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特開2024-68708光ファイバ第一次コート層形成用の放射線硬化性組成物およびウレタン(メタ)アクリレート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068708
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】光ファイバ第一次コート層形成用の放射線硬化性組成物およびウレタン(メタ)アクリレート
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20240514BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20240514BHJP
   C08G 18/66 20060101ALI20240514BHJP
   C08G 18/67 20060101ALI20240514BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20240514BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20240514BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240514BHJP
   G02B 6/44 20060101ALI20240514BHJP
   C09D 4/00 20060101ALN20240514BHJP
【FI】
C08F290/06
C08G18/48
C08G18/66 074
C08G18/67
C08G18/32 003
C09D4/02
C09D7/63
G02B6/44 301A
C09D4/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179249
(22)【出願日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】592109732
【氏名又は名称】日本特殊コーティング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(72)【発明者】
【氏名】篠原 宣康
(72)【発明者】
【氏名】杉山 直樹
【テーマコード(参考)】
2H250
4J034
4J038
4J127
【Fターム(参考)】
2H250BA18
2H250BA32
2H250BB07
2H250BB14
2H250BB19
2H250BB33
2H250BB34
2H250BD13
2H250BD17
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4J034CC08
4J034CC12
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4J034CC52
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4J034CC62
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4J034DG03
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4J034DG06
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4J034HA01
4J034HA06
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4J034HB12
4J034HC12
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4J034HC17
4J034HC22
4J034HC46
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4J034HC61
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4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA21
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4J038FA112
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4J038PA17
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4J127BB031
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4J127BB221
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4J127BD471
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4J127BF631
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4J127BG05Y
4J127BG05Z
4J127BG141
4J127BG14X
4J127BG14Y
4J127BG14Z
4J127BG271
4J127BG27X
4J127BG27Y
4J127BG27Z
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4J127CB151
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4J127EA13
4J127FA08
4J127FA23
(57)【要約】
【課題】柔軟性に優れると共に、十分な機械強度を有する硬化物を形成可能な光ファイバ第一次コート層形成用の放射線硬化性組成物を提供する。
【解決手段】(A)少なくとも、(a)数平均分子量2000~5000のポリエーテルジオール、(b)ジイソシアネート化合物、(c)水酸基含有(メタ)アクリレート化合物、および、(d)分子量500以下のジオールを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート、(B)(A)成分以外の(メタ)アクリレート化合物、ならびに、(C)放射線重合開始剤を含有する光ファイバ第一次コート層形成用の放射線硬化性組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)少なくとも下記(a)、(b)、(c)および(d)成分:
(a)数平均分子量2000~5000のポリエーテルジオール、
(b)ジイソシアネート化合物、
(c)水酸基含有(メタ)アクリレート化合物、および、
(d)分子量500以下のジオール、
を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート、
(B)(A)成分以外の(メタ)アクリレート化合物、
ならびに、
(C)放射線重合開始剤
を含有する光ファイバ第一次コート層形成用の放射線硬化性組成物。
【請求項2】
前記(d)成分が、分子量200以下のジオールである、請求項1に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項3】
前記(b)成分が、トリレンジイソシアネート(TDI)またはイソフォロンジイソシアネート(IPDI)である、請求項1または2に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項4】
少なくとも下記(a)、(b)、(c)および(d)成分:
(a)数平均分子量2000~5000のポリエーテルジオール、
(b)ジイソシアネート化合物、
(c)水酸基含有(メタ)アクリレート化合物、および、
(d)分子量500以下のジオール、
を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート。
【請求項5】
前記(d)成分が、分子量200以下のジオールである、請求項4に記載のウレタン(メタ)アクリレート。
【請求項6】
前記(b)成分が、トリレンジイソシアネート(TDI)またはイソフォロンジイソシアネート(IPDI)である、請求項4または5に記載のウレタン(メタ)アクリレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ第一次コート層形成用の放射線硬化性組成物および該放射線硬化性組成物に適したウレタン(メタ)アクリレートに関し、特に、柔軟性に優れると共に、十分な機械強度を有する硬化物を形成可能な光ファイバ第一次コート層形成用の放射線硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバは、ガラスを熱溶融紡糸して得たガラスファイバと、ガラスファイバ上に保護補強を目的として設けられたコート層(または被覆層ともいう。)等から構成される。例えば、光ファイバは、ガラスファイバの表面上にまず柔軟な第一次のコート層(以下、「第一次コート層」ともいう。)を設け、当該第一次コート層上に剛性の高い第二次のコート層(以下、「第二次コート層」ともいう。)を設けることにより製造される。コート層が設けられた複数の光ファイバを結束材料で固めたテープ状光ファイバや光ファイバケーブルもよく知られている。ガラスファイバ上にコート層を形成する方法としては、例えば、液状硬化性樹脂組成物をガラスファイバに塗布し、熱又は光、特に紫外線により硬化させる方法が広く用いられている。
【0003】
特許第6526012号公報(特許文献1)は、ヤング率が低く、引裂強度が高いファイバ被覆を生成する放射線硬化性被覆組成物に関する発明を記載し、特には、ポリエーテルウレタンアクリレート化合物(具体的にはジイソシアネート化合物とヒドロキシアクリレート化合物およびポリオール化合物との反応から形成されるポリエーテルウレタンアクリレート化合物)および二付加体化合物(具体的には、ジイソシアネート化合物とヒドロキシアクリレート化合物との反応から形成されるジアクリレート化合物)を含むファイバ被覆組成物であって、二付加体化合物が2.35質量%~4.82質量%の量で存在するファイバ被覆組成物を記載している。
【0004】
特開2017-141125号公報(特許文献2)は、光ファイバのプライマリ材として好適な特性を有する放射線硬化性樹脂組成物に関する発明を記載し、特には、(a)数平均分子量3,000以下のジオール、(b)ジイソシアネートおよび(c)水酸基含有(メタ)アクリレートの反応物であって、数平均分子量が4,000以上であるウレタン(メタ)アクリレート(A)および放射線重合開始剤(D)を含有する組成物であって、全組成物中に成分(A)を60質量%以上含有する、光ファイバ第一次被覆層形成用放射線硬化性樹脂組成物を記載している。
【0005】
特許第5788672号公報(特許文献3)は、光ファイバのプライマリ材として好適な特性を有する放射線硬化性樹脂組成物に関する発明を記載し、特には、(A)(a1)脂肪族ポリエーテルジオールとジイソシアネートと1価アルコールとの反応物を含むウレタンオリゴマー、又は(a2)ポリエーテルジオールに由来する構造単位を平均1.0個より多く有し、(メタ)アクリロイル基を有しないウレタンオリゴマーを含むウレタンオリゴマーであって、脂肪族ポリエーテルジオールとジイソシアネートとの反応物と1価アルコールとを反応させた後に水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られるウレタンオリゴマーを50~90質量%、(B)エチレン性不飽和基を1個有するモノマーを5~45質量%含有し、かつ、(C)エチレン性不飽和基を2個以上有するモノマーの含有量が2質量%以下であることを特徴とする、光ファイバ第一次被覆層形成用の放射線硬化性樹脂組成物を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6526012号公報
【特許文献2】特開2017-141125号公報
【特許文献3】特許第5788672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
光ファイバ側面に局所的に圧力がかかった場合、圧力がかかった部分のガラスファイバのコアが小さな曲率で曲げを生じる結果、光損失が生じることあった。このような光損失(マイクロベンディング・ロスともいう。)を抑制する観点等から、第一次コート層は、充分に柔軟であることが望ましい。一方で、第一次コート層を柔軟にすると、充分な機械強度(破断強度及び破断伸び)が得られない場合があった。特許文献1~3に記載の放射線硬化性組成物はいずれも光ファイバ第一次コート層形成用の放射線硬化性組成物であり、柔軟性と機械強度の両立を目的とするものであるものの、依然として改善の余地がある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、従来技術とは異なる手法により、柔軟性に優れると共に、十分な機械強度を有する硬化物を形成可能な光ファイバ第一次コート層形成用の放射線硬化性組成物を提供することにある。また、本発明の他の目的は、かかる光ファイバ第一次コート層形成用の放射線硬化性組成物に適したウレタン(メタ)アクリレートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、少なくとも(a)数平均分子量2000~5000のポリエーテルジオール、(b)ジイソシアネート化合物、(c)水酸基含有(メタ)アクリレート化合物、および(d)分子量500以下のジオールを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートを配合することで、柔軟性に優れると共に、十分な機械強度を有する硬化物を形成可能な放射線硬化性組成物を提供できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
従って、本発明の放射線硬化性組成物は、(A)少なくとも下記(a)、(b)、(c)および(d)成分:
(a)数平均分子量2000~5000のポリエーテルジオール、
(b)ジイソシアネート化合物、
(c)水酸基含有(メタ)アクリレート化合物、および、
(d)分子量500以下のジオール、
を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート、
(B)(A)成分以外の(メタ)アクリレート化合物、
ならびに、
(C)放射線重合開始剤
を含有する光ファイバ第一次コート層形成用の放射線硬化性組成物である。
【0011】
本発明の放射線硬化性組成物の好適例において、前記(d)成分が、分子量200以下のジオールである。
【0012】
本発明の放射線硬化性組成物の他の好適例において、前記(b)成分が、トリレンジイソシアネート(TDI)またはイソフォロンジイソシアネート(IPDI)である。
【0013】
また、本発明のウレタン(メタ)アクリレートは、少なくとも下記(a)、(b)、(c)および(d)成分:
(a)数平均分子量2000~5000のポリエーテルジオール、
(b)ジイソシアネート化合物、
(c)水酸基含有(メタ)アクリレート化合物、および、
(d)分子量500以下のジオール、
を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートである。
【0014】
本発明のウレタン(メタ)アクリレートの好適例において、前記(d)成分が、分子量200以下のジオールである。
【0015】
本発明のウレタン(メタ)アクリレートの他の好適例において、前記(b)成分が、トリレンジイソシアネート(TDI)またはイソフォロンジイソシアネート(IPDI)である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の放射線硬化性組成物によれば、柔軟性に優れると共に、十分な機械強度を有する硬化物を形成可能な光ファイバ第一次コート層形成用の放射線硬化性組成物を提供することができる。また、本発明のウレタン(メタ)アクリレートによれば、かかる光ファイバ第一次コート層形成用の放射線硬化性組成物に適したウレタン(メタ)アクリレートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明は、光ファイバ第一次コート層形成用の放射線硬化性組成物およびウレタン(メタ)アクリレートに関する。
【0018】
本明細書において、「光ファイバ第一次コート層」とは、ガラスファイバに設けられるコート層のうちガラスファイバに最も近い位置に配置されるコート層であると理解される。第一次コート層は、ガラスファイバ表面の少なくとも一部を覆うように設けられていてもよい。「光ファイバ第一次コート層形成用」とは、光ファイバの第一次コート層の形成に使用され得ること、または光ファイバの第一次コート層を形成するためのものであると理解される。本発明の放射線硬化性組成物は、光ファイバ第一次コート層形成用の材料(プライマリ材ともいう。)として特に好適である。
【0019】
本明細書において、「放射線硬化性組成物」とは、放射線の照射により硬化させることができる組成物であると理解される。ここで、「放射線」とは、赤外線、可視光線、紫外線、X線、電子線、α線、β線、γ線等であり、特に紫外線が好ましい。
【0020】
本明細書において、「ウレタン(メタ)アクリレート」とは、分子中に1個以上の(メタ)アクリロイル基と、主鎖の繰返し単位中にウレタン結合(-NHCOO-)とを含む化合物と理解される。ここで、「(メタ)アクリロイル基」とは、メタクリロイル基またはアクリロイル基を意味する。ウレタン(メタ)アクリレートには、メタクリロイル基を有するもの、アクリロイル基を有するもの、そして、メタクリロイル基およびアクリロイル基を有するものがある。ウレタン(メタ)アクリレートは、一般的に、少なくともジオール化合物とジイソシアネート化合物と水酸基含有(メタ)アクリレート化合物が反応してウレタン結合を形成することにより形成され得る。
【0021】
本発明の放射線硬化性組成物は、下記(A)、(B)および(C)成分を含有する光ファイバ第一次コート層形成用の放射線硬化性組成物である。
(A)ウレタン(メタ)アクリレート
(B)(A)成分以外の(メタ)アクリレート化合物
(C)放射線重合開始剤
以下では、本発明の放射線硬化性組成物に使用される(A)、(B)および(C)成分ならびに必要に応じて使用される追加の成分等について説明する。
【0022】
(A)成分:ウレタン(メタ)アクリレート
(A)ウレタン(メタ)アクリレートは、少なくとも下記(a)、(b)、(c)および(d)成分を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートである。
(a)数平均分子量2000~5000のポリエーテルジオール
(b)ジイソシアネート化合物
(c)水酸基含有(メタ)アクリレート化合物
(d)分子量500以下のジオール
本明細書では、ここで説明されるウレタン(メタ)アクリレートを「本発明のウレタン(メタ)アクリレート」とも称する。
【0023】
(a)成分:数平均分子量2000~5000のポリエーテルジオール
数平均分子量2000~5000のポリエーテルジオールは、コート層に優れた柔軟性を付与することができる。通常、このようなポリエーテルジオールを用いた場合、コート層の機械強度に課題があったが、本発明の放射線硬化性組成物では、後述の(d)分子量500以下のジオールを併用することで、柔軟性に優れると共に、十分な機械強度を有するコート層を形成することができる。また、このような分子量範囲のポリエーテルジオールは、放射線硬化性組成物の高速塗布性に好適な粘度が得られる観点からも好ましい。(a)成分としては、数平均分子量3000~4000のポリエーテルジオールが好ましい。
【0024】
本明細書において、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定し、標準ポリスチレン検量線に基づき換算した値である。
【0025】
数平均分子量2000~5000のポリエーテルジオールとしては、特に限定されないが、脂肪族ポリエーテルジオールが好ましく、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリヘプタメチレングリコール、ポリデカメチレングリコールおよび二種以上のイオン重合性環状化合物を開環共重合させて得られる脂肪族ポリエーテルジオールなどが好ましい。
【0026】
上記イオン重合性環状化合物としては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブテン-1-オキシド、イソブテンオキシド、3,3-ビスクロロメチルオキセタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、3-メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン、テトラオキサン、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、エピクロルヒドリン、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルカーボネート、ブタジエンモノオキシド、イソプレンモノオキシド、ビニルオキセタン、ビニルテトラヒドロフラン、ビニルシクロヘキセンオキシド、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、安息香酸グリシジルエステルなどの環状エーテル類が挙げられる。
【0027】
二種以上の上記イオン重合性環状化合物を開環共重合させて得られるポリエーテルジオールの具体例としては、例えば、テトラヒドロフランとプロピレンオキシド、テトラヒドロフランと2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランと3-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランとエチレンオキシド、プロピレンオキシドとエチレンオキシド、ブテン-1-オキシドとエチレンオキシドなどの組み合わせより得られる二元共重合体;テトラヒドロフラン、ブテン-1-オキシド及びエチレンオキシドの組み合わせより得られる三元重合体などを挙げることができる。また、上記イオン重合性環状化合物と、エチレンイミンなどの環状イミン類;β-プロピオラクトン、グリコール酸ラクチドなどの環状ラクトン酸;あるいはジメチルシクロポリシロキサン類とを開環共重合させたポリエーテルジオールを使用することもできる。
【0028】
(a)成分としての上記脂肪族ポリエーテルジオールは、例えばPTMG2000、PTMG3000、PTMG4000(以上、三菱化学株式会社製)、EXCENOL2020、EXCENOL3020、EXCENOL3030、EXCENOL4030、PREMINOL S3006(以上、AGC株式会社製)、ユニオールD-2000、ユニオールD-4000(以上、日油株式会社)等の市販品としても入手することができる。
【0029】
これらの脂肪族ポリエーテルジオールのうち、1種又は2種以上の炭素数2~4のイオン重合性環状化合物の開環重合体であって、数平均分子量2000~5000のジオールを用いるのが、コート層の柔軟性と放射線硬化性組成物の高速塗布性の両立の点から好ましい。このような脂肪族ポリエーテルジオールとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブテン-1-オキシド及びイソブテンオキシドから選ばれる1種又は2種以上のオキシドの開環重合体であって、特に数平均分子量3000~4000のジオールがさらに好ましい。
【0030】
(A)成分中における(a)成分に由来する構造部の量は、好ましくは74質量%以上、91質量%未満であり、より好ましくは78質量%以上、87質量%未満である。
【0031】
(a)数平均分子量2000~5000のポリエーテルジオールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0032】
(b)成分:ジイソシアネート化合物
ジイソシアネート化合物は、(a)成分、(c)成分および(d)成分の水酸基と反応してウレタン結合を形成することができる。
【0033】
ジイソシアネート化合物としては、芳香族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。芳香族ジイソシアネートとして、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチルフェニレンジイソシアネート、4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、ビス(2-イソシアネートエチル)フマレート、6-イソプロピル-1,3-フェニルジイソシアネート、4-ジフェニルプロパンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。脂環族ジイソシアネートとして、例えば、イソフォロンジイソシアネート、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、2,5-ビス(イソシアネートメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6-ビス(イソシアネートメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン等が挙げられる。脂肪族ジイソシアネートとして、例えば、1,6-ヘキサンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。
【0034】
これらのイソシアネート化合物のうち、経済性及び安定した品質の組成物が得られる点から、芳香族ジイソシアネートがより好ましく、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート等のトリレンジイソシアネート(TDI)が特に好ましい。
【0035】
また、(A)ウレタン(メタ)アクリレート中のウレタン基濃度を高くする観点から、あまり分子量が大きくないジイソシアネート化合物を用いることが好ましい。好ましい実施形態において、(d)成分は、トリレンジイソシアネート(TDI)またはイソフォロンジイソシアネート(IPDI)である。
【0036】
(A)成分中における(b)成分に由来する構造部の量は、好ましくは5質量%以上、17質量%未満であり、より好ましくは8質量%以上、14質量%未満である。
【0037】
(b)ジイソシアネート化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0038】
(c)成分:水酸基含有(メタ)アクリレート化合物
(A)ウレタン(メタ)アクリレートの合成で用いられる水酸基含有(メタ)アクリレート化合物としては、水酸基が第一級炭素原子に結合した水酸基含有(メタ)アクリレート(第一水酸基含有(メタ)アクリレートという)、及び水酸基が第二級炭素原子に結合した水酸基含有(メタ)アクリレート(第二水酸基含有(メタ)アクリレートという)が好ましく、第一水酸基含有(メタ)アクリレートが特に好ましい。水酸基が第三級炭素原子に結合した水酸基含有(メタ)アクリレート(第三水酸基含有(メタ)アクリレートという)はイソシアネート基(以下、「NCO」ともいう)との反応性に劣るため好ましくない。
【0039】
第一水酸基含有(メタ)アクリレートとして、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0040】
第二水酸基含有(メタ)アクリレートとして、例えば、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられ、また、アルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有化合物と、(メタ)アクリル酸との付加反応により得られる化合物も挙げられる。
【0041】
(A)成分中における(c)成分に由来する構造部の量は、好ましくは2質量%以上、8質量%未満であり、より好ましくは3質量%以上、7質量%未満である。
【0042】
(c)水酸基含有(メタ)アクリレートは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0043】
(d)成分:分子量500以下のジオール
分子量500以下のジオールは、(A)ウレタン(メタ)アクリレートの合成に使用されるジオールとしては低分子量ジオールに該当する。このような低分子量ジオールを用いることで、コート層の柔軟性を低下させずに、コート層の機械強度を大幅に向上させることができる。上述した数平均分子量2000~5000のポリエーテルジオールを原料とするウレタン(メタ)アクリレートを放射線硬化性組成物に用いることで、ヤング率が低く、柔軟性に優れるコート層を形成できるものの、機械強度に課題があった。本発明者らは、本発明の放射線硬化性組成物では、上述した数平均分子量2000~5000のポリエーテルジオールと共に分子量500以下のジオールを用いることで、柔軟性に優れると共に、十分な機械強度を有するコート層を形成できることを見出した。(d)成分としては、分子量200以下のジオールが好ましく、分子量100以下のジオールが特に好ましい。
【0044】
分子量500以下のジオールとしては、特に限定されないが、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール(プロピレングリコールとも言う)、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,4-ベンゼンジメタノール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-インダンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,9-ノナンジオール、1,2-デカンジオール、1,10-デカンジオール、3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロピオン酸3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロピル、3-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,2-プロパンジオール、1,2-ドデカンジオール、5,6-ドデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、2,2-ジイソアミル-1,3-プロパンジオール、1,2-テトラデカンジオール、1,2-ヘキサデカンジオール、1,16-ヘキサンジオール、1,18-オクタデカンジオール、2,2-ジ-n-オクチル-1,3-プロパンジオール、および分子量500以下の要件を満たす範囲の脂肪族ポリエーテルジオール等が挙げられ、特に1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、および脂肪族ポリエーテルジオールが好ましい。脂肪族ポリエーテルジオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリヘプタメチレングリコール、ポリデカメチレングリコールおよび二種以上のイオン重合性環状化合物を開環共重合させて得られる脂肪族ポリエーテルジオールなどが好ましい。
【0045】
上記イオン重合性環状化合物としては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブテン-1-オキシド、イソブテンオキシド、3,3-ビスクロロメチルオキセタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、3-メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン、テトラオキサン、シクロヘキセンオキ シド、スチレンオキシド、エピクロルヒドリン、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルカーボネート、ブタジエンモノオキシド、イソプレンモノオキシド、ビニルオキセタン、ビニルテトラヒドロフラン、ビニルシクロヘキセンオキシド、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、安息香酸グリシジルエステルなどの環状エーテル類が挙げられる。
【0046】
二種以上の上記イオン重合性環状化合物を開環共重合させて得られるポリエーテルジオールの具体例としては、例えば、テトラヒドロフランとプロピレンオキシド、テトラヒドロフランと2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランと3-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランとエチレンオキシド、プロピレンオキシドとエチレンオキシド、ブテン-1-オキシドとエチレンオキシドなどの組み合わせより得られる二元共重合体;テトラヒドロフラン、ブテン-1-オキシド及びエチレンオキシドの組み合わせより得られる三元重合体などを挙げることができる。また、上記イオン重合性環状化合物と、エチレンイミンなどの環状イミン類;β-プロピオラクトン、グリコール酸ラクチドなどの環状ラクトン酸;あるいはジメチルシクロポリシロキサン類とを開環共重合させたポリエーテルジオールを使用することもできる。
【0047】
脂肪族ポリエーテルジオールのような重合体のジオールについては、数平均分子量が500以下のジオールを、(d)成分の「分子量500以下のジオール」とする。
【0048】
(d)成分としての上記脂肪族ポリエーテルジオールは、例えばPTMG250(三菱ケミカル株式会社製)、EXCENOL420、EXCENOL430(以上、AGC株式会社製)、PEG200、PEG300、PEG400、ユニオックスG-450、ユニオールD-250、ユニオールD-400G、ユニオールTG-330(以上、日油株式会社製)等の市販品としても入手することができる。
【0049】
これらの脂肪族ポリエーテルジオールのうち、1種又は2種以上の炭素数2~4のイオン重合性環状化合物の開環重合体であって、数平均分子量500以下のジオールを用いるのが、コート層の機械強度を向上させる観点から好ましい。このような脂肪族ポリエーテルジオールとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブテン-1-オキシド及びイソブテンオキシドから選ばれる1種又は2種以上のオキシドの開環重合体であって、数平均分子量200以下のジオールがさらに好ましく、特に数平均分子量100未満のプロピレンオキシドの開環重合体が好ましい。
【0050】
(d)成分は、十分に高分子量成分である(a)成分を用いた場合においても(A)成分のウレタン基濃度を増大させることができるため、本発明の組成物を用いることでヤング率を低く抑えつつ、高い機械強度(破断強度や破断伸び)を有する硬化物を得ることができる。また、ジオール以外に、アミノ基と水酸基を合わせて有する化合物、ジアミン、およびジチオールといったイソシアネートとの反応でウレア、チオウレアを生じる化合物についても、(d)成分に代えて、または(d)成分と共に使用することができる可能性がある。ただし、(d)成分がジオールであることは反応性を制御する点で好ましい。
【0051】
(A)成分中における(d)成分に由来する構造部の量は、好ましくは0.5質量%以上、4質量%未満、より好ましくは0.5質量%以上、3質量%未満であり、特に好ましくは0.7質量%以上、2質量%未満である。
【0052】
(d)分子量500以下のジオールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0053】
(e)成分:さらなる成分
(A)ウレタン(メタ)アクリレートの合成には、上記(a)~(d)成分に加えて、さらなる成分を使用してもよい。本明細書では、上記(a)~(d)成分に該当しない成分を「(e)成分」とも称する。(e)成分としては、上記(a)、(c)または(d)に該当しない一価アルコールまたは多価アルコール、メルカプトシラン、およびアミノシラン等が挙げられる。(e)成分を用いることで(メタ)アクリロイル基に代えて(A)成分の末端に結合することで(メタ)アクリロイル基を1個有する(A)成分を得ることができる。
【0054】
(e)成分である一価アルコールとしては、例えば、炭素数1~8の低級アルコールが好ましく、メタノールやn-オクタノール、2-エチルヘキサノール等の脂肪族アルコールがより好ましい。(e)成分である多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、1,2,3-プロピレントリオール、糖類等が挙げられる。(d)成分を使用する場合、2種以上の(d)成分を使用してもよい。また(e)成分であるメルカプトシラン、アミノシランとしてはそれぞれ、例えば、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン等を好適に用いることができる。(e)成分を使用する場合、2種以上の(e)成分を使用してもよい。
【0055】
(A)成分中における(e)成分に由来する構造部の量は、好ましくは4質量%未満、より好ましくは3質量%未満であり、特に好ましくは2質量%未満である。
【0056】
(A)ウレタン(メタ)アクリレートの合成は、ウレタン合成触媒としてジブチルスズジラウレートなどの存在下に、ジオール〔(a)成分、(d)成分〕とジイソシアネート〔(b)成分〕とを反応させ、その後、水酸基含有(メタ)アクリレート〔(c)成分〕を反応させて行われることが好ましい。また、前記ジオールとジイソシアネートを反応させる際に、ジオールとジイソシアネートの反応の順序は特に問わないが、例えば(a)成分と(d)成分の混合物に(b)成分を反応させてもよいし、(a)成分と(b)成分の一部を反応させた後、(d)成分と(b)成分の残りを反応させる、あるいは(d)成分と(b)成分の一部を反応させた後、(a)成分と残りの(b)成分を反応させるといった順序を用いてもよい。生産性を考慮した場合、前記の(a)成分と(d)成分の混合物に(b)成分を反応させることが好適に用いられる。また(e)成分を用いる場合、(e)成分は、ジオールとジイソシアネートの反応の後、水酸基含有(メタ)アクリレートとの反応と同時、あるいはその反応の前後に反応させることができる。ここで、(e)成分として一価アルコール、および/またはアミノシランが使用される場合は、ジオールとジイソシアネートの反応後、その生成物に対して順に水酸基含有(メタ)アクリレート、(e)成分を反応させてもよいし、あるいは順に(e)成分、水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させてもよいし、水酸基含有(メタ)アクリレートと共に(e)成分を反応させてもよいが、ジオールとジイソシアネートの反応による生成物に対して順に水酸基含有(メタ)アクリレート、(e)成分を反応させることが好ましい。一方、(e)成分としてメルカプトシランが使用される場合は、ジオールとジイソシアネートの反応後、その生成物に対して順に水酸基含有(メタ)アクリレート、(e)成分を反応させてもよいし、あるいは順に(e)成分、水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させてもよいし、水酸基含有(メタ)アクリレートと共に(e)成分を反応させてもよいが、ジオールとジイソシアネートの反応による生成物に対して順に(e)成分、水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させることが好ましい。
【0057】
以上の方法により得られる(A)ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば以下の式(1)で表される構造を有している。
[c]-[b]-[a]-[b]-[d]-[b]-[c] 式(1)
式(1)において、[a],[b],[c],[d]は、それぞれ、(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分に由来する構造部である。「-」で示される結合手はいずれもウレタン結合である。
【0058】
(A)ウレタン(メタ)アクリレートの合成に(e)成分を用いた場合、(i)(メタ)アクリロイル基と(e)成分由来の構造の両方を有し、主鎖の繰返し単位中にウレタン結合(-NHCOO-)を含む化合物、例えば、(メタ)アクリロイル基と(e)成分由来の構造を1個ずつ有し、主鎖の繰返し単位中にウレタン結合(-NHCOO-)を含む化合物や(ii)(e)成分由来の構造を有するが(メタ)アクリロイル基を有さず、主鎖の繰返し単位中にウレタン結合(-NHCOO-)を含む化合物、例えば、(e)成分由来の構造を2個有し、主鎖の繰返し単位中にウレタン結合(-NHCOO-)を含む化合物が生成され得る。
【0059】
(e)成分を用いた場合に得られる(A)ウレタン(メタ)アクリレートは、前記式(1)で表される構造に加えて、または、前記式(1)で表される構造に代えて、例えば以下の式(2)で表される構造を有している。
[c]-[b]-[a]-[b]-[d]-[b]-[e] 式(2)
式(2)において、[e]につながる結合手「-」は、(e)成分の化学種によってウレタン結合、チオウレタン結合、ウレア結合である。その他の結合手「-」は、ウレタン結合である。
【0060】
(A)ウレタン(メタ)アクリレートに含まれるウレタン基濃度は、好ましくは1.0mmol/g以上であり、より好ましくは1.1mmol/g以上であり、更に好ましくは1.15mmol/g以上であり、特に好ましくは1.2mmol/g以上である。また、(A)ウレタン(メタ)アクリレートに含まれるウレタン基濃度は、1.7mmol/g未満であることが好ましい。ウレタン基濃度が上記特定した範囲内にあると、本発明の放射線硬化性組成物の硬化物について、ヤング率の上昇を抑制しつつ、高い強度を得ることができる。ウレタン基濃度は、低分子量ジオール〔(d)成分〕や低分子量ジイソシアネート〔好ましくはトリレンジイソシアネート(TDI)またはイソフォロンジイソシアネート(IPDI)〕を用いることによって、高くすることができる。
【0061】
本明細書において「ウレタン基濃度」とは、イソシアネート基とイソシアネート基反応性基との反応により生じる結合の、ウレタン(メタ)アクリレートに含まれる量を示している。この反応により生じ得る結合のうち代表的なものがウレタン結合であることから「ウレタン基濃度」と称しているが、イソシアネート基とイソシアネート基反応性基との反応により生じる結合は、ウレタン結合(-NH-COO-)に限定されず、例えば、チオウレタン結合(-NH-COS-)、ウレア結合(-NH-CO-NH-)等が挙げられる。このため、「ウレタン基濃度」を「イソシアネート基とイソシアネート基反応性基との反応により生じる結合の濃度」と表現することもできる。イソシアネート基反応性基としては、ヒドロキシ基(-OH)、メルカプト基(-SH)、アミノ基(-NH)等が挙げられる。前記(e)成分としてメルカプトシラン、アミノシランを用いた場合は、それぞれチオウレタン基、ウレア基が生じる。
【0062】
本発明の放射線硬化性組成物中における(A)ウレタン(メタ)アクリレートの含有量は、当該組成物100質量部当たり、50質量部以上95質量部未満であることが好ましく、60質量部以上95質量部未満であることがより好ましく、70質量部以上90質量部未満であることが特に好ましい。(A)ウレタン(メタ)アクリレートの含有量が上記特定した範囲内にあることにより、本発明の放射線硬化性組成物の高速塗布性と、光ファイバ第一次コート層として適度な柔軟性を得ることができる。
【0063】
(A)ウレタン(メタ)アクリレートは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0064】
(B)成分:(A)成分以外の(メタ)アクリレート化合物
本発明の放射線硬化性組成物は、(A)ウレタン(メタ)アクリレートに該当しない(メタ)アクリレート化合物を含む。本明細書では、かかる(メタ)アクリレート化合物を「(A)成分以外の(メタ)アクリレート化合物」または「(B)成分」と称する。(B)成分は、典型的には分子中に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーであるが、好ましくは分子中に1個の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーである。(B)成分がモノマーである場合、(A)ウレタン(メタ)アクリレートを含む組成物を希釈する目的で使用されることが多いことから、反応性希釈剤モノマーと称されることもある。(B)成分としては、脂肪族構造含有(メタ)アクリレート、脂環式構造含有(メタ)アクリレート、芳香族構造含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、(B)成分には、水酸基含有(メタ)アクリレートといった、(メタ)アクリロイル基とは異なる官能基を有する(メタ)アクリレート化合物も含まれる。さらに、本明細書では、(メタ)アクリルアミドやアクリロイルモルホリン等のように(メタ)アクリロイル基が窒素原子に結合している化合物も(メタ)アクリレート化合物に該当し、(B)成分に包含される。なお、(B)成分には、(A)成分に該当しないオリゴマーやポリマーも含まれる。
【0065】
(B)成分のうち、分子中に1個の(メタ)アクリロイル基を有する脂肪族構造含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0066】
分子中に1個の(メタ)アクリロイル基を有する脂環式構造含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0067】
分子中に1個の(メタ)アクリロイル基を有する芳香族構造含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0068】
また、分子中に1個の(メタ)アクリロイル基を有する水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、(A)ウレタン(メタ)アクリレートの合成で用いられる水酸基含有(メタ)アクリレート化合物を使用することができ、好ましくは、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート等を挙げることができる。
【0069】
また、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、t-オクチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミドやアクリロイルモルホリン等も、分子中に1個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物の例として挙げることができる。
【0070】
上述の分子中に1個の(メタ)アクリロイル基を有する(B)成分の中では、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の脂肪族構造含有(メタ)アクリレートが好ましい。
【0071】
本発明の放射線硬化性組成物中における分子中に1個の(メタ)アクリロイル基を有する(B)成分の含有量は、当該組成物100質量部当たり、5質量部以上45質部以下であることが好ましく、10質量部以上30質量部以下であることが特に好ましい。
【0072】
(B)成分のうち、分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドの付加体のジオールのジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドの付加体のジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルに(メタ)アクリレートを付加させたエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0073】
本発明の放射線硬化性組成物中における分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(B)成分の含有量は、光ファイバ第一次コート層として硬化物のヤング率を好ましい範囲内に調整することが容易である観点から、当該組成物100質量部当たり、2質量部以下(0~2質量部)であることが好ましく、1.5質量部以下(0~1.5質量部)であることがより好ましい。
【0074】
(B)成分の市販品として、アロニックスM-111、M-113、M-114、M-117(以上、東亞合成社製);KAYARAD、TC110S、R629、R644(以上、日本化薬社製);IBXA、ビスコート3700(大阪有機化学工業社製);ユピマーUV SA1002、SA2007(以上、三菱ケミカル株式会社製);ビスコート 700(大阪有機化学工業株式会社製);KAYARAD R-604、DPCA-20、-30、-60、-10、HX-620、D-310、D-330(以上、日本化薬株式会社製);アロニックスM-210、M-215、M-315、M-325(以上、東亞合成株式会社製)等が挙げられる。
【0075】
本発明の放射線硬化性組成物中における(B)成分の総量は、当該組成物100質量部当たり、5質量部以上45質部以下であることが好ましく、10質量部以上30質量部以下であることが特に好ましい。
【0076】
(B)成分としての(メタ)アクリレート化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0077】
(C)成分:放射線重合開始剤
本発明の放射線硬化性組成物は、放射線重合開始剤を含む。放射線重合開始剤は、光重合開始剤と称することもできる。また、本発明の放射線硬化性組成物は、必要に応じて、(C)成分である放射線重合開始剤に加えて、さらに光増感剤を含むことができる。放射線重合開始剤としては、例えば1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3-メチルアセトフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルホリノ-プロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォフフィンオキシド等が挙げられる。放射線重合開始剤の市販品としてはOmnirad184、369、651、500、907、1700、1870、1173、TPO H(以上、IGM Resins B.V.社製)等がある。また、光増感剤としては、例えばトリエチルアミン、ジエチルアミン、N-メチルジエタノールアミン、エタノールアミン、4-ジメチルアミノ安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等が挙げられる。光増感剤の市販品としてはアントラキュアーUVS-1101,581,2171,1331(以上、エア・ウォーター・パフォーマンスケミカル社製)等が挙げられる。
【0078】
本発明の放射線硬化性組成物中における(C)放射線重合開始剤の含有量は、当該組成物100質量部当たり、0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.3質量部以上7質量部以下であることが特に好ましい。また、光増感剤を併用する場合も、放射線重合開始剤と光増感剤の総量は、当該組成物100質量部当たり、0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.3質量部以上7質量部以下であることが特に好ましい。
【0079】
(C)放射線重合開始剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。光増感剤が組成物中に含まれる場合、光増感剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0080】
(D)成分:(A)成分または(B)成分に該当しないエチレン性不飽和基を1個以上有するモノマー
本発明の放射線硬化性組成物は、(A)成分または(B)成分に該当しないエチレン性不飽和基を1個以上有するモノマーを含んでいてもよい。本明細書では、かかる化合物を「(D)成分」とも称する。(D)成分としては、ビニル基含有ラクタム、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、トリエチレングリコールジビニルエーテル等が挙げられる。ビニル基含有ラクタムとしては、例えば、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム等が挙げられる。
【0081】
本発明の放射線硬化性組成物中における(D)成分の含有量は、当該組成物100質量部当たり、例えば1質量部以上15質量部以下である。(D)成分が組成物中に含まれる場合、(D)成分は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0082】
(E)成分:(A)成分または(B)成分に該当しないオリゴマーまたはポリマー
本発明の放射線硬化性組成物は、(A)成分または(B)成分に該当しないオリゴマーまたはポリマーを含んでいてもよい。本明細書では、かかる化合物を「(E)成分」とも称する。(E)成分としては、例えば、上述したような、(A)ウレタン(メタ)アクリレートの合成に(e)成分を用いた場合に生成され得る、(e)成分由来の構造を有するが(メタ)アクリロイル基を有さず、主鎖の繰返し単位中にウレタン結合(-NHCOO-)を含む化合物、例えば、(e)成分由来の構造を2個有し、主鎖の繰返し単位中にウレタン結合(-NHCOO-)を含む化合物が挙げられる。
【0083】
本発明の放射線硬化性組成物中における(E)成分の含有量は、当該組成物100質量部当たり、好ましくは30質量部以下であり、より好ましくは20質量部以下である。(E)成分が組成物中に含まれる場合、(E)成分は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0084】
本発明の放射線硬化性組成物は、発明の効果を阻害しない範囲内で、シランカップリング剤を含んでいてもよい。シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシ-エトキシ)シラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメチルジメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド、ビス-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]ジスルフィド、γ-トリメトキシシリルプロピルジメチルチオカルバミルテトラスルフィド、γ-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィド等が挙げられる。その市販品としては、DOWSIL Z-6062、SZ6030(以上、東レ・ダウ株式会社製)、KBE903、603、403(以上、信越化学工業株式会社製)等がある。シランカップリング剤は、被覆とガラスとの密着力の観点から、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0085】
本発明の放射線硬化性組成物中におけるシランカップリング剤の含有量は、本発明の放射線硬化性組成物の硬化物とガラスファイバとの密着力の維持の点から、当該組成物100質量部当たり、好ましくは0.01質量部以上2質量部以下であり、より好ましくは0.1質量部以上1.5質量部以下であり、特に好ましくは0.3質量部以上1.5質量部以下である。シランカップリング剤が組成物中に含まれる場合、シランカップリング剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0086】
本発明の放射線硬化性組成物には、上記成分以外に各種添加剤、例えば酸化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱重合禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、溶媒、フィラー、老化防止剤、濡れ性改良剤、塗面改良剤等を必要に応じて配合することができる。
【0087】
酸化防止剤としては、例えばIRGANOX245、1010、1035、1076、1222(以上、BASFジャパン株式会社製)、ANTIGENE P、3C、Sumilizer GA-80、GP(住友化学株式会社製)等が挙げられる。紫外線吸収剤としては、例えばTINUVIN P、234、320、326、327、328、329、213(以上、BASFジャパン株式会社製)、Seesorb102、103、501、202、712、704(以上、シプロ化成株式会社製)等が挙げられる。光安定剤としては、例えばTINUVIN 292、144、622LD、サノールLS-770、765(以上、BASFジャパン株式会社製)等が挙げられる。
【0088】
また、界面活性剤としては、特に限定されないが、脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤が、光ファイバ素線を温水に浸漬した場合の欠損発生を効果的に抑制するため好ましく、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビトール脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤が特に好ましい。
【0089】
また、本発明の放射線硬化性組成物には、発明の効果を阻害しない範囲内で、任意選択的に、上述したいずれの成分にも該当しない成分として、他のオリゴマー、ポリマーおよび/またはシラン化合物(テトラエトキシシラン等)ならびにその他の添加剤等を配合することもできる。
【0090】
放射線硬化性組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、従来公知の攪拌機付き反応容器で溶融ブレンドすることにより行うことができる。
【0091】
本発明の放射線硬化性組成物の粘度は、ハンドリング性や塗布性の点から25℃において好ましくは0.1~10Pa・sであり、より好ましくは1~8Pa・sである。本明細書において、組成物の粘度は、B型粘度計(例えば東機産業社製TVB-10H型)によって測定される粘度である。
【0092】
本発明の放射線硬化性組成物の硬化物は、光ファイバ第一次コート層として好適な低いヤング率を有している。光ファイバ第一次コート層として好ましく用いることができる観点から、本発明の放射線硬化性組成物の硬化物のヤング率は、好ましくは25℃において0.1MPa以上、1.3MPa以下(0.1~1.3MPa)である。光ファイバ第一次コート層のヤング率が25℃において0.1~1.3MPaである場合、光ファイバに局所的に圧力がかかった場合にガラスファイバの曲げによって生じる、いわゆるマイクロベンディング損失を防ぐことができる。本発明の放射線硬化性組成物の硬化物のヤング率は、より好ましくは0.2MPa以上、1MPa以下(0.2~1MPa)である。本発明の放射線硬化性組成物の硬化物のヤング率は、後述する実施例に記載の方法で測定される。
【0093】
本発明の放射線硬化性組成物の硬化物を光ファイバ第一次コート層として備える光ファイバは、通常、当該光ファイバ第一次コート層の外側に接する光ファイバ第二次コート層をさらに備えている。光ファイバ第二次コート層のヤング率は、1,000MPa以上であることが好ましく、1,000~2,000MPaであることがより好ましい。光ファイバ第二次コート層のヤング率も、後述の実施例で説明される放射線硬化性組成物の硬化物のヤング率の測定方法と同様の方法で測定することができる。ガラスファイバの表面に光ファイバ第一次コート層及び光ファイバ第二次コート層がこの順で設けられているものは、光ファイバ素線として用いることができる。
【0094】
光ファイバの製造方法の一実施形態は、ガラスファイバの少なくとも一部の表面に本発明の放射線硬化性組成物を配置し、当該放射線硬化性組成物を硬化させて光ファイバ第一次コート層を形成させる工程と、次いで光ファイバ第一次コート層の表面で光ファイバ第二次コート層用の放射線硬化性組成物の配置及び硬化を行い、光ファイバ第二次コート層を形成させる工程とを含む。別の実施形態としては、ガラスファイバの少なくとも一部の表面に本発明の放射線硬化性組成物および光ファイバ第二次コート層用の放射線硬化性組成物を順に配置し、これらを硬化させて光ファイバ第一次コート層及び光ファイバ第二次コート層を形成させる工程を含む、光ファイバの製造方法等が挙げられる。
【0095】
ガラスファイバの表面に放射線硬化性組成物を配置する方法は、特に限定されず、従来公知の方法を利用することができ、例えば、表面に放射線硬化性組成物を塗布する方法や表面を放射線硬化性組成物中に浸漬する方法等が挙げられる。
【0096】
放射線硬化性組成物を硬化させる方法は、特に限定されず、例えば、赤外線、可視光線、紫外線、X線、電子線、α線、β線、及びγ線等から選択される1以上の放射線を放射線硬化性組成物に照射する方法等が挙げられる。
【0097】
一般的な光ファイバの製造方法としては、溶融した石英母材を熱溶融して線引きしつつ、本発明の放射線硬化性組成物および光ファイバ第二次コート層用の放射線硬化性組成物を順に塗布し、放射線硬化して光ファイバ第一次コート層及び光ファイバ第二次コート層を形成することにより光ファイバを製造する方法が挙げられる。
【0098】
光ファイバリボンまたは光ファイバケーブルなどの光ファイバ集合体は、上記した光ファイバを2つ以上含む集合体であり、光ファイバを結束材料で固めたテープ状光ファイバや光ファイバケーブルとすることができる。
【実施例0099】
以下に実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例により本発明の解釈が限定されるものではない。
【0100】
[ウレタンアクリレートの合成と放射線硬化性組成物の調製]
(実施例1)
撹拌機付き反応容器に、数平均分子量4,000のポリプロピレングリコール(ユニオールD-4000 日油社製)を613.7g、2,4-トルエンジイソシアネート(TOLDY-100 三井化学社製)を80.2g、プロピレングリコール(東京化成工業社製)を11.7g添加し、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(本州化学工業社製)0.2g仕込んだ。
混合物を攪拌しながら30℃に加熱した。ジブチルスズジラウレート(堺化学工業社製)0.2gを添加した後、混合物を撹拌しながら15分で65℃にゆっくり加熱した。次いで混合物を60℃で1時間撹拌し反応させた。その後2-ヒドロキシエチルアクリレート(日本触媒社製)を26.1g添加し、70℃で1時間反応させた後、2-エチルヘキサノールを10.6g添加し、70℃で1時間反応させ、ウレタンアクリレート1を得た。
得られたウレタンアクリレート1に4-アクリロイルモルフォリン(KJケミカルズ社製)を99.0g、2-エチルヘキシルアクリレートを148.5g、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(東京化成工業社製)を9.9g加え、60℃で1時間攪拌し、放射線硬化性組成物1を得た。
【0101】
(実施例2~8および比較例9~10)
表1に示した重量割合にて原料をそれぞれ仕込み、実施例1と同様の操作にウレタンアクリレート2~10を得た。得られたウレタンアクリレート2~10をそれぞれ用いて実施例1と同様の操作にて、放射線硬化性組成物2~10を得た。表1において、ウレタンアクリレート1~10をそれぞれUA1~UA10と記す。表2において、UA1~UA10を配合した放射線硬化性組成物をそれぞれ組成物1~10と記す。なお、実施例5および比較例10では、数平均分子量4,000のポリプロピレングリコール(ユニオールD-4000 日油社製)に代えて数平均分子量3,000のポリプロピレングリコール(ポリプロピレングリコール,ジオール型,3,000 富士フィルム 和光純薬社製)を用いた。
【0102】
(A)成分であるウレタンアクリレートを合成した結果を表1に示した。表1に示される各原料に付された数値は、使用された原料の重量比を表す。また得られたウレタンアクリレートを用いて、放射線硬化性組成物を調整した結果を表2に示した。
【0103】
[評価方法]
(1)粘度
実施例及び比較例で得られた組成物の25℃における粘度を、粘度計B8H-BII(トキメック社製)で測定した。結果を表2に示す。
(2)ヤング率
以下のとおり実施例及び比較例で得られた組成物の硬化層(層状硬化物)のヤング率を測定した。結果を表2に示す。
381μm厚のアプリケーターバーを用いてガラス板上に液状の放射線硬化性組成物を塗布し、これを空気中で1J/cmのエネルギーの紫外線を照射して硬化させ、ガラス板から剥離することにより試験用フィルムを得た。この硬化した試験用フィルムを温度23℃、相対湿度50%下で24時間静置後、延伸部が幅6mm、長さ25mmとなるように短冊状サンプルを作製した。この短冊状サンプルを同温度、相対湿度条件下で引張り試験機5542C4600(インストロンジャパン社製)を用い、JISK7161-1に準拠して引張試験を行った。引張速度は1mm/minで、2.5%歪みでの抗張力からヤング率を求めた。
(3)破断強度および破断伸び
354μm厚のアプリケーターバーを用いてガラス板上に液状の放射線硬化性組成物を塗布し、これに空気中で1J/cmのエネルギーの紫外線を照射して硬化させ、試験用フィルムを得た。引張試験器(島津製作所社製、AGS-50G)を用い、試験用フィルムの破断強度及び破断伸びを下記測定条件にて測定した。結果を表2に示す。
<測定条件>
引張速度:50mm/分
標線間距離(測定距離):25mm
測定温度:23℃
相対湿度:50%
(4)ウレタンアクリレート中のウレタン基濃度
ウレタンアクリレートの合成に用いた原料仕込み量から算出した。算出した値を表1に示す。
【0104】
【表1】
【0105】
【表2】
【0106】
実施例1~8で得られた放射線硬化性組成物は、比較例9~10で得られた放射線硬化性組成物と比較し、同等の粘度を示した。また実施例1~8で得られた放射線硬化性組成物の硬化層は、比較例9~10で得られた放射線硬化性組成物の硬化層と比較し、同等のヤング率において、より高い破断強度と破断伸びを示した。
よって、実施例1~8で得られた放射線硬化性組成物は、比較例9~10で得られた放射線硬化性組成物と比べて、光ファイバ第一次コート層形成用の放射線硬化性組成物として適していることが分かる。