(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068704
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】両回転式スクロール型圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04C 18/02 20060101AFI20240514BHJP
【FI】
F04C18/02 311W
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179239
(22)【出願日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 洋介
(72)【発明者】
【氏名】本田 和也
(72)【発明者】
【氏名】橋本 友次
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕之
(72)【発明者】
【氏名】管原 彬人
(72)【発明者】
【氏名】武藤 圭史朗
【テーマコード(参考)】
3H039
【Fターム(参考)】
3H039AA02
3H039AA13
3H039BB04
3H039BB11
3H039CC02
3H039CC03
3H039CC11
3H039CC27
(57)【要約】
【課題】高い耐久性を発揮可能な両回転式スクロール型圧縮機を提供する。
【解決手段】本発明の両回転式スクロール型圧縮機は、ハウジング6がスクロール室65、貯留室8及び区画壁60bを有している。駆動スクロール30は、駆動機構10によって駆動軸心O1周りに回転駆動される。従動スクロール40は、駆動スクロール30に対して偏心しつつ従動軸心O2周りで駆動スクロール30及び従動機構20によって回転従動される。区画壁60bには支持部64が設けられている。駆動スクロール30は、支持部64との間に配置された軸受51によって駆動軸心O1周りで回転駆動可能に支持部64に支持されている。従動スクロール40は、従動軸部55によって従動軸心O2周りで回転従動可能に支持部64に支持されている。支持部64には、貯留室8内の液冷媒18を摺動部位及び軸受51の少なくとも一方に供給する供給路2aが形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング、駆動機構、駆動スクロール、従動スクロール及び従動機構を備え、
前記ハウジングは、前記駆動スクロール及び前記従動スクロールが収容されるスクロール室と、外部から吸入された冷媒を気液分離しつつ潤滑油を含む液冷媒を内部に貯留する貯留室と、前記貯留室と前記スクロール室とを区画する区画壁とを有し、
前記駆動スクロールは、前記駆動機構によって駆動軸心周りに回転駆動され、
前記従動スクロールは、前記駆動スクロールに対して偏心しつつ従動軸心周りで前記駆動スクロール及び前記従動機構によって回転従動され、
前記区画壁には、前記駆動軸心を中心としつつ前記スクロール室内に突出する支持部が設けられ、
前記駆動スクロールは、前記駆動スクロールと前記支持部との間に配置された軸受によって前記駆動軸心周りで回転駆動可能に前記支持部に支持され、
前記従動スクロールは、前記駆動スクロール及び前記駆動軸心に対して偏心しつつ前記従動軸心方向に延びる従動軸部によって前記従動軸心周りで回転従動可能に支持され、
前記駆動スクロールと前記従動スクロールとにより、スクロール圧縮部が構成され、
前記支持部及び前記従動軸部の少なくとも一方には、前記貯留室内に連通する供給路が形成され、
前記供給路は、前記貯留室内の前記液冷媒を前記スクロール圧縮部の摺動部位及び前記軸受の少なくとも一方に供給することを特徴とする両回転式スクロール型圧縮機。
【請求項2】
前記供給路は、前記液冷媒を前記支持部と前記軸受との間に供給する請求項1記載の両回転式スクロール圧縮機。
【請求項3】
前記駆動スクロールは、前記従動スクロールを挟んで前記区画壁の反対側に位置する駆動端板と、前記駆動端板と一体をなし、前記従動スクロールに向かって渦巻状に突出する駆動渦巻体と、前記駆動渦巻体よりも外周で前記駆動端板に対して前記駆動軸心方向に接続されるとともに、前記支持部に支持されるカバー体とを有し、
前記従動スクロールは、前記カバー体と摺動可能に前記駆動渦巻体と前記カバー体との間に配置された従動端板と、前記従動端板から前記駆動端板に向かって渦巻状に突出する従動渦巻体とを有し、
前記供給路は、前記液冷媒を前記カバー体と前記従動端板との間に供給する請求項1又は2記載の両回転式スクロール型圧縮機。
【請求項4】
前記従動軸部が挿通されたブッシュを備え、
前記従動スクロールと前記ブッシュとの間には、ブッシュ用軸受が設けられ、
前記供給路は、前記液冷媒を前記ブッシュ用軸受と前記ブッシュとの間に供給する請求項3記載の両回転式スクロール型圧縮機。
【請求項5】
前記供給路は複数である請求項1又は2記載の両回転式スクロール型圧縮機。
【請求項6】
前記ハウジングは、前記貯留室内に位置する底壁を有し、
前記底壁は、前記ハウジングを前記駆動軸心方向から見た際、前記支持部と重なる位置に配置されている請求項1記載の両回転式スクロール型圧縮機。
【請求項7】
前記駆動スクロールと前記従動スクロールとによって圧縮室が形成され、
前記駆動スクロール、前記従動スクロール及び前記支持部を前記駆動軸心方向から見た際において、
最外周側に形成される前記圧縮室が閉鎖された瞬間に前記駆動渦巻体の外側面と前記従動渦巻体の内側面とが最外周側で接する第1接点と、前記駆動渦巻体の内側面と前記従動渦巻体の外側面とが最外周側で接する第2接点と、前記第1接点と前記第2接点とを直線状に結ぶ仮想線とを規定し、かつ、前記仮想線に対して前記駆動スクロールの径方向の一方側に直交する方向を前記駆動スクロールに作用する圧縮荷重の荷重方向と規定し、
前記支持部には、前記カバー体における第1荷重点から、前記荷重方向と同方向に前記駆動スクロールの前記圧縮荷重が作用するとともに、前記従動軸部における第2荷重点から、前記第2荷重点を通って前記従動軸部の外周面と接する接線に対して前記従動スクロールの径方向に直交する方向に前記従動スクロールの前記圧縮荷重が作用し、
前記駆動スクロール及び前記従動スクロールが1回転する間において、前記荷重方向は前記駆動スクロール及び前記従動スクロールの回転方向に変動し、
前記支持部に対し、前記駆動スクロールの前記圧縮荷重が作用する方向に延びる第1仮想荷重線と、前記従動スクロールの前記圧縮荷重が作用する方向に延びる第2仮想荷重線と、前記第1荷重点と前記第2荷重点と直線状に結ぶ仮想接続線とを規定することにより、
前記供給路は、前記第1仮想荷重線と前記第2仮想荷重線と前記支持部の外周縁とによって挟まれた第1領域と、前記第1仮想荷重線と前記第2仮想荷重線と前記仮想接続線とによって挟まれた第2領域と、前記第1仮想荷重線と前記第2仮想荷重線と前記接線とによって挟まれた第3領域とを避けつつ前記支持部に形成されている請求項3記載の両回転式スクロール型圧縮機。
【請求項8】
前記支持部に対し、前記駆動軸心を通って前記駆動スクロールの径方向に直線状に延び、かつ、前記第1仮想荷重線と交差する仮想基準線を規定することにより、
前記供給路は、前記仮想基準線よりも前記第1荷重点及び前記第2荷重点に近い位置に形成されている請求項7記載の両回転式スクロール型圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は両回転式スクロール型圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来のスクロール型圧縮機が開示されている。このスクロール型圧縮機は、ハウジングと、電動モータと、回転軸と、固定スクロールと、可動スクロールとを備えている。
【0003】
ハウジングは、モータ室と、貯留室と、区画壁とを有している。モータ室には、電動モータ及び回転軸が収容されている。貯留室は、ハウジングの外部から吸入された冷媒を気液分離しつつ潤滑油を含む液冷媒を内部に貯留する。区画壁は、貯留室とモータ室との間に配置されており、貯留室とモータ室とを区画している。また、区画壁には、モータ室内に筒状に突出する支持部が設けられている。支持部の内部には、軸受が設けられており、この軸受を介して回転軸の端部が支持部に支持されている。これにより、回転軸はモータ室内において回転軸心周りで回転可能となっている。
【0004】
固定スクロールは、モータ室及び貯留室とは異なる位置でハウジング内に固定されている。可動スクロールは、回転軸における支持部とは反対側となる端部に接続されている。可動スクロールは、電動モータ及び回転軸によって、固定スクロールに対して回転駆動可能となっている。
【0005】
また、このスクロール型圧縮機では、ハウジング内に供給路が設けられている。供給路は、吸入口と内部連通管とで構成されている。吸入口は区画壁に形成されており、貯留室と支持部の内部とを連通している。内部連通管は貯留室内に配置されている。内部連通管は、吸入口と接続しつつ、貯留室の底部に向かって延びている。
【0006】
このスクロール型圧縮機では、貯留室内に貯留された液冷媒及び潤滑油が供給路を通じてモータ室内に流通する。そして、モータ室内に流通した液冷媒は、電動モータ等の熱によって気化しつつ固定スクロールと可動スクロールとの間に吸入され、固定スクロールと可動スクロールとによって圧縮される。
【0007】
また、このスクロール型圧縮機では、供給路を流通した潤滑油が軸受と回転軸との間の他、支持部と軸受との間に供給される。こうして、このスクロール型圧縮機では、軸受と回転軸との間等を潤滑油によって潤滑することができる。この結果、軸受及び回転軸の摩耗が防止されるため、この圧縮機では耐久性が高くなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この種のスクロール型圧縮機では、より高い耐久性が要求される。この点、上記従来のスクロール型圧縮機では、軸受と回転軸との間等に対しては、供給路から潤滑油とともに液冷媒も供給される。換言すれば、軸受と回転軸との間等に供給される潤滑油は、液冷媒が混合しており、液冷媒によって一定程度希釈された状態にある。これにより、このスクロール型圧縮機では、たとえ供給路から潤滑油が供給されても、このような潤滑油では軸受と回転軸との間等に潤滑不足が生じるおそれがあるため、耐久性を向上させることが難しい。
【0010】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、高い耐久性を発揮可能な両回転式スクロール型圧縮機を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の両回転式スクロール型圧縮機は、ハウジング、駆動機構、駆動スクロール、従動スクロール及び従動機構を備え、
前記ハウジングは、前記駆動スクロール及び前記従動スクロールが収容されるスクロール室と、外部から吸入された冷媒を気液分離しつつ潤滑油を含む液冷媒を内部に貯留する貯留室と、前記貯留室と前記スクロール室とを区画する区画壁とを有し、
前記駆動スクロールは、前記駆動機構によって駆動軸心周りに回転駆動され、
前記従動スクロールは、前記駆動スクロールに対して偏心しつつ従動軸心周りで前記駆動スクロール及び前記従動機構によって回転従動され、
前記区画壁には、前記駆動軸心を中心としつつ前記スクロール室内に突出する支持部が設けられ、
前記駆動スクロールは、前記駆動スクロールと前記支持部との間に配置された軸受によって前記駆動軸心周りで回転駆動可能に前記支持部に支持され、
前記従動スクロールは、前記駆動スクロール及び前記駆動軸心に対して偏心しつつ前記従動軸心方向に延びる従動軸部によって前記従動軸心周りで回転従動可能に支持され、
前記駆動スクロールと前記従動スクロールとにより、スクロール圧縮部が構成され、
前記支持部及び前記従動軸部の少なくとも一方には、前記貯留室内に連通する供給路が形成され、
前記供給路は、前記貯留室内の前記液冷媒を前記スクロール圧縮部の摺動部位及び前記軸受の少なくとも一方に供給することを特徴とする。
【0012】
本発明の両回転式スクロール型圧縮機では、支持部及び従動軸部の少なくとも一方に供給路が形成されており、供給路内には液冷媒が流通する。この際、液冷媒に含まれる潤滑油についても供給路内を流通する。ここで、支持部には軸受を介して駆動スクロールが回転駆動可能に支持されている。また、従動軸部は従動スクロールを回転従動可能に支持している。そして、駆動スクロールと従動スクロールとによってスクロール摺動部が構成されている。これらのため、この両回転式スクロール型圧縮機では、作動時にスクロール摺動部の摺動部位からの熱を受けて支持部及び従動軸部が発熱する。
【0013】
このため、供給路内を流通する液冷媒は、支持部や従動軸部の熱によって供給路内で加熱されて気化し易くなる。こうして、この両回転式スクロール型圧縮機では、摺動部位及び/又は軸受に対して、供給路を経て乾き度が向上した状態で液冷媒が供給される。この結果、供給路から摺動部位及び/又は軸受に供給される潤滑油は液冷媒が含まれ難い状態となることから、この潤滑油によって摺動部位又は軸受を潤滑することができる。このため、この両回転式スクロール型圧縮機では、摺動部位及び/又は軸受の摩耗を好適に抑制できる。
【0014】
したがって、本発明の両回転式スクロール型圧縮機は高い耐久性を発揮する。
【0015】
供給路は、液冷媒を支持部と軸受との間に供給することが好ましい。この場合、液冷媒を支持部と軸受との間にも、供給路を経て乾き度が向上した状態で液冷媒が供給される。このため、支持部と軸受との間に供給された潤滑油によって支持部と軸受との間を潤滑することができることから、支持部及び軸受の摩耗を好適に抑制できる。このため、この両回転式スクロール型圧縮機では耐久性をより高くすることができる。
【0016】
駆動スクロールは、従動スクロールを挟んで区画壁の反対側に位置する駆動端板と、駆動端板と一体をなし、従動スクロールに向かって渦巻状に突出する駆動渦巻体と、駆動渦巻体よりも外周で駆動端板に対して駆動軸心方向に接続されるとともに、支持部に支持されるカバー体とを有し得る。また、従動スクロールは、カバー体と摺動可能に駆動渦巻体とカバー体との間に配置された従動端板と、従動端板から駆動端板に向かって渦巻状に突出する従動渦巻体とを有し得る。そして、供給路は、液冷媒をカバー体と従動端板との間に供給することが好ましい。
【0017】
この場合、カバー体と従動端板との間は、スクロール圧縮部の摺動部位に含まれることになる。これにより、カバー体と従動端板との間を潤滑油によって好適に潤滑することができるため、カバー体及び従動端板の摩耗を好適に抑制できる。これにより、この両回転式スクロール型圧縮機では耐久性をより一層高くすることができる。
【0018】
また、この場合、従動軸部が挿通されたブッシュを備え得る。さらに、従動スクロールとブッシュとの間には、ブッシュ用軸受が設けられ得る。そして、供給路は、液冷媒をブッシュ用軸受とブッシュとの間に供給することが好ましい。これにより、潤滑油によってブッシュ用軸受とブッシュとの間を潤滑できるため、ブッシュ用軸受及びブッシュの摩耗を好適に抑制できる。
【0019】
供給路は複数であることが好ましい。この場合には、供給路を小径化しつつも供給路によって供給される液冷媒及び潤滑油の流量を確保することができる。ここで、供給路が小径化することにより、供給路内を液冷媒が流通する際、供給路の内周面と液冷媒との接触面積が増加する。これにより、この両回転式スクロール型圧縮機では、供給路内を流通する液冷媒を支持部や従動軸部の熱でより好適に加熱できるため、液冷媒の乾き具合をより向上させることができる。
【0020】
ハウジングは、貯留室内に位置する底壁を有し得る。そして、底壁は、ハウジングを駆動軸心方向から見た際、支持部と重なる位置に配置されていることが好ましい。この場合には、供給路の構成を簡素化しつつも、供給路について、底壁の近傍で貯留室内に連通させることができる。これにより、この両回転式スクロール型圧縮機では、貯留室内における潤滑油の貯留量が少ない場合であっても、貯留室内の潤滑油を供給路に好適に流通させることが可能となる。
【0021】
駆動スクロールと従動スクロールとによって圧縮室が形成され、
駆動スクロール、従動スクロール及び支持部を駆動軸心方向から見た際において、
最外周側に形成される圧縮室が閉鎖された瞬間に駆動渦巻体の外側面と従動渦巻体の内側面とが最外周側で接する第1接点と、駆動渦巻体の内側面と従動渦巻体の外側面とが最外周側で接する第2接点と、第1接点と第2接点とを直線状に結ぶ仮想線とを規定し、かつ、仮想線に対して駆動スクロールの径方向の一方側に直交する方向を駆動スクロールに作用する圧縮荷重の荷重方向と規定し、
支持部には、カバー体における第1荷重点から、荷重方向と同方向に駆動スクロールの圧縮荷重が作用するとともに、従動軸部における第2荷重点から、第2荷重点を通って従動軸部の外周面と接する接線に対して従動スクロールの径方向に直交する方向に従動スクロールの圧縮荷重が作用し、
駆動スクロール及び従動スクロールが1回転する間において、荷重方向は駆動スクロール及び従動スクロールの回転方向に変動し、
支持部に対し、駆動スクロールの圧縮荷重が作用する方向に延びる第1仮想荷重線と、従動スクロールの圧縮荷重が作用する方向に延びる第2仮想荷重線と、第1荷重点と第2荷重点と直線状に結ぶ仮想接続線とを規定することにより、
供給路は、第1仮想荷重線と第2仮想荷重線と支持部の外周縁とによって挟まれた第1領域と、第1仮想荷重線と第2仮想荷重線と仮想接続線とによって挟まれた第2領域と、第1仮想荷重線と第2仮想荷重線と接線とによって挟まれた第3領域とを避けつつ支持部に形成されていることが好ましい。
【0022】
支持部において、第1領域、第2領域及び第3領域には、カバー体を通じて駆動スクロール圧縮荷重が強く作用するとともに、従動軸部を通じて従動スクロールの圧縮荷重が強く作用する。このため、第1領域、第2領域及び第3領域を避けて支持部に供給路を形成することにより、第1領域、第2領域及び第3領域での剛性の低下を抑制できる。このため、この両回転式スクロール型圧縮機では、支持部に供給路を形成しつつも、支持部が駆動スクロール及び従動スクロールの圧縮荷重を好適に支持することができる。
【0023】
また、この場合、支持部に対し、駆動軸心を通って駆動スクロールの径方向に直線状に延び、かつ、第1仮想荷重線と交差する仮想基準線を規定することにより、供給路は、仮想基準線よりも第1荷重点及び第2荷重点に近い位置に形成されていることが好ましい。
【0024】
上述のように、支持部において第1領域、第2領域及び第3領域には圧縮荷重が強く作用するものの、当該箇所での支持部の発熱も大きくなる。このため、仮想基準線よりも第1荷重点及び第2荷重点に近い位置で支持部に供給路を形成することにより、第1領域、第2領域及び第3領域を避けつつも、第1領域、第2領域及び第3領域に供給路を可及的に近づけることができる。これにより、供給路内の液冷媒について、より一層乾き具合を向上させることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の両回転式スクロール型圧縮機は高い耐久性を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、実施例1の両回転式スクロール型圧縮機の断面図である。
【
図2】
図2は、実施例1の両回転式スクロール型圧縮機の要部拡大断面図である。
【
図3】
図3は、実施例1の両回転式スクロール型圧縮機に係り、
図1のA-A断面を示す断面図である。
【
図4】
図4は、実施例1の両回転式スクロール型圧縮機に係り、
図1のA-A断面を示す断面図である。
【
図5】
図5は、実施例1の両回転式スクロール型圧縮機に係り、
図1のA-A断面を示す断面図である。
【
図6】
図6は、実施例1の両回転式スクロール型圧縮機に係り、
図2のB-B断面を示す要部拡大断面図である。
【
図7】
図7は、実施例1の両回転式スクロール型圧縮機に係り、
図2のB-B断面を示す要部拡大断面図である。
【
図8】
図8は、実施例2の両回転式スクロール型圧縮機の断面図である。
【
図9】
図9は、実施例2の両回転式スクロール型圧縮機に係り、
図8のC-C断面を示す要部拡大断面図である。
【
図10】
図10は、実施例3の両回転式スクロール型圧縮機に係り、
図2と同様の要部拡大断面図である。
【
図11】
図11は、実施例4の両回転式スクロール型圧縮機に係り、
図6と同様の要部拡大断面図である。
【
図12】
図12は、実施例4の両回転式スクロール型圧縮機に係り、
図7と同様の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を具体化した実施例1~4を図面を参照しつつ説明する。実施例1~4の両回転式スクロール型圧縮機(以下、単に圧縮機という。)は、図示しない車両に搭載されており、車両の空調装置を構成している。
【0028】
(実施例1)
図1に示すように、実施例1の圧縮機は、ハウジング6、電動モータ10、駆動スクロール30、従動スクロール40、ブッシュ53及び従動機構20を備えている。電動モータ10は本発明における「駆動機構」の一例である。
【0029】
本実施例では、
図1に示す実線矢印によって、圧縮機の前後方向を規定している。そして、
図2以降では、
図1に対応して圧縮機の前後方向を規定している。また、本実施例の圧縮機は、
図1、
図2、
図8及び
図10の各紙面の下方が自己の下方となる姿勢で車両に搭載されている。なお、前後方向は説明の便宜のための一例であり、圧縮機は搭載される車両に応じて、自己の姿勢を適宜変更可能である。
【0030】
図1及び
図2に示すように、ハウジング6は、ハウジング本体60と、第1ハウジングカバー61と、第2ハウジングカバー62と、アタッチメント63とによって構成されている。ハウジング本体60及び第1、2ハウジングカバー61、62は、アルミニウム合金製である。一方、アタッチメント63は樹脂製である。
【0031】
ハウジング本体60は、第1外周壁60a及び区画壁60bを有する有底筒状部材である。第1外周壁60aは、駆動軸心O1を中心とする円筒状をなしている。駆動軸心O1は前後方向と平行である。また、第1外周壁60aは内周面601を有している。
【0032】
図2に示すように、区画壁60bは、ハウジング本体60の後端に位置している。区画壁60bは、駆動軸心O1と直交して略円形平板状に延びている。区画壁60bの外周縁は、第1外周壁60aの後端に接続している。区画壁60bの内面中央には第1支持部64が形成されている。第1支持部64は、本発明における「支持部」の一例である。第1支持部64は、駆動軸心O1を中心とする略円柱状をなしており、区画壁60bの内面中央から前方、すなわち、後述するスクロール室65内に突出している。
【0033】
図6及び
図7に示すように、第1支持部64には、第1供給路2a及び第2供給路2bが形成されている。第1供給路2a及び第2供給路2bは、本発明における「供給路」の一例である。
図1及び
図2に示すように、第1供給路2aは、駆動軸心O1と平行に延びており、第1支持部64を駆動軸心O1方向に円柱状に貫通している。
図1及び
図2では図示を省略するものの、第2供給路2bについても、第1供給路2aと同様に第1支持部64を駆動軸心O1方向に貫通している。これにより、第1、2供給路2a、2bは、前端が第1支持部64の前端面に開口しており、後端が区画壁60bの後端面、ひいては、ハウジング本体60の後端面に開口している。なお、第1、2供給路2a、2bについての詳細は後述する。
【0034】
さらに、第1支持部64において、第1、2供給路2a、2bとは異なる位置には、ピン孔4aが形成されている。ピン孔4aは、従動軸心O2を中心とする円柱状をなしており、第1支持部64の前端面に開口しつつ、第1支持部64内を後方に向かって直線状に延びている。従動軸心O2は、駆動軸心O1に対して偏心しつつ駆動軸心O1と平行に延びている。つまり、従動軸心O2も前後方向に平行である。また、ピン孔4aは第1支持部64を前後方向に貫通しておらず、ピン孔4aの後端は第1支持部64内に位置している。
【0035】
また、区画壁60bにおいて、第1支持部64よりも外周となる個所には、第1連通口66が形成されている。第1連通口66は、区画壁60bを駆動軸心O1方向に貫通している。
【0036】
図1に示すように、第1ハウジングカバー61は、ハウジング本体60の前方に配置されている。第1ハウジングカバー61は、駆動軸心O1と直交して略円形平板状に延びている。第1ハウジングカバー61は、その外周縁がハウジング本体60の第1外周壁60aの前端に当接している。これにより、第1ハウジングカバー61は、ハウジング本体60を前方から塞いでいる。こうして、ハウジング本体60内にスクロール室65が形成されている。
【0037】
第1ハウジングカバー61の内面中央には、第2支持部67が形成されている。第2支持部67は、駆動軸心O1を中心とする円筒状をなしており、第1ハウジングカバー61の内面中央から後方に突出している。第2支持部67には、ニードルベアリング14の外輪が嵌入している。
【0038】
また、第1ハウジングカバー61には、吐出連通口68が形成されている。吐出連通口68は、第1ハウジングカバー61の中央に位置しており、第1ハウジングカバー61を駆動軸心O1方向に貫通している。吐出連通口68は、後述する吐出室13と連通している。吐出連通口68には、配管H1が接続されており、吐出室13に吐出された冷媒ガスを凝縮器(図示略)に向けて流通させる。
【0039】
第2ハウジングカバー62は、ハウジング本体60の後方に配置されている。第2ハウジングカバー62は、第2外周壁62a及び後壁62bを有する有底筒状部材である。第2外周壁62aは、駆動軸心O1を中心とする円筒状をなしており、駆動軸心O1方向に延びている。ここで、第2外周壁62aにおける駆動軸心O1方向の長さは、ハウジング本体60の第1外周壁60aにおける駆動軸心O1方向の長さよりも短くなっている。
【0040】
後壁62bは、第2ハウジングカバー62の後端に位置している。後壁62bは、駆動軸心O1と直交して略円形平板状に延びている。後壁62bの外周縁は、第2外周壁62aの後端に接続している。
【0041】
第2ハウジングカバー62は、第2外周壁62aの前端がハウジング本体60の区画壁60bの後端に当接している。そして、ハウジング6では、上述のように第1ハウジングカバー61がハウジング本体60の第1外周壁60aの前端に当接し、かつ、第2ハウジングカバー62の第2外周壁62aがハウジング本体60の区画壁60bの後端に当接した状態で複数のボルト(図示略)によって、第1ハウジングカバー61、ハウジング本体60及び第2ハウジングカバー62が駆動軸心O1方向で固定されている。こうして、第2ハウジングカバー62は区画壁60bによって前方が塞がれている。これにより、第2ハウジングカバー62内に貯留室8が形成されている。そして、ハウジング6では、駆動軸心O1方向において区画壁60bがスクロール室65と貯留室8との間に位置しており、スクロール室65と貯留室8とを区画している。
【0042】
また、第2ハウジングカバー62において、第2外周壁62aには、吸入連通口69が形成されている。吸入連通口69は、第2外周壁62aを第2ハウジングカバー62の径方向に貫通している。これにより、吸入連通口69は、貯留室8と圧縮機の外部とを連通している。吸入連通口69には、配管H2が接続されている。これにより、貯留室8には、配管H2を通じて蒸発器(図示略)を経た低温低圧の冷媒が吸入される。なお、第2外周壁62aにおいて、駆動軸心O1を挟んで吸入連通口69から第2ハウジングカバー62の径方向に最も離隔した個所を含め、駆動軸心O1を挟んで吸入連通口69の反対側となる個所は、貯留室8の底部を構成している。
【0043】
アタッチメント63は駆動軸心O1と直交して略円形平板状に延びている。アタッチメント63は貯留室8内に配置された状態で区画壁60bに取り付けられている。アタッチメント63には、案内路63aと第2連通口63bとが形成されている。
【0044】
案内路63aは、アタッチメント63の略中央からアタッチメント63の外周縁に向かうようにアタッチメント63の前面、すなわちアタッチメント63における区画壁60b側の面に凹設されている。そして、案内路63aは、アタッチメント63の外周縁においてアタッチメント63の後面、すなわちアタッチメント63における貯留室8側の面に開口している。案内路63aは、アタッチメント63が区画壁60bに取り付けられることにより、第1、2供給路2a、2bと連通している。これにより、第1、2供給路2a、2bは、案内路63aを介して貯留室8内に連通している。ここで、案内路63aは、アタッチメント63の外周縁でアタッチメント63の後面に開口しているため、第1、2供給路2a、2bは、案内路63aによって貯留室8の底部と連通している。
【0045】
第2連通口63bは、アタッチメント63において、案内路63aとは異なる位置に形成されており、アタッチメント63を駆動軸心O1方向に貫通している。第2連通口63bは、アタッチメント63が区画壁60bに取り付けられることにより、第1連通口66と整合しつつ第1連通口66と連通する。これにより、第1連通口66及び第2連通口63bによってスクロール室65と貯留室8とが連通している。
【0046】
電動モータ10はスクロール室65内に収容されている。これにより、スクロール室65は、電動モータ10を収容するモータ室を兼ねている。また、後述するように、スクロール室65には貯留室8から冷媒ガスが吸入される。このため、スクロール室65は、吸入室も兼ねている。
【0047】
電動モータ10は、ステータ17及びロータ11によって構成されている。ステータ17は、駆動軸心O1を中心とする円筒状であり、巻き線17aを有している。ステータ17は、第1外周壁60aの内周面601に嵌入することにより、ハウジング本体60、ひいてはハウジング6に固定されている。
【0048】
ロータ11は、駆動軸心O1周りで円筒状をなしており、ステータ17内に配置されている。詳細な図示を省略するものの、ロータ11は、ステータ17に対応する複数個の永久磁石と、各永久磁石を固定する積層鋼板とで構成されている。
【0049】
駆動スクロール30はアルミニウム合金製である。駆動スクロール30はスクロール室65内に収容されている。駆動スクロール30は、駆動端板31、駆動渦巻体33及びカバー体35を有している。
【0050】
駆動端板31は、駆動軸心O1及び従動軸心O2と直交して略円板状に延びている。駆動端板31は、スクロール室65内において第1ハウジングカバー61と対向する前面311と、前面311の反対側に位置する後面312とを有している。前面311の中央には、第1ハウジングカバー61に向かって突出する第1ボス34が形成されている。第1ボス34は、駆動軸心O1を中心とする円筒状をなしている。
【0051】
また、駆動端板31には、吐出口38が形成されている。吐出口38は、駆動端板31において、第1ボス34内となる個所に配置されており、駆動端板31を前後方向に貫通している。
【0052】
さらに、第1ボス34内において、駆動端板31には、吐出リード弁57及びリテーナ58が固定ピン59によって固定されている。これにより、吐出リード弁57は吐出口38を開閉可能となっており、また、リテーナ58は、吐出リード弁57の開度を調整可能となっている。
【0053】
駆動渦巻体33は駆動端板31と一体をなしており、駆動端板31の後面312から後方、すなわち従動スクロール40に向かって駆動軸心O1及び従動軸心O2と平行に延びている。
図3~
図5に示すように、駆動渦巻体33は、駆動端板31の中心側を渦巻中心としつつ、渦巻中心から外周に向かって渦巻状に延びている。
【0054】
図1及び
図2に示すように、カバー体35は、本体部35aと周壁部35bを有しており、有底の筒状をなしている。本体部35aは、駆動軸心O1及び従動軸心O2と直交して略円板状に延びている。本体部35aの中央には、区画壁60bに向かって突出する第2ボス35cが形成されている。第2ボス35c内には挿通孔351が形成されている。挿通孔351は、第2ボス35c内を含め本体部35aを駆動軸心O1方向に貫通している。これにより、第2ボス35cは駆動軸心O1を中心とする円筒状をなしている。
【0055】
挿通孔351内には第1滑り軸受51が設けられている。第1滑り軸受51は本発明における「軸受」の一例である。第1滑り軸受51は、駆動軸心O1を中心とする円筒状をなしており、外径が挿通孔351の内径とほぼ同径となっており、内径が第1支持部64の外径とほぼ同径となっている。なお、第1滑り軸受51に換えて、玉軸受等を本発明における「軸受」として採用しても良い。
【0056】
また、本体部35aにおいて、第2ボス35cよりも外周となる個所には、吸入口35dが形成されている。吸入口35dは本体部35aを駆動軸心O1方向に貫通している。さらに、本体部35aにおいて、第2ボス35cと吸入口35dとの間となる個所には、4つの取付凹部35eが形成されている。各取付凹部35eには、リング22がそれぞれ嵌着されている。なお、
図1等では、4つの取付凹部35e及び4つのリング22のうちの2つを図示している。
【0057】
周壁部35bは、本体部35aの外周縁と接続している。周壁部35bは、駆動軸心O1を中心とする円筒状をなしており、本体部35aから前方に向かって延びている。
【0058】
駆動スクロール30では、カバー体35の周壁部35bを駆動端板31の後面312に向けた状態としつつ、駆動端板31と周壁部35bとでロータ11を挟持している。そして、ロータ11を挟持した状態で駆動端板31、ロータ11及びカバー体35が複数のボルト50によって接続されている。こうして、駆動スクロール30はロータ11と固定され、ロータ11と一体化している。
【0059】
従動スクロール40もアルミニウム合金製である。従動スクロール40は、スクロール室65内、より具体的には駆動スクロール30内に収容されている。従動スクロール40は、従動端板41及び従動渦巻体43を有している。
【0060】
従動端板41は、駆動軸心O1及び従動軸心O2と直交して略円板状に延びている。従動端板41は前面411と後面412とを有している。前面411は、駆動スクロール30内において駆動端板31の後面312と対向している。後面412は、前面411の反対側に位置しており、カバー体35の本体部35aと対向している。
【0061】
また、従動端板41には、収容凹部41aが形成されている。収容凹部41aは従動端板41の後面412から前方に向かって円柱状に凹設されている。収容凹部41a内には、第2滑り軸受52を介してブッシュ53が設けられている。第2滑り軸受52は、本発明における「ブッシュ用軸受」の一例である。ブッシュ53には、従動ピン55が挿通されつつ保持されている。従動ピン55は、本発明における「従動軸部」の一例である。なお、第2滑り軸受52に換えて、玉軸受等を介してブッシュ53が収容凹部41a内に設けられても良い。
【0062】
従動ピン55は鉄鋼製であり、ブッシュ53における中心よりも偏心した位置でブッシュ53に保持されている。従動ピン55は従動軸心O2を中心とする円柱状をなしており、ブッシュ53、ひいては従動端板41から第1支持部64に向かって後方に突出している。
【0063】
さらに、従動端板41において、収容凹部41aよりも外周となる個所には、4つの固定孔41bが形成されている。各固定孔41bは、それぞれ各リング22と対向する位置に配置されている。各固定孔41bにはそれぞれ自転阻止ピン21が固定されている。なお、
図1等では、4つの固定孔41b及び4つの自転阻止ピン21のうちの2つを図示している。
【0064】
従動渦巻体43は従動端板41と一体をなしており、従動端板41の前面411から前方、すなわち駆動端板31に向かって駆動軸心O1及び従動軸心O2と平行に延びている。
図3~
図5に示すように、従動渦巻体43は、従動端板41の中心側を渦巻中心としつつ、渦巻中心から外周に向かって渦巻状に延びている。
【0065】
図1及び
図2に示す従動機構20は、4つの自転阻止ピン21と4つのリング22とで構成されている。ここで、自転阻止ピン21及びリング22は、それぞれ3つ以上であればその個数は適宜設計可能である。また、各取付凹部35e及び各固定孔41bは、自転阻止ピン21及びリング22の個数に対応して形成される。
【0066】
この圧縮機では、駆動スクロール30内に従動スクロール40を収容した状態で、駆動スクロール30の駆動渦巻体33と、従動スクロール40の従動渦巻体43とを噛合させている。また、各自転阻止ピン21を各リング22内に進入させている。こうして、駆動スクロール30と従動スクロール40とが前後方向で組み付けられることにより、駆動スクロール30と従動スクロール40とはスクロール圧縮部100を構成している。また、駆動スクロール30と従動スクロール40とは、双方の間に2つの圧縮室12(
図3及び
図4参照)を形成している。なお、より詳細には、駆動渦巻体33と従動渦巻体43とが噛合され、かつ、各自転阻止ピン21を各リング22内に進入された後に、駆動スクロール30では、各ボルト50によって、駆動端板31、ロータ11及びカバー体35を接続している。
【0067】
そして、駆動スクロール30と従動スクロール40とを組み付けた後、駆動スクロール30は、駆動端板31の第1ボス34がニードルベアリング14の内輪に内嵌される。これにより、第1ボス34はニードルベアリング14を介して第1ハウジングカバー61の第2支持部67に回転可能に支持されている。また、駆動スクロール30は、カバー体35の挿通孔351内に第1滑り軸受51を挿通させる。これにより、カバー体35の第2ボス35c内に第1支持部64を進入させた状態で、第2ボス35c、ひいてはカバー体35は第1滑り軸受51を介して第1支持部64に回転可能に支持されている。こうして、駆動スクロール30は、第1支持部64と第2支持部67との両方によってハウジング6に駆動軸心O1周りで回転可能に支持されている。
【0068】
また、第1ボス34が第2支持部67に支持されることにより、ハウジング6内には、第1ボス34の内周面に囲まれ、かつ第1ハウジングカバー61と駆動端板31とに挟まれた空間によって、吐出室13が形成されている。
【0069】
さらに、駆動スクロール30では、カバー体35及びロータ11によって、スクロール室65と各圧縮室12とが区画されている。また、吸入口35dによって、スクロール室65と各圧縮室12とが連通している。
【0070】
一方、従動スクロール40では、従動ピン55が第1支持部64のピン孔4a内に挿通される。これにより、従動スクロール40は、従動ピン55によって第1支持部64に従動軸心O2周りで回転可能に支持されている。つまり、駆動スクロール30と異なり、従動スクロール40は、第1支持部64のみによってハウジング6に従動軸心O2周りで回転可能に支持されている。
【0071】
また、第1支持部64が第2ボス35c内に進入し、かつ、ピン孔4aに従動ピン55が挿通されることにより、第1供給路2a及び第2供給路2bの各前端は、挿通孔351内、ひいてはカバー体35内において、第2滑り軸受52及びブッシュ53と前後方向で対向している。
【0072】
以上のように構成されたこの圧縮機では、蒸発器を経た低温低圧の冷媒が配管H2から吸入連通口69を通じて貯留室8内に吸入され、貯留室8内で気液分離される。つまり、貯留室8は、アキュムレータとして機能する。これにより、気相の冷媒である冷媒ガスは、
図2の破線矢印で示すように、貯留室8から第2連通口63b及び第1連通口66を経て、スクロール室65内に流通する。一方、液相の冷媒である液冷媒18は、貯留室8内に貯留される。また、蒸発器を経た冷媒に含まれた潤滑油についても液冷媒18とともに貯留室8内に貯留される。このため、貯留室8内の液冷媒18は潤滑油を含んだ状態にある。
【0073】
また、この圧縮機では、電動モータ10が作動し、ロータ11が回転することにより、スクロール室65内において、駆動スクロール30が駆動軸心O1周りで回転駆動する。つまり、駆動スクロール30とロータ11とは一体で回転駆動する。この際、従動機構20において、各自転阻止ピン21は各リング22の内周面に摺接しつつ各リング22を各自転阻止ピン21の中心周りで相対的に回転させる。こうして、従動機構20は、従動スクロール40に駆動スクロール30のトルクを伝達する。
【0074】
その結果、従動スクロール40は、従動軸心O2周りで駆動スクロール30及び従動機構20によって回転従動される。この際、従動機構20は、従動スクロール40が自転することを規制する。これにより、従動スクロール40は駆動スクロール30に対して従動軸心O2周りで相対的に公転する。
【0075】
これにより、駆動スクロール30及び従動スクロール40は、各圧縮室12の容積を変化させる。このため、スクロール室65内の冷媒ガスは、吸入口35dによって各圧縮室12に吸入され、各圧縮室12で圧縮される。そして、各圧縮室12において吐出圧力まで圧縮された冷媒ガスは、吐出口38から吐出室13に吐出され、さらに、吐出連通口68から配管H1、ひいては凝縮器に吐出される。こうして、車両用空調装置による空調が行われる。
【0076】
また、この圧縮機では、
図2の実線矢印で示すように、貯留室8内の液冷媒18及び潤滑油が案内路63aを経て第1、2供給路2a、2b内を流通する。ここで、第1、2供給路2a、2bは、第1支持部64に形成されており、第1支持部64には、上述のように駆動スクロール30及び従動スクロール40が回転可能に支持されている。このため、駆動スクロール30が回転駆動することにより、第1支持部64は第1滑り軸受51との摺動摩擦によって発熱する。また、従動スクロール40が回転従動することにより、従動ピン55はブッシュ53との摺動摩擦によって発熱する。この際、従動ピン55自体も摺動摩擦によって発熱するため、従動ピン55からの伝熱によって第1支持部64は発熱する。
【0077】
これらのため、第1、2供給路2a、2b内を流通する液冷媒は、その過程で第1支持部64の熱によって加熱されて気化し、冷媒ガスとなる。この冷媒ガスは、第1、2供給路2a、2bから、駆動スクロール30のカバー体35と従動スクロール40の従動端板41との間を流通することにより、吸入口35dから吸入された冷媒ガスと共に各圧縮室12に吸入されて圧縮される。
【0078】
そして、第1、2供給路2a、2bを流通した潤滑油は、第1、2供給路2a、2bから、第1支持部64と第1滑り軸受51との間の他、カバー体35と従動端板41との間に供給される。このカバー体35と従動端板41との間は、本発明における「摺動部位」を構成している。こうして、第1支持部64と第1滑り軸受51との間、及び、カバー体35と従動端板41との間が潤滑油によって潤滑される。
【0079】
また、第1、2供給路2a、2bを流通した潤滑油は、第1滑り軸受51と第2ボス35cとの間、第2滑り軸受52とブッシュ53との間、及び、第2滑り軸受52と収容凹部41aとの間にも供給される。このため、これらの個所についても潤滑油によって潤滑される。また、第1、2供給路2a、2bを流通した潤滑油は、カバー体35と従動端板41との間を経て各圧縮室12内にも供給される。このため、各圧縮室12内において、駆動端板31、駆動渦巻体33、従動端板41及び従動渦巻体43についても潤滑油によって潤滑される。すなわち、駆動渦巻体33と従動端板41との間、従動渦巻体43と駆動端板31との間、及び、駆動渦巻体33と従動渦巻体43との間も、本発明における「摺動部位」を構成している。
【0080】
ここで、この圧縮機では、冷媒ガスを圧縮する際に駆動スクロール30、従動スクロール40及び第1支持部64には圧縮荷重が作用する。以下、
図3~
図7を参照しつつ具体的に説明する。なお、
図3~
図5では、駆動端板31及びロータ11の図示を省略している他、駆動軸心O1及び従動軸心O2の図示を省略している。
【0081】
図3~
図5において、駆動渦巻体33の外側面33a及び内側面33bを形成する駆動側基礎円(インボリュート曲線の基礎円)W1と、従動渦巻体43の外側面43a及び内側面43bを形成する従動側基礎円(インボリュート曲線の基礎円)W2とを二点鎖線で示す。駆動側基礎円W1の中心と従動側基礎円W2の中心とは、駆動軸心O1に直交する方向に所定量ずれている。また、駆動側基礎円W1の中心と従動側基礎円W2の中心との中点は、2つの圧縮室12における全体として中心であり、圧縮荷重の作用点MPとなる。
【0082】
ここで、
図3は、駆動渦巻体33及び従動渦巻体43の最外周側で2つの圧縮室12が閉鎖された瞬間を図示している。この際、駆動渦巻体33及び従動渦巻体43の最外周側において、駆動渦巻体33の外側面33aと従動渦巻体43の内側面43bとが第1接点P1で接しているとともに、駆動渦巻体33の内側面33bと従動渦巻体43の外側面43aとが第2接点P2で接している。
【0083】
また、作用点MPを通って第1接点P1と第2接点P2とを結ぶ仮想線VLを規定する。この仮想線VLの長さは、2つの圧縮室12における全体としての径方向の幅となる。また、図示を省略するものの、仮想線VLを含み、かつ、駆動軸心O1及び従動軸心O2方向に延びる面は、圧縮荷重の受圧面となる。そして、
図3~
図5のように、駆動スクロール30及び従動スクロール40を駆動軸心O1方向、より具体的には、駆動軸心O1方向で駆動スクロール30及び従動スクロール40を後方から見た際、駆動スクロール30には、仮想線VL(受圧面)に対して作用点MPから駆動スクロール30の径方向の一方側に直交する方向に圧縮荷重が作用する。ここで、駆動スクロール30の径方向の一方側は、
図3~
図5における紙面の右方である。また、従動スクロール40には、仮想線VL(受圧面)に対して作用点MPから駆動スクロール30の径方向の他方側に直交する方向、つまり、
図3~
図5における紙面の左方に圧縮荷重が作用する。
図3~
図5では、駆動スクロール30に作用する圧縮荷重の荷重方向と、従動スクロール40に作用する圧縮荷重の荷重方向とについて、それぞれ荷重方向F1、荷重方向F2として示す。
【0084】
図4は、駆動渦巻体33及び従動渦巻体43が
図3に示す位置から、白色矢印で示す駆動スクロール30及び従動スクロール40の回転方向R1に180度回転した瞬間を図示している。
図5は、駆動渦巻体33及び従動渦巻体43が
図3に示す位置から、回転方向R1に360度回転する直前を図示している。
【0085】
図3~
図5に示すように、駆動スクロール30及び従動スクロール40の回転が進むにつれて、第1接点P1及び第2接点P2は、駆動渦巻体33及び従動渦巻体43の内周側に向かって変位する。これに伴い、仮想線VLが傾斜する角度が変化する。また、仮想線VLの長さ、すなわち2つの圧縮室12全体の径方向の幅も変化する。そして、駆動スクロール30及び従動スクロール40の回転が進むことにより、
図5に示すように、2つの圧縮室12は合流して一つの圧縮室12となる。
【0086】
このように、仮想線VLが傾斜する角度が変化することにより、駆動スクロール30に作用する圧縮荷重の荷重方向F1と、従動スクロール40に作用する圧縮荷重の荷重方向F2は、回転方向R1に変動する。ここで、
図4及び
図5では、
図3に示す状態での駆動スクロール30に作用する圧縮荷重の荷重方向F1と、従動スクロール40に作用する圧縮荷重の荷重方向F2とをそれぞれ破線で示している。つまり、駆動スクロール30及び従動スクロール40の回転が進むにつれて、荷重方向F1及び荷重方向F2が回転方向R1に変動する範囲である変動範囲FR1は大きくなる。
【0087】
また、
図6及び
図7に示すように、第1支持部64には、駆動スクロール30及び従動スクロール40が回転可能に支持されているため、駆動スクロール30に作用する圧縮荷重は、カバー体35の第2ボス35c及び第1滑り軸受51を通じて第1支持部64に作用する。また、従動スクロール40に作用する圧縮荷重は、従動ピン55を通じて第1支持部64に作用する。
【0088】
具体的には、
図6及び
図7のように、第1支持部64等を駆動軸心O1方向、より具体的には、駆動軸心O1方向で第1支持部64等を後方から見た際、第1支持部64には、駆動スクロール30に作用する圧縮荷重が第1荷重点P11から上述の荷重方向F1と同方向に作用する。この第1荷重点P11は、第1支持部64の外周面と第1滑り軸受51の内周面とが接する個所であり、駆動スクロール30に作用する圧縮荷重が第1支持部64に作用する際の始点である。
【0089】
また、第1支持部64には、従動スクロール40に作用する圧縮荷重が第2荷重点P12から接線TL1と直交しつつ従動ピン55の径方向の外側に延びる方向に作用する。この第2荷重点P12は、ピン孔4aの内周面と従動ピン55の外周面とが接する個所であり、従動スクロール40に作用する圧縮荷重が第1支持部64に作用する際の始点である。そして、接線TL1は、第2荷重点P12を通って従動ピン55の外周面とピン孔4aの内周面とに接する直線である。
【0090】
ここで、第1支持部64に対し、駆動スクロール30の圧縮荷重が作用する方向に延びる第1仮想荷重線F11と、従動スクロール40の圧縮荷重が作用する方向に延びる第2仮想荷重線F12とを規定する。第1仮想荷重線F11が延びる方向は、
図3~
図5に示す荷重方向F1と同方向である。
【0091】
また、上述のように、荷重方向F1及び荷重方向F2は回転方向R1に変動する。これに伴い、第1仮想荷重線F11及び第2仮想荷重線F12も回転方向R1に変動する。なお、
図7では、
図6における第1仮想荷重線F11及び第2仮想荷重線F12をそれぞれ破線で示している他、第1仮想荷重線F11及び第2仮想荷重線F12の各変動範囲FR2を示している。後述する
図11及び
図12についても同様である。
【0092】
また、
図6及び
図7に示すように、第1支持部64に対し、第1荷重点P11と第2荷重点P12と直線状に結ぶ仮想接続線F13とを規定するとともに、駆動軸心O1を通って駆動スクロール30の径方向及び第1支持部64の径方向に直線状に延び、かつ、第1仮想荷重線F11と交差する仮想基準線L1を規定する。
【0093】
これらの第1仮想荷重線F11、第2仮想荷重線F12、仮想接続線F13及び接線TL1により、第1支持部64には第1~3領域X1~X3が形成される。具体的には、第1領域X1は、第1支持部64の外周面と、第1仮想荷重線F11と、第2仮想荷重線F12とによって挟まれた領域である。第2領域X2は、第1仮想荷重線F11と、第2仮想荷重線F12と、仮想接続線F13とによって挟まれた領域である。そして、第3領域X3は、第1仮想荷重線F11と、第2仮想荷重線F12と接線TL1とによって挟まれた領域である。
【0094】
そして、この圧縮機では、第1、2供給路2a、2bがそれぞれ第1~3領域X1~X3を避けた位置で第1支持部64に形成されている。また、第1、2供給路2a、2bは、第1支持部64において、仮想基準線L1よりも第1荷重点P11及び第2荷重点P12に近い位置に形成されている。
【0095】
上述のように、第1支持部64は、駆動スクロール30が回転駆動するとともに従動スクロール40が回転従動することによって発熱する。特に、第1支持部64において、第1~3領域X1~X3は、第1荷重点P11及び第2荷重点P12に近いため、第1~3領域X1~X3及びその近傍は、駆動スクロール30及び従動スクロール40の各圧縮荷重が作用することで強く摩擦が生じることから、より高温となる。このため、第1~3領域X1~X3に近い位置で第1、2供給路2a、2bを第1支持部64に形成することにより、この圧縮機では、第1、2供給路2a、2b内を流通する液冷媒18が第1支持部64の熱によって好適に加熱されるため、好適に気化する。
【0096】
このように、この圧縮機では、第1、2供給路2a、2b内を液冷媒18及び潤滑油が流通するものの、第1、2供給路2a、2b内での液冷媒18の乾き具合が高くなっている。このため、この圧縮機では、第1支持部64と第1滑り軸受51との間の他、カバー体35と従動端板41との間等に対しては、乾き度が高い状態にある液冷媒18又は既に液冷媒18が気化した冷媒ガスが供給される。これにより、この圧縮機では、第1支持部64と第1滑り軸受51との間の他、カバー体35と従動端板41との間等にそれぞれ供給される潤滑油には液冷媒18が含まれ難くなっている。これにより、この圧縮機では、第1、2供給路2a、2bによって供給された潤滑油によって、第1支持部64と第1滑り軸受51との間、及び、カバー体35と従動端板41との間等をそれぞれ好適に潤滑することが可能となっている。この結果、この圧縮機では、第1支持部64と第1滑り軸受51との間、及び、カバー体35と従動端板41との間等の摺動部位における摩耗を好適に抑制できる。
【0097】
したがって、実施例1の圧縮機は高い耐久性を発揮する。
【0098】
ところで、上述のように、第1支持部64において第1~3領域X1~X3には、駆動スクロール30及び従動スクロール40の各圧縮荷重が強く作用する。この点、この圧縮機では、第1、2供給路2a、2bがそれぞれ第1~3領域X1~X3を避けた位置で第1支持部64に形成されているため、第1、2供給路2a、2bが形成されることによる第1~3領域X1~X3での剛性の低下を防止している。この点においても、この圧縮機は耐久性が高くなっている。
【0099】
また、この圧縮機では、第1支持部64に対して第1、2供給路2a、2bが形成されている。このため、例えば第1支持部64に対して第1供給路2aのみが形成されている場合に比べて、この圧縮機では、第1、2供給路2a、2bを小径化しつつも第1、2供給路によって供給される潤滑油の流量を好適に確保している。ここで、第1、2供給路2a、2bが小径化することにより、第1、2供給路2a、2b内を液冷媒が流通する際における第1、2供給路2a、2bの各内周面、ひいては第1支持部64と、液冷媒との接触面積が増加する。この点においても、この圧縮機では、第1、2供給路2a、2b内の液冷媒18を第1支持部64の熱で十分に加熱できるため、液冷媒18の乾き具合が十分に高くなっている。
【0100】
また、
図6及び
図7に示すように、この圧縮機では、第1支持部64のピン孔4aに挿通された際の従動ピン55の中心、すなわち従動軸心O2が仮想基準線L1よりも第1荷重点P11及び第2荷重点P12側に位置している。つまり、仮想基準線L1に対して、従動ピン55の中心、第1荷重点P11及び第2荷重点P12がいずれも同じ方向(
図6及び
図7における紙面の左側)に存在している。このため、この圧縮機では、従動スクロール40に作用する圧縮荷重によって、ブッシュ53から第1支持部64に対して、第1支持部64の径方向に第1支持部64を押すように荷重が作用するようになっている。
【0101】
さらに、
図1及び
図2に示すように、この圧縮機では、アタッチメント63に案内路63aが形成されている。このため、第1、2供給路2a、2bの形状を簡素化しつつ、案内路63aを通じて第1、2供給路2a、2bを貯留室8の底部に好適に連通させることが可能となっている。これにより、この圧縮機では、貯留室8内に貯留された潤滑油及び液冷媒18が少ない場合であっても、貯留室8内から第1、2供給路2a、2b内に潤滑油及び液冷媒18を好適に流通させることが可能となっている。また、アタッチメント63に案内路63aが形成されることにより、この圧縮機では、案内路63aの設計の自由度も高くなっている。
【0102】
(実施例2)
図8に示すように、実施例2の圧縮機では、ハウジング6に換えてハウジング16を備えている。ハウジング16は、ハウジング本体60と、第1ハウジングカバー61と、第2ハウジングカバー70とで構成されている。
【0103】
第2ハウジングカバー62と同様、第2ハウジングカバー70はハウジング本体60の後方に配置されている。第2ハウジングカバー70は、第2外周壁70a、後壁70b及び底壁70cを有する有底筒状部材である。第2外周壁70aは、駆動軸心O1を中心とする円筒状をなしており、駆動軸心O1方向に延びている。また、第2ハウジングカバー62の第2外周壁62aと同様、第2外周壁70aには、吸入連通口69が形成されている。
【0104】
後壁70bは、第2ハウジングカバー70の後端に位置しており、駆動軸心O1と直交して略円形平板状に延びている。後壁70bの外周縁は、第2外周壁70aの後端に接続している。底壁70cは、後壁70bに一体に形成されており、後壁70bから駆動軸心O1方向の前方に向かって板状に延びている。
【0105】
実施例1の圧縮機と同様、この圧縮機でも、第2ハウジングカバー70は、第2外周壁70aの前端をハウジング本体60の区画壁60bの後端に当接させた状態でハウジング本体60に固定されている。また、第2ハウジングカバー70がハウジング本体60に固定されることにより、底壁70cの前端も区画壁60bの後端に当接する。
【0106】
これにより、第2ハウジングカバー70内において、吸入連通口69と底壁70cとの間に貯留室71が形成されている。つまり、底壁70cは、貯留室71の底部を構成している。貯留室71は区画壁60bによってスクロール室65と区画されている。また、貯留室71は第1連通口66によってスクロール室65と連通している。
【0107】
ここで、
図9に示すように、この圧縮機では、第2ハウジングカバー70を駆動軸心O1方向から見た際、底壁70cが第1支持部64と重なる位置に配置されている。これにより、
図1に示すように、この圧縮機では、貯留室71の底部の位置が実施例1の貯留室8における底部の位置に比べて駆動軸心O1に近い位置となっている。換言すれば、貯留室71は、貯留室8に比べて上げ底となっている。これにより、この圧縮機では、第1、2供給路2a、2bの後端が底壁70cの近傍、すなわち、貯留室71の底部の近傍に開口している。この圧縮機における他の構成は実施例1の圧縮機と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。
【0108】
この圧縮機では、貯留室71内にアタッチメント63(
図1及び
図2参照)を設ける必要がない。また、第1、2供給路2a、2bは、アタッチメント63の案内路63aを介することなく、貯留室71の底部の近傍に連通可能となっている。これにより、この圧縮機でも、貯留室71内に貯留された潤滑油及び液冷媒18が少ない場合であっても、貯留室71内から第1、2供給路2a、2b内に潤滑油及び液冷媒18を好適に流通させることが可能となっている。
【0109】
そして、この圧縮機では、第1、2供給路2a、2bを貯留室71の底部の近傍に連通させるに当たって、第1、2供給路2a、2bを駆動軸心O1方向に直線状に形成すれば足りるため、第1、2供給路2a、2bの形状が複雑化することがない。さらに、この圧縮機ではアタッチメント63を省略することで部品点数の削減も可能となっている。これらにより、この圧縮機では製造コストの低廉化も可能となっている。この圧縮機における他の作用は実施例1の圧縮機と同様である。
【0110】
(実施例3)
実施例3の圧縮機では、従動ピン55に換えて、
図10に示す従動ピン75がブッシュ53に挿通されている。従動ピン75も本発明における「従動軸部」の一例である。従動ピン75内には供給路75aが形成されている。供給路75aは、従動ピン75を駆動軸心O1方向に貫通している。
【0111】
また、この圧縮機では、実施例1の圧縮機と異なり、第1支持部64に第1、2供給路2a、2bが形成されていない。一方、この圧縮機では、第1支持部64に形成されたピン孔4aが第1支持部64を駆動軸心O1方向に貫通している。これにより、この圧縮機では、ピン孔4a内に従動ピン75が挿通されることにより、供給路75aは、ピン孔4a及び案内路63aを通じて貯留室8と連通している。この圧縮機における他の構成は実施例1の圧縮機と同様である。
【0112】
この圧縮機では、貯留室8内の液冷媒18及び潤滑油が案内路63a及びピン孔4aを経て供給路75a内を流通する。ここで、従動スクロール40の回転従動に伴う摺動摩擦によって従動ピン75が発熱するため、供給路75a内を流通する液冷媒18は加熱されて気化し易くなる。このため、この圧縮機でも、供給路75aを経た潤滑油には液冷媒が含まれ難くなっている。
【0113】
また、この圧縮機では、供給路75aを経た潤滑油が収容凹部41aとブッシュ53との間、第2滑り軸受52とブッシュ53との間、及び、第2滑り軸受52と収容凹部41aとの間を流通することにより、これらの間をそれぞれ潤滑する。また、この圧縮機でも、供給路75aを経た潤滑油がカバー体35と従動端板41との間、第1支持部64と第1滑り軸受51との間、第1支持部64と第1滑り軸受51との間、及び、各圧縮室12内に流通することにより、これらがそれぞれ好適に潤滑される。この圧縮機における他の作用は実施例1の圧縮機と同様である。
【0114】
(実施例4)
図11及び
図12に示すように、実施例4の圧縮機では、ピン孔4aに換えてピン孔4bが第1支持部64に形成されている。そして、このピン孔4bに対して従動ピン55が挿通されている。
【0115】
ここで、この圧縮機では、ピン孔4bに挿通された際の従動ピン55の位置が実施例1の圧縮機においてピン孔4aに挿通された際の従動ピン55と異なっている。具体的には、実施例4の圧縮機では、従動ピン55の中心、すなわち従動軸心O2が仮想基準線L1を挟んで第1荷重点P11の反対側に位置している。つまり、仮想基準線L1に対して、従動ピン55の中心及び第2荷重点P12は、第1荷重点P11の反対側(
図6及び
図7における紙面の右側)に存在している。そして、第1支持部64には、従動スクロール40に作用する圧縮荷重が第2荷重点P12から接線TL2と直交しつつ従動ピン55の径方向の外側に延びる方向に作用する。ここで、接線TL2は、第2荷重点P12を通って従動ピン55の外周面とピン孔4bの内周面とに接する直線である。これらにより、この圧縮機では、従動スクロール40に作用する圧縮荷重によって、ブッシュ53から第1支持部64に対して、第1支持部64の径方向に第1支持部64を引っ張るように荷重が作用する。また、この圧縮機では、第1仮想荷重線F11、第2仮想荷重線F12、仮想接続線F13及び接線TL2により、第1支持部64に第1~3領域X1~X3が形成されている。この圧縮機における他の作用は実施例1の圧縮機と同様である。
【0116】
以上において、本発明を実施例1~4に即して説明したが、本発明は上記実施例1~4に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0117】
例えば、実施例1の圧縮機では、第1支持部64に第1供給路2a及び第2供給路2bが形成されている。しかし、これに限らず、第1支持部64に対して第1供給路2aのみを形成しても良い。また、第1支持部64に対して、第1供給路2a及び第2供給路2bに加えて供給路を形成しても良い。実施例2、4の圧縮機についても同様である。
【0118】
また、実施例1~4の圧縮機の構成を組み合わせることにより、第1支持部64形成された第1供給路2a及び第2供給路2bと、従動ピン75に形成された供給路75aとによって潤滑油を第1支持部64と第1滑り軸受51との間等に供給しても良い。
【0119】
また、実施例1の圧縮機において、アタッチメント63を省略する一方、第1、2供給路2a、2bについて、貯留室8の底部に連通する形状としても良い。実施例4の圧縮機についても同様である。
【0120】
また、実施例1の圧縮機では、駆動端板31とカバー体35の周壁部35bとによってロータ11を挟持しつつ、これらをボルト50によって接続している。しかし、これに限らず、駆動端板31と周壁部35bとをボルト50によって直接接続し、周壁部35bの外周面にロータ11を固定する構成としても良い。実施例2~4の圧縮機についても同様である。
【0121】
また、実施例1の圧縮機において、駆動スクロール30とロータ11とを駆動軸によって動力伝達可能に接続することにより、駆動スクロール30とロータ11とを駆動軸心O1方向に離隔して配置する構成としても良い。実施例2~4の圧縮機についても同様である。
【0122】
また、実施例1の圧縮機では、従動機構20が自転阻止ピン21及びリング22によって構成されている。しかし、これに限らず、従動機構20は、2本のピンが1つのフリーリングの内周面に摺接するピン・リング・ピン方式、2本のピンの外周面同士が摺接するピン・ピン方式、オルダム接手を用いる方式等によって構成されていても良い。実施例2~4の圧縮機についても同様である。
【0123】
また、本明細書では以下の発明を含んでいる。
(付記1)
ハウジング、駆動機構、駆動スクロール、従動スクロール及び従動機構を備え、
前記ハウジングは、前記駆動スクロール及び前記従動スクロールが収容されるスクロール室と、外部から吸入された冷媒を気液分離しつつ潤滑油を含む液冷媒を内部に貯留する貯留室と、前記貯留室と前記スクロール室とを区画する区画壁とを有し、
前記駆動スクロールは、前記駆動機構によって駆動軸心周りに回転駆動され、
前記従動スクロールは、前記駆動スクロールに対して偏心しつつ従動軸心周りで前記駆動スクロール及び前記従動機構によって回転従動され、
前記区画壁には、前記駆動軸心を中心としつつ前記スクロール室内に突出する支持部が設けられ、
前記駆動スクロールは、前記駆動スクロールと前記支持部との間に配置された軸受によって前記駆動軸心周りで回転駆動可能に前記支持部に支持され、
前記従動スクロールは、前記駆動スクロール及び前記駆動軸心に対して偏心しつつ前記従動軸心方向に延びる従動軸部によって前記従動軸心周りで回転従動可能に支持され、
前記駆動スクロールと前記従動スクロールとにより、スクロール圧縮部が構成され、
前記支持部及び前記従動軸部の少なくとも一方には、前記貯留室内に連通する供給路が形成され、
前記供給路は、前記貯留室内の前記液冷媒を前記スクロール圧縮部の摺動部位及び前記軸受の少なくとも一方に供給することを特徴とする両回転式スクロール型圧縮機。
(付記2)
前記供給路は、前記液冷媒を前記支持部と前記軸受との間に供給する付記1記載の両回転式スクロール圧縮機。
(付記3)
前記駆動スクロールは、前記従動スクロールを挟んで前記区画壁の反対側に位置する駆動端板と、前記駆動端板と一体をなし、前記従動スクロールに向かって渦巻状に突出する駆動渦巻体と、前記駆動渦巻体よりも外周で前記駆動端板に対して前記駆動軸心方向に接続されるとともに、前記支持部に支持されるカバー体とを有し、
前記従動スクロールは、前記カバー体と摺動可能に前記駆動渦巻体と前記カバー体との間に配置された従動端板と、前記従動端板から前記駆動端板に向かって渦巻状に突出する従動渦巻体とを有し、
前記供給路は、前記液冷媒を前記カバー体と前記従動端板との間に供給する付記1又は2記載の両回転式スクロール型圧縮機。
(付記4)
前記従動軸部が挿通されたブッシュを備え、
前記従動スクロールと前記ブッシュとの間には、ブッシュ用軸受が設けられ、
前記供給路は、前記液冷媒を前記ブッシュ用軸受と前記ブッシュとの間に供給する付記1乃至3のいずれか1項記載の両回転式スクロール型圧縮機。
(付記5)
前記供給路は複数である付記1乃至4のいずれか1項記載の両回転式スクロール型圧縮機。
(付記6)
前記ハウジングは、前記貯留室内に位置する底壁を有し、
前記底壁は、前記ハウジングを前記駆動軸心方向から見た際、前記支持部と重なる位置に配置されている付記1乃至5のいずれか1項記載の両回転式スクロール型圧縮機。
(付記7)
前記駆動スクロールと前記従動スクロールとによって圧縮室が形成され、
前記駆動スクロール、前記従動スクロール及び前記支持部を前記駆動軸心方向から見た際において、
最外周側に形成される前記圧縮室が閉鎖された瞬間に前記駆動渦巻体の外側面と前記従動渦巻体の内側面とが最外周側で接する第1接点と、前記駆動渦巻体の内側面と前記従動渦巻体の外側面とが最外周側で接する第2接点と、前記第1接点と前記第2接点とを直線状に結ぶ仮想線とを規定し、かつ、前記仮想線に対して前記駆動スクロールの径方向の一方側に直交する方向を前記駆動スクロールに作用する圧縮荷重の荷重方向と規定し、
前記支持部には、前記カバー体における第1荷重点から、前記荷重方向と同方向に前記駆動スクロールの前記圧縮荷重が作用するとともに、前記従動軸部における第2荷重点から、前記第2荷重点を通って前記従動軸部の外周面と接する接線に対して前記従動スクロールの径方向に直交する方向に前記従動スクロールの前記圧縮荷重が作用し、
前記駆動スクロール及び前記従動スクロールが1回転する間において、前記荷重方向は前記駆動スクロール及び前記従動スクロールの回転方向に変動し、
前記支持部に対し、前記駆動スクロールの前記圧縮荷重が作用する方向に延びる第1仮想荷重線と、前記従動スクロールの前記圧縮荷重が作用する方向に延びる第2仮想荷重線と、前記第1荷重点と前記第2荷重点と直線状に結ぶ仮想接続線とを規定することにより、
前記供給路は、前記第1仮想荷重線と前記第2仮想荷重線と前記支持部の外周縁とによって挟まれた第1領域と、前記第1仮想荷重線と前記第2仮想荷重線と前記仮想接続線とによって挟まれた第2領域と、前記第1仮想荷重線と前記第2仮想荷重線と前記接線とによって挟まれた第3領域とを避けつつ前記支持部に形成されている付記3記載の両回転式スクロール型圧縮機。
(付記8)
前記支持部に対し、前記駆動軸心を通って前記駆動スクロールの径方向に直線状に延び、かつ、前記第1仮想荷重線と交差する仮想基準線を規定することにより、
前記供給路は、前記仮想基準線よりも前記第1荷重点及び前記第2荷重点に近い位置に形成されている付記7記載の両回転式スクロール型圧縮機。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明は車両の空調装置等に利用可能である。
【符号の説明】
【0125】
2a、2b…第1、2供給路(供給路)
6、16…ハウジング
8、71…貯留室
10…電動モータ(駆動機構)
20…従動機構
30…駆動スクロール
31…駆動端板
33…駆動渦巻体
35…カバー体
40…従動スクロール
41…従動端板
43…従動渦巻体
51…第1滑り軸受(軸受)
52…第2滑り軸受(ブッシュ用軸受)
53…ブッシュ
55、75…従動ピン(従動軸部)
60b…区画壁
64…第1支持部(支持部)
65…スクロール室
70c…底壁
75a…供給路
100…スクロール圧縮部
P1…第1接点
P2…第2接点
F1、F2…荷重方向
F11…第1仮想荷重線
F12…第2仮想荷重線
F13…仮想接続線
L1…仮想基準線
MP…作用点
O1…駆動軸心
O2…従動軸心
P11…第1荷重点
P12…第2荷重点
TL1、TL2…接線
X1~X3…第1~3領域