーティングすればよい。
【0030】
保護層の平均厚みは10nm以上1,000nm以下が好ましく、より好ましくは、100nm以上600nm以下、さらに好ましくは350nm以上500nm以下である。平均厚みが10nm未満の場合、無機層のピンホールやクラックを十分に埋めることができず、十分なガスバリア性を発現できない場合がある。一方、厚みが1,000nmを超えると、厚みによるクラックが生じたりする場合がある。
【0031】
本発明において、下記の方法で測定される無機酸化物層内酸素原子濃度比率は、7atomic%以上、340atomic%以下が好ましく、10atomic%以上、320atomic%以下がより好ましい。X線光電子分光法デプスプロファイル分析は後述する方法で行うことができる。無機酸化物層内酸素原子濃度比率は、X線光電子分光法デプスプロファイル分析で測定される無機酸化物層内の最大酸素原子濃度をバリア性皮膜の直鎖状ポリシロキサンに対するビニルアルコール系樹脂の固形分比で割り返すことで求めることができる。例えば、X線光電子分光法デプスプロファイル分析で測定される無機酸化物層内の最大酸素原子濃度が、45atomic%、バリア性皮膜の直鎖状ポリシロキサンに対するビニルアルコール系樹脂の固形分比が0.3の場合、45atomic%を0.3で割り返し、無機酸化物層内酸素原子濃度比率は、150atomic%となる。無機酸化物層内酸素原子濃度比率が、7atomic%未満となると、無機酸化物層内の最大酸素原子濃度が低く、バリア性皮膜の直鎖状ポリシロキサンに対するビニルアルコール系樹脂の固形分比が大きくなり、無機酸化物層内の酸素原子とバリア性皮膜中のアルコキシシラン由来のSi―OH結合との結合が少なくなり、無機酸化物層とバリア性皮膜の一体化が減少することで、下記の方法で十字折り目を作製した際の酸素透過率が1.5cc/m2・day・atmおよび水蒸気透過率が、1.5g/m2・dayを超えるという不具合が発生することがある。また、無機酸化物層内酸素原子濃度比率が、340atomic%を超えると無機酸化物層内の最大酸素原子濃度が高く、バリア性皮膜の直鎖状ポリシロキサンに対するビニルアルコール系樹脂の固形分比が小さくなり、無機酸化物層内の酸素原子濃度が高くなることで、酸化が進み、無機酸化物層が脆くなるとともに、直鎖状ポリシロキサンに対するビニルアルコール系樹脂の固形分比が小さくなることで、バリア性皮膜の柔軟性が低下し、十字折り目を作製した際の酸素透過率が1.5cc/m2・day・atmおよび水蒸気透過率が、1.5g/m2・dayを超えるという不具合が発生することがある。
【0032】
<無機酸化物層内酸素原子濃度比率の測定、算出方法>
X線光電子分光法デプスプロファイル分析で測定される無機酸化物層内の最大酸素原子濃度をバリア性皮膜の直鎖状ポリシロキサンに対するビニルアルコール系樹脂の固形分比で割り返し、無機酸化物層内酸素濃度比率を算出する。
【0033】
<十字折り目作製方法>
図1、
図2に示すように、基材フィルム側が内側となるように折り、直角に4つ折りし、折り部中央箇所を一つの頂点として、一辺が60mmの正方形となるように、上下を2枚のアクリル板(一辺の長さ30mm、もう一辺の長さが90mm、厚さ2mm)で挟んだ後、荷重:1kgの重りを前記正方形の中央部に置き、10秒間保持し、十字折り目を作製する。
【0034】
本発明において、前記下地層と無機酸化物層の間に、金属層を有することが好ましい。金属層は、少なくともアルミニウム元素を含有し、X線光電子分光法デプスプロファイル分析で測定されるアルミニウム、酸素、炭素原子濃度の合計を100atomic%とした場合、アルミニウム原子濃度が45atomic%以上の層のことをいう。金属層の膜厚は25nm以上であることが重要である。25nm未満ではガスバリア性能が不十分であり、金属調の外観も不十分なものとなる場合がある。好ましくは40~125nmである。125nmを超えてもガスバリア性能は頭打ちであり、アルミニウム金属層蒸着時の凝集エネルギーが大きくなり、基材フィルムが熱で変形し、外観が実用に耐えない場合がある。
【0035】
前記下地層と無機酸化物層の間に金属層を有することで、金属光沢など意匠性を付与することができるとともに、遮光性を付与することができる。
【0036】
本発明において、積層フィルムの密着強度は、1.0N/15mm以上であることが好ましく、1.2N/15mm以上であることがより好ましい。基材フィルムの少なくとも一方の側に、下地層、無機酸化物層、バリア性皮膜とを基材フィルム側からこの順に有する積層フィルムであって、下記の方法で測定される無機酸化物層内酸素原子濃度比率が7atomic%以上、340atomic%以下とし、下地層を、少なくともMg、Al、Si、Ca、Ti、Cr、Fe、Ni、Cu、Znから選ばれた元素からなり、無機酸化物層に対する下地層の割合は、1.1×10-8体積%以上、6.5×10-2体積%以下とすることにより積層フィルムの密着強度を好ましい範囲にすることができる。前記密着強度が、1.0N/15mm未満となると袋状容器となった時に、プラスチックと積層フィルム間での剥がれが発生し、袋状容器体としての適性がなくなる場合がある。
【0037】
本発明において、積層フィルムの少なくとも一方の側にプラスチックフィルムと熱融着性樹脂層を設けた積層材料、積層フィルムの少なくとも一方の側にプラスチックフィルム、もう一方の側に熱融着性樹脂層を設けた積層材料とすることができ、いずれかの積層材料を用いた袋状容器とすることができる。これらの積層材料、袋状容器は、折り目が発生した際も、酸素透過率、水蒸気透過率が少なく、また、密着強度が高いため、剥がれなどなく好適に用いることができる。
【0038】
積層フィルムの少なくとも一方の側にプラスチックフィルムと熱融着性樹脂層を設けた積層材料、あるいは、積層フィルムの少なくとも一方の側にプラスチックフィルム、もう一方の側に熱融着性樹脂層を設けた積層材料のプラスチックフィルムとしては、用途により機械強度、耐熱性、耐光性などの特性を考慮する限り、特に限定されないが、代表的な例としてはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレン2,6-ナフタレートなどのポリエステル、ポリビニルアルコール、エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、6ナイロン、12ナイロンなどのポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリイミドなどの単独重合体または共重合体からなるフィルム、シートが挙げられる。内容物に対する強度保持、耐突き刺し性などの観点から、ポリアミドフィルムなどが好適に用いられる。
【0039】
この積層材料を用いた袋状容器として、熱融着性樹脂層を内面とした、二方袋、三方袋、チャック付三方袋、合掌袋、ガゼット袋、底ガゼット袋、スタンド袋、スタンドチャック袋、二方袋、四方柱平底ガゼット袋、サイドシール袋、ボトムシール袋などがあげられる。
【0040】
本発明において積層フィルムの製法方法は、上述に記載の積層フィルムの製造方法であって、下記の方法で測定される無機酸化物層内酸素原子濃度比率が7atomic%以上、340atomic%以下である無機酸化物を用意する工程と、前記無機酸化物面側にコーティング剤を塗布して、少なくとも前記バリア性皮膜を形成する工程を有する、積層フィルムの製造方法である。無機酸化物層を用意する工程としては、巻取り方式の真空蒸着装置を使用し、基材フィルムを巻き出した後、アルミニウムを蒸発させ、蒸気中に酸素ガスを導入しながら、無機酸化物層を形成する方法、酸化アルミニウムを蒸発させ、無機酸化物層を形成する方法、アルミニウムを蒸発させアルミニウム層を形成した後に、酸素イオンを注入する方法、酸化アルミニウムをターゲットとして、スパッタにより無機酸化物層を形成する方法、酸化アルミニウムを含熱する塗布液を塗布した後に、乾燥する方法などが挙げられるが、コストなどを考慮すると、基材フィルムを巻き出した後、アルミニウムを蒸発させ、上記中に酸素ガスを導入しながら、無機酸化物層を形成する方法が好ましい。前記バリア性皮膜を用意する工程としては、上述のバリア性皮膜を形成する方法が好ましい。
【0041】
<無機酸化物層内酸素原子濃度比率の測定、算出方法>
X線光電子分光法デプスプロファイル分析で測定される無機酸化物層内の最大酸素原子濃度をバリア性皮膜の直鎖状ポリシロキサンに対するビニルアルコール系樹脂の固形分比で割り返し、無機酸化物層内酸素濃度比率を算出する。
【実施例0042】
以下本発明を詳細に説明するため実施例を挙げるが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0043】
(評価方法)
(1)酸素透過率
温度23℃、湿度90%RH、測定面積50cm2の条件で、米国、モコン(MOCON)社製の酸素透過率測定装置(機種名:OXTRAN(登録商標) 2/20)を使用して測定した。前記記載の方法で所定の十字折り目を作製し、その後、展開された積層フィルムを試料とした。
【0044】
(2)水蒸気透過率
温度40℃、湿度90%RH、測定面積50cm2の条件で、米国、モコン(MOCON)社製の水蒸気透過率測定装置(機種名:PERMATRAN(登録商標) W3/31)を使用して測定した。前記記載の方法で所定の十字折り目を作製し、その後、展開された積層フィルムを試料とした。
【0045】
(3)密着強度
三井化学(株)製ポリエーテルウレタン系ドライラミネート用接着剤“タケラック”(登録商標)A969Vタイプ30重量部、三井化学(株)製ドライラミネート用硬化剤“タケラック”(登録商標)A10タイプ10重量部及び酢酸エチル100重量部を量り取り、30分攪拌して固形分濃度19重量%のドライラミネート用接着剤溶液を調整した。
【0046】
次に積層フィルムの非基材フィルム面にバーコート法により上記接着剤溶液を塗工し、80℃で45秒間乾燥して1.5μmの厚さの接着剤層を形成した。
【0047】
次に、該接着剤層に、プラスチックフィルムとして東レ(株)製二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム“ルミラー”(登録商標)P60タイプ(厚さ12μm)をコロナ処理面が接着剤層と向かい合うように重ね、富士テック(株)製“ラミパッカー”(登録商標)LPA330を用いて、ヒートロールを40℃に加熱して貼り合わせた。このラミネートフィルムを40℃に加熱したオーブン内で2日間エージングしてラミネート体を得た。次に該ラミネート体を幅15mm、長さ150mmに切断してカットサンプルを作成し、(株)エー・アンド・デイ製引張り試験機(RTG-1210タイプ)を使用して貼り合わせた積層フィルムとプラスチックフィルム間を界面として、Tピール法により引張り速度300mm/minで剥離し、剥離強度を測定した。得られた値を積層フィルムの密着強度(N/15mm)とした。
【0048】
(4)積層材料の作製方法
上記(3)の方法で作製したラミネート体の基材フィルム面にラミネート体の作製方法と同じ接着剤を用いて、接着剤を同じ厚さになるように塗布し、熱風オーブンで乾燥後、熱融着性樹脂層として低密度ポリエチレンフィルム(厚さ40μm、三井化学東セロ(株)製FC-S)と貼り合わせした。このようにして貼り合わせ後、40℃のオーブンで72時間保管し、積層材料を作製した。
【0049】
(5)袋状容器の作製方法
上述の方法で得られた積層材料の熱融着性樹脂層側同士を向かい合うように重ね、富士インパルス(株)製VG-400を用いて、加熱時間2.5秒で加熱して3方を熱融着貼り合わせし、横300mm、縦300mmの袋状容器を作製した。
【0050】
(6)X線光電子分光法デプスプロファイル分析で測定される無機酸化物層内の最大酸素原子濃度の測定
全自動走査型X線光電子分光分析装置(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社社製K-Alpha)を用いて、X線源AlKα、X線出力25.1W、光電子取り出し角45°で分析を行った。バリア性皮膜側から、Arイオンを用いて、Arイオンエネルギー1keVでスパッタを行ない、一定スパッタ時間毎に炭素、酸素、アルミニウムの元素について狭域光電子スペクトル測定を行い、C1s、O1s、Al2pの狭域光電子ピーク面積強度比と相対感度係数から各元素の組成比を算出し、深さ方向の酸素、炭素、アルミニウム元素の原子濃度分布、すなわち、デプス分析を行った。本デプス分析で無機酸化物層内の最大原子濃度を求めた。
【0051】
(7)無機酸化物層の体積の測定
上述の(6)と同じ装置と同条件でデプス分析を行い、無機酸化物層表面から酸素原子濃度が10%以上までのスパッタ時間にSiO2換算のエッチングレート4.7nm/minをかけ合わせ、無機酸化物層の厚さを算出し、面積を乗じて、無機酸化物層の体積を測定した。
【0052】
(8)蒸着膜厚測定
走査型オージェ電子分光装置(アルバックファイ(株)社製SAM-670型)で深さ方向組成分析評価を行い、デプスプロファイルにより、酸化アルミニウム/金属アルミニウムの膜構成を確認した。Al濃度とO濃度に注目し、蒸着膜の表層からArイオンエッチングを行いながらデータを収集し、そのAl濃度とO濃度の濃度比率が、50:50となる深さを界面と規定した時の酸化アルミニウム蒸着層とアルミニウム蒸着層の膜厚を算出した。別途、透過電子顕微鏡による断面観察で膜厚の分かっている金属アルミニウム膜を同様のエッチング方法でエッチングをし、エッチング速度を算出することで上記のデータのエッチング時間をエッチング深さの絶対値に変換した。
【0053】
(実施例1)
<無機酸化物層の形成方法>
基材フィルムとして、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製 P60)を使用し、基材フィルムを真空槽内で巻き出した後、下地層がCuで、無機酸化物層に対する下地層の割合が2.55×10-5体積%となるように、Cuをターゲットとするプレーナーマグネトロン方式の放電電極を設置し、高周波電源(周波数60kHz)により供給された電圧をかけることで、プラズマを発生させ、下地層を形成した。その後、金属層を40nmおよび無機酸化物層内酸素原子濃度比率が9atomic%となるように、アルミニウムを蒸発させ、蒸発雰囲気中に酸素ガスを導入し、8.8nmの無機酸化物層を形成した。
【0054】
<ビニルアルコール系樹脂溶液の作製方法>
ビニルアルコール系樹脂として、カルボニル基を有する環状構造としてラクトン構造であるγ-ブチロラクトンを有する変性ポリビニルアルコール(以下、変性PVAと略す。重合度1,700、けん化度93.0%)を、質量比で水/イソプロピルアルコール=97/3の溶媒に投入し、90℃で加熱撹拌して固形分10質量%の有機成分溶液を得た。
【0055】
<無機成分溶液の作製方法>
TEOS(信越化学製、KBE-04)11.7gとメタノール4.7gを混合した溶液に0.02N塩酸水溶液18.6gを撹拌しながら液滴することで、TEOS加水分解液を得た。一方で直鎖ポリシロキサンとしてコルコート株式会社製エチルシリケート40(平均5量体の直鎖状オリゴマー)11.2g、メタノール16.9gを混合した溶液に、0.06N塩酸水溶液7.0gを液滴して、5量体エチルシリケート加水分解液を得た。5量体エチルシリケート加水分解溶液とTEOS加水分解溶液をSiO2換算固形分の重量比が15/85になるように混合し、無機成分溶液とした。
【0056】
<バリア性皮膜の作製方法>
上述の無機酸化物層内酸素原子濃度比率となるように、PVA溶液と、無機成分溶液を混合・撹拌し、水で希釈して固形分12質量%の塗工液を得た。この塗工液を無機化合物層上に塗工し、350nmのバリア性皮膜を形成し、積層フィルムとした。得られた積層フィルムを用いて、積層材料および袋状容器を作製した。
【0057】
(実施例2)
下地層をCaとし、無機酸化物層に対する下地層の割合を6.45×10-2体積%、無機酸化物層内酸素原子濃度比率が333atomic%となるように1.0nmの無機酸化物層を形成した以外は、実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。バリア性皮膜を形成し、積層フィルムとした。得られた積層フィルムを用いて、積層材料および袋状容器を作製した。
【0058】
(実施例3)
下地層をTiとし、無機酸化物層に対する下地層の割合を2.22×10-6体積%、無機酸化物層内酸素原子濃度比率が100atomic%となるように10.0nmの無機酸化物層を形成した以外は、実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。バリア性皮膜を形成し、積層フィルムとした。得られた積層フィルムを用いて、積層材料および袋状容器を作製した。
【0059】
(実施例4)
無機酸化物層に対する下地層の割合を1.12×10-8体積%、金属層を形成せず、無機酸化物層内酸素原子濃度比率が30atomic%となるように1000.0nmの無機酸化物層を形成した以外は、実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。バリア性皮膜を形成し、積層フィルムとした。得られた積層フィルムを用いて、積層材料および袋状容器を作製した。
【0060】
(比較例1)
下地層をFeとし、無機酸化物層に対する下地層の割合を1.02×10-8体積%、無機酸化物層内酸素原子濃度比率が6atomic%となるように1000.0nmの無機酸化物層を形成した以外は、実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。バリア性皮膜を形成し、積層フィルムとした。得られた積層フィルムを用いて、積層材料および袋状容器を作製した。
【0061】
(比較例2)
下地層をMgとし、無機酸化物層に対する下地層の割合を6.90×10-2体積%、無機酸化物層内酸素原子濃度比率が380atomic%となるように1.0nmの無機酸化物層を形成した以外は、実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。バリア性皮膜を形成し、積層フィルムとした。得られた積層フィルムを用いて、積層材料および袋状容器を作製した。
【0062】
(比較例3)
下地層をNiとし、無機酸化物層に対する下地層の割合を8.98×10-9体積%、金属層を形成せず、無機酸化物層内酸素原子濃度比率が4atomic%となるように1000.0nmの無機酸化物層を形成した以外は、実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。バリア性皮膜を形成し、積層フィルムとした。得られた積層フィルムを用いて、積層材料および袋状容器を作製した。
【0063】
【0064】
以上の各実施例の結果より明らかなように、本発明の積層フィルムは、十字折り目を作製した後もガスバリア性能に優れ、密着強度も高く良好なものであった。
本発明の積層フィルムは、十字折り目を作製した後も優れたガスバリア性を有するため、内容物を酸化、湿気から守る包装材料のみならず、成型工程後のガスバリア性が要求される遮熱材あるいは断熱材としても有用である。